【世にも奇妙な物語っぽい話】僕「伝説の勇者・・・?」 (50)






女神「勇者よ。勇者よ・・・。目覚めなさい・・・」






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女神「悪の魔王が世界を支配しようとしています・・・」

女神「あなたは、魔王を打ち滅ぼさなければなりません」

女神「今こそ、その力を世界のために役立てる時なのです・・・」



僕「・・・はぁ」


女神「と言っても、助けがなくては心細いでしょう。聖なる剣と、使いの精霊を」

女神「あなたに授けましょう・・・」ピロピロピロ・・・


精霊「初めまして!わたし、リリー!」

精霊「わからない事があったら、何でも聞いてね?」



僕「・・・はぁ」

女神「それでは、頼みましたよ勇者。1週間後には」

女神「魔王があなたの元へと訪れるでしょう・・・」



僕「・・・はぁ」





女神「伝説の勇者よ。決して、くじけてはいけませんよ・・・」ポワポワポワ・・・





そう言い残すと、四畳半の狭いアパートの一室から

今のわけのわからんモノは消えた。



僕「・・・夢?」

精霊「最初は、スライムを倒してレベルを上げるのよ」



夢じゃないようだ。証拠に、なんだか光の塊みたいなものが

僕の周囲をフワフワと飛び回っている。それにいつの間にか

目の前の床に一本の剣が・・・。



僕「今の・・・一体なに?」

精霊「次のレベルまで、あと 28 の経験が必要よ。勇者、がんばって!」


どうやらこの精霊とやらは一定のことしか言えないようだ。



僕の名前は雪野勇司(せつのゆうし)。この名前のお陰で、

小さい頃は伝説の勇者なんてよくからかわれたものだ。

しかし、今はの僕は世界を救う冒険なんかとは縁もゆかりもない

ただの一人暮らしの大学生だ。



僕「いきなり魔王を打ち滅ぼせなんて言われてもなぁ・・・」


そう。困ったことに僕はスポーツを集中的にやった事なんてなく、

ましてや剣なんていままで持ったこともない。

さらに、たった1週間後には魔王とやらがやってくるのだ。



僕「参ったなこれは」


何だか、昔やったゲームを思い出した。

あのゲームも始めはこんな感じで、最初はスライムを倒して

レベル上げする所なんかもそっくりだ。

だけれど、これはゲームじゃなくて紛れもない現実だ。



僕「・・・どうしたらいいの?」

精霊「体力が少なくなったら、宿屋に泊まれば回復するよ?」

僕「・・・どうも」



次の日、とりあえず学校へと向かう。休めない講義があるからだ。

精霊が周りの人に見られないかとビクビクしたが、

どうやら他の人には見えないらしい。



友「よー、勇司!今日元気ないじゃんどうしたの」


友人が声をかけてくる。


僕「いや、ちょっと変な夢見てさ・・・」


まさか、1週間後に魔王と対決しなければいけなくて困ってるなんて

相談するわけにも行かない。



女友「変な夢ぐらいでそんなゲッソリしてるの?」


夢だったらどんなに良かったか。

悩みのない連中が羨ましい。



僕「ああ。かなり最悪でさ・・・」

友「ストレスとか溜めすぎなんじゃないの?」

女友「運動とか始めたら?」

男「大丈夫。ありがとな」


友人達の優しさがしみる。



講義中も内容がさっぱり頭に入ってこない。

これからどうしたらいいのか、精霊の言っていたスライムとやらは

どこを探せばいるのか、もし魔王ってのが来たらどうなるのか・・・。

そんな事ばっかりだった。、






大学から帰宅して、早速これからどうするか精霊に相談する。

僕「スライムってどこに居るの?」

精霊「薬草は、体力を回復してくれるよ?」

僕「いや・・・薬草じゃなくて。スライムはどこを探せば出てくるの?」

精霊「今の勇者のレベルは 1 よ。ファイト!」

僕「そうじゃなくて。スライム・・・」

精霊「次のレベルまで、あと 28 の経験が必要よ。勇者、頑張って!」



・・・頭を抱える。

頼みの綱の精霊がこんななら、スライムをどうやって見つけたらいいのか。



僕「一体、どうしたらいいんだ・・・?」

精霊「草むらは、モンスターが多く出るから気をつけて!」


・・・草むら?草むらを探せばスライムが居るのか?

少し離れた所に草の生い茂った空き地がある。

僕は深夜になるのを待って、剣を持って出かけることにした。






剣はなるべく目立たないように布でグルグル巻きにし、

極力人目を避けるようにして空き地へと向かう。



空き地へ到着し、草がボーボーに生い茂ったそこへ入り込んだ。

布で巻いた剣でその辺の草をさぐって見る。

何かがピョンと跳ねた気がしたが、多分バッタか何かだろう。



1時間ほど辺りを探し回ったが。スライムどころか

猫の子一匹見つけることが出来ない。

僕は、途方にくれてその空き地を後にした。





ネットだ。ネットで調べるんだ。

家に帰り、早速スライム、モンスターと検索をかける。

「へぇ、スライムは元々アメリカの小説が発祥で・・・」


出てくるのはゲームや小説の話ばかりで、ロクな情報が手にはいらない。



「掲示板で聞いてみるか・・・」

大勢の人が集まる掲示板で、「スライムはどこに居るの?」と

質問して見た。

初めは冗談と思われ、最後は本気で心配されてしまった。


次の日、疲労と寝不足でフラフラになっているのを友人達に

誤魔化すのが一苦労だった。






何の成果もない6日があっという間に過ぎ。

スライム1匹倒せないまま、とうとう明日魔王がやってくる日になってしまった。


僕「ど・・・どうしよう。いよいよ明日だよな?」

精霊「薬草は、体力を回復してくれるよ?」

僕「今、僕はレベル1なんだろ?魔王を倒すにはレベルいくつぐらい必要なんだ?」

精霊「モンスターは、たまに宝箱を落すよ?」

僕「一体、どうなるんだ・・・?」

精霊「次のレベルまで、あと 28 の経験が必要よ。勇者、がんばって!」



何かしなくちゃいられない。

ムダとわかりつつも、僕はまた空き地へと出かけた。



「くそっ、スライム!スライムはどこだー!」

半分ヤケクソになりつつも剣を振り回し、周囲の草をばっさばっさとなぎ倒す。

当然、スライムなんて出てくるわけがなかった。






そしていよいよ運命の日。

僕は自分の部屋で落ち着かずにソワソワしていた。

逃げようかとも思ったが、魔王ならどこまでも追いかけてくるだろうと

考えてそれはやめにした。今日も講義のある日だったが、

当然出てなんていられない。




ピンポーン・・・


チャイムが鳴らされた時、僕は体が飛び跳ねた。






ピンポーン・・・





















麦茶を出し、ちゃぶ台を挟んで尋ねてきた男と相対する。


男「私、こういう者です」


男が名刺を差し出した。

それには「○×商事◇△課係長 芥野 真男」と書かれていた。



男「あくのまさおと読みます。昔は悪の魔王、なんてからかわれましてね」

そう言って40台後半ぐらいの男は小さく笑った。




僕「今日は、どういったご用件で・・・?」



男「いやね。実はつい1週間前変なお告げがありましてね」

僕「お告げ・・・?」

男「そうです。何と言うかこう、いかにも悪魔の化身のようなものが現れましてですね」

男「お前は勇者を倒し、世界を支配するのだ、ワッハッハ・・・とね」

僕「はぁ・・・」



男「初めは夢かと思ったんですが、こんな物が・・・」


そう言って男はカバンから水晶玉のようなものを取り出した。


男「何やら、勇者の居場所がわかる水晶玉だそうです」


のぞき込んでみると、確かに僕のアパートが写っている。



男「1週間後、見事、勇者を討ち取って見せよ、ワッハッハ・・・」

男「そう言ってそれは消えてしまいました。一体、何だったんでしょうかね」

僕にもさっぱりわからない。



僕「僕を討ち取りに来たんですか・・・?」

男「いやいやいや、そんな・・・」

そう言って男は麦茶を一口すすった。



男「例えば、アナタを討ち取ったとして・・・」

男「その後、どうやって世界なんて支配したらいいんでしょうかねぇ」


男のいう事も最もだった。



男「まあ仮に、何か妙な力が働いて世界を支配できるようになるんだとしても・・・」

男「社内の把握すらおぼつかない私には、重圧に耐えらませんねぇとても・・・」


男は自嘲気味に笑ってからため息をついた。



男「そして、アナタを討ち取って・・・まぁ殺すって事なんでしょうけども」

男「さっき言ったような事が何もなかったなら、私はただの殺人犯ですよ」

男「こんな私にも、家族がいるんです。そんなリスクはとても犯せませんよ・・・」


男はそう言ってまた麦茶をすすった。



男「まあ、本来なら無視しても良かったんですが、万が一アナタも同じ境遇だったとしたら」

男「さぞかし怖い思いをしてるだろうと思いましてですね。本日はこうして来たわけですよ」

僕「ええ、実は僕の所にも1週間前に変なのが現れて・・・」


僕はこれまでのいきさつを男に説明した。



男「それはそれは。アナタも大変でしたねぇ・・・」

男「まあ、本当はもっと早く来るべきだったんでしょうけど。なにぶん忙しくてね・・・」

男「・・・そういう訳で。私は何もするつもりはありませんから・・・。ご安心下さい」



そう言って男は麦茶を飲み干すと立ち上がった。


男「どうもご馳走様。では、これから会議がありますので、この辺で・・・」

そういうと、男は帰っていった。

僕は独り、部屋でしばらくポカンと佇んだ。





僕「・・・何が、どうなってんの?」


精霊「次のレベルまで、あと 28 の経験が必要よ。勇者、がんばって!」










オワリ




以上です。それっぽく書けたでしょうか?
読んでくれた方感謝です

乙 それっぽい
妖精うぜぇwwノイローゼになりそう
魔王は温水さんのイメージ


一回につきひとつはある頭おかしい話っぽい


面白い

いかにも映像が浮かぶそれっぽさだった
何が怖いってずっと妖精に付きまとわれそうなとこだな

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