小鳥「逆に考えるんだ」 (58)

小鳥「『結婚なんかしないほうがいいさ』と考えるんだ」

小鳥「そうすればほら、いくらでも自分の趣味に時間と資金をつぎ込めるし?」

小鳥「誰からも拘束されないって素敵よね?」

小鳥「そう!だって私は、翼を広げて大空を自由に舞う鳥だもの!」

小鳥「……」


小鳥「あれ?私、負け犬じゃね?」


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結婚したら負け。そう考えていた時期が私にもありました。

女はいつでも自由に恋したい、なんてね。ははは……。


ああ、どうせ彼氏いない歴=年齢だよ。

恋愛?なにそれ甘いの?甘いのか!?甘いんだなチクショー!!


もういいんだ、そろそろ現実を直視しよう、私。

「まだ20代だから」なんて言い訳できる時間はもう残り僅か。

そりゃうちの親だって、いきおくれの三十路の娘なんていたら、恥しくて世間様に顔向けできないだろうさ。


でもね、だからってね……。


小鳥「お見合い、かぁ……」

お相手は私より三つ年上、一流企業勤務のエリートサラリーマン。

弱小芸能プロダクション勤務の私とは、年収の桁がひとつ違う。

特別イケメンではないけど、誠実で優しそうな好青年って感じの人。


ま、お見合い写真なんて、そういうのを選んで使うものよね。

どんな人かなんて、実際に会ってみなければわからない。

それはお互い様だけど。

たかが写真の何枚かで、自分のことをわかったみたいに思われたくないのは、私だってそう。


まあね、今日だってせっかくのオフに、一人寂しくウィンドウショッピングですよ。

友達はみんな、休日となれば恋人恋人、旦那旦那、子供子供子供……。

ああ、そうだろうさ。私だってそうするよ。

相手がいればな。


……。

ははは、今ウィンドウにすごい顔した人が映ってたよ。怖い怖い。


……。

はぁ……。

けっして悪い話じゃないんだけどね。

遅くなればなるほど、選り好みなんてできなくなるだろうし。


だからって、私にだって相手の希望ぐらいはあるんだから!

仕事熱心で、不器用だけど思いやりがあって、いざというときにすごく頼もしくて、

笑顔が素敵で、まわりのみんなから慕われてて……。

ちょっと年下の……


「あれ?音無さん?」


そう、こんな…………え?

小鳥「プロデューサーさん?」


これなんて運命?

なんて言えたらいいんだけど、私も彼も活動半径は似たようなものなのよね。

だから、にやけてる場合じゃないのよ、私。


P「今日はお買い物ですか?」

小鳥「え、ええ。特に何か目的があるわけでもないんですけど」

P「見るだけならタダですからね」

小鳥「そういうのはデリカシーが足りませんよ?」

P「はは、すいません」

小鳥「ふふ」


いつものプロデューサーさんだ。

なにげないやりとりだけど、私にとってはかけがえのないひと時……。

彼がどう思っているかは知らないけど。

プロデューサーさん、今日はオフじゃなかったわよね?

いつものスーツにビジネスバッグだし。


小鳥「プロデューサーさんはお仕事中、ですよね?」

P「ええ、そうなんですが……」

小鳥「?」

P「営業出るついでに、ちょっとサボりです」

小鳥「え?……ええ!?」


サボり?プロデューサーさんが?

あの律子さんですら呆れさせる仕事人間のプロデューサーさんが?

私じゃないわよね?うん、私は今日オフだっての。


P「律子には内緒でお願いしますね?」

小鳥「そ、それはもちろん」

P「ははは、どうも……」


私だって、プロデューサーさんのおかげで何度も律子さんのお説教を免れてるもの。

そんな野暮なことはしませんよ。


でもね、そんな浮かない顔してたら……。

これでも、私だって年上なんですからね!

小鳥「なにかあったんですか?」

P「いえ……」

小鳥「私には言えないようなことですか?」

P「……」

小鳥「同じ職場の先輩として、少しは頼ってくれてもいいじゃないですか」


そう、職場の先輩と後輩、事務員とアイドルプロデューサー。

たまに昼食をご一緒したり、仕事上がりに飲み行ったりする、それなりに仲のいい同僚が私と彼の関係。


P「ふぅ……音無さんには勝てませんね。話しますよ」

小鳥「ふふ、はじめからそうやって素直になればいいんです」

P「そうですね。音無さんに嘘はつけませんから」

小鳥「え?」


どういう意味?

私に嘘をつくとバチでもあたるのかしら?

貴音ちゃんなら、ありえなくもないけど。


P「立ち話もなんですから、そこのカフェにでも入りましょう」

小鳥「は、はい」

 ── カフェ ──


小鳥「それで、いったいなにが?」

P「実は……明日、見合いをすることになりまして……」

小鳥「え……?」


お見合い?プロデューサーさんが?

なにそれ、むしろこっちが相談したいことなんですけど。


小鳥「あ、明日ですか?」

P「ええ」

小鳥「そんな急な」

P「?」

小鳥「あ、いえ……」


近日中にお見合いを控えた二人。

実は彼のお相手が私で、私のお相手が彼……なんて素敵なサプライズがあったらよかったんだけど。

残念ながら、私のお見合いは来週の話。

つまり、明日プロデューサーさんとお見合いするのは私じゃない。


ああ、聞かなきゃよかったかも。

小鳥「お相手の方は……?」

P「うちの親父の知り合いの娘さんで、俺より一つ下だそうです」


と、年の頃はお似合いね。

いくつも年上の私じゃ分が悪いかも……。


小鳥「き、綺麗な人なんですか?」

P「そうですね。さすがにうちのみんなってほどではないですが」

小鳥「それはまあ、アイドルと比べられたら」


それは私にも言えることですけどね。

おまけに、若さでは惨敗。

ははは、清々しいぐらいに勝算ありませんよ。


でも、悩んでるってことは、乗り気じゃない?


小鳥「断れないんですか?」

P「断ろうと思えば、まあ」

小鳥「だったら……」

P「なんというか……身内の事情があるんです」


あ、最初言いにくそうにしてたのって……。

触れられたくないところに触れちゃったわけよね、これって。

なにやってるんだろ、私……。

小鳥「あの……言いにくいことだったら」

P「母が……」

小鳥「え?」

P「母がここ何年か病気を患っていて、たぶんもう長くはないと」

小鳥「……」

P「今まで好きなように生きてきた親不孝者ですから」

P「せめて生きてるうちに嫁さんをもらって、孫の顔を見せてやるぐらいは、と……」

小鳥「そう、ですか……」

P「すいません、こんな話。聞かされても迷惑ですよね」

小鳥「そんなこと……!」

小鳥「でも、それだったら、その……お見合いじゃなくても」

P「お相手のご両親が、母の病気の件でお世話になった人なんです」

小鳥「あ……」


それじゃ、この人はきっと断れない。

人の縁を大切にしている人だから。

お見合いをしたら、多分そのまま……。

私と彼は、同じ悩みじゃなかった。

私のお見合いなんて、断ろうと思えば簡単に断れる。

でも、断ったとしても、彼はもう誰かの……?


ああ、ほんとに聞かなければよかった……。


P「音無さん」

小鳥「は、はい」

P「これからデートしませんか?」

小鳥「は、はい?」

P「デートですよ、デート」

小鳥「で、デートというと、二人でお出かけしたりする、あの……?」

P「そのデートです」


そんなもの都市伝説だと思ってましたよ。

いやぁ、まさかこうして自分が誘われる日が来るとは……。

しかも……しかもプロデューサーさんに!

えへへ……///


じゃなくて!

小鳥「今、仕事中ですよね?」

P「今の状態じゃ、ちょっと仕事になりそうにありませんね」

小鳥「みんなほうは大丈夫なんですか?」

P「ええ。今日はもう外回りだけですから」

小鳥「明日はお見合いなのに……」

P「今日はまだ義理立てする必要はないでしょ」

小鳥「それに、ええと……」

P「はい」

小鳥「私なんかで……」

P「怒りますよ?」

小鳥「え?」


あれ?怒ってはいないと思うけど……ちょっと悲しそう。

そんな顔しないでください……。

P「音無さんだからデートに誘ったんです」

P「付き合ってくれるんですか、くれないんですか?」

小鳥「は、はい!ご一緒します」

P「よかった。じゃあ、早速いきましょうか」


あ、手を差し出されて……。

これって、やっぱりそういうことよね?


小鳥「あの……」

P「デートですからね」


そう、デートですからね!

手ぐらい繋ぎますよね、なんたってデートなんですから!

プロデューサーさんと……///


 ギュッ

小鳥「はい……よろしくお願いします///」

 ── デート後 夜 ──


それから二人でショッピングをして、臨海公園までちょっと遠出をして、

観覧車に乗ったり、手……手をつないだまま夕焼けの海を眺めたり///

最後に素敵なイタリアンのお店で食事をして……美味しかったです、はい!

舞い上がってて、味なんかわからなかったけどね!


この時間が永遠に続いて欲しい……たぶん生まれて初めてそう思った。

こんな幸せを知らなかったなんて、可哀想な昨日までの私……。

でも、2X歳事務員の私に永遠なんて訪れない。


今、私の自宅の最寄駅……。

ここで夢の時間は終了。

明日になれば、彼は……。


小鳥「今日は……デートに誘ってくれてありがとうございました」ペコッ

小鳥「すごく楽しかったです!」

P「こちらこそ。音無さんが一緒に居てくれて……嬉しかったです」

小鳥「は、はい///」

P「今日のお礼に、なにかプレゼントでもできればよかったんですけど」

小鳥「だ、ダメですよ!明日お見合いするのに、そんな……」


そういえば、私のほうのお見合いの話は結局できなかったなぁ。

いまさら言い出すタイミングもないし。

言わなくていいよね?たぶん、断るし……。


小鳥「ほんとは今日のデートだって、お相手の女性に失礼なんですからね?」


素直になれ、私。

言いたいことは、そんなことじゃないでしょ?


P「私服の音無さんが、とても可愛らしくて魅力的だったから……」

P「ということじゃダメですか?」

小鳥「」


はい?なに言ってるのこの人?

可愛らしくて魅力的で申し訳ございませんでしたね!

って、あれ?

あれれ??


小鳥「ぁ……ぅ……///」

P「今日が終わらなければよかった……」

あ……。

もしかして、プロデューサーさんも私と同じ気持ち?

あと一歩踏み出せば、まだ夢の時間を続けられる?


P「さすがにそろそろ事務所に戻らないと……」

小鳥「あ……そ、そうですね」


なにやってんの、私。

今まさに私の人生最大のフラグが立つかどうかでしょ?

今立てなくて、いつ立てるの!


P「くれぐれも律子には」

小鳥「ええ、内緒ですね」

P「こんな時間までほっつき歩いてたら、どっちにしてもどやされるかな」

小鳥「……」


「行かないでください」「私のそばにいてください」

そう言うだけなのに。それだけでいいのに。


どうして言葉が出ないの?

P「それじゃ……明日俺はオフだから明後日ですね」

小鳥「はい、また明後日に……」

P「おやすみなさい」

小鳥「おやすみなさい……」


プロデューサーさん、行っちゃう……。

行っちゃった……。


どうして?

私と同じ気持ちじゃないんですか?

私の勘違いなんですか?

なんで、なにも言ってくれないんですか!


バカ……プロデューサーさんのバカ!

勝手にお見合いして結婚しちゃえ、バカ!


……。

私の、バカ……。

 ── 翌日 765プロ事務所 ──


小鳥「……」

律子「……」

小鳥「はぁ……」

律子「あの……小鳥さん?」

小鳥「はい……?」

律子「なにかありました?」

小鳥「なにか……?なにもありませんよ……ええ、なにも」

小鳥「ふぅ……」

律子「……」

律子「まあ、手は動いてるようだから、別にいいんですけど……」

小鳥「不思議ですよね、座ってるだけで手が勝手に動くんだから……うふふ」

律子「やっぱりなにかあったでしょ?」

小鳥「なにかあったら……あそこでなにかあったら……」

小鳥「むしろ今、浮かれて仕事が手につかなかったかも……うふふ」

律子「……」

律子「プロデューサーですか?」

小鳥「そうですよぉ。プロデューサーさんですよぉ」

律子「……」

小鳥「うぇ……」グスッ

小鳥「律子さぁん……ひぐっ」ポロポロ

律子「はいはい、いい大人なのにしょうがない人たちですね」ナデナデ

律子「なにがあったんですか?」

りっちゃんは大人だな・・・

─────

───



律子「ほう、仕事中にデートですか?ほほう?」


あ、律子さんにばらしちゃった!テヘペロ

お説教タイムにはお供しますから、許してくださいね!


律子「まあ、あの人はいつも根を詰めすぎだから、たまに息抜きするぐらいは」

小鳥「え」

律子「でもデートはやりすぎです」

小鳥「ですよねー」


デート……。

うわ、なにこのスィートメモリー?///

本当にあったことよね?脳内デートじゃないわよね?

うん……///


律子「なにニヤニヤしてるんですか、気持ち悪い」

小鳥「ごめんなさい……」

律子「でも、そこまで盛り上がっておきながら、それ以上は何もなかった、と」

小鳥「はい……」


思い出させないでくださいよ……。

私の目と鼻の汗で、一張羅のスーツをドロドロにしてあげましょうか?

律子「で、今日プロデューサー殿はお見合いですか……」

律子「まったく、あの人は……」

小鳥「律子さぁん……」グスッ

律子「ストップ!スーツが汚れる」


なんだとこの鬼!

冷血メガネ!


律子「たしか……小鳥さんもですよね?」

小鳥「なにがですか?」

律子「お見合いですよ」

小鳥「あ……」


そういえば、律子さんにだけはちらっと話したっけ。

自分のほうは、わりとマジで忘れてた。

できれば思い出したくなかった……。

律子「小鳥さんは、それでいいんですか?」

小鳥「それは……」


イヤですよ、いいわけないでしょ。

自分でも驚くぐらい……彼のこと好きなんだから!

もう、どうしたってこの気持ちはごまかせない。


でもね、でも……。

律子さんだって、それでいいんですか?

あなたもたいがい素直じゃないですよね。


小鳥「そういう律子さんだって……」

律子「私には関係ありません!」


そうですか。じゃあ、そういうことにしておいてあげます。

あとから「やっぱ今のナシ」なんて言っても、聞いてあげませんからね!

律子「そうはいっても、まさか今からお見合いの妨害に行くわけにも……」

小鳥「え?いいんですか?」

律子「ダメです!」

小鳥「ピヨォ……」

律子「そもそも、会場がどこかも知らないでしょ?」

小鳥「はい……」


まあ、プロデューサーさんに電話して、さりげなく場所を聞き出すとかは出来ると思うんですよ。

……律子さんなら。


律子「あ?」


こわっ!

いけないいけない、今の声に出てたかしら。


まあね、お見合い会場に乗り込んでぶち壊しにするなんて、普通にただの痛い人ですからね。

さすがに愛想つかされそうだし、やりませんよそんなことは。

律子「いつまでもウジウジウジウジと、じれったい人たちですね……」


人たち?プロデューサーさんも?

ま、まだ彼が私のこと……す、すす好きかなんてわかりませんし!

わ、わかりませんよね?デートとかしたけど……///


律子「もう、スパッと告白して、はっきりさせればいいじゃないですか」

小鳥「それができれば、苦労は……」

律子「口答えしない!」

小鳥「ピヨッ……」


私はこの歳で彼氏いない歴=年齢ですよ?

そのへん察してくれてもいいじゃないですか。


だいたい!そんなこと、律子さんには言われたくないですね!

律子さんにだけは!

私の記録を更新しないように、せいぜい気をつけてくださいね!


律子「あ?」


ちょっ、勝手に声に出さないでよ、この口!

 ── 翌日・朝 765プロ事務所 ──


昨日は結局なにも手につかなくて、たびたび律子さんからお小言を言われてた……と思う。

シラフでも記憶が飛ぶことなんてあるのね、あはは……。

家に帰ってから?

そっちはガチ記憶ないから、あはは……。


こんな私でも社会人ですから、どんなにボロボロだろうが仕事には来ますよ、ええ。

それに、まだお見合いがうまくいったとは限らないし。


そうよ!私をこんなに悩ませて!

いつもの鈍感力を発揮して、相手を怒らせてこっぴどくふられてくればいいのよ!

いいザマだわ、ふふん!

でもね大丈夫。私に……け、結婚を申し込めばいいんです!

今なら、可哀想だからもらわれてあげますよ!


 ガチャッ

P「おはようございます」

小鳥「お、おはようございます!」


さ、さあ!決戦よ小鳥!

小鳥「き、昨日は、その……」

P「ええ、お見合い行ってきましたよ」

小鳥「え、ええ。それで……」

P「……」

小鳥「……」

P「たぶん……このままお受けすると思います」

小鳥「え……」


あれ……?

プロデューサーさんはふられて……でも、自分の気持ちに素直になって……。

結婚を申し込まれた私は、「仕方ないですね!」なんて照れ隠しで返して……。


違うんですか?

小鳥「あ……お、おめでとうございます」

P「ありがとうございます……」


あは、あはは……。

ふられたの私のほうじゃない。

告白もしてないのに、ふられちゃった……。


小鳥「プロデューサーさんに先を越されちゃいましたね。あはは……」

P「はは、面目ない」

小鳥「……」

P「……」

小鳥「あ、ちょっと用事を思い出したので電話してきます……」

P「はい」


 ─────

小鳥「──あ、お母さん?……そう、お見合いの話」

小鳥「……うん、やっぱり受けるから……よろしくね」

うん、まあこれでよかったのよ。

プロデューサーさんは一つ年下の可愛らしい奥様、私は三つ年上の優しそうな旦那様。

誰からも祝福される、お似合いのふた組じゃない。

姉さん女房なんて、いまどき流行らないわよね!


律子「小鳥さん?なにしてるんですか?」

小鳥「あ、律子さん……」

小鳥「おはようございます……」

律子「おはようございます」

小鳥「……」

律子「……」

小鳥「あの……」

律子「しばらく、屋上で風にでもあたってきてください」

小鳥「え?」

律子「その顔で事務所にいられても困りますよ」

小鳥「でも……」

律子「仕事は私がやっておきますから。ね?」

小鳥「はい、ありがとうございます……」


そんな顔って、どういうことですか?

心の汗が、ちょっと目と鼻から溢れてるだけじゃないですか。

失礼しちゃいますね!


ありがとう、律子さん……。

 ── 数日後・夜 765プロ事務所 ──


律子「それじゃ、私は上がりますけど……大丈夫ですか、小鳥さん?」

小鳥「え?ええ……戸締りはしておきます」

律子「明日はお見合いですよね?あまり遅くならないように……」

小鳥「そうですね、なるべく早めに上がります……」

律子「……」

小鳥「……」

律子「お疲れさまでした」

小鳥「お疲れ様です……」

 ガチャッ

律子「まったくもう……」

 バタン


律子さんには悪いけど、今は一人で仕事してるほうが落ち着く。

趣味に没頭しようにも全然身が入らないんだもの。

仕事してるのが一番気が紛れるわよね。


ん?私のお見合い?ああ明日だっけ。

いやぁ、不名誉な記録も明日で終了かぁ。感慨深いわぁ……。

……。

プロデューサーさんは、今日は珍しく早上がりしてた。

本人に直接聞くことなんてできないけど、律子さんがそれとなく探りを入れていたようで……。

今ごろ、例の彼女と会っているらしい。


やっぱり、そろそろあれよね。

正式に結婚を申し込んでもおかしくないわよね……。


どうぞお幸せに。

勘違い女は、別の幸せを見つけますよ。

せいぜい私のほうが幸せになってあげますからね。


大好きな、あなたなんかより……。


小鳥「ひぅっ……ぅ……」ポロポロ

 ガチャッ

え?律子さん戻ってきた。

やだ、また泣いてるところなんか見られたら……。


P「音無さん……」

小鳥「え……」


うそ……プロデューサーさん?なんで?

今ここにいるはずは……。


小鳥「どうして……」

P「音無さんと話をしたくてです」

小鳥「話すことなんて……」


そんなの、今更ですよ。

言ってほしいことは、なにも言ってくれないくせに。


小鳥「例の彼女と……会ってたんですよね?」

P「え?ああ、知ってましたか」

P「ええ、さっき会ってきました。会って、ちゃんと話をしてきました」

小鳥「話を……」

「結婚を申し込んできました」ですか?

そんなことをわざわざ私に話すためにここに?


小鳥「ふざけないでください!」

小鳥「話をしてきた?だったら、なんで今こんなところのいるんですか!?」

P「聞いてください、音無さん」

小鳥「聞きたくありませんよ、そんなこと!」

P「聞いてください!」

小鳥「!」ビクッ


な、なんなんですか?

理不尽ですよ、そんなの。

私だって、言いたいことはいくらでも……!


P「やはりお付き合いはできないということで、お断りをしてきました」

小鳥「え……?」


今、プロデューサーさんなんて?

お断り?彼女に?

なんで……?

P「俺には好きな人がいるから、あなたを幸せにすることはできない、ってね」

P「おかげでひっぱたかれましたよ、ははは」


よく見ると、左の頬がほんのり朱色……。

いい気味です……。


小鳥「ひどい人ですね」

P「まったくです。彼女だけじゃなく、好きな人にまでひどいことをしてしまった」

小鳥「それに、勝手な人です……」

P「勝手は承知の上ですよ」

小鳥「……」

P「律子から聞きました。音無さんも明日お見合いだって」


あのおせっかい焼きのツンデレメガネ……。

大きなお世話ですよ、まったく……。

P「お見合い、お断りしてください」

小鳥「はい……?」

小鳥「ずいぶん勝手なことを言いますね?」

P「言ったでしょ、勝手は承知してます」

小鳥「じ、自分は若い女の子とお見合いしておいて、私には断れ、ですか?」

P「そうです、断ってください」


ひどい人、勝手な人……ずるい人。

わかってて言ってますよね、私の気持ち。

ほんとズルイ……。

小鳥「断らなかったら、どうするんですか?」

P「考えてません。断ってもらいますから」

小鳥「……」

小鳥「ふふ……なんですそれ」

P「あ、やっと笑ってくれましたね」

小鳥「え?」

P「ここ何日か、全然笑ってくれなかったでしょ?」

小鳥「だ、誰のせいだと……!」

P「はい、俺のせいです。ごめんなさい」ペコッ

小鳥「あ、はい」

小鳥「まったくもう……ふふふ」

P「音無さんは……笑ってる方が素敵です」

小鳥「うぅ……///」

P「はは」

小鳥「わかりました、お見合いは断ります」

P「はい!ありがとうございます!」

小鳥「好きな人がいるのにお見合いするなんて失礼なこと、私にはできませんから」

P「う……」

小鳥「うふふ」


ダメな私。

もう許しちゃってるんだもん。

でもね、しょうがないでしょ?

ひどくても勝手でもズルくても……大好きなんだから。

小鳥「ご両親とか先方とか、怒らせたんじゃないですか?」

P「そうでしょうね」

P「でも、俺が頭を下げて済むことなら、いくらでも頭を下げますよ」

小鳥「……」


言うほど簡単なことじゃないのに……。

それでも、あなたはここに来てくれたんですね。

私のところに……。


P「音無さん……」

 ギュッ

小鳥「違いますよね……?」

P「え?ああ……そうですね」

P「小鳥さん」

小鳥「はい……」

 ギュッ

P「好きです、小鳥さん」

小鳥「はい……私もあなたが好きです」

P「必ず幸せにします」

小鳥「はい、二人で必ず幸せに」


あなたと二人で幸せじゃないなんて考えられません。

そうですよね、プロデューサーさん!


P「結婚してください」

小鳥「はい、喜んで!」



おわり

えんだああああああ

おっつおっつ

ピヨちゃんは正妻ピヨ

おつぴよ!

いよいよピヨちゃんメインしか書けないような気がしてきたけど、まあいいか。
ピヨちゃんはモノローグが一番書きやすいわ。

あくまでピヨちゃんが正妻可愛いことを書きたかったSSなので、
話がベタなのは勘弁してください。

読んでくれたみんな、ありがとう。
よかったら正妻という風潮とか、18歳ピヨちゃんのほうもよろしく。

あんたかよっ!
いつもいつも最高なんだよどうしてくれるんだ!

キマシタワー!乙
最近ぴよちゃんスレが少しずつ増えてきて僥倖僥倖

乙!

あんただったのか…握手(AA略


良いピヨちゃんだった。
かけ値無しに。


良いピヨちゃんだった。
かけ値無しに。

(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてヘッドセットなんだからね

雪歩からアイマスに入ったのにSS読んでるとピヨちゃんが可愛くて困る

おつでした


素晴らしい

乙でした
ピヨ可愛い


(;´Д`)スバラスィ
小鳥さんはなぁ…あずささん同様、妄想癖&腐女子ってのは敢えて付加した欠点要素ぽいからね
それがないとただの完璧な人になるからちかたないね

おつー

乙ピヨ

たくさん乙とヘッドセットをありがとう!
ちょっとティンときたので、これの続きの話を書いてみます。

おおー期待

見事な小鳥さん乙ーと思ったら続編とな
wktk

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