あるパン屋の話 (8)

大通りから脇にそれた裏道を一人の男が歩いている。
男はある店の前で足を止め、店主と思わしき人に声をかけた。

「あんたがここの店主か?小麦を売ってくれないか?」

「悪いが今日は店仕舞いだ」

「この時間なら特別な小麦粉を扱ってると聞いてね」

「……。入りな」

品定めする様な店主の視線を受けながら男は言われたままに店に入った。
用心深く辺りを見渡した後、店主は戸口の鍵を閉め、奥にいた従業員に二、三言何かを話し男と向き合った。

「1グラム60,000だ。それで、何グラム必要なんだ?」

「この店には何キロある?」

「……?奥にはかなりの量があるが一体どれだけ買うつもりだ?」

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「そうか、では全てもらおう」

男はそう言うが早いか手をポケットに入れて店主の前に付き出す。彼の手には自動式拳銃が握られていた。

「お客さん…、そういうのは良くねぇな。奥のブツは俺じゃないと開けられない、それにこっちも銃は持ってんだぜ?」

店主は落ち着いた様子で回転式拳銃を取り出した。
彼の視線の先に目をやると先ほどの従業員が銃をこちらに向け立っている。

「お客さん、今なら無かったことにしてもいいんだぜ?」

「いや結構」

そう言い放つと同時に男は従業員に銃を向け引き金を引く。
パンと乾いた音がし、どさりと従業員が倒れた。
予想していなかった事態に反応の遅れた店主が慌てて引き金を引くがそこに男はいない。

不意に背中に当たる硬い感触で店主は動きを止めた。いつの間にか背後に回っていた男が店主の背中に銃を突き付けていた。

「悪いな」

男がそう言い、引き金を引き――
ガチッ
そんな金属音があたりに響いた。

動いたのは店主だった。彼はすぐさま振り向き彼の手から銃を奪っていた。

「おいおい、ツイてねぇなぁ…。お前さんも」

そう言い自身の銃を向ける店主。

「まぁ自業自得って――ガッ」

奇妙な声を発した店主の喉元にはバタフライナイフが突き刺さっており、崩れ落ちる店主の後ろに一人の女性が立っていた。
彼女の手にはバタフライナイフが握られている。

「危ないところだったわね。それにしてもまたジャムったの?あなたもコレにすればいいのに、ジャムおじさん」

そう言いながら彼女はナイフを仕舞う。

「そんなこと言わないでくれよ。私はこいつが気に入ってるんだ、バタコ」
「で、小麦粉はあったかい?」

「ええ、奥に。後は運び出すだけよ」

そう言うと彼らは店の奥に消えていった…。


この後、この特別な小麦粉から作られた人型のパンが多くの人を救うのだがそれは別のお話。

おわり
ジャムおじさんのくだりがやりたかった
バタコさんはちと無理矢理かもしれんが許して

依頼出してきます

なんか思ってたのとは違うが良かったぞ

老夫婦の話かと…

乙でした

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