Fateシリーズのアポクリファを軸にした、オリジナル作品です。
ノリはむしろエクストラっぽいかも…と言うか、わりとギャグかも
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序章
冬木式聖杯戦争…
平たく言うと、『魔翌力の器を溜める万願の願いを叶える「聖杯」の取り合い』、コレである。
そして、それを奪うのは7人の英霊達…セイバー・ランサー・アーチャー・キャスター・ライダー・アサシン・バーサーカーと言う者達である。
そして、彼らが英霊同士で殺し合いを行って、励起するまで殺した英霊の魔翌力を聖杯に溜める。
そうすると、聖杯は願望器として機能する。
とは言っても、その使用権が英霊にあると言うものでも無い。
彼らを呼び出した魔術師達の方に使用権がある。
令呪…その名の通り、絶対の支配権を持った、言わば『魔翌力の枷』により英霊は縛られる。
3角しかない、つまり3回は絶対にその魔術師の言うことを聞く必要がある。
「自害しろ」と命令されてしまえば、それこそ一般レベルの魔術師とペルセウス王子やアーマーンやウリエルなどと言った神クラスの英霊と言う絶対的な差でも無い限り、それに従わなければいけないからだ。
故に、少なくとも令呪がある限り、基本的には英霊は魔術師には逆らわないと言って良い。
…死んで座に居る英霊たち、彼らにも現世に降り立ったのなら、願いは少なからずあるのだから。
表面的には、まるで使い魔の如く主には、逆らわない。
それが英霊(サーヴァント)、という存在なのだ。
さて、そんな神秘の隠匿に喧嘩を売る様な秘術…が、流出してしまった、とある時空間がある。
簡単に言えば、魔術師達が冬木式のそれを真似しだし、世界中で争いあう時空…そう、
これを、仮に『アポクリファ時空』、と呼ぼう。
そんなアポクリファ時空では、根源・奇跡と言う魔術師達が手を伸ばして届かない、魔法を掴める最後の手段として、聖杯戦争…正確には聖杯戦争もどきを数多引き起こしていた。
言ってしまえばリスクがデカいぶん、リターンもデカいのだ。
『命がけですが、代わりに宝くじに絶対当たりますよ…挑戦します?』と言われて挑戦する者は、世界中に一定数いる以上、魔術師達の世界でも、また然りだろう。
…とは言っても、そんな大それた奇跡は要らないから、それこそ宝くじで100万…せめて20万ぐらいで良いから良い目みたい、程度のしょっぱい願望で聖杯戦争を起こす馬鹿者も…何か出始めた。
結果的に、そういった小規模の聖杯戦争すら行う者達から、とりあえず神秘の隠匿や一般人の保護を行う必要が出てくるぐらい、魔術協会や時計塔、或いは地方の教会や土着魔術師同盟などと言った組織が出張る必要も出てきた。
それだけ、雑多な聖杯戦争が行われるぐらい、聖杯戦争が日常茶飯事になった…
アポクリファ時空、それはそんな時空。
そして、このお話は、記録には書類三枚残れば上出来な、そんな小さな聖杯戦争の一つのお話。
では、物語は日本のとある街、「景都市」から、物語を始めよう…
一話:お前で最優はやっぱりしょっぱい
山本猛(やまもと・たける)。
日本に住む土着魔術師の1人であり、この話の主人公である。
彼は、それこそ間桐などと言った大それたレベルの魔術師ではない。
陰陽師…安倍晴明の血を引くとか引かないとかの家の、その傍流の傍流と言って良い。
つまり、彼自身は一山いくらと言うレベルではない三流魔術師である。
つまり、魔術師で、それだけでおまんまを食べる事は出来ない。
そのため、国と契約し、アポクリファ時空における、ある後始末をメインに活躍していた。
聖杯戦争、聖杯にたまる魔翌力自体は死んだ英霊から『落ちて』貯まるのだが、英霊を座から呼び英霊を聖杯でフォローする魔翌力は地脈に存在する魔翌力から引っ張ってくる。
つまり、その魔翌力は土地から無理やり吸い上げて来てるため、聖杯戦争が終われば、その地の魔翌力はめちゃくちゃになってしまう。
それを鎮める…陰陽師らしい、彼の家伝の魔術で後始末を行って、報酬を得ていたのだ。
しかし、今回…山本に誤算が2つあった。
1つは「聖杯戦争が始まる直前」に来てしまった事…まあ、これ自体は別におかしな話ではない。
が、もう一つがひどかった。
今回の聖杯戦争、術式がめちゃくちゃだったのだ。
これに関しては…後から説明しなくてはいけないので、置いといておく。
そのせいで、英霊の召喚の呪文無しで、勝手に触媒足りうるモノを持っている魔術師や魔翌力持ちの人間から英霊が勝手に呼び出され、令呪も勝手に付与されてしまう…ある種の災害だった。
そして、山本はそれに巻き込まれてしまった。
何せ、お札に術式が書かれた祈祷具、あるいは…家伝の宝刀。
いくらでも、触媒足りうるモノを持ち歩いていたのだから。
「…で、キミが呼び出されました、と」
「はい…あの、あんまりジロジロ見られても困ります…」
山本は、呼び出された『英霊』に向かって質問する。
呼び出された側は、少しならず恥ずかしがっていた。
それはそうだろう、呼び出されたその英霊は…十代後半から二十代前半ぐらいの、女の子だったのだから。
山本…26歳の男に舐める様に見られたら、それは嫌になるだろう。
だが、山本に非が有るかと言ったら、多分それは違う。
呼び出された女の子、確かにポニーテールの美人で色白で、と美しさは目を引くが、それ以上に格好がアレだった…。
白と浅黄色のだんだらの衣装。
鉢巻に日本刀と言う武士らしい格好…二降り目の刀が脇差しではなく長脇差しをしている辺り、彼女が生きた時代が幕末と容易に判断が付く。
そして、触媒になってしまったのが『刀』…まあ、だいたいそれで予想がつかない日本人はいないだろう。
「『新撰組』…女の子が居るとは、知らなかった…」
山本はぽつりと漏らす。
それはそうだろう、日本の剣客集団の中で、もっとも有名なチームなのだから。
その中で女の子が居る…それは、誰でもいやらしい意味が一切無く、ジロジロ見るだろう。
…なお…
「はう…すみません、うちは本当は男は近藤さんと土方さんだけです」
「ええええええええ!?」
「土方さんカッコ良くて私たち剣に自信ある女の子がいっぱい来たら、いつの間にかこうなって…男みたいな名前もだいたいみんな偽名でした…」
「嘘だろぉぉぉぉぉぉ!?」
凄い爆弾発言が飛び出したのは、まあ余談として書いておこう。
さて、山本は一通り白目を向いて絶叫した後は、彼女の事について聞いてみる事にした。
…キミは何者なのか、と。
「はい!私は『セイバー』で呼ばれました…真名は…まだちょっと…」
クラス以上の事は教えない、それが彼女の答えだった。
とは言え、彼女がケチとかではない。
英霊の真名、それは正体がばれると言う事に直結する。
例えば…ギリシャ神話のオリオンなら蠍、北欧神話(戯曲だとニーベンゲルグの指輪)ならシグルドことジークフリートなら菩提樹の葉の跡など、即死に繋がってしまう弱点のある英霊も少なく無い。
レベルの低い英霊なら、それを警戒するのは、まあやむなしと言える。
最優、『セイバー』で呼ばれた英霊だとしても、それは仕方ない。
「剣」と言う名のごとく、剣士の英霊以上の情報は初手で出せません、彼女はそう言っている。
まあ、山本もアサシンかセイバーだろうとは思ってたので、そこはまあ良いぐらいには思っていた。
とは言え…
「キミ、名前隠す必要ある?格好が7割ぐらい答えじゃ…」
「はう…ですよね……」
まあ、格好がもう答えとしか言えない、そんなお話である。
そこで彼女は聞いた、何なら私の名前を当ててみて、と。
「……うーん、沖田総司って言うには元気そうだし…原田左之介や島田魁って言うにはちっちゃいし…キミ、左手の突きとか得意?」
「いえ、それは友達の特技です」
「斎藤一はハズレ…ってか、キミはそもそも幹部クラスかい?平隊士とかだったら流石に…」
「ちゃんと組長だって勤めましたよ!」
「…ふむ、武田観柳齋…は、セイバーじゃ出ないだろうし、谷…いやあの人はランサーのが適正高かったような…あれ?本当に誰だい!」
山本の言葉に、どんどん彼女…セイバーの元気はなくなっていく。
怒ってるような、それでいて泣きそうな…そんな顔だ。
ついにセイバーは怒気を孕んだ口調でこう言った
「わ、私…これでも新撰組最強なんです!最強なんですよ…なのに酷いです……」
「最強……あー!そうだ、忘れてた!」
セイバーの言葉に、ようやく『答え』が見えた山本…
そう、彼女こそ、新撰組最強の一角と謡われ、幕末の動乱も生き延び明治の世を天寿を全うした凄腕の幹部格…新撰組二番隊組長……
「キミは、『永倉新八』か!」
「…あたりです、酷いですよマスターさん…」
そう、新撰組で沖田と斎藤に並ぶ最強の剣豪、それが彼女だったのだ。
「…でも、なんか地味だわ」
「ちょ、酷いです!やっぱりマスターさん最低です!」
地味扱いされてるが。
…なお、永倉新八は強い強いと言われて結構性格もまともな方なのだが、『なんか地味』と言うか、半端にスポットが当たりにくい人としても知られている。
まあ、わりと近藤とキャラが被りやすい上に近藤と反発してしまったせいで、あまり日の光を浴びにくいのかも知れない。
某漫画では、新撰組モチーフの組織のキャラではなく主人公側のキャラの元ネタにされてしまったが故に、
元ネタが新撰組と知られてない可能性があるのも追記しておく…メガネ呼ばわりされるアイツである。
さて、セイバーの正体は把握した山本は彼女に願いを聞いた。
何せ山本はあくまでも戦後の報酬が目当て、次点で戦争の早期鎮圧が目標。
…願いらしい願いは、現状無いし、まあ容量が余れば金品でなんかもらえたら良いかな程度にしか考えていなかったのだから。
そこで、セイバー…永倉新八は思案するような表情をした後、顔を真っ赤にしながらこう切り出した。
「『受肉』…いえ、現世に留まれれば維持で構いません…」
受肉…ある種の奇跡の1つである。
英霊の死者蘇生、そういった話になるのだから。
まあ、魂は聖杯に引っ張られて来てるので、肉体の構成自体は比較的楽ではあるのだが。
そんな奇跡を願うセイバーに、山本は受肉後の展望…少なくとも維持を願うならどうするかと言う事を、彼女に聞いてみた。
「受肉…魔翌力での肉体付与、2度目の生を得て何がしたいのさ?」
「え…え……映画に出たいんです!出来れば私が主役の!」
…そういえば、永倉新八って映画キチでも有名だったっけ?
山本は呆れたような表情でその願いを把握した。
…やっぱり今回の聖杯戦争はしょっぱいわ、と。
だが、世界を不幸にもできる聖杯戦争の聖杯の願望で、こんな平和な願いを祈る彼女を…山本は少し、信頼していた。
そんなおり、いきなり爆音が周囲に響く。
何事かと山本とセイバーは音のする方向を見る。
…そこには、なんと…
「な、何ですか!?あのでっかい船!」
「海賊船……街中を走ってる?!」
巨大な海賊船が、大砲を向けながら突進してきたのだった…
以上で序章と第一話終了です
短い投下にお付き合いいただきありがとうございます
乙
第二話と第三話始めます。
トリップ間違えた
二話:こんなライダーはやっぱりしょっぱい
ひゃ~はっは!そんな下品かつ小物臭い笑い声をあげている少年がいる。
彼は海野山彦(うみの・やまひこ)。
中学生3年生…只今絶賛中二病。
自分は他の人より優れた男であり、他の奴らとは格が違うと周囲を見下している…
まあ、若いヤツが中学生から高校生1年ぐらいまでかかる、はしかのようなアレだ。
とは言え、彼の場合…妄想ではなく、彼なりの根拠があった。
微弱ではあるが、魔翌力があったのだ。
いわゆる予知夢と言うと正解なのだろうか。
彼は、夢の中でみたものを元に、未来を当てる…そんな異能を持っていた。
例えば、誰それが何をした…それだけの情報を得るだけで、対人関係はスムーズにいくだろう。
あるいは、何事がいつ起きるか…それだけの情報で利益はいくらでも得ることができる。
つまり、彼は…学校どころか、街の一般人の中では最強だった。
そういった才能は、彼を増長させていたのだ。
そして、今回の事件の際に彼がたまたま持っていた御守りを触媒に…英霊が現れた。
とは言え、御守り自体はきっかけと言うか、ただの楔でしかない。
いわゆる「縁召喚」…血縁や気性の近い、そんな英霊を、彼自身を触媒としてよびだしたのだ。
呼び出された英霊…ライダーと名乗る女は言った。
貴様は何故私を呼んだのか…と。
彼は答えられない、自分は特別な能力が有るが、別に彼女を狙って呼び出した訳ではない。
ならば、と次にライダーは聞く。
お前の望みは、何だ?と。
彼は思案するように頭を捻らせると…一言、こういった。
「俺は…俺がすげえ!っていう事を世界に知らしめたい!手始めにこの戦いを勝ち抜いてやる!」
「面白いわ!惚れそうじゃない!このライダー、力を貸してやろう!」
…馬鹿2人が結託した瞬間だった。
そして、現在…
「オラオラオラオラ!俺の最強のライダーの宝具で挽き潰して、粗挽きコショウみたくしてやるぜ!」
「ハッハッハ!良いねぇそれ!生前は色々縛られてたから、こんな自由な暴れ方はひっさしぶりよ!」
ライダーの宝具による、海賊船の召喚。
更に砲撃と質量による物理的な圧殺…それを市街地でやらかしていたのだ。
街の道路はめちゃくちゃ、陸上なのに疾走する船は…正に悪夢でしかない。
当然…
「ちょ、ま、え…馬鹿野郎ぉぉぉぉ!」
「こ…こっち来ないでぇぇぇ!?」
巻き込まれる側は、ひとたまりもなかった。
セイバーと山本は、そりゃもう全力で走る走る。
あんなんに巻き込まれたら…彼等の言うように、粗挽きコショウのようにすりつぶされてミンチになる。
しかし動力源はなんやねんと言いたくなるぐらいのスピードでその海賊船は突進してくる。
道路をかき分け進み、通った跡には引き裂かれたように大きな穴が空いている。
触れた塀はまるでクッキーのように粉々。
家すら吹っ飛ばされている所すらあるぐらいだ。
そして、そのライダー組のターゲットは…当然ライバルチームになる。
彼等は偶然、セイバーの召喚を目撃して、主人公チームに狙いを付けたのだ。
そうして…その質量兵器での突撃で、その浮き足だったライバルの一組に狙いを定めたのだ。
「そ、そうだセイバー…お前ならあの船を止められる!多分、きっと!メイビー!」
「無理ですよ!一介の剣士に何求めてるんですか!?」
「な、なら令呪をもって…」
「無駄遣いしないでぇぇぇ!?いや、私視点だと案外悪く…いや、ちょっと!令呪で無茶ぶりは勘弁ですぅぅぅ!落ち着いてぇぇ!」
一方で主人公チーム、おかげでこのザマである。
そんな情けない彼らを見て、更にゲラゲラ笑うライダー組。
逃げろ逃げろーなどと煽り、主人公チームを、まるで玩具のように追い回すライダーの海賊船。
何時しか行き止まりまで追い込まれた彼等…目の前には疾走する海賊船…
ヤバい、死ぬかも…と、山本とセイバーだった、その瞬間だった。
「ありゃ?すまん、マスター…魔翌力切れよ」
「えぇぇ!?」
ライダーの船が、魔翌力切れで消滅したのだ。
…なんともしょっぱい、形成逆転である。
ライダーの有利は、もう海賊船の大きさが全てと言って良い。
少なくとも、セイバー相手ではそうだ。
そして、その有利がなくなった後には…中二病の中学生と、それよりマシだが中二病の海賊コスプレ女。
対するは、海千山千の陰陽師と新撰組最強の一角のセイバー…。
特にライダーと言う英霊は『宝具』…英霊の逸話や必殺技に特化したクラスでもある。
それが使えないと言う事は…つまり、
「…お仕置きの時間、かな?」
「よくもまあ、壬生の狼をここまで玩具にしてくれましたね…堪忍袋の緒が切れました!」
こういった事である。
日本刀を冷たく抜き放ち、ライダーのマスターたる海野を狙おうとするセイバー。
慌てて腰を抜かし、海野が止めろだの死にたくないだのわめく中…ライダーは、しかし余裕そうだった。
そして、へたれるそんなマスターに向かって、ライダーはこう言った。
…ここは、仕切り直しだよ!と
どう言う事かと、セイバーも海野も山本も頭をひねる中…ライダーはいきなり叫んだのだ。
「コレが私のもう一つの宝具…『爆弾発言謎移動(うまれてくるあかちゃんがいるのよ!)!』」
「ルビがひでぇぇぇ!」
そう言ったライダーは、さらばだ名探偵諸君!と言い残して虚空へと去っていく。
そんな様を、セイバーも山本も唖然として見るしかない。
「お、俺を置いていくなぁぁ!」
ついでに、マスターの海野も置いて行かれてた。
「あー、アイツは…『アン・ボニー』かな…ひっでえ宝具持ってんな…」
山本は呆れながら呟く。
そう、このライダー…アン・ボニー、西洋の女海賊である。
女海賊と言う事で、実に有名な海賊の彼女。
しかし、その実態は…実にしょっぱい。
名家の生まれのお嬢様として育ったが、彼女は…アウトローが好きなビッチでだいたい説明が付く。
特に海賊として、あるいは私諒船の乗組員として、大した成果はあんまり上げてない。
それどころか、ダメな方の男に流れては更にダメな方に流れていく…わりとそんな海賊だったりした。
しかし、彼女…海軍に捕まった際に「生まれてくる赤ちゃんが居るから処刑は止めて」と言い放ち、処刑を延期させ…そして行方を眩ませたのだ。
海軍は処刑、または病死した海賊はたいていきちんと記録をとる。
つまり、そんな記録が無く行方不明になった……つまりは、そういった事だ。
脱獄したか、家の金と地位を利用して、生き延びたのだろう…。
それが、彼女の、海賊としての最後にして最強の宝具、そのものなのだ。
「…聞いてみたら、酷い話ですね…」
「しかも、同じ手を使った相方の友人は病死したからな…それでライダーだけに作用して、マスターは置き去りになったんだろうよ」
「さ、最低じゃないですか!武士道にもとります!」
「…海賊だけどな、確かに人として最悪だわ…」
そんな事をセイバーに山本が説明しつつ。
泡を吹いているのは、海野だろう。
頼れる相棒は…見捨てていったのだから。
しかも、本当に『詰んだ』この状況、逆転する手段は、無い。
セイバーはそんな彼を、実につまらない…それどころか、道端の犬の糞でも見るかのような瞳で見下ろす。
そして、彼女は海野の首筋に刀を突き立てると…こう言った。
「貴方も貴方です、力に溺れてあんなに街をめちゃくちゃにして…士道、不覚悟!」
そうして、刀を突き立てようとした…刹那だった。
「…ちょっと待てセイバー、このガキに少しだけ話がある」
山本が、処刑を制止したのだ。
当然、セイバーはマスターにキレる。
「マスター!?止めるなら令呪でも…」
「俺もお前と同じ気持ちだ…別に、[ピーーー]のは止めないけどな、2つばかりあのガキに確認させてくれ」
マスターに言われ、しぶしぶと言ったばかりに刀を納めるセイバー。
目を白黒させる海野。
そんな彼らを尻目に、山本は話を続いた。
「1つ…お前は、あのライダーは狙って呼んだのか?」
「ち…ちげえ!俺は偶然……」
「なるほど、俺と同じ…じゃあ、本題だ…」
ライダーの召喚そのもののルートの確認、それは自分と同じ『偶然』か。
そして、山本はもう一つの疑問に質問したのだ。
「お前は、本当に『ライダーの目的、あるいは願いを知っているか』?」
あっと言った表情になる一同。
そうだ、主人を置き去りにしてライダーだけが吹っ飛んでも…単独行動のスキルをもたないライダーは遠からず消滅する。
魂喰い…人間の命・精力を『喰って』魔翌力を繋ぐ方法もあるには有るが、討伐対象にされるだけだ。
その時、海賊船を出すだけが能のライダーが生き延びれるとは…誰も思えない。
つまり…あの自殺行為に近い逃避には何か目的が有るのか、ライダーのマスターならヒントになる、
何らかの目標か、あるいは夢を叶える手段が有るのではないか、と聞いていたのだ。
しかし、海野から出た答えは…山本とセイバーを呆れさせるものだったのだ。
「し、しらねぇよ!…あの女、ライダーは『ノリと勢いが全部だ、楽しいのが正義だ』ってしか言ってねぇ!!」
海野の回答…つまり、答えはこういう事だった。
「…考え無しで、1人で逃げ出したって事か…」
「本当に最低…なんか切る気も失せました……」
山本もセイバーも、それはそれはげんなりした顔になったと言う。
そして、令呪の放棄と街の破壊の修復の手伝いを条件に見逃すことにした。
…なんだか、流石にライダーが最低過ぎて、目の前のマスターたる少年が哀れに思えたからだ。
[ピーーー]気力が、なかった…そういった話だった。
それから、海野は少しだけ、ボランティアで街を直しに何ヶ月も働くウチに謙虚な性格になったとは…彼を知る者達全てからの評価、だったとか。
「や………やらかしたぁぁぁぁぁぁ!」
どこかの海辺で、ライダーは絶叫する。
魔翌力切れで、宝具で飛んだ先で、到着した瞬間消滅したそうな。
聖杯戦争に参加した英霊…残り、6人
第二話終了続いて第三話投稿します
三話:正直キャスターだってやっぱりしょっぱい
「何で……何でよ……私の管理する土地で、聖杯戦争なんて……」
丁度、ライダーが自爆して、海野を半殺しにして決着を付けたその頃。
少女…竹内美香(たけうち・みか)は焦っていた。
17歳で両親が急逝、その後土地管理人としての魔術師としてその責務を受け継いだ少女である。
彼女は高校生でありながら、それなりの魔術刻印と家柄を誇る、それこそ、地方レベルで言えば群を抜く資質があったと言えよう。
とは言え、根元や何やらと言うものにはあまり興味はなく、家伝の魔術を受け継ぎ、家を潰さない程度につつがなく暮らせば良い程度にしか、魔術について考えていない。
少なくとも、聖杯戦争などと言った、大それたものに手を出す人物ではなかった。
しかし、今回の…暴走した聖杯戦争における英霊の無差別召喚。
彼女もまた、巻き込まれていた人間なのだ。
…しかも、呼ばれた英霊と言えば…
「我が輩のティータイムを邪魔するでない!街が少々穴だらけになったぐらいで騒ぐでないわ!」
「神秘の隠匿ってレベルじゃないのよぉぉぉぉ!人的被害0でも物的被害こんな出たら最悪、家が取りつぶされるわぁぁぁぁ!」
…尊大な上に、呑気過ぎであった。
さて、そんな事はさておいて。
話を主人公、山本とセイバーの話に戻そう。
山本はとりあえず、ライダーの事を決着付けた後、どうするかと考えて…とりあえず、土地の管理人の魔術師に挨拶しようと結論付けた。
管理人への早期の相談は手としては悪手ではないし、そもそも、黒幕が管理人じゃ無いなら本来は山本とは目的はかなり近くなる。
そもそも偶発的に参加しただけなんだから、これからの相談も必要になってくるかも知れない。
その辺をセイバーに相談した所…
「まあ、それで良いでしょうね」
と、特に反対されなかったので、その土地を管理する竹内の家へと足を運んだのである。
そうして、向かった先にたどり着いた2人だったが…とりあえず、その家の様子がおかしい。
とりあえず、人がめちゃくちゃ多い。
犬を散歩させている人も居る、ホットドックをかじっている人もいる、ビジネススーツでせわしなくしている人すらいる…
そんな人達が、百人ははくだらないだろうと言う数、せわしなく土地を蠢いている。
更に、家の敷地内なのに、何故か家や公園が数多覗いている。
料理屋や靴屋、服屋だってあれば、警察だって存在している。
それだけではない…汽車すら汽笛を鳴らし走っていた。
まるで…小さな街がまるごと入ったような、そんな不思議な光景だった。
そして…
「マスター…何語です?これ」
「英語かな、とりあえずここは…景都市と言う街の中に、イギリスかアメリカがまるごとやって来たって感じだが…」
…妙に欧米ナイズされていた。
「訳がわからんが…何かの攻撃かな?にしちゃあ…妙に平和なんだが…」
山本は不意に漏らした、そんな時だった。
「た、助けてくださぁぁい!」
どこからか、日本語の…女の子の声がした。
山本とセイバーは身構え、そしてその助けを呼ぶ声に答えようとした。
「行くぞ…!セイバー!」
「はい!片っ端から攘夷ですね!」
「地味に物騒だなお前!ちげえ!あの女の子助けるぞ!」
…新撰組の地味に強行な攘夷派だったよな、とセイバーの来歴に頭を抱えつつ。
山本はそんな少女の声のする方向へと足を向けた、その時だった。
「うちのキャスターの宝具止めてぇぇぇぇ!とりあえずお家帰してぇぇぇぇ!」
「…お、おう」
「…何のための令呪なんですか…」
「…あ!」
…特に、山本もセイバーも力を貸す必要性は、なかった。
「令呪を1角を以て命ずる、『とりあえず宝具をしまえキャスター!』」
カッと彼女の右手が光る。
そうするとどうだろう…右手に刻まれた紋章が3分の1消えて、その魔翌力はその輝きを放つ。
すると、みるみるうちに、その欧米ナイズされた小さな都市がなくなっていき、やや大きなサイズの普通の洋館とその敷地が顕れる。
そこには、山本とセイバーとその少女…そして、
「わ、我が輩の『大いなる我が帝国(ジ・アメリカ)』を…マスターと言えども皇帝に対して、無礼で有るぞ!」
なんだか尊大な男がふんぞり返って、コーヒーをすすっていたのだ。
「あ、あー…ジョシュア・アブラハム・ノートンか…あんた…」
山本は力なく呟く。
誰だそれはと、セイバーはおろか、そのマスターたる少女までが聞き返す中、その男は実に嬉しそうな表情で返したのであった。
「如何にも、我が輩はキャスターとやらで来た…アメリカ初代皇帝、ジョシュア・A・ノートンである!極東から来た若人よ、ゆるりとなされい!」
山本はそれはそれは見事な苦笑いで返す中、セイバーと少女は顔を見合わせていた。
アメリカ皇帝って何だよ、と。
ジョシュア・アブラハム・ノートン(ジョシュア・ノートン)
アメリカにかつて存在した「皇帝」である。
…ただし、自称でしかなかったが。
ゴールドラッシュなどの動乱期が終わった直後ぐらいのアメリカ、彼は投資で失敗。
素寒貧になり…精神に異常をきたした。
そして、いきなり「アメリカ皇帝」を名乗りだし、それを新聞社に投稿したのだ。
だが、彼はそれ以上の事は求めず、そして当のアメリカ国民はと言えば…受け入れた。
彼を「皇帝」と認め、ただのり用の汽車の切符を渡したり、サイン一つでレストランの料理をただでだしたりと、それはそれは愛されていた、とか。
臣下と言う友人は数多居たが、『部下』は飼い犬二匹だけだったと言う。
彼を評価する言葉として、「彼は、誰も奪わず・追わず・犯さない…唯一の皇帝だった」と言われる言葉が残っている。
「…って感じでな、とりあえずそんな危険人物じゃないぞ、その人」
「マスター、無駄に詳しいですね…」
山本がセイバーに向かって、簡単なキャスター…ジョシュアの事を解説した。
…ちゃんと説明しないと、下手したらセイバーが問答無用で切りかかりそうだったからだ。
そんな事をだまってキャスターのマスターたる少女が聞いていたが、キャスターに向かうとぷりぷりと怒り出した。
…そりゃ、家を閉め出されたら怒るに決まっているのだが。
何故いきなり悩んでいる自分を見て宝具を使ったのか、と言うかあの宝具なんなのか、令呪無駄使いしたじゃないか…と、延々怒る彼女だったが、キャスターはマスターに向かって臆面もなく言った。
曰く…お前の為だ、と。
どういう事だと、全員からつっこまれる中、キャスターはこう続けた。
「マスター、お前さんが…お前さんのせいでもない街の破壊にいちいち気に病んでいるのが気になってな…我が輩の『臣下』が頑張っている姿を見せて、我が輩の『領土』の美しい姿を見せてやれば、良い気分転換になると思ったのだ」
「…街の破壊って…」
「おお、なんだか巨大な海賊船が街を疾走したらしくてな、いやあ、不思議な時代になったモノだ!だが街を壊すのはいただけんな!」
あー、と言う山本とセイバー。
自分たちも巻き込まれた被害者だが、良く考えたら彼女…管理人の少女も被害者の
1人には違いない。
不可抗力に近い上にライダー組が全部悪いとは言え、責任はとらないといけない立場と言うものがある。
…とは言え、17や18そこらの娘には、荷が重い話だった。
それを気に病んで、気分転換になればぐらいで宝具を展開したのだろう。
キャスターにとっては、恐らく映画を上映するかのような、そんな話なのだから。
はた迷惑にもほどが有るが、悪気はなかったのだろう。
「マスター…この人と戦うのすっごい嫌です!異人だけど、いい人じゃないですか!」
セイバーはちょっと涙目になっている。
…まあ、一本気で良くも悪くも真っ直ぐな彼女には、多分一番苦手なタイプには違いない。
はぁ…と、山本はため息をつくと、管理人の少女に向かって話しかけた。
「ウチのセイバーは戦うつもりは現状無いし、俺も巻き込まれだ…セイバーの願いが容量喰うから完全同盟は無理でも停戦の提案がしたい…ってか、あの馬鹿ライダーの被害者同士だし、戦いそのものは乗り気じゃない同士みたいだしな…」
被害者?と聞く少女に、ライダーの宝具に巻き込まれて死にかけたんだ、と返すと、
彼女は意を決したような表情で、少女は右手を差し出した。
「わかったわ…竹内美香、キャスターのマスターとして管理人として、貴方の提案を飲みましょう…キャスターも私も戦闘は苦手ですし、私も願いは無く、キャスターも『アメリカ国民がちょっと幸せになってくれたらいい』と…聖杯に望む類いの願いを持っていません、力をお貸しいただけますか? 」
同盟の提案である。
わりと、セイバーは…格がなんかすごいしょっぱいとは言え、燃費のキツいクラスの英霊、キャスター…魔術師の協力は非常に山本にはありがたい。
セイバーも少しほっとした表情をしている、戦わずに済んだ、と。
そんな彼女の顔を笑いながら山本は眺めつつ、右手を差し出す。
握手が成立してなごやかに済みそうだった…正にその時だった。
「ヒャッハァァ!アメリカみたいなテーマパークがなくなったぜぇぇぇぇ!殴り込みだぁぁぁぁぁ!」
「ランサーたる俺が、最強で、最強なんだぁぁぁぁぁぁ!」
なんか、ランサー組が強襲して来たのである。
以上で第二話と第三話終了です
短い投下にお付き合いいただきありがとうございます
第四話と第五話始めます。
四話:こんなランサーは最強しょっぱい
「オラオラァ!てめーらのこのこ集まりやがって、まとめてぶっ潰してやるぜぇ!」
「最強の俺たちで、最強の勝利を手に入れてやらぁ!」
前回までのあらすじ。
なんか上みたいな事をほざきだした、ランサーとそのマスターが空気読まず土地管理人の敷地内に乱入して来たでござるの巻。
…柄悪いのが来たな!
まず、彼らの初見の印象はそれである。
マスターらしき男の方は、見事なまでの金髪にモヒカン。
大きな肩パッドを素肌に付けて、上半身はレザーのタンクトップ。
鋲を大量に打っており、妙にメタリックな印象を与える。
更に黒いレイバンのグラサンに黒いズボン。
…某北斗の雑魚まんまである。
彼の名は神楽坂次郎(かぐらざか・じろう)、こんななりだが、れっきとした魔術師である。
正確には魔術使い、か。
火を操る魔術を使い、非合法組織の雇われ用心棒をしている男だった。
そして、山本と同じく、偶発的に家伝の礼装を触媒としてランサーを召喚したのだ。
そして、肝心のランサーはと言えば…
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!俺は、最強だぁぁぁぁぁぁ!!」
こればかりである。
会話が全く成立してない、バーサーカーかお前は…と、山本は内心突っ込んでいた。
衣装は中国服で獲物は戟…薙刀のような中華風の長物ということで、とりあえず古代中国のサーヴァントなのはなんとなく予想が付くが、それ以上には特別変わった特徴は無い。
そして、その戟を、型を無視するかのようにぶんぶん振り回していた。
まるで、チンピラ崩れなマッチョが「俺は強いだろ?」と筋肉やナイフを見せつけるような、威嚇のような雰囲気で自慢げにその技を披露している。
別に弱そうにも見えないが…三國志か春秋戦国か、逆にもっと後時代のサーヴァントかはわからないが、中国サーヴァントで最強を名乗るには、少々ならず力不足に見えた。
「弱い犬ほどよくほえるって奴ですかね…」
セイバーも、ランサーの威嚇に呆れていた。
というか、一目でこうもげんなりするコンビに…それも1日二度も絡まれるとは、厄日だな。
山本も内心呟いていた。
竹内に至っては口をあんぐり開けて放心しており、キャスターもオロオロするばかりだ。
…ライダーが酷すぎて、主人公達には妙な耐性が付いていたのかもしれない。
そんなおり、モヒカンがいきなり口を開いた。
「奴らコンビを組んだのかも知れねえ!宝具行くぞごるぁ!」
「おう……あの、関雲長すらぶっ倒す、最強の俺様の実力を見やがれ!」
え…と、一瞬放心する主人公組&キャスター組。
こんな格がしょっぱい聖杯戦争で関雲長…関羽以上ってどういう事だよ!と一斉に突っ込んだ。
関羽以上って、もう光武帝とか始皇帝クラス、最低限でも曹操でも連れてこないとダメだろ…と。
しかし…ランサーの宝具を聞き、とりあえず仕事柄偉人にやたら詳しくなった山本は納得した。
…お前そういう事かよ、と。
「俺の宝具…喰らいやがれ!『我関雲長捕縛セリ(オレがかんうをつかまえた)!』」
「お前地味な方の馬忠かよ!」
地味な方の馬忠、三國志では孫家に仕えた方として区別されている馬忠である。
彼の逸話はただ一つ、「かの軍神関羽を捕まえた」。
それだけである、それ以上の記録は一切無い。
昇進したとか討ち取られたとか、詳しいことは一切書いてない。
本当に「関羽を捕まえた人」としか記録されてないのだ。
演義ではもうちょい見せ場があるのだが、まあ…モブの1人でしか無い。
さて、そんな彼の宝具と言えば…
「お、檻を召喚した…だと!」
「マスター!閉じ込められたみたいです!」
「な、何よコレ!?」
「ふむ、我が輩を捕らえるとは…」
漆黒の鉄檻に対象を捕縛する、シンプルながら厄介な宝具である。
すぐに山本は脱出を試みるが、魔翌力が強く流れており、破壊には骨が折れるだろうと予想がついた。
曲がりなりにも『宝具』、英霊が使用する武装は、並大抵の物ではないのだ。
そこに、皆が捕らわれている檻にモヒカンはこつこつと近づいた後、こう言った。
…俺たちの勝ちだ、と。
そしてこう続ける。
「てめーらはこの檻から脱出不可能よ!俺は外から火を放つ、魔翌力を込めてな!仮にサーヴァントは無事でもマスターは蒸し焼きだ!」
そして、横からランサーも口を挟んだ。
「そして、仮に貴様等がこの檻を壊して万一逃げ出そうとした瞬間、俺の戟が届くという俺の完璧な間合い!これぞ二段構えの最強の俺発案の最強戦術!」
はははは、と高笑いするモヒカンとランサーの二人。
ぎりぎりとセイバーが歯ぎしりし、竹内もオロオロしだし、山本も焦る中…キャスターだけは平然としている。
そして、冷淡な口調でキャスターは語った。
「ふむ、小細工にしては良くできた策だな…だが、我が輩とは格が違うな!」
何だと!とランサー組が威嚇する中で、キャスターはこう語った。
「では、見せてやろう我が輩の宝具の本来の使い方…『大いなる我が帝国(ジ・アメリカ)』!」
そうするとどうだろう。
彼らの目の前にあった鉄檻は綺麗さっぱりと消滅する。
否、既にあたりはさっきのアメリカの市街地だ。
公園も列車も交番も市街地も…あたりは先ほどみた光景と何一つ変わらない。
ただ一つ違う事はと言えば…そこに住んでいた住民達が、一様に怒っているという事だ。
握り拳を固めているのは当たり前、どっから拾ったのか、石ころやナイフや角材を握りしめている者もいる。
アメリカらしく、ウィンチェスターを整備するハンターらしき男も居た。
何事か、と焦るランサー組に、キャスターは毅然として言い放った。
「これが我が愛しい祖国、これが我が愛しい臣民…いや、同じ帝国を愛した友人だ!それこそが我が力、我が宝具!我が輩は何一つできない弱いサーバント…いや、人間だったが、絆という魔法が、我が輩そのものの力なのだ!故に…汚らしい貴様の檻ごとき、アメリカの自由を愛する心で吹き飛ばしてやった!」
んな無茶な…と、全員思ったが、同時に彼の力の本質を理解した。
彼は、『アメリカそのもの』の化身に近い。
使用する力は限定的かつ本人は一般人レベルの力しか無いが、その宝具はある種の『アメリカ』という名前の固有結界そのものなのだ。
言ってしまえば「対国宝具」と言うべき宝具なのだろう。
あくまでも対人クラスのランサーの宝具では、太刀打ちできない、規模が違いすぎるのだ。
戦慄する全員に向かって、キャスターは更につづけた。
「我が友人達はあくまでも一般人…それも、我が輩の信念に縛られて『[ピーーー]』事はできないし、何よりサーヴァント相手には叶わない…だがな」
そう言うや否や、いずこからかモヒカンに向かって石が飛んでくる。
土やら野球のボールやら、酷いものになれば馬糞が詰まったバケツまでモヒカンとランサーに向かって飛んできた。
「別に、殺さずとも無力化する方法なぞ、いくらでもある」
すげえ…山本は素直に思っていた。
圧倒的な宝具の能力によって、仮にも3騎士の一角たるランサーをああも手玉に取っている。
セイバーも、喧嘩売らなくて良かった…という表情をしていた。
あの絶対のフィールドを維持されたら、どんなサーヴァントも勝ち目は無いだろうから。
だが、そんな無敵のフィールドも…長くは続かなかった。
「おや、我が輩の宝具もそろそろ時間切れみたいだの」
そういうと、全員が居たアメリカから、さっきの屋敷の敷地内へと戻っていた。
もう時間切れなの?とキャスターは竹内に問い詰められて、キャスターはなだめる中…
宝具から解放されたモヒカンとランサーはぜえぜえ言いながらキャスターを睨みつけていた。
そして、野郎殺してやるぜ…と、呻き、さっきの檻の宝具を使おうとした、その刹那だった。
「貴様等…俺たちをこけにしやがって…ほう…」
「…遅い」
ランサーが、股から頭にかけて、真っ二つに両断されたのだ。
いきなり何事かと、目を丸くしたモヒカンに向かって、山本とセイバーはこう告げた。
「さっき宝具の開帳の許可は出している…これぞ、セイバー最強の必殺剣…」
「『龍飛剣』です、あなたも真っ二つになりたいですか?」
龍飛剣、沖田の三段突きや斉藤の左片手平突きに並ぶ永倉の必殺技である。
股から頭に向かって下からズバッと切り裂く、最強無敵の剣。
この技で、セイバーは新撰組3指の実力を得た、と言われている。
ましてや、宝具として昇華されたなら、防御不能の『必殺』技になるだろう。
本質的には…規模があまりにも違うのだが、ギルガメッシュの乖離剣エアに近い概念へと、昇華されている。
さて、相棒たるランサーが…それはあっさりと、呆気なくセイバーの剣のサビになった事をモヒカンは理解するにつれて、それは面白いぐらい顔が真っ青になったという。
小便はおろか軽く脱糞しながら、さっきまでの威勢はどこへやらとばかりに、ウサインボルトも裸足で逃げ出すような足の速さで、ごめんなさーい!とモヒカンはいずこへと消えて行った。
「…しょっぱい人たちだったわね…」
竹内の言葉に頷く一同。
何かどっと疲れた、そんな表情に一同なる。
そんな姿を…
「ふむ…彼等なら、俺のマスターと男のブルースを奏でられそうだ…」
アーチャーが、遠くの物影から覗いていたのであった…
第四話終了続いて第五話を投稿します
五話:黒幕の計画の雑さは残念しょっぱい
さて…
ランサー組を退けて、一段落ついたセイバー&キャスター組。
これからどうしようか、という話になった際、竹内から山本とセイバーに提案して来た。
うちに泊まらないか、と。
確かにお互いにメリットの多い話ではある。
セイバー組視点からしたら、土地勘が有って有能な管理人がバックに付いてくれてるのはありがたい。
キャスター自体は魔術師としての適性そのものは低いとはいえ、最低限の陣地作成と礼装作成は出来るし、マスターの方はそれ以上に有能である。
戦闘に特化し過ぎたセイバーからしたら、キャスターのバックアップは戦術の取れる幅が一気に増えるのだから願ってもないだろう。
キャスター組視点からすると、単純に用心棒が欲しい…コレだけに終始する。
キャスターの宝具が癖が強すぎる為、規模こそ最強なものの、戦争最弱のキャスターは…
それこそ、まだ見ぬアサシン・バーサーカー・アーチャーからしたら良いカモなのだから。
山本は、ホテルの予約キャンセルしないとな…と呟きつつ、それを了承。
聖杯戦争中、離れを借りて、用心棒代わりに寝泊まりする事になった。
…なお…
「マスター!ベッドがふかふか、凄いふかふかです!何か窓から見える景色も良いし、晩ご飯も凄いおいしかったですね!あんな豪華な洋食はじめて食べました、攘夷思想がちょっとゆらいじゃいます!…後は、お酒…日本酒はどこでしょう?あ、今から買いましょうよ!『こんびに』…でしたっけ?万屋さんが真夜中に開いてるらしいですし…」
「夜中の二時にうっせえセイバー!令呪で死なすぞ!」
寝ずの番をする山本の隣で、セイバーが相当はしゃいでたとかそうじゃないとか。
さて…そんな事が有った日の翌日の朝8時ぐらいか。
竹内邸へと、2人の来客が現れた。
山本が慌てて確認した際、遠間から見るには詳しくはわからないが、30代か40代ぐらいのナイスミドルと10歳ぐらいの少年という組み合わせだった。
…親戚の来訪、とかじゃ無いよな。
山本は小さく呟きながら、相棒に声をかける。
「どうやら早速出番だぜ、行くぞセイバー!」
「…はう、朝ご飯ですか?マスター?」
「ちげえよ!聖杯戦争の…来客だ!」
最初は寝ぼけてトンチンカンな事を言っていたセイバーだったが、戦争という言葉を聞きセイバーも一気に戦士の顔になる。
…マスター、さあ、行きましょう!とセイバーが言った、まさにその時だった。
「すみませーん、停戦の話に来ましたー!」
「マスターの魂の叫びを聞いてやってくれ!」
こんな二人の叫ぶ声が聞こえる。
…なんだか、山本もセイバーも顔を見合わせるしかなかった。
それから、敵意が無いことを示すかのように両手を上げながら竹内邸に入る二人。
そして、竹内の命令で客間で全員集められた中で、件の来客2人は自己紹介をする。
「僕は、三神鏡助(みかみ・きょうすけ)って言います!そして、こっちが僕のサーヴァント…」
鏡助と名乗る少年がぺこりと挨拶する。
そして、整えた髭と撫でつけたオールバックが妙に男臭い…ベージュに統一したスーツにコートがむせかえる様なダンディー臭を漂わせつつ、鏡助に視線を送られた男は皆の前に出る。
そして、そのダンディーさんは、ぐるりと一回転して額に手を載せながら語り出した。
「俺は…心の独唱(ソロ)を愛する孤独な狼(ウルフ)…誰にも縛られない、それが、男のブルース…」
「うぜえよ!一日中この調子で会話しなきゃなら無いこっちの身になってよ!てかクラス紹介しなよアーチャー!」
…うざかったので、マスターがしばきながら、アーチャーのフォローに入った。
…これはこれでしょっぱいなぁ、と全員が心の中で呟きつつ、キャスターだけが首を傾げる。
貴殿、どこかで見たような、と。
ああ、お前さんはアメリカ皇帝様か、俺とは違って交響曲(マーチ)を愛するやつだったな、とアーチャーは笑いつつ…
しかし、アーチャーは真面目な口調になると、こう切り出した。
…バーサーカーとアサシンを止めてくれ、と。
まだ見ぬサーヴァントの情報をどこで手に入れたのか、と一同が聞く中で、今度は鏡助が口を開いたのだ。
「すみません!この迷惑な聖杯戦争…本当は僕のせいなんです!」
どういう事か、とセイバー組とキャスター組が顔を見合わせる中、鏡助は頭を下げ続けながら話を始める。
それは簡単に纏めるとこういう事だった。
そもそも、三神家とは占星術を軸にした、一種の土着の魔術師一派だった。
その能力を使い、その地の武人や名家に取り入り、占いをして生計を立てていた。
しかし、明治維新以降、非科学的な存在が排疎されるにいたり…三神家は実質的に滅亡した。
だが、家伝の魔術を、三神家は細々と受け継いでいたのだ。
そうして、魔術刻印とその技術のみひっそりと継いだ中で、1人の少年が産まれる。
三神鏡助とは、それだった
彼には魔術刻印が有って、そして…魔術回路が、一般人程度の数しかなかった。
言ってしまえば、コンセントだけ沢山有って、電線が全く通っていない。
鏡助とは、そう言う少年だった。
単独行動スキルが有る、燃費の良いアーチャーで無ければ、それこそ半日でサーヴァントを保てないぐらいの魔翌力量しか扱えないぐらいに、だ。
別に鏡助自身には魔術師としてのあり方はまるで興味はなかったが、それを嘆いた人物が2人居た。
姉の環と兄の剣八、三神の魔術を受け継いでいた2人だったのだ。
…弟の魔術回路をせめて普通の魔術師程度を数まで増やして、三神家の再興の礎にしなければ、と。
兄弟愛なのか、魔術師としての家の使命なのかは…その判断は任せよう。
「…そこで、擬似的な聖杯戦争、か」
「そうです、お兄ちゃんとお姉ちゃんでも扱えるぐらい、わざと格を落とした聖杯戦争を」
山本のツッコミが入りつつ、とにかく、彼らは聖杯戦争を開始した。
作戦はこうだ。
比較的呼びやすい、そして取り回しがわかりやすいアサシンとバーサーカーを自分たちが先行して呼ぶ。
そして、彼らが選んだ、聖杯戦争に頼らないといけないような困窮した三流以下の魔術師たちを狭い箇所に集めて、触媒になりそうなモノをそこに送りつける。
そして、聖杯戦争が開始した瞬間、アサシンをけしかける。
参加者を皆殺しにしてアサシンを令呪で自害、残ったバーサーカーは理性がない。
つまり…聖杯を独り占めできる、そう言う手筈だった。
だが、彼らには…ものすごい誤算が有ったのだ。
アサシンもバーサーカーも狂性が強い…というか、大体バーサーカーの適性のある反英霊はハサンを呼ばない限りアサシンで呼べてしまうので、暴走の危険が酷い。
今回もそんな感じであり、令呪ですら完全に制御が利かないという酷さだった。
「…そんな英霊、自害させちゃいなさいよ」
竹内が思わずツッコムが…鏡助は、それはそれはげんなりした顔で頭を抱えた。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも、もうやった、と。
はあ?!と騒然とする一同を無視して、鏡助はこう言った。
「バーサーカー…鰐です、身体構造的にそもそも自殺なんて無理…というか、爬虫類なんで自殺の概念が多分わかって無いです」
「ちょ…はぁ!?」
「アサシンはお侍さん…だったかなぁ、バーサーカーよりマシだったけど、『自害』が何かブロックワードというか令呪で強要されるのが概念レベルで嫌だったみたいで…『死にたくないでござる![ピーーー]のは大好きだけど痛いのは嫌でござるぅ!』って、令呪の縛りすら抵抗してて…」
「最悪だぁぁぁぁ!」
…人選を、ミスっていた。
はぁ、と、そんな皆を見ながらアーチャーは一つため息を付くと、最後にこう纏めた。
「…とにかく、まあコイツらの選んだサーヴァントが暴走してしまったらしくてな、英霊光臨の術式が中途半端なまま暴走しちまって、俺たち他クラスの連中が事故で呼ばれた、そんな感じでな…しかも、サーヴァントに拉致されるように、マスターの姉貴や兄貴たちが行方不明になったのさ…それを止めたい」
なるほどと、事件の経緯を把握する一同。
これで、強制参加の聖杯戦争というイレギュラーの謎は片付いた。
…そして、悪いのは全部、目の前にいる少年の兄と姉だという事も。
はあ、と一言呟いた竹内は鏡助に顔を上げるように言うとこう言った。
「貴方は、今回巻き込まれただけで何も悪くないわ…保護ならしてあげるから、『今回の街の被害が全部その兄と姉のせい』って口裏合わせてくれるなら、いくらでも協力するわ!」
…半分ぐらい打算の、保護の提案だった。
だが、そこにアーチャーは口を挟む…それでは通らない、と。
「あくまでも、俺たちは『バーサーカーとアサシン』の討伐が目的だ、下手すると無差別な魂喰いが発生するからな、そのための協力を頼みに来たと言う寸法だ…まあ、マスターの保護自体は願っても無いが、俺にはかなり容量を食うだろう願いもある、同盟自体は直ぐ崩れるだろう」
一同はアーチャーの言に納得する、それはそうだ、と。
更にアーチャーはこう続けた。
「つまり…俺たちは一方的に借りを作りながら、裏切ると、こんな男の背中を汚すやり方を公言してる訳だ…なのでな、2つ縛りを己に与える…一つは『俺の宝具をお前さん達に向けない』、俺の宝具は発動条件が難しい分だけ本当に『必殺技』だ、防御も回避も不可能なんだよ、それをお前さん達に向けないことを自己誓約(セルフギアス)で出そう…そして、もう一つ…俺の真名を教えよう」
真名…とざわつく中で、アーチャーはこういった。
「俺はパット・ギャレット…しがない、アメリカのハンターさ」
以上で第四話と第五話終了です
短い投下にお付き合いいただきありがとうございます
なかなか面白い
ノートンとか目の付け所が凄いしテンポも良くて楽しい
支援
第六話と第七話始めます。
六話:アサシンの末路はあっさりしょっぱい
「誰かと思えば、キミはいつか新聞で見たような気がするよ…我が輩の帝国の、愛すべき臣民(フレンド)の1人とは、じつに我が輩も嬉しいよ」
「俺も…同窓に会えて酒が旨いな、あんたの風下に立ったつもりは今までもこれからも無いがな!」
キャスターとアーチャー…ジョシュアとパットは談笑しつつ、実に嬉しそうな表情でアメリカ人らしく、男同士だと言うのにハグを交わしていた。
妙にお前ら仲良いな、この場にいた全員が思った事だが…山本は、1人納得していた。
キャスターとアーチャーがやたら仲が良いことも、アーチャーが自分の宝具を「必殺技」と評した事も。
それは、パット・ギャレットと言う1人のガンマン、そのものの人生の縮図なのだから。
パット・ギャレット
彼は、硝煙と策謀が嵐のように飛び交う、西部劇の時代のガンマンである。
彼自身は、本人の言うように…アウトロー寄りのハンターのような生き方をしていた。
バッファローハンター、一時期はそれを生業とした職業ハンターでも有るが…保安官も経験している。
つまり、彼は人を狙ったハンターでもある、そういった…その当時のガンマンらしいガンマンである。
そして彼がハントした男は…それは「王」であった。
それは、ビリー・ザ・キッド、ガンマンの時代が産んだ「少年王」。
悪行の限りを尽くしたガンマン、西部劇の時代が産んだ悪と自由の象徴たる男…ビリーはそう言う男だった。
パットは、それを討ち『西部劇』の象徴を終わらせた、そう言う男だった。
恐らくだが、と山本は脳内で頭に付けながら思う。
パットの宝具はそれが逸話なのだろう、他に英霊らしい逸話は少ないのだから。
必殺技と言うか、暗殺や謀殺がそのまま呪いとして機能する、そう言う宝具なのだ。
少年王すら屠った宝具…なるほど、事前に知らなかったら危なかったかも知れない。
山本は1人、そう結論つけた。
さて、そうこうしているウチに、バーサーカーとアサシンをどうするかと言う話になった。
それはそうだろう、彼らは暴走して街をさ迷っている。
どこに居るのかが、まるで全く掴めないのだ。
魔翌力の方向を掴めば、それでも大ざっぱには掴めるが…正直、焼け石に水である。
山本や竹内がとりあえず式神や使い魔を飛ばすが…望み薄だろう。
砂漠の中のコンタクトレンズ…と、までは行かないが、一般人に被害が現れる前に見つけて、そこに急行する。
不可能では無いが、かなり難しいだろうと焦っていた…その時だった。
キャスターがいきなり口を開いたのだ。
…私に任せてくれないか、と。
そして、キャスターはこう続けた。
「我が輩の宝具は、『領土』ごと呼び出せば維持が相当大変だが、『臣下』だけを呼ぶなら維持は簡単だ、何せ単なる一般人の召喚だからな…ふむ、探偵のビッキーか警官のジェニー辺りが良いか、ホームレスで暇なグーイでも巻き込むか…いっそ、スリのロナルドやプルトーでも呼び出すかの?人探しなら任せられる人材なら15人は下らん」
…本当に便利だな!と、全員がキャスターを見直した。
それから二時間ほど経った後、場所を景都市の市街地…その裏通りに場面を移そう。
そこでは、3人の男女と一匹の鰐が居た。
2人の男女はお互いに顔を見合わせて真っ青な顔をしている。
そんな2人を睨むかのように、1人の侍が刀を抜きながら、イライラするかのようにあたりをうろちょろしている。
鰐は…無表情に、まるで獲物を狙うかのように静かに彼らを眺めていた。
黒幕の三神環と三神剣八、彼らとそのサーヴァントの姿であった。
…どうしてこうなった。
環も剣八も真っ青な顔のまま、その言葉だけがぐるぐると回っている。
自分達の計画は完璧だったはずだ、弟の為に…家の為に、計画した完璧なものだ。
生け贄たる候補者達も犯罪者崩れのみを選び、協会やらなにやらから目を付けられにくいようにした。
触媒もそれっぽいような、弱いサーヴァントしか呼べない物だけを用意した。
そして…自分達は、計画に最適なサーヴァントを召喚した…ハズだった。
主を裏切らぬアサシンと、余計なことを考えない獣のバーサーカー…そういった手筈だったのだ。
だが、実際に呼ばれたサーヴァントと言えば…
「拙者のぐるぐると煩わしいこの魔翌力の枷がなくなったら、まず真っ先に貴様らから殺してやるでござるぅぅぅ!」
「グギュアァァァア!」
こんな感じである、明らかにマスターを[ピーーー]気満々だ。
令呪を無理やり「枷」にして殺害しないようにしているが、そろそろ限界に近かった。
「や、止めてアサシン!私たちをこ…殺さないで!」
「バーサーカー!俺たちは美味しくねえぞ!こっち来るな!」
「やかましい!先ずは拙者たちに自害を命じた貴様等を…殺して喰う!それから暴れるだけ暴れるでござるよ!」
「ひぃぃぃぃぃ!?」
そう、本当に限界だった。
環と剣八の令呪の残りは既に0。
もはや、この令呪の魔翌力を破られたら…文字通り、『餌』として魂喰いの的にされるだろう。
環に至ってはちょっと魔翌力がある程度の女だ、アサシンになぶり物にされる可能性だってある。
「誰か……助けてぇぇぇぇ!?」
2人は失禁しながら、恥も外聞もなく助けを求める。
その時だった。
「…マスター、令呪ってこう使う事も出来るんですね」
「まあ、本質的には単なる無色の英霊を操る魔翌力だ、ロスはデカいが3角分集まれば、移動ぐらいは使える」
山本とセイバーが…
「とりあえずコイツらに責任取らせないと、死んでおじゃんじゃこっちにお鉢が回って来るの!」
「…マスター、ぶれないであるな」
竹内とキャスターが…
「お兄ちゃん、お姉ちゃん!助けに来たよ!」
「…見捨てない、それも男の業さ…!」
「アーチャーうっぜえ…単に、僕や家の為にやったのに死んだら、目覚めが悪いんだよ!令呪でそのうざい口調矯正するよ?!」
「……」
鏡助とアーチャーが、彼らの目の前に現れたのだ。
弟よ…救世主よ…と言う彼らを、全員が怒気を含んだ冷徹な目で黙らせつつ、アサシンとバーサーカーを飛んできたメンバーは見据えた。
さて、何故、セイバー・キャスター・アーチャー組が瞬間移動が出来たかだけは解説しよう。
実は、キャスターの宝具…その1人、ジェニーが黒幕たちらしき物達を探し出し、それを念話でキャスターに伝えた際、ジェニーはこう言った。
…本当に危ない、今すぐにでもマスター殺しと魂喰い、それどころか無差別な殺人テロが発生する、と。
どうしよう、瞬間移動でもできないとまずい…そうセイバーが言った時、山本は、それだ!と声を上げた。
「…ふむ、ならば本当に瞬間移動してしまおうか、座標はジェニー…だったっけ、キャスターの宝具が有るからしっかり把握できてるし、後はすごい魔翌力が有れば、簡単な術式を組めばそんな座標に吹っ飛ぶのは簡単だ…どっかのアホのライダーみたいにな」
すごい魔翌力?と全員が聞く中で、山本は右手を掲げた。
「『令呪』、別に命令権として使わなくても英霊の能力のブーストや治療にも使える無色の魔翌力だ!この場合、キャスターの宝具の補助…と言うか回収の変形だな、キャスターの宝具の座標に吹っ飛ぶ形で全員巻き込めば良い…2角、いや3角使えば6人の人間ぐらい楽に運べるよ、それを俺が出せば良い」
なるほど、と皆が山本の説明に納得するが竹内は質問する。
…それで、貴方は良いの?と。
山本はセイバーを、少し恥ずかしがるような表情で見ながら、話を続けた。
「…セイバーは、こう、思った以上のアホだけどさ」
「マスター、アホて」
「でも、令呪で縛るような相手には思えない…維持なら俺の魔翌力でも充分できるしさ、それぐらいのリスクぐらい大丈夫さ」
マスター…と、セイバーが感涙する中、で竹内と鏡助が顔を見合わせる。
そして、はあ…とため息をつきあい、山本をスリッパで一発すつしばいた後、2人はこう言った。
…あんたにだけいいかっこさせるか、と。
「うちのキャスターもアホはアホだけど、貴方と同じ気持ちよ…と言うか、元々うちの宝具なんだから、こっちが負担するのが筋よ」
「…と言うか、そもそもの原因が僕の家の話なんだから、僕が負担無いのも変だよね…なら、みんな1角ずつ出して3角って事にしようよ、アーチャーもやっぱりアホだけど、無理やり言うこと聞かせる相手違うし」
…全員アホって酷いよ!とサーヴァントはマスターに文句を言いつつ、件の座標へと飛んだのだ。
さて、そうして、まるでヒーローのように現れた3組のサーヴァントとマスターのコンビ。
アサシンは…呆気にとられたような表情でそれを見ていたが、とりあえず自分を止めに彼等は現れたとは、しばらくして理解した。
そうして、怒ったような、笑ったような表情で彼等をアサシンは見ると、まずは貴様等からサビにしてやるぜござる!と、誰に向けて言ったのかわからないように叫ぶ。
そして…なめ回すかのように、3組の新顔を眺めると、一番弱そうな…そう、キャスターとそのマスターに向かって突進する。
「ひゃぁぁぁぁぁははは!まずは、てめえらから拙者の必殺宝…ぐ……」
しかし、彼は、そう言葉を言い切ることもなく、股から両断されてしまった。
…龍飛剣、セイバーの剣だった。
そして、セイバーと山本は呆れるかのように呟いた。
「士道の無い剣に負けません、新選組は…同じ思想を持つ勤皇攘夷志士とは言え、弱いものからしか殺せない愚かな獣風情には!」
「…せめて武市の忠臣としての側面が出たら良かったな、『侍』かつ『暗殺者』で『痛みを嫌がる』…もうそれが答えだろアサシン、否、『岡田以蔵』!」
そう、アサシンの正体、それは岡田以蔵…幕末四大人切りの1人として知名度が高い人物である。
特に、岡田以蔵は残り3人より人を斬っており…それ以上に『狂犬』として有名だった。
武市に心酔し、冷酷に彼等の敵を[ピーーー]暗殺者だったが、学が無く、血の気が多い男でも有った。
簡単に言えば、「強いがよほど彼を心酔させられないと信用できない」そんな人物でも有った。
また、拷問を受けたさい、それはそれは流れるようにゲロって身内の組織を壊滅させかけたと言う、人切りとして最悪な所業も行っていた。
…本当に、環は「武市の忠犬」と言う側面を期待して呼んだのだろうが、ここまで地雷だとどうしようもないだろう。
「…まあ、そんな人の末路なんて、私の剣のサビがふさわしいしょっぱさですよね…さて」
そんな事を呟きながら、セイバーは次なる敵へと標的を定める。
そこには、そろそろ令呪の縛りがなくなって、今にも暴れ出しそうなバーサーカーが、『餌』に向けて舌なめずりをしていたのだ…
第六話終了続いて第七話を投稿します
第七話:バーサーカーを産んだ世界はしょっぱい
…そろそろ、飯の時間を邪魔する、この何かうざい空気は消えたな。
バーサーカーは内心…と言うと正しいのかはわからないが頭の中でこんな思考をしている。
獲物はひいふうみい…沢山。
だが、少なくとも、まるで食べ放題のオードブルのようにバーサーカーは感じる。
餌があるな…いただきますと、そう思い、バーサーカーは大口を開けた、そんな刹那…バーサーカーを一陣の風が貫く。
「喰らいなさい!龍飛剣!」
するとどうだろう、バーサーカーは真っ二つに両断される。
だが、バーサーカーはそんな事は、まるで気にしない。
…あの、変な格好のメス、痛いじゃないか…喰う気はまるでしないがキサマから殺そうか?
そんな事を考えながら、まるで何事もなかったかのようにバーサーカーは歩を進める。
そんな姿には、セイバーが両断した痕は、どこにもなかった…
「な…龍飛剣が、きかない!?」
セイバーは、と言うかその場にいた全員が焦っていた。
真っ二つにされて蒲焼きのようにされたハズのバーサーカーが、何事もなかったかのように復活したのだから。
特に…セイバーの力の本質を理解している山本は、セイバー以上に焦る。
何故ならば、セイバーの力の本質は新選組組長と言う本人の能力以上の、この国民の祈りと願い。
そう…最後の剣士集団と言う浪漫の象徴、そんな祈りが彼女の宝具の一撃必殺としての力の本領なのだから。
少なくとも、日本で聖杯戦争を行った場合、そうで有った。
だが、そんな呪いのような剣閃を受けても、この鰐は意に介さない。
それどころか、更に怒り出すバーサーカー。
その姿も更に変化が生じ始めていた。
体長も今まで6メートルは有ったような超巨大な体躯だったのが、その倍は有るのではないかと言うぐらいに…どんどんどんどんと、その姿を拡大するように巨大化させている。
牙も、その形相も…恐ろしく厳つくなり、本当に比喩無く『化け物』かのように、その姿は異業へと変えていく。
まるで、漆黒のドラゴンと言うような、バーサーカーはそんな姿へと変えていた。
「な、なんだ…あれは……」
鏡助はたまらずつぶやく。
いや、全員思っただろう、あの異業の化け物は本当に単なる鰐なのか、と。
山本も思考を巡らせる…だが、正確な答えは出ない。
エジプトや東南アジアのような、鰐に親しみ深い社会では、なるほど神話や伝承に鰐はいくらでも出る。
だが…該当しそうな鰐の伝承がまるで無い。
それどころか、この鰐には…『呪い』のようなオーラは感じられても、それ以外は、神秘どころか歴史すら感じられない、ただの鰐でしかなかったのだ。
その鰐…バーサーカーは食べやすそうな餌へと目を向ける。
それはバーサーカーが生きてた頃からの経験から知っていた…小さい人間は、でかい奴程食べ応えはないけど、柔らかくて食べやすい…前菜は、お前だ、と。
そして、その対象に向けて口を開けた。
「ひ……僕を……」
「鏡助ぇぇぇぇ!逃げてぇぇぇぇ!」
小さい人間…鏡助へと、だ。
姉の環も、泣きながら弟へと絶叫する。
誰もがバーサーカーに喰われる、そう思った…その時だった。
「『大いなる我が帝国(ジ・アメリカ)』!縛りの中で殺せんが…これぐらい、貴様には屁でも有るまい!バーサーカー!」
キャスターの宝具、そこから列車を虚空から呼び出してバーサーカーを轢く。
たまらずバーサーカーは汽車に吹き飛ばされるが…キャスターの言葉通りだった。
むくりと、本当に何事もなかったかのように立ち上がり、その視線を餌に向ける。
そのまま、グォォ!とバーサーカーは叫ぶと、その姿はまた、一回り大きくなった。
まるで、『俺は殺しても死なん、殺せば殺しただけ元気に成るぜ!』と、言うようだった。
「…クソっ!バッファローやコヨーテならいくらでも殺ったが…俺の拳銃じゃ…」
アーチャーもダンディーの仮面がとれるぐらいの焦り方だ。
自身の拳銃を乱射するが、まるで効果は無い。
蚊に刺された、本当にそんなレベルのダメージしか与えられない。
「く…何で!私の剣を…きゃあ!?」
セイバーはアーチャーよりだいぶマシだが、それでも宝具すら効果は無い。
空間ごと切り裂く絶対無敵の剣、それが…効かないと言うより暖簾に腕おしだ。
ギルガメッシュの乖離剣エアやアーサー王のエクスカリバーのような概念兵装たるセイバーの龍飛剣でも、人一人を両断出来るのが限界の龍飛剣では、この化け物を『削り』きる事はできない。
「我が輩は…なんと無力だ……」
キャスターはうなだれるばかりだ。
彼自身は熊どころか鹿と戦って勝てるか怪しい一般人でしかない。
戦闘が苦手なクラスで有るが故に尚更である。
頼みの綱の宝具も『殺せない』、これは彼自身が扱う上での絶対の呪いだ。
…さっきは列車をぶつけて怯ませたが、それすらバーサーカーにはもう効かないだろう。
マスター達も黙っている訳ではなかった。
敵味方合わせて、あらゆる魔術で抵抗する。
炎や水や呪い札や地割れ…扱える、あらゆる魔術がバーサーカーを襲う。
だが、バーサーカーは…まるで無傷だった。
…こんなヤツ、どうやって倒したら良いのよ!
竹内が思わず叫ぶ、目の間の化け物をどうやって倒したら良い、と。
魔翌力切れを待つまでほっといたら…その前に魂喰いだ、文字通りの獣なのだから躊躇わないだろう。
そんな彼女の嘆きに、アーチャーはポツリと呟いた。
…真名、こいつの名前さえ判れば、と。
そんな彼の言葉に反応したのは、バーサーカーのマスター、三神剣八だった。
「アーチャー…あんた、この化け物鰐の名前が判れば倒せるのか?!」
「…俺の宝具の発動条件の一つだ」
「なら、いくらでもこいつの正体教えてやる!こいつは『ギュスターヴ』だ!ナイルワニの人喰い鰐だ!」
てめえ何て馬鹿なサーヴァント呼びやがった!と、山本の拳が剣八の顔面に飛んだ。
ギュスターヴ
それは『巨大な人喰い鰐』の名前で有った。
6メートルはくだらない体躯、凶暴な瞳、そして…人を食べると言う悪習。
そう、このナイルワニは、人間を数多食べていたのだ。
犠牲者は100をくだらない、まさに『災害』だった。
討伐令は幾度も出されたが、ギュスターヴはことごとく退け逃げ続けた。
そして、その鰐は2008年に目撃証言がなくなるまで、一説には300年近く、人を襲っていたと言う。
…あるいは、『ギュスターヴ』とは、一匹の鰐の名前ではなかったのだろう。
歴史の中で生まれたいくつもの巨大鰐、それが人を喰うたびに世間は『ギュスターヴ』が人を喰ったと、そう言ったのかもしれない。
そもそも、本当は人間なんて食べなくなかったのかも知れないが、戦争や開発の中で、人を食べざるを得なかったのだろう。
そう言う、歴史の積み重ねから来た『負』の認識の歪み。
『殺しても死なない化け物鰐』と言う、この鰐への歪んだ認識…無為の怪物。
バーサーカーはそう言う存在で、宝具はそう言ったものだった。
「…なるほど、『人が産んだ怪物』か…聞きゃ、酒のアテになる話でも無いよな…」
山本の説明に、悲しそうな表情を見せるアーチャー。
そして、意を決したかのようにこう言った。
…すまない、お前が悪い訳ではないが、世界はお前の存在を許さないのだろう…
そして、こう続けて、自身の拳銃をギュスターヴ…バーサーカーへと向けた。
「お前…『倒すべき相手』の名前を知る…『俺が倒さなくてはならない』と信じる…そして、最後に『マスターが俺を信頼してくれる』…条件は揃った」
自戒するかのような口調で、そうつぶやく…
そして、アーチャーは自分の宝具の名を叫んだ。
「さらばだギュスターヴ!『歴史を終わらせる銃弾!(ラスト・パニッシュメント)』!」
そうすると、どうだろう。
一発の銃声が街に響いたかと思えば、バーサーカーはいきなりのたうち回る。
まるで、重い病気か何かに苦しむかのように、バタンと倒れてビクビク震えるばかりだ。
それでも立ち上がろうとした瞬間、バーサーカーは耐えられず倒れてしまう。
そんな様を、アーチャーは憐れむような視線で見下ろし、まるで、バーサーカーに許しを乞うかのように語りかけた。
「俺の一撃はお前と同じ負の呪い…『古き良きアメリカ』を終わらせた、正しいが憎しみが多分に入った呪いの銃弾なんだ…だからこそ、俺を肯定してくれるマスターがいる限り、その弾丸は正義としての側面の力で機能する…だから、すまない、人間の呪いのせいでなかなか『[ピーーー]ず』苦しいだろうが……『正義』、いや、マスターの未来の為に、死んでくれギュスターヴ…」
そんなアーチャーの言葉を受けて、バーサーカーは涙を一筋流した。
生理現象か、痛みからか、それとも…『呪い』を受けて、心が芽生えたのかも知れない。
そんなバーサーカーは、こてんと倒れ動かなくなると、魔翌力切れからか虚空へと消滅した。
…なんだか、しょっぺえや
アーチャーが一言だけ、バーサーカーがいた場所に向かって呟いた…
以上第六話と第七話で終了です
短い投下にお付き合いいただきありがとうございます
続きは明日投稿します
残り第八話と最終回とサーヴァントのステータス紹介です
最後までお付き合い頂けると幸いです
第八話と最終回始めます。
八話:アーチャーの男のブルースはしょっぱい味がする…
さて、アーチャーがバーサーカーを討った後に話を進めよう。
下手人の三神環と三神剣八はそれは見事なデンプシーロールをその場にいた全員に叩き込まれた後、簀巻きにされた。
顔が変形するぐらい殴られて、奥歯も欠けたとか欠けなかったとか。
奇跡的に人的被害0で終結した聖杯戦争とは言え…被害自体は馬鹿にならなかったのだから。
お家断絶は無かろうが、とりあえず魔術に二度と関わらせないようにセルフギアス…自己誓約の文面を書かせて、街の修復に一生でも捧げさせるとは…竹内の言だった。
さて、そんなおり、アーチャーから話があると切り出された。
曰く、ここでお別れだ…と。
そうして、アーチャーは次のように言った。
「これで…俺達は使命を果たした、俺はこれから、マスターとは別行動を取らせてもらう…令呪で縛ろうと、全力で抵抗させてもらう」
何故か…と皆が聞く中で、アーチャーは笑って返した。
コレが、俺の通せる筋だと。
更にこう言った。
「俺のマスターはまだガキだ、男の意地(ロマン)の戦いに巻き込んで良い年齢ではない…だから、単独行動とやらがある俺が一人でこれから聖杯戦争を続けよう…それが、男のブルースと言う物だ、これから貴様らに刃を向ける者のケジメだ」
鏡助がアーチャー!と叫び、皆もアーチャーの事をどうしよう…と、思案した。
彼の言い分はわからなくはない、今まで仲良く戦っていた人間と戦う、そんな汚い戦いに子供を巻き込むのは…確かに『保安官』としての側面が強く出たアーチャーには嫌だろう。
だがしかし、それではアーチャーには勝ち筋は一切無くなるのも、また事実だった。
ただでさえセイバー組やキャスター組に必殺技の宝具を向けたら死ぬ…そう言う風に自分を縛りつけているセルフギアスを出しているのに、マスターから離れ令呪による補助すら無くなれば…
誰にもわかる、遠からず訪れるのは、破滅だ。
皆がそれで良いのか…と聞く中で、セイバーが不意に、アーチャーに質問した。
貴方の願いって何ですか?と。
アーチャーは、少し困ったような表情でセイバーの顔を見て、それから己の願いを語り出した。
「俺は…犯罪に『巻き込まれて』死ぬやつが、見ていて許せなかった…例えば、復讐で[ピーーー]ならわかる、決闘なら喜んで受けよう、激情に任せた一時の怒りの殺人すらそれならそれで許せるさ…だが、その戦いの流れ弾に当たるヤツは何をした?何の非がある?そこに…どこに『男の世界』が有るという?…戦いの巻き添えを食って死ぬヤツは何時だって一定数いるだろう…だから、少しでも犯罪が減るように、そう願ったのさ」
そう、アーチャー…パットの願いは純粋だった。
『少年王』を殺してまで時代を終わらせた男の、叫びだったのだ。
意志の関わらぬ、流れ弾による痛み…それを誰よりも見た男の、祈りだった。
そのアーチャーの言葉を聞いたセイバーは、意を決したかのように言った。
…なら、こんなくだらない聖杯戦争は終わりです、と。
そして、彼女はこう言った。
「私…こんな人を斬るのは、無理です、できません…だって、私は自分の事しか考えてなかったのに、アーチャーはこんなに、世界の正義を守る事を祈っている…キャスターもそうです、異人さんなのに皆の幸せだって考えて、こんなに優しい…そんな人に刃を向けたら、それだけで負けなんです、人として…だから…」
…自害を命じてください、マスター。
セイバーはマスターに告げた。
山本は、何を馬鹿な事を…と、言おうとして…それは口に出なかった。
きっとセイバーは本気なのだろうから。
それを説得するのは、きっと野暮なんだろう。
…そして、アーチャーとキャスターは願いがほぼ一致している、確かにセイバーが消えたら聖杯戦争が終わるだろうとも、山本は予想がついた。
それから…山本はセイバーに確認するかのように聞いた。
…やり残した事は無いか、楽しかったか、本当に令呪で自害を命じて良いのか、と。
セイバーは一つずつ答える。
…映画、あんまり見れなかったのが残念だった。
…まあ、二度目の現世巡りにしたら、一泊二日遊べただけで充分だった。
…実はお腹斬ったことがないから、自分でやるのは怖い…マスターに背負わせてごめんなさい、と。
そして…山本が令呪を使って自害を命じようとした、まさにその時、アーチャーが口を挟んだ。
「おいおい…日本の壬生の狼様は敵前逃亡が趣味だとは、知らなかったぜ」
そんな軽口を叩きながら、拳銃を構えてセイバーの目の前に立っていた。
横には…怒ったような表情の、キャスターも居た。
「我が輩も、アーチャー…パットと同意見である!見損なったぞセイバー!敵が目の前に居るのに自[ピーーー]るとは、サムライはそんな意気地なしとはな!悪いが我が輩は失望したわ!アーチャーに付かせてもらう!」
そんな事を言いながら。
セイバーは一瞬目を丸くした後、仕方ないですね…と、一言呟く。
そして、アーチャーへの無抵抗を示すかのように刀を納め、そのまま微動だにせず…そして言った。
…やりなさい、と。
アーチャーとキャスターはそれを聞き…そして、元よりそのつもりだ!と返すと…アーチャーはキャスターへと拳銃を向ける。
何事かと、全員が驚く中で…二人はそれぞれ叫んだ。
「やれい!パット…臣下(マイ・フレンド)!」
「…すまない、ジョシュア!『歴史を終わらせる銃弾(ラスト・パニッシュメント)』!」
え…と、セイバーどころか全員が彼らを見る。
キャスターはアーチャーの死の呪いを受けて倒れ、アーチャーは誓約違反のペナルティで…全身の穴と言う穴から血や体液を吹き出して倒れる。
慌ててセイバーが彼等に駆け寄り、何をバカな事を…と、叱るように言った。
だが、2人とも苦笑いで返すだけだ。
そして…振り絞るかのように、アーチャーは言った。
「…予定が、早まっただけだよ、セイバー…」
「よ、予定って、どういう事ですか!?」
「…俺達は、元々…お前みたいな、若いやつに俺達の祈りを託せれば…それで良かった…だから、こっそりと…ジョシュアをヤツの宝具…プルトーだったか、ヤツを介して示し合わせたのさ…俺たちがアサシンとバーサーカーに勝ったら、優勝はセイバーに譲ってやる…と…」
そ、そんな…と、セイバーが絶句する中で、アーチャーはこう、最後にしめた。
「…それに、男は若い女の涙には…金の誘惑以上に勝てねえ……」
セイバーは、泣きながらアーチャーへ謝る。
ごめんなさい、私なんかの為にそこまでさせて…それに、自分は本当は貴方より年上かも知れないのに…私のわがままばっかり…と。
アーチャーは、苦笑いで返すだけだった。
…年上は嫌いじゃないが、おばあちゃんとは知らなんだ、化粧とアンチエイジングにだまされたぜ、と。
そこに、キャスターがいきなり割り込んできた。
曰く、こう言った話だった。
「マスター…済まんが、最後の令呪で我が輩の宝具を出すよう命じてくれんか…アーチャーの宝具が思った以上に強すぎてな…意識をこれ以上保てんかも知れん……最後に、我が友に、我が輩が愛した世界を見せてあげたい…」
竹内は…ここまでの流れに呆然とするしか無かったが、キャスターの言葉を受けて気合いを入れ直す。
そして、最後に残った令呪で命令をする。
「…令呪を持って命ずる!『宝具を開帳せよ、キャスター』!」
それから、辺りは…例の街へと姿を変える。
せわしなく、そして楽しそうに生きる人たち。
美しく、しかし雑多な街。
開かれているが、しかしまだ残してある自然の名残。
古き良き、アメリカの街だった。
そこには、2人の男の声だけが、木霊した。
…なかなか、面白かったであるな、パット
…そうだな、まあ悪くは無かったぜ、ジョシュア
…我が輩の街、気に入ったかの?
…もとより貴様のものでも有るまいが、俺の故郷より平和で良いさ
…お互い生まれ変わったら、我が臣下になってくれぬか?
…臣下は嫌だが、酒飲み仲間ぐらいなら悪くはない
…彼らは、マスター達は幸せになってくれるかのう?
…それはヤツら自身に任せようぜ、俺達の願いも託してな
そして、2人の会話は途切れ、アメリカの街…キャスターの宝具ごと全てが虚空へと消える。
そして…後には、セイバーだけが残された。
「マスター…しょっぱいです、私の口の中が…しょっぱいですよぅ!…う、うわぁぁん!」
『最終勝者』…セイバーは、まるで敗者のように泣いていた。
…これが、男の哀歌(ブルース)か、と山本が呟く。
そして、虚空から、カップのような魔翌力の塊…聖杯が現れた。
そうして…この戦いは、わずか二日で幕を閉じたのであった…。
第八話終了続いて最終回を投稿します
最終話:それぞれのしょっぱい明日
…聖杯戦争は、終わった。
セイバーがただ1人残ると言う、寂寥感の残る『勝利』を以て。
だが、最終勝者たるセイバーは、何も願わなかった。
否、願えなかった。
彼女の胸には、2人の…『愛』の化身のような男と、『正義』の化身のような男の2人の魂がそのまま胸に渦巻くばかりだった。
…そして、自分1人だけ幸せになって良いのか、それとも、別な誰かを幸せにするべきなのか。
その答えを出すことは、彼女にはできなかったのだ。
…アーチャーとキャスター、パットとジョシュアの願いをそのまま言うのも、それはそれで違う気がした。
きっと…それはそれで、とても失礼な気がしたからだ。
そのセイバーの姿を見て、不意に山本が声をかける。
…まだ、令呪は2角残ってあるな、と。
何事かと慌てるセイバーに向かって、山本はこう言った。
「令呪1角…いや、残してある令呪全てを以て祈りとする!『セイバー、お前が一番笑顔で2人へ…そしてお前が大事に思う全ての者へと返せる祈りを聖杯に捧げよ』!」
え…と、言ったセイバーを笑いながら山本は宥めるように言った。
…困った家臣(サーヴァント)の背中を押すのは、主人(マスター)の勤めだからな!…と。
セイバーは泣きながら、ありがとうございますマスター!と山本に返した。
そして、セイバー…永倉新八は聖杯に祈る。
その祈りには…誰も異存は無かった。
山本も竹内も三神家の全てすら、も。
そして…
半年後、景都市
「キリキリ働けえ!まだまだ街は穴だらけ、俺たちのロードはこれからだぁ!」
「…待てえ!そもそもお前のせいだろ!」
「海野君も兄ちゃんも喧嘩するなぁ!殺されないだけありがたいんだからぁ!」
街を破壊してめちゃくちゃにした海野、そして黒幕の2人の剣八と環は…命を取らない事を条件に、街の修復の為に延々ボランティアに駆り出されていた。
ボランティア強要とは別に、『魔術に一生関わらない』、ペナルティは魔術師として致命傷なこんな自己誓約を書かされたが…まあ仕方ないと全員割り切った。
そして…
「街の美化清掃に交通整理!まだまだボランティアが俺たちを待ってるぞぉぉ!」
「だ…誰かぁ!」
「助けてぇぇ!」
ボランティアに目覚めた海野に2人の大人が引きずられていく…。
これも、街の新たな名物の一つになっていった。
「…馬鹿がまた、馬鹿やってるわね」
竹内がそんな様子を、自分の敷地で、屋敷の窓から眺めていた。
実に冷めた目で…そして…
「お兄ちゃんとお姉ちゃんも…まあ、頑張ってるから、そんな酷いこと言わないであげてください」
「あらあら、鏡助君がそう言うなら、撤回するわ…ごめんなさいね」
「そうですね、ありがとうございます美香さん…ところで、僕をそろそろ膝から下ろしてください」
鏡助は何故か竹内の膝に乗せられながら。
あれから、文字通り、修復費を完全負担と魔術師として永久追放と言う形で素寒貧になった三神家。
そんな彼等を受け入れたのは、竹内であった。
彼女曰わく…あんたら馬鹿2人は助ける義理は無いけど鏡助君は別だから、鏡助君の保護を兼ねてかくまってあげる…あんたら2人は一生下僕だけどね!と。
そして、右に左にとボランティアに走る剣八と環を顎で使う中…鏡助は、それはそれは弟のように可愛がっていたと言う。
「ふへへ……生意気盛り素直ショタええわぁ……!」
「助けてぇぇ!お兄ちゃん!お姉ちゃん!アーチャァァァァ!」
…そして、竹内はそんな日々を過ごす内にこじらせたとかそうじゃない、とか。
そして、我らの主人公の山本は、と言えば…とある街の映画館に来ていた。
タイトルには、『ドラゴン・スレイヤーズ』と書かれていた。
その内容は、『新撰組の一人の生き残りが異国に渡り、現地の「保安官」と「皇帝」をお供に、悪の「海賊」や「中国武人」や「ライバル暗殺者のサムライ」を幹部に据えた「邪龍」と闘う』と言う、なんともカオスの匂いしかしなかったものだ。
案の定、B級どころかZ級のキワモノ扱いしかされてない映画だったが、山本はそれはそれは楽しく鑑賞したと言う。
そして、一言呟く…良かったな、セイバー…と。
…そう、あの時のセイバーは受肉を望んだ。
そして、こう言ったのだ。
「私…わがままで悪いですけど、受肉して!映画を作って…映画って形で、みんなに伝えたいのです!キャスターやアーチャー…ううん、私が今まで出会ったみんなの事を、ちょっとずつでも!伝えて、そして…皆を笑顔にしたいんです!!」
良い願いだなと、あの時にいた者達は…そう思った。
そして、件の映画を見終わった山本は、一言だけ呟いた。
「俺は…これからも魔術師として日陰の宵闇をわたり続けるさ、だから…お前はまだまだこれから、日が当たり続ける世界に向かって走りつづけろ!銀幕デビューしたてのまだまだ演技力のしょっぱい俺のセイバー!!」
…了解です、マスター!と言う屈託のない声が、どこかで響いた気がした…
「ヒャッハー!『例えば、こんな、あぽくりふぁ』…完だぜぇぇぇぇ!汚物は消毒だァァ!」
「…って、私じゃなくてあんたがしめるんですかぁぁぁ?!」
以上第八話と最終回終了です
短い投下にお付き合いいただきありがとうございました
最後にオマケのサーヴァントのステータス紹介です
番外編:サーヴァント紹介
◯セイバー/永倉新八
筋力B(以下、この聖杯戦争基準なら)
耐久C
敏捷A-
魔翌力E
幸運B
宝具C
スキル
・対魔翌力C
・騎乗D(馬ぐらいならなんとか乗れる)
固有スキル
・神道無念流A+
・勤皇攘夷思想B
・映画好きEX
宝具『龍飛剣』/対人
逆袈裟切りの一閃。
それだけなのだが、最早必殺技…『宝具』として昇華しきった結果、空間すら断絶する概念兵装にまでなっている。
知名度補正がかかっている分、その能力もブーストがかかっている。
『新撰組最強』、この5文字が日本で持つ重みそのものと言い換えて良い。
=================================
主人公サーバント、セイバーお馴染み女体化枠です
素直で熱血な性格であり、腕前は最強…しかし、横暴と迷走を極めていくリーダーの近藤に付いていけなくなり苦悩と愛憎半ばする心を募らせる…と、しかも必殺技も有って主人公属性の固まりなんだけど何か地味
日本でもそうそう類を見ないものすごい特殊な位置の人という事で、主人公に採用しました
本来は凄い苛烈な性格で、わりとランサー兄貴が近い性格かな~とは思いますが、せっかくヒロインなのでやりたい放題やりました
キャラクターとしては、マスターが落ち着いた一歩引く大人しい解説役なので、一見大人しいが実はアグレッシブな脳みそ筋肉ちゃんとなりました
これはこれで動かし方が楽しい人です
==========================================
◯ライダー/アン・ボニー
筋力D
耐久D
敏捷D
魔翌力E
幸運A
宝具A
スキル
・騎乗C
・対魔翌力E
固有スキル
・黄金律B-
・ビッチEx
宝具1『我が友メアリよ、いざ行かん(ラカムズ『フレンド』シップ)』/対軍
宝具2『爆弾発言謎移動(うまれてくるあかちゃんがいるのよ)』/特殊
一つ目の宝具は名前が出てこなかったが、海賊船の召喚を可能にする宝具。
ラカムの海賊船、それも、友人と女二人だけで立ち向かった逸話の再現なので、実はあの時操舵してたのは友人のメアリ・リード一人という鬼使用の逆鬼畜宝具。
それでも火力・移動力共に最強に近く、質量兵装としてもなかなかの代物だったりする。
もう一個は、山本の解説通り『安全離脱』という名前の自爆宝具。
文字通り、死なない…だが、海賊としての最期なのだ。
=================================
カリブ海で暴れたカリブの海賊…なんだけど、わりと有名なわりに来歴がなんだかしょっぱい人。
この人をライダーで出そう、でもこんなん神や神話の主人公が跋扈する本編どころかエクストラでも出したら即死する…じゃあ、もっとしょっぱい聖杯戦争で行こうというコンセプト。
なんで、扱いは凄い雑ですが、個人的には凄い思い入れが凄い人でも有ります。
ただ…まあ、活躍できるレベルに落としても噛ませは噛ませ…悲しいなぁ
性格は何も考えて無い敵は今まで書いてなかったのでそれはそれで楽しいです。
=========================================
◯キャスター/ジョシュア・アブラハム・ノートン
筋力E
耐久E
敏捷E
魔翌力C
幸運Ex
宝具Ex
スキル
・陣地作成D-
・礼装作成D
固有スキル
・皇帝特権(自称)Ex
・黄金律D
・カリスマB
・愛されキャラB
宝具『大いなる我が帝国(ジ・アメリカ)』/対国
彼はアメリカの皇帝を名乗り、アメリカの全てを愛し、アメリカに愛されたその逸話…というよりも、彼そのものの概念。
彼が愛したアメリカの風景全て、彼が繋いだ友人全て、それそのものを固有結界として召喚する。
基本的には穏やかなジョシュアの気性に毒されており、『[ピーーー]・奪う・犯す』事は、如何にジョシュアの言い分とはいえ力を貸さないが、友人達はおろか街全てがそのルールを守る限りジョシュアの味方である
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アメリカの愛されキャラ、ジョシュア・A・ノートンです。
日本だと…黄門様とかあの辺かなぁ、とにかく向こうでは、ゲームのデフォルトの『太郎くん』代わりのネームにジョシュアが使われたりするんだとか。
アメリカながら皇帝、それで居て茶目っ気溢れる穏やかな人。
おおらかな時代の中であらわれた特異点、そんな人なだけに、『主人公では越えられない』壁がコンセプトに近いですね。
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◯ランサー/馬忠
筋力A
耐久B
敏捷B
魔翌力E
幸運D
宝具C
スキル
・対魔翌力C
・騎乗C
固有スキル
・精神汚染E
・狂化E-
・勇猛B
宝具『我関雲長捕縛セリ(オレがかんうをつかまえた)!』/対人
彼の全てにて唯一の記録、その逸話。
とにかく、どんな相手だろうと、そのいずこからか現れた鉄檻に閉じ込めてしまう。
ただ、関羽はこの捕縛により死亡したわけでは無く、結果、頑張れば破壊自体は可能かつこの檻自体に殺傷力は無い。
ただ、捕まえるだけ、それだけの宝具。
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某テンション上がって来たぜー!さんやね、お前さんは。
記録が本当にこの逸話しかないので好き勝手できました。
モヒカンもあわせて、しょっぱい人たちで個人的には凄い楽しかったです。
演義だと赤兎馬貰うとか大役…な、ようで餓死させてしまうため、やっぱりしょっぱい人。
まあ、出てきた瞬間「あかん」って思える、噛ませではあるかなw
=================================
◯アーチャー/パット・ギャレット
筋力D
耐久C
敏捷C
魔翌力D
幸運B
宝具A
スキル
・単独行動A
・対魔翌力B
固有スキル
・ガンスリンガーB
・男のブルース(自称)Ex
宝具『歴史を終わらせる銃弾(ラスト・パニッシュメント)』/対人
彼は、少年王ビリー・ザ・キッドを討った。
それは、西部劇と言う時代そのものを消した…ある種の、時代の区切りでもあった。
少年王とは、そんな時代の象徴の最後の男だったのだ。
そのために彼の弾丸には、民の正義の祈りと民の負の怒りが同時に渦巻く、ジキルとハイドのような二面性の強い宝具である。
そのため…正義を愛した『保安官』としての側面が強かった今回のアーチャー、パット・ギャレットは、正義に振り切るために様々な枷をその宝具に課していたのだ。
そして…振り切った先にあるのは、『正義』の為の死である。
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パット・ギャレットさん、少年王を倒したヒーローでは有りますが、西部劇を倒した人と言う面も有ります。
ガンマンで有りながら、ガンマンの時代を終わらせた、そんな人でした。
でも、ジョシュアとの関係はオリジナルですが、綺麗に出来たような気がしますね。
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◯アサシン/岡田以蔵
筋力C
耐久E-
敏捷B
魔翌力C
幸運E
宝具C
スキル
・気配遮断A
固有スキル
・小野派一刀流B-
・狂化C
・無為の怪物B
・拷問嫌いEx
宝具『我流・必殺真剣』/対人
小野派一刀流を修めながら、我流にアレンジした彼の剣。
蹴りや砂の目潰しやら、挙げ句ピストルまで何でもありの『必殺真剣』。
最早、剣でも何でも無いのだが、暗殺剣としては割と正しい。
あらゆる剣士の意表をつく剣…そこには正義は、無い。
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多分、下手したらセイバーの永倉より有名な四大人斬りさんでした。
割と、ライダーとはほぼ同時期に登場が確定。
当初はアサシンではなくバーサーカーの予定で、アサシン枠はエクストラクラスのジョン・ドゥ/ジョン・タイターが来る予定でした。
ただ、こいつバーサーカーにすると…マジ収集が付かなくなったのでアサシンに変更。
そもそもが『狂犬の暗殺者』なので、以降はスムーズでしたね。
そして宝具を見せるまでもなく即死、ご愁傷様デス。
…だって、蹴りはともかく、ピストルだの目潰しだので戦うのはしょっぱいってレベル違うもんw
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◯バーサーカー/ギュスターヴ
筋力A+
耐久A+
敏捷D
魔翌力E-
幸運C
宝具C
スキル
・狂化C
固有スキル
・無為の怪物A+
宝具『これも、ギュスターヴの仕業(イッツ・ア・ギュスターヴ)』/特殊
犠牲者が三桁をくだらない、そして幾度も襲撃者を退けてきたギュスターヴの魂そのもの。
それだけならば、ただの頑丈な鰐でしかないが、人間の恐れを一身に浴びて、曲がりなりにもクラス補正を受けた結果、宝具が暴走。
『戦えば戦うほど強くなり、ただの物理攻撃は致命傷にならない』という、ある種の悪夢と化して暴れまわってしまう。
…ある意味、人間の被害者としての宝具である。
ギュスターヴを止めるには…『死』そのものを、与えるしか無い。
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人斬り以蔵さんがアレだったので、ラスボスは悲哀を感じる化け物というチョイスで行きました。
当初は、さる方のコメントよろしくワンゲル事件のヒグマ…でしたが、流石にセイバーを苦戦とか無理すぎて没にしました。
予想外にセイバーがタイマンで強すぎた…。
ゴジラみたいなヤツって居るかな~と、記憶とネットを漁ってギュスターヴに決定。
とりあえず、殺しても死なない化け物として、そして『哀しい敵』として…好きな鰐になりました。
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おまけ、マスター紹介
山本猛
26/男
土着の魔術師であり主人公の一人。
生きるサーヴァント図鑑として、頑張ってくれた人。
願いは特に無い。
名前の元ネタは『ヤマトタケル』から。
海野山彦
15/男
予知夢の魔術をもつ中二病さん。
街を一番被害出した馬鹿。
願いは強さを知らしめる事。
名前の元ネタは『海彦と山彦』
竹内美香
18/女
土地管理人の高校生。
親から継いだ地での、初めてのトラブルだった。
願いはあまりないが、出来れば責任は誰かに押し付けたい。
名前の元ネタは『タケミナカタ』
神楽坂次郎
31/男
用心棒紛いの三流魔術使い。
炎の魔翌力を操る、汚物は消毒だー!
願いは金と力と女…ストレートな男である。
名前の元ネタは『カグヅチ』
三神鏡助
10/男
生意気盛りだが礼儀正しい少年。
魔翌力回路のない普通の少年であり、非は一切無かったが元凶と言う困った位置の人だった。
三神家で一番まともな少年。
名前の元ネタは『三種の神器の鏡』
三神環
22/女
三神の家の魔術を繋ぐために行動を起こした黒幕。
悪い人では…本来無かったが、浅はかな人でもあった。
そして、忠犬のような学が無い暗殺者と言う、半端な知識で地雷アサシンを呼んだ馬鹿その1。
名前の元ネタは『三種の神器の勾玉』
三神剣八
27/男
三神の長男であり、その家の主人でもある。
環と同じように悪い人では無いのだが、やはり浅はかであった。
彼は、とりあえず死ににくい獣を呼んだら、計画に合ったのでは…と思った結果がご覧の有り様だった。
名前の元ネタは『三種の神器の剣』
以上で、例えば、こんな、あぽくりふぁ ~なんだかしょっぱい冬木の戦争のようです~
は終了です。
短い間でしたがありがとうございました。
乙 なかなか面白かった
やる夫系で同じ話あったけど同じ作者?
別人です
よく練り込まれてる、素晴らしい物語だった。
とかく「しょっぱい」を貫き通したのもベネです。
乙でした。
乙
よかった
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