※以下の要素を含みます。苦手な方はブラウザバックで
・海未ちゃんの姉捏造
・キャラ設定は各媒体から要素を取り込んでます
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__部室
海未「おはようございます。みんな揃ってますか……って、ことりだけですか」
ことり「…うーん。知りたいのはこういうのじゃなくて…」
海未「ことり?何か悩み事でも?」
ことり「あ、海未ちゃん。ちょっとねー」
ことり「衣裳に合うメイクを研究してるんだけど、しっくりこないんだよね」
海未「それで雑誌を読み漁ってたわけですね」
ことり「そうなの。にこちゃんにも相談したんだけど…」
にこ『にこが口を挟むのは簡単だけど、ことりちゃんが作った衣裳に合うメイクを用意してこそ完成すると思うよ』
にこ『がりょーてんせいを書く?って言うじゃない?』
ことり「…だってさ」
海未「そのイントネーションだと目玉書いてますよね…」
海未「でも、その通りですね。ことりの一種の芸術が完成して飛び立つには、メイクの追究は欠かせないと思いますよ」
ことり「…そうだね」
海未「私でよければ力になりたい…と思うのですが、なるべくメイクの実験台は遠慮したいです」
ことり「だめ?」
海未「駄目です」
ことり「穂乃果ちゃんには逃げられ、凛ちゃんにも逃げられ、かよちゃんにも“私じゃみんなのメイクの参考にならないよ”って言って断られちゃったし…」
ことり「絵里ちゃんは私たちとは違うメイクが必要だし、真姫ちゃんはそういうの嫌いそうだし、希ちゃんに頼むとちょっとアレな見返りを求められそうだし…」
海未「にこに頼むのも変な話ですしね…」
ことり「海未ちゃんしか頼れる人がいないの…」
海未「…仕方ありませんね」
ことり「いいの!?」
海未「ことりが困ってるようなので。それで見捨てるほど、冷酷ではないですよ」
ことり「ありがとう海未ちゃん!」
海未「…それで、私はどうすれば?」
ことり「この雑誌に気になるテクニックがあったから試してみたいの!」
海未「ふむ…どれどれ」パラパラ
海未「……え」
ことり「??海未ちゃん、どうしたの?」
海未「こ、この人……」
ことり「?リッカさん?今一番波に乗ってるカリスマスタイリストだよ?」
海未「……見間違えるわけがありません……」
ことり「海未ちゃん、知ってるの?」
海未「……知ってるも何も…」
海未「私の姉、です」
ことり「え、ええぇーっ!?」
にこ「…というワケで、μ's緊急会議よ!」バンッ
凛「はいはい!議題はなに!?」
絵里「海未の姉さんよ」
穂乃果「え?陸果さん?なんでここで?」
花陽「リッカちゃんといえば!今一番注目されてるカリスマスタイリストです!」
真姫「想像できないわね。海未ちゃんの姉さんがそんな職業なんて。名字も園田じゃないし」
希「ホントにお姉さんなの?」
海未「ええ。この写真を見て確信しました。髪は染めてますが…見間違えるわけがありません」
穂乃果「うん。よく見ると海未ちゃんそっくりだもん」
ことり「言われるまで気付かなかったけど…確かに陸果さんだ」
にこ「まあ、幼なじみの確証が取れたところで。問題は、海未ちゃんのコネでリッカちゃんからメイク術を伝授してもらうことニコ!」
海未「…え」
花陽「そうです!今までは歌、ダンス、衣装にばかり力を入れてきてたけど、A-RISEに勝つにはできることは全てやらないと!」
真姫「…そうね。これ以上ことりの負荷を増やすと倒れてしまいそうだし。メイクで楽してアドバンテージを作れるなら、これ以上の選択はないわね」
にこ「ってなわけで海未!お姉さんにお願いしてきて!」グイッ
海未「!………………」
穂乃果「やめなよにこちゃん!海未ちゃん嫌がってるじゃん!」ガシッ
ことり「いくらなんでもデリカシーなさすぎだよっ!」ガシッ
にこ「きゃっ!な、なによあんたたち!いきなり肩掴んで!」
ことり「誰にでも触れられたくない事情があるの!」
穂乃果「いくらμ'sのみんなでも、この問題に係わるのは許さないからね!」
にこ「ご、ごめん…」
凛「……あんなに怒った穂乃果ちゃん、初めて見たにゃ…」
真姫「正直ビビったわ…。穂乃果もそうだけど、ことりも…」
絵里「……この話はおしまいにしましょう。私たちが茶々入れて事態をこじらせるのはナンセンスだわ」
希「それがいいね。ほな、練習いこかー」
海未「………………」
海未(……陸の果てまでたどり着けるような行動力と要領良く物事を進められる柔軟さを持った姉さんは、今でも私の自慢であり目標です)
海未(しかし、姉さんは突然私の前から姿を消しました)
海未(母に理由を聞いても「海未さんは知らなくていいことです」とはぐらかされました)
海未(理由も告げられないまま憧れの人を失った私は永遠と泣き続けたと、そう記憶に残っています)
海未(……この釈然としない気持ち。姉さんが私の目の前からいなくなった理由が知りたいのか、それとも姉さんにもう一度会いたいのか)
海未(しかし、母に止められたということは…私には残酷な故あってのことなのかもしれませんし……。…それを知るのは、少し怖い、です)
海未(そんな重々しく、複雑に絡まる気持ちをほどきながら、不意に幼い頃の写真を集めたアルバムを手にとって眺めてしまう自分がいました)
海未「……え…?…そんな、まさか…」
海未(……しかしそこには姉の存在がなく、…いえ、否定されたように切り取られていました)
海未(心臓に集まる血が黒くドロドロになるような感覚に襲われ、不気味な鼓動が脳に直接伝わります)
海未(このどうしようもなく不快な感覚は、なんなのでしょうか)
海未(どうしようもなくなった私は、母にその不自然なアルバムについて問いました)
海未「お母様、このアルバム…」
海未母「あなたの幼い頃の写真を集めたのですよ。懐かしいですね」
海未「……姉さんの姿が…見えないのですが…」
海未母「………………」
海未「…私の記憶が正しければ、私は幼い頃ずっと姉さんと一緒に遊んでいたはずです」
海未「なのに…一切写真に残っていないのは不自然です」
海未「他のアルバムもそうでした。家族旅行の時も、剣道の大会の時も、姉さんはずっと一緒だったのに」
海未「…なぜ、姉さんの記録は残ってないのですか……?」
海未母「……もう、隠すのは止めにしましょう」
海未母「陸果……いえ、あの者には勘当を言い渡しました。もう、園田の家の者ではないのです」
海未「!!!」
『ごめんね、海未。私、お姉ちゃん失格だよ…』
海未(遠い記憶に残る、姉さんの言葉が不意に思い出されました)
『海未!お姉ちゃんが誰にも負けないくらい強くしてあげるからねー!』
『私と違って海未は周りが見えるからね。バカな私は目標に向かって一直線な道しか見えないの』
『今度は海未が穂乃果ちゃんとことりちゃんを守ってあげなよ。守るだけの力はあるんだから』
『海未、お姉ちゃんが髪切ってあげる!未来のカリスマ美容師さんのお客さん第一号だよ!』
『私、海未のお姉ちゃんになれてよかった。こんなに素直でかわいい妹は、海未以外いないから』
海未(ドロドロの血が、訳のわからない熱を発して血管をズタズタにしながら無理矢理循環していくような気分でした。燃えることのない潤滑油が炎上する、不条理な感情が身体を支配します)
海未「……なぜ…?」
海未母「……跡継ぎの役目を放棄し、自ら出ていったのです。家督として然るべき処分を下したまでです」
海未「……夢を追うのが、そんなにいけないことですか…?」
海未母「いいえ。素晴らしいことです」
海未母「しかし、守るべきものを守れない者に夢を追う資格も力もありません。どうせあの半端者は、道半ばで諦めたのでしょう」
海未「……!!」
海未(…お母様は……!何もわかってない…っ!)
海未母「海未さんはそうなってはいけませんよ?海未さんには守る力も夢を追う資格もあるのですから」
海未「……いりませんそんなもの」
海未母「?」
海未「そんなもの、姉さんに比べたら何の価値もありませんっ!資格がなくたって、力がなくたって、夢は叶えられますっ!」
海未「でもっ……!大切な人は…失ったら二度と元に戻らないんですっ…!」
海未母「忘れなさい。あの者は…あなたを捨てて自分の夢を取ったのです。愛情など」
海未「違いますっっ!!私が…園田海未がこれ以上になく愛する姉なのですっっ!!」
海未「家がなんですか!跡継ぎがなんですか!そんなもの、私だって望んでいません!」
海未「そんなもので…私の大切な人を消し去らないでっっ!!」
海未(気付けば、私は家を飛び出していました。日が落ちて街灯が道を照らすだけの街をかけ出します)
__穂乃果の家
穂乃果「陸果さん、か…」
穂乃果「すごい人だったよなー。勉強も武道も…あと手先も。あの時から美容師になりたいって言ってたっけ」
「ほのかー!海未ちゃん来てるー!?」
穂乃果「いいやー!来てないよー!」
穂乃果「どうしたんだろ?海未ちゃん家から電話かなぁ?」
穂乃果「お母さん、どうしたの?」
穂乃果母「園田さん家から電話があってね。海未ちゃん、家出したって」
穂乃果「ええっ!?海未ちゃんが!?あの海未ちゃんが!?」
穂乃果母「そうなの。あの海未ちゃんが。詳しく理由は聞いてないけど」
穂乃果「…間違いなく陸果さんのことだよね」
穂乃果母「陸果ちゃん?…まあ、いろいろあったしね」
穂乃果「知ってるの?」
穂乃果母「まあね。美容師になりたいって言って家を出ていったとか。無鉄砲なのは陸果ちゃんらしいけど」
穂乃果「………………」
穂乃果母「穂乃果も似てるわよねぇ、陸果ちゃんに」
穂乃果「え?私が?」
穂乃果母「凝り性なところとか、飽きっぽいところとか」
穂乃果「微妙だなぁ、それ」
穂乃果母「あなたの名前も、無意識の内に陸果ちゃんからとってきたのかもしれないわね」
穂乃果「そんなにテキトーなの、私の名前…」
穂乃果母「違うわよ。それくらい、パワーのある子だったのよ」
穂乃果「そっか…」
穂乃果「……海未ちゃんの行き先心当たりがあるけど、言わない方がいい気がする」
穂乃果母「あら、私も同感。ママには少し反省してもらわないと」
穂乃果「だね。海未ちゃん、すごく陸果さんに甘えてたもんね」
__ことりの家
ことり「え?海未ちゃんが家出…?」
穂乃果『そうなの。お母さんと陸果さんのことでもめたみたいでさ』
ことり「そんな、今海未ちゃんは…!?」
穂乃果『たぶん陸果さんのところの美容室にいったんじゃないのかな』
ことり「…行かなきゃ」
穂乃果『やめときなよ。絵里ちゃんの言うとおりだよ。私たちだって、踏み入れちゃいけない問題だと思うし』
ことり「で、でも。これは…私のせいだから…。海未ちゃんに変なお願いをしなければ…」
穂乃果『……ことりちゃんが行ったって、何も解決しないよ。海未ちゃん自身が解決しないと意味がないから』
ことり「………………」
穂乃果『…海未ちゃん一人でどうにもならなそうな時に、力を貸してあげよう?大丈夫だよ、海未ちゃんは強いから』
ことり「そう、なのかな…」
海未(…人の無意識は、深層心理につながっていると、つくづく思い知らされました)
海未(ことりの持っていた雑誌の住所を無意識に記憶し、無意識の内に足を運ばせるのですから)
海未「ここ、ですか」
海未(家から結構離れた、高級な店舗が並ぶこの街)
海未(私の深層心理が指し示した目的地は、その一角のビルにありました)
海未「……まだ、営業しているみたいですね」
海未(制服のままで、場違いな感が否めませんが、ガラス張りのドアを開きます)
「いらっしゃいませ!ご予約のお客様ですか?」
海未「え、あ、いえ」
「ご新規さま……え……?」
「…う、海未……?」
海未「は、はい…。…姉さん」
陸果「うっわぁぁぁああ!海未だぁー!久しぶりぃー!」ギュー
海未「ちょっと、姉さん、恥ずかしいですよ…!///」
陸果「だってー!ホント久しぶりだよ!?八年くらい!?」
海未「はい、それくらいですね」
陸果「こんなにキレイになっちゃって…!んもぅ、お姉ちゃんはもういらないって!?」
海未「そんなわけ、ないですよ。姉さんはいつまで経っても私の大好きな姉さんです」
陸果「はは、恥ずかしいセリフも言えるようになっちゃって///」
海未「え?あ、うわぁぁぁ!ち、違うんです!姉さんは大好きですけど、違うんですぅ!」
海未(姉さんに会えた喜びで口が滑りました…)
「ん?陸果の知り合い?」
陸果「生き別れた妹なの!まさか会えるなんて!」
「そっか。閉店は俺やっておくから、先上がっていいよ。妹さんと少しでも長く過ごしたいだろうし。俺はテキトーに遊んでくるわ」
陸果「ありがとう♪」
陸果「もうすぐ閉店だけど、もしかして髪切りにきたの?」
海未「い、いえ。ただ…なんとなく…」
陸果「ふふ、そっか。店長から許可出たから、私もすぐ出られるよ。とりあえず私の家まで行こう?」
海未「はい…お願いします」
海未(姉さんはスキップを踏みながら裏へ行きました)
「園田さん、ねぇ。あいつも色々あったしなぁ」
海未「店長さん、何かご存知で?」
「陸果と一緒に美容室開こうって言ったの、俺なんだ。…あいつが家を出る原因を作ったのも……」
海未「そう、なんですか…」
「悪いことしたな。でも、あいつを絶対守ろうって思ったんだ。しがらみからも、その他の世間の波からも」
海未「………………」
「それが旦那の役目だと思ってるから、気に入らなかったらかかってきな」
海未「旦那、さん…ですか…?」
「式はまだ挙げてないけど、籍は入れてる。まあ、そっちの家庭の事情がアレだから式には呼べないけど」
海未「………………」
海未(見た目は浮わついたこの方ですが…姉さんのことを絶対守るという強い意志が眼を見ればわかります)
海未(お母様は絶対受け入れないでしょうが…私はこの方になら姉さんのことを任せられると思いました)
海未(…そして、私の義兄さんになることも)
陸果「おまたせー!んじゃ、行くよ海未!」
海未「はい」
海未(…幼い時と同じように姉さんが手をつないで先頭に立ちます。さっきまでの不条理な感情が嘘のように消え去り、私の表情を柔らかくします)
陸果「さてさて、何から話そうかなー」
海未「…素晴らしい旦那さんに出会えましたね」
陸果「そうかな?アレ、けっこう融通利かなくて…海未そっくりかも」
海未「私、ですか?」
陸果「変なところで意地っ張りで、そのくせメンタル弱くて…でも大切な人のためなら絶対自分を曲げない、そんな人だよ」
海未「…尊敬してるんですね」
陸果「まぁね。あいつのおかげで私は自由に生きられてるわけだし」
陸果「…でも、園田の家のことは…全部海未に放り投げちゃった……」
陸果「…ごめん、なさい。……縛られるのに耐えられなかった、弱いお姉ちゃんでごめんなさい……」
海未「…私は怒っています。許すつもりがないくらいに」
陸果「…だよね。しがらみを海未に押し付けた私なんて…」
海未「家のことなんてどうでもいいです。そんなものどうにでもなりますし、姉さんがこうして楽しく生きているのであれば私も嬉しいです」
海未「私が怒っているのは…」
海未「お母様と仲直りしないことです」
陸果「……へ?」
海未「だって、おかしいじゃないですか。あれだけ優秀な姉さんが…たったこれだけのことで絶縁だなんて」
海未「私なんかよりよっぽど人間ができてる姉さんが、母親と仲を取り持てないなんて…私の姉さん像をぶち壊さないでください!」
陸果「は、はは…。冗談キツいなぁ…」
陸果「でも、もう手遅れだよ…。…どの面下げて家の門をくぐれっていうの?」
陸果「私だって園田の姓に誇りを持ってたから…おそれおおいよ…」
海未「………………」
海未(暗い夜道で表情がよくわかりませんでしたが…)
海未 (姉さんは怯えているようでした。見えない何かに追われているような、そんな様子です)
海未(そんな姿を…私は初めて見ました。そして、思い出の中の姉さんは…今ここにいる陸果姉さんとは違うとわかりました)
海未(何でもできる完璧な姉ではなく、私と同じ感情のある女性なんです)
海未「……そう、ですよね」
海未「…私が無責任に、『私が何とかします!』とか言える人ならよかったんですけど…」
海未「…すみません、姉さんのほしい言葉は…どうしても言えそうにないです…」
陸果「…ううん。いいの。海未が…私のこと心配してくれてるのはわかったから」
陸果「…ありがとう」ギュッ
海未(姉さんは横から私に抱きつきます)
海未(思い出の中で見上げていた姉さんの姿が、こうも小さく見えるなんて…)
海未(そのまま私の腕を抱いたまま、無言で邸宅まで歩きました)
ことり「穂乃果ちゃん…」
穂乃果「うん…連絡なし、か」
穂乃果(翌日。予想通りって言ったらアレだけど、海未ちゃんは学校に来なかった)
穂乃果(朝に通知を送ったんだけど…反応なし。ソワソワしてたら放課後になっちゃった)
凛「やっぱり行くべきだよ。お姉さんのところに」
絵里「ダメよ。海未はそれを望んでない」
にこ「そんなのわかんないでしょ!もしかしたら」
希「もしかしたら手の付けられない状態になってしまうかもしれない。それが一番怖いと思わない?」
真姫「でもっ…!海未が学校に来ないなんて…ありえないでしょ!?一人で抱えきれないものを一人で背負ってるってことでしょ…!?」
花陽「海未ちゃんだって完璧超人じゃないよ!?口に出さないだけでホントはSOSを出してることだって」
ことり「…でも海未ちゃんは助けられることを望まないと思う。皆に迷惑をかけるくらいなら、自分の破滅を選ぶから」
穂乃果「……多分大丈夫だよ」
穂乃果「陸果さんが一緒だから。海未ちゃんが憧れて追いかけて、目指した人が一緒だから」
穂乃果「今の海未ちゃんと陸果さんが力を合わせれば、どんなことも乗り越えられるよ」
にこ「何でよ!穂乃果らしくもない!他人任せなんて!」
真姫「海未がどんな気持ちかわかってんの!?」
穂乃果「わかんないよ!お母さんに怒ってるのか、陸果さんに怒ってるのか…。でも、わかってることはあるよ」
穂乃果「海未ちゃんは…お母さんのことも陸果さんのことも大好きだって。だから、二人の橋渡しをしたいって」
穂乃果「それは私たちの役割じゃなくて…海未ちゃんの役割だよ」
ことり「…そう、だね。もう、守られるだけの海未ちゃんじゃないって、陸果さんに見せてあげたいよね」
真姫「…薄情者!二人はそれでも海未の親友なの!?」
にこ「見損なったわ!何が役割よ!何が見せてあげたいよ!信じらんない!!」
凛「海未ちゃんのこと…心配じゃないの…?」
花陽「私たちが思うほど、海未ちゃんは強い人じゃないよ…」
希「…あちゃー。半分帰っちゃったねー」
絵里「今日は解散ね。…もう、みんな自分勝手なんだから…」
希「ま、いいんやない?にこっち達も、言ってることは正しいんやし」
絵里「正解がいくつもある問題ほど、面倒なものはないわね」
絵里「…で?穂乃果。ことり。まさかこのまま何もしない訳じゃないわよね?」
穂乃果「はは、絵里ちゃん鋭いなぁ 」
ことり「えへへ。海未ちゃんの役に立つことを思い付いたんだ♪」
希「役に立つ、ねぇ。あの子らと何が違うん?」
ことり「役に立つんです!」
穂乃果「海未ちゃんの願いを叶えるための!」
絵里「あーあ、悪い顔してる…」
にこ「ここが例の美容室ね」
花陽「なんか…すっごく場違いな所に来ちゃった感が…」
凛「うん…。入るのためらっちゃうよ…」
真姫「そうかしら。なら私一人で行ってくるわよ」
にこ「こういう店慣れてるからって…ブルジョワめ…」
真姫「慣れるわよそのうち。どうせ人生のどこかでこのクラスの店に入ることになるんだから」
真姫「ほら、行くわよ」
「いらっしゃいませ!ご予約のお客さまですか!?」
真姫「いえ、そうじゃないんですけど…。園田海未って人、来ませんでした?」
「あー。はいはい。どうりで」
「μ'sの西木野真姫さんだよね?いつも妹がお世話になってます」
真姫「私たちのこと知ってるのね…。…陸果さん」
陸果「そりゃそうだよ♪可愛い妹がスクールアイドル始めたなんて知ったら、知りたくなっちゃうもん」
真姫「…で、海未ちゃんは来ませんでした?」
陸果「まあまあ、立ち話もアレだから奥でお茶でもどうぞ♪いいよね!?店長?」
「お前に任せるよー」
陸果「…ということなので、応接室にどうぞ♪真姫さん。…と後ろの可愛い三人組さん♪」
「にぃっ!?」「ぴゃぁっ!?」「にゃぁ!?」
真姫「……ボヤボヤしてないで。行くわよ」
凛「なんで真姫ちゃんはそんなに平気なのさ…」
にこ「一番パニクりそうなのに…」
真姫「うるさいわね。そんなことより海未よ。海未ちゃんのことを聞かないとこのイライラがどうにかなりそうだわ」
花陽「真姫ちゃん…怒ってるの…?」
真姫「………………」
陸果「ささ、こちらの席にどぞどぞ♪」
真姫「失礼します」
花陽「し、失礼します…」
陸果「みうちゃーん!ちょっと特別なお客さまがお訪ねだから茶菓子用意してー。四名様分ー」
「はーい!すぐにー!」
陸果「さて…結論から言うとね」
真姫「はい」
陸果「確かに海未は昨日の夜ここにきたよ」
陸果「でも、もういない」
にこ「え」
陸果「私が言えるのはそれだけ」
凛「そ、そんな。どこに行ったか知りませんか!?」
陸果「私にもわかんないねー」
花陽「じゃ、じゃあここに来て何をしたんですか…?」
陸果「積もる話をした、くらいかなぁ。あと、ちょっとかわいくしてあげた」
「お待たせしました。粗茶ですがご勘弁を」
真姫「…え?」
「あっ…真姫……」
凛「う、うそ……」
「凛も…」
にこ「ま、マジで…?」
「にこまで…」
花陽「う、海未ちゃん…?」
「花陽……」
真姫(私たちにお茶を出したこの方…)
真姫(花陽が海未って言ったけど…)
真姫(……纏うオーラが全然海未ちゃんじゃなくなってる!)
真姫(まず髪!背中にかかるくらいまであったのに!肩くらいまで切っちゃってるし!)
真姫(前はちゃんと切り揃えてるし、サイドは伸ばしてカールなんかさせちゃってるし!)
真姫(あと色!日本美人の象徴みたいな黒から一転して、モデルみたいなナチュラルブラウンに染めちゃって…!)
真姫(…普通にこの街で通じる、おしゃれな美人になってる…!)
真姫「いっ、一体何が…?」
陸果「まあ、あれだよね?反抗期?」
「なっ…///」
陸果「家出した名家の一人娘は見知らぬ女に唆されて非行への道を踏み出してしまう…」
「ね、姉さん…!///」
陸果「家というしがらみの都合でこういうファッションに抵抗があったけど、ホントはやってみたくって…」
陸果「その健気な少女の密かな思いに女は心打たれて、改造してしまうのであった…」
にこ「」
凛「にゃ…///」
花陽「す…すごい…!」
真姫「…そ、そんな茶番はいいのよ!」
真姫「海未よね!?あの弓道やってて、後輩から大量のラブレターをもらってて、すっごく素敵な詞を書いて、私の曲を一番早く聴いてくれて、しっかりものだけど恥ずかしがりで、…μ'sの骨組みを担う海未よね…!?」
「………………」
陸果「…うーん。しばらく海未に戻ることはないのかもね」
「…うん。姉さんとお母様の仲を戻すまで」
にこ「…どういうこと?」
「…姉さんは、園田の家から勘当されているの。…ただ美容師になりたいと夢を追っただけで」
にこ「勘当…?…実の娘を?…信じられない」
花陽「…μ'sの活動にも、参加しないの…?」
「…したい、けど…」
花陽「けど…?」
「……言葉が、出てこないの。頭の中は姉さんのことでいっぱいで……。…今の私に、詞は書けない…」
花陽「……海未ちゃん…」
凛「それでもいい。海未ちゃん、戻ってきてよ。私たちが何とかするから」
「……よくない、よ。かって出た役目を果たせないなんて……情けない」
凛「情けないって、それは海未ちゃんの感情だよ。押し付けるなんて海未ちゃんらしくない」
真姫「やめなさい凛。それも私たちが海未に押し付けた人物像よ」
真姫「……つまり、家の問題が片付くまで陸果さんのところにいる訳ね」
「うん…。ごめんなさい、真姫」
真姫「…わかった。帰りましょう」
にこ「な!?まだ何も解決してないわよ!?」
真姫「すぐに解決する問題じゃないわ。…海未ちゃんがらしくもない駄々こねてる訳だから、相当よ」
真姫「…私たちがやるべきことは、海未ちゃんを元に戻すんじゃなくて…」
凛「真姫ちゃん…?言ってる意味が…」
真姫「わからなくてもいい。けど海未に海未を押し付けるのはみうちゃんにとって邪魔でしかないのよ」
花陽「???」
真姫「お忙しい中お時間くださいまして、ありがとうございます。では、失礼します」
陸果「じゃあねー真姫さん。応援してるよー」
「真姫…」
真姫「…あと、学校には来なさいよ。面倒なことになるから」
「うん……」
陸果「真姫さん、察してくれたのかな」
「たぶん…」
陸果「でもさ、よくよく考えてたらすごくバカなことやってるよね、私たち」
陸果「“姉さんの勘当を取り消さなければ私は家に戻りません”、なんてさ」
陸果「今の姿見たら卒倒すると思うよ、母さん」
「我慢比べ、だよ。…私が捨てたものの大きさに気付いて戻りたくなるのが先か、お母様が…姉さんへの愛情を思い出すのが先か」
陸果「苦しいねぇ。…そんなことさせてる私も、苦しいけど…」
「それが姉さんへの罰。しっかり反省してね」
陸果「はーい。…でもそのしゃべり方、いいじゃん。なんか新鮮」
「…せっかくだから、やってみようかと」
___園田邸
穂乃果「そうですか…やっぱり帰ってないんですね」
海未母「はい…心当たりは全部回ったのですが…」
ことり「…まだ一つ、残してますよね?」
海未母「………………」
穂乃果「……そこまで陸果さんのこと毛嫌いするのって、なんでですか?」
ことり「海未ちゃんに出ていった理由まで隠してまで、存在を消し去りたかったんですか?」
海未母「……すべて、私の過ちなのです」
海未母「陸果は……すごい子でした。一聴いて十覚えるを体現したような子で…」
ことり「…そう、ですね。実際、業界を牽引するカリスマって言われてますもん」
海未母「人並みの努力で人の数十歩先をゆくので、苦労はありませんでした。…ですが海未さんは…」
穂乃果「人の数百倍努力して、人の数十歩先をゆく人、ですよね」
海未母「はい…。…手間のかかる子です」
海未母「海未さんが落ちこぼれないよう、愛情を海未ばかりに向けた…それがいけなかったのです」
穂乃果「…陸果さんが、…どうなったの?」
海未母「……私の知らない領域や、私の知らない友好関係を持って…」
海未母「……お恥ずかしい話ですが、母親として、陸果にしてやれることがなくなってしまった。…母親としての立場を脅かすくらいに、海未さんから愛情を向けられていた」
海未母「怖かったのです…。私の産んだ子でありながら、私の心を蝕む陸果が鬼の子としか思えなかったのです…」
ことり「それで…絶縁しちゃったんですか…?」
海未母「………………。…はい」
穂乃果「……一つだけ聞きたいです」
海未母「はい…」
穂乃果「海未ちゃんはお母さんと陸果さん、どっちが好きだと思いますか?」
海未母「………………。…こんな矮小な母親崩れより…世の中を羽ばたく才女の方が」
穂乃果「違います!ありえませんそんなこと!」
穂乃果「どちらも海未ちゃんにとってかけがえのない人に決まってるじゃないですか!」
ことり「お母さんとお姉さんに仲良くしてもらいたい。海未ちゃんはたったそれだけの理由で家出する、普通の女の子です!」
穂乃果「お家の事情は私たちにはわかりません!でも、海未ちゃんの気持ちを汲んであげることはできます!」
ことり「お母さんなら、当然出来ますよね!?いえ、できます!」
穂乃果「どうか…海未ちゃんの最初で最後のわがままを聞いてあげてください!」
__音ノ木坂・部室
絵里「………………」
希「………………」
「あ、あの…絵里?希?」
絵里「…ちょっと指導室まできてもらおうかしら?みうちゃん?」
希「そうやね。素行不良の後輩にガツンとヤキいれてやらんと」
「え?あ、ちょっ、引っ張らないで…!」
凛「連れてかれちゃったにゃ…」
にこ「まあ、しょうがないわよねぇ…。あんなキレイなメイクして、制服着崩しちゃってるんだもん」
穂乃果「にこちゃんも、だけどね」
にこ「にこはいいの!」
ことり「でも、すごく素敵だったね。さすが陸果さんプロデュース」
花陽「海未ちゃんの隠れた魅力をあれだけ引き出すファッションは、なかなか…」
真姫「………………」
ことり「真姫ちゃん?」
真姫「…なによ」
ことり「なんか不機嫌そうだけど…どうしたの?」
真姫「…なんでも」
真姫「……あの時海未に助けてもらったのに…私は…」
穂乃果「真姫ちゃん」
真姫「…穂乃果?」
ことり「ちょっと一緒に来て」ガシッ
真姫「ちょっ、どこに行くのよ!」
真姫「お、音楽室?何で?」
穂乃果「はい、これ」
真姫「?…海未の…作詞ノート?」
ことり「部室の閲覧用のコピーだけど…この中に一つだけ没になった詞があったの」
穂乃果「この付せんが挟まってるところ」
真姫「…!」
穂乃果「これ、μ'sのことを書いた詞じゃないし…きっと誰か一人のことを思って書いた詞だと思うんだ」
ことり「…でも、誰もあてはまらないの」
真姫「………………」
真姫「…いいえ。ちゃんといるじゃない」
真姫「この詞の主人公」
穂乃果「…真姫ちゃんもそう思う?」
真姫「伊達に海未ちゃんと一緒に作曲してないわよ。読解力は磨かれたわ」
ことり「なら、この没作をその人の曲にしようよ」
真姫「……やってやろうじゃない!穂乃果とことりの手のひら上なのは気にくわないけど!」
穂乃果「任せたよ!真姫ちゃん!」
ことり「他は私と穂乃果ちゃんに任せて!」
絵里「ねえ、海未」
「はい」
絵里「作詞はできないって言ったけど、ライブはどうなの?歌とか踊りはできそう?」
「……無様なものを見せていいのなら」
希「十分や。むしろそっちの方が需要あるかも」
「え?」
希「書き留めてたのを真姫ちゃんが曲つけたいって言ってなぁ。海未ちゃんがいないとうまく作曲できそうにないって」
「そう、なんだ…」
絵里「…でも、真姫はやるでしょうね。あなたへの恩返しを誓いにして」
「………………」
絵里「…丁寧語じゃない海未もかわいいわね。普段見られない海未の心の内を知れるみたいでうれしくなる」
希「けど、それは無理してるのと違う?」
「…私なりの区切りなの」
「…新しく詞をおこせない私は、μ'sに対する責任は果たせない。…だから、みんなと楽しく過ごす資格なんて…」
希「責任かぁ。考えたこともなかったなぁ」
絵里「私だってないわよ。何ていうかな…理屈うんぬんすっ飛ばして突っ走るのがμ'sでしょ?」
希「そうそう。海未ちゃんも深刻に考えなくてもええんよ」
「言葉ではわかってる。でも…私の深層心理はみんなに迷惑かけるのを……情けない姿をさらすのを…怖がってる」
絵里「…なるほどね。なら、発想を逆転させましょう」
「??」
希「目的と手段を入れ替えればいいんやない?」
「……それは、どういう…?」
__陸果の美容室
陸果「いらっしゃいませ!ご予約のお客さま…って!穂乃果ちゃん!?」
穂乃果「陸果さん、久しぶりっ!」
陸果「うわぁー久しぶり!穂乃果ちゃんは相変わらずかわいいなぁー!」ギュー
穂乃果「もーくすぐったいですよぉー♪」
穂乃果「あ、これ差し入れです。おまんじゅう、皆さんで食べてください」
陸果「んもぅー穂乃果ちゃんったら抜け目ないんだからー♪このこの♪」
陸果「で、穂乃果ちゃんはどうしたの?髪切りにきた?」
穂乃果「あー。まけてもらえたりします?」
陸果「はい!よろこんで♪」
穂乃果「もー冗談ですよぉー♪」
陸果「まあまあ、話しながらちょっといじらせてよ」
穂乃果「えへへ。実は海未ちゃんがあんなにかわいくなって、私も陸果さんにプロデュースしてもらいたいなぁとか思ったんですよぉ」
陸果「まっかせなさい♪穂乃果ちゃんはもう一人の妹みたいなもんだし♪」
穂乃果「昨日、お母さんのところに行ってきたんですよ」
陸果「うちの?」
穂乃果「はいはい。…陸果さんのことについて」
陸果「ごくり…」
穂乃果「聞きたいですか?」
陸果「聞きたいような聞きたくないような…」
穂乃果「まあ、話すんですけどね」
陸果「やっぱりかーい!」
穂乃果「お母さん、大分後悔してましたよ?母親失格だって」
穂乃果「海未ちゃんが陸果さんばかりになついて母親の立場がなくなっちゃうと思って。出来すぎた分、怖くなっちゃったって言ってました」
陸果「……そうなんだ」
穂乃果「でも実際は……海未ちゃん、お母さんも陸果さんも比べられないくらい好きですから。思い過ごしですよ」
穂乃果「……それに、陸果さんの近況を伝えたら…なんだか嬉しそうな顔をしてました」
陸果「………………」
陸果「……穂乃果ちゃん」
穂乃果「はい」
陸果「…謝り慣れてる穂乃果ちゃんに聞きたいんだけど」
穂乃果「うん。全然うれしくないそれ」
陸果「話すら聞いてもらえない相手に謝るにはどうすればいいのかな…?」
穂乃果「…聞いてもらえるまで謝ること。それしかないね」
陸果「ありがとう。明日殴り込むね」
穂乃果「それならオトノキに来てください。お母さんも呼んでますんで」
陸果「わかったよ」
陸果「はい、こんな感じでどう?」
穂乃果「おおっ…!なんだか大人っぽい!」
陸果「穂乃果ちゃんのトレードマークのサイドテールは残しつつ…目元の流れとメイクで演出したんだけど…どう?」
穂乃果「うんうん!この感じ!ことりちゃんが欲しがってたのはこれだよ!」
陸果「あ、そっかぁ。ことりちゃん、μ'sの服飾担当だっけ。一緒にくればよかったのに」
穂乃果「私もそう思ったんだけど…」
ことり『大丈夫だよ。みうちゃん見たらアイディアが続々湧いてきたから』
穂乃果「だって」
陸果「……私も、ことりちゃんにだけは勝てないなぁ」
穂乃果「ありがとうございました!でも、こんな割安でいいんですかぁ?」
陸果「穂乃果には色々もらっちゃったから。その分値引きってことで」
穂乃果「あはは。陸果さん太っ腹ー♪」
陸果「ギクッ」
穂乃果「あー…。で、ではこれで…」
陸果「さーて、どう海未に言いつけてやるかなぁー♪」
穂乃果「ああああ、やめてぇぇぇ」
絵里「海未、またそんな格好して。また指導室行きね」
「また…ですか?」
希「えりち、楽しんでるやろ?」
絵里「バレた?」
希「女をはべらす怪人、絢瀬絵里の生態はバッチリ編集済みやでー」
絵里「希、あなたも少し指導が必要なようね。ついでにやっちまいましょう」
希「やーん」
にこ「…さて、生徒会二人の茶番が済んだところで」
ことり「私たちも準備しよっか」
穂乃果「私は陸果さんをご招待するねー」
ことり「私は海未ちゃんママを」
真姫「私と花陽と凛で会場の準備をしとくわ」
にこ「なんかあったら連絡ちょうだい。私は絵里と希がやらかさないか見てるわ」
希「ほい、海未ちゃん」
「?作詞ノート?閲覧用の」
絵里「はい、みうちゃん」
「?プレイヤー?何の曲…?」
希「そこの没の詞から真姫ちゃんが作った曲や」
絵里「出来は相変わらず素晴らしいわよ」
「!!…さすが、真姫だよね…」
絵里「その詞は海未、あなたのことを書いたということで」
希「今からソロでライブしてもらうでー」
「………………は?」
絵里「身だしなみ、良し!陸果さん仕込みのオシャレ女子高生!」
希「曲、良し!自分の作った詞、歌えないとは言わせないでー」
「まっ、待って!いきなりライブなんて」
希「できるやろ?」
絵里「もうすでに会場も出来上がってるし、お客さんも入ってる。海未のソロライブを見に」
希「さあ、海未ちゃん!」
絵里「その歌で、園田家の絆を取り戻すのよ!」
「………………」
「……ははは。…いつも、そうでしたね」
「この計画性のない突発的な活動…まさしくμ’sです」
海未「………………はい!μ’sの園田海未、その期待に応えましょう!」
海未母「ことりさん?今から何が始まるのですか?」
ことり「海未ちゃんがお母さんに見せたいものがあるんです」
穂乃果「お母さんも海未ちゃんが大きく成長してるのは見てきてると思います。実際、スクールアイドル始めて海未ちゃんは変わりましたし」
ことり「でも海未ちゃん、本音を言いたがらないからわからない部分もありますよね」
海未母「……はい」
ことり「ですから、今日の催しはお母さんに海未ちゃんの本音を伝えるためのライブなんですよ」
穂乃果「…あと、陸果さんの心残りをすっきりさせるためでもある、…みたいですよ?」
陸果「…自分で仕込んどいて他人事ですかい…」
陸果「……ご無沙汰しております、お母様」
海未母「……陸果」
陸果「……今は何も言わないでおこう?…海未の素直な気持ちを受け取ってからにしよ?」
海未母「……ええ」
凛「はーい!みなさん準備はオーケーですかー!?ただいまから園田海未ちゃんμ’s復帰ソロライブを開催しますにゃー!」
希「ひゅーひゅーぱふぱふー」
凛「じゃあ早速本日の主役にご入場してもらいましょー!海未ちゃん、どうぞー!」
海未「………………。…はは。本当に私と、姉さんと、お母様のためのライブなんですね」
海未母「!!!海未さん!?その髪…!!」
海未「姉さんがアレンジしてくれたんですよ?素敵ですよね?」
海未母「!………………」
陸果「あー、母さん固まっちゃった」
海未「……はい。…トークのネタは何も用意してないので、早速ライブの方を始めますね」
希「彼女は何の為に涙したのか」
凛「思い出の人を懐かしんでか、はたまた想い人への情熱か」
希「…いいえ、それはその感情を乗り越える為の決意の涙」
凛「過去の自分を解き放ち、大切な人に自分を変えた理由を、今ここに記します」
海未「…二人してそんな芝居くさい前口上を…///」
希「へへ、一回やってみたかったんや♪」
凛「ほぼアドリブだけど、決まったよねっ♪」
海未「はい…!大切なメンバーから勇気をいただきました…!」
海未「では“勇気のREASON”。私がここにいる理由、受け取ってください!」
ことり「わー、ホントに…」
穂乃果「…あれ、ホントにことりちゃんのデザインなの?」
ことり「うん。陸果さんに頼まれちゃって」
花陽「それもすごいことだけど……あれを実現させちゃう陸果さんって、底知れない人だよね…」
にこ「ドラマチックじゃない。友達にウェディングドレス、デザインしてもらうなんて」
絵里「まあ、こうして挙式できたのもことりと穂乃果のおかげなんだし。それを形にしたかったんじゃない?」
真姫「だといいんだけど。抜け目のない陸果さんはこれで更に話題を作って注目されてる訳だから」
凛「邪推だよー真姫ちゃん。陸果さんは海未ちゃんと同じで素直な人だよ?」
希「そうそう。恩返しとしてことりちゃんのデザイン顧問を引き受けてくれたやん?それとこれとは別だと思うよー」
海未「…姉さんも律儀な人ですからね。狡猾な面もありますが」
海未(……あのライブを見たお母様と姉さんは、何故か声も上げずに涙を流していました)
海未(ただ一つ。私の愛する母と姉が仲良くしてくれればそれでいい。そんなわがままから出来上がった曲)
海未(…私のわがままは押し通ってしまったようで。始めて本音をぶちまけた妹と、ちゃんと夢を掴んだ姉の姿を見て、お母様は何だか満たされた様子でした)
海未(もうとっくに姉妹は一人立ちしていたと。そう言って姉さんに詫びて、勘当を取り消しました)
海未(姉さんも、ろくに話もせず出ていって家を滅茶苦茶にしてしまったことを謝罪しました)
海未(……二人して頭下げあったら、何だかどうでもよくなってしまった。今、主賓として招かれたお母様が涙を流して姉さんを祝う理由です)
絵里「ブーケトスだって。さて、誰のところに飛んでくのかしらね」
ことり「結婚、かぁ。考えた事もなかったなぁ」
希「別に避けへんでもええと思うよ。所詮迷信、気にするだけ徒労やん?」
凛「あれ?希ちゃん、そういうの好きだと思ったんだけど」
にこ「二人の絆はスピリチュアルパワーでも結べないんや、ってねー」
希「に、にこっち!///」
花陽「ふふ、にこちゃんってば」
穂乃果「そうだよね。絆の結ぶのは二人の心なんだし」
真姫「それと…信じ合える仲間、かしら?」
海未「はい。……こんなにもすばらしい仲間に出会えたことに、感謝しなければなりませんね」
海未「ありがとう、みんな」
穂乃果「海未ちゃん、上!上!」
海未「え?」トスッ
陸果「はっはぁー。受け取ったのは我が妹であったか」
海未「…はい」
陸果「……海未の相手がどんな人かはわからない。私みたく多難な道になるかもしれない」
陸果「……でも、海未と、園田の家のこと。もう絶対逃げ出さないから。海未のこと絶対見守るから」
海未(…正式に園田の家の後継者となった私と、本当の意味で園田の姓がとれた姉さん)
海未(今までと何ら変わらないようですが、姉さんのことを一番近くに感じられるのは幼き日の思い出ではなくなりました)
海未(…私は、ようやく前に進めそうです)
海未「はい…!」
海未「陸の果てまで、お願いします」 Fin
微妙でした
乙 面白かったよ
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