モバP「青空と麦茶とロックな少女」 (14)

ある日の事務所———

李衣菜「…………」ポケーッ

P「…………」カタカタ…

李衣菜「あー……」

P「……。…………」カタカタ

李衣菜「いーい天気ぃ……」

P「…………そうだなぁ」

李衣菜「ですねぇ……」

http://i.imgur.com/WS3evKC.jpg

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P「…………」カタカタ…

李衣菜「見てください、雲が流れていきます……」

P「そうだなぁ……」

李衣菜「……あ、ツバメ飛んでる……」

P「そうだなぁ……」

李衣菜「…………」

P「…………」カタカタ

李衣菜「……私ってロックですよね」

P「……そうかなぁ」

李衣菜「……ちょっとー、そこは『そうだなぁ』でしょー」ムクッ

P「そうかなぁ」

李衣菜「もう……」

P「なぁ、李衣菜」カタカタ

李衣菜「なんですかー?」

P「ソファーに寝転がってるなら、ちょっと麦茶持ってきてくれよ」

李衣菜「えー。今忙しいですー」ゴロゴロー

P「そう言うと思ったよ……」スタスタ

李衣菜「あ、私にもくださーい」

P「ホット麦茶ってロックだと思う」ガチャリ

李衣菜「あぁーいやですー」

P「冗談、冗談。氷は?」コポコポ

李衣菜「3つー」

P「……6つじゃないのか」

李衣菜「なんでですー? それだと多いですよー」

P「ロックだから6……いや、なんでもない」ポチャンポチャン

李衣菜「んー?」

P「お待たせ」

李衣菜「どーもですっ」

P「ほら、起きて俺も座らせてくれ。まさか横になったまま飲む気か?」

李衣菜「起こしてほしいなー」

P「杏かお前は……」

李衣菜「自堕落ってロックじゃありません?」

P「いらないなら二つとも俺が飲むぞ」

李衣菜「あぁっ、嘘です起きますっ」ガバッ

P「まったく、女子高生がだらしない……隣座るぞ」ポフン

李衣菜「はい、どうぞ……いやぁ、事務所に来るとつい気が緩んじゃって。えへへ」

P「お前、夕方からレッスンだろう? 先に行って自主練でもしてれば……」

李衣菜「んー、やっぱりこうやってのんびりするのも必要だと思うんです」

P「なにをいっちょ前に。……ま、たまには充電もいるか」

李衣菜「ですよね! それじゃ乾杯ですっ」

P「ほいほい」

かちんっ

李衣菜「んく、んく……ぷはっ、おいしー♪」

P「ごくごく……うん、冷たいし最高だな」

李衣菜「もう夏ですねー」

P「だなー。早いもんだ……」

李衣菜「でも感傷に浸ってる暇はありませんよっ、時間は待ってくれませんから!」

P「なら自主練行けよなー」

李衣菜「……時には振り返ることも大事ですよねっ」

P「おいこら」

李衣菜「ほ、ほら! よく言うじゃないですか、ロックとは振り返ることだって!」

P「言わねーよ。聞いたことないぞ」

李衣菜「ろ、ロックアイドル多田李衣菜の名言が、今ここに誕生したのだ!」

P「李衣菜はバカだなぁ」

李衣菜「ひどい!」

P「あはは」

李衣菜「もー!」

———
——

P「…………」ボーッ

李衣菜「…………」ボーッ

麦茶「カラン…」

P「空、青いなぁ」

李衣菜「はい……」

P「李衣菜の初ライブの時も、こんな晴れの日だったな」

李衣菜「……そうでしたっけ。覚えてないです」

P「はは、お前緊張してたもんな。うん、今日と変わらない青空だったよ」

李衣菜「そっかぁ……」

P「…………」グビッ

李衣菜「…………」

P「…………」

李衣菜「…………私は」

P「ん?」

李衣菜「私は……変わったかなぁ」

P「李衣菜は自分でどう思うんだ?」

李衣菜「自分でですか? うーん……」

P「…………」

李衣菜「……よく分かんないです」

P「そっか」

李衣菜「…………」コクコク

P「…………」

李衣菜「…………」コトッ

P「……俺は、李衣菜は変わってないと思うよ」

李衣菜「……そうですか?」

P「うん、出会った頃からな。見栄っ張りでお調子者で、失敗も多くて……」

李衣菜「マイナス部分ばっかり!?」

李衣菜「うぅー……」ショボーン

P「でもな」

李衣菜「……なんですかぁ」

P「それでもお前は前向きで……何度つまづいても転んでも、すぐに立ち上がるんだ」

李衣菜「!」

P「少しずつだけど確実に前進してて……そういうところ、カッコいいぞ。李衣菜」

李衣菜「……〜〜ッ!」プイッ

P「……あれ? 前進してるってことはやっぱり昔とは変わってるのかな?」

李衣菜「…………」カァァァ

P「まぁスタンスは変わってないし……李衣菜?」

李衣菜「そ、その……ありがとう、ございます」

P「うん? あぁ、思ったこと言っただけだよ」

李衣菜「そうですか……えへへ」

P「……なんだ、もしかして照れてるのか?」

李衣菜「そ、そりゃ照れますよ……いつもはからかって終わりなんですもん」

P「李衣菜は可愛いなぁ」

李衣菜「ほら、そうやって。……もう」クスッ

P「…………」ゴクゴク

李衣菜「…………」クピクピ

P「…………」

李衣菜「……えへへ。でも嬉しいな」

P「うん?」

李衣菜「プロデューサーがそう思っててくれて……とっても嬉しいです」

李衣菜「プロデューサーが見ててくれるなら私、安心してまっすぐ進めます!」

P「……うん、脇目も振らず突っ走れ。ちゃんと見てるからな!」

李衣菜「えぇ、見ててくださいね!」

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