シンデレラガールズと愉快な仲間たち (90)
短編集だよ 百合を含むよ
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【泉の女神】
「――貴方が探しているのは、この右のガラスの靴ですか?」
「いいえ」
「では、この左のガラスの靴ですか?」
「いいえ」
「それでは一体、貴方は何をお探しなのでしょう」
「――ガラスの靴を履いた、シンデレラを」
「では、正直者の貴方の為に、私も一肌脱ぎましょう」
「ありがとうございます、女神様」
「あ、この場合は『一足脱ぎましょう』ですかね。ふふっ」
「いやちょっと本当に脱がないでくださいってば楓さん」
【素直なキミが好き】
凛「プロデューサーってどんな私あっ」
P「……ん?」
凛「別に、違うから。仕切り直すね」
P「え? ああ」
凛「プロデューサーってどんな女の子が好きなの?」
P「……」
P「……素直な女の子」
凛「……」
凛「……ちょっと待って」
P「ああ」
凛「今、どうするか決めるから」
P「ああ」
【喜ぶ顔が見たいから】
紗枝「……担当はんを悦ばす?」
周子「うん。たまには喜ばせようかなーと」
紗枝「そやなぁ……最中に『あかん』ゆうと、男の人いうんは喜ぶ聞いとりますえ」
周子「へー。あんがとさん」
[翌日]
周子「……おはよう……ございー……」
紗枝「……あら、周子はん? どないしたん、そんなよろけて」
周子「……」
紗枝「周子はん?」
周子「……あかん。紗枝ちゃん、アレほんまあかんわ……」
紗枝「悦んだみたいで何よりやわぁ」
【私だって女の子】
速水奏はそわそわしていた。
「ナー」
「おおぅ、可愛い奴め。ほれほれ」
収録からの帰り道に出逢った仔猫。
まだ小さな三毛を、塩見周子が可愛がっている。
「わっ、くすぐったいって。ふふ」
「ニャ?」
「……」
そりゃもう清々しいくらいに可愛がっている。
猫可愛がりここに極まれりだった。
(……撫でたい)
だが、奏がそれを口にする事は叶わなかった。
速水奏はクールでミステリアスな女である。
残念ながら可愛らしい仔猫を積極的に撫でにいくようなキャラではないのだ。
(めっちゃ撫でたい)
ただ、彼女も女子高生であるからして。
女の子としての本能には抗えないのだ。
「ふふー」
「フミィ」
「……ねぇ、周子」
「あーごめんもうちょい待って。もうちょいで行くからほんと。堪忍な」
「あ……うん」
周子が最後のダメ押しと言わんばかりにこれでもかと仔猫を撫で回す。
ひとしきり撫で終えると、小さく溜息をついて立ち上がった。
「お待たせ。いこか」
「……ええ」
振り向いた周子が不思議そうに眉を上げる。
慌てて平静を装うとする前に、周子があっと何かに気付いた。
「……奏、ひょっとして」
「……ええ、お察しの通り」
「もー。恥ずかしがらずに言いなって」
「私だって、女の子だもの」
ようやく気付いた周子がくすくすと笑い。
――奏の頭を優しく撫でた。
「……え、あの、周子」
「うりうりー。可愛い奴め」
「……えっと」
「奏ちゃんは可愛いなーもう」
「……」
……まぁ、悪くないかな。
そんな事を考えつつ、満更でもない表情で周子に撫でられるままの奏。
お年頃の可愛らしい女の子達を眺めて、小さな三毛がにゃあと鳴いた。
【凛ちゃんに「うん」って言わせたがる病】
凛「寒い」
P「寒いな」
凛「……」
P「……」
凛「…寒いね」
P「あぁ。すっかり冬だ」
凛「……」
P「……」
凛「…あっためて」
P「……」
凛「……うん」
P「……すまん」
凛「許すよ」
P「ありがとう」
凛「うん」
P「寒いか?」
凛「あったかい」
P「そうか」
凛「うん」
【たわむれCafe au lait!】
フレデリカ「クイズ! フレデリカ~!」
周子「ファイナルアンサー!」
フレデリカ「正解!」
周子「やったー!」
フレデリカ「また来週~!」
奏「そろそろ行くわよ」
周子「ウィス」
フレデリカ「ッス」
【同じ目線で】
楓「低垣楓です」
P「楓さん」
楓「はい」
P「しゃがんでるだけですよね」
楓「はい。撫でやすいと思いませんか」
P「……」
楓「……」
P「…………でも、抱き締めにくいですね」
楓「ちょうどいい垣楓です」
P「立ち上がっただけですよね」
【名前を呼んで】
「――準備出来たか、ありす?」
「ありすではなく橘です」
「今は橘でもないだろ」
「……そうでした」
「今しがた籍入れたばかりだってのに」
「無駄口叩いてないで前見て運転してください」
「うーん、鬼嫁が怖い」
「……しょうがないから」
「ん?」
「ありすと呼ばせてあげます」
「そりゃどうも」
【何度も言わせるな恥ずかしい】
P「げっか……すまん、何だって?」
文香「……」
肇「……月下氷姫、です。げっかひょうき」
P「その、どういう字を書くんだ?」
文香「……」
肇「……え、っと……げ、月下美人の月下に……」
P「ああ」
文香「……」
肇「氷の……お、姫様……で、月下氷姫、です……」
P「ああ、月下氷姫。月下氷姫、月下氷姫か……なるほどな」
肇「……」
文香「……プロデューサーさん」
P「どうかしたかな、鷺沢さん」
文香「そろそろ……怒ってもいいでしょうか……」
P「えっ?」
【感受性の高い人たち】
加蓮「実は最近、みんなの持ち歌練習してるんだよねー」
奈緒「あーそういや言ってたなそんな事」
卯月「熱心ですね!」
未央「へー。じゃあ試しに唄ってみてよ!」
加蓮「何にする?」
凛「じゃあ卯月のsmilingで」
加蓮「オッケー」
『憧れてた場所を、ただ遠くから観ていた』
”――なんかそーゆーキャラじゃないんだよね。”
『今さら、なんて無い!』
”――体力ないの、昔入院してたから。”
『今はまだ、真っ白だけど』
”――私も……本当に輝ける?”
『憧れじゃ終わらせない、一歩近付くんだ』
”――ふふっ。信じてくれればいいの!”
『昨日ヘコんで寝込んだ自分と、指切りして』
”――今日も昨日も明日も…特別だよ。”
『おしまい、なんて無い!』
”――大丈夫。あなたの育てたアイドルだよ。”
『愛を込めて、ずっと唄うよ!』
未央「う”わ”あ”ぁぁぁ~ん! かれりん~っ……!!」
卯月「ひくっ、えぐっ……加蓮ちゃん……! もう、一人じゃありませんよ……!」
凛「加蓮。歩んでいくよ……私も、一緒に!」
奈緒「加蓮ー! だいすきだーっ!!」
加蓮「えへへ……みんな……」
奏「……何アレ」
【クールとは】
茄子「あのー、私ってクールなんでしょうか?」
泰葉「ええ、凛とした大和撫子さんだと思います」
茄子「あら、ありがとうございます♪」
泰葉「その、私も恥ずかしながら、最近は可愛いと言われる事が多く……」
茄子「いえいえ、現場で落ち着いて振る舞う泰葉ちゃんはとってもクールですよー?」
泰葉「ふふっ、ありがとうございます」
蘭子「……あの」
茄子「どうしました?」
蘭子「何で私ここに呼ばれたの?」
泰葉「えっ?」
茄子「えっ?」
蘭子「えっ」
【夜も安心】
藍子「……終電、無くなっちゃいましたね」
P「……ああ」
藍子「……これじゃ、帰れませんね」
P「……ああ」
藍子「……」
P「……」
藍子「朝までファミレスでのんびりしていましょうかー」
P「だなー」
【花の名は】
夕美「綺麗だねー」
P「そうだね」
夕美「やっぱり春は好きだなぁ。花がすっごく綺麗なんだもん♪」
P「うん。すごく綺麗だ」
夕美「Pさん」
P「どうかした?」
夕美「お花見だよ?」
P「花見だね」
夕美「私ばっかり眺めててもしょうがないでしょ」
P「いや、楽しんでるよ。花見」
【拾いモノ】
周子「お腹すいたん?」
P「ぼちぼちな」
周子「お腹すいたん?」
P「ん? ……まぁな」
周子「お腹、すいたん?」
P「……周子、背中に何隠してんだ」
周子「おべんと! あたしの部屋のキッチンで拾ったんよ」
P「……」
周子「お。……ふふー。お腹、すいたん?」
P「……まぁ、拾い食いする位にはな」
【トリックオアフレデリカ】
フレデリカ「とりっくー!!」
P「フレデリカさん」
フレデリカ「とりっくとりっく!」
P「フレデふぃカさん。仕事中ふぇす」
フレデリカ「えい、とりっく☆」
P「フレデリカさん」
フレデリカ「はい」
P「そのトリック言いながら棒キャンディで頬をつつくの止めてください」
フレデリカ「えー?」
フレデリカ「……とりーとっ!!」
P「そういう意味じゃありまふぇん」
【注意一秒結果いちご】
ありす(この雑誌のイチゴパフェ、美味しそうですね……)
奏「それから――」
ありす(お店を調べましょう。イチゴ、イチゴ……)
周子「――だよねー、ありすちゃん?」
ありす「ありすではなくいちごです」
一同「……?」
ありす「…………あっ」
周子「いちごちゃん」
ありす「橘です」
フレデリカ「いちごちゃん」
ありす「橘です」
【ちょうどいいサイズ】
夕美「……」
周子「……」
夕美「……」
周子「……何で黙り込んでんの?」
夕美「だ、だって最近周子ちゃんが……」
周子「あたし?」
夕美「いつも口開けっぱだよねって隙あらばお菓子咥えさせようとしてくるから……」
周子「うん」
夕美「うんじゃなくて」
周子「えー、夕美ちゃんはいつもニコニコしてたほーが可愛いんやけどなぁ」
夕美「そ、そっかな……? えへへ……♪」
周子「夕美ちゃん、ポッキー食べない?」
夕美「ほらぁ!」
「2月の、13日ですね」
長い沈黙を破ったのはプロデューサーの一言でした。
「そうですね」
「ええ」
「……」
「……」
それからはエンジンの音だけが響いて、夕方の街が窓の外を流れていくばかり。
「13日ですね」
「そうですね」
私の口は、同じ言葉を返すばかり。
「楓さん」
「私」
続ける途中で、口を挟みました。
「私、プロデューサーの言いたい事がよく分かりません」
「……」
「もうちょこっと」
プロデューサーの肩がびくりと震えて、私にゆっくりと顔を向けました。
「でも、ほんの――もうちょこっとで、分かりそうな気がするんです」
「……」
「……」
街灯が段々と点き始めて、辺りは夜色に染まり始めました。
「楓さん」
「はい」
「――あなたのチョコが、欲しいです」
私、お酒は辛口が好きで。
けれど貴方にあげるチョコは、きっと甘口が良いのでしょう。
そんな事をふと考えて。
思わず綻んでしまったのは、私の口。
【甘口】
【つまみ食い】
周子「…ねぇ、ホントにしなくていーの?」
P「何度言わせんだ明日早ぇってのに」
周子「アイドルにしてやるー、って家出娘のあたしを連れ込んだのはてっきりそーいうコトする為だと」
P「しねぇっつの。並べる前の和菓子を喰う阿呆が何処に居るってんだ」
周子「……」
P「お前……」
【福砂屋】
泰葉「どうかな?」
アーニャ「フクースナ……とっても美味しいです」
泰葉「あははっ。アーニャちゃん、これはふくすなやじゃなくて、ふくさやって言うんだよ」
アーニャ「……? このカステラ、とってもフクースナですよ?」
泰葉「ふくさやだよ」
アーニャ「フクーサヤ」
泰葉「ふくさや」
【こずえちゃんスイッチ】
こずえちゃんスイッチ「こ」!
遊佐こずえ「こずえはねー……」
こずえちゃんスイッチ「ず」!
遊佐こずえ「ずーっとずっとー……」
こずえちゃんスイッチ「え」!
遊佐こずえ「えっちなことばっかり考えてるものにはー……一切の容赦を……しないぞー」
【真っ赤な嘘】
――これなら、そっとキスしたくらいじゃバレないでしょ?
悪戯に笑う奏の表情を思い出した。
まつ毛が長くて、瞳は妖しくて、唇は真っ赤だった。
「バレない、ねぇ」
昨日買った、奏とお揃いの口紅。
少し捻れば奏色が顔を覗かせる。
口紅に蓋をして正面の鏡を見た。
私の唇は、今もきっとお揃いだろう奏色。
「唇にしろっての」
そっと手で撫でると、鏡の中の頬が奏色に滲んだ。
【私だって女の子 ②】
P「なぁ、加蓮」
加蓮「……」
P「確かに俺は言ったよ。活発な女の子って可愛いよなって」
加蓮「……うん」
P「でもな、加蓮」
加蓮「……」
P「腹筋が3回しか出来なくてプルプルしてる娘もそれはそれで可愛いと思うぞ」
加蓮「凛。急に腹筋止まったけど大丈夫?」
凛「うん、ちょっと疲れちゃって」
加蓮「そっか」
【凛ちゃんに「うん」って言わせたがる病 ②】
凛「――が『誘惑』。このスターチスは『変わらぬ誓い』で、この赤薔薇が『愛しています』」
P「へぇ、色々あるんだな。ところで凛」
凛「なに?」
P「どうして急に花束をくれたんだ?」
凛「別に。お店で余ったから持って来ただけだよ」
P「そうか、ありがとうな。ところで凛」
凛「なに?」
P「どうして急に花言葉を教えてくれたんだ?」
凛「別に。その…………別に」
P「そうか。ありがとうな、凛」
凛「うん」
【たわむれCafe au lait! ②】
フレ「クイズ!フレデリカ!」
周子「なんか始まった」
フレ「このロイズの生チョコは誰のでしょー!」
周子「うーん……」
フレ「もぐっ」
周子「……ん?」
周子「……」
フレ「むぐ……おいしーメルシー♪」
周子「……」
フレ「ふー、ごちそうさまでしたー……ハイここで時間切れ~!」
周子「あちゃー」
フレ「正解は奏ちゃんのでした☆」
周子「えっ」
【TPでもNG】
[スカウト時]
奈緒「は、はァ!? な、なんであだっし……!」
P「……」
奈緒「……もっかい」
P「……ああ」
奈緒「は、はァ!? な、なんであたしガイドっ」
P「……」
奈緒「……」
P「……あー……」
P「噛み屋奈緒さん」
奈緒「神谷奈緒っ!!!!!」
【女狐】
P「……」
周子「あー。休日サイコー」
P「……」
周子「何にもしたくなーい」
P「杏ちゃんかお前は」
周子「周子ちゃんどすえー」
P「昼間っからダラダラしやがって……」
周子「えー。夜は頑張るから堪忍してやー」
P「……」
周子「ムラッと来た?」
P「……」
周子「夜までお預けだかんね」
P「……おう。頑張ってくれ」
【本番前】
[奏の場合]
奏「……」
P「固いな」
奏「……そう?」
P「まぁ、そう緊張するな」
奏「……」
P「あんまり固くならなくていい。奏自身を出していけ」
奏「……分かったわ」
[Pの場合]
P「……っ」
奏「硬いわね」
P「ぅぁ、奏っ……」
奏「もう……こんなに硬くなっちゃって」
P「っく、うぁ……!」
奏「ねぇ……遠慮しないで? Pさん自身を……出していいのよ」
P「――っ!!」
奏「はい、よく出来ました。ふふっ……」
【大器晩成】
楓「総選挙おめでとうございます、肇ちゃん」
肇「ありがとうございます」
楓「ふふっ、次はきっと肇ちゃんがシンデレラガールね」
肇「いえ、そんな……私はまだそんな器では」
楓「掛けた?」
肇「掛けてないです」
楓「釉薬も?」
肇「備前焼では掛けません」
【日本より願いをこめて】
アナスタシアは晴れた空を不安そうに見上げた。
「……夜も、晴れるでしょうか」
今夜は七夕。しかも流星群と重なる、またと無い機会だ。
茄子に晴天祈願を頼むぐらい、昨年に知ってからずっとずっと楽しみにしていたのだ。
「晴れます、よね。去年願い事、書いたから」
そう呟いて、扉を開ける。
「――よくぞ参った! 白銀の妖精よ!」
ちょこんと可愛らしい鼻を鳴らし、神崎蘭子が自信満々に仁王立ちしていた。
その表情に不安の陰りは全く無い。
「プリヴェート、蘭子」
「煩わしいたいよ」
そこまで言い掛けて、はっとしたように手を当てる。
「きょ、今日は煩わしくないからっ」
慌てたように手をうろつかせる蘭子に、くすくすと笑みを返す。
僅かに顔を赤らめると、仕切り直すような咳払い。
「神々は我々を見捨てなかったようね。光に満ち溢れているわ!」
「アー……ノーチ……夜も、晴れるでしょうか」
「ククク……案ずるな。儀式の準備は万全よ」
そして、蘭子が振り返る。
窓際には笹の葉が――二本、飾られていた。
「フフ……宿願の聖樹。その神秘の力を高める為――」
一本には色とりどりの短冊が。そしてもう一本には。
「――対となる、守護の聖樹を生贄と捧げるわ!」
これでもかとばかりに、てるてる坊主がぶら下がっていた。
「ククク……双翼が揃いし……あれ、アーニャちゃん?」
固まったままのアーニャの前で、蘭子がふるふると手を振る。
小さく口を開けたままのアーニャの身体が、やがて微かに震え出した。
「……ら、蘭子……」
「フフ……どうした、妖せ」
「ニェート! 黒魔術、ダメですっ!!」
「ふぇっ!?」
アーニャが蘭子の両肩をがしりと掴んで、がくがくと揺さぶる。
アーニャの顔へぶつかりそうになりつつも、蘭子はただあわわわわと声を漏らすだけだった。
「ズェルトプリナーシニェ……生贄、ダメです! 泰葉、きっと悲しみます!」
「え、あの、てるてる」
「ダメーー!!」
一分たっぷりと揺さぶられた後になって、ようやく蘭子はてるてる坊主の説明を始められた。
途中からやって来た岡崎泰葉の援護もあり、無事に説得は成功。
アーニャも今は楽しそうにてるてる坊主の顔を描き込んでいる。
「……」
その様子を尻目に、蘭子はそっと笹の葉へ短冊を結び付けた。
『ロシアにも七夕とてるてる坊主さんが広まりますように 神崎蘭子』
【猫耳東風】
猫「ニャーオ」
奈緒「奈緒」
猫「ニャオ?」
奈緒「惜しい惜しい。奈緒だよ、なお」
凛「……」
猫「ナオッ」
奈緒「おっ! はは、そうそう!」
加蓮「……」
猫「ナーオ!」
奈緒「あはは! ナー……お……」
奈緒「……いつから見てた?」
加蓮「ニャ?」
凛「ナーオ?」
奈緒「やめろ」
【体は酒で出来ている】
P「楓さん。金曜ですし、何処で飲みます?」
楓「いえ、今日はお酒は控えます」
P「……えっ?」
楓「ですから、お酒を控えると」
P「……」
楓「プロデューサー?」
P「楓さん」
楓「はい」
P「病院へ行きましょう。今すぐ」
楓「明日の朝イチで健康診断です」
P「そうだった」
【嘘から出た魔法】
奏「そろそろ日付が変わるわね」
周子「エイプリルフールも終わりかー」
奏「周子」
周子「んー?」
奏「愛してるわ」
ゴォン、ゴォン――
周子「……」
奏「あら、フライングしちゃった」
周子「ねぇ、奏」
奏「何かしら、周子?」
周子「今のは、嘘?」
奏「さて、ね」
【忠犬リン公】
凛「……」
奈緒「……なぁ」
加蓮「ん?」
奈緒「かれこれ一時間はああしてソファーでじっとしてるけど、どうしたんだ凛は」
加蓮「んーとね、プロデューサーが『凛は犬っぽいよな』って言ってて」
奈緒「ああ」
加蓮「その話を凛に伝えたらね」
奈緒「うん」
加蓮「文句付ける為にご主人様待ち始めたの」
奈緒「犬かよ」
【天下の回し者】
茄子「賑やかなんですねー、ゲームセンターって」 ジャラララ
P「ええ、店によってはうるさいくらいですよ」 チャリン
茄子「こういうゲームがあるって始めて知りました」 ジャックポットハッセー!
P「こんな大きさを家には置けませんしね」ブー
茄子「あ、すみません店員さーん、箱を重ねて頂けますかー?」 チャリリリリ
店員「か、かしこまり…ゼェッ……ましたー…」
P「すみません。いえその、本当に」 チャリ
茄子「あら、そろそろ中のコインが全部無くなりそうですね」
P「ええ。100枚以下にすればクリアです」
茄子「なるほどー」
茄子「あ、そろそろ100枚切ったんじゃないでしょうか」 ジャララララララ
P「そうですね。クリアですよね店員さん、クリア」
店員「……え、ええ。クリアおめでとうございます……」
茄子「わーい♪ 初挑戦でクリア出来ちゃいました♪」
P「流石茄子さんは器用ですね」
茄子「いえいえー」
P「じゃあ帰りましょうか」
茄子「はい。このメダルはどうするんでしょう?」
P「ああ、中へ戻すんですよ。キャッチアンドリリースです。ね、店員さん」
店員「……はい」
茄子「そうだったんですねー。すみません、詳しくなくて」
P「まぁ、また寄りましょう。……今度は、別の店舗に」
【キスの味】
P「……キス、うまいな」
奏「……ふふっ。ね、私の言った通りだったでしょ?」
P「奏」
奏「なぁに、Pさん?」
P「唐突に割烹行ってみたいとか言い出したの、この台詞言わせたかっただけだろ」
奏「ノッてくれる辺り貴方も大概優しいよね」
【トリックオアリン】
凛「プロデューサー」
P「ん?」
凛「甘い私とイタズラな私、どっちが好き?」
P「凛」
凛「うん」
P「ハロウィンはそういうイベントじゃないぞ」
凛「そうなんだ」
P「ああ」
凛「ごめん」
P「いや」
P「……俺は」
凛「うん」
P「甘い方が好きかな」
凛「分かった」
P「そうか」
奈緒「これ以上何を甘くするってんだよな」
加蓮「じゃあ私はイタズラな感じで攻めようかな」
奈緒「ちくしょうこの世にあたしの味方が居ない」
【あわてんぼうのシンデレラ】
凛「プロデューサー。あの、好きなんだけどさ……」
P「ああ……ん?」
凛「え? ……あっ」
P「……」
凛「……」
凛「……い、言っちゃった」
P「……お、おう」
凛「……ごめん。あの、無かった事にしてくれないかな。今の」
P「えっ」
凛「一生のお願いだから」
P「……まぁ、いいけど」
凛「えっと、じゃあ仕切り直すね」
P「……ああ。どうした、凛?」
凛「あの……すごく。すごく大事な話があって」
P「……ああ」
凛「明日の日付が変わる頃、事務所の屋上に来てほしくて」
P「どうしてもか?」
凛「どうしても」
P「分かった、行くよ」
凛「ありがとう、プロデューサー」
P「……ちなみにさ」
凛「うん」
P「どんな話なんだ?」
凛「……秘密」
P「……そうか」
凛「うん」
【かわらないもの】
楓「呼び方を変えたらもっと仲良くなれないでしょうか」
P「と言うと?」
楓「ただの『楓』に変えて、みませんか?」
P「……」
楓「……」
P「…………楓」
P「すみません、かえって呼び辛いです」
楓「巧い答えが返って来てしまいました」
【ポッキーゲーム】
周子「ポッキーゲームしよー」
奏「はいはい」
周子「まずお互いポッキーを咥えます」
奏「周子のはイチゴ味なのね」
周子「そして食べます。うまー」
奏「久々に食べたかも」
周子「そんでもってちゅーしまーす。ん」
奏「ん」
周子「ポッキーゲーム大成功!」
奏「こんなのだったかしら、ポッキーゲーム」
【ポッキーゲーム ②】
P「シューコ、ポッキーゲームって知ってるか」
周子「Pさん」
P「ん?」
周子「それ、鮭の切身だよね」
P「……」
周子「……」
P「……ホントだ」
周子「……」
P「シャケだなコレ……」
周子「……あのさ、いい加減休みなよ。何連勤してんの」
P「ポッキー1袋分ぐらい……?」
【変われるよ】
「……どうしてもか、加蓮」
「うん」
「不安じゃ、ないのか」
「……怖くないって言えば嘘になるよ。でも」
「……」
「もう、あの頃の私とは違うってところ。ちゃんと、見せたいから」
「……分かった。話は通しておく」
「……ありがとう、Pさん」
「油断、するなよ」
「うん」
「――けほ、こほっ……」
「ああぁ言わんこっちゃない…ほらポカリに冷えピタにええと」
「私、頑張ったよ。Pさん……」
「何でこの寒い時期にミニスカサンタなんて……」
【裏の無いひと】
周子「好きー、大好きー、好きー、大好きー」
夕美「……」
周子「好きー、大好きー……シューコちゃんそろそろツッコミが欲しくなってきたかなー」
夕美「周子ちゃん」
周子「うんうん」
夕美「お花も一生懸命生きてるし、花占いも程々にね?」
周子「そう来たかぁー」
【判定の甘いひと】
凛「プロデューサー」
P「ん?」
凛「好き、って10回言って」
P「……」
凛「……」
P「凛」
凛「なに」
P「……1回じゃ、駄目か?」
凛「……」
P「……」
凛「……オマケしてあげる」
P「ありがとう」
凛「どういたしまして」
P「凛」
凛「うん」
P「……」
凛「……」
P「好きだ」
凛「プロデューサー」
P「……」
凛「台詞、違うじゃん。しっかりしてよね」
P「すまん」
凛「……」
P「……」
凛「……オマケ、してあげる」
P「ありがとう」
凛「どういたしまして」
【判定の甘いひと ②】
加蓮「Pさん。好き、って10回言うね」
P「おう……ん?」
加蓮「好き」
P「……」
加蓮「すき、スキ。好き……好き。好きっ! 好き。好き、好きっ!! …………好き」
P「……」
加蓮「……Pさんは?」
P「…………肘?」
加蓮「やり直し」
【とってもキュートなフレデリカちゃん】
フレデリカ「ねーねープロデューサー!」
P「今度は何でしょうか」
フレデリカ「アタシって可愛い?」
P「え? あぁはい、とても可愛いと思いますよ」
フレデリカ「ふれでりかわいい?」
P「……」
フレデリカ「みやもとふれでりかわいい?」
P「輿水さん」
幸子「いやボク関係無いです」
【鎮まりたまえ】
こずえ「もうゆるさないぞー……」
卯月「ごめんなさいっ! はい飴っ♪ お裾分けです!」
こずえ「うむー……りんごあじ……」
卯月「梨味ですよ」
こずえ「なしあじ……」
卯月「本当はりんご味です」
こずえ「もうゆるさないぞー」
卯月「えへへ、ごめんなさいっ♪」
【ドリームマッチ】
絶対に子供の頃のアルバムを見せたがらない速水奏
v.s.
菓子折りを手に礼儀正しく速水家へお邪魔し親御さんから大歓迎を受けた塩見周子
【甘いよプロデューサー!】
「あー! アタシこれ大好きだったような気がするー!」
私は未だにフレデリカが少し苦手だった。
ほたるに関して意外に面倒見の良い事に気付いて以来、幾らか和らぎつつはあるが。
「プロデューサーも大好きな予感がするー♪」
「……飴は別に好物でも」
「舐めず嫌いは良くないよ?」
生まれて初めて聞いた舐めず嫌いなる言葉を脇に置いて、私は目の前のそれをじっと眺めた。
一般にペロペロキャンディーと呼ばれる棒付き飴が数色、こちらをからかうように並んでいる。
「これとこれ、ください」
「……おっ?」
フレデリカに赤色の方を手渡すと、整った目鼻立ちを輝かせた。
「メルシーワタシー♪」
フレデリカ語を聞き流し、透明なセロハンを剥がす。
現れた水色のこんちくしょうをさてどうしてやろうかと考え込んでいると、隣のフレデリカが躊躇無く一舐め。
「……っ!」
その瞬間、何かに気付いたようにフレデリカが私の方へ振り向いた。
「プロデューサー! 大変だよっ!」
慌てたように赤いキャンディーを指差して。
「これ、多い! 大きい! 美味しい!」
「……そうですね、大きいですね」
比べるならば、フレデリカの小さな顔と同じくらい。
何キロカロリーかは知らないが、きっと暴力的な糖分の塊だろう。
二人並んでキャンディーを舐めながら、事務所への帰り道を歩く。
「いやー甘く見てたよ。キャンディだけに」
「……」
「……いやー甘く見てたよ。キャンディだけに」
「いえ聞こえています」
不満げな顔も、一舐めすれば瞬きの間に元通り。
ぐるぐると変わる表情は、まるでペロペロキャンディー。
とてもじゃないが、事務所に着くまでには舐め終わらないだろう。
「甘いね、プロデューサー!」
「……そうですね。どうしようもなく、甘い」
けれどもまぁ、フレデリカと一緒なら何とかなるだろう。
頭の中でそんな甘い考えをグルグルとかき混ぜながら、私はまたキャンディーを舐めた。
【節度】
[2月14日]
凛「プロデューサー。チョコ」
P「おう」
凛「……」
P「ありがとな」
凛「ん」
[3月14日]
P「凛。ブレスレット」
凛「ん」
P「……」
凛「大切にするね」
P「おう」
凛「……」
P「……」
凛(ちょっと事務所でイチャつき過ぎかな……)
P(ちょっと事務所でイチャつき過ぎたな……)
【もったいないあいどる】
夕美「あ。それ花の練り切り? 綺麗に出来たね!」
周子「……」
夕美「食べないの?」
周子「んー……あんまり綺麗だと食べんの勿体無くてさ」
夕美「……」
周子「……?」
夕美「周子ちゃん、私って可愛い? 綺麗?」
周子「え? うーん……綺麗、かな」
夕美「いくじなし」
周子「えっ」
【刻んでいこう】
「――時計?」
例年よりも少し小さめの箱を開くと、収まっていたのは一本の腕時計だった。
「二十歳の誕生日だし、ちょっと良い物をと思ってな」
取り出してみると見た目よりも結構軽い。
白いバンドに白い文字盤。
時刻の他にもう一つ、何かメーターのような物が付いている。
「これは?」
「パワーリザーブって言ってな、バッテリーの残量表示みたいなもんだ」
「ひょっとしてこれ、ソーラー?」
「いや」
私の手から腕時計を取って、軽く二振り。
「自動巻きだ」
「ああ、父さんの時計がそうだったかも」
自動巻き、の意味までは分からないけど。
「身に着けてれば自動でゼンマイを巻き上げてくれる」
プロデューサーが私の左腕に時計を巻いた。
「逆に言えば身に着けないと、二日くらい動かないでいると止まるんだ」
私も軽く一振り。
ぴかぴかの銀のケースが夕陽の光に眩しく輝いた。
「ふーん」
プロデューサーが相当に気を使って選んだだろう、可愛いと格好良いの間くらいのデザイン。
まぁ、悪くないかな。
このコの二十歳の誕生日も、きっといつか祝ってあげよう。
「今どき機械式ってのもどうかと思ったけどな」
「そう?」
「電波時計の方が便利だろう」
「まぁ、そうかもね」
「ただまぁ、俺はぴったりのプレゼントだったと思ってるよ」
プロデューサーが私の顔と手首とを見比べて笑う。
「どうして?」
「どうして、って」
プロデューサーがソファー立ち上がる。
ジャケットを掴んで、鞄を肩に掛けて。
「止まらないだろう? しばらく走り続けるんだしな」
私もソファーから腰を上げる。
ドアを開ける直前、プロデューサーがちらりと自分の腕へ視線を落とした。
「さ、収録行くぞ。凛」
「うん」
プロデューサーを追い掛けるように、私も鞄を引っ掛けて。
「行こうか」
――ついでにちらりと左腕を見てから、私は駆け出した。
【奈緒ちゃんは悪くない】
凛「見舞の時だけじゃ何か縁起悪いしさ」
奈緒「ああ」
凛「加蓮によく花束を贈るようになったんだけど」
奈緒「……うん」
凛「何か最近加蓮の様子が変なんだよね」
奈緒「うん」
凛「顔が赤いから体調悪いのかって聞いたら慌てて否定するし」
奈緒「うん」
凛「それでおでこ触ったらやっぱり熱いし」
奈緒「うん」
凛「奈緒、何か知らない?」
奈緒「うん」
凛「奈緒?」
奈緒「うん」
加蓮「何故か最近凛から花束貰うんだけどさ」
奈緒「……うん」
加蓮「何となく……本当に何となくなんだけどね」
奈緒「うん」
加蓮「それぞれの花言葉調べてみたらさ」
奈緒「うん」
加蓮「『親愛』とか『友情』に混じって、時々『本当の気持ち』『想いは一つ』なんてのもあって」
奈緒「うん」
加蓮「これ……私の勘違い、かな」
奈緒「うん」
加蓮「奈緒はどう思う?」
奈緒「うん」
加蓮「奈緒?」
奈緒「うん」
奈緒ちゃんマジ苦労人
【転ばぬ先の】
三船さん達も森久保さん達も、今はお祝いの真っ最中なのだろう。
俺と楓さんは二人、最後まで事務所に残っていた。
「――じゃあ、飲みに行きましょうか」
楓さんが微笑んで鞄を肩に掛ける。
俺はどう声を掛けるべきなのか分からなかった。
ピンヒールの音が階段に響き、楓さんの背中が小さくなっていく。
「プロデューサー?」
楓さんが踊り場に突っ立つ俺を振り返る。
とてもじゃないが、踊る気分にはなれなかった。
「ふふっ。早く来ないと、置いてっちゃいますよ?」
その声にどうしようも無く背が震えて、釣られるように震えた脚を無意識に踏み出した。
「楓さん!」
階段を駆け下りる両脚は途中でもつれて、出口の手前まで無様に転げ落ちる。
ぽかんと口を開ける楓さんが、見なくとも想像出来た。
「……だ、大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄ってきた楓さんにすら、俺は返すべき台詞が分からなくなって。
「……すみません」
どうとでも取れる、ちっぽけな言葉を吐くだけだった。
そんな俺を見て、楓さんが口を開き――
「――あ」
ふと、その視線を少しだけ上げた。
「プロデューサー」
階段から何かを拾い上げた楓さんが、それを俺へと差し出した。
「はい。忘れ物ですよ」
いつの間にか脱げていたらしい安物の革靴を、俺は多分、馬鹿みたいな表情で見つめていた。
「ガラスよりは頑丈だと思いますけど……気を付けてくださいね?」
しばらく呆然としてから、ゆっくりと靴を足に填めた。
埃を軽く払い、楓さんの、その不思議な瞳を見つめる。
言うべき台詞は、分かっていた。
「楓さん」
跡が残っているかもしれない顔を、むりやり笑みの形へと変える。
「楓さんも、来年は気を付けてくださいね。割れ物注意です」
俺の言葉に、楓さんはびっくりしたように眉を上げる。
くすり、くすくすと、抑えきれないらしい声が漏れる。
「はい」
その笑みの美しさは、ファンなら誰だって知っている。
「それじゃあ」
床を爪先で叩いて、鞄を肩に掛け直す。
「――飲みに行きましょうか」
「はい――もう、待ちきれません♪」
赤提灯とカボチャの馬車が、高垣楓を待ち侘びている。
おしまい。
http://i.imgur.com/WWJWAAT.jpg
スレ建てる程でもない普段のネタツイートが貯まったのでログを漁って来た
割とあった
前作
高垣楓「違いの分かるひと」 ( 高垣楓「違いの分かるひと」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464424549/) )
過去作
http://twpf.jp/Rhodium045
ちなみに微課金ですが何となくイベント上位報酬楓さんが来るんじゃないかと震えてます
誰か助けてくれ
おっつおつ
乙ー
……モバPが何人かそういう関係(意味深)になっているのは
……気のせい?
乙です
>>83
プロデュースの一環だから大丈夫だよ 何も問題無いよ
乙
いつもながら素晴らしい
おつ
おつ
乙!
おつおつ!
やはりあなたか!
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