森久保のタスケ-THE IDOL WHICH NoNo SUPPORTS- (61)

シンデレラガールズプロダクション アイドル部門
所属アイドル数は200を超え、何人ものトップアイドルを排出する超有名プロダクション

その輝かしい歴史の中でも特に「最高」と呼ばれ栄華を極めた―――
10年に1人の逸材が5人同時にいたユニット『the Earth』は「キセキの世代」と言われている

―――が、「キセキの世代」には奇妙な噂があった

誰も知らない
出演記録もない
にも関わらず 天才5人が一目置いていたアイドルが もう一人――――




幻の6人目が居た―――と


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457183165

伊織「律子のタスケ」あずさ「THE SKETGIRL WHICH RITUKO PLAYS」
P「これがお前達のジャイアント・キリングだ」

の影響大
それでもよければ

~SRプロダクション~

ちひろ「ひの、ふの、みの……。うん、随分集まったみたいですね」

P「ちひろさーん、ちょっといいですか? ……って、それ。今季の最終候補の新人アイドルのリストですか?」

ちひろ「プロデューサーさん! そうなんです、今年は有望な新人さんが多いみたいですからね。……CGプロの件もありましたし」

P「……そうですね。CGプロ、突然の経営縮小……。あの話を聞いた時には驚きました」

ちひろ「はい。あの『キセキの世代』も全員バラバラのプロダクションに移籍したそうですし」

P「他のプロダクションに流れたアイドル、相当数いるって話ですし。一からオーディションを受けなおすアイドルも多いみたいですね」

ちひろ「……その件なんですが、この子」

ぴらっ

P「? ……! これって」

ちひろ「CGプロ出身。年代的にも、あの世代と被ります……。今日マストレさんが最終面接されるそうですが、ご自分の目でもご覧になられますか?」

P「……そうですね、元からそのつもりでしたし」

~レッスンルーム・控室~

乃々「……………………」ぺらっ

「でさー、友達に無理やり応募させられちゃってー」

「あはは、ほんとに居るんだそんな人ー!」

乃々「……………………」ぺらっ

「わ、わたし、北海道から出てきて……。うぅ、怖い人ばっかりだったらどうしようって」

「わ、わだすも一人じゃ不安だったところで……。い、一緒に、頑張りましょう」

乃々「……………………」ぺらっ

「あれ、その漫画好きなんっスか? これは仲良くなれそうっスね~」

乃々「! …………?」

「あ、はいっ! なんだか、こうしてないと落ち着かなくてっ……。お姉さんもこの漫画好きなんですかっ?」

乃々「…………。…………」

ばたん!

マストレ「待たせたな。私が今日の最終面接を担当するトレーナーだ。よろしく」

「「「「よ、よろしくお願いしますっ!!!!」」」」

マス「うむ。ではレッスンルームへ移動しようか」



~レッスンルーム~

「―――15番、柳瀬美由紀ですっ! よ、よろしくお願いしますっ!」

マス「よし。これで自己紹介は全員かな。……お」

がちゃり

P「どうも、こんにちは」

「「「「こんにちはっ!!!!」」」」

マス「これはこれは。このご多忙の中、直接いらして下さるとは」

P「そういう言い方はやめてくださいよ、毎回ちゃんと来てるじゃないですか」

マス「はは、そうだな。……それでは全員、隣の者と組んで準備運動を始めてくれ」

「「「「はいっ!!!」」」」

P「……それで。見た感じ、気になる子はいましたか?」

マス「? そうだな、まだ自己紹介くらいしか済んでいないから何とも言えないが……。……14番」

P「14番? ……南条、光ちゃんですか」


美由紀「いち、に、さん、しっ!」

光「んっ、んっ。もうちょっと強く押してくれても大丈夫だよー!」

美由紀「あ、うんっ! ごー、ろく、しち、はち!」


マス「彼女は、相当の資質だと思うぞ。体も柔らかそうだし、雰囲気だけでも『原石』としての可能性を感じる。久しぶりの感覚だな」

P「麗さん……もとい、マストレさんがそういうのなら間違いないんでしょうね」

マス「まあな。……それで?」

P「へっ」

マス「君がわざわざ私に話しかけたということは、書類の時点で気になった子がいたんだろう?」

P「お見通しですか……。そうなんです、森久保乃々ちゃんって子なんですが」

マス「森久保……? 変だな、そんな子、自己紹介していただろうか」

P「……CGプロからの再オーディション組だそうで」

マス「! ……それは本当か? しかし、そんな子が居たなら忘れるはずはないんだが……」




「あ、あの……。スミマセン……」


P&マストレ「!!?」ぎょっ

乃々「も、もりくぼは、私なんですけど……」

P「……!?」

マス「……!! なっ、い、いつから……?」

乃々「さ、最初からいたんですけど……。自己紹介、飛ばされて……。私は、誰と準備運動すれば……?」

P「えええっ? じゃあ、君が『キセキの世代』と同期の……!?」


光「……?」ぴくっ


マス(目の前に居て、気付かなかった……? これが、CGプロの……?)

P「えっと、CGプロってことは、あの『the Earth』とも繋がりがあったりとか……? いや、それは無いか……?」

乃々「……? レッスンなんかは、一緒にやってましたけど……?」

P「うんうん、そうだよな……って」

P「え、えええっ……!?」

マス「…………!」


光「なあ、ちょっと聞きたいんだけど……」

美由紀「えっ?」

光「『CGプロ』とか、『キセキのなんたら』とかって……」

~~♪♪ ~~♪♪ ♪

たん、たんっ! たんっ!!

マス「…………よし、そこまで。一旦休憩にしようか。次は30分後。今度はボーカルを見るから、準備しておいてくれ」

「「「「はいっ!」」」」

マス「…………」

光「ふぅっ! おーい、美由紀ちゃん、飲み物買いに行こうよ!」

美由紀「はぁっ、はぁっ……。ちょ、ちょっと待って……」

光「なんだ、もうバテたのか? そんなんじゃトップアイドルにはなれないぞー」

美由紀「ひ、光ちゃんが凄すぎるんだよ……。……ふぅっ、よし、いこっか!」

光「おうっ!」


マス(南条、光。……この数十分ダンスを見ただけで、彼女のポテンシャルは十分過ぎるほどわかった)

マス(……天賦の才能。多少荒削りだが、そう形容するに相応しい実力だ)

マス(……だがいったい、どういうことだ。あの子、森久保、乃々)


乃々「ふぅーっ……」

てくてく


マス(……まだダンスしか見ていない、が)

マス(あまりにも、普通過ぎる……?)

マス(……彼女の言うように、『the Earth』とともにレッスンを積んだようにはとても思えない)

マス(彼女は、一体……?)

光「じっはんき、じっはんきー」

美由紀「……あっ、光ちゃん、あぶない!」

乃々「……!?」

光「うぉ……っと! ……あ」

乃々「す、すみません……。それでは……」

光「ちょっと待った」

乃々「……?」

光「……ちょーどいいや。ちょっと話さないか?」

光「乃々、ちゃん……だったよな。……きみ、何か隠してないか?」

美由紀「えっ」

乃々「な、何ですか、いきなり……?」

光「アタシは、四国から出てきたばっかでまだよく分かってないのかもしんないけどさ」

光「それでも、このプロダクションのレベルが高いこと、さっきの試験のダンスレッスンが厳しかったことくらいは分かる」

光「でも乃々ちゃんは、それに涼しい顔で着いて行ってる割には……。『自分をアピールしようという気概が感じられない』」

乃々「…………!」

光「アタシ、特撮が大好きだし、身体動かすの……特にダンスは大好きだからさ、『ヤル奴』特有の匂いってやつは分かるんだ」

光「でも乃々ちゃんは、おかしい。ダンスが苦手って言うなら、苦手な奴なりの匂いがするはずなのに……。乃々ちゃんは何も匂わない。強さが無臭なんだ」

光「けど乃々ちゃんは、『キセキの世代』とやらと一緒にレッスンをしてたんだろ? ……そのCGプロの中で、生き残ってきたんだろ?」

光「アタシは、何が何でもアイドルの頂点を目指したい。だから……確かめさせてほしい。森久保さんが、『キセキの世代』が、どんなものか」きっ

乃々「…………。……奇遇、ですね」

乃々「……私も、あなたのアピールをもっと間近で見たいと思っていましたから」

光「!」

乃々「やりましょうか、疑似オーディション対決」

光「……! イイね。美由紀ちゃん、審査員役お願いしてもいいか?」

美由紀「えっ、あ、うん……!」

光「そっちの予備レッスンルームが空いてるみたいだ。行こう」

美由紀「か、勝手に使っちゃっていいのかな……?」

乃々「…………」

光「(へへ。強いやつと勝負できるのは、やっぱりワクワクするな。アタシの実力……見せつけてやる!)」

~予備レッスンルーム~

光「(……って)」

乃々「(………)」Da.appeal +71p

光「(え、ええ……?)」Da.appeal +82p



・審査結果…南条光

Da. ★★★★★ Vi.★★★ Vo. ★★

・審査結果…森久保乃々

Da. 2nd Vi.2nd Vo. 2nd


:総合:

1位…南条光(★×10)
2位…森久保乃々(★×0)
3位…×



美由紀「え、えと……。お、終わり……かな?」

光「(ふ)」

光「(ふ)」

光「(ふ、普通過ぎる……?)」

光「(何の変哲もない4-3-2のテンプレ打ち※。思い出アピール※も何もなし)」

光「(アタシはそれに合わせただけ)」

光「(不慣れとはいえ、美由紀ちゃんの採点にも特別おかしなところはないし)」

光「(これで。……これで、終わり?)」

乃々「……ふぅ。お疲れ様でした」

光「ちょ、ちょ、ちょっとちょっと」

乃々「……?」

光「(たとえ運動神経が悪くても、音感が無くても、自分の得意分野を極めてトップアイドルに辿り着いた人たちは何人もいる)」

光「(でも今のアピールは、VoもDaもViも、アイドルの中では『普通』の領域だ……)」

光「は、話聞いてたか? どういう根拠でアタシに勝算があると……。あんな啖呵まで切って」

乃々「……? まさか。もりくぼが、南条さんに敵うわけないに決まってるじゃないですか……」

光「!!?」

乃々「……やる前から、分かってますけど。……そんなこと」

光「……っ! ど、どういうことだ……?」

乃々「だから、言ったじゃないですか。南条さんの凄さを間近で見たかった、から、……ですけど」

光「え、えぇ……?」

光「(間違ってたのは、アタシなのか? ただ何の匂いもしないほど『普通』なだけ……?)」

光「(でも乃々の、今の表情は……?)」

乃々「あの、南条さん……」

光「……や、もういいや。それよりそろそろ戻ろう、ボーカルレッスン始まっちゃう」

乃々「……あ」

光「……それと。教えて欲しいことがあるんだ」

光「乃々ちゃんは……いったいどうやってモチベーションを保ってるんだ?」

乃々「……?」

光「一生懸命レッスンを重ねて、実力を上げて……。乃々ちゃんは今ここに立ってるんだと思う」

光「けど、それでも敵わない相手がたくさんいて……。今みたいに、あっさり負けてしまうことだってある」

光「弱い自分と、何度も何度も向き合ってきたはずだ……。それなのにどうして、乃々ちゃんはアイドルを続けているんだ?」



乃々「それは……。見解の相違、ですね……」

乃々「……私は、誰が強いとか誰が弱いとか、どうでもいいんですけど」

光「……!?」


乃々「私は……。『影』ですから」

いちゃラブしたいんですけど……?

今のところまんま黒子だけど、今後どう捻ってくるか楽しみ

~レッスンルーム~

~~♪♪

かちっ

マス「……よし、大体わかった。もう一度休憩だ」

「「「「はいっ」」」」

P「麗さん。そろそろ、彼女たちが……」

マス「……ほう。ちょうどいい」

P「……えっ? まさか」


マス「聞いてくれ!」

ざわっ

マス「実技試験は次で最後だ。各自、番号順に5人ずつのグループに分かれてほしい。……その上で」

光「5人ずつ……?」



がちゃり


凛「お疲れ様でーす……。……って、あれ?」

美羽「新人さんの試験中でしたかねっ!? 『しけん』中の乱入は『いけん』……おおっ、これはなかなか!?」

響子「……の、ノーコメントで」

凛「あはは……」


美由紀「あの人たち……。もしかして……?」

マス「そう。SRプロダクションのトップグループ、『Reverse』。君たちにはこれから、彼女らと疑似オーディション対決を行ってもらう」

マス「Reverseに勝ったら合格。分かりやすくて、いいだろう?」


「…………?」

「「「「えええええっ!!!!?」」」」

比奈「……というわけで、チームはこの5人っスね」

沙織「わ、わだす、その、一生懸命、頑張ります……」

美由紀「沙織ちゃんと光ちゃんと一緒で、よかった……。美由紀も頑張るね!」

光「う、うん……。頑張ろう」

光(まさか、いきなり)

乃々「……よろしくお願い、します」

光(乃々ちゃんと一緒になるなんてな……。さっきの勝負、必要なかったかも?)

比奈「しかしReverseって言ったら、去年結成半年で新人アイドル賞を獲得した新進気鋭っスよ……。引きこもりのアタシでも知ってるアイドルユニットっス」

沙織「そ、そんな人たちとわだすたつが……。ふ、普通じゃないですよね……」

比奈「ルールはSP準拠、直接対決なので最下位ペナルティなし。そして、体力テストも兼ねて審査は3回でなく4回……」

美由紀「しかも、勝ったら、って。引き分けじゃダメなんだよね……」

光「……へへ。ビビるとこじゃないだろ。相手は弱いより強い方がいいじゃん!」

沙織「……!」


マス(……ほう?)


光「……行こう!」


P(……さて)

P(うちの『Reverse』相手にどこまでやれるのか、見せてもらうとしようかな)


──────

流行
① Da.★★★★★②Vi.★★★③Vo.★★

──────

──────

P(……っ)

マス(ここまで、とは……!)


光「(いいカンジだ。もう一回、いくぞ!!!)」

──光 思い出アピール Success!!──

Da.211pt Vi.105pt Vo.106pt


凛「(……ん)」

響子「(あの、ステップ……)」

美羽「(す、すごいすごいっ!!)」


マス(……想像以上、だな。荒削りなセンス任せのあのアピールで、あの威力)

マス(先ほどレッスンを見た時より、仕上がっている……?)

響子「(楽しそう。ダンスが好きっていうのが、すっごく伝わってきます!)」Vo.appeal +81pt

凛「(即戦力、どころか。驚異の新人かもね? ……美羽)」Vi.appeal +83pt

美羽「(合点ですよっ!)」Vi.appeal +81pt


P(新人組が、押している……。いや、それどころか)

P(光ちゃん一人で、圧倒しかねない……!)


・第一回審査結果…新人チーム

Da.★★★★★ Vi.2nd Vo.★★


・第一回審査結果…Reverse

Da.2nd Vi.★★★ Vo.2nd

光「(っ。パーフェクトはさすがに、無理か……)」

美由紀「(光ちゃん、とっても調子よさそう……!)」

比奈「(すっご……。こりゃアタシたちは完全に脇役っスね)」

沙織「(み、ミスだけは、しないように……)」

光「(…………。アタシの調子がいいのは、いいんだけど)」

光「(そんなことより……。乃々ちゃん)」

乃々「(…………)」

光「(……意味深なことを言ってた割に、やっぱり普通じゃないか……!)」

光「(相手は強敵なんだ、このまま順調に行くとは思えない。その分アタシがフォローしないと……!)」


凛「美羽、最後はありがとう。おかげでViは確保できたね」

美羽「いえいえ。それにしてもすごい子ですねっ。ダンスは、ちょっと敵わないかも?」

響子「うーん、次はどうしましょうか……」

凛「……美羽、響子。ちょっといいかな」

美羽「?」

響子「何でしょう?」


比奈「…………?」

第二回審査開始


光「(まだまだ、いくぞっ!!)」

──Triple appeal!!── Da. appeal +31pt Vi. appeal +30pt Vo.appeal +30pt

凛「!」

比奈「(今度は、トリプルアピール……!?)」

美由紀「(すっごい。今の光ちゃん、誰にも止められないんじゃ……?)」


凛「(……なんて、そんな訳にはいかないよ)」

──Double appeal!!── Da. appeal +45pt Vi. appeal +44pt↑

美羽「(そろそろ落ち着いてもらわないと、ですねっ!)」

──Double appeal!!── Da.appeal +43pt Vo.appeal +44pt

響子「(えいっ!!)」

──Double appeal!!── Da.appeal +46pt Vi.appeal +47pt


美由紀「(えっ!?)」


光「(!? これは……!)」


マス(……3人がかりでダブルアピール。それも)


光「(……全員で、Daに! 絶対にアタシにDaを獲らせない気なのか……!?)」

比奈「(インターバルの間、向こうは二言三言言葉を交わしただけだったはずっス……。それだけで、こんな連携を?)」

沙織「(う、わだす、いったいどうすれば……?)」Vi.appeal +73pt

美由紀「(Vi、か、Vo……!?)」Vo.appeal +72pt

光「(まずっ……! 混乱、して……!)」

光「(いや、アタシはDaを! こういうときに自分の得意分野を獲らなくてどうするんだ……!)」Da.appeal +84pt

凛「(……食らいついてくる、か。……美羽)」

美羽「(させないよっ!!)」

──美羽 思い出アピール Success!!──

Da.211pt Vi.105pt Vo.106pt

光「(……っ!)」

・第二回審査結果…新人チーム

Da. 2nd Vi.2nd Vo. 2nd

・第二回審査結果…Reverse

Da. ★★★★★ Vi.★★★ Vo. ★★


光「…………っ」

マス(一気に仕掛けられたところで、ちぐはぐになったか)

マス(Daに集中されていたのは分かっていたのだから、ViかVoを獲りに行く手もあったが……。……事実、荒木や奥山はそう動いていた)

マス(南条一人がDaに固執しすぎたな。……勿論、足並みが揃うのならば、真っ向勝負を挑む南条の選択も間違いではないが)

マス(急造チームでそれを合わせろというのも、酷な話か。渋谷もなかなか容赦ないことをする)

マス(……まあ、それも今回の狙いの一つだ)

マス(さて。本当に見たいのは、ここから……)

美由紀「や、やっぱり、すごい……」

比奈「ここからの逆転は、流石に無理っスかね……」

光「!」

光「む、無理なんて言っちゃ駄目だ! まだもう二回審査は残ってる!」

光「今のはアタシがミスしたのが悪いんだ! もう一度、みんなで力を合わせれば……!」

沙織「で、でも……。逆転するには、★6個分も差をつけなきゃいげねってことで……」

比奈「完封されるような相手に、リードを続けるのは……。なかなか難しそうっスね……」

光「ま、待ってくれ! アタシはっ!」

光「アタシは、こんなところで諦めるわけにはいかないんだ……!」

美由紀「で、でも……」

光「まだいける! だからアタシに、力をっ……!」

かくんっ

光「!!?」

美由紀「ふぇ」

沙織「へ?」


乃々「……落ち着いて、ください」


光「ちょっ……。いきなり何するんだ!!」

比奈「膝かっくん、綺麗に入ったっスね……」

乃々「……得意技、です」

光「と、得意技って……乃々ちゃん! 今はそれどころじゃ……!!」

乃々「だ、だから、落ち着いてくださいぃ……」

むにむに

光「にゃ、にゃにすりゅんだって……」

乃々「……え、えい、えい」

光「わ、わひゃった、わひゃったから離してくれ……!」


凛「……なんか向こう、モメてる?」

P「森久保さんか……。そういえば、居たな……」

マス(……はは。審査員の私も、途中から忘れていた……)

マス(…………)

マス(…………?)

マス(…………!? 待て、本当に、いつからだ!!?)

乃々「……すみません、比奈さん」

比奈「?」

乃々「次から、VoとViのダブルアピールを仕掛けて貰えませんか?」

比奈「えっ?」

乃々「……お願いします」

光「……!?」

比奈「わ、分かったっスけど……」

比奈(それだけで、この状況がどうにかなるもんなんスかね……?)



マス(この、違和感は何だ……?)

マス(もしかすると……。何か、とんでもないことが起きているのでは……?)

第三回審査開始

光「(……くそっ。結局あれだけでインターバル終わっちゃったじゃないか!)」Da.appeal +85pt

光「(あの言い方……。乃々ちゃんには何か、作戦があるっていうのか? だとしたら)」

美由紀「(……だったら、みゆきも諦めたくないっ)」Vi.appeal +78pt

乃々「(…………)」ふぉんっ

光「(? ……?)」


凛「(さて。あとは盤石に逃げ切るだけ。向こうの出方次第かな?)」Vo.appeal +84pt

美羽「(逃げ切る、できる、なんて! ……むむ)」Vi.appeal +86pt

響子「(……でも。あっちはまだ、諦めてない……?)」Da.appeal +85pt

比奈「(……ああ言われたからには、信じてやってみるっスけど)」

比奈「(一体、何がっ…………!?)」

──Double appeal!!── Vi.91pt Vo.88pt


マス「……え」

P「……な」

凛「(!)」

光「(……!?)」



比奈「(…………っ!!?)」ぞくっっっ!!!



比奈「(い、今の、アタシのアピールっスか!?)」

比奈「(審査員の視線も、観客の視線も、会場の全てがアタシの方に向いたような……。こんな空気、知らないっ……!)」ぞくぞくっ

沙織「(ひ、比奈さん、すごい……。これなら、もしかして)」

乃々「(……)」ちら

沙織「(え、次は、わだす……? でも、わだすはあんな風にはとても……)」

乃々「(…………)」ふぉんっ


沙織「(……いや、違う。せっかくの、アイドルになるためのチャンスなんだ)

沙織「(みんなが頑張ってるんだから、わだすだって、思い切って……!)」

──Double appeal!!── Vi.92pt Vo90pt.↑

びくんっ!!!

沙織「(…………っ!! ……な、なん、この感覚……!)」


マス「なんだ、あのアピールは……!? 先ほどまでとは別人のような」

P「……な、なんだこれ。まるで視線が吸い寄せられるみたいに……?」

マス「! 視線……!?」

マス「……まさ、か」


乃々「……ふぅっ」


マス「あの子が、全て……!?」

P「な、何か分かったんですか?」

マス「……分かった、というほどではないが。しかし、一つの可能性は思い浮かぶ」

マス「にわかには、信じがたい話だがな……」

―――ミスディレクション

手品などに使われる、人の意識を誘導するテクニック
乃々はCGプロでのプロデューサーとの逃亡捕縛を繰り返す中で、この技術を習得した

あちらへ逃げた痕跡を残し、反対方向へ逃げる
逃げたと思わせ、その場に隠れてやり過ごす

そういった意識誘導の諸々は、追いかけるプロデューサーから逃げる上でこれ以上ないほど適した技術といえた

今乃々がやっていることは、その応用

つまり、乃々はオーデション中「カゲが薄い」というより
もっと正確に表現すると、自分以外を見るように仕向けている

それは、言い換えれば―――

・第一回審査結果…新人チーム

Da. Vi. ★★★ Vo.★★


・第一回審査結果…Reverse

Da. ★★★★★ Vi.2nd Vo.2nd


比奈「(ViとVoを、取れた……?)」

光「(これが、乃々ちゃんの……!?)」


P「視線の誘導によって、『本来自分に集まるはずの興味』を、他人に振り分けている……!?」

P「そ、そんなことが可能なんですか!?」

マス「理論上は、可能なのかもしれない……。まして現実として、目の前で披露されている以上は、な」

マス「まるでゲームのようで、信じがたいことではある、が……」

P「……! で、でも! それってつまり、『森久保さんがしたはずのアピールを後で上乗せしてるだけ』ってことですよね?」

マス「……!」

P「それなら、結果としてはアピールの総ptは変わらないんじゃ」

マス「いや、それは……」

??「ノンノン。甘いねー、お兄さん。もしかしてゲームとかあんまりやらないヒト?」

??「確かにその理屈でいくとptの合計自体は変わらないけどさ。1ターンかけて力を溜める、とか。次の手番に二回行動、とか。RPGでは必須スキルだよん」

P「!?」

??「ごめんね、乃々ちゃんがいるって聞いたから黙って入っちゃった。あ。でも受付の人にはちゃんとアポ取ったからね!」

P「き、君は……!」

今日はここまでで
続きは明日の夜来れたらになるので一応単発酉を

お付き合いいただいた方がいらっしゃればありがとうございました

おつんつん

もう少ししたら再開します

マス「……。三好、紗南……?」

紗南「およ。さすがにバレちゃうか。やっぱりあたしって有名人?」

P「有名人、も、何も……! 『キセキの世代』の一人じゃないか……!」

マス「三好紗南……。プロダクション所属後わずか半年で『the Earth』の一角を掴み取った、急成長を続ける天才オールラウンダー」

紗南「天才なんて、そんなことないんだけどなー。天才って言うなら、乃々ちゃんの方がよっぽど……。いや、それも違うか」

P「その口ぶりだと……。森久保さんと、本当に知り合いなんですね」

紗南「へ? 知り合いも何も、乃々ちゃんとは同じユニットだったわけだし……」

P「……は? だって、『the Earth』は……」

紗南「あ、いっけない。これ言っちゃダメなんだった。忘れて忘れて」

P「いや、え、ちょっと……」

紗南「と、とにかく乃々ちゃんのあの技術は、前のプロデューサーから逃げるために身に着けたもので……。あれも天才っていうにはちょっと違うよね」

紗南「そんで、あたしは天才でもなんでもないただのゲーマーアイドルだよ」

マス「……。……そのゲーマーアイドルが一体、何の用だ?」

紗南「およよ。なんか随分警戒されてる風? だけど今はあたしのことより」

紗南「……あっち見た方が、いいんじゃない?」にっ


P「! 第4回審査が、始まる……!」


マス(逃げるために身に着けた技術。……と三好は言った)

マス(……だが。逃避するために会得したであろうテクニックを引っ提げて、オーディションに臨むというその行動は、あまりに矛盾してはいないか……?)

マス(一体、彼女に、何が……)

キセキの世代の基準なんだよ

第四回審査

比奈「(……こ、今度は普通に)」Vi.appeal +78pt

沙織「(わだすも、できることを……)」Vo.appeal +73pt

響子「(も、戻った? さっきのこの二人のアピールは、いったい……)」Vi.appeal +81pt

凛「(……いや、まさか)」Vo.appeal +80pt

乃々「(…………)」ふぉんっ

美由紀「(…………っ!!)」

──Double appeal!!── Vi.90pt Vo88pt.↑


凛「(……っ。あの子が何か動くたびに、次々とアピールが……? 一体、どうなって……!)」

響子「(こ、これは、さすがに、ViとVoが)」

美羽「(ま、まずいですかねっ?)」

P「……そういう、ことか」

紗南「お、気付いた? 乃々ちゃんのチカラ」

P「……こうして見ると、一目瞭然だ。なるほど、『力溜め』と『二回行動』か」

紗南「そ。一人で他人の倍のアピールができるってことは、一回のアピールでそれだけ自分の実力を遥かに超えた力が発揮できるってこと」

紗南「この『最大値』っていうのは案外大きいよね。何せ、審査員や観客の目からは絶対に『一番優れたアピールをするアイドル』に見えるんだから」

P「そして、それが今凛たちの意識を揺さぶって……」


光「(ここだっ!!)」Da.appeal +92pt


響子「(あっ……!?)」

美羽「(やばっ、ViとVoに気をとられすぎた……!)」

凛「(どっちか片方でも強烈なのに……。組み合わさったときの威力は、正直、手がつけられない……!)」


P「……! スキを突いてDaを攻めた、のは狙い通りだろう、けど」

P「光ちゃんのアピールptが、上がってきている……? どうして」

紗南「あれ、そっちは気付かない? あれも乃々ちゃんの影響だよ」

P「なっ……? でも、今森久保さんは何も……」

紗南「そうじゃなくて。この2回の審査、乃々ちゃんが仕掛けたのは全部ViとVoのダブルアピールでしょ?」

P「!」

紗南「それにつられて相手チームもViとVoにアピールが集中した。……だったら、起きることは自明だよね」

P「そうか……! 『審査員と会場がDaに飢えた』んだ……」

紗南「そゆこと。野球ゲームで言うなら、変化球を続けた後にストレートを投げるとすっごく早く見える、ってあれが近いかな?」

紗南「その雰囲気を感じ取って、ベストのタイミングでDaにアピールしたあの子も流石だけどねっ」

紗南(……ま、あたしが見たところ)

紗南(この終盤でptを上げてきている理由は、それだけじゃなさそうだけど)


光「(…………)」


キセキの世代は14歳組かな?


P「森久保さんは、そこまで考えて……。すごい、力だ……」

紗南「いやいや、これでもまだまだ氷山の一角だよ」

紗南「……だって、こんなレッスン室でやってる疑似オーディションですらこれだけの影響があるんだよ?」

P「……!!!」

紗南「ちゃんとしたオーディションの舞台、もしくは……。満員の観客が居る中で、乃々ちゃんがフルに力を発揮したら」

紗南「……どうなるか、想像つく?」にっ

美由紀「(乃々ちゃんのアピールから、雰囲気が変わった……!)」

沙織「(これなら、もしかしたら……!)」

比奈「(アタシ達でも、いけるかも!)」

凛「(向こう、すごく乗ってきてる……。このままじゃ、まずいかな?)」Da.appeal +83pt

響子「(でも、どっちも対応するのは……)」Vi.appeal +pt84

光「(……これで)」

光「(ラストだっ!!!)」Da.appeal +91pt

・第四回審査結果…新人チーム

Da. ★★★★★ Vi.★★★ Vo. ★★

・第四回審査結果…Reverse

Da. 2nd Vi.2nd Vo. 2nd



・計

新人チーム…★×22

Reverse…★×18


美由紀「……か」

沙織「……かっ」

光「かっ、た……!!!」

「「「「かったーっ!!!!」」」」

マス「………………まさか、本当に勝ってしまうとは」

P「はは。麗さんのことだから、勝ったら合格云々っていうのは冗談で、負けても合格にするつもりだったんでしょう?」

マス「合格……。とまではいかないが。検討するつもりではあった」

マス「そもそもこの疑似オーディションは、即席メンバーでの連携の精度を見るのが目的だったからな」

マス「(私の見立てでは、南条が他の4人とどう足並みを揃えるかという流れになると思っていた……。しかし)」

マス「(このオーディション、中心に居て全てを動かしたのは、間違いなく……)」


凛「負けちゃった、か……」

響子「強かった、ですけど……。楽しかったですね♪」

美羽「ほんと、凄く盛り上がって、めちゃくちゃ楽しかったです!」

凛「……そうだね。それに……。味方にするなら頼もしい、ってことだもんね」


乃々「……ふぅ。お疲れ、様でした……」

光「乃々、ちゃん……」

乃々「……?」

光「それが、乃々ちゃんの力なんだな……。その。さっきは、ゴメン」

乃々「……? 謝られるようなことは、無かったと思うんですけど……。勝てたのは私じゃなくて、みなさんの力ですし……」

光「……誰が強いとか、誰が弱いとか、どうでもいい、って。そういうことか」

乃々「……そう、ですね。……だって」

乃々「アイドルって……。ファンの人に楽しんでもらうのが全てじゃないですか」

光「……!!」

紗南「……変わらないね、そういうトコ」

光「!? ……誰だ?」

紗南「ありゃ、こっちの子には知られてなかったか……。ま、いいや」

紗南「……久しぶりだね、乃々ちゃん」

乃々「……お久しぶりです」

光(久しぶり、ってことは)

光(この子が、『キセキの世代』の……!)

乃々「こんなところまで……。一体、何の用でしょうか……?」

紗南「用って、決まってるじゃん! 乃々ちゃん。乃々ちゃんを、引き抜きに来たんだよ!」

マス「なっ……!?」

P「ちょっ……!?」

紗南「見たところ、まだ試験中なんでしょ? ってことは、契約とかもまだってことだし」

紗南「ウチおいでよ。また一緒に、同じユニットでやろうよ」

光「そ、そんなこと……、いや、できるのか……?」

乃々「…………」

紗南「あたし今、KJプロってとこにいるんだ。設備もレッスンも、CGプロと遜色ない、すごく良いところだよ」

P(KJプロ……! 長年安定して多くのアイドルを排出している、老舗プロダクション……!)

紗南「本当の話、あたしは乃々ちゃんのことを尊敬してる……! こんなところじゃ、宝の持ち腐れになっちゃうって!!」

乃々「……そんな風に言ってもらえるのは、とても光栄です」

乃々「……丁重にお断りさせていただきますけど」

紗南「思考時間ゼロ!!?」

紗南『むー! あたしは、まだ諦めないからね! 気持ちが変わったらいつでも連絡してよ!!』


光「……よ、よかったのか? あんなにあっさり追い返しちゃって」

乃々「良くは、ないのかもしれませんけど……。もりくぼのせいで騒ぎになっても、嫌ですし……」

光「は、ははは……」

乃々「それに……」

光「それに?」

乃々「……いえ、なんでもありませんけど。……それより」

光「?」

乃々「どうでしたか、三好さんは」

光「……すごいな。マストレさんも同じことを感じてたみたいだけど……。雰囲気だけで相当やるって分かった」

乃々「…………」

光「……今。仮にアタシと紗南ちゃんが直接オーディション対決したらどうなるかな」

乃々「足元にも及ばないと思います」

光「ちょっ……。他に言い方、ないのかよ……」

乃々「嘘をついても、仕方ありませんから……」

光「……しかも。紗南ちゃんって、『キセキの世代』の中では一番アイドル始めたの遅いんでしょ?」

乃々「……はい。ただでさえ天才の5人が、それぞれ違う強豪プロダクションに所属しました。まず間違いなくその中のどれかが、今年トップアイドルの座を掴む、でしょう」

光「……ふ、ふふ。……あはは」

乃々「……?」

光「イイね。燃えてくるよ、そういうの」

光「決めたよ。そいつら全員倒して、アタシがトップアイドルになってやる!」

乃々「……。……」

乃々「無理だと、思いますけど……」

光「うぉいっ! そんなにあっさり否定しないでくれよ!」

乃々「……秘めている力は、分からないと思いますけど。けれど、完成度では現在の彼女たちには全く敵わない」

乃々「だから」

乃々「……一人では、無理です」

光「!」

乃々「……私も、決めました」

乃々「私は、『影』です。……でも。『影』は『光』が強いほど濃くなり、『光』の光る強さを際立たせる」

光「ひかる、強さ……!!」

乃々「『光』の『影』として。……私が『光』を、トップアイドルに、します」

光「は、ははっ。言うじゃん!」

光「分かった。これからよろしく頼むよ、乃々ちゃん!」

乃々「……頑張ります、けど」


おわり

ファッ!?

黒子extra完結記念に
森久保のタスケっていう語感が気に入ってしまっただけの一発ネタですみません

>>47さんのおっしゃる通り、モバでキセキの世代といったら14歳組かなあと思いつつ
「ボクよりカワイイのは、ボクだけです」なんてセリフは妄想してなかったと言えばウソになりますかね

お付き合いいただいた方がまだいらっしゃればありがとうございました
依頼だしてきます

突然終わってビックリしたぞ乙
その幸子は見てみたかった

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