上条「ただいま」レッサー「おかえり」 (19)


いろんなシチュエーションを想像して、短編で書いていくタイプのスレにしたいと思います。

まずは第1話を投下します。

内容は、上条当麻が魔術サイドの人間で、久々に故郷に帰ってくるというシチュエーションです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459680037

期待











Welcome back to London











"Ladies and Gentlemen, welcome to London. We have just landed at Heathrow Airport.
The time here is now 17:20 in the afternoon.

For your safety and comfort, may we ask you to remain seated untill the Captain has turned off the seat belt sign.
May we also advise you to take care when you open the overhead compartments. Items, which may have moved during the flight may slip out.
Please be reminded to keep your cellphones switched off until you are outside the aircraft.
Please be sure to take all of your belongings when you disembark.

Your crew would like to thank you for flying with Japan Airlines today.
We are looking forward to seeing you onboard again.
We wish you a very pleasant stay here in London."

飛行機が目的地に着く時は、いつも機内の雰囲気がガラリと変わる。

それまですっかり冬眠中の熊よろしくぐったりしていた人々が次々に活力を取り戻していくのだ。そして、そんな空気に当てられたかのように眠っていた人が目を覚まし、機内には不思議なエネルギーが満ちていく。

上条当麻は、ボーイング797のシートに身を預けながら、そんなことを考えていた。そうして、機内に充満していた"エネルギー"を吸い込むように大きな欠伸をした。地上は実に半日ぶりとなるので、心身にかなりの疲れが溜まっていたらしい。

できればこのままフカフカのリクライニングシートに身を沈めていたい気分だったが、そうもいっていられない。
まず手近なところにある荷物をまとめると、通り掛かった若いCAに中身が空になったカップを返却した。

「Excuse me, please take it.」
これお願いします

「I appreciate your cooperation. Are you on a trip?」
わざわざどうもありがとうございます。ご旅行ですか?

「No. I'll go back to my hometown for the first time in 2 year.」
いえ、帰郷です。2年ぶりに

「That is wonderful! Have a nice stay.」
とても素敵ですね。お気をつけて行ってらっしゃいませ

軽くお辞儀をすると、若いCAは微笑んで去っていった。上条もようやく重い腰を上げて降機の列に列ぶ。

手持ち無沙汰に腕時計を覗き込んでみると、時刻は深夜の2時半過ぎを示していた。……2時半すぎ?

少し考えて、上条はハッとした。英国と日本の時差をすっかり忘れていたのだ。たいてい、国際線の乗客は機内のアナウンスで時刻の調節をするものだ。上条は列がターミナルにたどり着くまでの間に、腕時計の時刻を英国のそれに合わせることにした。サマータイムに入るのはもう少し先になるので、時差はピッタリ9時間である。


ターミナルに入って荷物を受け取ると、時刻は18時をまわったところだった。ところどころ空の見える高い天窓は、どれもが薄暗い色に染まりはじめていた。予想はしていたが日本よりは少し肌寒い。

本日上条が帰国することは、もう1ヶ月以上も前から知らせてあった。

ありがたいことに、今日は仲間が迎えに来てくれる手筈になっている。待ち合わせの場所は何番ゲートだっただろうか。

上条はバッグから携帯電話を取り出して機内モードを解除した。すぐに電波が入り、留守中の新着Eメールが何通か届く。

Eメールは迎えに来る予定のレッサーからだった。もちろん中学生である彼女が一人でやって来る訳ではないのだが、こういうのはたいてい彼女がやりたがる分野だった。

内容はどうでもいい前置きが多く目を通すのに難儀したが、終わりの方に追伸という形で『32番ゲートの前に黒いワゴンを停めてあります。一応、駐車場の番号は14番ですと書き添えておきますね。タクシー乗り場に隣接しているのですぐわかるはずです。』という記述があるのを見つけた。

32番ゲートならもうすこし先だ。

上条は黒塗のキャリーバッグを握り直し、人混みを避けながら歩き始めた。長旅で尻が痛かったはずなのに、随分足が軽くなった気がした。







ブルーとグレイとオレンジが入り混じったような、宵闇を待つばかりの空の下に、黒いステーションワゴンが停車していた。腎臓をモチーフにしたフロントグリルが特徴のドイツ製右ハンドル車だ。

車内には2人の少女が収まっており、二人はとある少年のお迎え役としてここまで来ていた。

彼と会うのは、かれこれ2年ぶりにもなる。

次々にゲートから出てくる観光客の群れに二人して目を凝らす中で、助手席に陣取っていた少女レッサーの携帯が震えた。Eメールを受信したらしい。

「お、ようやく返信が来ましたよ。どうやら特に遅延等もなく到着したみたいですね。えーと、あと5分10分でここに来るそうです」

レッサーが画面から目を離すと、運転席でハンドルに寄りかかりながらゲートを見張っていたフロリスが顔を上げ、背もたれにより掛かる。それから気怠げな視線をレッサーによこした後、

「あーそう。んじゃあついでにベイロープ達に知らせておけよ。あと1時間もしたら着くってさ」

「了解しました。帰り道混んでなきゃいいですけどねぇ」

「期待はできないなぁ。ま、急ぐ旅じゃないしいいんじゃない?」

「それもそうですねー。ハイ送信完了っと」

メールアプリを閉じると、レッサーもフロリスに倣ってシートに頭を埋める。

ルームランプは灯していなかったが、空港からの明かりで車内はだいぶ明るかった。

「ねぇフロリス」

「んー?」

「私ゲートの出入り口まで出迎えに行ったほうがいいですかね? 上条さんってホラ、すごーくマヌケな一面がありますし、道に迷ったら大変じゃないですか」

目の輝きを必死に気取られまいとしてソワソワするレッサーは、あと一歩でドアノブに手をかけて飛び出さんばかりだった。

「バーカ。あんな人の出入りが激しいとこに行ったって小さいレッサーなんかすぐに埋もれるのがオチだろ。いいから大人しくここに座っとけって」

フロリスは呆れた目でレッサーを制すと、再びハンドルに寄りかかった。

それから数十秒の沈黙があった。

次を切り出したのはフロリスだ。

「しっかし、もう2年も経つのかー」

意識せずふと洩れたようなつぶやきを聞いて、レッサーは、上条当麻が世界を見て回るために丁度2年前ここを発ったときのことを思い出していた。あの日も別れはこの空港だった。

彼女達は阿吽の息で結束して彼を引き止めたが、とうとう押し切られて背中を見送る事になった。

常に英国のことだけを考え行動してきた自分達とは違って、上条はもっと外にまで目を向けていたのだ。

信じていた5人の深い絆の、その4と1の間に、無粋な線が引かれたような思いだった。

けれど、それも今日までだ。上条はちゃんと帰ってきてくれた。そのことがとても嬉しかった。自分たちを別つ線はもうどこにも存在しない。

皆敢えてそれに触れるようなことはなかったけれど、きっと同じ思いを持っているに違いないとレッサーは思った。

自然と口元が緩んでいたところに、「あっ」というフロリスの声が割り込んできた。いまのレッサーにはそれ以上の説明は不要だった。

素早く視線を窓の外に合わせると、懐かしいツンツン頭がキョロキョロしながら歩いてくる姿が見えた。

観光客みたいに落ち着かないその足取りは再会の感動にはひどく不釣合いで、彼女達は揃って吹き出した。

そしてドアを開け、軽やかな足取りで彼を迎えに走りだす。






"Hey! It's great seeing you!"
久しぶり!



このお話はこれでお終いです。
次回はまた別の短編を投下します。

レッサーかわいい

昔俺妹のss書いてた?
似たようなスレタイのやつに心当たりあるんだけど

はよ

期待しております

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月28日 (木) 18:57:09   ID: Vv-VeclV

期待

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