沙希

俺は電話を代わるためにベッドからしぶしぶ起き上がり階段を降りた
それにしてもサキさん……？誰だ…？
少し自分の記憶を掘り起こしてみる。
しかし俺の記憶の中にはサキさんなんて人は居なかっ…いや居たか。
確か苗字は……川村？いや、川本…川栄か
思い出した、川越だ。この間連絡先を交換したのを忘れていた。
小町から電話を受け取り、通話口の向こうの相手に語りかける。
「もしもし…」
『アンタ、何で電話出なかったの？』
声を聞いて思い出した。川越ではなく川崎だ。
とりあえず心の中で謝っておく。悪いことしたら謝る、これ大事。
その川崎は少し怒っているようだ。これはあの手を使うしかないな。
「いやあの、寝てたんだよ。休日はいつもこの時間まで寝てるからな」
『ふぅん、てことは今日アンタ暇なの？』
なんだか面倒なことに付き合わされそうな気がしたので嘘をつくことにした。
「いや、今日は少し予定がな……」
「何言ってんのお兄ちゃん、今日は１日寝て過ごすって言ってたじゃん」
しかしその嘘は可愛い妹によって2秒と経たずバレてしまった。
『……けーちゃんがアンタと遊びたいっていうから今からアンタの家行っても大丈夫？』
「……はい」
グッバイ俺の休日。

地の文ってこんな疲れるのか……

応援してる

はよ

「はーちゃんだー！」
「……うす」
家のチャイムが鳴ったのを確認しドアを開け、川崎と川崎の小さな妹、けーちゃんを家へと迎え入れた。
「そういえば俺ん家……何も無いんだけど良かったのか？」
「今丁度大志が受験勉強で忙しいから……家に呼ぶ訳にもいかなかったし」
大志……？誰だそいつ。誰かは分からないけれど名前を聞いただけで何故かムカついてくる。川崎の口ぶりから察するに川崎の家族である事は確定だろう。……思い出した。川崎大志。川崎沙希の弟で何かにつけて小町に付きまとうストーカーである。
それはさておきどうしたものか。うちには幼女を迎え入れる事を想定していなかったためこれといって何も無かった。というか幼女を迎え入れることが前提なのが間違いなんじゃないの。そんな家あったら今すぐ俺が通報するわ。
ここはとりあえずどんな遊びをしたいかけーちゃんに聞くのが得策だろう。俺遊びに誘われたこととかないからこういうとき、どんな遊びをしたらいいのかわからない。笑えばいいですか、そうですか。
「なあ、けーちゃん。何して遊びたい？」
自分でも分かってしまうくらいに頬が歪んでいた。運悪くそれを川崎に見られてしまい、鋭い眼光で睨みつけられてしまった。ヤバイ川崎さんめっちゃ怖い。
と、俺が川崎からの視線に耐えられず目を逸らしているとけーちゃんが口を開いた。
「んーっとね……>>8がいい！」

かくれんぼ

けーちゃんはかくれんぼをご所望のようだ。とは言え俺と川崎を含めた3人ではあまり面白くないだろうということでダメ元で小町を誘うことにした。
受験勉強もあるし多分付き合ってもらえないだろうと思っていたが案外あっさり承諾してくれた。というか勉強はいいのか受験生。
「これで人数は確保できたな……んじゃ鬼決めるか」
じゃんけんの結果、小町が鬼になった。たかが子供の遊びであろうとも俺は手を抜かない主義なので恐らく俺の知る限りでは最高の隠れ場所へと足を向かわせた。
まあ、自室のベッドなんだが。俺レベルになると自室のベッドと一体化できるまである。これがステルスヒッキーの固有スキルか……何それしょぼすぎ。