時は西暦XXX年 世界中が戦乱と混乱に満ちた年だった
とある国では権力の座を奪う為、親族同士が謀略し王の直系を殺害
とある国では蛮族・魔族との戦いに敗れ、王は国民と諸共に滅亡
そしてある国では国王の無神経な政治体制と経済運営により滅んだ国がある
歴史に名も刻まれず、元の臣民からも忘れられた国、とはもう関係ないある下っ端達の話
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『没落した国 首都郊外』
傭兵「やっぱここじゃ仕事も無いわよねぇ」
没落騎士「当たり前だ、首都に入っても人っ子一人いないんだぞ?郊外なんか来た日には小動物さえ居やしない」
傭兵「いやでもさ?こんな所だからこそ何か隠されてたりとか...」
没落騎士「何が隠れてる?」
傭兵「...古代遺跡とか?」
没落騎士「アバヤ屋さえありもしないのにそんな石ッコロの塊なんかあるわけ無いだろう
だから早めにだな...」
傭兵「う~ん...でも移動するにもおなか減ったじゃない」グ~
没落騎士「あぁ、だから黙っててくれ」グ~
傭兵「ツイてないなぁ~お百姓さんくらい居てくれてもいいのに」
没落騎士「麦も大豆も、それらに売る相手が居ないからな、地主も商人も」
傭兵「あのクソ国王が~何も残さずトンズラしちゃってぇ~」グ~
没落騎士「だぁから黙ってろっての」
傭兵「あ~あの鷹さえ捕まえられたら...」
没落騎士「矢の練習しとけばよかったな~」
ピャーッ ピャーッ バシュンッッ!!!! クエッッ!!
没落騎士「うおっ?!矢が?!」
傭兵「こ、こっちに落ちてきた!取ろ!取ろ!!」
没落騎士「あぁ!!(仮にも騎士だった私が何と情け無い姿だろう...騎士団の部下達にはみせられん...)
「あぁ!!俺の獲物!!!返せこのアマ!!」
傭兵「こっちに落としたほうが悪いんですウ~!この子は私達の養分として消費します!!」
「んだとぉ~!?」
傭兵「っつーかアンタ絶対年下よね!年上敬いなさいよ!」
没落騎士「おい...それは彼の獲物だ、返してやろう」
傭兵「え~?バカ言わないでよね!この鷹ちゃんは私達のトコに落ちてきたんだから私達に食べられたいんだよ!」
「バカ言ってんのはどっちだ!!」
没落騎士「すまない、君の獲物だ」
「あ、あんがと...ん?」
没落騎士「ん?どうかしたか?」
「...もしかして、王国騎士団長?」
没落騎士「あ、あぁ元は、だが」
「っや、やっぱり!!!っじ、自分っす!!覚えてないっすか?!」
没落騎士「えぇ...っと?」
「自分っすよ!!騎士団直属歩兵の!」
没落騎士「あぁ...?」
「えーと、えーと...騎士団で歩兵してた奴!なんかソコソコの成績収めてた奴っすよ!!」
没落騎士「...あ、いつも弓道の練習でも剣の訓練でも...中くらいの位置にいた奴?」
歩兵「そうっす!」
傭兵「普通に考えて幹部が下っ端連中の名前と顔なんて覚えるわけないでしょ」
歩兵「いや!でも団長直々にお褒めの言葉を...」
没落騎士「...?」
傭兵「覚えに無いって顔してる」
没落騎士「いや...?お、おぉ...?うん...ごめん...」
歩兵「えぇ~?!だって『君はいつも可もなく不可もなくだな』って!!」
没落騎士「...ごめん」
歩兵「オオン」
傭兵「な、泣く事ないじゃない...」ヨシヨシ
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ジュー...ジュー...
傭兵「野牛もいるのねココ」モグモグ
歩兵「この時期の野牛は数が少ないんすけどね、しかも燻製にしとかないと直ぐ腐っちゃうっす」
没落騎士「そうなのか...長年首都に居たが知らなかった」モグモグ
歩兵「こんな事知ってるの郊外に住む百姓位なもんすよ、首都の連中に喋ったら乱獲されちゃうんで
みな黙ってたっす、あ、鳥焼けたっすよ」
傭兵「ハウウウ...この照り焼きの香ばしい香り...」
没落騎士「よく照り焼きのタレなんかあったな」
歩兵「自作っす」
没落騎士「ほぉ...」
傭兵「そういえばアンタなんでこんなトコに?」モグモグ
歩兵「騎士団が帰ってくる迄盗賊らからこの首都を守ってろって命令受けたんで首都で待機してたっす」モグモグ
没落騎士「め、命令?誰からだ?もう軍は存在しないだろう?」
歩兵「連隊長っす、っつってもどっか行っちゃったっすけどね...小骨が...」ッペ
傭兵「その仕事いつから?」
歩兵「そおーっすねぇ...2年と半年まえからっすね、確か」
没落騎士「じゃ、じゃぁ首都には仲間が?」
歩兵「いえ?皆戦死したり逃げたりでもう自分ひとりっすよ?」
傭兵「...」
歩兵「え?騎士団長帰ってきたって事は騎士団も近くに居るって事っすよね?」
傭兵「いや...」
没落騎士「騎士団は...とっくの昔に解散したよ」
歩兵「っえ、いや...でも...連隊長は騎士団は不滅だって...それに
騎士団は首都を守り続けるって...だからみんな首都を...守ってたんすよ?」
傭兵「事情が非情だからねぇ」モグモグ
没落騎士「...申し訳ない」
歩兵「...そう言う事...っすかぁ」
傭兵「あんた連隊長とか小隊長から何も聞いてないの?」
歩兵「はぁ...兵の自分は何も聞かされなかったっす、騎士団は必ず戻ってきて我が隊を指揮してくれると
聞いてたモンっすから...」
傭兵「下っ端の辛いところね~」モグモグ
歩兵 ズウウン
傭兵「うわ~...重い日並みに落ち込んでる...」
没落騎士「...」
傭兵「アンタが気にする事ないじゃん、直属歩兵の連中が勝手にそう言っただけでしょ?」
没落騎士「いや...彼にはとても悪いことをした...騎士団の帰還を誰よりも信じている者がいたと言うのに...
団長である私が騎士団の信用を忘れていたとは...」
傭兵(あちゃ~こうなったら面倒なのよね~...)
没落騎士「彼に何と謝罪すれば...」
傭兵「う~ん...仲間にでもして、旅する道中にでも罪滅ぼしでも何でもしたら?」
没落騎士「仲間になってくれるだろうか...?」
傭兵「知らないわよんなこと」
歩兵「っはぁ...過ぎた事はしゃーないっすね...ヨッコラショ」
傭兵「大丈夫?」
歩兵「えぇ、平気っす、立ち直りが早いのが唯一の長所っす」
傭兵「アンタこれからどうすんの?」
乙、いい!
歩兵「う~ん...どうすりゃいいっすかね」
傭兵「どうせ行くトコないでしょ?ならアタシらと一緒に行動しない?」
歩兵「あ~...それもいいすね」
傭兵「でしょ?」
歩兵「自分なら飯も作れますし食料も取れるッスしね」
傭兵「そうそう!」
歩兵「やっぱし」
没落騎士「い、いやそれだけではないぞ?」
歩兵「ははっ...行く前にちょっと陣地戻っていいっすか?荷物があるんすよ」
傭兵「あぁ、良いわよ?」
歩兵「やったやった」ガサゴソ
傭兵「え?もういくの?今から?」
歩兵「えぇ、ちょっくら行ってくるっす!」ッタッタッタッタ
傭兵「あいつの分まで食べてもいかしら」
没落騎士「ダメだろう」
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こうして亡国の下っ端達?が非常に稀な出会いをし、旅立った
歩兵「鳥全部食う事無いじゃないッスか~」ヒイヒイ
傭兵「あ~荷物が無いって楽だわ~」
没落騎士「い、良いのか?少し持つぞ?」
歩兵「いえ...ジャンケンに負けたのは自分なんで大丈夫ッス...」ヒイヒイ
それぞれ大した使命も抱かず、明日を生きようといている...
傭兵「そうだね~じゃあ次はあの大木の前通ったらジャンケンね!」
乙乙、はじまりはじまり
歩兵「っめ、めっちゃ距離あるっすよ?!」
没落騎士「っだ、だから私も持とうか?」
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『第一章 私がやらねば誰かがやる』
傭兵「...」
騎士「...」
歩兵「はい...はい、彼には自分もとっても世話になりました...はい...ありがとうございます...」
傭兵「ねぇ、全部回るの付き合えっての?」
騎士「当たり前だ、性懲りも無く歩兵の飯を全部食べて申し訳ないと思わんのか」
傭兵「だって...美味しいんだもん」
騎士「...それは分かるけど...」
歩兵「お待たせしたッス~」トコトコ
騎士「もういいのか?」
歩兵「はい、遺品はすべて渡したッス」
傭兵「それよりさ~今日の晩御飯はなに~?」
騎士「貴様!いい加減にしないか!」
歩兵「ははっ...まだ決まってないッスけど...」
傭兵「あ、昨日私が取った山菜は?」
歩兵「食料の数は少ないんでたぶんそれも使うッスよ」
騎士「肉の干物も...」
歩兵「団長、肉の干物気に入ってくれたんすか?嬉しいッス!成るべく使うようにするッス!」
騎士(やっった!!よっっしゃ!!)
騎士「晩飯が楽しみだな」ウズウズ
歩兵「後は...麦飯と...」ブツブツ
傭兵「いや~歩兵が居てくれて助かるわ~ホント」
歩兵「いやぁ...これ位しか取り得が無いッスから...///」
傭兵「でしょうね」
歩兵(こんちくしょう...)
傭兵「冗談冗談!ささっご飯の支度しましょ!」
歩兵「ははっ...そうっすね...」
騎士(二人の仲もそれ程悪くは無いか...一先ずこれからの旅は安心できるかな)
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