【艦これ】こんにちは、僕は菊原静男だよ (59)
赤城「私、最近になってこの子……」
赤城「烈風の良さが分かってきたんですよ」フフッ
瑞鶴「えぇ~……日本の戦闘機は軽くてなんぼよ!」
瑞鶴「だから私はやっぱり、二一型の零式が一番!」
蒼龍「戦闘機じゃないけど、九九式は外せないなぁ」
蒼龍「やっぱり、急降下爆撃ができなきゃね!」
グラーフ「私の国のフォッケウルフはもとは陸上機だが……」
グラ「それだけに、速さは他の追随は許さないぞ」
鎮守府のとある暖かい昼下がりのこと。
空母のみんなはお茶を飲みながら、自分たちの艦載機の自慢話に花を咲かせていました。
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加賀「空戦は搭乗者の練度が大事……」
加賀「いくら零式の機動性が高くても……あなたに載せても意味はないわ」
瑞鶴「なんですって!?」 ムカッ
日向「まぁ落ち着け瑞鶴……」
日向「瑞雲は良いぞ」 フフ
龍驤「あんたいつもそればっかやん……」 ハァ
龍驤「彩雲も忘れたらあかんで!やっぱり速い偵察機は大事や!」
ワイワイ ガヤガヤ
秋津州「…………」
その日から、秋津州には元気がありませんでした。
みんなはそんな秋津州を心配しましたが、元気をなくした理由は分かりません。
そして、落ち込んだ調子でまともに戦えるはずもなく……。
この日も秋津州は、演習でただ一人大破してしまいました。
秋津州「はぁ……」
秋津州「索敵はできても……爆撃には参加できないなんて……」
秋津州「このままじゃ私達クビになっちゃうかも……」
大艇「」シュン
秋津州「…………」
秋津州「もしあたしが飛行艇の母艦じゃなくて普通の空母だったら……」
秋津州「あたし……もっと活躍できたのかも」
大艇「!」ガーン
秋津州(あっ!し、しまっ……)
大艇「」ブワッ
大艇「―――っ!」ブロロロ……
秋津州「た、大艇ちゃん、待って!」
秋津州「……あたし最低だ……」
秋津州「大艇ちゃんに向かって、心ない事言っちゃった……」ポロ…ポロ…
秋津州は急いで二式大艇を追いかけましたが、日の沈んだ後で見つかるはずもありません。
夜も更け、失意の秋津州はとぼとぼと……鎮守府に帰ってきました。
秋津州「…………」
龍驤「みんな、秋津州が帰ってきたで!」
グラ「あぁ……よかった……」ホッ
グラ「どうしたんだアキツ……急に飛び出したりして……」
赤城「みんな心配していたんですよっ」
秋津州「……ごめん……なさい……」トボ…トボ…
グラ「……アキツ……」
秋津州は出て行った二式大艇のことを思いながら、泣きました。
彼女の犯した過ち……。
一度過ぎ去った時間はもう取り戻すことができません。
秋津州「……ごめんね……」ポロ…ポロ…
秋津州「……大艇ちゃん……」グスッ
秋津州「……ごめん……ね……!」
そして……
やがて泣きつかれた秋津州は、そのまま眠りについたのです……。
……
…………
………………
次に秋津州がいたところ……
そこは、白いお城の見える喫茶店でした。
???「お嬢さん、こんにちは」 ニコッ
秋津州「……ハッ!」ビクッ
秋津州「えっ……だ、誰!?」 オロオロ
秋津州「ていうかここ、鎮守府じゃないかもっ!?」 キョロキョロ
???「ははは……お願いだから落ち着いてほしいな」
菊原「僕は菊原静男といいます」
菊原「いきなりで驚かせてしまったね……申し訳ない」ペコリ
秋津州「い、いえ……そんな……」アタフタ
秋津州(え、このおじいさん誰!?)
秋津州(知り合いなのかも……でも、全然覚えてないかも!)
菊原「よければ……お嬢さんのお名前もお聞きしたい」
秋津州「わ、私は……秋津州です」
菊原「ほう……!」
菊原「では君が……!おぉ……そうかそうか!」
秋津州(なんか勝手に納得してるかも……)
菊原「ははは、重ね重ねすまないね」
秋津州「あの……」
秋津州「ここは一体、どこなんですか?」
菊原「ここは僕の生まれ故郷だよ」フフ
菊原「そして、君が浮かない顔をしていたものだから……」
菊原「つい放っておけなかったんだ」
秋津州「そうなんですか……」
菊原「して、君はどうしてそんなに落ち込んでいる?」
菊原「乗りがかりの船だ、よければ話してみなさい」
秋津州「…………」
……
…………
………………
菊原「なるほど……」
菊原「その二式大艇に会って、ちゃんと謝りたいんだね?」
秋津州「……」 コク
秋津州「あたしが艦娘になった時から一緒だった子なの……」
秋津州「もう二度と……大艇ちゃんの代わりを探したりなんかしません」
秋津州「あたしはちゃんと謝って……ずっと一緒がいいんです……」
菊原「ふむ……分かった」 フフッ
菊原「その子にはじき会えるだろう……しっかり、謝りなさい」
秋津州「はい……!」
菊原「……それとだね、君はその二式大艇のことを」
菊原「どれほど知っているんだ?」
秋津州「…………!」
二式大艇は米国本土を爆撃した傑作
秋津州「言われてみれば……」
秋津州「あの子の好きな燃料とか、好きなお風呂の温度とかは分かるかも」
菊原(お風呂に入れるのか……)
秋津州「でも……あの子の生まれのこととか、実はよく分かってないかも……」 シュン
菊原「そうか……でも、それは仕方のないことなんだよ」
菊原「なぜなら飛行機がしゃべることはないからね」 フフッ
秋津州「それはそうかも」
菊原「仲良くしようと思えば、理解することはとても大切だ」
菊原「そうだ、せっかくだし……僕の昔話も聞いてはくれないか?」
菊原「じじいの戯言だが、君の二式大艇とも関わりのある話だ」
秋津州「え?大艇ちゃんと……おじいさんが?」
菊原「あぁ……そうだよ」ニコッ
菊原「僕は若かった頃……神戸の航空会社に入社した」
菊原「ちょうどその時は、日本は飛行艇を欲していた時」
菊原「いつか戦争になると踏んで、敵を広い太平洋で偵察するため……」
菊原「遠くまで飛べて、海に降りられる飛行艇はうってつけだったんだ」
秋津州「飛行艇ってやっぱりすごいかも!」
菊原「その会社は昭和3年にできた会社で……」
菊原「そこの設計課長に、橋口さんという人がいたんだ」
秋津州「橋口さん?」
菊原「その人は海軍軍人でもあり、技術者でもあったんだけど」
菊原「とてもお話の上手な人でね……説明会で話を聞いた時」 フフッ
菊原「彼のうっとりするような説明に惚れて、僕はここに入社しようと決めたんだ」
菊原「その当時、残念ながら日本にはまだ大きい飛行艇を作る技術がなかった」
秋津州「えっ!本当に?」 ガーン
菊原「あはは、恥ずかしながら本当だよ」
菊原「だから、イギリスとドイツの有名な飛行艇メーカーから技術者を呼んで、ノウハウを学んでいた……」
菊原「僕が入社したころは、そんな両方の国の飛行艇のことが学べる最高のタイミングだったんだ」
秋津州「え、おじいさん……ひょっとして技術者の人!?」
菊原「あはは、そんな驚くことじゃないよ……」
菊原「で、ドイツのワグナーという人がワグナー式張力場ウェブ理論を発表したときのことだ」
秋津州「???」
菊原「飛行機の体を軽くて強い、薄い金属でつくるために考えられたものだよ」
秋津州「なるほどかも!」
菊原「うちでもその理論に則って、橋口さんの下でいままで骨組みと布でできていた主翼を」
菊原「梁箱型の金属構造にした飛行艇を生み出した……」
菊原「その子を、僕たちは九一式と呼んだんだ」
秋津州「九一式……」
菊原「とはいっても、大した性能にはしてあげられなかったんだけどね」
菊原「あの子には、申し訳ないことをした……橋口さんも、とても悔しがっていたよ」
菊原「それから昭和7年のこと……」
菊原「海軍が、日本の航空メーカー各社に優れた飛行機の試作機を作るように命令したんだ」
菊原「それは戦闘機や爆撃機だけじゃない……飛行艇も含まれていた」
秋津州「…………」
菊原「僕が本格的に開発に携われるようになったのもこの頃で」
菊原「飛行艇の船体の開発のスタッフとなった」
秋津州「順調に出世してるかも!」
菊原「そのときの海軍の要求は220キロほどの速さで」
菊原「4600kmほど飛べるようにしてほしいとのことだった」
秋津州「なんかピンとこないかも……」
菊原「ははは、まぁ……とにかく南西諸島間を飛ぶなら問題のない距離だよ」
菊原「その要求自体は、僕たちの技術水準を下回る簡単なものだった」
菊原「だけど“なんでもできるもの”は、なにをやっても大したことにならない……」
秋津州「中途半端ってことかも」
菊原「そう考えていた僕たちは、この中の偵察に必要な航続距離に力を入れることにしたんだ」
菊原「そうして生まれたのが、翼が大きく体が小さい九七式という飛行艇だったんだ」
秋津州「九七式?」
秋津州(あれ、どこかで聞いたことあるかも?)
菊原「その子は試験飛行も良好で、昭和13年に海軍に正式採用され……」
菊原「先の九一式は3機しか作れなかったが、九七式は215機も作ることができた」
秋津州「すごい……」
菊原「それだけ認めてもらえたということだね」 フフッ
菊原「責任者だった橋口さんも大喜びだった」
菊原「それは美しく大きいグライダーのような飛行艇だ……」
菊原「この子は紀元2600年の記念観艦式でも、艦隊の上空を飛んだんだよ」
秋津州「かっこいいかも~」
菊原「それに九七式は海軍の飛行艇だったけど、このなかの20機ほどだったかな」
菊原「旅客機として使われた子もいたんだ」
菊原「もちろん、サイパンなどにバカンス目的のお客さんを運ぶためにね」
秋津州「サイパン……」 キラキラ
秋津州「いいなぁ、私もバカンスにいきたいかも……」
菊原「あはは……」
菊原「でもね、それは戦前までの話……」
菊原「いよいよ戦争という時になって、僕たちはより強力で新しい飛行艇を作ることになった」
秋津州「…………」
菊原「九七式の開発から4年たった時のこと……」
菊原「海軍からの要求は、九七式の時とはわけが違った」
菊原「それは、300キロの速さで7400kmの距離を飛行できるもの」
秋津州「すごい……距離が前の倍近いかも……」
菊原「最高速度も450キロと、当時はそんな飛行艇など存在するはずがなかった」
菊原「僕たちは、この開発は一筋縄にはいかないとすぐに分かった」
菊原「でも、諦めるつもりも毛頭なかったよ」
菊原「なぜなら、僕はその時30トン以上の飛行機に関して言えば……」
菊原「敵さんのB-17のような陸上機より飛行艇のほうが、いいものが作れると考えていたからね」
秋津州「それはどうして?」
菊原「当時は大型機の着陸がとても難しかったんだよ」
菊原「だから、海面に降りられる飛行艇の方が、陸の飛行機よりむしろ制限が少なかったんだ」
秋津州「なるほど……」
菊原「海軍は向こう3年、連合側の飛行艇に負けない飛行艇を作れと言った」
菊原「だから僕はこれを、予ての持論を証明するチャンスだと思った……」
菊原「そして、僕は橋口さんの下から離れ、この機体の設計主任を務めることとなったんだ」
秋津州「なんだかすごいことになってきたかも……」 ワクワク
菊原「まずぶち当たったのは、最大揚力比の起こる点をいかに高速になるよう持っていくかだった」
菊原「これについては飛行艇の形そのものを九七式より、より空力的に洗練したものへ変えることにした」
秋津州「……どういうこと?」 ポカン
菊原「先の九七式は主翼が船体から離れていて、支柱で支えていたんだが……」
菊原「これを背の高い船体の上から直接主翼を張り出す片翼持形式にした」
秋津州「???」
菊原「絵で描くと……」 キュキュ
菊原「こんな感じだね」
秋津州「……あれっ」
秋津州(なんだか大艇ちゃんに似てるかも?)
菊原「ただ、それ自体はよかったんだが……」
菊原「試作機に重い荷物を載せた試験飛行の際、水面滑走中に飛び上がった水の飛沫が」
菊原「プロペラを叩いて曲げてしまうことが分かった……」
秋津州「あらら……」
菊原「だから今度はプロペラの位置を上げると同時に飛沫を抑える必要が出てきたんだ」
菊原「何度も模型を作って、何度も水槽実験を行ったよ」
菊原「何度も何度も……」
秋津州「…………」
菊原「でも、そこで生まれた技術こそが僕の一番誇れるものといっても過言じゃない」
秋津州「」ワクワク
菊原「船体の三角形断面の小さなでっぱりを、船底の前の方に縦方向に付ける方法を考えたんだ」
菊原「僕はそれを形の似ている『かつおぶし』と名付けたんだ」
秋津州「なんだか思っていたより地味かも……」 シュン
菊原「あはは、そうかもしれないね」
菊原「でも、これをきっかけとした技術は……」
菊原「今後の君たちの将来にも関わってくるかもしれないよ」
秋津州「えっ……」
秋津州「それはどういう……」
菊原「おや、ようやく飲み物が来たみたいだね」
菊原「一度一休みしよう」 ニコッ
今までの>>1のSSと毛色の違った面白さかも
秋津州「プハーっ!」
秋津州「クリームソーダはやっぱり美味しいかも!」 ニコッ
菊原「あはは、元気になってくれたようでなによりだよ」 フフッ
秋津州「おじいさん、あたしさっきの続き聞きたい!」 ワクワク
菊原「そうか……こんな僕の話でも、好き好んで聞いてくれるのは嬉しいことだ」ニコッ
菊原「結果として、さっきの飛沫の問題は一応の解決を見た」
菊原「そして、僕たちは血の滲むような努力の末……」
菊原「ついに、その子の完成にまでこぎ着けた」 ニコ
秋津州「やったかも!」 ピョンッ
秋津州「……その子の名前は?」
菊原「……まぁ、それは後だ」フフ
秋津州「???」
菊原「とにかく……この子が完成したからには、海軍に使ってもらうこととなる」
菊原「この子は海軍始まって以来の“巨人機”としてお披露目され……」
菊原「完成して間もない昭和17年に正式採用されて、終戦までに167機が作られた」
秋津州「その子の評価は……どうだったの?」 オソルオソル
菊原「あぁ、自分でいうのもなんだが……」 モジモジ
菊原「自他ともに認める、文句なしに世界最高の飛行艇だったよ」ニコッ
秋津州「す、すごいかも!」パァァ
菊原「まぁ実際のところ、その時には他の国が……」
菊原「飛行艇の開発にそこまで力を入れていなかったところも大きいけどね」アハハ…
秋津州「」 シュン
菊原「でも飛行艇はさっきも言ったように、偵察や洋上救助が主な任務だったんだけど……」
菊原「この子は海軍の指示で、当時珍しいほどの防御力と、たくさんの機銃で高い火力も持っていた」
菊原「僕は前線に出なかったから風の噂でしか、この子の活躍は聞けなかったんだけど……」
菊原「このおかげか、前線の人たちには歓迎されているようだったよ」 ニコ
菊原「襲ってきた戦闘機を機銃で難なく返り討ちにしたとか」
菊原「発見したB-17を追いかけ回して、揚句体当たりをかまして叩き落としたとか……」
菊原「そんな夢みたいな噂も聞いた」 フフッ
秋津州「さすがに体当たりは嘘っぽいかも……」
菊原「ははは……」
菊原「でも、そういった噂が出るほど、みんなに愛されていたことはよく分かったよ」 ニコッ
菊原「だが……それだけに、辛いこともあった」
秋津州「え……」
菊原「いくら飛行艇自体が優れていても、戦局は覆らない」
菊原「制空権を失った南西の空で、彼女はいい的になり始めたんだ」
菊原「167機作られた彼女が、戦後……何機生き残れたと思う?」
秋津州「え……」
秋津州「……わからない」
菊原「11機だ」
秋津州「え!それだけ……!」
菊原「それから更に、戦後間もなく8機が処分された……」
秋津州「…………!」
菊原「…………」グスッ
菊原「僕たちの手掛けた……」
菊原「そう……それは娘のような存在……」
菊原「そんな娘たちを戦争に送り出す……」
菊原「はじめから……覚悟はしていたつもりだった……」
秋津州「…………」グスッ
菊原「……つもり……だったんだがなぁ……」ポロ…ポロ…
……
…………
………………
菊原「すまないな、お嬢さん」
菊原「年寄りが、情けない姿を見せてしまった……」
秋津州「ううん、全然」
秋津州「むしろ、おじいさんが飛行艇のことをここまで想ってくれる技術者さんだって分かって……」
秋津州「あたし、すごっく嬉しかった!」ニコッ
菊原「……!」
秋津州「えへへ……」
秋津州「おじいさん、あたしもっとお話し聞きたいかも!」
菊原「そうか……僕はとても嬉しいよ」
菊原「だが……そろそろお別れの時間が来たようだ」フフ
秋津州「えっ!?」
菊原「僕は……この時代になって、自分の生み出した子供達が……」
菊原「再び必要にされていると知った」
菊原「そして、我が子と深く繋がる“艦娘”なる少女のことも」
菊原「だから、会いに来たのだ」フフッ
秋津州「おじいさん、何を言っているの……?」
菊原「……僕は、君と話をして安心したんだ」
菊原「君となら、あの子も幸せな残りの人生を歩めるとな」
菊原「私は戦後、かつていた会社に……」
菊原「この子が今後の平和な世界で役に立つためのカギを遺した」
菊原「そのヒントは『かつおぶし』にある」フフッ
秋津州「……何を言ってるの……?」
秋津州「分からないよ、おじいさん……」グスッ
菊原「君たちの戦争も、じきに終戦を迎えるだろう」
菊原「だが戦いが終わっても…………と仲良くしてくれ」ボソッ
秋津州「……」コク
菊原「そして、人の役に立つことの喜びを教えてやってくれ」
菊原「これは一人の技術者としての、最後のお願いだ」
秋津州「……グスッ」コク
菊原「それでは……さようなら秋津州」
菊原「私の娘……二式大艇をよろしく頼む」ニコッ
秋津州「……さようなら、菊原さん」ポロ…ポロ…
……
…………
………………
秋津州が目を覚ました時……そこは、元の鎮守府でした。
秋津州「……夢……」
秋津州「……でも」
大艇「……」スースー
大艇「……」グスッ
秋津州(大艇ちゃんが帰ってきた……)
秋津州「……やっぱり夢じゃないかも」
それからしばらくして……
ある日の条約調印を境に、深海棲艦との戦争は終戦を迎えました。
この終戦に至るまでに秋津州と二式大艇の上げた戦果は、さして多くありません。
しかし、それでももう二人が落ち込むことはなかったのです。
そして……
鎮守府にいた艦娘の中で、彼女だけは終戦後も艤装を脱ぐことはありませんでした。
ですが、それは決して……戦うためでもありませんでした。
そう、それは数年後のこと……
「えーこちら宮城県金華山沖1,200km、行方不明となっていた男性二名をボート上に確認」ザザッ
「低気圧による波浪から、救助作業は現在も尚難航中……応援求みますどうぞ」ザーッ
秋津州「秋津州、了解っ」ザザッ
秋津州「……よぉし!あたしの出番かも!」
大艇改「」エッヘン
夢だけど夢じゃなかった?
秋津州は大艇とともに、海上保安庁に身を寄せることとなりました。
そして、大艇はかつて菊原が「かつおぶし」を元に発展、開発した溝型波消装置……
これをさらに発展させた改造を施し、ヘリコプターが飛べない距離と天候をもものともせず、
波高3mもの海にも降りられる……今や世界最高の海難救助飛行艇として活躍していました。
秋津州「大艇ちゃんとあたしは最高のコンビ!」
秋津州「そして、これはあたしたちにしかできない事かも!」
秋津州「ね!」グッ
大艇改「!」ニコ
菊原静男……1991年没
戦後、彼の遺した飛行艇の技術は現実においても海上自衛隊に所属していたPS‐1、US‐1……
そして、現在のUS‐2飛行艇に脈々と引き継がれています。
それは、これらが常に世界最高の飛行艇という点においても同様です……
―――――――――fin―――――――――――
おじさんはねぇ、こういうデベロッパーもののねぇ、ドキュメンタリーが大好きなんだよ!
実在された偉大な技術者の方のお話を、フィクションで仕上げました。
退屈なお話だったと思いますが……見てくださった方、楽しく書かせていただき、ありがとうございました。
退屈なんかじゃなかった
乙
おつ
乙
乙
こういうのたまらなく好き
乙!
乙!
「菊原静男って誰だよ」などと訝しく思いながら読み始めたけど、何だこれ!?超面白いじゃないか!!
この調子で他の話もお願いします!!
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません