提督「空母棲鬼を拷問する」 (25)
大淀「戦艦ル級からの情報を元に、とうとう鬼級を捕縛することに成功しました」
提督「――!やってくれたか!それで、こちらの損害は?」
大淀「0とのことです」
提督「……素晴らしい……!」
大淀「作戦を成功させた金剛からの伝言ですが……」
提督「なんだ?」
大淀「『提督ゥー!ご褒美に約束の備前焼、忘れないでクダサイネー!』とのことです」
提督「…………金剛はまだ治らんか?」
大淀「その様です」
提督「やはり金剛の前で紅茶を汚すのはショックが大きかったか……」
大淀「……提督」
提督「なんだ?」
大淀「また……拷問なさるおつもりですか?」
提督「それが最も早く、確実に成果をあげられる」
大淀「……意見具申、よろしいですか?」
提督「許可する」
大淀「もう、十分な成果をあげました。これ以上よいのでは……?なにより味方に被害を出してまで……」
提督「その判断は私がする」
大淀「……そう、ですか……」
提督「今回は叢雲に連絡を。準備を手伝ってもらうことになる」
大淀「はい」
提督「ああ、忘れていた。到着予定時刻は?」
大淀「明日、14:00(ひとよんまるまる)です」
提督「ふむ、ならばちょうどいいな。14:50あたりに連絡をくれ」
大淀「了解、しました」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456580559
提督「さて……鬼級……か」
提督「……行ける……のか……?」
叢雲「なに日和ってるのよ」ガスッ
提督「ツッ……叢雲……」
叢雲「叢雲……じゃないわよ。なに呆けてんのよ。そんなんじゃ、やるべきこともできないわよ」
提督「ん…………ああ…………」
叢雲「アンタね……いいわ、話してみなさい……とでも言うと思った?」
叢雲「事情なんて聞きたくもないわよ。大体、その位話さなくても分かるわよ」
提督「…………」
叢雲「後悔してるんでしょ?」
提督「…………ああ……」
叢雲「バッカじゃないの。……それを為さずに失うよりも、それを為して失わない事を選択した」
叢雲「結果、それは成功して失われるはずのモノは、失われなかった」
叢雲「失敗したわけではないのよ。成功したのよ!?だから、貴方のやるべきことは、後悔することじゃないわ」
叢雲「さあ、胸を張りなさい。例えその逝きつく先が地獄であろうと、貴方の為し遂げたことは誇るべきものよ」
叢雲「だから、上を向きなさい。地獄の閻魔に自慢しなさい。黄泉への途次(みちすがら)は私が照らしてあげる。黄泉戸契(よもつへぐい)を為す時は、私も共に食べてあげる」
提督「それって……」
叢雲「ふんっ、察しの悪い男は嫌われるわよ。……少しはマシな顔つきになったじゃない」
提督「……そう、かな……いや、そうだな」
提督「叢雲」
叢雲「何よ」
提督「お前は最高の女だよ」
叢雲「あんたは……最高とは行かないわね……。」
提督「そうかい。なら、お前が誇れる様な男にならないとな」
叢雲(だいたい、ここで最高の男ね、なんて褒めたらケッコンフラグじゃない///)
注釈・日本書紀より、イザナギとイザナミは互いに褒め合ったのちに交わり、国産み・神産みに至ります。
叢雲「え、ええ、そうね///いってらっしゃい///」
提督「失礼する」ガチャリ
空母棲鬼「…………」チラリ
提督「私はこの鎮守府の最高責任者である提督だ。お初お目にかかる」
空母棲鬼「…………」プイッ
提督「空母棲鬼……ああ、これはこちらでの貴女の呼び名だが、貴女が深海棲艦の中でも相当な地位を持っている存在であることは、調べがついている」
空母棲鬼「…………」ピクッ
提督「それから本来の力を隠しており、姫級の力を所持していることまで分かっている」
空母棲鬼「……ドウヤッテ、調ベタ」
提督「どうやって……ふむ、お仲間に聞いただけだ」
空母棲鬼「嘘ダッ!我々ハ、仲間ヲ裏切ル様ナ真似ハシナイッ!」
提督「……皆、そう言っていたな。結果は……このザマだが」
空母棲鬼「クゥッ……ナニヲシタッ!?」
提督「なに、慌てなくとも……これから私の願いを聞いてもらえなければ、すぐに分かることだ」
空母棲鬼「クズメッ!」
提督「それも、聞き飽きたな。さて、こちらからの要求を伝えよう。空母棲鬼、貴女の権力でもって、人類との交渉の場を設けていただきたい」
空母棲鬼「コトワルッ!」
提督「ならば……コイツがバラバラになるが……いいのかな?」
空母棲鬼「ソ……ソレハ……!」
提督「返答が遅い」ビリッ
空母棲鬼「アアッ」
提督「なに、まだガワを剥いだだけに過ぎんよ」
空母棲鬼「ク……コノ……」
提督「さあ、返答は如何に?」
空母棲鬼「クドイ!ワレワレガ貴様達人類ニ屈スル事ナド……」
提督「おっと、手が滑った」ムシリッ
空母棲鬼「ウァァァッ!ハ、半分ニ……」
提督「まだまだ行くぞ」ムシッムシッ
空母棲鬼「キサマ……!何故ソノ様ナ所業ガ出来ル!」
提督「……必要ならばやる。これは私が、であり、他の者も出来るわけではない……さて、貴女の返答が遅いので、こんな無残な姿になってしまったぞ」
空母棲鬼「アア……カワイソウニ……松翁軒ノカステラ……」
提督「これで終わったと思っているのか?可愛いなぁ……」
空母棲鬼「ナニ……ヲ……」
提督「このカステラの欠片は……こうするのだ!」
空母棲鬼「アアッ!ソンナ……カップニ押シ込メテ何ヲ……」
提督「パフェ用の器に入れ、このグレープフルーツジュースを上から湿らせる程度に注ぐのだ!」
空母棲鬼「カ……カステラノママデ十分ナノニ……ソレニジュースヲ……ソンナ……ソンナ……」ワナワナ
提督「さらにその上に、カスタードクリームまで乗せてやろう!そして生クリームと酸味の強いフルーツでトッピングしたら……」
空母棲鬼「コレハ……トライフル……ダト……」
※参考用http://www.abc-cooking.co.jp/plus/recipe/detail/?id=1756
提督「そう、イギリス伝統の菓子、トライフルだ。本来はジュースだけではなく、洋酒も混ぜるのだが……既に生クリームにラム酒が入っているのでね。重複を避けるためにあえて使わなかった」
空母棲鬼「シカシ……コレハ本来甘クナイスポンジケーキヲ使ウベキデ、カステラヲ……シカモ絹ノ様ニ柔ラカイ松翁軒ノカステラヲ使ウナド……」
提督「貴女の意見は聞いていない。さあ、食べるがいい」
空母棲鬼「クヌゥ……カステラノ甘味ヲグレープフルーツジュースノ苦味ガ程ヨイハーモニーヲ生ンデイル……」
提督「そして生クリームに入っているラム酒が、また良い香りをさせ、生クリームの甘さをほどよく引き立てているだろう」
空母棲鬼「クッ……憎ラシイ演出ダ……」パクパク
提督「さあ、返答はどうだ?」
空母棲鬼「コトワル!コノ程度ノ苦痛デ心挫ケルホド、私ハ軟弱デハナイゾ!」
提督「ふっ……そう言うと思っていたよ……これを見るがいい!」
空母棲鬼「ソ、ソレハ……帝国ホテル謹製ノビスケット!」
提督「これに先ほどの生クリームを大量に塗る!」
空母棲鬼「ヤメロォォォ!ビスケットノシンプルナ味コソ、一ツノ究極!到達点デアルトイウノニ……ソレニ生クリーム!?」
提督「はっはっはっ!もちろん使うビスケットは一枚ではない!こうしてビスケットの間に生クリームをたっぷりと塗って、何枚も重ねていくのだ!」ペトペト
空母棲鬼「ウァァァッ!」
提督「ついでに薄く切ったフルーツなどを挟むのもいいな」
空母棲鬼「キサマ……ビスケットヲソンナ無様ナ姿ニ……」
提督「それだけではない!こうして重ねて言ったビスケットを横にし、フォークで筋を付けていってやる!」
空母棲鬼「モハヤビスケットナドト言エルモノデハナイ!ソレハ……ソレハ……」
提督「そう、この見た目は……ブッシュ・ド・ノエルだ」
空母棲鬼「ダガシカシ、ソノ中身ハビスケットダ!フォークデ切ルコトモ出来ナイ物ハ、ケーキナドト……」
提督「クックックッ……気づいたか」
提督「このままでは確かに中のビスケットが固いままだ……しかし、時間を置けばどうなるかな?」
空母棲鬼「時間……ハッ、マサカ!」
提督「察しが良いではないか!生クリームをたっぷりと挟んだ理由はそこにある!時間が経てば生クリームの水分をビスケットが吸収し、柔らかくなる」
空母棲鬼「ビスケットハ味モソウダガ、ソノサクサクシタ口当タリモ重要ナノニ……ソレヲ……ナンテコトヲスルンダ!」
提督「実は既に叢雲と昨夜作った物があるのだ!さあ、食うがいい!」
空母棲鬼「クゥゥ……フォークデ切ル事ガ出来ルダト……?コレデハマルデケーキ……」
提督「そうだ、しかも手軽に作れる!火を使わないから危険もない!」」
空母棲鬼「シカモ味モ……悪クナイ……」
提督「さあ、話しを付ける気になったか?」
空母棲鬼「クッ……コンナ事デ……」
提督「……そうは言っても、だんだんと抵抗が弱くなってきたではないか。後一押しといったところか?」
空母棲鬼「ソンナ……事ハ……」
またお前か
期待
提督「これが何か、もちろん分かるな?」
空母棲鬼「ソレハ……『ゴディバ』ノ『レジェンデール・トリュフ』……植物油脂ノ入ッタ日本ノ偽物トハ違ウ、本物ノチョコレートダ」
提督「……それを……電子レンジで温める」
空母棲鬼「ドロドロ二……ナッテ……ナンテヒドイコトヲ……」
提督「ここに少量の熱湯を注いでかき混ぜる!」
空母棲鬼「ソンナ事ヲシタラ……ドロドロノママ固マラナクナッテシマウ……」
提督「まさにそれが目的なのだよ……。さあ、ここに冷たい牛乳がある」
空母棲鬼「ソンナ……ソンナ……マサカ……ココア……ダト?」
提督「甘い!そんなことのためにわざわざチョコレートを使ったりはしない!これらをミキサーに入れる!」ウィィィン
空母棲鬼「泡立ッテ……ソウカ!泡ガ消エニクイ様二、ワザワザチョコレートヲ溶カシタノカ!」
提督「言ってしまえば、ショコラ・カプチーノとでも言ったところか」プシュッ
提督「っと……中身が噴き出すところだった……。さあ、飲め」
空母棲鬼「…………」コクコク
提督「それでは返答を聞かせてもらおうか」
空母棲鬼「……ワタシ……ワタシ……ハ……」
空母棲鬼「――――――」
提督「ふっ……」
叢雲「人類と深海棲艦との間に、始めての停戦協定が結ばれることになったなんて――やるじゃない、アイツも……」
金剛「さすが提督デース!あ、そこのサイダー取ってくだサーイ!」
叢雲「どうするのよ……?」
金剛「それで抹茶を溶きマース。今アメリカで人気の抹茶ソーダネー!」グルグル
叢雲「そ、そう……あら?意外と美味しいじゃない」
金剛「デース!ちなみに初めて作ったのはアメリカに抹茶を売り込む事を考えた日本人で、抹茶アイスの生みの親でもありマース」
鳳翔「すみません、お待たせしました」
金剛「そんなこと……Wow!その包みは……?」
鳳翔「はい、カステラで羊羹を挟んだ、シベリアというお菓子です。お茶菓子によいかと思いまして……」
叢雲「……影響、残ってるのかしら……」
金剛「カステラは鳳翔さんの手作りデスカ?」
鳳翔「はい。あ、ですが羊羹は間宮さんにも手伝っていただいて……」
金剛「謙遜は良くないデース。鳳翔の料理は最高ネー」
鳳翔「ありがとうございます。それで……提督は?」
叢雲「アイツなら用事があるとかで……」
ヲ級「茶会ノ場所ハ、ココデヨイノカヲ?」
金剛「いらっしゃいデース」
ル級「失礼スル」
空母棲鬼「来テ……アゲタワヨ」
鳳翔「ル級さんに空母棲鬼さんまで……よくぞいらっしゃいました。あ、お席は……」
ル級「イイ。自分デ勝手ニ座ルサ」
空母棲鬼「……アイツハ居ナイミタイダケド?」
叢雲「司令官なら少し遅れるそうよ」
空母棲鬼「ソウカ……」
ヲ級「ヤツメ……今度会ッタラ……」
提督「呼んだか?」
ヲ級「うひゃぅろぺぬるくwwうせふじこ……」
ル級「アルジサマ!」
空母棲鬼「…………フンッ」
提督「いや、すまん。少し手間取ったのでな」
金剛「それって……」
叢雲「聞かないでおきなさい」
提督「……それにしても、この面々で集まることができる日が来るとは、感慨深いものだな……」
叢雲「それを実現できたのは、アンタと……」
金剛「皆さんのおかげデース」
空母棲鬼「…………///」
提督「あの時は、すまない事をしたと思っている」
ヲ級「ダッタラ始メカラスルナ」
提督「しかし、あれがなければ今は無い。だから、謝罪はしない」
ヲ級「キサマ……」
ル級「マアマア、落チ着イテ」
提督「だが……謝罪の意は表したいので……」
提督「料理を持ってきたぞ!」イキイキ
提督「さあ……これが最高級の……!」
――拷問は――終わらない――
艦
以上、終わりです
読んでくださった皆様、本当にありがとうございました
最初、ヲ級の話を書いた時は勢いでやってしまった部分が大きく、続きなど考えておりませんでしたが、続きがと言ってくださる方がいらっしゃって下さいましたので、続きを書こうと思う事ができました
本当に恐縮の至りです
ありがとうございました。それではまたどこかで
乙
貴様何というおぞましい拷問を
乙
乙乙。気が向いたらまた書いてくれると嬉しい
しっかし、なんでコイツら陸のグルメにこんな詳しいんだwws
そのための侵略
なんて…なんてことを…
地獄に堕ちろッ!! >>1!!…
連作は前スレも貼ってくれ
提督「ヲ級を拷問する」
提督「ヲ級を拷問する」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1455483912/)
提督「ル級を拷問する」
提督「ル級を拷問する」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456027120/)
空母棲鬼堕ちるはやいwww乙
おつ
大変良かった
あぁ、次は戦艦凄姫だ···
やはり貴公か
おつ
今回も良かったよ
最後は提督ウキウキじゃねーか
食材、飲料、甘味でジャンル的には一通り制覇したのかな?
乙でした
防空棲姫はおにぎりで落とせるのか?
一方、深海勢に牛缶で落とされる秋月三姉妹
信じて送り出した秋月三姉妹が以下略
尋問風お料理教室好き
乙でした
このSSまとめへのコメント
良きかな
松翁軒のも美味しいけどカステラならやっぱり福砂屋だな。異論は認める。しかし提督のやったことはユルサレナイ。
このシリーズ好きだw
福砂屋だったら武蔵が倒れるところだったな。