西住みほ「ビーチバレー・ウォー!」 (23)
大洗女子学園
典子「一体、何がダメなんだ」
妙子「それが分かれば苦労しません」
あけび「戦車道で有名になっても、増えるのは八九式戦車に乗せてくださいという声だけですもんね」
忍「もっと何か、目玉的なのがあれば」
妙子「目玉焼きはしょうゆ派?」
あけび「お塩がいいな」
典子「何の話?」
桃「ここにいたか」
典子「河嶋先輩。どうしたんですか?」
桃「会長からお前たちに話があるそうだ。生徒会室まで来てくれるか」
典子「まさかついにバレー部復活ですか!?」
桃「公式戦にすら出られない人数で何を言っている」
典子「根性で4人でも6人分の動きをすれば!!」
桃「いいから来い」
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生徒会室
杏「悪いねぇ。突然、呼び出して」
典子「いえ。それでお話しとは一体」
杏「バレー部の部員、集まってないよね」
典子「見ての通りです」
妙子「でも、見ないでください」
あけび「まだ見せられるバレー部ではないんです」
忍「だけど、この惨状を見てもらわないことには……」
桃「見てほしいのか欲しくないのか、はっきりしろ」
杏「ま、とりあえずこのままじゃあ、バレー部の復活はどうしても受理できないんだ」
典子「分かっています。そもそも4人ではバレーボールはできません」
桃「そして試合に出ることができない。試合に出なければ実績は作れない。部員も集まらない」
妙子「負のスパイク……!」
柚子「スパイラルのこと?」
典子「そ、そうだ……!! どうしてそのことに気が付けなかったんだ!! 戦車道ではバレーボールの良さも、私たちがどれだけのバレー魂を持っているのかも知ってもらえない!!」
妙子「そんなぁ」
あけび「最初から、無駄な努力だったのかなぁ」
忍「そ、そんなこと……あるわけ……」
杏「そ。あるわけないし、させもしない」
典子「へ……?」
桃「こういった催しを大洗で企画した」
典子「大洗ビーチバレー大会……?」
柚子「どう? この季節にぴったりだし、いいと思うんだけど」
典子「タイムアウト」
杏「はい、一回目ぇ」
典子「どうする?」
妙子「私たちのことを知ってもらうにはいい機会じゃないですか」
忍「けど、ビーチバレーとバレーは少し違う」
あけび「二人でやるバレーだもんね」
桃「あと20秒」
典子「あの、質問いいですか?」
杏「なんでもどーぞ」
典子「参加者はどれぐらいいるのでしょうか?」
桃「気になるか」
典子「誰も参加せず、私たち四人がビーチバレーをしていても、それはただの浜辺での練習風景ですから」
杏「そうだな。それじゃあ磯辺ちゃんたちの魅力を伝えることはできない。そこでぇ!!」
柚子「参加者を募ったの。既に何人も参加希望者もいるの」
妙子「本当ですか!?」
忍「その人たちをバレー部に勧誘したらいいんじゃない?」
あけび「それいいかもぉ」
桃「それは無理だろう」
典子「何故ですか!?」
杏「だって、希望者はみーんな、戦車道受講者だからな」
典子「……タイムアウト」
杏「はい、二回目ぇ」
典子「これは……あれかもしれない……」
妙子「あれってなんですか?」
典子「みんなに気を遣わせているパターンだ」
忍「きっと西住先輩が呼びかけてくれたんですよね……」
あけび「あう……。迷惑かけちゃってる……」
妙子「でもでも、ビーチバレーはしたいってことでしょ? ここは私たちで盛り上げないといけないんじゃない?」
典子「近藤の言うこともわかる。大洗女子学園バレーボール部の復活をみんなが願ってくれているからこそ、協力してくれているはずだ」
忍「では、私たちこそ、これを受け入れなければ、逆に失礼になると」
典子「そういうことだ。多分」
桃「30秒経過だ。答えは出たか」
杏「テクニカルタイムアウトでも使う?」
柚子「それは8点先取してからじゃないと」
典子「やります!! 大洗ビーチバレー大会、参加します!!」
妙子・あけび・忍「「お願いします!!」」
杏「よっし。んじゃ、決定ね。いやー、よかったよかった。実はもうみんな買い物始めちゃってるから、ここで磯辺ちゃんたちが不参加を決めたらどうしようかと思ってたよ」
典子「買い物って?」
桃「ビーチバレーで必須になるものがあるだろう」
妙子「そっか! ボールですね!! ビーチバレーのボールは普通のバレーボールより内気圧が低くてスピードが出ないんですよね」
桃「違う」
忍「違うはずがありません!!」
あけび「ほら、ウィキペディアにも載ってます!」
桃「そういう意味ではない!!」
柚子「ビーチバレーでは今、近藤さんのようなユニホームは普通着ないかな」
典子「体操服は!?」
桃「それも着ない」
杏「ビキニとかショートパンツとかだもんな」
典子「そちらですか!!」
忍「それじゃあ、今、みなさんは……」
桃「スポーツ用品店でビーチバレー用のユニホームを選んでいることだろう」
柚子「今行けば参加者のみんなもいると思うけど」
ショップ
沙織「これこれぇ!! これなんてどうかなぁ!?」
みほ「それ、普通の水着じゃあ……」
優花里「では、この迷彩柄のショートパンツはどうでしょう!?」
みほ「それもちょっと」
華「花柄のビキニもいいです」クルッ
みほ「華さんが着るの!?」
麻子「真面目にやったらどうだ」
沙織「真面目にみぽりんに似合う水着を選んでるもんっ」
麻子「ユニホームだろ」
カエサル「やはり甲冑と赤マント!!」
左衛門佐「真田紐でござる」
おりょう「家紋入り腹掛け風水着ぜよ」
エルヴィン「いやいや、ここは自分で好きなようにカスタマイズができる、ボディペイントで」
カエサル・左衛門佐・おりょう「「それだぁ!!」」
優季「これかわいい。今年の流行りだよねぇ」
桂利奈「アニメプリントの水着があるー」
あや「どれ着るぅ?」
あゆみ「そうだなぁ……」
典子「ホントにいる!!」
梓「磯辺先輩!」
あゆみ「こんにちはー」
妙子「みんなが参加してくれるの?」
優季「だってぇ、たのしそうじゃん」
あや「それに! あけびちゃんたち、いつも頑張ってるのに全然部員が集まらないもんね」
あけび「ありがとう……」
梓「私たちがバレー部に入部したら解決なんだろうけど……」
忍「気にしないで。無理してバレーボールはしなくてもいい」
妙子「そうそう。やっぱり本当にバレーボールが好きな人と一緒にやりたいから」
梓「そっか……」
あや「良い宣伝になるように、私たちもビーチバレーは真剣にやるから!!」
優季「がんばっちゃう」
あけび「みんな、本当にありがとう!!」
典子「西住さんたちも、参加してくれるのですか」
みほ「はい。部員集めに少しでも協力できたらって思って」
典子「ありがとうございます!!」
麻子「思ったんだが、私たちが名前を貸すだけではダメなのか」
典子「ダメです!! 私たちはバレーボールがしたいんです!! 決して、部活をしたいわけじゃありませんから」
優花里「おぉ!! なるほど!!」
華「心からバレーボールを愛しているのね」
典子「でなければ、廃部を言い渡されたときにソフトボール部に入っています」
カエサル「そういえば、アヒルさんチームは一度断られた相手をしつこく勧誘しないらしいな」
エルヴィン「実際、私たちも一度断った後は再度入部を勧められることはなかったからな。彼女たちなりのポリシーでもあるのだろう」
おりょう「押しが弱いぜよ」
左衛門佐「押しの問題か?」
おつおつ
待ってるよー
典子「近藤、佐々木、河西!! 私たちも水着を選ぶぞ!!」
妙子「はいっ!!」
あけび「でも、お小遣いがありません!!」
忍「部費もありません!!」
典子「よし、根性だ!!」
麻子「無理だろ」
典子「では、どうしたら!?」
優花里「どうぞ、みなさん」
妙子「この袋は……?」
あけび「開けてもいいんですか」
優花里「いいよ。それはアヒルさんチームのために用意したものだから」
忍「では……」ガサガサ
妙子「これって水着……?」
典子「西住さん、一体……」
みほ「あ、サイズは園さんしか知らないから。その水着も園さんがサイズを選んで買ったの」
麻子「身体測定の時に測っていたのはそど子だからな」
みどり子「もういい加減に園先輩って呼びなさいよ」
典子「いえ! そういうことではなくて!! 何故、買ってくれたんですか!?」
みほ「えっと、ダメだったかな?」
典子「いえ!! ぜんぜん!! でも、買ってもらえる理由がありません!!」
華「理由ならありますわ」
沙織「だって、今回の主役はアヒルさんチームじゃん? だったらそれに必要なものは私たちが用意するよ」
妙子「けど、水着って安くはないですし」
みほ「気にしないで。私たちがそうしようって決めただけだから」
カエサル「スポーツの祭典に参加すれば参加賞のタオルがあるだろう。それだと思えばいい」
あけび「思えませんよ!!」
エルヴィン「いいから受け取ってくれ。でなければ、その水着は無駄になる」
おりょう「アヒルさんチームしか着ることができないぜよ。サイズ的に」
左衛門佐「悔しいが、その鎧はおぬしたちでなければずり落ちてしまう」
優季「磯辺先輩のはきれそうだけどぉ」
忍「みなさん……!」
カエサル「ただし、ここまでしたんだ。必ずバレー部を復活させてほしい」
希美「どうしてもっていうときは声をかけてください。部員になります」
典子「やめてください。一度、断られた人には声をかけないって決めています」
モヨ子「それはどうして?」
ナカジマ「誘い続ければ相手が折れてくれるかもしれないのに」
典子「それでは意味がないんです。最初からバレーボールを楽しんでほしいんです」
妙子「すぐに辞められたほうが悲しくなりますから」
優花里「そうですか。なら、今度のビーチバレーで私たちがバレーボールを続けたいって思えたら入部してもいいんですね」
典子「それは勿論です!!」
エルヴィン「では、そう思わせてくれるイベントにしよう」
あけび「はい!! がんばります!!」
忍「根性と気合で成功させます!!」
典子「やるぞ!! みんなぁ!! 失敗は許されないんだ!! これでバレー部を復活させるぞー!!!」
みほ「……」
生徒会室
ねこにゃー「ボクたち、運動とか苦手なんですけど……」
杏「まぁまぁ、参加することに意味があるから」
桃「戦車道受講者は参加決定だ。水着を選んで来い」
ももがー「スクール水着じゃダメなり?」
ねこにゃー「ビキニ鎧のコスプレならあるんだけど」
ぴよたん「なんでそんなの持ってるの?」
柚子「まぁ、動きやすい服装ならなんでもいいんだけど」
杏「砂浜でやるからできる限る水着がいいけどなぁ」
みほ「――あの」
桃「西住。戻ってきたのか」
みほ「会長。相談したいことがあるんですけど」
杏「それは、私じゃなきゃできないこと?」
みほ「はい」
杏「なら、協力しないとな。なに、西住ちゃぁん」
別の日
沙織「いくよー。そーれっ」ポーンッ
みほ「あわ……あわわわ……」
みほ「ぅぐっ!?」ドンッ
優花里「西住殿!?」
麻子「顔面レシーブ」
華「ボールはまだ生きています」テテテッ
華「はいっ!!」スカッ
沙織「空振りしてんじゃん」
華「やはり、わたくしではダメなのでしょうか……。サーブマシンで狙うことはできそうなのですが」
優花里「おぉ、それは砲手であるが故ですね」
沙織「次、麻子ね。そーれっ」ポーンッ
麻子「ほいっ」ポンッ
沙織「ゆかりん、スパイク!!」
優花里「いきます!! 発射!!」バシーンッ!!!
みほ「わぁ……。麻子さんと優花里さん、上手だね」
優花里「いえいえ。今のは冷泉殿のトスがお上手だったからですよぉ」
麻子「沙織のサーブはチャンスボールのそれだ」
みほ「それがレシーブできなかったわたしって……」
華「自分が情けなくなりますね」
優花里「げ、元気を出してください!!」
沙織「みぽりん、華。もう一回、やるよ。典子たちのこと、助けたいんでしょ。部員になるっていう方法以外で」
みほ「うんっ」
華「沙織さん、もう一度、お願いします」
沙織「そうこなくっちゃ! いくよー。そーれっ」ポーンッ
みほ「今度こそ……!! ここ!!」
みほ「ぁぐっ!?」ドンッ
華「みほさんが美しい顔を犠牲にして繋いでくれたボール!! 確実に打ってみせます!!」
華「はいっ!」スカッ
沙織「やだもー……」
みほ「いたた……」
沙織「やっぱりさ、典子たちに教えてもらわない? 私たちだけじゃ限界あるって」
みほ「ううん。このまま続けよう」
沙織「みぽりん……」
みほ「幸い、私たちには麻子さんと優花里さんがいるから基本的なことは練習できる」
みほ「なにより、磯辺さんたちだって練習したいはずだから」
優花里「四人の邪魔はしたくないってことですね」
みほ「公式の試合じゃないけど、磯辺さんたちは本気だから。練習の時間だけは奪いたくない」
沙織「でも、私たちもある程度は上手くないと試合にもならないんじゃない?」
みほ「私は無理かもしれないけど、麻子さんと優花里さんなら試合になると思うし、きっと大丈夫」
みほ「でも、私も試合に出る以上は頑張りたい。なんとか試合として成立するぐらいの技術は身に着けたい」
華「わたくしもです」
みほ「沙織さん、もう一度、サーブをお願いします」
沙織「わかった。とことんやるよ、みぽりん」
みほ「はいっ」
みほ「あわわわ……ひゃぐっ!?」
優花里「わー!! にしずみどのー!!」
みほ「だ、大丈夫……大丈夫だから……」
沙織「みぽりん!! 鼻血がでてるよ!?」
みほ「あうー……」
華「あらあら」
麻子「ティッシュをつめるか」
妙子「もう見てられない!!」
典子「待て、近藤!!」
妙子「キャプテン、でも……」
典子「ここで出て行ったら、西住さんの気持ちを無駄にすることになる」
あけび「いいんですか、キャプテン?」
忍「私たちだって未熟ではありますけど、それでもサーブやブロックの基礎ぐらいは……」
典子「行こう。私たちも練習をしなきゃ。当日は負けられないんだ」
妙子「……そうですね。私たちもがんばりましょう。西住先輩たちに負けないように!!」
大洗女子学園 役員会議室
桃「全員、集合しました」
杏「バレてはない?」
柚子「はい。細心の注意を払い、ここへ案内しました。それに皆さんには大洗を制服を着てもらい帽子を目深にかぶっていただきましたのでバレてはいないかと」
杏「そっか。いやぁ、みんなぁ、集まってくれてありがとね」
桃「これより、大洗ビーチバレー大会の概要について説明する。まず日時だが……」
「クウェッションがあるんだけど?」
桃「あとにしてほしい」
「オッケイ」
「こんな格言を知ってる? 平和とは、ただ闘いのないことではなく、それは魂の力により生まれる美徳である」
「その格言は今、必要なことかな?」ポロロン
「玉入れにしない? それならカチューシャも喜んで参加するわよ」
「海の家でパスタを売るのも悪くない」
「ばれえぼうるというものはてれびでしか見たことはありませんが、参加する以上尽力いたします!!」
「皆、好き勝手にしゃべるな。まだ説明は終わっていない」
桃「――以上だ。質問を受け付ける」
「ハァーイ。私たちが参加することは絶対にシークレットなの?」
杏「それが西住ちゃんの意向だからな」
「ミホーシャ以外の連中がビックリする様が想像できるわね」
「わたくしたちのパートナーは自由に決めていいのかしら?」
杏「それは勿論。大洗のイベントではあるけど、学園のイベントではないからね」
柚子「あくまでも大洗町の催しですから」
「学園は関係なし、か。いいじゃないか。では、私がブリザードのノンナと組んでもいいわけだ」
「だめよ。ノンナはカチューシャと組むんだから」
「そういうな。あとでアンチョビ缶を贈るぞ」
「いらないわよ」
「パートナー、運命すらも左右する選択だね」ポロロロン
「あの!! では、私が西住隊長と組んでもいいということでしょうか!!」
「みほと組めるのか」
桃「相手の許可が出れば構わない」
柚子「最後に試合時のユニホームについてですが、こちらで用意させていただく水着があります」
杏「持参もオッケーだけどね」
「私は自分のスイムビキニを用意するわ!」
「私もイタリア製の水着を持ってくるつもりだ」
「水着はビーチバレーにおいて、本当に必要かな?」ポロロロン
「あら、ではミカさんは裸でやるつもりかしら?」
「悪いけど、私にも一般的な恥じらいはあるよ」
「だったら、戦車返してよ」
「なんのことかな」
「私は是非、お借りしたいのですが」
杏「いーよ、お姉さんは?」
「私は持参する」
桃「そちらは?」
「わ、私……? わたしは……その……ボコの水着で……」
杏「それはたのしみだねぇ。ビーチバレー大会が待ち遠しいな。はむっ」
乙です
楽しみだからどんどん書いてくれ
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