タイトル未定 (183)

オリジナルssです。
時々安価あります。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456368138

相対性理論なんてクソ喰らえだ。彼女の時は止まってしまったというのに、今日も平然と時間は過ぎていく。それが許せなくて、俺は世界を拒絶した。それでも、時は残酷にも無情にも進み続けていく。時間なんて無くなればいいのに……。

「どうして俺は、生きてるんだろう……」

こんな世界に価値なんてあるのだろうか? ただ、日々をのうのうと何もせず生きている俺に価値はあるのだろうか? 死んだ方が社会のためなのではないだろうか? 死にたい。自[ピーーー]るための道具はたくさんそろえた。でも一度も実行に移したことはない。俺はただの臆病者だ。神様がいるなら、早く俺を殺してくれ。

「殺せよ! そうやって空から嘲笑っているんだろう!? 頼むよ……」

誰もいない部屋で、そう懇願する。

「薬飲まなきゃ……」

精神科医から処方された薬を探すが、どうやら空になってしまったらしい。とりあえず、新しいのを処方してもらおう……。そう思って、俺は全く使っていない携帯電話を一か月ぶりにつけた。

「うわっ」

携帯を付けると同時に、電話が鳴り響いた。親父だ。こんな時にもかかわらず、どこぞの研究機関で研究を続けている駄目親たちが今更何の用だろうか。


安価

電話に出る OR  電話に出ない

>>6

>>6

あぁ……、間違えました。
>>9でお願いします

でない

>>9
了解しました。

(出ないを選択)

今は話したい気分ではない。無視しよう。それから何回にもわたって、電話が鳴り響くので、俺は携帯電話の電源を切った。

それから、三日後。同じ研究員の黒沢から両親が実験中の事故で亡くなったことを告げられた。あの時電話に出ていたら、この結果が変わっていたのかもしれない。そう思うと、俺は自分が嫌になった。

「どうして、出なかったんだ……」

そうして、俺は今日も日々を後悔しながら生きていく。

BAD END 1

>>6 から選択をやり直します

このSS内での安価システムを説明します。主人公はゲームのように、セーブとロードを行い過去に飛ぶ能力を持っています。セーブポイントは安価が発生した場所です。今みたいにBADENDに入った場合、以前の安価に戻ることができます。

電話人出る OR 電話に出ない

>>16

出ない

わろた

>>16
了解しました

(出ないを選択)

今は話したい気分ではない。無視しよう。それから何回にもわたって、電話が鳴り響くので、俺は携帯電話の電源を切った。

それから、三日後。同じ研究員の黒沢から両親が実験中の事故で亡くなったことを告げられた。あの時電話に出ていたら、この結果が変わっていたのかもしれない。そう思うと、俺は自分が嫌になった。

「どうして、出なかったんだ……」

そうして、俺は今日も日々を後悔しながら生きていく。

BAD END 1

>>15から選択をやり直します

安価を受けつつ、考えながら作っているので、亀更新になると思いますがよろしくお願いします

電話人出る OR 電話に出ない

>>24

出ない

>>24
ナイス

なんだこれは...

ループをかちぬくぞ!

真面目な話態々選択肢残してる辺りマジでなんかありそうだよねこれ
最序盤からブチ抜かれるの想定してるか知らんけど

>>24
かしこまりました

(出ないを選択)

今は話したい気分ではない。無視しよう。それから何回にもわたって、電話が鳴り響くので、俺は携帯電話の電源を切った。

それから、三日後。同じ研究員の黒沢から両親が実験中の事故で亡くなったことを告げられた。あの時電話に出ていたら、この結果が変わっていたのかもしれない。そう思うと、俺は自分が嫌になった。

「どうして、出なかったんだ……」

そうして、俺は今日も日々を後悔しながら生きていく。

BAD END 1 「いつもの日常」

>>23 から選択肢をやり直します
結果が分かっていても何度も同じ選択をする気持ち分かります

電話に出る OR 電話に出ない

>>35

せっかくだし出る

>>35
了解しました

(出るを選択)

「もしもし」

普段、電話ほとんどかけてこない親が掛けてきたという事は、何かあったのかもしれない。
そう思って、俺は電話に出ることにした。

「よかった。繋がった……」

受話器の向こうから安堵したような声が聞こえてくる。

「何かあったの?」

「今から言う場所に来てくれ。話はそこでする」

声の様子からただならぬ状況だということが分かった。元々、怪しい研究をやらされていることは聞いていたので、知っていたが、もしかしてそのことに関係することだろうか?

「町はずれの灯台まで来てくれ」

親父はそこまで言って、電話を切った。

「行かなくちゃ……」

行かないと後悔する気がする。俺は、久しぶりに外の世界に足を踏み出すことにした。

「ここだな」

灯台の扉を開けて中に入る。そういえば、ここを昔、秘密基地にして遊んだっけ? 懐かしい思い出がよみがえってくる。

「親父ー、母さん?」

人の気配がまるでしない。場所はここであってるはずだが……。いや、まだ来ていないだけかもしれない。

「………」

どこかの隙間から差してくる月の光が灯台の中を照らし、幻想的な雰囲気の世界を作り出す。もうあれから、一時間くらい経った。もしかしたら来ないのかもしれない。一旦連絡しようと思って、携帯を取り出したところで、俺はあることに気が付いた。

「これって確か……」

灯台の中に立てて置かれた缶があった。確か、ずっと前に、親父がこういう形の録音機を作って、俺に見せつけてきたことがあった。もしかすると、これは例の録音機かもしれないと思って、俺はそれを拾い上げた。

「使い方は確か、プルタブを上げるんだっけ……」

プルタブを上げると、炭酸の抜けるような音ともに音声が再生され始めた。

「息子よ。お前に頼みがある。ここの灯台に金庫があっただろう。まずはそこのパスワードを教える。70、45、12、55、98、だ。そこから隠し部屋に行ける。隠し部屋についたら、次の缶があるから再生してくれ」

そこまで音声は止まった。金庫って確か、最上階にある、操作室にあったような気がする。

「最上階か……」

昔は随分高いところにあった気がしたが、今ではそうでもないような気がすると、上を見上げてそう思った。気が付かないうちに俺も大人になってしまったんだなと感じて、俺は少し寂しい気持ちになった。

「ふう……」

久しぶりにまともな運動をしたこともあってか、この階段はかなりきつかった。昔は全力で駆け上っても、あんまり疲れなかったんだけどなぁ……。息を整えてから、操作室に入る。そこには、あの時の痕跡はもう残っていなかったが、その代わりに新しい痕跡が残されていた。恐らく、俺達と同じようにここを秘密基地にしている子供達がいるという事だろう。

「確か、番号はどうだっけ?」

こうなるんだったら、メモくらい取っておくべきだった……。とりあえず、もう一度音声を再生しよう。

「70、45、12、55、98、っと」

音声の指示に従って、ダイヤルを回すと金庫は見事に開かれた。確かに金庫の先に扉のようなものがあった。

「ひうっ!」

扉を開けて中に入ると、そこには3人の小さな子供たちがそこにいた。もしかして、今の秘密基地の子供達だろうか? いや……、子供たちがこんな時間まで出歩いているというのも変な話だ。それに、やけに俺を恐れているような気がする。

「驚かせてごめん。僕は、神門晴と神門清次郎の息子だよ」

「心!」

その子供たちのリーダーっぽい女の子が横にいる、おとなしそうな女の子に声をかけた。
心という女の子は、そのリーダー格の女の子に耳元でぼそぼそと呟くと、女の子はゆっくりとこちらを向いた。

「貴方が、神門清晴さんですね。博士からこれを預かっています」

リーダー格の少女から、缶と封筒を手渡された。とりあえず、音声を再生しよう。

「すでに、子供達とは接触したかな? そこにいるのは、実験に使われた子供達だ。大体の察しはついているだろうけど、その子たちをしばらく匿って欲しい。詳しいことは、
封筒の中に書かれているから、それを読んでくれ」

音声はそこで、止まった。俺が、この子たちを? 正直言って、自信がない。大体何で俺に預けようと思ったんだろう。と言っても、今は考えている時間ではない。この場所が見つかるのも時間の問題だろう。封筒はとりあえず帰ってから読むことにしよう。

「行くよ。僕の家に」

「行くわよ。心、百々!」

灯台を抜けて、俺達はできるだけ、人目のない道を選んで自宅へと向かった。

「お邪魔します」

「そんなにかしこまらなくてもいいよ」

このリーダー格の少女は、結構いいとこ育ちなのかもしれない。やけに礼儀正しいし、立ち振る舞いも、どこぞのお嬢様みたいだ。

「そうだ、封筒……」

封筒を開けて、一番に目に入ったのが、超能力という文字だった。

封筒の中の概要はこうだ。超能力と心的外傷つまりは、トラウマと関係性について書かれていた。強いトラウマを抱えた人間は、それに関連する超能力が発現すると書かれていた。

能力者の特徴は、脊髄に特殊な電気が流れているらしく、それを検知するために、座高測定を行っていたらしい。あの何の意味も感じられない測定にはそう意味があったのか……。となると、この実験は日本規模で行われていることになる。

そして、発見された能力者の可能性のあるものに、人為的に心的外傷を植え付ける。そう書かれていた。また、子供は心的外傷を抱えやすく、能力が発現しやすいとも書かれていた。

「こんなことをやっていたなんて……」

恐らく、俺の両親は人体実験という非人道的行為が許せなくて、この子たちを必死で逃がしたのだろう。

封筒の中には、この子たちに関するデータも入っていた。

まず、リーダー格の少女は、晴柀マツリという名前で、俺の推測どおり、京都の呉服屋の次女らしい。マツリの能力は発火能力で、心的外傷の原因は火災らしい。

次に、大人しそうな女の子。名前は久坂心。能力は読心能力。心的外傷の原因は、強姦殺人事件に巻き込まれたことによるものらしい。

最期に、人形を抱えたアルビノの女の子だ。名前は魔女咲百々。能力は念動力。百々は後天性色素欠乏症に陥り、それが原因でいじめと虐待にあっていたらしい。

正直、想像以上だった。日本で今こんなことが行われているなんて信じられなかった。俺なんかがこの子たちを、無事に匿う事が出来るんだろうか? 漠然とした不安が俺を襲う。
そんな時だった。俺のお腹から音が鳴った。そういえば、ここ数日まともに食事をとっていなかったような気がする。

「とりあえず、ご飯にしようか」

と言っても、現状、俺が作れる料理はカレーとパスタくらいしかない。明日から練習しないと……。

あ、食材がない……」

冷蔵庫を開けると、そこには調味料くらいしかなかった。食べても、どうせ吐いてしまうからという理由で、俺はサプリメントばかり、食べていた弊害がこんなところで出てしまうとは……。

「とりあえず、ご飯買ってくるよ。ここにあるものは好きに使っていいからね」

俺はそう言い残し、きちんと戸締りをして、家を出た。さて、今日は初日だ。いいものを食べて欲しいから、豪勢な食事にしてあげよう。

何を作る?

>>53

タイトルは随時募集してます。いい感じのあったら言ってください。

おにぎり、味噌汁(インスタント)

意外と面白そう 期待

結構面白いけどスレタイで損してるね

>>53
かしこまりました

>>55
タイトル後で考える派なので面白いタイトルが思いつかなかったんです……
一応、次に別スレで建てる時に名前を付ける予定ではあります

「馬鹿な……!食材が一つも……」

どうやら今日は、セールだったらしく、お肉も野菜も魚も惣菜でさえ、すでに残っていなかった。

「何てこった……」

これじゃ、何も作れないではないか……。俺はなす術なく、家へと重い足取りで帰宅した。

「本当に申し訳ない……!」

子供たちに謝罪する。今日の夕飯は災害が来た時用の、インスタントの味噌汁とおにぎりだ。

「いえいえ、構いませんよ。まともな夕飯を食べるのは久しぶりですから」

子供たちは、貧相な夕食に向かって箸を勧めた。こんな食事なら、俺は文句の一つや二つ言うのに、この子たちは何の文句も言わずに食べてくれるなんて……。

「清晴さんは、食べないんですか?」

マツリは、俺だけご飯を食べていないのを見て、疑問に思ったらしい。

「お腹空いてないからさ……」

「でもさっき……」

そういえば、ご飯を買いに行くときにお腹鳴ったんだっけ? でも、本当にお腹空いてないんだよなぁ。

「ああ、お腹の調子が悪くってさ」

「そうなんですか……」

一応嘘はついていない。食べても吐いてしまうのだから。

「そうだ。君たちお風呂に入ってきなよ。あ、でも着替えないのか……。とりあえず、僕のお下がりを今日は来てくれないかな? そして、明日には皆の服を買いに行こう! 」

幸い、買うものと言えば、薬くらいしかなかったので、両親からのちょっと多いくらいの仕送りはだいぶ余っていた。とりあえず、一週間回せるだけの服を買ってあげよう。

「いいんですか?」

「全然問題ないよ」

マツリは、呉服屋の娘だけあって、服が好きみたいだ。嬉しそうだというのがこっちまで伝わってくる。

「それでは、お風呂に行って参ります」

マツリ達は、俺にお辞儀をしてお風呂に向かって行った。

「おい、そこのお前」

いきなり、聞いたことのない声で後ろから話しかけられたので、振り向くと魔女咲百々の持っていたくまのぬいぐるみがそこに立っていた。

「に、人形が喋った……」

いや、そんな事あるわけがない。確か、百々の能力は念動力だったな。つまりこれは超能力によって動かされているだけだろう。

「当たり前だ。私は百々ちゃんに大切にされて意思を持った人形だからね」

確かに、人形には所々補修された跡がある。相当大事にしてきたという事が窺い知れた。

「それで、貴方のお名前は?」

「私の名前は、ブラウンだ。百々ちゃんの代わりに礼を言う。ありがとう」

ブラウンは俺に、頭を下げた。

「ど、どういたしまして……」

俺が、そう言うと満足したのか、人形は操り人形の糸が切れたかのように動かなくなった。

「お風呂ありがとうございました」

お風呂から、俺のお古の寝巻に着替えた三人が出てきた。

「あれ……」

可笑しい。三人がお風呂に入っていたってことは俺は、百々の腹話術説はなくなってしまうじゃないか……。

「どうかしました?」

「君たち同じタイミングでお風呂に入ったよね?」

「入りましたよ?」

背中に冷や汗が伝う。百々の方を見ると、ブラウンが妖しく微笑んだ気がした。

「あははは……」

じゃあ、あれは本当に喋っていたということになる。

「お風呂行ってくる」

お風呂に入って忘れよう。きっと、薬が見せた幻覚だ。現実じゃない。俺は自分にそう言い聞かせて、お風呂に向かった。

「ふ~、さっぱりした」

お風呂から上がると、三人はテレビを見ながら、船を漕いでいた。きっと、疲れが溜まっていたのだろう。俺は三人を親父と母さんが使っていた寝室に運んで、寝かしつけた。

「おやすみなさい」

寝室のドアを閉めて、俺は自室に戻った。

「さて、俺も寝るか……」

睡眠導入剤を服用して、布団に潜り込んだ。睡眠導入剤がないと、俺は眠ることもできない。眠ると決まって同じ夢を見る。そのせいで、眠ることに恐怖を抱いて、眠れなかった。だけど、この薬があれば、眠りたくなくても眠りにつける。魔法の薬だ。

「あ、眠くなってきた」

睡眠導入剤特有の、何とも言えないだるさが体を包み込む。薬が効き始めた証拠だ。それから数分後、俺は眠りについた。


あの夢だ。睡眠導入剤を服用してもこの夢だけは、避けられなかった。精神科医の話では、夢は深い眠りに落ちていれば見ることはないと言っていた筈なのに、薬の効果で深い眠りについたはずなのに俺はこの夢を毎晩のように見ている。まるで、神が過去から逃げるなと言っているかのように俺は感じた。

「っ……!」

激しい動機と息切れで、俺は目を覚ました。やはりもっと強力な薬を貰っておくべきだった。時計を見ると、早朝3時すぎ。少し早いけれど、朝食の準備にしよう。と言っても、そんなに凝ったものは作れないし、食材も何やかんやで結局買えなかった。たしか、この時間なら24時間営業のスーパーが何かもう仕入れているはずだ。

俺は、できるだけ音を立てないようにドアを開けて外に出た。深夜と言う事もあってか、少し肌寒かった

夕飯と同じような失敗を侵すわけにはいかない。立派な朝ごはんを提供しなければ……。

何を作りますか?

>>69

・・・カレーライス
(作れるのこれとパスタだけなのに、どうしろと言うのか?)

>>69
練習したいって言ってたから、基本何でもいいと思うわ

>>69
かしこまりました

ここは変に凝ったものじゃなくて、カレーライスにしよう。少し重いかもしれないけど……。朝カレーはいいってどこかで聞いたことがある。俺は、カレーに使う材料を買って、家へと帰宅し、カレーの準備を始めた。

「おはようございます」

カレーの匂いにつられて、目を覚ましたらしく、マツリはまだ少し眠そうに目をこすりながらリビングに降りてきた。

「他の二人は?」

「まだ寝ています」

「そっか……。もう少しかかりそうだから、寝てもいいよ」

「いえ、ここで見ています」

マツリは、食事用のテーブルに腰掛けて、俺の様子を見ていた。そんなに見られるとやり辛いのだが……。

「はい、完成!」

中々いい出来に仕上がったと思う。料理なんて久しぶりだから、結構不安だったのだが、案外うまくいくものなんだと実感した。

「中々、美味しそうですね」

マツリは、できあがったカレーを見てそう言ってくれた。

「そう言ってくれるとありがたいよ」

「それでは、私は二人を起こしてきます」

そう言って、マツリは寝室のほうへと向かって行った。

連れて参りましたわ」

「…………………………」

「……………………」

どちらも、無言のまま喋ろうとはしなかった。百々も心も、まだこの環境に慣れていないらしい。いや、そもそも心に深い傷を負っているのだ。特にこの二人は人に酷い目に遭わされているのだから、まだ信じられないのかもしれない。

「ごめんなさい……」

マツリは表情を曇らせた。

「大丈夫だよ。ゆっくり慣れていけばいいさ」

思わず、マツリの頭を撫でてしまった。

「あの……」

「ご、ごめん。つい……!」

慌てて、手を頭から離すと、マツリは少しだけ寂しそうな表情を浮かべたような気がした。

「さ、さあ。ご飯にしようか」

四人で食卓を囲む。今日の朝食はカレーライスだ。

「「いただきます」」

「美味しいです」

「良かった……」

ちゃんと口にあったみたいで良かった。

「そっちの二人はどうかな?」

「「……………………」」

二人とも、無言だったが少しだけ微笑んで、頷いてくれた。

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでしたっと」

空いた食器を久しぶりに洗って、俺達は出かける準備を始める。とりあえず、服とか必要になりそうなものをそろえないと……。

「皆準備はできてる?」

「はい。いつでも大丈夫です」

研究室の連中がいる以上あんまり目立つのは避けたい。俺は、マツリ達にウィッグとサングラスをかけさせた。

「それじゃ、出発だ!」

とりあえず、ちょっと離れたところにあるショッピングモールに向かうことにしよう。
そこなら、全部そろえられるはずだ。俺は車のエンジンを付けて、ショッピングモールへと車を走らせた。

「到着っと」

駐車場に車を止めて、ショッピングモールへと入った。

「とりあえず、服から買おう」

>>80  どの店にする?

1子供服売り場
2カジュアルショップ
3コスプレ服売り場

これ、面白いです。ゲームみたいでみてて楽しいです!

>>68

俺も何でも作れると思ってレスしたら、※だったのだが・・・

面白い
期待

>>80
かしこまりました

「あの……、清晴様?」

久しぶりに来たので、店の場所が変わっているとは思わなかった。確かここには、まともな服屋があったはずだったのだが、そこに在ったのはコスプレショップだった。

「うえっ」

引き返そうとすると、百々が俺の腕を引っ張って止めた。

「ここがいいの?」

そう言うと百々は、顔を明るくして頷いた。

「他の二人はどうかな?」

「百々がそこまで行きたいんだったらしょうがないですね。それに、こういう服はあまり見たことがなかったので興味もありますし」

マツリは結構肯定的らしい。マツリはもっとしっかりとした服が好きなんだと思ったけど。実はそうでもないのかもしれない。

「心ちゃんは?」

「………」

心はあんまり好きじゃないみたいだ。少しだけ不満そうな顔をしていた。

「後で、別の服屋にも行くからさ」

そう言うと心は、コクリと頷いて、すでに服を見ている二人のほうを追いかけていった。

「すごい似合ってるよ!」

百々は、やっぱりコスプレがよく似合うみたいだ。マツリも、その気品漂うオーラがさらに強まって見える。心は、最初は難を示したものの、ロリータファッションが気に入ったのか、嬉しそうに着こなしていた。楽しんでくれたみたいでよかった。

「さて、そろそろお昼ご飯でも食べようか」

そう思って、レストランが立ち並ぶエリアに向かおうとした時の事だった。どこかでイベントでもやっているのか、沢山の人がどこかに向かっていた。

「ぐあっ……、あがぁ……」

突然心が頭を押さえて苦しみ始めた。どういうことだ……。

「心ちゃん!?」

一体何が起きたのか、俺には分からなかった。マツリと、百々は何が起きたのか察しがついているみたいで、二人で見合って頷いた。

「能力の暴走だと思います。心は人の多いところに行くと、サイコメトリーによって入ってくる情報の許容量を超えてしまうと、こうなるんです」

「どうすれば助けられるの?」

「とりあえず、まずはここから離れないと」

俺は、心を抱きかかえて車まで運んで、家へと車を急いで走らせて、布団に寝かせてあげた7。すると、少しはマシになったのか少しだけ顔に色が戻った。

「次はどうしたらいいの?」

「私たちの超能力が、トラウマに基づくものだという事は知っていますよね?」

「うん」

「私たちの能力は、トラウマを思い起こさせるようなものなんです。つまり、安心させてあげれば暴走は止まります」

それを聞いた俺は、落ち着かせるように心の頭を撫でてあげた。

「ごめんね……。もうちょっと君たちの事を知ってから行くべきだったね」

そうすれば、こんな目に遭わせることもなかったのに……。

「あんまり……自分を責めないで……」

心は、俺の心の中を読み取ったのか、励ましてくれた。それも自分の言葉でだ。

「ごめん。ごめんね……」

「いいよ……。私が気を付けなかったのが悪い……」

そんなことないと言おうとすると、心は小さな指で俺の口に指を当てた。

「今は……そういう事にしておいて……」

「は、はい……」

心は、小さな笑みを浮かべた。

「今日は楽しかったよ。ありがとう……」

心は、そう言って眠りについた。

「こちらこそ、ありがとう……」

「ふぅ……」

部屋から出て、俺は溜息をついた。次からはこういう事がないように気を付けなければ……。心はああ言ってくれたけれど、心の中では、俺を恨んでいるかもしれない。マツリも百々も。

「はあっ……。はあっ……」

駄目だ。ネガティブになるな……。そう言えば、薬を結局貰うのを忘れていた。俺は携帯電話を取り出して、精神科医の石田にこれから薬を貰いに行く旨を伝える電話をかけて、病院へと向かった。

来てた

ない

「あら、いらっしゃい。待ってたわよ」

俺のかかりつけの精神科医石田は、俺をソファに座らせて、ココアを手渡した。何でも、患者にリラックスして話してももらうための措置らしい。

「お久しぶりです」

石田は、両親と昔から知り合いらしく、俺が小さい時から両親以上に色々とお世話になった人だ。

「それじゃ、替えの薬を出す前に。ちょっとカウンセリングするわね」

「はい」

石田は、後ろから紙のようなものを取り出して、俺に何個か質問をした。何でも、深層心理が分かる心理テストのようなものらしい。

「以上で終りよ。ところで、一つ質問良いかしら?」

「どうぞ」

「それじゃ、最近何か変わったことなかった?」

一瞬、心臓が跳ね上がるようにドキッとした。石田は精神科医で小さい時からの俺を知っているだけあって、俺のわずかな変化に気づいたらしい。俺は、超能力の事は伏せて、心に傷を負った子供を預かることになった事だけを、石田に伝えた。

「全く……。晴も清次郎も何を考えているんだか……」

石田は俺の話を聞いて、頭を抱えた。

「あはは……。本当にそうですよね……」

「でも、心的外傷を抱える子たちと一緒に過ごすことで、心的外傷を改善する治療法もあるし、いちがいに悪いとも言えないのよね……」

2012年に起きた東日本大震災においても、同様の措置が取られたというのを、石田から聞いた。でも、両親はきっとそれを知らずの内に行ったと、石田は苦笑いを浮かべて答えた。

「それじゃ、薬の代えを出しておくわね」

「ありがとうございます」

俺は、石田にお辞儀をして病室を後にした。

「ただいまー」

「おかえりなさい」

夕飯の材料を帰りの途中に、買って帰ってきた俺を、マツリが出迎えてくれた。

「とりあえず、今日はおかゆにしようと思うんだ」

心の体調のこともあるし、一人だけ食事が違うというのも少し、変だと思ったからだ。

「分かりました。私たちは心の方を見ておきます」

「お願いするよ。でも、何か困ったことがあったら、僕を頼ってもいいからね」

俺は、マツリが安心できるように笑顔を浮かべた。

「はい。それでは行ってきますね」

マツリは心の元へ向かって行った。俺も、料理の準備をしないと……。

「何とかできた……」

始めて作る料理は結構怖いものだが、レシピを見ながら作ったから何とかうまい具合に作ることができて良かった……。

「ごはんできたよー」

マツリ達を呼んで、卵粥を皆の前に並べた。お粥みたいに消化の速そうな食べ物も食べられるかもしれない。

「それでは、いただきます」

数か月ぶりに、食べ物を口に入れて、飲み込んだ。じんわりとお粥が広がってお腹の中で広がっていくのを感じた。

「食べ物って美味しいんだな……」

食べても吐いてばかりで、すっかり嫌いになっていた食べ物と言う概念を俺は、少し見直した。マツリ達は、何を言っているんだろうという疑問の視線を俺に向けた。

「食べ物がおいしいのは当たり前じゃないですか」

「そうだね」

俺は、おかしくなって笑ってしまった。客観的に見れば、俺はただの変人だ。そう思うと余計におかしかった。

「ごちそうさまでしたっと」

ご飯を食べ終えて、俺はマツリ達の事を知るために、マツリを俺の部屋に呼んだ。

「詳しく聞かせて欲しいんだ。能力の事と。ここに来るまでの経緯を」

知っておくべきだと思ったからだ。これからのために。封筒にはあくまで概要しかか書かれていなかったし……。

「分かりました」

マツリは、俺が用意したクッションにわざわざ正座して、俺の方を向いた。

「私たちの能力を科学者は悲劇と呼んでいました。私たちの能力は、トラウマを思い起こすことで発動できるんです。私の能力は火事を。心の能力は人の悪意を。百々に関しては、私もよく分かりません……」

そういえばそうだ。念動力といじめ・虐待は、関連がないように感じる。もしも関連のある能力が発動するのなら、心と同じサイコメトリーやテレパシーなど精神との密接な関係にある能力のはずだ。

それに、念動力だけでは説明がつかないことがある。ぬいぐるみのブラウンの事だ。いくら念動力で動かせるとは言っても、喋らせることはできない筈だ。本当に霊の類だったというのなら話は別だけど……。正直、超能力と言うものに直面した以上幽霊と言う事も可能性としては大いに考えられる。

「それに、百々だけ能力の発動中が私たちと大きく異なるんです。私たちの能力はトラウマを思い起こすものですから、精神的にかなりダメージがあるんです。でも、百々さんは全く逆で、まるで楽しそうに能力を使っていたんです」

確かに、いじめや虐待が心的外傷の要因なら、念動力と何の関係もないから、楽しく使うことができるのか? だが、それだと、百々だけ他の能力者と全く違うことになる……。

「百々の、能力の要因はいじめと虐待で間違いないんだよな……?」

「はい……。百々は怒られることを極端に恐れてましたから……」

もしかすると、怒られるのが怖くて、自力でトラウマを克服したという可能性もある。それをマツリに話すと、マツリはありえないと言った。

何故なら、トラウマじゃなくなってしまえば、能力は弱まるか、最悪の場合無くなってしまうかららしいと考えられていたかららしい。

らしいというのは、トラウマを克服した子供が誰一人としておらず、実験の最中、精神崩壊を起こした子供から能力が消えたことから、そう考えられるようになったらしい。

「清晴さんは百々のこと、どう思いますか?」

正直、こういうのは専門外で超能力にも詳しくない。ここは素直な意見を伝えることにしよう。

>>110

(SAVE)

1:「やっぱり、念動力だと思う」

2:「もしかしたら、他の能力なんじゃないかと思う」

2

イジメを「受けていた」訳ではないのかね

>>110
かしこまりました

「もしかしたら、他の能力じゃないかと思う」

確証はないけれど、何となくそんな気がした。

「実は私もそうじゃないかと思ってまして……。ただ、超能力にそこまで詳しいわけではないので……」

「実は、僕もそこまで詳しいわけじゃないんだ。メジャーな超能力とかなら分かるんだけど……」

それに、超能力の専門家であるはずの研究員たちでさえ、間違えた可能性があるのだ。もしかすると、調べても出てこないような能力かもしれない。


「ねえ、ブラウンについて聞きたいんだけど」

「ブラウン……?」

百々が持っているぬいぐるみの事だと説明すると、マツリはそれが何か分かったみたいだ。

「あれは、百々が研究所に来た時から持っているものなんです」

俺は、てっきり逃げ出した後でもらったものだと思っていた。だが、そうなるとおかしいことになる。

「ああいうのって、没収されなかったの?」

精神が安定状態にあれば、能力は発動しにくいはずだ。それなら、ぬいぐるみのように精神安定効果をもつものは、普通没収される。俺はそう考えた。

「それがですね……」

マツリは少し、言いづらそうに口を動かした。

「何度も没収されてるんです。でも、その度に百々のもとに帰って来ていたんです。壊れても焼かれても、元通りになって、いつの間にか百々の腕の中に、あのぬいぐるみはいるんです。いつも百々の傍に……」

背筋に寒気が走った。これじゃまるで……。

「私たちの間でも、あれは呪いの人形じゃないかって噂になっていたりもしました。でも、あのぬいぐるみが何かしてきたことはないんです」

「そう言えば昨日、そのぬいぐるみと会話したんだ……」

昨日起きたことを、俺はマツリに説明した。マツリはこういう話が苦手なのか、顔が少し青ざめていた。

「実はですね、私も見たことがあるんです。と言っても直接見たわけじゃないんですけど、百々とぬいぐるみが話しているのが聞こえてきたことがありまして……」

その後に続く言葉に、俺は耳を疑った。

「でも、聞こえてくるのは百々の声だけなんです。百々は一人になると誰かと会話しているんです」

それと似たような現象を精神科医の石田から聞いたことがある。確かイマジナリーフレンドという解離性障害の一種だ。障害と言っても、百々はまだ子供なので、イマジナリーフレンドを持っていても不思議ではない。

つまり、百々はくまの中にブラウンと言うイマジナリーフレンドを持っているということになる。ただ、謎なのは俺がブラウンと会話できたことだ。イマジナリーフレンドは百々の心の中に住んでいるわけで、他の人にはただの独り言にしか見えない筈だ。

「どうぞー」

ノックの音が聞こえたので返事をした。マツリあたりだろうか?

「入っていいよー」

ノックは続く。誰だ? 

俺は、ドアを開いて辺りを見渡した。しかし誰もいなかった。もしかして、悪戯か何かだろうか?

「どこを見ている。下だよ」

言葉の通り舌を向くと、そこにはブラウンがそこにいた。

「うわっ」

「驚かせて、申し訳ない」

ブラウンは俺の方を向いて、頭を下げた。

「百々ちゃんの、所にいなくていいのかい?」

「それは、問題ないよ。ちゃんと許可とってきたからね」

ブラウンはその小さな足で、てとてと歩いて俺の布団の上に座った。

「あいたっ」

ぬいぐるみの柔らかい拳が、僕の脳天に当たる。

「気にするな、とは言わない。だけど、それじゃいつまでたってもこのままだ」

「そうだね……」

いつまでも、このままじゃいけないなんてことは、本当は分かっている。でも、俺は人と必要以上に近づくことが怖いのだ。誰かと接しようとすると、思ってしまうのだ。また、いなくなってしまうかもしれないと。

「大丈夫だよ。私が保証しよう」

ブラウンは、俺をやさしく撫でた。不安だった心が安らいだ気がした。こうやって、誰かに撫でられるのはいつ振りだろうか?

「そうだ、聞きたいことがあるんだけど。いいかな?」

「答えられる範囲なら、なんでも答えるよ」


>>123

1:百々について聞く

2:ブラウンについて聞く

1

>>123
了解しました

「百々について聞きたいんだ」

「分かったよ。百々ちゃんは、ネグレクト……。いわゆる、育児放棄にあっていたんだ。百々ちゃんの両親はいつも、仕事ばかりを優先し、夕飯もお金だけ置いくような親だったのさ」

それは、俺の家庭環境とよく似通った部分があった。うちの両親も研究ばかりで、ほとんど家にいないのだから。

「そして、百々ちゃんには友達と呼べるものが、私くらいしかいなかったんだ。それに、普通の人とは明らかに違う見た目のせいで、いじめにもあっていた。と言っても、無視される程度のもので、そこまで深刻でもなかったけれど」

人は、特に日本人は自分達と違うものを恐れ、排斥しようとする傾向にある。それが、いじめや差別につながるのだ。

「それからかな。私と言う人格が生まれたのは……」

「どういう事?」

「おいおい、すでに気づいているはずだぜ? 私は、百々の都合のいい友達だってこと」

と言うことは、本当にブラウンは百々のイマジナリーフレンドと言う事なのだろうか? だとすれば、どうして俺とブラウンは会話できるんだ?

「じゃあ、どうして俺と、君は会話できるんだ?」.

「私には分からんよ。ただ私は百々ちゃんの話を聞くだけの、存在だからな。百々ちゃんが話していないことは知らない」

それもそうだ。ブラウンは、恐らく百々の能力の副産物でしかないという事なのだから。

「それに、私はいつか消えなきゃいけない。いつまでも、私に頼られてちゃ困るからね」

ブラウンは立ち上がって、俺の方をまっすぐ見据えた。

「その時は、百々ちゃんのこと、頼んだよ。百々ちゃんは、かなりのさびしがり屋だからな」

「分かったよ。約束する」

俺は、小指を差し出してブラウンと指切り拳万をした。

「どうぞー」

ノックの後、扉を開けて、百々が中に入ってきた。百々はブラウンを拾って抱きかかえると、俺の方に近づいてきて、初めて口を開いて喋りはじめた。

「今日は、一緒に……寝てもいい?」

百々は、上目づかいで俺の方を見た。

「別にかまわないけど、今日はマツリ達とは寝ないの?」

「今日は、お兄さんと一緒に寝たいな、なんて……」

もしかすると、年上に親の愛情みたいなものを求めているのかもしれない。さっきの話で、俺はそう思った。

「分かったよ、。さあ、おいで」

百々を布団に招き入れる。誰かと一緒に眠るなんていつ振りだろうか。

「お邪魔します……」

百々は布団に潜り込んで、俺の方を見つめた。赤い瞳が、蛍光灯の光で輝いて、まるで宝石のようだった。

「それじゃ。おやすみ」

「おやすみなさい……」

部屋の電気を消して、俺たちは眠りについた。一緒に誰かと寝るという行為が、こんなにも安心感を与えてくれるなんて俺は知らなかった。

とりあえず、今日はここまでにします。最近、忙しくてあまり更新できなくてごめんなさい……


ゆっくりでいいので待ってます

「ここは……」

これは、俺の後悔の夢。忘れたい記憶。捨てられない記憶。そんな光景を何度も何度も俺は見ていた。何十回、何百回、何千回と繰り返される悲劇を……。どうあがいても、変えられないと分かっていても、希望に縋ってしまう、俺は愚かな人間だ。

それでも、俺はその後悔をやり直し、絶望する。

「っ……!」

絶望から、目が覚めた。今日も変えられなかった。せめて夢の中でも、俺は彼女を救いたかった。でも、何度手を尽くしても、世界はそれを嘲笑うかのように、わざわざ俺の目の前で彼女を殺した。

「落ち着け……。あれは夢だ……。」

激しく存在を主張する心臓を、抑えて心を落ち着かせる。

「んっ……」

俺が動いたせいで、百々の目が覚めてしまったらしい。百々はまだ眠そうに目をしばしばさせていた。

「起こしちゃってごめん……」

「問題ない。元々は私がここで寝ると言ったのが、悪かったのだからな」

寝起きなのか、その喋り口調にはひどい違和感と、既視感のようなものを俺は感じた。この喋り方は、ブラウンと非常に酷似している。イマジナリーフレンドでは、人格の入れ替わりが起こることも珍しくないと、昨日インターネットで調べたときに書かれていた。恐らくは、無意識な状態だと、人格がごちゃ混ぜになることがあるのだろう。

「あ、おはようございます……」

百々は、恥ずかしそうに少し頬を赤く染めて、俺に朝の挨拶をした。

「おはよう。僕は朝ごはんを作るから、もう少し眠っていても大丈夫だよ」

そう言うと、百々は首を横に振って、ベッドから降りて俺の後をついてきた。

「そうだ。今から、朝食の材料を買いに行くんだけど、一緒に行く?」

そう聞くと、百々は嬉しそうに顔を上げて、頷いた。

今日は何を買う?

>>139

複数指定可能にします

玉ねぎとヨーグルト

>>139
かしこまりました

その時、俺の頭の中にイメージが浮かんできた。玉ねぎ……。ヨーグルト……。

「混ぜるか……」

プレーンヨーグルトと玉ねぎを購入して、家に帰った俺はそれを凍らせてからミキサーに入れて、混ぜてみた。

「完成したぜ!」

名前を付けるとするならば、オニオンスムージーと言ったところだろうか?

「おあがりよ!」

最近、週刊少年ジャンプでやっている某漫画みたいに、俺はポーズをとった。

「……」

どうやら、あんまり面白くなかったらしい。全力でやったこともあって、かなり恥ずかしい。

「ど、どうかな?」

レシピもとくになく、ほとんど思いつきで作ってみた飲み物だが、どうだろうか……。

「美味しい……」

「よかった~……」

うまくできて、良かった……。

「僕は、二人を起こしてくるよ」

オニオンスムージーは中々の好評だった。(全員の好感度が少し上昇しました)

第1幕終了

~第二幕 突然の来訪者~

それは、ある昼下がりの事だった。しばらく鳴っていなかったインターホンが鳴り響いた。家中に一気に緊張感が走る。今まで、こうして普通に過ごせてきたこと自体おかしかったのだ。

「皆は、2階に隠れてて」

マツリ達が、二階へ上っていくのを見届けた俺は、玄関の方へと向かった。

「どうも、こんにちは。私は貴方のお父上に頼まれてここまで来ました。私はこういう者です」

来訪者の女は、俺に名刺を手渡した。名刺には、能力開発機構最高責任者、紫藤小百合と書かれていた。

「貴方が、あの子たちの追手ではないという証拠はあるんですか?」

「それだったら、心ちゃんに見てもらえばいいではありませんか」

紫藤は、毅然とした態度でそう言った。もしかしたら、呼び出したところを捕まえる算段なのかもしれないと思うと下手に動けない……。

「その人の言ってることは、本当……だよ」

心が、後ろから現れてそう告げた。

「駄目じゃないか……。隠れてないと……」

「ご、ごめんなさい……」

てっきり、機関の回し者かと思ったがそうじゃなかったみたいだ。心がそう言うんだったら間違いはないだろう。

「本題に入ってもいいですか?」

俺は、心にマツリ達を下まで連れてくるように指示した。

「どうぞ」

「まずは、我々の目的についてですね。我々は能力開発機構なんて名乗ってはいますが、実際の目的は能力者を保護し、能力から解放することを目的としています」

紫藤は、カバンからファイルを取り出して俺に見せた。

「じゃあ、あの子たちとはお別れになるんですね……」

そう思うと、少し寂しい気持ちもあるが仕方がない。ここにいるよりは、そのほう圧倒的に安全なのだから。

「いえ、貴方には私たちとついて来て貰います」

「どうしてですか?」

俺は、能力者ではないから、保護対象ではない筈だが……。

「貴方は色々、知りすぎてしまいましたし。それに、貴方はあの二人の子供ですから。それだけでも十分狙われる可能性があるので」

なるほど……。

「それに、安心してください。できるだけ今みたいな生活様式にできるように従事しますので」

「あ、ありがとうございます……」

自然と声に出ていた。もしかすると、俺は心の奥ではこの子たちといることが楽しくてしょうがなかったのかもしれない。

「そういえば、あの子たちの学校どうなるんですか?」

確かデータでは、皆小学6年生だった。さすがに、狙われているから学校に行きませんと言うのはあんまりだと思う。

「それについては大丈夫です。私たちの息のかかった学校に通わせますので。それに、もう能力者探しをすること自体、もうなくなるみたいですよ」

紫藤は、タブレットを操作してある画面を見せた。そこには、座高測定に意味がないことが判明し、廃止されると書かれていた。

「元々、費用が掛かりすぎるために続投が危ぶまれていたんですが、ついに廃止されることになったんです」

確かに、全国規模で行えば費用が掛かりすぎるのもしょうがない気がする。

読んでるよ
期待

>>152
ありがとうございます
久しぶりに更新します

「分かっていただきましたか?」

「はい」

その後、これからについて説明を受けた後、紫藤は一度帰っていった。

「はーい」

夕日が沈みかけたころの事だ。荷物の整理をしていると、インターホンが鳴ったので、俺は玄関へと向かった。もしかして、紫藤だろうか? それにしては少し早すぎるような気がするが……。

「どちら様……」

家のドアを開けて、外に立っていたのは、男の子だった。

「どうしたんだい、こんな時間――」

「うるさいな。そこで座っていろ」

その子供がそう呟いた瞬間、俺の足から、まるで、足の感覚そのものがなくなったみたいに完全に力が抜けた。

「くそっ、動けない……」

この子のデータを見たことがある。名前は林徹。能力は言霊。喋ったことを現実にする能力だ。心的外傷の要因は、自分の発言が原因で一人ぼっちになったことだ。まさか、敵側についている能力者がいたとは思わなかった。このままでは、皆連れ去られてしまう……!

「皆隠れてないで出てきなよ」

林がそう言うと、マツリ達の足が勝手に動いて、男の子の前に姿を現した。

「相変わらず、厄介な能力です事……」

「久しぶりだねぇ……。マツリ、百々、心」

マツリは、林が苦手なのか、顔を少ししかめていた。

「その子たちを離してもらおうか?」

林の前に、ブラウンが姿を現した。

「何だお前は?」

「私の名前はブラウン。正義の味方さ」

ブラウンは決めポーズをとると、林に殴り掛かった。しかし、所詮はぬいぐるみ。全く歯が立っていなかった。

「鬱陶しいんだよ。ぬいぐるみのくせに! この俺に歯向かうな!」

林は、酷く激怒しブラウンを指差して、叫んだ。

「お前なんて、燃えて死んじゃえ!」

その言葉通り、ブラウンから火が立ち上ってあっという間に焼失した。

「あ、あぁぁぁ……。あぁ、ぁぁぁああああ」

その光景を目の当たりにしたせいか、百々の様子が急変した。

「いい気味だ。前から思ってたんだけどさぁ。お前なんかちょっと、根暗で気持ち悪かったんだよねぇ。あー清々した。さて、皆。俺達のホームに帰ろうか」

「……す」

普段の百々とは想像がつかないほど、低い声が百々の口から発せられた。

「え? 聞こえないなぁ」

「殺す……。絶対……」

「君が、僕を? 嗤わせてくれるじゃないか! やって見なよ! ホラ! ホラホラホラァ!」

林は百々を煽る。百々がピンチだというのに、この足は全く動かない。どうして、俺はいつも肝心なところで役に立たないんだ。そんな自分が悔しくて、憎い。

「君は、とんだ臆病者だね。所詮は口先だけ。自分で言ったことを実行できない愚か者なのさ。折角こうしてチャンスをっ――」

男の子がそこまで言った瞬間、男の子の周りに密着するように大量の刃物が展開されていた。

「一言でも喋れば、一ミリでも動けば、その刃がお前を切る。つまりジ・エンドだ。林徹」

百々の傍らには、さっき燃えて無くなったはずのブラウンがそこに立って、そう言った。

「ブラウン……、よかった……」

百々は、ブラウンを抱きしめて、再会の喜びを噛みしめていた。林の能力が無効化されたことで、俺の身体は元通り動けるようになっていた。

「おい! 彼方! 見てんだろ! 早く俺を転送しろ!」

林は、血を流すのをためらうことなくそう叫ぶと、同時に姿を消した。

「皆、大丈夫?」

「えぇ……、何とか」

マツリと心は、怪我の事よりも百々の能力の事が気になっているみたいだった。俺だってそうだ。どこからともなく現れた刃物はまるで、そこに固定されているかのように静止していた。何の支えもなくだ。それは、物理的な法則を無視していることになる。


当の本人の方を見ると、至って楽しそうに、人形遊びをしていた。まるで、さっきまでの出来事がなかったかのように振る舞うその、百々の態度に俺は恐怖さえ抱いていた。

「百々は一体何者なんだ……?」


今日はここまでにします。
次は水曜日くらいになると思います

第一部終了

「能力者対策本部へようこそ」

紫藤達職員に出迎えられて、能力対策本部と呼ばれるところに足を踏み入れた。

「歓迎すると言っても、まだ私達しかいないんですがね……。あはは……」

紫藤は、苦笑いを浮かべた。この人も笑うんだなと、失礼ながらにもそう思った。

「あ、そうそう。貴方方の家に案内しますね」

そう言って、連れられたのは大きなセキュリティー完備のマンションの一室だった。

「新生活の準備もあるでしょうから本日はここまでにします。それでは」

紫藤は、ぺこりと頭を下げてマンションの一室から出て行った。

「さて、ご飯にしようか!」

幸いにも、紫藤達から引っ越し祝いだという事で、色々食材を貰ったので、これで美味しい料理を作ることにしよう。ついでに、多めにできれば、隣人におすそ分けにでも行こう。


何を作りますか?

>>167

肉じゃが

>>167
かしこまりました

今日は、とりあえず適当に作ってみよう。なんかの本で、焼けば大抵どうにかなるというのを読んだことがある。

「ん?」

シャツの裾を引っ張られて、振り向くと後ろには子供達がいた。

「何か手伝えることはありませんか?」

「そうだなー……」

正直、包丁を握らせるのは少し怖い。かといって簡単な仕事では満足しないだろうし……。

「そうだ! 隣の人に挨拶してきてくれないかな?」

俺は、前日に買っておいた銘菓ひ○こ饅頭を三人に手渡した。

「はい! 託されました! さあ、行きますわよ」

マツリ達は、饅頭を持って外へと出て行った。そういえば、隣にどんな人がいるのか聞いていなかったが、もし怖い人だったりしたらどうしよう……。もしかすると誰もいないなんて可能性も……。

「落ち着け、落ち着くんだ……」

結局、居ても立ってもいられず、子供達の様子を確認しに行くと、ちょうどインターホンを押すところだった。

「すいません。隣に越してきた者です」

それから、少ししてパタパタという足音との後、大学生くらいの女が姿を現した。

「こんばんは。私は晴柀マツリです。後ろの二人は、魔女咲百々と久坂心です」

マツリはそう言って、ひ○こ饅頭を手渡した。

「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ♪」

女は、マツリの頭を撫でた。

「あ、私は椎名葵です。よろしくね」

椎名は、右手を差し出して三人と一人ずつ握手を交わした。

「あと、そこの人もねー」

どうやら、ばれてしまったらしい。俺は観念して、姿を現した。

「えっと、一応この子たちの保護者の、神門清晴です」

こうして、同年代の人間と話すのは久しぶりで俺は少し緊張した。

「さて、ここに来たと言う事は君たちも能力者……なのかな?」

「という事は、貴方も?」

椎名は、ぺこりと頷いて意味もなくくるりと回った。

「そうなのです! 私の能力は……。ってなーんてね。残念ながら、私は普通の人です」

椎名は舌をペロッと出して、頭を下げた。

「私は、いわゆるボディーガードってやつなんだよねー。因みに、この隣の隣にも同じくボディーガードが住んでるよ」

この人が、ボディーガード……? とてもそうは見えないけれど……。

「今、とてもそう見えないって思ったでしょ?」

心を読まれて、思わずたじろいてしまう。

「こう見えても、子供のころから訓練詰まれてますからね。ホラ、この通り」

椎名は、腕を捲ると、引き締まった筋肉と大きな力こぶを見せた。

「それよりも、それ大丈夫なんですか?」

椎名は、お玉を指差して笑った。俺は、それを見て鍋に火をかけたままにしていたことを思い出した。

「やべっ!」

俺は、急いでキッチンに戻って、火を止めたがもうすでに遅く、食材は真っ黒焦げになっていた。

「あちゃ~、これはもう駄目っぽいですね」

「も、申し訳ない……」

椎名は、にこりと笑うと少し待っててと言い残して一旦部屋に戻っていった。

「お待たせしました!」

後ろを振り向くと、大きなBGMともに椎名が現れた。

「天が呼ぶ! 地が呼ぶ! 人が呼ぶ! 料理を作れと私を呼ぶ! 聞け、愚か者共! 私は正義の料理人! クッキング葵! 参、上」

不可解すぎる光景に、俺と子供たちはぽかんと口を開けて呆然としていた。

「決まったぜ……」

椎名は、余韻に浸っているみたいだ。

「決まってねーよ」

「何おう!」

椎名を咎めるように、一人の青年がベランダを伝って来たのだろう。窓から中に入ってきた。セキュリティとは一体……?

「大体、お前はいつまでそんなもん見てるんだ。恥を知れ! 恥を!」

「ぐぬぬ……。そっちだって、その歳になってり○んとかち○おとか読んでるくせに!」

どうやら、この言葉が致命的となったのか、青年はうずくまってしまった。

「森山ピカ○ュウです」

それを聞いた瞬間、俺の中で何かが爆発した。というか、むせた。噂に聞いたキラキラネームというやつが本当に実在していたとは思わなかった。人の名前で笑うのはあんまりよくないことだが、これは仕方ない。

「だから、言いたくなかったんだよ……」

どうも、森山の心は完全に折れてしまったらしい。

「仕方ないなぁ。今日はピカ○ュウも一緒にご飯食べよ?」

「本当か!?」

立ち直るの早いな……。

「はいこれ」

椎名は、ポケットから猫用の餌が入った缶を森山に渡した。

「何だこれ……。キャットフード……?」

「残念っ……! 違うよー。ポケ○ンフーズだよ」

森山は、無言でキャットフードを投げた。

「俺はポ○モンじゃねーよ!」

「冗談だってのー。それじゃ、私は料理するからね」

椎名は、森山に手を振って、キッチンへと向かった。

「すいません。お見苦しいところをお見せしてしまって……」

森山は、照れくさそうに笑いながらこっちを向いた。

「アイツ昔から、ああなんですよ。いっつも周りを振り回してばっかで……」

そう語る森山の顔は、どこか嬉しそうだった。

「ピ○チュウは……、椎名さんのこと……好きなの?」

心が初対面の人間に対して、普通に喋ったので俺は驚いた。だけど、同時に納得した。女子はこういう話が大好きなのだ。

「ち、違いますよ! というか、ピ○チュウはやめて下さい!」

必死に否定しすぎて逆に怪しかった。最早、読心能力を持っていなくても分かってしまうほどだ。

「無駄ですわよ。ピカ様。うちの心の能力をお忘れでして?」

「しまったぁぁぁ……」

森山は、膝から崩れ落ちた。いちいちリアクションが大きい人だなと俺は思った。

「ピカ様! 椎名様のどういう――」

それから、料理が完成するまで森山は、三人から質問攻めを受け続けた。

「はいはーい。完成しました。今日の料理は、家庭料理の超定番! 肉じゃがでーす!」

俺の作ったものとは、まるで違う、料理本からそのまま飛び出してきたような、肉じゃがが俺の目の前に置かれた。

「それでは、皆さん! いただきます!」

「いただきまーす」

箸を伸ばして、口に入れてみる。

「美味しい……」

今度、料理でも教わろう。俺はそう思った。

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