歌鈴「私の中の神様」 (52)

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朋「百発百中」
朋「百発百中」 - SSまとめ速報
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寺生まれのPさんとかふじともとか茄子さんとかよしのんとかひじりんとか出ます

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朋(歌鈴ちゃんを助ける未来)

朋(……水晶玉に映ってくれるかしら)

朋「……」

朋「……」

芳乃「どうでしてー?」

茄子「水晶玉に何か映りましたー?」

朋「……あー」

朋「うん」

朋「見えたわ」

聖「どんなのでした……?」

朋「んーっと……また、よくわかんないんだけどね」

茄子「腹踊りでした?」

朋「そんな結果が出たらもっとリアクションするわ」

朋「そうじゃなくてね」

朋「……なんかさ」

朋「あたしたちが、歌鈴ちゃんの前で歌ってるのよね」

芳乃「わたくしたちがー?」

朋「ええ」

茄子「私も?」

聖「私もですか……?」

朋「もちろん」

茄子「もしかして、プロデューサーさんもですか?」

朋「いや、さすがにいないわよ」

芳乃「しかし、前といってもどこで歌ってるのでしてー?」

朋「それなんだけどさ」

朋「……たぶん、歌鈴ちゃんのいるあの神社で歌ってるのよね」

芳乃「ほー」

朋「歌鈴ちゃんが座ってて」

朋「あたしたちはその前で歌ってて」

朋「その間にプロデューサーがいていつものやってた」

茄子「『破ぁ!!!』ってやつですね」

朋「そうそう」

聖「……」

聖「ど、どういう状況なんでしょう……?」

朋「あたしにもまったくわかんないわ」

朋「でも、起こるのよね、これ」

芳乃「そなたの占いははずれることがないゆえー」

朋「そうなのよね」

朋「何はともあれ、歌鈴ちゃんを助けるためには、彼女の前で歌う必要があるみたい」

朋「……なんだけど」

朋「……」

朋「一緒に歌ってくれる?」

芳乃「もちでしてー」

茄子「はい♪」

聖「はい……!」

朋「……」

芳乃「どうしたのでしてー?」

朋「いや、ちょっとびっくりしちゃって」

朋「みんな即答してくれるから」

芳乃「当然でしてー」

聖「私たち……仲間ですから……」

朋「……そっか」

茄子「それに、絶対あたる占いですし、歌わないはずないですからね」

芳乃「台無しでしてー」

茄子「うふふ、冗談です」

茄子「朋さんにも、プロデューサーさんにも助けられましたから」

茄子「私も……恩返ししたいんです♪」

茄子「きっと、二人もそんな感じだと思いますよ」

芳乃「でしてー」

聖「……」コクリ

朋「そう……ふふ、うれしいわ」

朋「ありがとね、3人とも」

茄子「いえいえー」

朋「……じゃ、あとはプロデューサーに伝えるだけね」

茄子「……いつ帰ってくるんでしょうか?」

朋「……」

朋「……さあ?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


モバP「ただいま」

朋「あ、お帰りプロデューサー」

芳乃「ウノでしてー!」

茄子「あら、じゃあドロ2で」

聖「私も……」

朋「あたしもドロ2!」

芳乃「ぎゃあーでしてー!」

モバP「……楽しそうだな」

朋「楽しいわよ、UNO」

茄子「うふふっ、あがりですね♪」

聖「あっ……」

芳乃「むー……二つ同時に出してあがりなんて卑怯でしてー」

茄子「ルールですから♪」

芳乃「くやしいのでしてー」

聖「えっと……私もウノです……」

芳乃「む」

モバP「……まあ、仲いいことはいいんだけどさ」

モバP「別に事務所でやる必要はなくないか?」

朋「いや、あんたを待ってたのよ」

モバP「俺を?」

朋「ええ、伝えたいことがあって」

聖「やった、あがり……!」

芳乃「うー……」

モバP「なんだ?」

朋「えっと――」

芳乃「朋殿ー、ウノを言い忘れてるのでしてー」

朋「あっ!」

朋「……」

朋「……ごめん、この勝負が終わるまで待ってくれる?」

モバP「……わかった」

朋「よっし、あがり!」

芳乃「ぐあー負けたのでしてー!」

芳乃「……」

芳乃「悔しいのでしてー、もう一回でしてー!」

朋「プロデューサーに話してからね」

芳乃「むー、勝ち逃げとは卑怯でしてー」

朋「や、話し終わった後はちゃんと参加するから」

茄子「じゃ、3人でやって待ってましょうか」

芳乃「でしてー」

聖「次は茄子さんにも勝ちます……!」

茄子「ふふ、負けませんよ♪」

朋「……じゃ、プロデューサー、話なんだけど」

モバP「ああ」

朋「まずひとつ」

朋「あたしの昔の話……さっきみんなに話したの」

モバP「!」

朋「あたしと、あんたと、歌鈴ちゃんの3人で遊んでたときから」

朋「あたしがアイドルになる未来を占ったところまで、全部話したの」

モバP「……そうか」

朋「……まずかった?」

モバP「いや、全然」

モバP「むしろ……言い方は悪いがよく話せたな」

朋「あたしの中で、整理はついたんだと思う」

朋「あのときのことを思い出すだけで悲しいし、苦しいけど、でも人に話せるくらいには」

朋「それに、あたしとしては話せてよかったと思う」

朋「みんなに聞いてもらえてよかったと思う」

朋「……みんなが歌鈴ちゃんを助けるために協力するって言ってくれて、本当にうれしかったの」

モバP「……」

朋「で、もうひとつなんだけど」

朋「その話が終わった後にね、歌鈴ちゃんを助ける方法を占ったらどうかって提案が出たのよ」

朋「あたしがアイドルをやること、その後紆余曲折を経て、あたしと歌鈴ちゃんとみんなで歌ってる未来は見えたわ」

朋「でも、その中間が見えてなくて、どうやったら歌鈴ちゃんがあたしたちと歌えるかがわからなくて」

朋「だから、占ったの」

モバP「……」

朋「で、占った結果なんだけど」

朋「あんたがいつもの『破ぁ!!!』ってやつを歌鈴ちゃんにやってて」

朋「あたしたち4人はその後ろで歌ってる姿が見えたわ」

朋「……どういうことなんだと思う?」

モバP「……」

モバP「歌鈴ってさ」

モバP「アイドルとか好きだったんだ」

朋「……そうね」

朋「あたしが引っ越すことを告げた日もそんな話しようとしてたっけ」

モバP「俺も朋もあまり知らなかったから話せなかったけどな」

モバP「朋がいなくなった後も歌鈴はちょくちょくその話しててな」

モバP「……もっとも、俺はほとんど聞いていただけだったが」

朋「ふーん……」

モバP「で、なんだけど」

モバP「たぶん、歌鈴の好きなものを目の前で見せることで歌鈴の意識を引き上げようとかそんな感じじゃないか?」

モバP「俺が取り憑いた神様を飛ばして、その間に中にいる歌鈴の意識を表に出す、みたいに」

朋「あー、そういう」

朋「記憶喪失の人の記憶を取り戻すきっかけみたいな」

朋「……」

朋「……そんな上手く行くもんなの?」

モバP「さあな」

朋「えぇ……」

モバP「そもそも、神様を引き剥がすなんて俺だって経験したことないからな」

モバP「だが、朋の見た未来ではそう見えたんだろ?」

朋「うん」

モバP「なら、きっとそれが突破口なんだろう」

モバP「歌鈴を歌鈴に戻すための」

朋「……」

モバP「……さて」

モバP「すると、いつ行くかだよな」

朋「……暇な日?」

モバP「幸い俺たちはまだあまり売れてないしな」

モバP「仕事でいっぱいで休みが取れないっていうこともない」

朋「……喜んでいいのかしら?」

モバP「今回に限っては喜んでいいと思うぞ」

モバP「もともと歌鈴を助けるためにはじめたものだしな」

朋「……そうね」

朋「でも、今は楽しいわ、アイドル」

朋「みんなと一緒に歌えて……踊れて」

モバP「……」

朋「……っと、話がそれちゃったわね」

朋「暇な日っていつかしら?」

モバP「レッスンとかを休むんだったら、明日でもいけるな」

朋「じゃ、明日行きましょうよ」

モバP「急だな」

朋「善は急げって言うじゃない」

モバP「まあ、そうだけど……」

茄子「うふふ、楽しみですね♪」

朋「あれ、勝負は?」

茄子「一抜けです♪」

朋「……さすがだわ」

モバP「休むことになるけどいいのか?」

茄子「一回くらいサボっちゃってもいいじゃないですか」

茄子「絶対こっちのほうがレッスンなんかよりも大切ですし」

茄子「きっと、二人もそう思ってますよ」

茄子「ね?」

聖「はい」

芳乃「……でしてー」

朋「……あれ、芳乃ちゃんどしたの?」

朋「そんなに頬膨らませちゃって」

芳乃「また負けたのでして……」

芳乃「ぷくーでしてー」

朋「ああ……ドンマイ」

芳乃「次こそー……次こそはー……!」

茄子「……じゃ、次は負けてあげますね」

芳乃「それはもっと悔しいのでして!」

聖「ふふっ」

芳乃「後でもう一回勝負でして!」

茄子「ふふふ、かまいませんよ♪」

聖「奈良……行ったことないから楽しみ……」

芳乃「きっと鹿がたくさんいるのでしてー」

芳乃「人はみな交通機関として鹿を利用しているのでしてー」

朋「いや、それはないわよ」

芳乃「残念でしてー……」

茄子「鹿って乗れるんでしょうか……?」

聖「……小さければ?」

芳乃「……試して見ればわかるのでしてー」

芳乃「わくわくでしてー」

朋「いや、乗っちゃだめだからね」

芳乃「ふむむー……」

茄子「鹿せんべいあげるだけで我慢しましょうね」

聖「あ……でも、鹿せんべいあげてみたい……」

モバP「……」

モバP「一応言っておくが、メインは歌鈴のほうだからな」

聖「あ、はい……わかってます……」

芳乃「当然でしてー」

モバP「……わかってるならいいけど」

モバP「じゃあ明日行くってことでいいな?」

芳乃「でしてー」

朋「でしてー」

茄子「でしてー♪」

聖「でしてー……」

芳乃「真似されたのでして!」

聖「ふふっ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


芳乃「つきましてー」

聖「……鹿、いないですね」

朋「街中に普通にいるわけじゃないからね」

朋「有名な公園とかにいけばいっぱいいるだろうけど……まあ、そっちは後で」

茄子「先に歌鈴ちゃんですね」

朋「ええ」

芳乃「では早く向かいましょー」

芳乃「はりーはりーでしてー」

茄子「……やけに張り切ってますね」

朋「そんなに鹿が見たいの?」

芳乃「まあそれもありますがー」

芳乃「そなたが話してくれた歌鈴殿とはどのような方か見てみたくー」

朋「あ、なるほど」

聖「巫女さん……なんでしたっけ……?」

朋「まあ、一応そうね」

朋「今はちょっと違うかもだけど」

茄子「……ふふ、ドジっ子巫女の歌鈴ちゃんに早く会ってみたいですね♪」

芳乃「でしてー」

芳乃「そのためにも張り切って歌わねばー」

聖「うん……がんばります……!」

朋「ふふ、ありがと」

芳乃「朋殿はどのあたりに住んでいたのでして?」

朋「あたし?」

朋「えーっと……うーん、どっちだったっけ……」

朋「……確か……うん、あっちだったと思う」

朋「たぶん……きっと……」

芳乃「とてもうろ覚えでして」

朋「いや、本当にあっちだったはずよ!」

朋「……少なくとも、あたしの記憶の中だと」

芳乃「現状そなたの記憶以外に頼るものがないのでしてー」

朋「……そうね」

聖「あれ……?」

聖「プロデューサーさんは知らないの……?」

朋「あたしの家に連れてったことはないし……」

聖「そうなんだ……」

朋「基本、神社で集まってから何かすることが多かったからね」

朋「だから、神社の場所は間違えることないわ!」

茄子「神社の場所覚えてたら神社から家の道も覚えてるんじゃないですか?」

朋「いや、だから、あっちだって!」

朋「……たぶん」

モバP「……」

芳乃「……」

芳乃「ねーねーそなたー」

モバP「……」

芳乃「そなたそなたー、そなたー、ねーそなたー」

モバP「……」

芳乃「そなた聞いてるのでしてー?」

モバP「……ん?」

モバP「ああ、すまん、なんだ?」

芳乃「上の空だったので、声をかけたのでしてー」

芳乃「どうしたのでしてー?」

モバP「いや……」

モバP「……たぶん、あれだ」

モバP「緊張してる」

芳乃「緊張でしてー?」

モバP「ああ」

モバP「前は手も足も出なかったからな」

モバP「あれ以後、修練は積んだが、それでも……どうなるか」

モバP「……って、ああ違うな、怖がってるだけか」

芳乃「……」

芳乃「……わたくしが言うのも変な話ではありますがー」

芳乃「朋殿は歌鈴殿を含めた5人で踊る未来を見ましてー」

芳乃「ならば成功することは間違いなくー」

芳乃「また、誰も傷つかないのも間違いないのでありましてー」

芳乃「そこまで気負うことないかとー」

モバP「……そうだな」

モバP「ありがとう」

モバP「落ち着けたよ」

芳乃「どういたしましてー」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


朋「この鳥居の先よ」

芳乃「ほー」

茄子「外見は普通の神社ですね」

朋「まあ、普通の神社だしね」

聖「……あ」

朋「どしたの、聖ちゃん?」

聖「この神社……見たことあります……」

朋「嘘!?」

芳乃「もしやそなたも奈良県民でしてー?」

聖「ち、違います……!」

聖「この前……テレビに映ってた神社が似たような形でした……」

聖「名前はうろ覚えですけど……でも同じだった気がします」

茄子「テレビに出てたの?」

聖「はい」

聖「何でも……願いが叶う神社だ……って」

茄子「願いが叶う……」

朋「……まあ、確かに叶うわね」

朋「あたしだって、叶ったことには叶ったんだし」

芳乃「けれどそれは、朋殿の望んだものでは……」

朋「そうなのよね」

朋「ありがた迷惑で、向こうにとって都合のいい願いの叶えられかたしかしないのよね」

茄子「……テレビで紹介されたってことは、それをきっかけにここに足を運んだ人もいますよね、きっと」

茄子「そして、その人も――」

モバP「……」

モバP「……行こう」

芳乃「境内に来ても誰もいないのでしてー」

朋「呼べばくるわよ、きっと」

朋「すぅ……」

朋「歌鈴ちゃーんっ!」

歌鈴「はーい……っと」

歌鈴「久しぶりですね、朋ちゃん」

朋「ええ、久しぶりね」

歌鈴「それにTさんも」

モバP「……ああ」

歌鈴「そちらの方々はお友達ですか?」

朋「そうよ」

朋「あたしの、今の仲間たち」

茄子「はじめまして♪」

歌鈴「ふふ、はじめまして」

歌鈴「そっちの二人も、はじめまして」

芳乃「はじめましてでしてー」

聖「……はじめまして」

歌鈴「ふふ」

歌鈴「それで、今日はどういったご用件ですか?」

歌鈴「参拝ですか?」

朋「ううん」

朋「今日はね、歌鈴ちゃんに歌を聞いてほしいと思ってきたの」

歌鈴「歌、ですか?」

朋「ええ」

朋「……実はあたしたち今アイドルしてるんだけどね」

歌鈴「アイドル……はい」

歌鈴「たくさんテレビで見てた記憶があります」

朋「そうよね、歌鈴ちゃんはアイドル好きだったしね」

朋「……あたしがアイドルになったなんていったら歌鈴ちゃんは信じてくれるかしら」

歌鈴「信じますよ?」

朋「……そうよね、きっと信じてくれると思うわ」

歌鈴「……」

朋「で、まあはれてアイドルになったわけだから」

朋「アイドルが大好きな、私の大好きな友達に歌を聞かせてあげたいと思ったの」

朋「もうずっと会ってなかったしね」

朋「ちょうどいい再開のきっかけになると思ったのよ」

歌鈴「……私は、この体から離れませんよ?」

朋「いいわよ、別に」

朋「あんたの体を通して、あんたの中にいる歌鈴ちゃんに歌うから」

歌鈴「……そうですか」

朋「だから、聞いてくれない?」

歌鈴「無駄だと思いますけど」

歌鈴「まあ暇ですし……時間つぶしにでも聞いてあげましょう」

朋「そう、ありがとう」

朋「じゃ、ちょっと準備するから待ってて」

歌鈴「わかりました」

朋「と、言うことで歌うことになったんだけど」

芳乃「あーあーあー……準備は万端でしてー」

聖「……私も」

聖「いつでも、大丈夫です……!」

茄子「私も大丈夫ですけど……」

茄子「……アカペラなんですよね?」

朋「ラジカセとか持ってきてないしね」

モバP「まあ、急だったしな」

モバP「準備したほうがよかったか?」

朋「んー……」

芳乃「朋殿の見た未来ではどうだったのでしてー?」

朋「あたしの見てる未来って映像だから音声はないのよね」

茄子「水晶玉から音が出たら怖いですしね」

朋「……だから、音に関してはどっちが正解かはわからないけど」

朋「今ここで歌うっていう未来は変わらないから」

朋「まあ、アカペラでも大丈夫だと思うわ」

朋「……みんなが大丈夫なら」

聖「私は……ずっと、伴奏なしで歌ってたから……」

聖「全然大丈夫……」

芳乃「妹である聖殿が大丈夫なので、お姉ちゃんであるわたくしも大丈夫でしてー」

茄子「じゃあ最年長の私が大丈夫じゃないわけないですね♪」

朋「うん、みんな大丈夫そうね」

朋「それじゃ――」

モバP「――ああ、歌う前にひとつだけ」

聖「……?」

モバP「今から歌う歌に、思い切り心をこめて」

モバP「歌鈴に届くように、心をこめて、歌ってほしい」

モバP「朋も……歌鈴のことをあまり知らないかもしれないみんなも……できるか?」

朋「もちろん!」

芳乃「がんばるのでしてー!」

茄子「わかりましたー♪」

聖「はい……!」

モバP「よし、じゃあ頼んだぞ」

朋「お待たせ」

朋「それじゃ、あたしたちの歌聞いて」

歌鈴「わかりました」

朋「~♪」

芳乃「~♪」

茄子「~♪」

聖「~♪」

歌鈴「……Tさんは歌わないんですか?」

モバP「俺はアイドルじゃなく、プロデューサーだからな」

歌鈴「そうですか」

歌鈴(……)

歌鈴(いい歌声)

歌鈴(……みんな、透き通って芯のある声ですね)

歌鈴(何よりも強い意志を感じます)

歌鈴(届けたい、という強い意志を)

歌鈴(……)

歌鈴(……でも、彼女に届くことはないでしょう)

歌鈴(奥底にしまいこみましたから……絶対に、届くことはありません)

歌鈴(……)

歌鈴(……それにしても、本当にいい歌ですね)

歌鈴(皆さんの声が心地よくて……思わず体が揺れちゃいます)

歌鈴(ふふっ)

===============================


歌鈴「神様を呼ぶ、ですか?」

父「ああ」

父「正確には、歌鈴の体に神様をおろす、だな」

歌鈴「……」

歌鈴「お、おろす……!?」

歌鈴「え、ええっ!?」

父「やりかたは教えただろ?」

歌鈴「う……それは、知識としては知ってますけど……」

歌鈴「で、でも、私、失敗ばかりしちゃってますし……!」

父「仕事は失敗したことほとんどないじゃないか」

歌鈴「で、でも、こけちゃったりしてますから……」

父「……まあ、確かにちょくちょくこけたりはするけど」

父「肝心なところで失敗したことはないだろ?」

歌鈴「……そうですけど」

歌鈴「でも、どうして……急に……?」

父「……」

父「……歌鈴もお母さんに会いたいだろ?」

歌鈴「!」

父「俺も会いたいんだ」

父「だから、神様に願いを聞いてもらって……場所を教えてもらって」

父「会いたいんだ」

歌鈴「……」

父「……今の歌鈴にならできると思ってな」

父「でも、どうしても嫌っていうなら――」

歌鈴「ううん」

歌鈴「私、ドジだから失敗しちゃうかもしれませんけど……でも」

歌鈴「お父さんのためならがんばりたいし……それに、私もあってみたい……!」

父「……」

歌鈴「だから……だから、がんばりましゅっ!」

歌鈴「あっ!」

父「……ははっ」

父「まあ、何かあったら俺が助けるから」

歌鈴「うん……がんばります!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


歌鈴「……」

歌鈴「……ん?」

父「成功したか……?」

歌鈴「んー、ここは……?」

歌鈴「……ああ、なるほど」

歌鈴「私、呼び出されたんですね、この子に」

父「……神様、ですか?」

歌鈴「はい、神様ですよ?」

父「それじゃあ――」

歌鈴「ああ、大丈夫ですよ」

歌鈴「願い事は口に出さないでもわかります、神様ですから」

父「……」

歌鈴「ええと……ああ、なるほど、蒸発した妻に会いたいんですね」

父「はい」

歌鈴「ふーむ、なるほどなるほどー……」

歌鈴「……じゃ、お賽銭入れてください」

父「は……?」

歌鈴「お賽銭入れてくれたら願いをかなえますよ」

歌鈴「対価ですよ、対価」

父「……」

父「……」チャリン

歌鈴「うーん……1円ですか」

歌鈴「なら、1円分の範囲だけで願いをかなえましょう」

歌鈴「人って100年もたたないうちに死んじゃうんですよね」

歌鈴「それに、もしかしたら蒸発しちゃったその人ももう死んでいるかもしれませんよね」

歌鈴「……だから」

歌鈴「黄泉の国に行けばいつか会えますよ♪」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


歌鈴「ん……うぅ」

歌鈴「はれ……私……?」

歌鈴「神様をおろして……それから……?」

歌鈴「んー……ん!?」

歌鈴「ど、どこここ……!?」

歌鈴「真っ暗で何も見えなくて……えぇっ!?」

神様「いいえ、ここはあなたの心の中ですよ」

歌鈴「きゃっ!?」

神様「ただ、今は私が心の大部分に座っているので、真っ暗なだけですね」

神様「人の心なんて覗けないものですし」

歌鈴「私……心の中……?」

歌鈴「い、いやっ、それよりも……ど、どこから声が……!?」

神様「あなたの見えないところからですね」

歌鈴「ふぇっ!?」

神様「はじめまして、あなたにおろされた神様です」

歌鈴「きゃみさま!?」

歌鈴「え、えっと、えっと……私は歌鈴です!」

神様「ふふ、よろしくね、歌鈴ちゃん」

歌鈴「ひゃいっ!」

歌鈴(私、神様と話してるんだ……こんなのはじめて……!)

神様「早速なんですけど」

歌鈴「は、はいっ、なんでしょうかっ!」

神様「この体、私にくれますか?」

歌鈴「えっ……?」

歌鈴「……」

歌鈴「この体……って、私の……?」

神様「はい♪」

神様「だって、勝手に呼び出されたんですよ」

神様「ただで帰れなんて虫のいい話だと思いませんか?」

歌鈴「あうう……それはごめんなさい……」

歌鈴「あの……ちょっとの間貸すくらいなら……」

神様「嫌ですよ」

神様「私はこの体が欲しいんです」

神様「久しぶりに現世に降り立ったんですから……いろいろやりたいこともありますしね」

歌鈴「……お」

神様「あ、お父さんに助けを求めても無駄ですよ」

歌鈴「!?」

神様「あなたのお父さんなら、お母さんのいるかもしれない場所に行っちゃいましたから」

神様「あなたを助けてくれることはありません」

歌鈴「そうですか……」

歌鈴「……」

歌鈴「で、でも、お父さんがお母さんに会えたなら……それでいいです」

歌鈴「それで……」

神様「……」

神様「もう一度聞きますけど」

神様「この体私にくれませんか?」

歌鈴「……」

神様「あなたのお父さんの願い事も叶えましたから、用事は終わりましたよね?」

神様「だから、今度は私が自由に使ってもいいと思うんですよ」

神様「対価ですよ、対価」

歌鈴「……」

歌鈴「あの、それでも」

歌鈴「私まだ、やりたいことがいっぱいあるんです」

歌鈴「だから……あの」

歌鈴「神様相手に失礼かもしれないですけど」

歌鈴「体をとられるのは嫌です」

神様「そうですか……」

神様「じゃあ、仕方ないですね」

歌鈴「……!?」

歌鈴(急に、眠気が……!?)

神様「話し合いですめばいいなって思ったんですけど」

神様「ダメみたいなので強硬手段に出ますね」

歌鈴(まぶたが……閉じて……!)

歌鈴(……あれ、閉じても同じ、真っ暗……?)

歌鈴(じゃあ、私、今まで目を閉じてたのかな……?)

神様「ゆっくりお休みなさい」

神様「もう二度と目覚めることはないでしょうけど」

歌鈴(……このまま)

歌鈴(意識、手放したら)

歌鈴(もう戻れないのかな……朋ちゃんやTさんに会えないのかな……)

歌鈴(……やだ、そんなの)

歌鈴(……やだ)

歌鈴(……や)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

『~♪~♪~♪』

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

『~♪~♪~♪』

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

『~♪~♪~♪』

歌鈴(……)

歌鈴(歌……?)

歌鈴(あれ……歌が聞こえる……)

歌鈴(……)

歌鈴(……あれ、私……意識……?)

歌鈴「ん……っ」

歌鈴(目を開けても、同じ真っ暗だけど)

歌鈴(でも、目を開けたって感覚はする)

歌鈴「……?」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……やっぱり歌」

歌鈴(あ、声も出てる……気がする……)

歌鈴「音が小さくて、聞こえづらいけど」

歌鈴「でも……胸が躍るような、いい歌だ……」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「……もっと、近くで聞きたいな」

歌鈴「音のする方向に歩けば、近くなるかな……?」

歌鈴「……それに」

歌鈴「私を呼んでるような気がする……」

歌鈴「この歌が、私を……」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「……うん」

歌鈴「歩いてみようかな」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……今、私、どっちに歩いてるんだろう?」

歌鈴「真っ暗だから、全然わかんない……」

歌鈴「……」

歌鈴「……でも、歌はこっちから聞こえてくるから」

歌鈴「きっと、こっち……ですよね……?」

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「あれ?」

歌鈴「あれはなんだろう……?」

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「……金髪の、女の子?」

『あ、こんにちは……』

歌鈴「え、ひゃいっ!」

歌鈴(……噛んだ)

『ふふっ……』

歌鈴(しかも笑われた……!)

歌鈴「うぅ……恥ずかしい……」

『秘密にしておくね……』

『それで……えっと……』

『あっち、です……』

歌鈴「……あっち?」

『はい』

『みんな、待ってますから……』

『また後で……』

歌鈴「……!?」

歌鈴「消えちゃった……!?」

歌鈴「……」

歌鈴「なんだったんだろ……今の……?」

歌鈴「……でも、あっち、って言ってたよね?」

歌鈴「……行ってみよ」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「わひゃっ!?」

『あぶないっ!』

歌鈴「わっ」

『ふぅ……大丈夫ですか?』

歌鈴「あ、はい、支えてくれてありがとうございます、大丈夫で……ひゃぁっ!?」

『!?』

歌鈴(さっきの子と違う人……黒髪の女の人……)

『え、えっと……ごめんなさい、何かしましたか?』

歌鈴「いえ、ご、ごめんなさい!」

歌鈴「その……ここに、ほかにも人がいるなんて思わなくて……!」

歌鈴(……私の心の中、なんでこんなにいっぱいいるんだろ……)

『ああ、それはあなたを呼びにきたからですよ』

歌鈴「私を……?」

『はい♪』

『みんな待ってます』

歌鈴「……」

『無事に、こっちにこれるように私の幸運をあげちゃいますね♪』

『ちょっと手を借ります』

歌鈴「きゃっ!」

『んーっ……!』ギュッ

『はいっ、これでいっぱいの幸運を送りました』

『じゃあ、あっちで待ってますね』

歌鈴「……また消えちゃった」

歌鈴「……でも、なんとなく握られたって感覚はありますし……何なんでしょう?」

歌鈴「……」

歌鈴「あっち……」

歌鈴「……」

歌鈴「言われた方向にしばらく歩いてみたけど……何もない……」

歌鈴「……でも」

歌鈴「なんだろ……暗さがちょっと弱まっているというか……」

歌鈴「明るくなってる……?」

歌鈴「でも、周りが見えるわけじゃないし……」

歌鈴「……白くなってる?」

歌鈴「うーん……何なんでしょう……?」

歌鈴「……」

歌鈴(真っ暗な洞窟の中の明かりって言うと、出口)

歌鈴(じゃあ、私も今出口に向かって歩いてるのかな……?)

歌鈴(ここの出口って言うと……)

歌鈴(……)

歌鈴「……あ」

歌鈴「あっち、一際明るい……白い……?」

歌鈴「とにかく……あっち、ちょっと違うし……」

歌鈴「行ってみ――」

『――そっちじゃないのでしてー』

歌鈴「えっ……?」

『目先の欲に駆られる気持ちはわかりますがー』

『急がば回れという言葉もありー』

歌鈴(……また知らない女の子?)

『そなたが進むべき道はあちらでありましてー』

『みなが待っているとはいえー、道を間違えてしまてては元も子もないためー』

『落ち着いてゆっくりと来るがよろしいかとー』

歌鈴「あ、あのっ!」

歌鈴「みんなって……?」

『そなたに会いたいと思っているみなでしてー』

歌鈴「私に……」

『では、また後ほどー』

歌鈴「……」

歌鈴「あっち……」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「音が大きくなってきた……」

歌鈴「やっぱり、素敵です……」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「……」

歌鈴「……」

歌鈴「あっ!」

『やっ』

歌鈴「朋ちゃんっ!」

『久しぶりね』

歌鈴「久しぶりですっ……本当に!」

歌鈴「あのっ、私、ずっと朋ちゃんに会いたくって……!」

『うん、私も……会いたかった』

『ねぇ、歌鈴ちゃん』

歌鈴「はいっ」

『こんな周りに何があるかわかんない場所で話すよりさ』

『外で気持ちよく話そう?』

歌鈴「外で……」

『あっちで待ってるわ』

歌鈴「あっ……」

歌鈴「……」

『~♪~♪~♪』

歌鈴「外……」

歌鈴「……心の、外……」

歌鈴「私の体……」

歌鈴「……うん」

歌鈴「なんとなく感じる……」

歌鈴「歩けば歩くほど、意識が目覚めようとしてるのが」

歌鈴「……今だって、意識はあるけど、そうじゃなくて、何って言うんだろう……物理的に?」

歌鈴「私が、私の体で目覚めようとしてるのが、なんとなく……」

歌鈴「……」

歌鈴「外に朋ちゃんたちがいるのかな?」

歌鈴「……ふふっ」

歌鈴「早く会いたいな……!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


朋「~♪」

芳乃「~♪」

茄子「~♪」

聖「~♪」

歌鈴(……本当に、心地いい)

歌鈴(心の中から何かが湧き上がってくるようですね)

歌鈴(……)

歌鈴(……)

歌鈴(……違う)

歌鈴(本当に湧き上がってきてる……!?)

歌鈴「嘘……!?」

歌鈴(歌鈴ちゃんは心の奥底に眠らせたはず……)

歌鈴(でも、いまこうして浮上しようとしてる……!)

モバP「……」

モバP「……さて」

モバP「それじゃあ、そろそろ出て行ってもらおうか」

モバP「破ぁ!!!」

歌鈴「……っ!」

歌鈴(まず……っ!)

歌鈴(今、歌鈴ちゃんも起きようとしてるから……押し返せない……!)

歌鈴(あっ……もう、出てき――!)

歌鈴「ぷはぁっ!」

歌鈴「はれっ、こ、ここは……?」

朋「!」

歌鈴「あっ、朋ちゃん、Tさん!」

朋「歌鈴ちゃん!」

朋「やった――!」

モバP「まだだ!」

モバP「まだ抜けきってない!」

モバP「歌鈴、全力でその場にとどまれ!」

歌鈴「えっ……あ、はい、ええっと……んー!」

モバP「破ぁ!!!」

神様(……だめ、歌鈴ちゃんの体に戻れない……)

神様(それどころか、どんどん飛ばされてく……!)

神様(絶対に、歌鈴ちゃんが戻ってこれないようにしたつもりだったのに……!)

モバP「破ぁ!!!」

神様(こうなったのはやっぱりこの男の術のせい……?)

神様(いや、それだけじゃない……きっと……きっと、あの子たちの歌が彼女を呼んで……!)

モバP「破ぁ!!!」

神様(……アイドルってすごい)

神様(初めて、そう思いました――)

モバP「……」

歌鈴「んーっ……んんーっ!」

モバP「ふぅ、もう大丈夫だろうう」

歌鈴「むーっ!」

朋「……歌鈴ちゃん、もう大丈夫だって」

歌鈴「……ぷはっ」

歌鈴「うーん……あれでよかったんでしょうか……?」

モバP「大丈夫だ」

モバP「歌鈴が歌鈴の体にとどまろうとしてくれたおかげで、お前の体にいた神を追い出すことができた」

モバP「もう神に体を支配されることはないだろう」

歌鈴「そうですか……」

歌鈴「よかったぁ……!」

朋「ふふっ」

歌鈴「……でも、神様には悪いことしちゃったかもしれません」

歌鈴「私が勝手に呼び出しちゃったから……」

朋「そうなの?」

歌鈴「はい」

歌鈴「お父さんと私でお願い事をするために、呼び出したんです」

歌鈴「それで……私の体に神様が来て」

歌鈴「願いはかなえてくれたんですけど、その対価に体を貸して、って」

モバP「……それで、はいって答えたのか?」

歌鈴「ううん、嫌ですって答えたんです」

歌鈴「でも神様は、じゃあ、って私を眠らせて……」

朋「あー、無理やり体を奪いに来たのね」

歌鈴「はい」

歌鈴「それで、ずっと寝てたんですけど……」

歌鈴「今日、歌が聞こえて……」

歌鈴「その歌の聞こえる方向にいったら、こうして外に出てこれたんです」

歌鈴「……みなさんの助けがあって」

朋「……あたしたちの助け?」

朋「あたしたち何もしてないけど……」

歌鈴「ううん!」

歌鈴「みんなが私をここに連れてきてくれたんです!」

歌鈴「朋ちゃんも……あちらにいる3人の方にも!」

芳乃「おー急に矛先が向いたのでしてー」

茄子「感動の再開でしたから、空気になってたんですけどね」

芳乃「しかしー、わたくしはそなたの前で歌っていたのみでありー」

芳乃「歌鈴殿を助け出そうと思いをこめていましたがー」

芳乃「歌鈴殿を連れたという記憶はありませぬー」

聖「私も……」

茄子「私もですね」

歌鈴「……あれ?」

歌鈴「でも、私本当にみんなに案内されましたよ」

歌鈴「えっと……あなたには、向かう先を間違えそうになったときに正しい方向を教えてもらいましたし……」

芳乃「わたくしでしてー?」

歌鈴「あなたには、支えてもらったり幸運を分けてもらいましたし……」

茄子「あら」

歌鈴「それで、あなたには……」

聖「私には……?」

歌鈴「道を教えてもらったり……」

歌鈴「あと……恥ずかしいところを見られちゃいました」

聖「!?」

聖「えっ……わ、私何見たの……?」

歌鈴「いえ、ちょっと……」

聖「いえないものみちゃったの……!?」

聖「え、えっと……よくわかんらないけど……あの、ご、ごめんなさい……!」

聖「あの、だ……大事なもの見ちゃったみたいで……」

歌鈴「あ、ううん、えっと……」

歌鈴「その、そこまで深刻に考えるものでもなくて……」

朋「……たぶんあれよね」

朋「噛んじゃったか、転んだところを見られたとかよね」

歌鈴「あう……はい、そうです……」

聖「あ、そうなんだ……よかった……」

歌鈴「初対面の人の目の前で噛んじゃって……しかも笑われちゃって……」

聖「……」

聖「あ、あの……笑って……ごめんなさい……」

歌鈴「あ、ううん、ぜんぜん大丈夫でしゅっ!」

聖「あ……」

歌鈴「あ……」

聖「……」

歌鈴「……」

歌鈴「えっと、あの……」

歌鈴「でっ、でも……じゃあ、あれはなんだったんでしょう?」

歌鈴「もしかして、私の幻覚……?」

モバP「いや、違う」

モバP「おそらく、それはみんなが歌に乗せた心だ」

聖「心……」

モバP「ああ」

モバP「歌って言うのは心を伝える手段でもあるからな」

モバP「歌鈴を助けたいって言う気持ちを強く歌にのせてくれたからこそ、そうして歌鈴の心の中に入り、歌鈴に届いたんだろう」

朋「……」

モバP「他の人間が歌うんじゃなく、朋たちが歌鈴ちゃんを助けたいと願ったからこそ、歌鈴を助けることができたんだ」

モバP「それに、朋たちが持つ能力があったからこそ、こうして歌鈴を助けられたんだと思う」

朋「あたしたちの……」

モバP「ああ」

モバP「聖は人を呼ぶ力、茄子は幸運、芳乃は失せ物探し、朋は未来視のな」

聖「……私、そんな力持ってたんですか……?」

芳乃「わたくしたちもそなたの歌声にひきつけられたためー」

芳乃「間違いなくもっているかとー」

聖「そうなんだ……」

茄子「まあ、能力じゃなくても、聖ちゃんの歌には人をひきつける力があると思いますよ」

聖「……えへへ」

モバP「朋の能力は必ず当たる占いだ」

モバP「今日だってこうして歌う未来を見たし、いつかに5人で踊る未来を見ていた」

モバP「その時点で歌鈴は助けることができることが確定していたといっても過言ではない」

モバP「だが、その未来が見れたのは芳乃、茄子、聖の3人がいたからだ」

モバP「聖の能力がなければ歌鈴を呼ぶことはできなかったかもしれない」

モバP「茄子の能力や芳乃の能力がなければ歌鈴は心の中で道に迷っていただろう」

モバP「方向も間違えかけていたみたいだからな」

歌鈴「あう……」

モバP「逆に言えば、その未来を見たからこそ3人が仲間になってくれたのかもしれないが」

モバP「……まあ、それはどっちでもいいか」

モバP「つまりは、お前たち4人がいたから、こうして歌鈴を助けられたんだ」

芳乃「違いましてー」

モバP「ん?」

聖「あの、私たちもそうかもしれませんけど……」

茄子「結局神様を追い出したのはプロデューサーですから」

朋「あたしたち5人がいたから歌鈴ちゃんを助けることができたのよ」

モバP「……そうか」

朋「そうよ」

芳乃「寺生まれはすごいのでしてー」

歌鈴「えっと……とにかく!」

歌鈴「あの、みなさん、ありがとうございましたっ!」

歌鈴「おかげで、こうしてまた体を動かせて……とってもうれしいです!」

歌鈴「それに……なにより、朋ちゃんに、Tさんにまた会えて……!」

歌鈴「本当に……よかった……!」

モバP「……ああ」

モバP「俺も、俺たちも歌鈴を助けられてよかった」

朋「うん、本当に……!」

朋「手紙もこなくなって……本当に心配してたんだから……!」

歌鈴「あうぅ……ごめんなさい……」

朋「会いにいったらいったでなんか神様になっちゃってるし……」

歌鈴「……あれ、会いにきてくれてたんですか?」

朋「ええ、二回くらいきたわ……記憶にない?」

歌鈴「ずっと寝てたから……」

朋「あ、そっか……」

歌鈴「……あれ?」

歌鈴「あの、今って……何年ですか?」

モバP「えっと――」

歌鈴「」

芳乃「わたくしと似たような状況になってるのでしてー」

歌鈴「最後に学校に行ったのは……そもそも、神様は学校に行ってくれてたんでしょうか?」

歌鈴「もしかして……ずっと私休んで……?」

歌鈴「……年齢的には高校に行ってなくちゃおかしいけど……そもそも、中学も卒業した記憶が……」

茄子「私と似たような状況になってますねー」

歌鈴「……」

歌鈴「……私、どうしたらいいんでしょう?」

芳乃「アイドルするのでしてー」

茄子「アイドルしましょう♪」

歌鈴「……アイドル、ですか?」

茄子「はい、アイドルです♪」

聖「私たち……アイドルなんです」

歌鈴「……」

歌鈴「……え、えぇっ!?」

歌鈴「あ、ああ、あああ、アイドルって……あのアイドルでしゅかっ!?」

聖「たぶん……」

歌鈴「朋ちゃんも……!?」

朋「ええ」

歌鈴「Tさんも……!?」

モバP「いや、俺は違う」

モバP「プロデューサーだ」

歌鈴「プロデューサー……」

モバP「ああ」

歌鈴「……ほ、本当に?」

朋「本当よ」

歌鈴「……」

歌鈴「び、びっくりしすぎてびっくりしなくなっちゃった……」

聖「一周しちゃった……?」

歌鈴「そんな感じです……」

歌鈴「ちょっとあわない間に幼馴染二人がアイドルになってるなんて……」

歌鈴「……」

歌鈴「ほ、本当なんですよね……?」

朋「まあ、そんなに素直に信じられないわよね……」

歌鈴「うん……」

歌鈴「でも、朋ちゃんが言うんだから……」

歌鈴「し、信じましゅっ!」

芳乃「……で、先ほどの話に戻るのですがー」

歌鈴「先ほどの……?」

芳乃「そなたもアイドルしませぬかー?」

歌鈴「……」

歌鈴「わ、私がですかっ!?」

芳乃「でしてー」

朋「私も歌鈴ちゃんと一緒にやりたい!」

歌鈴「朋ちゃん……」

歌鈴「で、でも……私ってあの、ドジだし、よく噛んじゃったり、しちゃうし……」

茄子「大丈夫ですよ」

茄子「私もよくおかしいとかイカレてるとか言われますけどアイドルしてますし♪」

歌鈴「い、イカレてるって……」

聖「あの……それに、そのドジとかって……すごいかわいいと思うから……」

歌鈴「か、かわっ……!?」

聖「アイドルするなら……すごい、いいと思う……」

歌鈴「私が……」

歌鈴「で、でも、あの……は、はわわわっ!」

歌鈴「あ、あの、Tさん!」

歌鈴「えっと、あの……Tさんも、そう思いますか?」

モバP「俺は、歌鈴はかわいいし、ドジだってひとつの個性だと思う」

モバP「その明るさも、笑顔もアイドルとして輝く分には十分だと思う」

歌鈴「あ、あわわわ……」

モバP「もちろん、歌鈴にやる気があればだけどな」

歌鈴「私に……」

歌鈴「……」

歌鈴「こ、こんな私でよければやりたい……やってみたいでしゅっ!」

芳乃「仲間が増えたのでしてー」

芳乃「やったねひじりんでしてー」

茄子「その言葉はやめたほうがいいと思います」

芳乃「なぜでしてー?」

茄子「いえ、なんとなく」

芳乃「?」

朋「これからよろしくね、歌鈴ちゃん」

歌鈴「は、はいっ、よろしくおねぎゃっ、お願いしますっ!」

歌鈴「えっと……朋ちゃん……じゃなくて……」

歌鈴「朋先輩!」

朋「……なにそれ」

歌鈴「え……だって、朋ちゃんって私の先輩になるんですよね……?」

歌鈴「だから、朋ちゃんって呼んじゃダメかな……って」

朋「そんなわけないじゃない」

朋「むしろ、先輩って呼ばれたほうが違和感とか距離感とか感じるからやめてほしいわ」

歌鈴「そ、そうですか……?」

歌鈴「じゃあ、よろしくお願いします、朋ちゃんっ!」

朋「……うん、がんばりましょっ!」

歌鈴「はいっ!」







おしまい

おまけ



歌鈴「へぇ……ここが事務所なんですかぁ……」

モバP「ああ」

モバP「……想像より小さかったか?」

歌鈴「ほかの事務所とかしらないから……そういうのはわかんないです」

歌鈴「でも、ここでアイドルとしてがんばるんだな……って思うと……」

歌鈴「なんだか……こう……ほわーっ、って感じがして……」

モバP「……なるほど」

朋「じゃ、中に入りましょ」

モバP「だな」

モバP「よいしょっと」ガチャ

???「お帰りなさい、プロデューサーさん」

モバP「!?」

朋「え……だ、誰……?」

モバP「いや……知らないが……」

歌鈴「事務所の人じゃないんですか……?」

芳乃「ちがいましてー、この人とは初対面でしてー」

???「そんなぁ……この前皆さんの歌を聞かせてくれたじゃないですかー?」

モバP「歌を……?」

朋「……えっ、まさか……?」

聖「歌鈴さんの中にいた神様……ですか……?」

???「はい、そうですよ♪」

朋「えぇっ!?」

???「その節はどうも」

歌鈴「え……は、はいどうも……?」

茄子「……もしかして、また歌鈴ちゃんに取り憑きに……?」

芳乃「それとも、また誰かにおろされてその姿になったのでしてー?」

???「どっちも違いますよ」

???「今回は普通に人型に顕現してここに来ました」

モバP「……どうしてだ?」

モバP「場合によっては――」

???「――私、皆さんのファンになったんです」

聖「……ファン?」

???「はい!」

???「みなさんの歌を聴いて……すごい感動したんです」

???「歌鈴ちゃんは文字通り心が動かされて私を追い出しましたし、私自身も心地よい歌声に体が揺れちゃってました」

???「だから、私、もっと歌を聴きたいなって思ったんです」

???「みんなの歌を一番近くでたくさん聴きたいなって思ったんです」

???「というわけで来ちゃいました♪」

朋「えぇ……」

茄子「……なんだか複雑な気分です」

芳乃「褒めてくれたのはうれしいのですがー」

???「というわけで、ここで事務員として働くことにしました♪」

???「面倒なことは全部神の力で何とかしたので、後は皆さんが承諾してくれるだけでいいんですけど……」

芳乃「チートでして」

???「あっ、私これから千川ちひろと名乗りますので」

ちひろ「よろしくお願いしますね、プロデューサーさん♪」




おしまい

寺生まれのPさんとか全員の能力を結集する展開とか本物の神として存在するちひろさんとかそれをおろす歌鈴とか子供っぽいよしのんとかふじともとか茄子さんとかひじりんとか書きたかったのを混ぜました

一応考えてた話はこれで全部終わりです
基本一気に書き上げてたので、いろいろと変な点などあると思います、すいません

この5人が全員デレステにくるか、別のアイドルでまたネタが思いついたら寺生まれのPさんでまた何か書きます

誤字脱字、コレジャナイ感などはすいません、読んでくれてありがとうございました。

乙!
つまりちっひへの貢モバコインが足りないとよもつひらさk

見つけたと思ったら終わってた
探すの大変だから酉付けて

神(悪魔)

>>46
じゃあ、次からはこれでやります


面白かったので、また読ませてもらえると嬉しい

アイドルってすごい

やち神

乙。
歌鈴に取り付いたのは吐き気を催す邪悪な存在だとばかり思っていたが全く間違ってなかった

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