志希「~激走~アタシと鬼のアメリカ逃走記」 (351)
溜まるのが早すぎる……紳士です。
前作と異なり、紳士成分は非常に薄いですが、楽しんでいただければ幸いです。
また、お気づきの方もいられると思いますが、私にとって最高の紳士は
〈クマ吉〉くんです。
よろしくお願いいたします。
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ーーーちくたくちくたくちくたくちくたく。
規則的な声を上げて、メトロノームは頭を左右に振り続けている。
合わせて、ごぷっごぽぉっ、とフラスコの中に押し込められた小さな海達が嬌声を吐く。
ここは実験室。
100人を越えるアイドルが所属する、モンスター級のプロダクション、その地下。
数人のアイドルに割り振られ、日夜プロダクションを支える発明が行われる、さながら悪の組織の秘密基地だ。
ここは基地の中でも、科学部署ドリンク部門の統括長という重要なポストを担う、志希=一ノ瀬の実験室。
そして、当の本人はーーー
「ーーーーちくたくちくたくちくたくちくたく♪ ちくたくちくたくちくたくちんちーん♪」
メトロノームにあわせて頭をフリフリ。
有り体に言えば、お馬鹿な姿をさらしていた。
「まーだっかな♪ まーだっかな♪ このまま、お婆ちゃんになっちゃおかな♪ 一人寂しい子猫ちゃん♪ 首輪をなくして、しくしくにゃ☆」
長い髪を振り乱し、シキロノームは時を刻む。
約束の14時15分40秒まで、あと10往復。
「10、9、8……飽きちゃった~。 むぇえー……よし! 志希ちゃんを襲うプロデューサーのモノマネしよーっと♪」
デスクの上に適当に放っていた眼鏡をかけ、武人然とした真面目な表情を作る。
女優、一ノ瀬志希の晴れ舞台だ。
「『ふっふっふっ。 もう逃げ場はないぞ、志希! 大人しく私に犯されるんだ!』
『イヤ! やめて、乱暴しないで! フレグランスをキメさせて、エロ同人するつもりでしょ?! 飛鳥ちゃんみたいに!』
『フハハハハハ! 聡い女だ! 喰らえ、私のうなじの匂いを一週間擦り溜めたハンカチーフだ!』
『ナイススメルなんかに絶対に屈しないんだから! アタシは一ノ瀬志希というクニを守るんだからぁああ! あっあっあっ……』」
アイドルにおいてもその才能を遺憾なく発揮する、一ノ瀬志希の名演技。
それはまるで、その場に鬼畜漢と雌豚
(注:かな子さん体型の意ではない)が存在すると幻視させるほどリアル。
鬼気迫るそのとろけ顔は、往年の名女優を思い起こさせた。
実験室のドアが開いた。
「『フフフ、怖いか? イケっいってしまえッッ!』
『ああァァアアアア! プロデューサーのかほりが、アタシの下垂体をスティミュレイトして、アドレナリンがエンドルフィンしちゃうのぉぉぉ!
ら、らめえぇええぇ!
ぐっ……グッ……! グッッッッッスメーーーーール!』
『いい表情〈カオ〉だ……(ボロンッ)
さぁ、お前の欲しがってるプロデューサーのプロデューサーだ。 御奉仕の仕方は、わかるな……?』
『は、はいぃ……ごしゅじんさまぁぁ……この賤しい豚にお情けをくださいましぃぃ……』」
「………」
一人遊び(意味深長)に余程熱中しているのか、志希は実験室の訪問者に気づかない。
入室者、細い眼鏡をかけ髪を全て後ろへ固めた男。
青筋を立てながら、担当アイドルの恥体を見つめるのは、誰を隠そう志希プロデューサーだ。
「『オラッオラッ! どうだ! この豚め! 返事はどうした!』
『ブヒイィイィイイ! お許しを! お許しくださいましごしゅじんさまぁぁああ!』
『そらっ! イケっイってしまえ! 憐れな豚の鳴き声をあげろ! なにがクニだ! クンニしろ、おらぁ!』
『あっあっあっ……ァァぁぁぁあああ!』」
と、完全に役に成りきる志希は、体をびくんびくんと痙攣させ始める。
そして、ついに限界が来たのか、志希は体を海老のように反りながら、彼女が絶頂を向かえるとき、決まって叫ぶ台詞を吠えた。
「「『シキちゃん、ヘンタイに、ヘンタイィぃぃぃぃいいイイイイ!』」」
だが、吠えたのは志希だけではなかった。
養豚場の豚を見つめる波紋師範のような氷の表情で、プロデューサーがハモっていた。
「…………」
「…………」
実家でPCに残ったエロサイトの履歴が母親に見つかり、消去法をレクチャーされる男子のような。
そんな恐ろしく気まずい空気。
稀代の天才はいったい、どのようにして修羅場を回避するのか。
ギフテッド・一ノ瀬の真価が問われていた。
「……」
志希はまず、眼鏡を外した。
正解だ。
視覚的侮辱をなくすことは必須。
「………」
次に、乱れた白衣を正し、整える。
正解だ。
プロデューサーは清潔を誰より好む。
「…………」
そして、メトロノームの前に座った。
「……………ちくたくちくたくちくたくちーん。 わー。 じかんだー。 あ、プロデューサーきてたんだー。 きづかなかったよー」
三流女優のだしがらを煮詰めた、カスの更に搾りカスのごとき演技。
一ノ瀬はシラをきった。
答えはあわせるまでもなくーーー
「……遺言がそれだと寂しいでしょう。 一言だけさしあげましょう」
「……。 許してくれデリカ?」
ーーー小さな頭が、めしぃと、歪な音をたてたのだった。
なんだこのSS……
期待
とりあえずここまで。
また溜めて、出します。
このように、ここの志希は上々キメてます。
志希紳士の方々には先に謝っておきたいとおもいます。
すマンコ
馬鹿な……早すぎる……
>(注:かな子さん体型の意ではない)
おーう>>1
ちょっと表出ようか?ん?
溜まれば出す。
出せば溜まる。
人体の神秘ですね。
>>15 ………許してくれデリカ?
美嘉さんもイメージを著しく損ないます。
ごめんなさい……生イキ逝って……
「痛ったいなぁーもぉ~。 かわいいあたしのノウミソちゃんが零れたらどうするつもり? カラダでお返ししてもらうかにゃ~?」
頭をさすさす、慈しみつつプロデューサーを睨む。
視線の先は、彼の股間だ。
「もう今日の分のSドリンクは渡したでしょう。 それにピンクに染まった脳みそは一度出して洗うくらいが丁度いいんです」
一ノ瀬志希。
彼女の性欲は単なる動物的衝動ではない。
かつて、のっぴきならない理由から自身へ投薬した『あるドリンクの源薬』の副作用。
そのため、彼女はプロデューサーの子種を摂取し続けなければならない体質になってしまったのだ。
その代わり、オリンピックレコードを幾つも塗り替えることが出来うる身体能力と、ゴリラゴリラ〈学名〉じみた膂力を手にしたが。
「そしたらギフテッドも流れていっちゃうかもね~。 凡人になっちゃったら、プロデューサーに捨てられちゃうかなー。 んーそれとも、アタシがポイするのかなぁ?」
猫のように笑いながら、志希は頭を掻く。
眼鏡の位置を正す、プロデューサーの顔はしかめっ面。
「志希。 冗談でもそんなくだらないことを言うんじゃない」
「……んー。 冗談じゃないって言ったら、どしちゃう?」
志希はよく猫に譬えられる。
それは彼女の失踪グセや、奔放さ。
目に見えるところに依る。
だが、本質は違う。
快楽をsexに譬ふのはsexの姿を知らぬもの 。
不感症をEDに譬ふのはEDを知ったと驕る者。
それと、同じ。
「………にゃは。 なん茶っ紅茶♪
冗談、ジョーク、嘘、ライヤ~。 あたしとキミは~運命共同体だからねー。
正しく、普遍の変換式。 いわゆる穴から抜けない棒♪
あんな美味しい白濁エリクシール捨てられるわけないしにゃ~♪
実際、萎れるまでプロデューサーのは抜けないしね~。 ある意味ヌケてるけど♪」
とりあえず、淑女に再びアイアンクローをかましておく。
「ほんっとうに……貴女は上品ですよ……!」
「ぎにゃにゃにゃにゃ! で、出ちゃう! 志希ちゃんのかわいくないところがでちゃうぅぅぅう!」
ーーーーーーー閑話休題ーーーーーー
「……それで? 今日は何の実験ですか志希? あの女に伝えさせるくらいですから余程のことでしょうが」
「ふっふっふっふっふ。 ちひろさんにお願いしたのは何を隠そうこのメトロノームちゃんのことなのだ!」
「………はぁ」
「あっ。 今バカにしたでしょ? いーけないんだーいーけないんだー。 ちひろさんに言っちゃーおー」
「さっさと続きを話しなさい」
眼鏡の位置を直しつつ、あきれ声。
志希は担当の様子とうってかわって、興奮気味だ。
初めて回転するベッドを見た子供のようなキラキラしたおめめをぱちくりとさせる。
「実はね~。 あたし最近、催眠状況下における精神分析にハマってるんだ♪ 要は、単純な反復動作による精神の鈍化を引き起こした状態で~被験者にフレグランスを嗅がせることで、深層心理を分析する、みたいな?」
「胡散臭い」
「ふっふーん! そう言うと思って、既に美嘉ちゃんで実験済み~♪ このdiskに記録したんだけどー美嘉ちゃんかわいかったよー♪」
「悪い予感しかしませんね……」
「サ・イ・セ・イ~ポチっとな!」
壁に掛けられたスクリーンに、城ヶ崎美嘉が志希の実験を受ける様が映されていく。
スクリーンの中の美嘉は、椅子に固定され、目隠しをされている。
あとボールギャグさえあれば立派な調教シーンだったのだが、残念なことにそれはなかった。
『ねぇ、志希? アタシのプロデューサーがこれ受けろって、ほんとに言ってたの?』
『そーだよーほんとほんと~。 美嘉にもっと輝いて欲しいからって、懇願されちゃったからにゃー。 志希ちゃんも美嘉Pの美嘉ちゃんへの熱意に動かされたってカンジ~』
『ね、熱意だなんて……! も!もー! アタシ、アイドルなのに困っちゃうなー……えへへ★』
『………ちょろいわー』
『なにか言った?』
『んー? なんにも~。 それじゃ始めるよー実験、スタート♪』
『え、も、もう? 心のじゅん、び……が……。 ……………』
『………美嘉ちゃーん?』
『………』
『んふふ~♪ 入ってるカモ~♪
………それでは美嘉さん、あなたの心の奥にある一番大切な思い出を、私に話して下さい』
『はい……。 あれは先週のことです……アタシはLiveの打ち上げ終わりに。プロデューサーの家へ行きました……』
『ほう。 処女ヶ崎さんとは思えない大胆な行動ですね。 続けて?』
『はい……それというのも、フレちゃんが最近担当プロデューサーさんと仲を深めたということもあって……カリスマギャルとしてブレイクを防がないといけないと思いまして……』
『なるほど……真面目な城ヶ崎さんらしい、理由です。 それで家に着いてどうなりました?』
『家に着いてからは、どちらからということもなくシャワーを浴びました。 どうやって、着替えたかは……覚えてません』
『ほう! 興味深い……』
『それで、一緒に寝ることになって……。 その、いい雰囲気に。……なりました』
『素晴らしい! しかし、以前、奏さんは、美嘉さんが、赤ちゃんはコウノトリが運んでくると教えてくれた、と言っていましたが、その辺りはどうなのでしょうか?』
『……正直今でも後悔しています。
信じるとは思わなくて……まさか〈狂悦なる口蛇の魔性〉を自称する奏が本当に知らないとは思ってもみなかったので……』
『そのせいで多分に犠牲が生まれています。 美嘉さんには深く反省していただきたい。 是非今度、美嘉さんの口から、無修正のポルノを突きつけるかのごとく真実を教えてあげてくださいね』
『はい……申し訳ありません』
『では、続きを』
『わかりました。まず私からプロデューサーさんのプロデューサーをーーーーーー』
と、そこで志希が停止した。
「……にゃは。 disk間違えちゃった」
「…………」
三度のアイアンクローが、志希の頭を変形させることになったのは、まぎれもない自業自得であった。
ここまで。
少しばかり東京に、ざぎんでしーすーしに行くので間が空くと思います。
みてくださっている皆様、紳士してお待ちください。
遠目で見てるぞ
志希お嬢様は本当に上品なお方(
間が空くと言ったな……あれは嘘だ
東京明日でした。
>>31 もっと近くで見てください、ほらほら
志希様がお上品に過ぎるワケが主題なので、ゆるりとお待ちください……。
出します。
「あいたたたたた………うう、アタマががんがんするぅ……。 脳内麻薬が追い付かないにゃあ……」
「……先ほどのdiskは責任を持って私が処分しましたが、他にはないでしょうね?」
故・処女ヶ崎の初体験レポートを収めた悲劇は、この世から消え去った。
志希は涙目を擦りつつ、答える。
「うぅー信用してよぉ……」
「志希から最も遠い言葉ですねそれは。 嘘だったら犯しますからねほんとに」
「………実はあと19ダースほど」
「さっさと出せこのピンク脳が」
貫通ヶ崎のdiskをすべて回収し、処分したプロデューサーは志希のシリを、叩きながら問う。
「それで? まさか私にあんな実験に付き合えと、そう言うわけですか?」
「にゃっ! にゃっ! ふにゃあっ!
そっ! そう、だけどっ! でも! アレは、ほんとに! 深層心理がデル! 実験だから! 美嘉ちゃんが! 重いだけだからっ! あっ! もっと! 叩いて!
クル!エクスタシーしちゃうううぅぅぅ! シキちゃん、ヘンタイにヘンタイぃぃぃぃいいいい!」
びくんびくんと、体を痙攣させ果てる志希。
プロデューサーは衣服を正しつつ、志希汁で濡れた手をハンカチで拭いた。
「馬鹿馬鹿しい……お断りですよ。 それでは、私は企画作りに戻りますから……次は、もっとキツいお仕置きですからね」
「………自信、ないんだ」
「……………は?」
床に潮を撒き散らしながら、露出した下半身をそのままに志希は立ち上がる。
その目は、絶対にイカないちんこが絶対にイカせる口に挑む時の、覚悟の色を帯びていた。
「プロデューサーが心の奥で考えてるハズカシ~ところ、志希ちゃんに見られるのが怖いんだね~」
「……その精液臭い口を閉じなさい」
「あーあ。 にゃんかガッカリだにゃー。アタシのプロデューサーがこんーな、ヘニャチンだったなんて。 はふぅ。 これじゃあ美嘉ちゃんも浮かばれないよ」
やれやれ、といった風に頭を振る志希。
余談だが、実のところ予備実験は全くもって不要だっため、尊い犠牲どころか、美嘉の犠牲はちんかす以下である。
だが、背中に鬼を飼う血族として、誇りあるプロデューサーはそんな単純な挑発をかわせない。
「……やりましょう」
「え、なんて?」
「やると言ってるんです! この色魔が!」
「その一言を待っていた!」
と、先ほどまでの不様が嘘のような、俊敏な動きで志希はプロデューサーの背後へと回る。
そして、腕力だけならプロデューサーを遥かに凌駕するその力でもって彼を拘束した。
「もーう、後には引けないからね、プロデューサー?」
「しれたこと。 さっさと始めなさい」
「キミのそーいうところ、アタシ大好き♪」
射精寸前の珍宝を、ぐるぐる巻きにして射させなくするように、志希は下半身丸出しのまま、プロデューサーを紐で縛っていく。
通常時は、志希を縛るその紐だが今だけは二人のSMが逆転していた。
そして、拘束が終わり、プロデューサーはメトロノームの前に座らされた。
「んっふっふー♪ 興奮してきたカモ♪ アドレナリンぜんかーい♪」
「いいからさっさと始めなさい。 そして股を私の手に擦り付けるんじゃない。 犯しますよ」
デスクの上から、嬌声をあげていたハート型のフラスコを手にする志希。
エロやるならR板の方が……
栓を外し、一息吸い込む。
頭の中で混ざりあい弾ける化学物質達。
そして、それを共有するため、プロデューサーの唇へと吸い付く。
志希からプロデューサーへと経口で送られる危険な麻薬。
名残惜しそうに離した唇から、互いを繋ぐ液糸が垂れる。
「………ん、く、あ……」
明滅するプロデューサーの意識。
チクタクチクタクチクタクチクタク。
メトロノームがやけに喧しい。
落ちていく意識が最後に捉えたのは、捕食者の笑みを浮かべた愛しいアイドルの笑顔だった。
「それではそれでは、一ノ瀬志希ちゃん主催、ココロトリップに1名様ごアンナ~イ♪ 監督、主演はプロデューサー。 心の奥の群像劇の始まり始まり~♪」
ここまで。
>>40 エロなんでしょうか……?
これで興奮できるスーパー紳士が果たして……?
ssチェリーなので、運営様の警告とかすごい怖いんですが。
有無を言わさず飛ばしてくれた方がいっそ有難い……。
何処となく筒井康隆ライクなかほり
期待
あ、プロデューサーさんは美嘉のPと同一人物なのか
乙
明日はスル余裕ないと思うので、スッキリしてから、寝ます。
今回は紳士成分薄め。
出します
ーーーいつからだったろうか。
昔はダッドとよく話した気がする。
『ーーーねぇ、パパ。 このぶん・し、しき? ……はなんていうの?』
『それは、ベンゼン環だよ、志希』
『かん……?』
『そう、ほら見てごらん。 Cが6つ、手を繋いでいるだろう? みんな仲良く輪になっているから、『環』と呼ぶんだ』
『……ふーん! じゃあじゃあ! 私たちは一ノ瀬環?』
『あはは……そうだね。 パパとママと志希、3人だけの小さな環かもしれないね』
『んふふ♪ でもでも、小さい輪の方が、繋ぐ力がつよい、でしょ?』
『驚いたな! もうそこまで……。 その通り。 誰にも壊せない、不可逆な反応式さ』
『しき……式、志希! 志希ちゃん達の反応式♪』
『……お前は本当にかわいいなぁ……』
『わふっ。 もぉーパパ急に頭撫でてどうしたの~?』
『ふふ……なぁに、志希の頭の輪っかが飛んでいかないように、抑えているのさ』
『頭の……輪っか?』
『ああ。 お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』
ーーーこの先を、いつのまにか忘れてしまった。
大事な。 きっと大事な『何か』があるのに。
志希ちゃんの心の防衛本能は、最後の楔を打ちっぱなしで、外す鍵穴すら探させてはくれないのでしたーーーーーー
アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ。
時刻は22時19分28秒。
気温7度。
肌寒い春風が、吹いている。
街灯は暗く、人気も少ないストリート。
その路肩に、巨大な雪玉が一つ。
季節違いのその雪玉は、牛乳を拭いた雑巾のように薄汚れていた。
「…………にゃは……なんだか懐かしい夢を見たってカンジ……」
雪玉が突然喋る。
いや、雪玉ではない。
それは大きな白衣を体に巻き付け、寒さをしのぐ一ノ瀬志希。
事務所に、入る1年前ーーー17歳の姿だった。
白衣に袖を通し、ひと伸び。
「 んーっ! ただの脳神経の化学反応なのに妙にリアルー♪ ……へくちっ! うぅ……外はさぶいよー」
春とはいえ夜は冷え込む。
夜型であることも一因ではあるが、こんな時間に起きたのは、そのせいだ。
無論、それだけでは、ないが。
「ちくたくちくたく……シキロノーム的には~2時間、かな? 今回はまぁまぁ眠れたね~」
真夜中にうら若き乙女が、野宿するワケ。
一ノ瀬志希は現在、大学を追われ、そしてまた、FBIから、追われていた。
「クンカクンカ……うへぇ。 自分の匂いとはいえ、濃すぎてクラクラするにゃ~。 どうにかして住むとこ探さないと、本格的にヤバイかも♪」
努めて、明るく振る舞う。
既に興奮剤など、持てるクスリは、全て使いきった。
独り言を呟いて、言い聞かせて、ココロを保たねば潰れてしまう。
そうして、立ち上がり、歩き出そうとしてーーーー躓く。
「あ、ありゃ? 摩擦係数狂っちゃったカナ? ふぬっ……!」
力を込め、踏ん張る。
だが、生まれたての小鹿のようにその足は震えている。
ーーー結局、前のめりに倒れてしまった。
「あははは……こんなことなら研究者になるんじゃなかったかにゃ~……なぁんてね」
一ノ瀬志希は、研究者として日夜、クスリを開発していた。
事象を想起させ、記憶力を底上げするクスリ。
中毒作用のない、世界をトリップするクスリ。
etc.etc...
「『if』なんて、研究者から最も遠い言葉なのにねー……自分の才能がうらめしや~」
ギフテッド。
神に与えられた贈り物、大学に飛び級で入るほどの才能を存分に発揮して。
そして、近日ついに究極へ辿り着いた。
後に、とあるドリンクの源薬になるそれは、人体を異常活性させるクスリ。
これが元凶。
場合によっては文字通り、スーパーマンすら創れてしまう。
多くの人間が、それを求めて志希を追い回しているのだ。
「どうせなら空腹を感じなくなるクスリ作ればよかったかにゃ~ま、このシチュエーションじゃ、変わんないか♪」
おどけてみせるも、体は既に限界。
精力剤をガバのみし、徹夜で夜のプロレスをやった後のようなそんな虚脱感。
「あーあ。 ダメなのになぁ……誘眠の香りには……逆らえないよねー……」
瞼が落ちる。
もはや二度と目覚めぬ眠りに、眠り姫はつこうとしていたーーーーー
ーーーーその時、志希は跳ね起きた。
「………くん、くん。 ナニ、これ。 ……アタマに直接電極を挿すみたいな。
はじめてのカンカク。 やっばい、五感全部支配されたかも」
もはや虚脱感などなんのその。
匂いの元をひたすら探し、求める。
向かいのアパート?
違う、男と男がベッドで上下運動しているだけだ。
背後のマンション?
違う、娼婦が化粧と鼻につく香水を振り撒いてるのみ。
では、ストリートは?
ーーーー見つけた。
「ーーーにゃはっ♪」
それは、男だった。
真っ赤な髪を全て後ろへ撫でつけて、細みの眼鏡をかけている。
びゅう、と一陣の風が吹く。
これが志希と、後に彼女のプロデューサーとなる『鬼』とのファーストコンタクト。
物語の、始まりだ。
いかにして匂いの元を引き留めるか。
志希のピンクの脳味噌はその解答を作成するためフル回転していた。
そして、出した答えは。
「………にゃはは☆ 流石の志希ちゃんも年貢の納め時かなー? うう17年、短い人生だったな~。 およよ……」
泣き落としと、こじきまがいの憐れみ誘い。
真夜中、ストリート、汚れた美少女。
どう考えても不審者だったが、疲れた志希はそこまで思い至らなかった。
「………」
ここで、鬼、意外にスルー。
鬼は道端でボロ雑巾のように倒れている少女に目もくれず通りすぎる。
ーーーつもりだったのだが、志希はガバッと飛び込んで、ズボンの裾を掴んだ。
「って、ちょいちょいちょーい! お兄~さ~ん。 うら若き乙女が倒れてるんだけど? 心牽かれない? そのまま帰ったらちくちく罪悪感に苛まれて、志希ちゃんの夢を見ちゃうよー?」
「知りませんね。 急いでいるもので。遅れれば悪夢の創造者にどやされるものでね。 ………おや? 貴女日本人ですね?」
引きずりながら歩き去ろうとした鬼が足を止める。
なんとか大根のすり下ろしを回避した志希は、勢いよく迫る。
「! そそ! 志希ちゃん大和撫子なのだ♪ キミもジャパニーズでしょでしょ? 同郷のよしみでヘルプミ~」
「生憎、愛国心は持ち合わせていないものでしてね。それに」
ぐい、と志希の手を掴み簡単に目線まで引き上げて男は告げる。
眼鏡の奥に光る瞳は、焼却炉で焼かれるエロ本のように赤々としていながらも、どこか煤けていた。
「人に助けを乞うな。 この世は弱肉強食。 貴女がどんな状況にいるのかは私は全く知らないが、恨むなら自分の弱き運命を、恨むんですね。 それでは。 待ち人が待ちすぎて老婆にならないうちに行かなければいきませんので」
ぽいっと、鬼が志希を捨てる。
だが瞬間、爆発したかのような早さで志希は鬼のうなじに顔を埋めていた!
「お、ぉぉぉぉぉおおおお?! ……ナニ、これ!」
あまりにも唐突すぎて、鬼は引き剥がすのを忘れる。
志希は17歳の娘がけっしてしてはいけない、しまりのないアへ顔で楽園を味わい尽くす。
「ハスハスハスハスハスハス! ふぉぉぉぉおおおおお! やっばい! 何がヤバイってマジやばい! あ、言語野に機能不全確認! メーデーメーデ! 全員退避~! 志希ちゃん、急速潜行シマース!」
鼻水、涎、涙。
およそ顔から放出可能な液体を全て垂れ流し、鬼の上着を志希汁でべちょべちょにしていく。
「な、何ですかこの女!? 最近の痴女は進む方向を間違えたのですか?!」
「ハアァァァァァン♪ 何て言うか、モバマスに対するデレステ! 64に対する大乱闘! 調和って言うのかにゃあ~♪ ココロトリップ、エクスタシー♪ カラダの疲れなんてサヨナラばははーい♪ もっと! もっと嗅がせて!」
「は、はなれなさい……この……!
って力強いですね貴女っ?! 」
ぐぐぐぐ、と顔面にアイアンクローをぶちこみながら離そうとするも、土下座して性交をねだる童貞のごとき必死さで、志希はしがみついて離れない。
「先っちょだけ! 先っちょだけだからぁぁぁああ!」
「い、み、がわかりません……!」
「お願いしますぅぅぅ! 何でもしますからぁぁぁああ!」
「自分の体は、大事にしなさい……!」
一進一退の攻防。
永遠に続くかと思われた天下一無意味会は、不意に緩んだ志希の力によって中断された。
否、近づいてくる黒のセダンこそか。
「今度はいったいーーー」
突然、視界が明滅する。
暗がりでいきなり光を直視したときの、眼球反応のせいだ。
ライトの原因は、車を降りるとゆっくり二人に近づいてきた。
「ーーーaーha。 見つけマシたよぉ。 お嬢さん。 んー? おやまあ、シラナイ顔も一緒デスねぇ? フレンドデスかぁ?」
夜だというのに、全身黒のスーツにハットとサングラス。
どう見てもカタギではない、よくてスーツフェチの変態だ。
こんな変態がFBIというのだから、世も末ならぬ、末も世だ。
「………志希ちゃん大ピーンチ。 かも」
「helloへロー、お兄さん。 アナタ、そこのお嬢さんとお知り合いデスかぁ?」
「……すれ違う野良猫を知り合いというのなら、そうですね」
「HAHAHA! オモシロイ、実にオモシロイジョークですよ、お兄さん!」
気安く肩を、ばんばんと叩いてスーツフェチは笑う。
鬼はしかめっ面で、されるがままだ。
「オヤ? あなたジャップですね? フーン、アジアの黄色いお猿さんがアメーリカに、なんのようですカ?」
「別に。 仕事ですよ。 貴方と同じくね」
スーツフェチと鬼の視線が交錯する。
一瞬、スーツフェチの瞳にほの暗い火が灯るが、たった一瞬。
すぐに、満面の笑みに変わった。
「そうデスか~。 ではソチラのイチノセさんは頂いても、構いませんネ?」
「……お好きにどう……。 今、なんと?」
「what's? イチノセさんを頂くと言ったのデスが?」
鬼が、志希を一瞥する。
未だに顔中、液体だらけの志希は、ハテナ顔。
見つめ続けていると、ナニを勘違いしたのか、やんやんと、カラダをくねくねさせる。
「………あなた、名はなんと?」
「Aha? ワタシですか? ワタシはーーー」
「貴方じゃありませんよ、変態スーツ。 貴女、名はなんと?」
「へ、へんた?! ナンだとコの黄色いサルがーー!」
掴みかかる変態スーツ。
だが、その手は鬼へと届く前に、あらぬ方向へと折れていた。
知覚する間もなく、一瞬で。
「ッッッッッ?!」
「早く。 名は?」
「し、志希、一ノ瀬志希……です」
痛みに喚く変態を横目に、鬼は眼鏡を正す。
その表情は、朝っぱらから両親のキスを見せられるような、苦い顔。
「………見捨ててもいいですが、そうするとあの悪魔になんと言われるか……護衛料が発生しないまでありますよ、これは……」
ぶつぶつと何事かを呟く鬼。
腹をくくったのか、志希へ向き直り、宣言する。
「喜びなさい、一ノ瀬志希。 貴女を守ってあげましょう。 この世は所詮、弱肉強食。 今夜私に出会った、自身の運命の強さを誇りなさい」
唐突な言葉。
運命なんて非科学的なことを志希は信じない。
しかし、今しがた余すことなく匂いを嗅いで、何故だか。
「いい匂いは、いいヒトだから……ふつつかものですがお願いします?」
「こちらこそ、ヘンタイさん」
へたりこむ志希へ手を伸ばし、その顔をハンカチで拭いてやる。
ともすれば姫を助ける騎士のような。
二人だけしかいないような、そんな情景。
「ジャアアァァァァッッップ!」
腕を折られた変態が、口から泡を吹かせながら吠える。
その背後にはいつの間にか集まった、大勢の変態スーツ達。
「許さナイ許さナイ許さナイ許さナイユルサナイーーー! このワタシに黄色いサルがぁぁァア!」
「近所迷惑ですよ、変態さん」
そちらに目もくれず、志希の顔を綺麗綺麗。
高給ソープで玉皺のひとつひとつを洗うように、汚れをとる。
「つけあがるんじゃナイ! ジャップなぞ、狩人たるワレワレ、アメリカの獲物でシカないんだよぉぉぉおおお!」
「………獲物?」
拭き終わり、磨きたての金の玉のように輝く志希をおいて、鬼が変態集団に向かう。
「たかが30人前後が寄り集まって、武器を私に向けただけで、殺る側にまわったつもりですか……?」
自身に向く、多数の銃口に対し、なんの憂いも躊躇もなく。
鬼が進む。
志希はそのとき、確かに見た。
鬼の背中に浮かび上がる、紛れもない『鬼』の顔をーーーーー
「誰であろうと、私と向かい合った時点で『殺られる側』で」
両手を高く構える奇妙な備えを見せながら、鬼は言った。
「私が『ヤる側』です……誰であろうともーーー」
>>44 パプリカ、好き
>>45 その発想はなかったです……。
三角関係、ありですね。
基本アイドルそれぞれに担当がいる形です。
どろどろ昼ドラは紳士ちょっと書けない。
ここまでです。
今度は前より鬼長くなりそうです。
よければお付き合いください。
乙
なかなかの文章力と紳士力、これは期待できる新人
変態スーツがカラカルっぽいと思ったらオーガなPが伽羅だった
何を言ってるか分からねーと思うが(略
紳士淑女多すぎて、レストラン恐ろしすぎなんですが……
東京は怖いところなのね…
>>74 『知』の次は『暴』だからね。ちかたないね。
(ネタが)高まる……溢れるぅぅぅ
ーーーー高給ホテル最上階。
薄汚れたストリートとはかけ離れた、スイートルームのその一室に、志希はいた。
傍らには、鬼。
そして正面に座るのは、蛍光色のエメラルドグリーンに身を着飾った女。
「はじめまして、志希ちゃん。 千川ちひろです」
「はひゅめ、はぐっはひふぇ、んぐっぐっぐっぐ……! はふはふ、もぐもぐ! ……ぱふぁ~」
顔面全てで飯食らうシキー。
一心不乱にテーブルに広げられた莫大な料理を食べまくる。
品の欠片もなく、しゃぶりつくし、むさぼり食う姿を、鬼は嫌そうに見つめ、対してちひろは笑顔で眺めていた。
「美味しいですか?」
「控え目に言って、サイコーかもかも! ずっと研究室に籠りきりプラスばたんきゅー寸前だったからねー。 涎ずびっ! てカンジ~♪」
ニコニコと、表情を崩さずちひろは笑う。
鬼は知っていた。
この笑顔の攻撃性。
これから繰り出される舌戦を。
「それは良かったです♪ 志希ちゃんが喜んでくれて私、嬉しいですよ。 わざわざ、真夜中にホテルシェフ達を買収して作らせた甲斐がありました♪」
まず、右フック。
お前の食べている飯は、タダじゃあないぞ。
ドドドド、とオノマトペがちひろの背後に寄り添う。
「へぇーそれはありがたいねー♪ ……ところで、ちひろさんはどうしてあたしの名前を知ってるのかにゃ? 名乗ってナイ、はずだけど~♪」
「あら。 さっき彼に電話で聞いたんですよ? 変なこと言うのね、志希ちゃん」
「フーン。 ならあたしの勘違いかナー? お兄さんが電話してるとき、あたしの名前は一回も呼ばなかったハズなんだけど……?」
返しの、左ジャブ。
志希の背後にも出現する、ゴゴゴゴってるオノマトペ。
電話をかける鬼の体にしがみつき、アイアンクローもなんのその、匂いを嗅いで嗅いで嗅ぎまくったことが生きた。
恥の勝利。
ちひろが、ちろり、と鬼を見やるが、鬼は素知らぬ顔で目を逸らす。
「へぇ……随分と短い間に仲良くなったのね……♪ ーーーだからと言って、ご飯が天から降ってくるワケじゃないですけど」
「そだね~。 お金は大事だよー。 ほぃっ」
スパイ映画よろしく、胸の谷間から取り出したるはブラックカード。
限度額なし、天井知らずの、悪魔のカードだ。
続けて放った右ストレートはちひろの笑顔にヒビをいれる。
「追っかけられてたから使えなかったけどー使ってもらう分にはヨユー。 たぁんまりあるから、お好きにどうぞ、ちひろさん?」
「あらあら……。 ……小手先の牽制はやめましょうか。 志希ちゃん」
「無理。 あのクスリは誰にも渡さない」
緩みなど一切ない、覚悟を決めたサイエンティストの素顔。
そもそも試合が成り立たない。
ボクシングは二人が同じステージに立つ勝負だ。
「拷問でもスル? 死んでも喋んないけどね」
「…………」
スーパーマンすら産み出せる、画期的で、悪魔めいた発明品。
志希は自由な研究者だ。
好奇心をそのままに、突き進み、何もかもをかき混ぜる。
だが、研究者としての『誇り』は、だから誰より強いのだ。
「………」
こんな表情〈カオ〉もできるのか、と先刻の絶頂祭りを思い出しながら鬼は感心していた。
正にお手上げ、悪魔にも成せないことはあるものだ、と内心笑いながら鬼は他人事を決め込んでいた。
ここまでは。
「志希ちゃん」
「なに? 例えどんな条件を出されたってーーー」
「彼に四六時中何してもいいし、どんな実験も自由。 貴女の安全を保証させる護衛役、いえ召し使いにさせてあげるけど、だめかしら?」
「その話、乗ったあぁぁぁあああ!」
サイエンティスト、一ノ瀬志希。
しかし欲望に忠実な、マッドマックスであった。
「っておいいぃぃぃぃぃ?! 貴女ナニ言ってくれちゃってるんですかぁ?!」
観客席にいたらいきなり、舞台に立っていた。
ダブルクロスを決めたら、トリプルクロスをもらってたような。
予想外の一撃に、鬼の顎は砕け、あいた口が塞がらない。
「貴女は! いつも! 私を弄んでぇぇええ!?」
「獅子は子を千尋の谷に突き落とすって言うでしょう? この場合はサウザンドリバーかしら?」
「うるさいですよぉぉぉぉおおお! って、何もう既に私を嗅いでるんてすか、このアマ?! 犯しますよ?!」
はすはす神拳百連撃が炸裂しつつ、ちひろは志希に手を伸ばす。
尊い犠牲を伴った、悪魔の契約だ。
「クスリの製法はアタシの研究室。 passはshikishikinyannnyannangelringだから♪ 入力ミスすると爆発するから気を付けてね~」
「はい、わかりました。 それでは契約成立ということでーーー」
握手が交わされるーーーその時、突如ばたり、と志希が倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁーー。 何ですか、ついに昇天したんでしょうか?」
「いえ、これは疲労、ですね。 ほら、この寝顔」
余程、張りつめていたのだろう。
温かい食事、久し振りの安全、そしていい匂い。
志希は赤ん坊のように、無邪気な寝顔を晒しながら、眠っていた。
「こうしてると、ただの17歳の女の子ですね……ヘンタイにはとても見えない」
「あら? 気に入っちゃいました?」
「…………悪い冗談ですよ」
くすくす、と笑いながらちひろは出掛ける準備をし始める。
「もう行くのですか? いくらなんでも夜が深すぎますよ」
「FBIも動いてますし、早いにこしたことはないんですーーーよっと。 心配してくれるんですか?」
「……何を馬鹿な」
「うふふ♪ 大丈夫ですよ。 頼りになる『鬼』を新しく雇いますから♪」
「ーーーそれってまさかーーー」
がちゃり、と部屋のドアを開けて、ちひろは鬼に振り返る。
悪戯っぽい笑みを、たたえながら。
「あと、志希ちゃんとは相部屋ですよ♪ そのままだと布団カバーが汚れて、代金が発生するので、お風呂にもいれてあげてくださいね~♪」
「は? え、ちょ、ま」
「それでは、お邪魔虫は退散退散♪ ぴゅ~♪」
無情にも扉は閉まり、部屋には男と女が二人。
しかも、遂行難度SSクラスの爆弾の置き土産つき。
「本当に……悪い……冗談です……」
がっくりと項垂れる鬼と対照的に、彼の体を抱き締めて、眠り姫は幸せそうに微笑むのでした。
鬼のーーー明日はーーーどぉっちだーーー
ここまで。
電車時間長いんだから溜まっても仕方ないね。
スッキリしたので二次面行ってきます。
またなかなかすごい作品が……
いい世界観だ
乙
落 ち ま し た
ファッキン朝○
紳士は紳士さ売る職につきます。
電車で溜まってるので出します。
しばらく紳士度高め
どうしてこうなった。
何度自問してみても、答えはでない。
思えば自分の人生は過酷と艱難の連続であった。
生まれてすぐ、親に捨てられた。
理由は知らない。
ただ『タイミング』が悪かったのだろう。
『運が悪かった』それだけだ。
それから男に拾われた。
それがさらに『不運』だった。
男は殺し屋のような、闘いを生業とする戦闘狂で、ペットを飼うような気軽さで彼を拾ったのだ。
何度死線を越えたかわからない。
彼は生きるために、強さを身に付ける他なかったのだ。
そうして日々が過ぎていき、男がある日、より高みを目指すと言って、とある組織へ消えた頃。
彼は弱肉強食の理と、男の口癖を刻んでいた。
『誰であろうと、俺が〈ヤる側〉だーーー』
自身の運命に立ち向かう、弱さの否定を糧に彼は、『鬼』となったのだ。
『痛み』も『温もり』も捨てて、強くなったはずなのに。
「どうしてこうなった………」
場所は、シャワールーム。
存在するは、鬼と志希。
うら若き乙女の柔肌をごしごしあわあわきれいきれい、するという難易度超Sの任務を受けて、鬼は絶望に瀕していた。
「………」
安らかに眠る志希を見る。
長く美しい睫、ぷっくらと膨らんだ唇、陶器のように透明な肌、たわわに実った二つの果実、おれそうなほど細い腰、主張するヒップーーー
見れば見るほど美しい。
「く、くぅ………駄目です、直視しては目に毒……! さ、さっさと、終わらせましょう」
鉄の意思と鋼の強さを伴って、鬼は心を無にする。
だが、任務を達成するには乗り越えるべきタスクが多すぎる。
鉄が凹むか、鋼が曲がるか、どちらが先か。
闘いのゴングが、鳴る。
Mission① 『脱がせ!』
体を洗うためには脱がねばならぬ。
脱がねば洗えぬ、不可逆反応。
人の身を獣と分ける分岐点、その除外。
「お、落ち着きなさい私、大丈夫大丈夫。 相手はたかが17歳のヘンタイではないですか……た、多少顔が整ってスタイルがいいからといって興奮するわけが……」
言い聞かせるように唱えながら、鬼は志希の衣服に手をかける。
眠る少女の衣服をシャワー室で剥ぎ取るという、とんでもなくマニアックでコアなシチュエーション。
「ハァーハァーハァー……」
息を荒立てる、客観的に見てヘンタイなオニーさん。
だがそれでも鬼の鬼の手がぬーべーせぬよう、最後の一線は守っていた。
白衣、カッターシャツ、スカート。
ここまでは震える手を抑えつつ、成し遂げた。
(こ、ここまでとは………!)
小さいとは口か裂けても言えない、そのEighty Threeのバスト。
だが、その山は、自身を覆い隠す靄霧を払われたことで、巨大さを増していた。
登頂する直前、あまりの緊張に山が実際より大きく感じるアレだ。
(そして! ナニよりも……!)
たかが一枚の布が、これほどまでに♂心をシゴクとは。
薄紫のブラジャーを押し上げる富士山に加え、お揃いのショーツ………。
可愛らしいリボンが添えられた、志希着は、驚くほどの破壊力を持っていた。
(む、無心になれ私……!)
屹立せぬようおのが分身を握り締める。
下半身への血流の流れを絶ったことで、脳に新鮮な酸素が周り、思考がクリアになっていく。
(………ふぅー。 やるなら一瞬! ここに私の培った技術全てを費やす!)
目を逸らさず、ガン見しながら、志希のブラとショーツに手をかける。
アウトの国境をジェット機で爆速領海侵犯しつつ、鬼は命を燃やした。
(…………。 憤ッッッ!)
激流を制するは静水ーーーー
流れ落ちる水のような自然さで、鬼は脱衣を成功させた。
長く持っていては体に毒。
剥ぎ取る勢いそのままに放り投げた二つの凶器は、天井に張り付き、性なるオブジェと化した。
Mission①Success!
(ふぅーーーー………ん?)
鬼の目の前に現れた、第2の任務の前に、まず、皆さんに知ってもらいたいことがある。
こんな話がある。
金髪緑眼のハーフフランスがオークションを受けに来たーーー
そのときの審査員は、紳士だった。
当時、応募者は200人を超えーーーー
後の経済効果として700億円を越える粒揃いだったというーーー
当時の打ち上げ映像に紳士の音声が入っているーーーー
『彼女を確認した瞬間、射精していたんだよ、わたしは!』
当所はタチの悪いジョークとして一笑に付された、酔いどれの言葉だったがーーーー
彼が紳士会〈シンデレラプロジェクト~如何にしてアイドルと同棲するか~〉を立ち上げたとき、彼の言葉は異常な信憑性を帯びる。
担当になったんだよーーー
採用理由はあろうことか私情ーーー
フレデリカ採用から14日目のことだった
事務所の誰もが納得した
8年連れ添った事務員・ちひろも呆れてものが言えなかった
その後、交遊関係を元に割り出された驚愕の真実が事務所を駆け巡ることとなる
フレデリカを愛してやまなかった
この健康な紳士
フレデリカプロデューサーの彼女いない歴ーーーー
実に28年!!
ーーーーところでこの話は一切、現状とは関係がないーーー
元紳士の恥部を晒しただけだーーー
が、お気付きの方もいるだろう。
そう、チェリーにとって、美女とは存在が性の対象。
ならば、後に世界を席巻するSSアイドル。
一ノ瀬志希の一糸まとわぬ裸体は、いったいどれだけの童貞を殺すだろう?
(………お、おお)
鬼の人生にはこれまで息をつく間もなかった。
生きるか死ぬか、弱肉強食の世界で生きてきたのだ。
だからこそ、これもまた『タイミング』が悪かったのだろう。
『運が悪かった』のだろう。
(おぉぉぉぉぉぉおおお?!)
苦しくも鬼はーーー童貞だった。
Mission②『手を出さずに洗え』
ここまで。
まだまだ長く垂れ流しますが、どうぞお突き合いください。
乙乙
ブッ飛んでて好き
うーんこのアホ
乙
グッジョブ朝○
>>106 なんでや! 紳士入れてくれてもええやろ!
出していきます。
こい
ーーーありえないなんてことは
ありえないーーー
洗うとは何か。
その起源は古代メソポタミアにまで遡る。
風呂に入り清める。
かつてそれは、1日の汚れを洗い流す物質的な意味と、心の疲れを溶かす精神的な意味があった。
つまりは、『禊』。
そこに他の念が混ざることはなく、神聖さすら宿している。
洗うとは、風呂とは、『聖なる所作』なのだーーーーーだから決してHではない。
ーーーーなどと、心の中で世迷い言を繰り返す鬼の海綿体は血液の凝集を禁じ得ない。
それもそのはず、童貞には志希のぴんと立つ、二つのピタゴラスイッチに興奮を抑えきれないのだ。
(わ、私としたことが、ええぃ、静まれ……! 静まれ……馬鹿めが……!)
鬼の握撃にも一切動じぬ、鋼鉄のなまら棒。
ロリータコンプレックスを物的に証明している。
もはや一瞬の猶予もない。
いつなんどき、『今日から一番逞しい~のだ~』するかわからない。
(できるだけ素早く! そして無駄なく隅々をーーー!)
取り出したるは、ふわふわタオル。
赤ちゃんのもち肌のごとき肌触りを持つ、この場に相応しき神器。
(ユクゾッ!)
静かなる掛け声と共に、鬼は志希の体を洗っていく。
「これはちひろの裸ちひろの裸ちにろの裸ちひろの裸……」
独り言を呟きながら女の子の体を拭いていくヘンタイオトナ。
逮捕一直線待ったなしの姿を晒しながらも、鬼は一心不乱に攻めていく。
手、脇、うなじ、尻、足。
直視しないように、できるだけ柔らかな感覚が手につかぬように。
ちひろの裸を想像して萎えと屹立を繰り返しながら、鬼は順調にことを運んでいった。
そしてーーーー山場を迎えた。
(残るはこの、コスモ〈宇宙〉とカオス〈混沌〉ーーー)
摘ままねば洗うことのできぬ二大乳頭と、山奥の秘境を求めるがごとく、草花を掻き分け探索せねば洗いきれぬ秘所。
ここを乗りきらなければ、任務達成とは言えないーーー
鬼真面目な性格が、破滅的な思考に拍車をかけていだ。
(なぜ私がこんな責め苦を………くぅぅ……)
うらやまけしからん状況だが、清潔、清廉、清い倫理観を持つ鬼は涙を流し苦しんでいる。
その葛藤は彼の肥大と収縮を繰り返すデモニオからも見てとれた。
(けれど、私は逃げません……! 所詮この世は弱肉強食……私が常に『ヤる側』です……! 誰であろうとも!)
ぶっちゃけ正直なところ後は髪の毛を洗えば、シーツを汚さないという目的は達成されるのだが、童貞力69万の鬼はそこまで頭が回らない。
そして、登破することを、決めた。
(ーーーうすピンク色で、小さく存在を主張する、蕾が二つ)
先端へと手を伸ばす。
陥没ニッポォならば既に詰んでいたが、神も多少の慈悲は持ち合わせていたようだ。
(こ、この蕾を……ええぃ、ままよっ!)
勢いに任せて擦りあげる。
手に残るーーー確かな弾力。
(なんですかこれは……グミのように柔らかかく、ゴムのように張りがある……こ、この世にこんな物体がーーー)
あまりの衝撃にトリップしそうになる鬼。
擦るだけであったはずの両手はいつしか、摘まみーー引っ張りーー弾きーーねじりーー離す。
およそ聖なる所作とはかけはなれた動作。
鬼の手をぬーべーさせるピタゴラスイッチ。
(ま、まずい……! は、離さねば……! しかし、手に吸い付いて離れなーーー)
溺れそうになる鬼。
だが、『聖』を謀った神罰が、不意に訪れた。
「………ん、んぅ……はぁ……」
「~~~~~ッッッ!?」
ほんの少し志希から漏れたその声は、沸騰した鬼の脳みそを一気に冷ます。
眠りながらも、快楽の刺激が彼女に覚醒を促しているのだ。
(ば、馬鹿か私はッッッ! 何故起きないなどと盲信を……!)
Cautionーcautionーcautionーcaution
鬼の頭で鳴り響く警戒音。
New mission arrival!
緊急Mission発生
『志希を起こすな』
もはや一刻の猶予もない。
山からは既に下山し、残す大きな難関は秘境探検。
(髪は目を瞑りながらでも洗えます……ですがココだけは……。 ーーーはっーーーこ、これはーーー)
それは、まさに全てを受けとめる母なる海。
エーゲ海の美しさにも例えられる、さざ波ひとつ、海藻一つ浮かぬまっさらな海岸線。
そしてそこには、多くの場合、景観を壊すはずの生モノが違和感なく備えついていた。
いわば、オマーン国際空港。
いわば、マリアナ海溝。
(ーーーー美しい)
ぴったりと閉じられた姿は、恥じ入るビーナスのような淑やかさと、蝶を誘う甘露を併せ持っていた。
(なんなんですかーーーこの胸の想いはーーー)
鬼の心に芽生え始めた『ナニ』か。
それは今まで抱いていた17歳への劣情とは全く異なる、純粋な。
ちくり、ちくり、と胸を挿す感情〈モノ〉。
(こんな想いははじめてです……まるで私じゃない私になるようなーーー)
鬼が惑う。
新たな色の目覚めに。
それはけして睡眠姦に目覚めたわけではなく。
(まさか、これが『痛み』なのですか……)
人はあまりに美しいモノを見たとき、言葉を失う。
今、それと同じように、鬼は志希の閉じた貝を見つめ、股間の固さを失った。
胸を挿す痛みの起源は、此れほどまでに完成された美に、情けなくも欲情していたという事実。
鬼はヘンタイプレイによって、『痛み』を思い出したのだ。
「もはや……迷いはない……私の行動と心に一点の曇りなし。 すべてが正義だーーー」
心を締め付ける心地よい痛みと共に、鬼は貝を開いていく。
ーーーーくぱぁ。
中には、真珠より尚も価値のある神秘。
女体の妙が、広がっていた。
(心は落ち着いている。 傲りはない。 私は今、使命を遂行しているのだ)
優しく、ガラス細工を扱うように、繊細に洗っていく。
数日間風呂に入れず、カズノコに溜まったカスを、丁寧にほぐし、外す。
指についたそれを鼻に近づけてひと嗅ぎすれば、瞬間、脳に花畑。
(ここは、天国……?)
つん、としたチンチョウ花に似た香りが、甘さにハーモニーを生み出している。
頬を伝う温かいモノ。
鬼の目にも、涙。
(ならばこれは)
栗の実が生っている。
堕ちてしまわぬよう、繊細に優しく擦りあげる。
「ん……あ、ふぁ……くぅ」
(………)
志希の声に艶っぽさが混じる。
だが今の鬼にとっては、心を掻き乱す要因にはなり得ない。
ぴくっぴくっ、と微細な呻きを志希の体があげている。
(あとはこの奥、ですか)
栗狩りが終わり、鬼が挑むのは潜水。
海溝のその奥。
つぷぅーーーと指が沈む。
「なんと暖かい………」
女性の体は体温が高い。
それは他を安心させるための、『母』としての素質。
志希は十二分にその素質を満たし、性なるギフテッドであることも示していた。
知と性、合わせて『知性』。
天は乙女に、二物を与えたのだ。
「ん……? この指先に当たるものは………?」
かりかりっと、指で壁を掃除する中で、唐突に触れたもの。
「これは、まさか」
その通り。
聖母マリアは、『其』を失うことなくイエス・キリストを懐胎したという。
今度こそ鬼は声をあげて泣いた。
童貞が初物に喜ぶ姿そのままに、しかし心は遥か高みに。
ーーーあり得ないなんてことは、あり得ないーーー
「守ろう……いや、〈護ろう〉彼女を………私の命に代えてでも………」
「あっ………」
つぷん、と指を引き抜いて、先程の女神へ触れた感覚を忘れないよう慈しみつつ。
「こんな気持ちは初めてです、志希……ありがとう……」
仄かに芽生え始めた『温かな』ココロ。
聖女の頭を優しく撫でる。
ついぞ不可能と思われた任務は、いまや成された。
Mission②success!
Extra Mission success!
New record!
「後は髪を洗って、終わりですね。 ふふっ終わってみればなんと呆気ないーーー」
鬼は、その時、安心した。
勝ったと、確信し、安堵した。
耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて。
美しくフィニッシュ。
ただし、鬼の『敗北』で、だ
乗り越えたと、思った。
成し遂げたと、思った。
だが、鬼はどうしようもなく『運が悪かった』、いやある意味『運が良かった』というべきかーーー。
「………んぅ、はすはすぅ……」
鬼の匂いに誘われるように、力強くその体を掴み、暴力的な肢体を存分に密着させ、そして。
楽勝だと侮っていた、その艶やかな絹のような髪の毛で、鬼の股座を撫で付けたのだ。
「ッッッッッッ?!」
離れ小島での死闘を成し遂げ、皇帝になったギャンブラーのような爽やかさに包まれていた鬼の心が、一瞬で瓦解する。
女神?
聖なる所作?
馬鹿らしい。
ダイレクトな快楽は人のココロなど容易くぶち壊してしまうのだ。
「くぅ~~~~~!」
離れようとしても、志希のしがみつく力が強すぎて叶わない。
むしろ動くたびに髪の毛が擦れ、ますます怒張を固くする。
「こんな、こんなことがあるか……! 私は、護ると決めたのだ……! ここで果ててなど、たまるものか!」
違うものは溜まっているが。
既に小袋はマグマのごとく熱を持ち、噴火寸前。
デモニオに集中するから不味いのだ。
「噴破ッッッ!」
気をまぎらわすため、シャワールームの壁を叩く。
それが、さらに、不味かった。
「…………んぅ? むぇ……?」
快感と、地震にも似た揺れが志希の意識を覚醒へと誘った。
さらに、神の悪戯か。
いや、神の三点責めともいうべきか。
壁から伝わり、天井まで達した振動は、忘れられし『オブジェクト』を刺激した。
「し、志希、こ、これは……!」
「むー………」
二人の目が合う。
瞬間、鬼の頭にすっぽりと、舞い降りた性のオブジェクトがはまった。
ショーツは嘘のように頭に、ブラジャーはサングラスのように眼に。
三度繰り返される、『あり得ないなんてことは、あり得ない』。
考えうる限り最悪のタイミングで、最悪の連鎖。
(わ、私こそが、弱者だった、のかーーー)
弱肉強食の理に従い、この後に起こるだろう惨劇を予感し、鬼はブラに妨げられる視界から目を閉じた。
(ここは、墓場。『私』のな)
社会的抹殺を覚悟しつつ、女神の審判を彼は受け入れーーーーーー
ーーーーーー不意に、抱き締められた。
「えっ?」
「…………」
一ノ瀬志希。
彼女はこの人類の叡知(注:性的に)とも言うべき状況で、鬼の心を拾ったのだ。
割れそうな、砕け散って二度と戻れぬ不可逆反応へと至るを阻止する。
これこそ、無償の愛……!
種の頂点。
母の領域。
志希は、性なるギフテッドなどを遥かに越えた、聖なるギフテッドだったのだーーー
「く、うぁ……あぁぁぁぁぁああ!」
およそ今まで受けたことがなかった。
こんな熱。
こんな『温かさ』。
胸に生まれた種が、育まれ、芽をだし、蕾となり、花開く。
鬼は、今こそーーーーーー
『愛』を知った。
「護る……貴女を絶対に……護る……!」
志希の豊満な胸に顔を埋めつつ、鬼は想いの溢れるままに任せる。
一日のうちに、『痛み』と『温かさ』、その両方を手にいれ。
その大きさに涙しつつ。
一匹の鬼が、一人の人へと変わる、その第一歩が踏み出されようとしていた。
そして、志希は鬼が歓喜にうち震えるのと対照的に。
実のところ、ただいい匂いを引き寄せただけで、目覚めてすらいなかったし、全て鬼の一人相撲であったのだがーーーー
「にゅふふ……あったかぁい……」
幸せそうに、微笑んでいた。
ーーーMission complete!
Secret Mission success!
『True end が解放されました』
ここまで。
ほんと、いつも見てくださりアリガトゴザイマス
その視線が、最高の刺激となり、精なるエナジーです
ところでサービスシーンはこれまで。
しばらくシリアルが続く模様
ミルク用意しなきゃ
シリアル(久しぶりに見たその言葉回し…)
所々の嘘喰いネタに草
乙
ジャンプネタも多いな
しかも全体的に古い
>>1は結構いい歳か
鬼が志希に勝手に母性を感じ、神命をを賭して護る、と自己満足で誓った日から数日後。
ちひろがクスリを手にするまでの間、変態スーツから逃れるためアメリカを転々と移動。
そして二人は今、アメリカ西海岸、Los Angelesに来ていた。
「ーーーはむっ! もきゅもきゅ……んーふわふわのパンとジューシーなミートの化学反応っ。 So perfect♪」
ファイブガイズのベーコンチーズバーガーを両手に持ち、頬がリスのように膨らんでいる。
15種ものトッピング全てが乗ったそのブツは、どう見てもゲテモノだが、本人は幸せ満点。
「はふっ、んぐ、んぐ、はれ? ちゅるるるるる、キミは、もにゅ、もにゅ、食べ、ばくっばくっ、くちゅくちゅ、ごくんっ。 ない、げっふぅ~~~の?」
指をべったべたにして、胃の空気を放出。
礼儀作法の欠片もない姿に、清潔を心がける鬼は。
「いえ、あなたの食べる姿を見ているだけで胸が一杯ですよ」
にこにこ、と以前にはあるまじき笑顔で応えていた。
「ふぅーん? 視覚じゃ満腹中枢は満たされないと思うケド?」
「気分の問題なんですよ。 こういうのは。 生まれ変わったみたいな清々しさが、腹を満たしているんです」
「そーゆーのってよくワカンナーイ。 ココロは志希ちゃんの専門外だからにゃぁ~。 分析の余地、ありかも♪ んふふ~」
「そうですねぇ……私にもココロは、難しい、問題です……」
困ったような顔をつくる鬼。
優しさが垣間見えるその表情に、志希は面食らった。
謎のもやが、83の中に生まれる。
「わぉ。 ナニ、それ。 キミの体から今までにない匂いかも。 リオナール? ピラジン? 安らぎの香りっていうか~誘眠香?」
「何ですか人をお茶っぱみたいに。 私は私ですよ」
「むぅー………えいっ」
ぱっと、鬼の正面から飛び上がり、後ろへと、くるり、一回転して回る。
本来、背後など、無音で立たれれば殴るという動作が、本能レベルで刷り込まれている鬼。
たが、今は本能すらも、志希の抱擁で手にした『熱』が上回っていた。
「………? 何です?」
「……ぺろり」
「ハぁんっ?!」
突然、鬼の鎖骨を嘗める志希。
予想外すぎて変な声をあげるヘンタイオトナ。
周囲の目が二人に刺さりまくる。
「ちょっ、なにを……! あっ……はうっ……!」
志希の舌は、猫のようにざらついている。
その痛みとも呼べる超刺激を受ける童貞の感覚はいかばかりか。
「あむ、あむ、レロレロ、レラレラ、ちゅる、ちゅぅぅぅぅぅ
…………っぽん。
んーこの味は、オキシトシンと~エンドルフィン……幸せを感じている味だぜっ」
びくんびくん、と体を震わす鬼を尻目に志希は冷静に分析する。
味もみておくのが、志希クオリティ。
「何か、ぽんぽんの下辺りも暖かくなってきたカモ……。 もっとハスペロ……」
ちろ、と鬼を見る。
空イキで、無防備。
「……一ノ瀬軍曹、目標に突撃いたします! ぶたのようなひめいをあげろ、おらぁっ!」
「はぁ、はぁ、ちょ、志希、やめ、あ、あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
後の逆レの記念すべき第一回である。
ただし、ファイブガイズ店内なので初回にしては、衆人環視という高度すぎるプレイであった。
「Mom? Dad? What are they doing?」
「Ah....just........playing, don't watch them. Ok? our angel?」
「Hm~looks like your night playing,..hm」
「?!?!?!?!」
両親に手を引かれる娘が、いち早く心の二次性長を迎える被害を生み出す志希と鬼。
台風の目が、その家族の様子を乳首を舐めながら見ていた。
「んぅ~ちゅぽんっ。 ……なんか、昔を思い出しちゃうな~……」
「あ、あへ………うっ………ふぅ………」
「ん? なんかイカくさい? でもココロ牽かれるようなーーー」
志希の嗅覚が、生命の灯火を敏感に察知する。
慌てて、果てていた鬼が取り繕う。
「気のせいでしょう!」
「わっ?! 急に大声出さないでほしいにゃー。 びっくりして志希ちゃん印のココロフラスコ、落としちゃいそーだったよー。 ガラス製なんだから気を付けてよね、もー」
「こちらのハートは既に砕けてますがね……まったく」
やはり以前と違って怒らない。
鬼の変化に答えを見つけられないまま、志希は頭を1捻り2捻り。
匂いの追求を逃れるため、鬼は話題を逸らす。
「貴女に襲われたら、お腹が空きました……。 私もバーガー食べましょうかね」
「あっ! ならあたしも食べる~♪」
「まだ食べるんですか……」
食の権化に呆れつつ、内股ぎみで鬼は立ち上がる。
やはり人気店、カウンターは混んでいる。
何か話題でもと、鬼は欠片を拾ってみた。
「ーーーーところで、先程の昔を思い出す、とは? 家族連れなど珍しくもないでしょう」
「聞いてたんだ? んふふ♪ 気になる気になる? アタシの成分分析したいカンジ?」
「そうですね……… 貴女のことを、もっと。 知りたい」
またもや予想外。
目を、ぱちぱちくりくり、志希女史。
「ほぇ? ホンとどしちゃったのキミ? 夜中にテキトーに人体実験してた弊害? 志希ちゃんギルティのクリミナル?」
「何をやってるんです何を。 ……私は私ですよ。 酸いも甘いも経験した大人です」
同窓会で集まった時に、つい自分の職種をデカく言うあれだ。
とりあえず変質的なプレイの経験値は絶賛溜まり中ではあるが。
「わっかんないなー。 謎が謎を呼ぶ大迷宮。………でもわかんない感情も、楽しい? なんかキモチイイ、かも」
「私も、そうですね。 楽しい、かもしれません。 きもちいい、かは……わかりませんが」
不格好というか。
不馴れというか。
女性に対する態度など今まで意識したこともなかった鬼は、初々しく。
だけれど、それは実験に生きてきた志希にとっても鏡を見るようで。
「………いい匂いのヒトはやっぱり、いいヒトなのかな」
「え? なんです?」
「アタシさー。 あーゆー親子が羨ましいんだよねー」
唐突に、志希が、語りだす。
列はまだまだ、長く、カウンターは遠い。
「ギフテッドって知ってるよね? ちひろさんから色々聞いてると思うし」
「ええ、まぁ。 大学に飛び級で入れるくらい頭が良いとかなんとか……」
「日本じゃ、そんな認識だよね~。 けど、当事者のあたしから言うとさーーーー」
遅々として、列は進まない。
志希は鬼を見るでもなく、遠くの『何か』を見ながら言った。
「ーーーー『呪い』だよ」
ここまでっ。
〈結〉が先にできたが、道のりが遠い……。
どうぞ、よろしくお願いシーマン
乙
志希のシリアスは先駆者が凄すぎて難しいだろうけど頑張って
既に新路線を開拓 してしまっている のでセーフ
溜めて溜めて溜めて溜めて溜めて溜めて溜めてーーー
フィニッシュ。
それが最も美しい……。
やっと出来上がりました。
自分でも引くほど長くなりましたので、二回に分けて出します。
もう少しだけお付き合いください。
『あたしはきっと、白衣に包まれて産まれてきた』
これって、いいことだと思う?
赤ちゃんはみんなママの羊水にくるまれて、愛のゆりかごで育つんだ。
だけど、志希ちゃんをくるんでたのは、無機質な白い布。
ねぇねぇ!みんな!
世界中のみんな!
ギフテッドってみんなのことを言うんだよ!
最初で最愛のギフテッド!
家族の愛に比べたら、才能なんて。
だってだって。
愛を知覚できないなんて、ギフトどころかルーティング。
アタシが貰った贈り物は、代わり映えのしないくるくる廻るルーチンルート。
あたしに備わるでっかい楔は、そうして何もかもをアタシから奪っていくのでした。まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ギフテッド、天才、ジーニアス、サヴァン。 何でもいいけどつまりは、異常個体なんだよね。 一般ぴーぽーとは一線も二線も画す、三千世界の先の先の鴉ちゃん。 抜きんでた生き物は排他されるデスティニ~♪ ばうばうばうっ!」
手先で二匹の犬を作り、追いたてるジェスチャー。
「だけど別によかったんだよー。 あたしはあたしの道を行く。 他人なんてカンケーなーい♪」
片方の犬は極寒のふぐりのように、体震わせ、縮こまって、すくんでいる。
「それでさ、キミはどう思う?」
手遊びそのまま、鬼に向き直る。
志希に特別目立った変化はない。
だがその瞳の奧、僅かに灯る黒炎。
「どう、とは?」
「ニブいねーそれともアタシがコーフンしてるだけ? 疎外されるっていっても切っ掛けがあるでしょ? ………そだねー。 志希ちゃんひーんと。 神様から1つも2つもプレゼントを貰った女の子を、始めに『羨む』のは、誰でしょ~♪」
「…………」
始め、とは。
謎々とかそういう類いの問ではない。
もっとシンプルで、元素のような。
鬼は、考える。
「ちくたくちくたくちくたくちくたく♪」
急かすように、口ずさむ志希。
始め、とは。
それはココロを塞ぐのに十分な、ともすれば記憶を封印するだけの威力を持つトラウマ。
初カノにスカトロマニアという核弾頭が備わっていた。
そんなレベルでなくてはならない。
溜めて、出す(シティーハンター並感)
「………周りには敵ばかり。 自分を助ける友人などなく、孤独が体を、心を責める」
「ちくたくちくたくちくたくちくたく♪」
これは、鬼の人生でもある。
天涯孤独。
育ての親は、親とも呼べぬ。
ジャンケンで負けたら、三回勝負だとか、石が紙に負ける訳がない、とか言い出す子供大人だったから。
彼はまるきり一人の力で生きてきた。
「雨が降る夜、闇の中でよく思いました。 どうして自分がこんな目に。 誰のせいだ。 誰の」
弱肉強食の世界へ放り出したのは、誰だ。
「ちくたくちくたくちくたく、ちーん! はい、答えは?」
鬼と志希、二人にとって奇妙な共通点。
チェリーとヴァージン、偶然に偶然を重ねる、悲運だ。
「『親』、ですね」
「ぴんぽんぴんぽーん。 世界で唯一のあたしの味方は、最も近しい敵だったのでした~。 それにしてもよくわかったね? キミとアタシの共通項、発見しちゃったかにゃ?」
「ええ………どうやらお互いに『運が悪い』」
列が進む、ゆっくりと。
ぱちぱちぱちと、志希は手を叩いて笑う。
「キミのことも気になるけど、今は志希ちゃんのタ~ン♪ そう、『始め』。 『始め』はねーよかったんだ~」
分子式を軒並覚えて、化学反応を覚えて、生み出して、生意気に論文なんて書いたりして。
褒められた。嬉しかった。だからもっと頑張った。
幼く、勉強だけはできたお馬鹿さんは、その『歪み』に気づかなかった。
「近しい人は、違う職業の方がいい。
ホンと名言だよねー。 同じだと色々と、さ……」
弱肉強食の理は世の常だ。
どこの世界でも当たり前に存在し、競走を強いる。
男優の世界でも、出すのと振るのでは雲泥の差。
では、志希の世界は?
「アタシのダッドは、研究者だった。 優秀だよ? あたしが言うのもなんだけど。 志希ちゃんが賢すぎただけで。 でも」
鳶が鷹を生む。
悠々と大空を羽ばたいて、自身を追い抜く鷹を見上げて、鳶はどんな気持ちだったろう。
「あたし達、『研究者』は自分より優れたものが許せない。 真理を解き明かすのは己でなくてはならない。 業のカタマリ。 そんなこともわからなかったお嬢ちゃんは、もっともっともっとーーー貪欲に頭を撫でて欲しがったの」
そうして無自覚のまま、鷹は鳶を追い立てた。
歪みの極致、その『臨界』まで。
「欲張った結果は、だいばくはつ! ママは泣いて、ダッドは怒って、『志希』は頬をおさえて呆けてた」
そして、逃げるように大学へ。
そこでもまた、繰り返す。
ココロのわからぬ天才は、満ち足りぬを繰り返す。
実験することが、許され褒められる唯一の手段だと信じながら。
そうして、禁忌を創った。
「にゃはは。我ながらかわいいよねー。必死で。 この白衣も昔誕生日にダッドから貰ったのそのままなんだよ? 未練がましいというか、なんというかさー」
薄汚れた白衣の裾をつまんで、痴女が穿いてないを見せつけるときのポーズをする志希。
列は再び止まっている。
「………親の愛を受けたいと思うのは、当然の反応です。 卑下することじゃ、けしてない」
「そのせいで、こんな目にあってるって言うのに?」
志希は笑っている。
いつもの通り、捉えどころのない、自由な笑みで。
「黒服のヘンタイに追っかけられて、死ぬ思いして、そんで。 そんで」
細められた目の端から、つぅと伝う液体。
「どうしてキミに、ココロを許してるのかなぁ?」
「志希………」
多分、流れる雫にも気付いていない。
そんな余裕がない。
初めて挿入れた興奮で相手を気遣えないのと同じ。
「わかんない。わかんないんだよね。 どうして志希ちゃんはキミの匂いに惹かれるの? どうして志希ちゃんは見ず知らずのキミと一緒にいるの? どうして志希ちゃんはヘンタイスーツと違うって思ってるの? どうして『志希ちゃん』は………『志希』は………」
「…………」
上手い言葉が出てこない。
涙を流す淑女を抱き締める紳士もない。
ただ、棒のように立ちて。
鬼は、無力だった。
だが、しかし。
「どうして『志希』なの? なんで『志希』は『パパ』と『ママ』と一緒に暮らせないの? どうして? どうして? どうして? イヤだ……イヤだよ……撫でてよ……助けてよ……『パパ』、『ママ』……あたしの居場所を返してよ……」
幼児退行したような、今にも赤ちゃん言葉を発し再び周りからの視線が刺さりそうな、そんな状況。
自ずから発した言葉で、『志希』は『志希』を追い詰めていた。
「それは、貴女が……」
鬼はつい、なぜ自分でも云ってしまったのかわからない。
生理遅れを告げる恋人に真っ先に中絶を勧めるような、そんな愚を犯してしまった。
「弱い、からです」
「ーーーーえっ……?」
期待していた。
表情からありありとそれが読み取れる。
だが鬼の人生に、そんなモノはなかった。
そんな感情〈モノ〉抱く暇もなかった。
だから、彼は告げる。
EDを宣告するタケノコ医者のように残酷に。
「この世は所詮、弱肉強食。 強ければ生き、弱ければ死ぬ」
つらつらと、鬼は理を説いていく。
志希はうつむき、その色は見えない。
「他人に期待をするな、甘えるな。助けて『欲しい』、ですって?」
だが、鬼はその瞳を隠す眼鏡を払い、志希の顎を持ち上げて、真正面から見据えさせる。
黒炎とは違う、煤の落ちた、猛々しく真っ赤な焔。
「どうして助け『させる』じゃあないんです。 私は違う。 私を放り出した馬鹿親共に、私の価値を教え込む。 今もまさに、その経過です。 強く生きる、そのために」
手を離し、再び眼鏡をかける。
志希は幾ばくか呆然と、鬼の顔を見つめて。
「キミってホンとに優しく、ないかも………」
そうして痛々しく、笑ったのだ。
「志希、私は」
「いいよー別に♪ あたしから振った話だしねー。 あ、でも1つだけ言い忘れてたことがある、カモ」
とん、と鬼の胸を押して、背中を向ける。
頭だけ振り返り、志希は笑いながら言った。
様々な色〈シキ〉をごちゃ混ぜた、そんな顔で。
「志希ちゃん、失踪グセがあるんだよね~♪ だから」
「ばいばいお兄さん」
「ーーー志希っ!」
鬼が手を伸ばすより一瞬早く、志希は駆け出し、手が空を切った瞬間に、その姿は失せていた。
「あんのバカ娘……!」
いつも通りなら、反応することなどわけはなかった。
だが、『熱』に浮かされ、色をかき混ぜられたのは、彼も同じだったから。
「どうして一言、私に言わないんです……! たった一言を……!」
たかが数日。
なれど彼は、細い細い線ではあるが、確かに絆を感じ初めていたのに。
「弱い貴女に撒かれるほど、弱くはありませんよ、私はーーー!」
携帯を懐から取りだし、悪魔へ繋がる666を押しながら鬼はまた踏み出していった。
鬼の抱かぬココロというものを、抱え始めながら。
進みだした列に、そうして二人ともいなくなった。
「はっ、はっ、はぁーーーーふぅ」
無我夢中。
自慰天昇。
なりふり構わず走って走って、気付けば見知らぬ廃工場。
乱れた呼吸を整えながら、志希は壁に寄りかかる。
「にゃはは。 あたしったら弱すぎでしょ……。 熱で簡単に壊れちゃうなんて……弱い分子結合だにゃあ……」
わかってはいたことだ。
誰も言葉にしないだけで、自分自身、目を逸らして来ただけで。
「くーるくーるまーわるー。 れいじーれいじーにげたくてー。 ………本能くすぐられちゃったなぁ……あはっ。 クンクン、あたし、ひどい匂い……」
ずるずる、腰が落ちていく。
嫌な匂いを擦って削る、そんな滑稽な姿。
穴の空いた天井を見上げて、ぽつり、呟いた。
「…………お腹………空いたなぁ」
「安心してくだサイ。 時期に食べル必要も、なくなりマスからーーー」
突然変態スーツの声。
逃げなくちゃと思う間もなく、近づいてきた黒い塊から電流が飛び出してーーーーー
「ーーーーオヤスミなさい、二度と目覚メヌ悪夢ヘ」
志希の意識は、ぷつりと途切れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………今、なんと?」
信じられない言葉を聞いたかのように、鬼は立ちすくみ、その体は怒りに震えている。
例えるなら、髪の毛を『お前の頭、まるでスカトロプレイでひりだした太巻きみてぇだなぁ。 蝿でも飼うつもりか? あぁん?』と貶された青年ヤンキー。
けれど電話の主は悪びれず、続ける。
「だからですね、『志希ちゃんは放っておいていい』と言ったんです」
「理解、できませんね……貴女のことだ。 彼女がいなければ、クスリが本物かも確かめられない、と考えるはず。 みすみすリスクを背負うのですか……?」
詭弁だ。
ちひろにかかればクスリの中身を調べ、分析し、弄ることすら容易。
鬼の本音は別にある。
「あらら。 想像以上に仲良くなっちゃって……少し嫉妬しちゃいますね。 うふふ♪」
「御託はいいんです。 納得のいく、説明を」
携帯がめしめし、と悲鳴をあげる。
探しに行きたい今すぐに。
鬼の心は爆発寸前。
「志希ちゃんとの契約は、『私がクスリを手に入れる』ことと、『あなたが志希ちゃんの奴隷になる』こと」
若干、鬼の扱いが下降修正されているが、そこはご愛敬。
「そして、私はクスリを手に入れた。 まぁ、色々と仕込んでいたらすこし手間取りましたけど」
「だから、まだ志希の契約がーーー」
悪魔は、ひどく当たり前に答えた。
「失踪したんでしょう? なら、奴隷を捨てたのと同じことですよ。 契約は履行された。 もう、私があなたを、彼女に貸してあげる理由が、ない」
棒を擦ればミルクが出るのと同じように、それは至極当然のこと。
「私は……認め……ません」
「『あなた』は、『私』の、護衛でしょう。 聞き分けのない子供は、嫌いですよ?」
「ーーーーー」
鬼の顔が、ただの子供の顔になって。
ともすれば泣き出しそうなその表情で。
渇いた喉から絞り出して、言った。
「ーーー今更、母親面、するな」
「なんです? 泣きそうなんですか? 弱い子は、もっと。 嫌いですよ」
「………ましい」
「なんですか? はっきり言わないと伝わらないですよ」
鬼の人生、初めての駄々が、爆発した。
「喧しい! クソババア! 私は、志希を見つけ出す! 散々育児放棄してきたんだ! 一度や二度くらい、私のために動いたらどうです?!」
ちひろの電話が壊れてしまいそうなほどの大声。
拙い罵倒。 だが、ちひろは微笑んで。
鬼には感づかれないよう、声のトーンを落とし、答える。
「あらあら。 親になんて口聞くんですかね、この子は。 けれど、まぁ。 たしかに私にも非はあります。 だから手は貸しますよ。 勿論、タダじゃないですけど」
「何でもいい! さっさとしてください!」
すっすっす、と携帯を素早く操作して、情報を送る。
「志希ちゃんの食事に仕込んだ、GPSの情報です。 行くなら急いだ方がいいですよ? どうも変態さん達が先に見つけ………あら、もういないみたい」
会話先の失せてしまった携帯を閉じて、ポケットに仕舞う。
志希と鬼からそう遠くない、カフェの一角。
ちひろはアイスティーを飲みながら、独り言のように、呟く。
「感慨深いですねぇ……うふふ♪ 子供が千尋の谷から這い上がる。 少なくともこれくらいはしてくれないと、私と『あなた』の子は務まりませんもの。 ね?」
否、独り言ではない。
ちひろの相席。
その先にいる男。
「ーーーふんっ。 この俺を呼びつけ、何かと思えば、まさか『子守り』とはな……。 あまりに過ぎて、『飽き果てる』ことすら忘れるわ」
「あら。 まだまだこれからですよ? 息子の一人立ちなんですから、私達が最後まで見ていてあげないと♪」
「アハハハハハ! よく言ったものよ! 鬼か! 悪魔か! ちひろか! キサマの欲の深さには、俺ですら二の足を踏む!」
「こわいこわい世界の中で、息子に強く生きて欲しい。 母の愛は善く、深いんです♪」
「……まァ、いい。 折角アメリカくんだりまで来たのだ。 子供を『あやす』のもーーーー面白かろう……」
鬼と悪魔が並び立ち、息子の晴れ舞台へ、向かい始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーん、んぁ? はれ、ここどこ……? フランス人と日本のハーフの女の子と、敏感舌の女の子について性知識会議開いてたはずなのに……」
遠い未来を幻視しつつ、志希は寝ぼけ眼を擦ろうする。
ジャラリ。
動かぬ両手には鎖。
天井から吊り下げられた拘束具に、吊り下げられていた。
「HAHAHAHAHAーーお目覚めのようですね、イチノセさん。 ご機嫌はーーー」
「ぎにゃあああああ?! ヘンタイが! ヘンタイがいるぅぅぅぅ! イヤァ、志希ちゃんの貞操が大ピンチぃぃぃいいい!?」
「ーーーってナニを言ってるんですかこのコムスメは?! 」
格好をつけて暗闇から出てきたというのに、志希の罵声で全て台無しである。
相棒の、雑巾の絞り汁よりも下らないジョークに対して、おべっか言わねばならない下半身不随ジョッキーのような悲しさがあった。
「Shit……ほんとうにあの男といいアナタといい、これだからジャップは……」
「……何の用って、聞くまでもないよねー。 でも、あのクスリはキミ達の手にはーーー」
「クスリ? これのことですか?」
石膏が巻かれた変態スーツの手には、ブラウン色の液が詰まった栄養ドリンクに似たビン。
「なっ、なんで、それを!」
「HAHA! 貴女の研究室にあることはわかっていましたカラね。 蛍光色の女がクスリを手にしていた時は驚きましたがーーー」
見せびらかすように、志希の前にドリンクを突き付けて、変態は笑う。
「結局は、私達の手の中。アナタの努力は、ジャパンでいう、水の泡ってことですよ」
志希の顔には絶望。
ちひろさんがしくじったのかーーー
後悔だとか、悔恨だとか様々な感情が脳に渦巻く。
腹が鳴る。
エネルギーが足りない。
思考がまとまらない。
「Hm~~♪ いい、カオですねぇ~。 さて、ここらでだめ押しとイキましょうか?」
変態が不器用に指を左右に振り、クイズショーの司会を気取る。
「クスリを手に入れ、目的を果たした私達」
「………」
その通りだ。
既に志希を追う意味はない。
では、この状況は一体なんだ?
腹が、減った。
「しかし、私達はアナタを拘束しています。 その理由は、何でしょうカ?」
17歳に欲情する性的倒錯者の集まりがFBIーーーではないだろう。
志希には及びもつかない。
ニコニコと、心底楽しみながら変態スーツが志希を地獄へ突き落とす。
「そのワケが、彼です」
今度こそ、邪魔されることなく暗闇から、存分に格好をつけて演者が現れる。
彼は、かつて志希のココロに傷をつけ。
「ひさしぶり、志希」
そして、再び彼女に消えぬ痕をつけんとしていた。
「………ダッ………ド?」
場違いに、志希の腹が唸りをあげ続ける。
「そんなに驚くことかい、志希?」
「だ、だってダッドは……! あたし、ダッドに誉めて、欲しくて……それで!」
志希の表情が幼児のそれへ戻る。
認めて欲しい、撫でて欲しい。
彼女の目的が、黒幕じみた不敵さと、豚を見るような冷たい目で彼女を見ていた。
「相変わらず、腹立たしい」
「………っ!」
「お前がそんなだから、そんな有り様だから。 パパがこうなってしまったということが、わからないのかい?」
溝の底よりなおも濁り、吐き気を催す邪悪の詰まった父の双眸。
自身の狂気を娘の『罪』にすり替えて男は続ける。
「私は許せないんだよ。 私よりも優れた人間が。 ましてや、自分の種が創った写し見など、なおのこと。 だからね、志希」
そうして男は、簡単に。
志希と彼を繋ぐ『環』を、切り裂いた。
「お前を消してしまうことにした」
志希の唯一の思い出、誕生日に『パパ』から貰った〈白衣〉を、武骨なナイフで、ずたずたに。
引き裂き、踏みつけ、踏みにじり。
志希のココロを蹂躙する。
「あ、あぁぁあ! や、やめてよ、ダッド! や、やめて! お願いだから、『パパ』ぁぁぁぉあ!」
「はは。 いい声で鳴くじゃあないか。 天才も鳴き声は人と同じと見える。 だが、まだだ」
何の躊躇もなく、男は志希の服に刃を走らせる。
露となるその素肌。
世のアニマルビデオのどこを探しても、娘を拘束し、刃物で衣服を剥いでいくシーンなど存在しないだろう。
狂気すらも遠い、沙汰の外。
「ほう。 美しい。 神とやらは余程お前が好きなようだ。 ますます腹が立つよ」
「やめて………お願いパパ………許して………」
「ははは! 許す? 何を? 私は怒ってなどいないのだよ、志希」
「ほん、とに……?」
既に志希の心は限界。
男の言葉尻1つでさえも、今の彼女にとっては蜘蛛の糸に感じられた。
だか、勿論。
「私はただ、何の努力もなしに、産まれながらに才を持つ『ギフテッド』などというものが、この世に存在するのが許せないだけだ」
志希の瞳から光が消える。
なんてことはない。
自分が一番欲しかった者は、自分なんて見ていなかった。
ただただ、研究者たるを。
己が頂点であることを、彼の世界は欲していたのだ。
「さて、流石にこれ以上、自分の手で行うのは忍びない。 私もヒトの親の身だ」
「クックック。 面白いジョークです。 このまま蚊帳の外かと辟易していましタがーーー」
「…………」
変態スーツが、肌を晒す乙女に一瞥。
ぺろり、と舌舐めずりを一つ。
いきり立つ彼の者の股間は、17歳に欲情するがちでヘンタイオトナであることを示していた。
「存分に楽しめそうデス……両手がうまく動かないことが残念デスが、まあ一興と思いまショウ」
「こ、来ないで……!」
あまりにもエネルギーが足りないのか、鎖を引きちぎることができない。
気付けば、志希の周りには変態スーツの束。
無力な囚われのお姫様に、もはやなす術などなく。
であるならば、唯一できることは。
「HAHAHAHAHA! 震えなサイ、イチノセさん! この世はショセン弱肉強食! あなたはただの、アワレナ獲物なんですカラ!」
そうして、衣服を剥がれ、産まれたままの姿の志希に、悪辣どもの手が伸びーーーーー
ーーーー瞬間、廃工場の入り口が弾けとんだ。
「ーーーその通り。 この世は所詮、弱肉強食。 だからこそ」
スーツを正し、真っ赤な髪を後ろへ撫で付けて。
細眼鏡を指で上げるその男。
鬼が、助けを祈る姫様を、救いに来たのだった。
「私が常に“ヤる側”です……」
固定された扉を蹴破り、状況を把握。
頬を掻いて、何でもないように振る舞って鬼は口を開いた。
「何ですか、志希。 その格好」
「キミ、どうして……」
「さてね。たまたま寄った廃工場にたまたま貴方がいた、それだけですよ」
そんなわけもないだろうに。
小さく上下する肩に、常より速い呼吸。
何よりも速く駆けた鬼は、精一杯に格好つける。
「早く服を着ないと風邪引きますよ。 ほら、途中、たまたま。 偶然に。見つけたものです」
鬼の手には、まっさらな白衣。
床に落ちた、ばらばらに刻まれたぼろ切れとは対照的な。
新たな孵化を促す、『温かい』包。
「それと、訂正しておきます。 貴女は弱くなんてありませんでした。 だって」
変態スーツの一人が鬼へ飛び掛かる。
姿勢を崩さず、右足を軸に回転しながら避けて。
一閃。
降り下ろされた激鉄が変態の頭を踏みしめ、にじる。
「この私に、助けに『来させた』んですから。 だから、一言。 貴女の口から一言を」
『痛み』を貰った。
『温かさ』を貰った。
だからこそ彼は、バラバラになった志希のハートを一つ残らず掬い上げ、救うのだ。
変態スーツが叫び、指示を飛ばすが二人には聞こえない。
廃工場を舞台にして、演者が今は二人きり。
救いの『騎士』と囚われの『お姫様』。
ならば台詞は決まっている。
「あたしを『助けて』よ、お兄さんーーー」
「ーーー承知しました、お嬢さん」
勧善懲悪の至極つまらない、陳腐な劇が、大団円へ向けて、幕を下ろし始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーー勝ったと、お思いですか、お猿さん」
既に他の変態スーツは真のヘンタイを残し、鬼に食われた。
ヘンタイは両腕使えぬ。満身創痍。
万に一つも勝ちは、ない。
「質問に質問で返して恐縮にですが、ここから逆転できるとでも? 」
「勿論、何故なら私には、コレが、ある」
ヘンタイの手の中で揺れる液体。
悪魔の品が契約の時を待っている。
だが、鬼は冷静そのもの。
冷ややかな目で勝ち誇るヘンタイを眺めている。
「私なら、使いませんがね。 そんな怪しげなドリンク」
「畏れ、デスか? 無理もない、今からアナタは世紀の瞬間を見るコトニナルーーーー」
ヘンタイは、ビンの蓋を外し、一息に液体を飲み込んだ。
変化は、劇的だった。
「オ、ォォォォ、オオオオオオオオオオオオ!」
蠕動する筋肉。
石膏が碎け、折れていたはずの両腕が、丸太の如く膨らんでいく。
人間の域を超え、人外の化物へと。
「…………」
「HAHAHAHAHA! マーベラァスッ! すばらしい、力が溢れてくるようでスよ! お、おおお精力すらも……!」
爆発的に増加する体積の中でも、とりわけ、股間の膨張率が甚だしい。
17ー19ー29ー37ー69ー。
際限なく、肉は棒長していく。
「なんという高揚カンッッッ! 立てる! 立てるぞ! 私は今やこの世の弱肉強食の頂点にーーー!」
瞬間、股間から血が噴き出した
「エッ……………?」
ナニが起きたのか、ヘンタイはわからない。
ビュル、ビュル、ビュ、ビュー。
呆ける間にも命の放出は続いている。
「ひ、ヒイィィィィ!? ナニが、コレは!?」
「だから、言ったでしょう」
噴出する血精を万が一にも当たらぬよう避けながら、鬼は眼鏡を正す。
「……そもそも、あの女がクスリを手にした時点で、ヘマをするわけがないんです」
「な、ナンノはな………クァッ?!」
萎んでいく。
膨らんだ体の内、唯一、珍矛を残して。
最早立つことも出来ず、勃ったまま、ヘンタイは仰向けに崩れ落ちる。
「貴方には同情します。 はっきり言って、その死に様はこの世で最も下劣で、無様で、弱きに過ぎる」
びくんびくんと、震え続けるヘンタイの眼が狂い始める。
全てを射精に費やす体が、脳に極限の快楽を与え始めているのだ。
まさに死の絶頂。
彼は確かに、♂の器官という意味では、生物界の頂点に勃った。
「Ah、hu、ohohohohohOh、OHOHOHOHOHOH~~~~!」
そうして、一際根本が膨らんで、一際大きな命の煌めきを、天空へと放った。
「OHーーーーーYESッッッッッッ!」
天井を貫き、大空へと飛び散った真っ赤な生命の滴は、太陽に見守られながら、大きな大きな虹を描いたのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ナニが、起きた………?」
呆然と、鬼が娘へと近づいていくのを眺めるだけの研究者。
傍らには既に逝き絶えて、断続的にアメリカンドリームする故=ヘンタイ。
その口はだらしなく開き、突っ込まれるのを待つようだ。
「ば、バカな、あのクスリが本物かどうかなど、私が事前に調べているっ……い、一体ナニが?!」
「よっぽど、無能なんですねお父さん」
何もなかった空間に、突如現れる来訪者。
研究者は飛び退いて、異人へ振り向く。
「な、なんだ貴様はっ! どこから入った!? 」
「しがない事務員ですよ、っと。 まぁそんなことはどうでいいんです。 いやはや、滑稽でしたねお父さん♪」
ぱちぱちぱち、と手拍子で研究者を煽るちひろ。
その蛍光色の姿に、ヘンタイの報告を思い出した。
「き、貴様はまさか! クスリの在処を探っていたという、あの女か!」
「おめでとうございます。 その程度の脳味噌はお持ちみたいですね。 所詮は、そこまでですが」
「ーーーー私を馬鹿にするなっ!」
懐から、娘のココロを引き裂いた凶器を取りだし、ちひろに向けるーーー
ーーーが、その手には何も握られてはいなかった。
「ざくぅ♪」
代わりにちひろの手に収まった刃。
額に突き刺すおどけた演技で、研究者はへたりこんだ。
「情けないですね、くすくす。 そんなことだから子育て一つ満足にできもしないんですよ?」
「ーーーッッッッ! あ、悪魔めが! え、FBIは何をしている?! 何故突入してこない! さっさとこの女をつまみ出せぇ!」
「あら、悪魔だなんて、心外ですね。……ですけれど、子供の巣立ちを見守るのは、悪魔だって鬼だって同じなんですよ? その証拠にーーーホラ。 あの人って、意外に子煩悩なんですから……♪」
ーーーー廃工場、外。
大空高くに虹が輝き、底抜けに明るい真昼時。
破られた扉の外、優に100を超える黒スーツ達が今にも雪崩れ込まんとしていた。
その舞台に、男が一人。
灼熱のごとく赤き髪をそばだてて、同色の衣服に身を包む。
「ーーーーチッ、ちひろめ……こんな雑魚どもの当て馬にこの俺を使いおって……」
まだまだ増える黒のセダンから、同じく黒服達がぞろぞろと。
ロリータの黄金水に群がる少女愛者達のように、群れ集まる。
そして、全員の銃口が男へと向く。
「まぁいい……デキの悪い息子の門出だ。 腹ァ満たすにはほど遠いがーーー」
両手を高く掲げる、構えとも呼べぬ独特の体勢。
寄り集まった後背筋が、鬼の笑みを浮かべた。
「ーーーー食ってやろう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫ですか?! 志希?! ヘンタイどもにナニかされませんでしたか?!」
ヘンタイ達を蹴散らしていた時のような鬼神のごとき面構えはぶっ飛んで、心配性で人のいい、鬼の素顔。
志希はなんだか安心して、思わず微笑みが零れていた 。
「まったく、勝手にいなくなりさえしなければ、こんなことにもならなかったのに……帰ったらお仕置きですよ……」
何気なく、鬼の口にしたその言葉。
それが今の志希には、あんまりにも衝撃的で。
「帰る……帰るんだ………」
うわ言のように呟く少女に、鬼は優しく笑いかける。
「………ええ、帰るんです。 それに」
ちらり、と未だ痙攣するヘンタイを見やる。
「ここは品が、なさすぎる」
「ーーーーぷっ」
「はは………」
「「あははははは!」」
大団円。
すべては丸く収まって。
鬼と天才が、居場所を見つける。
今回はそんな、お話だったのだ。
「あはは、志希ちゃん帰ったらご飯食べたいにゃあ……」
「ええ、いくらでも食べてください」
「にゃはは♪ やったーーーー」
ーーーーーだが、まだだ。
どくん、と志希の体が波打つ。
「ーーーー志希?」
「う、うぁ、ぁぁぁぉあぁぁぁぉあぁぁぁぉああああああ!?」
「志希ッッッ!」
思い出されるはヘンタイの最期。
まさか、そんな。
あれはちひろの細工の結果じゃーーー
鬼の脳裏を走る電流。
「ガアアァァァァァァ!?」
志希を拘束していた鎖が、爆発的な力によって四散する。
その勢いのあまりの強さに、鬼は距離をとらざるを得なかった。
「こ、これは一体……?!」
舞い上がる砂煙。
廃工場に満ち満ちて、膨れ上がるプレッシャー。
「ーーーーーーーフシャー」
開けた視界の先には、全裸で女豹のポーズをとる、一ノ瀬志希の野性味溢れる肢体があった。
大団円には、まだ遠い
とりあえずここまで。
>>171 冴羽様はほんとうにしんしなおかた
疲れた……不用意にチャコフするもんじゃないですね。
ほぼ常に着てる白衣と父親の呼称の多さから膨らんだお話ですが、もうすぐ終わります。
健康的に寝て、また明日出します。
震えて眠れ紳士達 紳士王はオレだ
アメリカ映画かな?
おっつん
あく続き書いて
乙
お早うございます。
それでは、一気に出しきりたいと思います。
紳士度高すぎるのと、文学的雄雌交配があるので一応注意をば。
よろしくお願いいたします
『そこで志希ちゃんは、腰を低く備え、ある種特徴的な構えを見せたのです。
それは例えるなら……なんだろ? ねぇねぇプロデューサー、なにかなー?
え? うん。 ……えへへ☆ もー! フレちゃんが可愛いのはいつものことでしょ?
今は志希ちゃん達のかーいーそーう! アタシ達の番は二週目~♪ ってそだそだ。 あれ? なんだっけ? ま、いっかー♪』
カンペカンペ。
『わぉ! これカンニングペーパーって言うんだよね? え? 違う?
フレデリショック! んー? カナデちゃん急にこっちきてどしたの~?
まだフレデリカのばとるふぇいずは終了してないぜぃ……!
あ、ちょ、そ、そーりーそーりーひげそーりー!
ちゃ、ちゃんとやるからぁぁぁぁぁぁぁ…………』
………。
『ーーーーこほん。 そうね、例えるなら、猫科。 あなたも覚えがあるでしょう?
猫が欠伸しながら、全身を伸ばすあれよ。 いわば脱力の極みね。
志希のその姿は、次の瞬間への、『溜め』だったのよ』
ーーーなるほど、つまりは予備動作である、と?
『ええ、その通り。 現代に甦ったジュラ紀の戦士がとったように。 引き絞られた弓と矢が、確実に志希プロを狙っていたのよーーーー。
え? それなら志希プロは物凄く不味い状況なんじゃないかって?
………ん、あなた達はやっぱり彼をわかってないわ。
もし、紳士プロ、いえ『元』紳士プロがフレちゃんに同じ状況に追い込まれたら、彼は受け止めるわ。 どんな愛も受けきるのが彼だから』
ーーー興味深い。志希プロは全く異なる、と。
『ええ、彼は冷静そのものといって過言ではないわ。 破天荒な志希を抑えてるんですから当然よね。
愛に臆病って意味じゃないのよ?
ただ、時と場を、〈最善〉を理解しているのよ、彼は。
とはいえ、私のプロデューサーには敵わないけれど。
ねぇ、聞いて? ついこの間なんて、あの人ったら、私にパン○ースを履かせようとしたんだけれど、その理由がーーーー』
始まりそうになった黄金色の話を打ち切って。
ーーーー場面は、廃工場へ舞い戻る。
ーーーーー諸君は水の固さをご存知だろうか。
なに? 水は不定で柔らかい?
否、その一見危なげないものこそが、最も危ういものなのだ。
濡れ透けプレイや、肛門洗浄だけなら問題はない。
しかし、仮に時速60kmで、水に叩きつけられたならーーーその硬度はコンクリートに匹敵する。
つまり、物体の威力というのは、状況
次第で幾らでも変化しうるということなのだ。
だからこそ、鬼になくて志希にある。
その差は、とてつもない意味を帯び、戦力差として現れ出でる。
「ふしゃぁーーーッッッッ!」
目で捉えるのがやっとの、志希の特攻。
ちん皮一枚隔てるのがやっと。
しかし、それは志希の体がドラム缶型だったらの話。
「………くぅっ!」
志希の突撃をかわす度に、確実に鬼の衣服は削り取られる。
(ただの脂肪の塊が、こんなにも恐ろしいとは……!)
高速で動く志希に追随する、83の巨大なバストが鋼鉄のような破壊力を伴って、振り回されるのだ。
そう、鬼になくて志希にある、二つのお山によって徐々にだが、確実に鬼は追い詰められていた。
正に狂気のおっぱいビンタッッッ!
お前を確実にーーーヤる。
青少年達の希望の象徴であるパイオツカイデーは今や、絶望の塊。
「………くっ! 避けきれ、ない!
だが、なんだ、この違和感は……!」
鬼の気付いた不快感。
それは、自身の体の傷つかなさだ。
切り裂かれるのは衣服のみ。
理性が飛んだはずの志希から感じる、明確な意図ーーー!
(服を切り裂く……? つまりは、服を脱がせる……。 はっ! ま、まさか志希!)
気付く。
その意図に。
(理解ったぞ、志希の狙いがーーー! なんと馬鹿げた、想像だにしないーーー!)
思えば幾つも予兆はあったのだ。
『キミ、いい匂いするかも♪ こんな人はじめて~。 いったいどこからするのかにゃあ? ねね、分析させてぇ~』
『うーん。 うなじじゃ、ない……。 匂いの元は別にある……? てことは上じゃなく、下?』
『はすはすはすはす! な、なにこれ! キミのパンツから志希ちゃんの脳下垂体を直撃するビッグエキスが!? 嗅ぎたい! もっともっと! こんなのがまんできるワケない!
発生源はいったいーーーー』
ーーーー鬼の思考が解答へとたどり着いたのとほぼ同時。
志希の更なるおっぱいビンタが、鬼の衣服を刈り取った。
それはついに拘束帯と、そしてその先にある最終防護壁をうち壊した。
「志希……! 貴女の狙いははなから私のーーーー」
ーーーボロンッ。
巨大なオノマトペが聞こえたと、錯覚するほどの象さんが、二人の戦いの場に乱入したのだった。
ぶらんぶらんと、象さんをパオーンさせながら、鬼は、考えていた。
志希を正気に戻す方法。
傷をつけることはもってのほか。
しかし、鋭い痛みを伴わなければ、人に理の覚醒を促すことは困難に過ぎる。
極限まで追い詰められた状況。
助けに駆けつけた少女と、全裸にて廃工場で向かい合うという地獄。
カタークナイト、そしてパイパニック。
エロパロ映画ですら役者不足の、三流の極み。
ありえないなんてことは、ありえないーーーー
その言葉を体言したかのような状況下だからこそ。
鬼は平素なら考え付かない解答にたどり着く。
(私と志希の間にある、圧倒的な戦力差。 それはただの脂肪の塊だった。 だが、しかし)
必要なのは逆転。
鬼になくて、志希にあるもの。
狂気に身をやつしてこそ産まれるモノ。
世界が反転を始めていた。
(本来胸とは、子をあやし、男を受け止める、『守り』の器官……母性として、女としての象徴。 ならばーーー)
1日目 暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た。
2日目 神は天をつくった。
3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。
4日目 神は太陽と月と星をつくった。
5日目 神は魚と鳥をつくった。
6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。
7日目 神は休んだ。
天地創造に隠された真実。
海とは、女性。
大地とは、男。
ならば、生えてきた植物とは。
「ーーーー志希ッ!」
男は、吼えた。
女は、ピタリと動きを止めて、その崇高な姿に涙を流した。
神に近づき、そして倒れた人の『遺志』たる象徴が。
仁王に立ち、鬼がーーー笑う。
鬼の股間には、もはや二度と倒れることのない、『バベルの塔』が、誇り高く勃っていたのだ。
〈ヤりきれる武器を持っているのはーーーお前だけじゃないんだぜーーー〉
もはや、勝負は一瞬。
数秒の後に決着が訪れることを、鬼も、志希も、ちひろも。
その場に集う全てがそれを頭でなく、心で理解していた。
ビクッビクンッ!
倒れ伏していた黒スーツの、断続的な命の放出が、ゆっくりと終わりつつある。
「………」
「………志希、貴女には目覚めて貰わなければ困る」
これは、鬼の嗚咽だ。
生涯を一人で生きてきた鬼が、始めて他人を護りたいと思った。
「貴女のお陰で私は『痛み』を思い出した。 そして、『温もり』を」
弱肉強食。
いつしか自身に課した、生存の掟。
だがそれは、本当は誰かに対するサインだったのかもしれない。
「…………貴女は喧しいし、無礼で、不作法で、不様で、弱きに過ぎる」
強ければ生き。
弱ければ死ぬ。
だが、人は弱いからこそ人と生きるのだ。
誰かの弱さを、誰かが補って。
そうして無限の強さを作っていくのだ。
「だから、私に貴女を護らせてください。 私が私である、そのためにーーー」
ぶしゅう!
と、大きな噴出音をたてて、黒スーツの最後の命の煌めきが、赤く濁ったアーチを描いて、高々と舞った。
瞬間、志希が走り始めた。
互いの距離は遠くない。
刹那を、コマ送りにして流れる情景。
5,4,3,2,1。
弾丸のような突進。
迎え撃たねば致命傷は明らか。
だがしかし、鬼は動かず真正面から堂々と、志希の体当りを受け止めた。
「ぐっ……ふぅぅぅぅッッッ!」
肋骨、胸骨、右前腕、左大腿骨。
大小様々な骨が、めしめし、と軋む。
「ふしゃッッッ!」
志希のパイオツが頬を撃ち、脳を揺らす。
凄まじい衝撃。
視界が、暗転し、飛びそうになる。
それでもーーー倒れない。
志希の全てを鬼は受けとめる。
「先に謝っておきます志希。死ぬほど痛いですよーーー」
傷をつけず。
極大の痛みを与える。
不可能な命題。
だが、鬼になら叶う。
志希になら叶う。
二人のうちどちらが欠けても成立しない、そんな可逆反応式。
すべての人類が産まれたときより背負いし宿命、肉のカルマ。
「………ッ!?」
志希の体が、ビクッと、震える。
痛みでも、快楽でもない、ざわつき。
巨像がその鼻っ柱を、マリアナ海溝に擦り付けた、その感触。
未曾有の感覚に、志希の動きは停止する。
僅か瞬きほどの一瞬だが、男には充二分に過ぎた。
「喰らいなさいーーーーこれが私の、私達のドリルですッッッ!」
聖剣がーーーーーー楔を貫いた。
『お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』
ーーーーこの先を、いつからか忘れてしまった。
小さい頃は、パパと沢山お話した。
本を読み、内容をパパに伝えて、頭を撫でてもらう。
幼い志希にとっては、この上ないご褒美だった。
ずっと続くと思っていた、もう戻れない、割れてしまった結晶体。
鈴口が、秘口と口付けをかわす〈注:浜口流房中術書第七巻より抜粋~三口責め〉。
「 」
ある時、パパからお下がりの白衣を貰った。
バースデーに欲を見せない子供に対し、パパとママは戸惑っていたのを覚えている。
でも、アタシは両親に認められたような、そんな子供じみた感傷を、ブカブカの白衣を着ながら思ってた。
軽いキスは終わり、亀頭がフレンチ・キスを求めて奥へ奥へ進んでいく。
「 」
ある日を境に、パパが頭を撫でてくれなくなった。
ママが、アタシにごめんなさいと謝った。
ギフテッドーーーーそう診断された日だ。
コツン、誰も今まで触れたことのない、一度きりの通過点に、肉棒が辿り着く。
「 」
賢いお馬鹿さんは、パパとママの笑顔を取り戻そうと必死になった。
本を読み漁り、報告。
その行為が、父を苦しめ、母に痛みが及ぶともしらずに。
すぅーーと、亀が頭を引っ込める。
呼吸を整え、溜めている。
「 」
限界がーーーー来た。
ダッドがアタシをぶった。
ママは、部屋の隅っこで泣いていて、ダッドは、何をか喚いていた。
たしか、嫉妬。
そんな感情だったと思う。
突撃兵が、容赦なく、薄い薄い防護膜を貫いた。
「ーーーーーーーー」
そうだ、アタシはあの時分かったんだ。
不可逆なんてこの世になくて。
それは切れてしまいそうな輪っかを繋ぐための方便なんだ。
兵は進む、密林の垣根を掻き分けて、奥へ奥へ。
破瓜の痛みの、その先へ。
「ーーーーーーーーーーあっ」
ここが、始まり。
総ての命。その原初。
後に、志希最大の性感体となる部位の初開発は、彼女の性誕とも言うべき日に、行われた。
鬼の鬼の手が、故=処女のボルチオに深々とーーーーーー突き刺さった。
『お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』
ーーーーこの先を、いつからか忘れてしまった。
けれど、違うのだ。
忘れてなんかいなかった。
あんまり苦しかったから。
鍵をかけて、棄てちゃった。
やめよう。
もう逃げずに向かい合おう。
こんなにも強く、カラダの奥から強くノックする人がいる。
アタシはここにいてもーーーーいいんだ、
閉じられていた扉が、子を成す宮の入り口がーーーー開いた。
恐れていたドアの外には、大事な想い出が、手を広げて待っていた。
『ーーーー天使の輪っかがあるんだから』
こうして、志希の中の、鍵穴すらも存在しなかった、がんじがらめの楔は、エクスカリバーによって、断ち切られたのだ。
ゆっくりと、志希のカラダを地面へ下ろす。
慈愛に満ちたその表情は、もはや『鬼』ではない。
ただの、一人の、恋する男だ。
「………志希……」
ーーーと、喜びも束の間、志希の体が痙攣し始める。
上原亜衣がごとく、過剰な細動を伴って、震える。
「な、なんだ!? 志希! しっかりしなさい! 志希!」
「ーーーー始まってしまいましたね」
「ちひろーーー」
志希の体を抱き締める男の側に、いつの間にかちひろが立っていた。
片手に志希の父を雑巾を持つようにつまみつつ。
その表情は物憂げで、これからの未来を予感させた。
「志希ちゃんは、もう………」
「う、嘘だ……! そんなバカなことがありますか?! これから、これからなんですこいつは……!」
やっと始まるというのに。
あんまりじゃあないか。
男は大粒の涙をこぼし、叫んだ。
「なにか、なにか、ないのか! 貴女ならなにか……!」
「いいえ、私ではどうすることもできません……。 けれどあなたなら……」
一筋の光。
先走りにも吸い付く思いで、男は懇願する。
「教えてくれーーー私は志希を、彼女を救いたいんです。 お願いだーーー母さんーーー」
「………わかりました。 そこまで覚悟があるのなら、教えましょう。 ただし、死ぬほど辛いですよ?」
「……」
無言で頷く。
例え、神に挑めと言われようが今の彼ならにべもなく肯定するだろう。
深い、マリアナ海溝よりなおも深いーーーー『愛』。
そして、ちひろの口から出た言葉は。
「志希ちゃんに、貴方の精液を飲ませてください」
「わかりまし……………え、なんだって?」
悪魔の一言だった。
「精液を飲ませてあげてください。 スペルマ、男汁、赤ちゃんの種、子種」
「ば、ばかにしているのか母さん!?」
「そんなわけないでしょう! 時は一刻を争うんですよ!」
「いやいやいやいやいやいやいや。おかしい。 何もかも間違ってます。 普通ここは、眠り姫を起こす口付けとか、私の血をあげるーとか、そういう場面ですよ」
「はっ。 ファンタジーやメルヘンじゃないんですから。というか、発想がかわいいわね、お母さんびっくり」
「~~~~~ッッ! せめて説明してください! 納得のいく!」
「志希ちゃんが作って自分に投与したクスリは、自身の体を健康にするクスリなの。 けれど試作だったために、過剰な力と副作用が起きたんです。 ゴリラじみた腕力と、グラップラーばりの身体能力と代償に、志希ちゃんは、異常なくらいエネルギーを必要とする体になった。 覚えがあるでしょう? 女の子と思えないくらい食べてたもの」
「ほ、ホンとに説明しやがったこのアマ……」
その通りだ。
志希と過ごした期間中、食費で財布の中身が吹っ飛んだ。
「暴走は、逃げた時にエネルギーを使いすぎたのと、監禁されたせいで食べれなかったから。 あのままだと多分、皆殺しにしてカニバルしてたでしょうね」
あの野獣のような変わり様はそのため。
だが、まだ解せない。
彼は志希が匂いを嗅ぐために、股間を狙ってきたのだと思っていたが、それでは話が合わない。
匂いで腹はふくれない。
「その通りよ。 だから志希ちゃんが狙っていたのは、貴方の股間のその先、ゆえに精液」
ここで、ちひろは頭を振り、物憂げな表情をつくる。
「なんの因果なんでしょうね……偶然出会った二人。 なのに、彼女の体は貴方の肉体から発せられる匂いに魅了された。 恐らくクスリの効果も相まって。 もうわかったでしょ? 貴方の精液が、匂いの塊が、彼女にとっては最大のエネルギーなのよ」
「そ、そんな………」
痛みを伴わない教訓には意義がない。
人は何かの犠牲なしに何も得ることはできないのだから。
等価交換の原則。
命を救うためには、命を犠牲にしなければならない。
犠牲になるのは、男の命〈子種〉と、そして何より尊厳〈命〉だった。
「貴方に、できるかしら……?」
「くっ………!」
走馬灯のように志希と過ごした日々が流れる。
『にゃはは♪ キミ、ほんとにいい匂いがするね……何だか、安心する、カモ』
迷いは、一瞬だった。
「……やってやる! やってやりますよ畜生め! たかが、私のプライドくらい、溝のネズミに食わせてやればいいんでしょう!」
ーーーーだが、男の決意とは裏腹に、
バベルは再び倒れていた。
「くそっくそっくそ……! 勃て!勃て! 勃ってよ! 今勃たなきゃ、今ヤらなきゃ、志希が死んじゃうんだよ……!」
活動停止。
エントリープラグは動きもしない。
「はぁはぁはぁはぁ……」
ナニか、オカズを。
まとまらない思考。
ーーー見つけた。
既にはだけた、志希の胸だ。
「どうして……」
ホテルではあれほど興奮した志希の裸に、今はぴくりとも動かない。
当たり前だ、母親と相手の父親に見られる状況。
特殊な性的嗜好を持たねば、勃てるはずもなく。
「う、うわぁぁあぁぁぁあ!」
一心不乱に子象をしごく。
だが痛いだけで〈注:存在が〉勃たない。
「うぅ………。 あれ、これって……」
と、男は気付く。
自身の象さんにまとわりつく赤いもの。
「これは………」
それは志希の分身。
命の流脈が、男の魔羅を支えていた。
「志希………貴女なんですね………」
男の♂が硬さを取り戻していく。
一人ではない。
潤滑液のように、彼のペニスを護っていた。
守るではなくーーー護るーーー。
志希はついに、弱肉強食の理すらも越えたのだ。
「イキましょう……。 貴女とならどこででもイケる……!」
それは二人の始めての共同作業。
上下する彼の手が速度を増していく。
幻覚か。
いや、違う。
彼と志希、二人の手が、シゴいているのだーーー!
「なんてこと……」
常人の域に留めておいた男の嗜好が本来の姿を取り戻していく
ちひろのかけた呪縛を解いて常人を超えたヘンタイオトナに近い存在へと変わっていく
精と愛と液を紡ぎ相補性の巨大なうねり魔蘿の中で、自らエネルギーの疑縮体を生産していく
純粋に、シコって出す
ただそれだけのために!
「う、うぉぉぉぉぉおお!」
自身の母親と、愛しき人の父親その両方に見られながら、自慰するという、地獄の中の地獄で遂に彼は成した。
新たな性的嗜好を開花させながら。
「志希、飲め! 飲みなさい! 最後の一滴まで!」
意識のない17歳の口に、体のいい大人がちんこを突っ込む倫理を欠如した場面。
ちひろは真顔で、志希パパは顔を背けながら。
彼は志希の口からあふれ出るまで、精の全て、その一滴までをイラマチオした。
「………うっ………ふぅ……」
抜く時に、再びヌき、志希の小さな顔が白濁に染まった。
「…………志希、目覚めてください……お願いですから……!」
涙を浮かべつつ、男は志希の髪を撫でる。
と、志希の口が動き、精命体を舌でねぶり咀嚼し、味わいながら、下品な音をたてて、嚥下した。
その時、奇跡が起こった。
「綺麗……」
誰からともなく発せられた言葉。
志希の体から天使が降臨したかのような光があふれでる。
そして、ゆっくりと。
ゆっくりと、形のいい眼が開いていく。
眼は真っ直ぐに男を見つめ、そしていつもの通りに、猫のように細められ、笑った。
「ーーーーイカくさい」
顔に白パックを張り付けた、眠り姫は、そう、言ってのけた。
新しい、『白衣』を身につけて、力強く抱きしめ撫でられて。
大団円の幕が、下りた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは、幕間。
降りきるその前のほんのわずかな時間。
志希のための別れの儀式。
「ねぇ、ダッド。 もう昔に戻れるなんて思ってない。 ううん、元々戻れるわけないんだよね。 だって過去は『if』だから」
「………」
志希の目も見ず、俯いて。
研究者は娘の述懐をただだだ聴く。
だから、志希はそんな彼にさよならを言うために。
最後は自分で環をほどくために、震える拳を握りしめ、問うたのだ。
「ーーーねぇ、『パパ』。 今でもアタシの頭の上には、『天使の輪っか』が切れずに、あるのかな……?」
そこで、二人の目と目が合う。
様々な想いが交差する。
しかし、結局。
研究者は、『父親』は、目線を切った。
そして、志希は。
「そっか。 そうだよね………。
ーーーーーとりゃあっ!」
思いっきり振りかぶって、全力で父親を殴り飛ばした。
十メートル以上もぶっ飛んで、父親は動かなくなった。
志希はもう、そちらは見ない。
振り返り、新たな居場所へと歩いていく。
「おめでとうございます。 いいパンチでしたよ志希」
「にゃはは……まだお手てじんじんしてるかも……」
「それが、いいんですよ」
男が志希の拳に手を添える。
痛いけど、温かい。
「……んふふ。 そういえば、なんでキミ全裸なの? あたしは全裸に白衣だけどさ」
「あーそれは貴女を助けるために、色々と。 まぁおいおい、ね」
「ふーん………」
何となく見つめ合う二人。
どちらからともなく、距離が狭まって、そして唇と唇がーーーー
「ーーーはいはい。 私を忘れないでくださいね。 甘い空気はしっしっ」
ちひろがいた。
初々しい二人は顔を真っ赤に茹であげて、一気に距離をとる。
「あ、貴女まだいたんですか?!」
「えーえー。いましたとも。 息子と彼女のらぶらぶ見せつけられてお母さんはぷりぷりですよー」
「ふぇ? ちひろさん、キミのお母さんなの?」
「そうですよー、アイドル事務所の事務員を務める千川ちひろ、不肖の息子のお母さんです♪」
「んー? アイドル? アイドルってなに?」
ぴかっと、ちひろの目が金色に輝く。
「あら、あら! 志希ちゃんアイドルに興味あります? いいですよ~志希ちゃんの可愛さなら日本一、ううん世界一も間違いなし!」
「なに、勝手に進めてるんですか!」
「えっなにそれ面白そう。 うんうんあたしアイドルになっちゃう」
「貴女もなに勝手に決めてるんです?!」
女性二人に振り回される、『元』鬼。
「あ、それとあなたは志希ちゃんのプロデューサーですよ」
「何でですか?! 説明を?!」
「助けるとは言いましたけど、タダじゃないって言いましたよね~♪」
「こ、この悪魔……!」
「あ、そだ。 プロデューサー。 さっき飲んだのまた頂戴。 あたしのカラダ、あれなしじゃ生きていけなくなったっぽい。 特効薬も作れないし、よろしく♪」
「さらっと重大なこと言わないでくれます?! あぁもう! どいつもこいつも……!」
ハチャメチャで、無茶苦茶な、逃走記が終わりを告げる。
ここは、Los Angeles。
天使が翼を無くした街。
けれど、そんな街だからこそ。
かつて、翼を失った天使は、新たな翼を手にいれて、輝く世界へ飛び出していくのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
場所は、現実へと。
プロダクション地下研究室へと舞い戻る。
プロデューサーの拘束具は既にはずれ、眼をあけて回りを見れば、傍らにはによによと、にやつく志希。
「『私に護らせてください』『私は志希を救いたいんです』ーーーーいっやーん♪ 志希ちゃんったら愛されてるうぅぅぅう! あ、思い出したら濡れてきちゃった。 プロデューサー、志希ちゃんのカラダに栓してー?」
「…………」
プロデューサーの大切な思い出。
現在では、スタイリッシュ痴女にワープ暗黒進化してしまった彼女との出会いが、まさに本人に絶賛踏みにじられ中。
「んー? どしたの? あっ、そっか。 やーらしいんだぁプロデューサー♪ おほんっ。 ……ねぇ、お兄さん、志希ちゃん寂しいの……頭、撫でて欲しいな……?」
記憶の中のしおらしい一ノ瀬そのままに、瞳をうるうる、上目をつかつか。
ぶちぃ。
プロデューサーの中のナニかが切れる音がした。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁ?! こ、コロす! 貴女はぶちころがす! 許さない! 鬼や悪魔が許しても、この私が許さないぃぃぃぃぃぃいいいいい!」
「ふんにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ?! ま、曲がらない! 人体はそっちには曲がらないからぁぁぁぁぁあ?! あっ、やばっ、これマジでヤバっ! かわいくないどころか、スゴいの出ちゃう! ………あっ、でもなんかキモチヨク……」
プロデューサーの怒りすら、瞬間に新たな性癖へと転換する、聖なる性天使
一ノ瀬志希。
存分にお仕置きか御褒美かもはやわからない痛みを与え、プロデューサーは志希を離した。
「はぁーはぁーはぁー……。 べンキに吐かれたタンカスよりも邪悪で醜悪ですよ貴女……」
乱れた衣服を正し、心を律するプロデューサー。
快感に逝っていた志希も、足を震わせながら立ち上がる。
「あたたた……イタキモチい新感覚でしたぜ………んふふ。 でも、あれだよ? 一応ちゃんと実験にはなってるから、プロデューサーの恥ずかしい本音とか、実は童貞だったこととか、志希ちゃんは知っちゃったけど。
まあまあ、いたしたかないコラテラルダメージということで」
「私の受ける被害が大きすぎるでしょうが……この雌猫」
「ふふん、あたしは年中発情してるから、猫じゃなくて兎だもーん。 リサーチ不足だよ、プロデューサー?」
「仕置き足りないようですね……!」
指をわきわきさせるプロデューサーから、逃げるように距離をとる志希。
と、その手に握られたハート型のフラスコに気がつく。
「……? 何ですか、そのクスリ?」
「あぁ、これ? これが実験結果」
「はい? 実験はあくまで精神分析だとーーー」
「………実はね~志希ちゃん嘘ついちゃった。 ホントは精神分析なんかじゃないの。 ホントの目的は、コレ」
赤紫。
志希の艶やかな髪と同色の液体が浮かぶ、ハート型のフラスコ。
催眠の前、志希が掌で弄んでいた試作の秘薬。
「エリクシールを造るときに必要なのは、心トリップしちゃうような興奮。 もしくは、それと同等の緊張。 いゃあ~、キミの本音はどっちもたっっぷり! ファッキントッポ! 志希ちゃん、ドキがむねむねしちゃった♪ それに、夢から新しい成分も取れて、もうココロ大爆発!」
つまるところ、催眠状態から引き出される、記憶の事象分析など真っ赤なウソ。
けれど、きっとそれだけではない。
稀代のジーニアスが、『特異性』を求めたのなら、まだ先があるはずだ。
「ねぇ、プロデューサー? あたし言ったよね、特効薬はないって」
その通りだ。
志希とプロデューサーをがんじがらめに縛り付ける、性なる鎖。
そこに鍵穴はない。
かつて、彼女はそう言った。
「だけど……デキちゃった。 にゃはは。 志希ちゃんの頭脳とプロデューサーのカラダ。 二人の赤ちゃん、なんてね。 男女の交わりが、奇跡を起こすーーー」
志希は喋り続ける。
止まらない。止められない。
一瞬の停滞が、致命的なナニカを引き起こすとでも云うように。
「ーーーにゃは。そんな非科学的なことを言うつもりはないけれど」
ちゃぷん。ちゃぷん。
揺りかごを揺らすように、フラスコを、振る。
「プロデューサーとアタシ。 『被験者』で『実験者』。 だけど。だけどさぁ………別にプロデューサーが望んだワケじゃ、にゃいんだよね~」
それはいつも彼女が口にする言葉。
あの日、プロデューサーが志希に億千もの命を奉じた時から始まった、解けない『呪文』。
『魔法』なんかじゃ、ない。
「あ、コレあたしが飲むんじゃないよ? キミが経口摂取することによって~、キミの匂いが変わるの」
「つまり……私のスペルマでの補給が必要なくなる。 そういう話ですか」
パチンッと、指をならして実験者は被験者を褒め称える。
「ぶっちゃけちゃうと、アタシ。
今でも別にキミの精液摂取しないでも、ミートやシュガーたっくさん摂れば問題ないんだよねー。 キミにラリっちゃって中毒症状発症してるだけでさ~」
「……節度の話では、ないようですね」
「そんな簡単ならよかったんだけどね~♪ アタシがキメたお薬はー死にゆくアタシのカラダに入ってきた、キミの命をあたしの奥のおーっくまで。 丁寧に刷り込んじゃったんだよ~」
鶏やアヒルの子供が産まれた時、一番最初に見たものを親と思う。
チンと言えばマンと言う。
それは本能レベルでの、抗うことの出来ない、刷り込み。
「知ってた? あたしのカラダはキミが同じ空気を吸うだけで、視界に入って、匂いがするだけで、ぐっちゅぐちゅのとーろとろになっちゃうんだよ」
「ええ、勿論。 だから極限まで我慢出来なくなった時にだけ、私に襲いかかるんでしょう」
当然と言うように、あっけらかんと。
悪びれない相棒に志希は破顔した。
「あっははは! ほんとキミって優しくないよね♪ 女の子からアクションさせるなんて! もっと紳士にならなきゃモテないぞ~♪」
「お生憎さま。 私は似非紳士とは違いますから……。 酸いも甘いも噛み締めた、大人ですので」
「ひっどいオトナ♪ ………でさ」
すぅーーーと、志希の表情から色が失せる。
百面相の一ノ瀬から、そのどれもが抜け落ちて。
原始的な。
例えるならば、赤子のような。
そんな透明な色〈シキ〉。
「飲む? 飲まない? 志希ちゃんのココロ。 キミが。 決めてよ」
飲むのか。
飲まないのか。
『飲むのかいっ! 飲まないのかいっ! どっちなんだいっ?!』
『どちらにしても』心は割れる。
どちらがより、『マシ』か。
これはそういう類いの問題だ。
志希から手渡されたフラスコを見つめる。
ハートに形どられた、ココロみたいなフラスコ。
中で揺れる液体のせいで、屈曲し歪んで見えるその形は。
今にも不定形に変わりそうな、天に二物を与えられし乙女のようだった。
プロデューサーは思い出す。
一年前から始まった、飼育の日々を。
道端で出会った猫。
薄ピンクのニップルと、無毛の割れ目。
追走する黒服共。
幸せそうに食べていた、どどめいろのビックマック。
狂える科学者との対峙、そして別れ。
ーーーーー互いを結びつけた、精約の射精。
志希が見ている。
瞬き一つせず、ギフテッドが鬼の一挙手一投足を観測する。
「……………」
チクタクチクタクチクタクチクタク。
メトロノームの駆動音が、今はこんなにも喧しい。
しかし、これはもはや夢ではない。
甘い夢想でなく、苛烈な超現実。
選択するしか、ないのだ。
あの時のように。
あの時選んだからこその。
ーーーかぽっ。
おもむろに、プロデューサーはフラスコの栓を抜き、そして口元へその先を近づけた。
志希の目に、形容しがたい淀み。
アルコールを飲んだ男が、いつまでたっても射せない、そんな不感。
そして。解答が、提出された。
ーーーーー結果的に、それは二択のそのどちらでもなかったけれど。
「…………どういうつもりかな?」
「………」
プロデューサーは栓を抜き、そしてその中身を勢いよく床へぶちまけたのだ。
「どういうつもりかって、聞いてるんだけど?」
「わかりませんか? こういうつもりですーーーよ」
ハートのフラスコが落ちていく。
緩慢に、ゆっくりと。
あっけなく、当然のようにーーーーーココロは割れた。
志希は酷く冷めた目で、他人事のようにその様を眺めていた。
「まだ終わりではありませんよ。 解答は最後まで受けとるものです、先生」
ぐしゃり。
ふぐりが勢いよく潰された時に似た、嫌悪を催す音。
フラスコを跡形もなく踏みつけて、プロデューサーは肩をすくめた。
「そっか。 それがキミの答えなんだ。 ふうん。 オモシロイよ。 今まででいっとう」
「それはどうも……おや、どこへいくつもりです?」
「決まってるでしょ。 答え合わせ終わったんだから、帰るの」
「どこに?」
「……キミには、カンケー、ない」
踵を返し、逃げるように出ていこうとする志希を、プロデューサーが後ろから抱く。
「離して。キミの匂いを嗅いでたらアタマがおかしくなりそう」
「………私に震える女の子をほっぽりだす趣味はありませんよ。 また、失踪するつもりですか? それに言ったでしょう。 解答は最後まで受けとるものです」
初めてあがったステージの時のように、志希の小さなカラダは震えていた。
抱きしめれば、抱きしめるほどそれはプロデューサーに伝わっていく。
「似非紳士がここにいれば、女を泣かせる男なんて、人間ですらない。 ーーーなぁんてのたまうんでしょうねぇ。 けれど、私は鬼なので。 んー鬼と悪魔のハイブリットだからそれ以上でしょうか?」
大真面目な顔をしてそんなことを呟いて。
がっちりと後ろから抱かれた志希は身じろぎもせず、鬼の述懐を受け止める。
「ふん。 どうせ貴女のことだ。
飲めば、『キミもアタシと離れたいんだ』。
飲まなければ、『あぁ、アタシのココロを受け止めてはくれないんだ』ーーーなぁんて」
志希の声真似をしながら、プロデューサーは鼻で笑う。
一ノ瀬の出した問は二択ですらない。
はなから解答の存在しない、神の不在証明と同じ。
「フェルマーの最終定理よりも質が悪い。 前提として、詰んでいる。 一ノ瀬の最終定理とでも言うつもりですか? ………その癖、自分は勝手に傷ついて」
志希の表情は見えない。
ぽた、ぽた、と。
滴の落下音だけが、彼女を主張する。
「ギフテッドなんて大層な冠被ってる癖に、臆病で情けない大バカさんですよねぇ貴女は」
「…………」
天才にだって、わからないものはある。
それは、何だろう。
アイドルを続けて少しずつわかってはきたけれど。
そう、思っていたのだけれど。
「ーーーーココロが壊された気分はどうです、『被験者』さん?」
床に落ちてバラバラになって。
もう元の形もわからないくらい砕けて散らばったハートのフラスコ。
ハートの乙女は、ぽつりぽつりと、こぼし出す。
「…………傷ついた」
「それで?」
「気分サイアク。 今すぐ世界中かき混ぜて、ぐちゃぐちゃにしたい」
「他には?」
「キミ、キライ。 だいっきらい。 墓場に埋まって、地獄に堕ちても、隣で恨み言言ってやる」
「それは悲しい。 嫌われるのは苦手なもので」
「………砕けちゃった乙女心。 責任、とってよね」
この場で壊れたのは何だろう。
ココロというよりそれは。
志希を蝕んできた『呪い』のような。
「そうですねぇ。 入れ物が壊れた以上、新しい『器』が必要ですね」
「そうだよ。 割れた一ノ瀬ハート、キミの手で整えなきゃ、許さない」
と、そこでプロデューサーの動きが鈍る。
今までいついかなるときも、志希の前でだけは、緊張や苦悩を見せなかった鬼が、初めて悩む。
親のプロレス現場に直面した翌日の、母と息子のような。
そんなきまりが悪い表情。
「あーーーー。 こほん。 あのですね。 志希さん。 うん」
「………? なに?」
「あーーーー………」
間抜けた声を飛び散らせて、プロデューサーは言った。
「ーーーー作りましょうか。 二人の、ココロの結晶体」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふぇ?」
社会人が18歳に対して、お前のボルチオに欲望を吐き出して孕ませる宣言。
倫理観の欠片もなく、ムードもへったくれもないが、二人にはとても相応しく思えた。
「だから、言葉や行動でもわからない、才能の欠片もない大馬鹿さんにも、目で見てわかる、いやカラダとココロの両方で感じられる証を作ろう、そう言ってるんです」
プロデューサーは矢継ぎ早に、早口でどんどん言葉を生産する。
彼女にアブノーマルなエロ本を見つかった青少年のような、必死で、たまらなく滑稽な姿が重なった。
「いや、私が欲しいってわけじゃないんですよ? いつまでたってもギフテッドだ才能だほざく小娘に、女なら誰でも同じ部分があるということを、フツウの女だと教え込むためにですね。 そう、これはけっして未成年に興奮するような変態的な思考ではなく、いわばココロのケア。 そう! 迷える若者を導くための大人として正しい姿なのです。 けして、自分の子を孕んだマタニティーアイドルが見たいというわけではないのです」
かつてないほど弾丸のように言葉を撃ちまくる鬼。
あんまり必死なその姿に、さっきまでの空気もどこへ行ってしまったのやら。
「………ぷっ……ふふ、あっははははは! ーーーーハァ。 ホント、予想不可能な化学変化ってカンジ♪ どんな素敵なエリクシールもキミには敵わないかも♪」
志希は笑う。
18歳の、等身大の女の子の表情で。
綺麗な綺麗な、ビビットピンクに色めいて。
溢れた色の分は、プロデューサーの腕を、ゴリラめいた力で一杯掴んじゃって。
乙女の恥じらいでプロデューサーの腕の骨が軋むが、今この場では関係ないことだろう。
「あーあ。 悔しいなぁ。 こんな楽チンにココロトリップさせられちゃうんだ……♪ 志希ちゃん、ヘリウムより軽い女の子かもかも。 比重が限界突破~」
「…………それは、了承と、受け取っても構わないんですか?」
ホンの少し見せた鬼の弱みを察知し、志希がプロデューサーの母親めいた笑みをつくる。
「ふっふっふー♪ 言葉と行動でわからないプロデューサーには、ココロとカラダで教えてあげなきゃダメかにゃあ? にゃはは♪」
にやにやと、未だ赤い目を細めつつ、志希はプロデューサーを見上げる。
反撃には、鉄槌を。
プロデューサーの進撃が始まる。
「………志希、貴女今日、排卵日でしょう」
「ふにゃっ?!」
予想外の反撃。
ピンクからレッドへ、レッドからルビーへ。
どんどん赤みを増していく、百面相志希。
「排卵日にこんなことして、本当は私に期待していたんでしょう? 唯一の『被験者』と『実験者』ですからね。 私たちは」
「き、キライ! キミ、ほんとキライ! ぎにゃあぁぁぁぁ! こ、このヘンタイ! ヘンタイごっこじゃなくて、ヘンタイ! ヘンタイオトナ!」
「はっはっはっはっは。 だまらっしゃい小娘が。 犯しますよ」
バシバシと、制御不能の剛力でプロデューサーの腹に肘をぶちこむ。
ゴフッゴフッと、口の端から血が漏れて、もれなく病院搬送必須なのだが、プロデューサーの腕が緩むことはない。
「フーッフーッフーッ………ふふ♪ ほんとに良いのぉ? ちひろさんに怒られちゃうかもだよ?」
「何を今さら。 それに私に貴女を丸投げしたのはあの女の方です。 とやかく言われるいわれはありませんね」
「………志希ちゃん、式は盛大にやりたいにゃあ」
「勿論。 事務所総出、あの女にも懐からたんまり吐き出させます。 育児放棄したお返しです」
「にゃは♪ そしたら、ちひろさんを『お母さん』って呼ばなきゃ、だね♪」
「………やっぱり考え直しても」
「イワセナーイ♪」
スルッと腕を抜けて、プロデューサーに向き直り、志希は飛びついた。
胸に顔をうづめ、存分に匂いを吸い込んで、にへら、と緩んだ微笑みを見せる。
「ーーーねぇ、プロデューサー。 この可逆反応、不可逆なんかにしないでね♪ もしキョーミなくしたら、志希ちゃん失踪しちゃうから♪」
「ええ、二度と輪っかがきれないように、しっかり繋いであげますよ」
等身大の女の子。
一ノ瀬、志希。
一杯、多くのものを授かって。
一杯、多くのものを失って。
「ずっと見ててね、プロデューサー。 昔なんて思い出しちゃわないくらい。 四六時中、24時間、365日。 アタシをプロデューサーのフレグランスで、溺れさせて欲しいのです」
「当たり前です。 私は貴女のプロデューサー。 貴女が欲しがる全て与え。 貴女を遠ざける全てを払い。 病めるときも健やかなるときも。 貴女を愛します」
そうしてこれから、当たり前のように、いっとう幸せになるのです。
「んふふ♪ ーーーーそれじゃ、産まれたての志希ちゃんが一番欲しいもの、アタシのココロとカラダを満たして頂戴………あなた?」
「お安いご用ですよ、お前さん」
こうして、ただの女の子とただの男の子のココロとカラダが、純白の部屋の中で、一つに溶けて混ざりあったのでした。
おしまい♪ にゃはっ♪
ここまで。
なんだこの文字量……いやほんま疲れました……
後は、前作同様後日単を投稿しておしまい!
夜にでもだしに来ます。
濃い話でした
おっつん
そしてギリギリアウトだ
おつおつ
スレッドムーバーも気圧されてたわ
この二人の子供とかろくな性格とスペックしてなさそう
乙
乙、です~
何とも濃厚な話でしたな
これからは濃いのは汁だけにしたいと思いました(フレP感)
アウトかなぁ……次も紳士度高いけど大丈夫か……
後日単が書いてて一番楽しいのは内緒
出汁ます!
夕暮れ、事務所の中が朱に染まる時刻。
珍しくも、事務所にプロデューサーはいない。
ちひろさんもいない。
多くのアイドルも出払って。
たまたま示し合わせたように3人のアイドルがソファーで隣り合っていた。
フレデリカ、奏、志希。
デジャブでジャメブ。
奏に寄りかかるようにしながら仲良く3人並んでいたのだ。
「志希ちゃんクーイズ♪」
「いっえーい☆ ぱふぱふーどんどん! どんがらがっしゃーん!」
「何故志希ちゃんは、憂鬱うつうつガス欠さんなのでしょうか~?」
「ちくたく! ちくたく? ちくちく……ちくちく!」
「プロデューサーさんが居ないからでしょう?」
「ぶっぶー。 正解は、プロデューサーから逃げ出して、事務所に来たはいいものの。 奏ちゃんのフレグランスに捕まって逃げられなくなった、でした~♪ ハスハスハスハス、ふにゃ~」
「離れればいいだけだと、思うのだけれど」
「ちっちっちーそれで済めば志希ちゃんはいらないのだ~。 あぁーダメになる~。 奏ちゃん専属のハスハスマシーンになるぅ~」
「ちくちくちくちく……。 あたっ! もー針が舌に刺さっちゃったよ~。 カナデちゃん撫でて~☆」
「任せなさい。この〈狂悦なる口蛇の魔性〉の舌技で、痛みなんて那由多の彼方へと吹き飛ばしてあげる 」
「あ、やっぱいいです。ウッス」
「あら残念」
お決まりのやり取り。
ほんの少しだけ違うのは、志希の頬がいつもより、ちょっぴり朱に染まっていることくらい。
そして、それに気づかぬ親友二人ではない。
「……志希、少し顔が赤いわよ?」
「ホントだ! いつもが林檎さんなら~今日は蜜柑さんかも☆」
「んーそのココロは?」
「どちらもフレちゃんの大好物でしょう~♪」
「美味いっ! 奏ちゃん、フレちゃんの座布団持ってって~」
「あーれー! お許しくださいお代官さまー! と、見せかけてとりゃー!」
「あーれー!」
くるくるくると、ソファーの上で器用に回転する志希。
白衣をぽーんと、放り脱ぐ。
ベーブレードならぬシキブレードね、なんて思いつつ奏は志希に向き合った。
「それで、どうしたの? 風邪? ……熱は……ないようだけれど」
「わー奏ちゃんのお手てちべたーい。 手が冷たい人はココロが暖かいって通説、これで証明できたかも♪」
「えっ! ならフレちゃんは太陽さんさんだから、ハートは北極になっちゃう?!」
「フレちゃんは別~♪ ココロもカラダもあったかでーふわふわ♪」
「私は仲間はずれなのね。 寂しいわ、しくしく」
「「ぎゅー!」」
左右両方から美女のサンドイッチ。
男なら誰しも夢見る、3Pの縮図だ。
「………っはぁー。 蜜柑といえば、柑橘系のフレグランスが嗅ぎたいにゃあ~。 うぅー。 でも拙者動きたくないでござるぅ……」
「………? 柑橘系……酸っぱいもの………。 はっ! し、志希、まさかあなた……!」
天啓を受けた、大仙人のような沈痛な面持ちで、奏は志希の肩を掴む
「んー……発表はもう少し先の予定だったけど、二人には言ってもいいかにゃー。 そうなの、志希ちゃん実は………」
志希も真剣そのもの。
胸の緊張をそばだたせ、告白を決意する。
「……プロデューサーさんと喧嘩したのね!」
「そう、にんし……………ん?」
「うん。 フレちゃん知ってた」
真顔のフレデリカと、死んだ魚の目をした志希と、狼狽える奏。
三者三様。
みんな違ってみんないい。
「そうよね………私も喧嘩してしまった時は、沢山柑橘系を食べて、お花を摘みに行くわ。 それで黄金色の小水と共に、不安や苛立ちを水に流すのよ」
「うーん。 上手いんだけどなぁ。 上手いんだけど、今だけは、奏ちゃんの座ってた座布団には触りたくないかにゃー」
「カナデちゃん、黄色いもの食べたからって黄色いものが出ていくわけじゃないんだよ」
共に止まってしまった回遊魚の目をしつつ、速水処女を見つめる。
ーーーと、ここで事務所入り口から聞こえてくる靴音。
「にゃっ?! やば! プロデューサー来ちゃった! 奏ちゃん、フレちゃん! 一ノ瀬軍曹は、地下実験室へ退避します! えーっと、上手いことどやこや、しといて♪ ボンジュールマダム!」
「いえっサー♪ いてら~☆ ボンマダ~」
「またね、ボンマダ」
ぴゅーっ、とオノマトペの聞こえてきそうなくらい機敏に走り去る志希。
志希プロデューサーが入室する頃には、影も形もなくなっていた。
「はぁはぁはぁーーーふぅ。 おはようございます、お二人とも。 志希を見ませんでしたか?」
「「地下へ行ったわ(よ)」」
光の速度で崩壊する友情。
平素と異なる、志希プロデューサーの慌てぶりに、奏は疑問を口にする。
「そんなに息を切らしてどうしたの? 志希が逃げるのはいつものことだと思うのだけれど」
「ん? ーーーーあぁ、志希言ってませんでしたか?」
「志希がどうかしたの?」
緩んだネクタイを締めつつ、清潔を何より心がける志希プロデューサーは、思いがけずだらしのない笑顔で言ったのだ。
「妊娠したんですよ。 志希」
あっけらかんと、言ってのける志希プロデューサー。
奏は時を止め、フレデリカは目をぱちくり。
「………わーお。 おフランス並みに情熱的かも」
「ああ、それと。 近々結婚式を挙げますので、これ、招待状です。 あいつに渡せって言ったんですが、アレで恥ずかしがりやですからね。 意外と。 折角、親に会う口実作りだって言うのに……まったく」
「…………」
血の通わぬ、真顔で受け取る奏。
フレデリカは招待状に、きらきらと宝石を見るような、輝いた目を向けている。
「妊娠したんだから安静にしろって言ってるんですが……利かん坊のお転婆で困ります」
苦笑いの中に、隠しきれぬ喜びを。
今まで見たことのない、鬼の暖かな笑顔に、フレデリカはどきりとする。
思わず志希に嫉妬しそうになるくらい、彼は幸せそうだった。
「ねぇねぇカナデちゃん。 見て見て志希プロデューサーの顔。 にへぇとして、ゆるゆるったらないよ」
「………」
「……? カナデちゃん?」
「………おかしい。おかしいわ。〈狂悦なる口蛇の魔性〉たるこの私が、未だに彼とまともにキスも出来ていないのに志希が妊娠? なんのジョーク? いいえ、嬉しいのよ? だって親友の幸せだもの。 だけど、だけどおかしいわ。 コウノトリさんは人を選ぶとでも言うの……? ………そうよ。 わかった。 この世界の私はきっと並行世界の私なんだわ。 きっと基本世界の私は今ごろ、19人の子供がいて、マタニティーアイドルとして、世界を席巻しているんだわ。 そうよ。でなければこんなの。 いともたやすくえげつない行為が行われ過ぎよ。 ふふ。 決めたわ。 今夜こそ彼を骨抜きにしてあげる。 覚悟なさいあなた……!」
「………」
ぶつぶつと、呪詛を言い聞かせるように呟く処女。
やはり本日も奏プロデューサーが床で寝ることが確定しつつ、それを横目にフレデリカはぼやいた。
「いいなぁ……シキちゃん。 アタシもプロデューサーにお願いしよっかなぁ。 …………裸エプロンにつけ毛つけたら、理性飛ばせるかなぁ……」
『元』紳士プロデューサーによって、若干の性的思考の偏執が見られつつも、幸せ一杯のフレデリカ。
と、地下へ向かおうとする志希プロデューサーへ、思い出したように声をかける。
「あ、プロデューサー。 シキちゃん白衣忘れて行っちゃったから届けてあげると喜ぶかもかも」
「おや、ありがとうございます。 ところで奏さんの調子が悪いようですがいかがしました?」
「んーー? まあ、なんというか。 次回にご期待しるぶぷれって感じかな?」
「………はぁ……そうですか……?」
不承不承といった様子で白衣を受けとる。
その時、異世界から帰ってきた奏が、絞り出すように声をあげた。
「…………プロデューサーさん。志希をよろしくね。 あの子は例えるなら猫。 気まぐれで、寂しがりやなんだから」
「シキにゃん、だもんね~? ファイト! プロデューサー♪」
多くの者は、志希を猫だという。
それは掴み所がなく、自由の象徴で。
それ以外、例える先を知らぬがゆえ。
けれど。
こんなとき、プロデューサーはいつもの通りに、こう返すのだ。
「志希を譬られるとしたら、志希だけです。 あんなお転婆………猫には荷が勝ちすぎる。私くらいの者ですよ。 あんな女性に首輪をつけられるのは。
ふふっ……」
この世でただ一人の、『被験者たる実験者』は、お転婆娘が置き忘れていったお気に入りの『白衣』を優しく抱えて。
今日もまた、追走を始めるのであった。
これで本当におしまいです。ふふ。
出しきりました!
似非格闘はーとふるえろすを目指したのですがいかがでしたでしょうか?
志希女史以外はこんなお話にならないと思うので、これからもお付き合いいただけたら勃起ものです。
次回は予告通り
奏 「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんでしょ?」 です。
できればLIPPS全員ヤりきりたい。
余談ですが、『いいなーいいなーLIPPSっていいーなー』の作者は天才だと思うんですが、なに食ったらあんなの思い付くんですかね(白目)
今回も紳士淑女の皆様、ありがとうございました
おつ
俺もあんたの食ってるものを知りたいよ……(白目)
>>348
つ http://i.imgur.com/uYpJ3Fx.jpg
>>349 ありがてぇ……ありがてぇ!
フレデリカ「アタシPンコツアンドロイド」
フレデリカ「アタシPンコツアンドロイド」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464904631/)
です。
もっとキマッて、是非オートロック式のすりガラスドアがある部屋に来てくださいね。
おつ
お前もあの作者も危険な臭い放ってそう
このSSまとめへのコメント
この筆致で下ねた抜きにして...いったらホットケーキから砂糖を抜くような行為だと思った
脂肪分が物理的暴威を振るうところでダメだった