的場梨沙「アタシがオトナになったら」 (44)
地の文ありの的場梨沙ちゃんのSSです
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アタシはオトナが好きじゃない。
なんでかって聞かれると……そうね。偉そうだし、頭固いし、意見をごまかすし。あと上から目線だし。……あれ、偉そうと上から目線って同じかな? まあいいか。
アタシを子どもだと思って、やりたいことをさせてくれない。「危ないからダメ」だとか「無理だからあきらめなさい」だとか。
そりゃあ、理屈ではわかるわよ。あれが難しいとか、危ないとか、そういうこと。だってアタシ頭いいもん。
でも、イヤなものはイヤ。その気持ちは変わらないから。
こういうの、なんて言えばいいのかわからないから……とりあえず、キモいって言うようにしてる。
……とにかく。やっぱりオトナは好きじゃない。
オトナは嫌いだけど、パパとママは好き。特にパパは大大大好き!
かっこいいし、なんでもできるし、あと優しいし! アタシ、将来は絶対パパと結婚するって決めてるの。
そんなパパが、テレビに映ってるアイドルを見て「かわいい」って言った。
つまり、もともとかわいいアタシがアイドルになれば、もっとかわいくなって、もっともっとパパが喜んでくれるに違いない。
だからアタシは、自分からプロダクションっていうところに行って。
「アタシをアイドルにしなさい!」
って、はっきり言ってやったのよ。
最初は警備員に止められちゃったんだけど、なんかあとから冴えない顔した男の人が出てきて……なんとそいつがアイドルのプロデューサーだった。
「じゃあ、アイドルやってみる?」
しかも、理由を話したらあっさりうなずいてくれた。フフン、なかなか見る目あるじゃないのよ、こいつ。
なんて思っていたら、そいつ……プロデューサーは、アタシの顔を見てにこにこと笑いだした。……ちょっと馴れ馴れしいんじゃないの?
というわけで、勘違いしないうちにさっさと言っておかないと。
「いい? 本当はアンタ達みたいなオトナとは話すのもいやなんだけど、パパのために頑張るんだからね!」
ビシッ!っと指さしポーズも決まって、アタシはプロデューサーに向かってはっきりとそう言い切ってやった。
「ははは……そのくらい元気だと、期待できそうだな」
でも、プロデューサーはなぜか笑ったままだった。……変なヤツ!
まあ、とりあえずキモい目で見てこないヤツだからいいかな。
アタシはこれから、こいつにトップアイドルにしてもらうんだ。
……見ててねパパ、アタシ頑張るから!
空は真っ青、天気はカイセイ! アタシの未来とおんなじね!
そうして、アタシはまたたく間に大人気アイドルになって……ということにはならなくて。
「今日は午前中にダンスレッスンで、午後からボイストレーニングの予定だ」
「………」
「梨沙? どうかした?」
「ねえ。もっと他にないの?」
「ほか?」
首をかしげるプロデューサーを見ながら、アタシはちょっとイライラしていた。
だってここ最近、ずーっとレッスン、レッスン、レッスンばかりなんだもん。アタシ、ここに体育や音楽の授業をしに来たわけじゃないのよ?
「セクシーな写真をいっぱい撮ったりとか、ステージの上で歓声を浴びながら歌うとか! そういう派手な仕事がしたいのよ。アンタが担当してる他のアイドルの子はやってるじゃない」
「彼女達は、君よりアイドルの経験が長いからな。そういうのは、もう少し下積みを重ねてからにしないと」
「レッスンばっかりで、たまにある仕事も地味だし! パパがアイドルリサを待ってるんだから、もっとちゃんとプロデュースしなさいよね! 職務怠慢ってヤツじゃないの?」
プロデューサーの表情が、少しむっとしたものになる。怒らせたかな、ちょっと言い過ぎたかも……と思いはしたけど、アタシだって怒ってるのよ。
「梨沙」
「な、なによ」
どんなふうに怒られるんだろう。上から目線のお説教は、好きじゃないんだけど。
「アタシは一生懸命頑張ってるのよ。できることだってたくさんあるのに、オトナはいつも子ども扱いして」
プロデューサーに、というよりも、日頃たまっていたストレスをまとめて吐き出そうとした瞬間。
「きゃっ」
プロデューサーがアタシの脇の下をつかんだかと思うと、アタシの身体はふわりと宙に浮いていた。
地面から足が離れて、自分の顔がちょうどプロデューサーの顔と同じ高さに来ている。
ようするに……いきなり、抱きかかえられていた。
「なにすんのよヘンタイ! セクシーなレディーの身体にいきなり触るなんて!」
「ごめんごめん」
謝ってるけど、プロデューサーはアタシを降ろすつもりがないみたい。『軽いなー』なんてつぶやきながら、アタシの目をじーっと見つめたまま。
「梨沙はセンスがある。ダンスはもともと得意だし、歌だってどんどんうまくなってる。才能があると思うよ」
「い、いきなりなによ。そんな当たり前のこと」
「けど、どれだけ才能がある人でも、最初は地味な仕事やレッスンから始めるんだ。ちゃんと練習して、心の準備を整えて、100パーセントを出しきれるってところまできたら、そこでようやく輝くステージの上に送り出される」
真面目な顔して、プロデューサーはアタシに語りかける。でも、それを抱っこしながらやってるせいで、なんだかおかしな感じだった。
「子どもでも大人でも関係ない。しっかり『イケる』と確信が持ててから、アイドルを大舞台に送り出したい。それが、俺なりのプロデュースの仕方だから」
「梨沙は賢いから、わかるだろう?」
「………」
わかる。なんとなくだけど、言いたいことはわかる。
プロデューサーは、本気でプロデュースしてるんだと思った。アタシが本気でアイドルやろうとしているのと同じように。
「梨沙が頑張っている姿、ちゃんと写真に撮ってお父さんにメールしておくから」
「うん……プロデューサー」
「ん?」
「その。さっきは、ちょっとだけ言いすぎたかも。だから、ごめんなさい」
勝手に視線が逸れるけど、とりあえず謝る。職務怠慢って言ったのは、こっちが悪いと思ったから。
それを聞いたプロデューサーは小さく笑って。
「あら? プロデューサーさん、梨沙ちゃんをたかいたかいしてるんですか?」
……部屋に入ってきたちひろに今の姿を見られたアタシは、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「うふふ。仲、いいんですね」
「ええ、それはもう」
「だ、誰が仲良しよっ! おーろーせー!!」
足をぶんぶん振り回しながら文句を言うけど、全然離してくれる気配なし。こいつ、意外と力強いわね……!
「はははっ」
「バカ! エッチ! ヘンタイ!」
結局、3分くらいたってからやっと降ろしてもらえた。仕返しにパンチとキックをお見舞いしてやった。
変なヤツだとは思っていたけど、やっぱりヘンタイだったわ!
家に帰ったらパパに言いつけてやるんだから!
でも……最初に感じていたイライラは、気づいたらすっかり消えちゃっていた。
*
それから、レッスンとかいろいろ頑張ったおかげで、アタシは初めのころよりもずっとうまく踊れるようになっていた。
トレーナーは相変わらず注文をたくさんつけてくるけど、だんだんその注文が細かくなってきているのよね。
「それってつまり、アタシのダンスのレベルが上がってるってことでしょ?」
「そうだな。梨沙が上手に踊れるようになってきたから、トレーナーさんも難しいことを求めることができるようになったんだ」
「でしょでしょ? ふふっ」
自然と笑いがこみあげてくるわ。
そのうち、文句のひとつも言えないくらいの完璧なダンスを見せてやるんだから!
「というわけで、そろそろ初ライブのための衣装を見せたいと思っている」
「衣装……いよいよアイドルリサのデビューってわけね!」
コーフンして、思わず身を乗り出しちゃうくらい。そのくらい、待ってましたって気分。
今日くらいは、プロデューサーの馴れ馴れしいニコニコ笑顔も許してあげる!
で、早速衣装を着せてもらったんだけど……
「ね、ねえ……これ、ちょっと出し過ぎじゃない?」
おへそを出しているのはいいんだけど……足の付け根あたりがだいぶ見えちゃってない? アタシこんなギリギリな服、今まで着たことないわよ。
「アンタ、やっぱりヘンタイ……ロリコン?」
アタシが軽く引いているのを見て、プロデューサーは困ったような顔になる。
「別に俺がヘンタイってわけじゃないよ」
「じゃあなんでこの服なのよ」
「だって、梨沙はセクシーなアイドルを希望していただろう? だから、こういう形にしてみようかなと思ったんだけど」
「あ………」
そっか。そうなんだ……確かにアタシ、セクシー路線がいいって前に言った気がする。
コイツは、それをちゃんと聞いていたから、こういう衣装を選んだんだ。
にしても、やっぱりヘンタイだと思うけど。
「梨沙なら着こなせると思って用意したんだが……」
「ていうか、怒られたりしないの? この露出」
「大丈夫だよ。仮に怒られたとしても、その時頭を下げるのは俺だけだ」
「………」
アタシがちょっと戸惑うくらいのものを持ってくるなんて……頭の固いオトナのくせに、結構やるじゃない。
「しょうがないわね。ロリコンプロデューサーのために、このキワドイ衣装でライブしてあげるわ!」
「ありがとう。でも、大声でロリコンって言うのは勘弁してほしいな」
「……勘弁してほしいの?」
「うん」
頭をかきながらうなずくプロデューサーを見て、アタシの中のイタズラ心が猛烈に膨れ上がる。
「プロデューサーはロリコーン!」
「あ、おいっ!」
というわけで、部屋を飛び出して廊下で大声で叫んでやった。
どうしてかわからないけど、妙に楽しかった。
ちなみにそのあと、プロデューサーにすぐ捕まって。
「離しなさいよー! おろせヘンタイー!」
「いいか。まずロリコンというのは――」
前と同じように持ち上げられたまま、自分がロリコンじゃないってことの説明を聞かされた。
あんまり真面目な顔で話すもんだから、思わず笑っちゃったわ。
……変なヤツ!
*
そして、いよいよ初めてのライブ。アタシの、アイドルとしての本番がやってきた。
「………」
控え室で出番を待っていると、なんだか時間の進みがおかしい気がしてきた。さっきまではあっという間に30分とか1時間とかたっていたのに、今は5分たつのもすごく長いような。
「………」
どきどき。
どきどき。
心臓の音がやけにはっきり聞こえて、うっとうしい。
……いよいよアイドルリサのお披露目。パパに喜んでもらえるって思ったら、うれしさでドキドキするのも仕方ないかなって、昨日は思ってたんだけど。
……これ、そういう『いい』ドキドキじゃないかも。
「大丈夫、大丈夫よ……不安なんてないし」
普通にやったら、普通にうまくできるし。パパだって、昨日そう言ってくれたんだから。
だから、不安なんて……
「パパ……」
せめて、今パパの写真でも見られればいいのに。やっぱり携帯買ってもらっておけばよかった。そしたら写真なんて見放題なのに。
「というか、あいつどこ行ったのよ。アタシがもうすぐ本番だって言うのに」
最近は毎日見ていた冴えない顔が、今に限って隣にいない。さっき、ちょっと他の人と話すことがあるって言って出ていったきり、まだ帰って来ない。
アタシを置いてきぼりにして……。
ぎいぎい。
ぎいぎい。
「ただいま。ごめん、遅くなっちゃって」
パイプいすをわざと揺らして気を晴らそうとしていたら、やーっとプロデューサーが戻ってきた。
イライラしていたから、思い切りにらみつけてやる。
「遅い!」
「本当にごめん。相手方との話が長引いちゃって」
「アタシが本番前で緊張してるっていうのに、一人ぼっちにするなんて……!」
………あ。
口に出して気づいた。アタシ、緊張してるんだ。不安なんだ。
「………」
急に黙りこんだアタシを見て、プロデューサーはポケットから携帯電話を取り出した。
そのままパパに電話でもしてくれたらいいんだけど、今仕事中だし。この時間はいつも忙しいの、アタシは知ってるし……
「梨沙。ほら」
なんて考えていると、いつの間にかアタシの目の前には携帯の画面が。
そこに映っていたのは……え?
「これ、パパの写真……なんでアンタの携帯に」
「こういうこともあろうかと、な」
「……はっ! まさかアンタ、パパを狙ってんじゃないでしょうね!」
「はは、そんなわけないだろう」
苦笑いを浮かべながら、プロデューサーはパパの写真を持っている理由を説明し始めた。
「初めてのライブだし、本番前はきっと緊張するだろうと思って。前もってお父さんから写真をメールで送ってもらっていたんだ」
「そ、そうなんだ……」
「とりあえず、パパから元気をもらうといい」
「……うん。ありがと」
大好きなパパのカッコいい顔を見られて、ちょっとだけ気分が落ち着く。
それに……さっきのプロデューサーとのやり取りで、緊張が少しだけほぐれた感じ。
「言っとくけど、パパはぜーったいあげないからね!」
「まだ言ってるのか……心配しなくても、梨沙からパパを盗ったりなんてしないよ」
「ならよし!」
胸のドキドキはまだまだはっきり聞こえるけど、うっとうしくはなくなった。
パイプいすをぎいぎい言わせていた身体も、いつの間にか力が抜けてるし。
「……その様子なら、大丈夫だ。うまくいくぞ、梨沙のライブ」
「ふん、トーゼンよ、トーゼン! アタシにできないことなんてないし!」
「お疲れさま。本当によかった。お客さんも満足してくれたみたいだし」
歌い終わってステージから降りると、プロデューサーがいつもの笑顔でアタシを待っていた。
「へへ……だから言ったでしょ。アタシにできないことなんてないって」
「そうだな。初めてのライブなのに堂々としていた。すごいぞ、梨沙」
「トーゼンよ、とーぜ……うわっ」
胸を張ろうとしたら、足がふらついてバランスを崩してしまった。
転びそうになったところを、プロデューサーの腕に支えられる。パパほどじゃないけど、大きい腕だなって思った。パパほどじゃないけど。
「疲れてるんだろう。今日はゆっくり休むんだぞ」
「わかってるわよ。……ねえ」
「ん?」
「今日のライブ。ヘンタイな視線を送ってくるファンもいたけど……楽しかった。パパも絶対喜んでくれるわ」
「ああ。ばっちり録画しておいたから、あとでお父さんにも見てもらおうな」
「うんっ!」
パパのためにって始めたことだったんだけど……思ったよりいいかも。アイドルって。
それにこいつも、他のオトナたちとは違って結構――
「よっと!」
「って、だからなんで抱き上げるのよー!」
「いいか、梨沙。今日の経験を、忘れないようにちゃんと覚えておくんだぞ。とても大事なことだからな」
「そんなこと言われなくてもわかってるって! おろしなさいよー!」
「このまま車まで運ぼうかな、軽いし」
「絶対やめてよね! あ、ちょっとそこくすぐったい……あははっ」
あーもう、ニヤニヤ笑ってキモい!
やっぱり変なヤツよ、絶対!
*
アイドルデビューを果たしたアタシは、それからライブや撮影の仕事をバッチリこなしていった。
やればやるほどファンは増えるし、パパやママもうれしそうに褒めてくれる。
「特に、パパに頭をなでてもらうのはすっごく気持ちいいの」
「そうか。よかったな」
「ふふん、羨ましいでしょ」
雑誌の撮影の帰り道。助手席に座っているアタシは、運転しているプロデューサーが退屈しないように、たくさんパパの話を聞かせてあげた。
プロデューサーは時々うなずきながら、ハンドルを右に左に回している。
「俺もなんだか、久しぶりに親の顔が見たくなってきたな」
「会ってないの?」
「もう実家を出てるからな。車を飛ばすか新幹線に乗るかしないと、父さんや母さんには会えないんだ」
「ふーん」
「梨沙だって、大人になったらそういう日が来るんだぞ?」
「アタシは大丈夫よ。だってパパと結婚するんだから!」
「……そうだったな」
納得したような声のプロデューサー。アタシがいつも『早くパパと結婚したいなー!』と言っていたのを思い出したみたい。
「夢があるのはいいことだ。うん」
「……笑わないの?」
「どうして」
だって、他のオトナたちはみんなそうだもん。
子どもの言うことだと思って、本気で受け止めてくれない。
……もちろんアタシだって、パパと結婚するのが難しいことはわかってる。一夫多妻制も、親と子の結婚も、法律で禁止されている。もう小6なんだから、そのくらいは知っている。
でも、アタシは諦めたくない。だから。
「本気なんだろう?」
「……うん」
プロデューサーは、それをわかってくれている気がする。アタシのこと、普段から一人前扱いしてくれている……そんな感じ。
パパほどはイケてないけど……キモいオトナたちとは、違うと思う。
そう考えたら、なんだか胸の奥がむずむずしてきた。
「プロデューサー。あのさ――」
その日は、いつもより自分の声が弾んでいるような気がした。
べつに、喜んだわけじゃないけどね! きっとのどの調子がよかったのよ、うん。
*
――的場梨沙という子と出会ってから、気づけばひと月以上の時間が経っていた。
いきなり事務所にアポなしで押しかけてきた彼女。その容姿の良さと威勢の良さを買ってプロデュースすることにしたのだが……結果として、俺の勘は間違っていなかったと今は思える。
のみこみが早くやる気も十分なため、これからどんどん伸びていくんじゃないかと期待できる。ひとつ問題があるとすれば、ファンではなく父親のほうを見すぎだということだが……少しずつ、応援してくれる人達へ目を向けられるようになるんじゃないかと思う。
「あの子は賢いですから」
「賢い、ですか」
今はちょうど、アシスタントの千川ちひろさんと、梨沙のことについて話しているところだ。
梨沙はボイストレーニング中。他の子も出払っていて、部屋には俺達二人しかいなかった。
「学習能力はあると思いますよ、口は悪いですけど」
「プロデューサーさん、よく怒られてますもんね」
「はは。なにかとパパと比較されますから」
梨沙の父親には一度ご挨拶させてもらったことがあるが、確かに『できる人』のオーラが感じられる人だった。彼に褒めてもらえるように、梨沙はいろんなことを頑張ってきたのだろう。
「梨沙ちゃん、お父さんと結婚するのが夢だって言ってましたっけ」
「ええ。そのうち偉い人になって法律を変えるそうです」
「ふふ、それはすごいですね」
「ですね。でも、あれは多分本気ですよ」
12歳にしては合理的な考えができる彼女が、父親がらみのことになると完全に子どもに戻る。小6で『パパと結婚したい』と本気で言う子は、おそらくあまりいない。
「本気ですか。けど、いつかはそれが無理だって気づくことになるんでしょうね。私も、子どもの頃は叶いっこない夢をいくつか見ていましたから」
「へえ。どんな夢だったんですか」
「そうですねえ。たとえば、シンデレラのようなお姫様とか」
「年頃の女の子らしいですね」
ちひろさんの子供時代……結構気になる。
「まあ、歳をとっていくにつれて、自分が王子様に迎えてもらえるなんてことはありえないって気づいたんですけど」
今は、そこそこ年収があって気が合う人と一緒になれれば十分ですね――そう彼女は言う。
現実を知って妥協する。子どもから大人になるにつれて、何度も経験することだ。
「梨沙ちゃんも、どこかで受け入れる日が来るんでしょうね。パパとは結婚できないって」
「……でしょうね。叶わない夢だと、諦める時がいつになるのかはわかりませんけど」
ただ、その時には――
「……あら? 今、何か物音がしませんでしたか?」
「え?」
「廊下の方で、ガタって……」
ちひろさんがそう言うので、俺は部屋を出てあたりを見回してみる。
右を向くと、突き当りの曲がり角へ消えていく、特徴的なツインテールが見えた気がした。
上へ上へと階段をのぼりきり、冷たいドアノブに手をかける。
ギイイ、と、アタシのあんまり好きじゃない金属の音が鳴り響く。
屋上に入ると、思った通りそこには誰もいなかった。
事務所の屋上は他の子たちが遊んでいたから、わざわざ隣のビルの屋上までやってきたんだけど……そのかいがあった。
ここなら、しばらくひとりでいられるかな。
「ハア……」
ため息をひとつつきながら、硬いコンクリートの床にぺたんと座りこむ。
座り心地はよくないけど、我慢はできる。体育館で校長のながーい話を聞かされるときだって、お尻が痛くても我慢させられるから。
「………」
部屋に入ろうとしたら、プロデューサーとちひろの話が聞こえて……気づいたら、逃げちゃってた。
べつに全力で走ったとかじゃないけど、ふらふら部屋から離れてここまで来たのは本当だし。
「叶わない夢、か」
怒ってるのか、悲しいのか、がっかりしてるのか。自分でも、自分の気持ちがよくわかんないけど。
……アンタには、言ってほしくなかったな。
ギイイ――
「!」
誰か来た!
隠れる場所も時間もなくて、アタシはそこでじっとしているだけ……ていうか、なんでアタシが隠れなくちゃいけないのよ。
「って、あれ……」
ドアを開けて入ってきたのは、アタシと同じ事務所のアイドル。
あんまり話さないけど、プロデューサーが同じだから、名前くらいは覚えてる。
……二宮飛鳥、で合ってるわよね?
「………」
飛鳥はイヤホンをしていて、ふんふんと鼻歌を口ずさんでいた。多分、音楽を聞いているんだ。
紫色のエクステが、風にゆらゆら揺れながらこっちに近づいてくる。
「ふう」
アタシの近くに腰をおろして、飛鳥は小さく息を吐いた。
そのまま、ぼーっと夕陽を眺めている。
「……ねえ」
この子のことは、正直よくわからない。知っていることと言えば、エクステの色が日によって違うことと、なんかしゃべる言葉が変に難しいことくらい。あと、見た目的にはクール系だと思う。
プロデューサーにお願いされて、アタシを探しに来たのかな? だってそうじゃないと、わざわざ隣のビルの屋上になんて来ないはず。
そう考えたから、帰ってもらおうと思って声をかけたんだけど。
「………!」
飛鳥は、アタシの声を聞いてびくんと身体を震わせた。
こっちを向いたかと思えば、すぐに目があちらこちらに泳ぎ始める。
「……もしかして、アタシがいるって気づいてなかった?」
「……悪いね。曲を聞くのに気を取られていたようだ」
イヤホンを耳から外して、ばつの悪そうな顔をする飛鳥。どう見ても、アタシを探しに来たとは思えなかった。
てことは、たまたまここに来たってことになるわね……アタシと同じで、ひとりになりたかったとか。
「………」
「………」
アタシも飛鳥も黙ったまま、お互いの様子をちらちら観察している。いつもならテキトーに話でもするんだけど、今はそんな気分になれなかった。……そもそも、この子とどういう話をすればいいのか、よくわかんないし。
「………」
「………」
……なんか、気まずい。
どうしようかと悩み始めたその時、飛鳥がゆっくりと口を開いた。
「……なにか、あったのかい」
「……べつに」
「そうか」
それきり、会話がまた止まる。
アタシの様子がいつもと違うのはわかってるみたいだけど、無理やり理由を聞こうとはしないつもりなのかしら。
でも、こっちとしては隣に人がいるだけでなんだか落ち着かない。
飛鳥は全然動こうとしないし、いい加減アタシが屋上から出て――
「ニャー」
? 猫の鳴き声?
きょろきょろと周りを見ると、いつの間にかアタシの近くに三毛猫がいることに気づいた。
ここ、ビルの屋上なんだけど。どうやって来たのかしら。
「にゃあ」
すりすりとアタシのお尻に頬をよせてくる。爪で引っかいたりはしてこないけど、ちょっとくすぐったい。
「こら、そこはダメ」
放っておいたらスカートの中に入りこもうとしてきたから、ぐいっと押し出して注意する。
「アンタ、ヘンタイね」
動物にもエッチな子とかいるのかしら、なんて想像すると、ちょっとだけ面白かった。
その様子をじーっと見ていた飛鳥は、口元についたエクステを払いながらアタシに話しかけてくる。
「キミ、動物に好かれるみたいだね」
「まあね。コアラにハグされたことあるし」
「へえ……」
真顔だった飛鳥の表情が、ちょっとだけゆるんだような気がする。
なんだかオトナっぽいなって、そんな飛鳥の態度を見てアタシは思う。
「……ねえ」
聞きたいことができたから、もう一度飛鳥にこっちから話しかける。
「なんだい」
「飛鳥は、オトナになりたいって思う?」
アタシの質問を聞いて、飛鳥の目が少し大きくなった。
「そうだな……」
人差し指をエクステに絡めながら、うーんとうなる飛鳥。真面目に考えてくれているみたいだった。
「そもそも、オトナの定義を決めるところから始めないといけないのかもしれないな」
「え?」
「教養が身につけばオトナなのか。確たる倫理観が身につけばオトナなのか。あるいは、他に条件があるのか。なにをもって『オトナになる』と指すのか、ボクは知らないからね」
「………」
「ただひとつ、言えることがあるとするなら。これから先、どんなことを識り、経験したとしても……ボクはボクでありたい。そう思うよ」
ミョーに気取ったしゃべり方で、正直なに言ってるのかほとんどさっぱりわからなかったけど。
でも、最後の言葉だけはアタシにもわかった。
「キミはどうなの?」
「アタシは……なりたいけど、なりたくない」
自分でもわけわかんない答えだと思ったけど、なぜか飛鳥は納得したようにうなずくだけ。
「人の心は矛盾だらけだから、そういうこともあるさ」
「そうなの?」
「たぶんね」
「どうして?」
「………さぁ」
目を逸らす飛鳥。知ったかぶり、というわけじゃないんだろうけど、あんまり詳しくは知らないみたい。
「アタシね。オトナになってパパと結婚したいなーって思うの」
「よくPに向かって言っていることだね」
プロデューサーの名前が出てきて、ドキリとする。
「でもね……オトナになったら、いろんなことを諦めなくちゃいけないのかもって。そうも思うの」
「妥協と諦念か。確かに、それもオトナの特徴のひとつなのかもしれない」
「やっぱりそうなのかな。プロデューサーも、そんな感じのこと言ってたし……」
「………」
ひょっとしたら、なにか答えを教えてくれるかもしれない。そう思って、アタシは飛鳥にちびちびと事情を話してみた。
隣の三毛猫は、飽きたのか丸まって寝ていた。
「残念ながら、ボクは答えを持ち合わせていない。さっきも言ったように、ボクはオトナがなんなのかよく理解(わか)っていないから」
けど、飛鳥もやっぱり知らないみたいだった。そうよね、飛鳥だってまだ中学生だもん。
「ただ……今、ボクがキミの隣にいること。この偶然に何かしらの価値を見出すのなら、これからボクが言葉を紡ぐことにも意味があるのかもしれないね」
「………??」
ちょっと待って。なに言ってるのかわからない。
「オトナは嫌い?」
「……嫌い。頭固いし、偉そうだし、ごまかすし」
アタシの言葉を聞きながら、飛鳥はそーっと三毛猫の頭に手を伸ばしていた。
なでなでしようとした矢先、ふしゃーっとイカクされていた。
少し落ち込んでいるように見えたけど、こほんと咳払いをして仕切り直し。
「もしかしたら、キミはとても純粋なのかもしれないな」
「純粋?」
「偽りに敏感で、欺瞞を許せず、曖昧な態度に反発する……そういう性質かもしれないってことさ」
「……アンタの言うこと、難しいわ」
「悪いね。性分なんだ」
ニヤリと笑う飛鳥。前から思ってたけど、この子も大概変だと思う。
「確かに、オトナはルールにこだわるし、自分勝手な優しさを押しつけてくることもある。よかれと思って嘘もつく。でもそれだけじゃない」
結局、飛鳥はみょうちくりんな話し方を続けている。アタシが言っても変える気はないみたい。
「言葉のいらない関係は理想的なのかもしれないけど、現実はそう甘くない。でも、だからこそ面白いとも言える。回り道にも意味があると、ボクは思いたい」
「……つまり、どういうことよ」
「つまり、か。いきなり要約を求めるのは味気ないと思わ――」
「味気ないかどうかは知らないけど、そうしてくれないと意味わかんないし」
やれやれ、とため息をつく飛鳥。
でもすぐに顔をあげて、しょうがないなと言いながらアタシを見る。
「一度、目線を合わせてPと話し合ってみるといいかもしれない、ということかな」
目線を合わせて。
そう言われて思い出したのは、プロデューサーが何度かアタシを抱きかかえて話をしていたこと。
あの時、アタシの目線はあいつの目線といつもばっちり合っていて……
「もしかして、そういう意味があって……?」
「どうかしたのかい?」
「……ちょっと、プロデューサーのところに行ってくる!」
「あぁ……ところで、その猫持って行くの?」
「屋上から落ちたら危ないし! あと、話聞いてくれてアリガト!」
「にゃあ」
じゃあね、と一言残して、アタシは屋上から出て階段を駆け下りていく。
「……優しい子だな」
猫を外に放してからいつもの部屋に帰ると、ちょうどプロデューサーも戻ってきたところだった。
「梨沙、探したぞ。どこに行っていたんだ?」
「隣のビルの屋上」
「隣のビル? 飛鳥じゃあるまいし、なにしに」
『飛鳥じゃあるまいし』ってことは、あの子って普段からあそこに行ってるんだ……やっぱり変なヤツ。
「それより、ちょっと聞きたいことがあるの」
部屋には他に誰もいない……チャンスね。
「聞きたいこと?」
「そう。あ、ちょっと待って」
えーと、確か……あった!
これがあれば……うん、やっぱりちょうどいいわね。
「……踏み台?」
「そ。これに乗れば……ほらっ」
いちいち持ち上げられなくても、顔の位置が同じ高さに。
これで準備完了ね。
「ねえ、プロデューサー。アタシの夢のこと、どう思う?」
「夢……それって、パパと結婚することだろう? 前にも言ったけど、夢を持つのはいいことだと」
「それは知ってる。アタシが聞きたいのは、その夢が叶うかどうかってこと」
「……俺に聞くのか?」
「そうよ。アタシは、アンタの答えを聞きたいの」
なんでかって聞かれると、はっきりとは答えられないかもしれないけど。
とにかくアタシは、プロデューサーの言葉が欲しい。
「………」
「アタシ、ごまかされたり嘘つかれたりするのが嫌いなの。だからはっきり答えて」
プロデューサーの目をまっすぐにらんでやると、あっちは小さく息をついて。
「……梨沙が本気で頑張っているのはわかる。でも……やっぱり、俺はその夢が叶うとは思えない。どうしてもな」
さっきちひろと話していた時と同じ……無理だって、そう言った。
「……オトナだから?」
「大人……そうだな。大人だから、いろいろ現実的に考えてしまうっていうのはあると思う」
「………そっか」
パパに聞いても、同じ答えが返ってくるのかな……そう考えると、すごく――
「でも」
うつむいていたアタシの肩に、プロデューサーの大きな手が乗せられる。
話はまだ終わってない、と、そう言っているみたいだった。
「いつ夢を諦めるのか。それを決めるのは梨沙自身だ」
「え?」
「変なこと言うかもしれないけど。俺は梨沙の夢は信じられないけど、夢に向かって頑張っている梨沙のことは信じられる。嘘でもなんでもなく、本当のことだ」
アタシ自身は、信じられる……?
なんだか、ただの言い訳みたいにも聞こえるけど……不思議と、その言葉はすーっと胸に入ってきた。
「だから俺は梨沙を応援できるし、精一杯プロデュースできる。まあ、俺みたいないけ好かない大人の鼻を明かしたいと思うなら……その夢を諦めなければいいさ」
いつもの笑顔と一緒に、プロデューサーはアタシの頭を優しくなでてきた。
……くすぐったい。
「……パパ以外の男になでられても、うれしくないんだから」
「そうか。それはごめん」
……まあ。いつもは、だけど。
「もし夢を変えたくなったら、いつでも『トップアイドル』に切り替えていいからな」
そっか。プロデューサーは、アタシのこと信じているんだ。
だったら、アタシも……
「フン、バカね!」
冗談交じりのプロデューサーの提案を、思いっきりはねのけてやる。
だって、そんなのアタシにとってはありえないことだもん。
アタシは――
「両方よ! 両方叶えてやるわ!」
にーっと笑ってみせたら、あいつもうれしそうに笑っていた。
……でも、ちょっと笑い過ぎじゃない? あんまりニヤニヤしてると、またキモいって言ってやるんだから!
*
「プロデューサー。アタシのファンって、なんであんなにヘンタイっぽいヤツが多いの?」
「ヘンタイっぽい?」
「そうよ。なんか視線がロリコンっぽいし、雰囲気もアレだし。パパみたいにもっとしゃきっとかっこよくすればいいのに」
まあ、応援してくれるのは悪い気しないけど!と付け加える梨沙。
俺はというと、彼女がだんだんファンをじっくり見るようになっていることを感じて、心の中でひそかに喜んでいた。
「……ちょっと、なにニヤニヤしてるのよ」
「なんでもないよ」
「なんでもないのにニヤニヤするのってキモいわよ?」
「ははは。確かに」
これは正論だ。笑うしかない。
「のど渇いたからジュース買ってこようかな。プロデューサー、なんかいる?」
「そうだな……じゃあ、コーラ買ってきてくれるか? ほら、お金」
「500円もいらないわよ?」
「梨沙のぶんもそれで買えばいいから」
「ふふ、太っ腹ね! じゃあ行ってくるわ」
得した気分なのだろう。軽くスキップしながら梨沙は部屋を出ていった。
「ずいぶん仲良くなったようだね、彼女と」
梨沙がいなくなるタイミングを見計らっていたのか、ソファーで雑誌を読んでいた飛鳥が声をかけてくる。
「そうだな。最近は、レッスンや仕事の話も結構してくれるようになったし」
「彼女も、アイドルが好きになっているということか」
「多分そうだと思う。……あ、そういえば。飛鳥、梨沙にアドバイスしてくれたんだって?」
「アドバイス? ……ああ、あの屋上でのことか」
梨沙が夢についての話を俺に聞いてきたあの日。梨沙は隣のビルの屋上に行ったと言っていたが、そこで飛鳥と少し話をしたらしい。
まあ、言ってることの半分以上は理解できなかったとこぼしていたけど。
「ありがとうな。もし梨沙が家出するようなことがあったら、飛鳥の部屋に住ませるといいかもしれないな」
「……冗談だろう?」
「たとえばの話だよ。たとえば」
ならいいけど、とつぶやいて、視線を雑誌へと戻す飛鳥。中学生にしては難しそうな内容の本を読んでいたりすることがある彼女だが、今日はそうではないらしい。
「なにを読んでいるんだ?」
「猫のかわいがりかた」
「へえ」
猫に興味ある子だったっけ。今まで知らなかった。
「ただいまー」
「おかえり。早かったな……っと。そろそろ時間か」
ジュースを抱えて戻ってきた梨沙と一緒に、壁にかかっている時計が見えた。
「どこか行くのかい」
「ああ。これから会議なんだ」
「えー? せっかくアンタのぶんのコーラ買ってきてあげたのに」
「ごめん。あとで飲むから」
机の上の書類をまとめて、少々早足で部屋を出る。少し早めに会議室についておいたほうがいいだろう――
「ねえ! ここの紙はいらないの? なんかそれっぽいこと書いてるけど」
「え……あ、すまん。一枚書類を取り忘れていたみたいだ」
「もう、しっかりしなさいよね!」
梨沙から書類を受け取り、今度こそ忘れ物がないことを確認する。
危ない危ない。ポカをやらかすところだった。
「それじゃ、いってくる」
「ちゃんとやりなさいよね! アンタはアタシのプロデューサーなんだから!」
「ああ、わかってるよ」
背後から少々キツイ口調の激励を浴びながら、会議室への道を歩いていく。
「アタシのプロデューサー、か……」
……うん。頑張ろう。
アイドルがファンに夢を与える存在なら、プロデューサーはそのアイドルに夢を与える存在だからな。
*
アタシはオトナが好きじゃない。
なんでかって聞かれると……そうね。偉そうだし、頭固いし、意見をごまかすし。あと上から目線だし。
でも最近は、オトナにもいろいろいるんだなって思い始めた。
まあ、嫌いなのは嫌いなんだけど……バリエーションがあるのよね。ひとりひとり。
で、その中には悪くないかなーってヤツもいて……っと、この話は置いといて。
とにかく。アタシも、いつかはオトナになる日がやって来る。これは絶対。
その時、どんなオトナになってるのか。期待半分、不安半分。
だけど、ひとつだけ。ひとつだけ、言えることがある。
――アタシは、アタシが好きになれるようなオトナになっているってこと! これも絶対!
だから……ちゃんとそうなれるように、頑張るわ!
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます。
ついでにそろそろ行われると思われる総選挙でも的場梨沙をよろしくお願いします
いやほんといい子なんですよ。口悪いけど
ファンのことキモいって言いつつもちゃんとクリスマスプレゼント用意してあげるような子なんです。口悪いけど
過去作もよかったらどうぞ
二宮飛鳥「ふわぁ……」
モバP「なっちゃんと春休み」
乙乙
乙
最近ゲームの方で梨沙パパとPの距離がやたら近くて笑う
うんこ
乙
とてもよかった。あらためてヴァリサは掘り下げ甲斐のあるキャラだと思うわ
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