絵里「花陽の前で声が出なくなった」 (17)
えりぱな短編ss
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花陽「安価で絵里ちゃんに告白しますっ!」
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完結済み
花陽「皆の背中」
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花陽「皆の背中」の数ヵ月後の世界だと思ってください。
花陽「安価で絵里ちゃんに告白しますっ!」とは別なのでご注意を。
春が近付いてきた、屋上にひとり、私。どうしてこんなところに一人でいるのか。それは、自分の気持ちを整理するためだった。
花陽の前でだけ、声が出ない。
意味がわからないと思ってるでしょ?
大丈夫、私も意味がわからないわ。
少し前から変だなと思うことはあったけれど、少なくとも、話せてはいたはずよ。
そうね、声が出なくなったのは……花陽の悩みが解決したあと、かしら?
あのときは泣いていた花陽にびっくりしたわね……。
でも、花陽の成長が見えて私も嬉しかったのよ。
そのあとからね。
花陽に話しかけられて、答えようとしたとき、声が出なかったのは。
声を出そうとしても口から出るのは空気ばかりで、すごく……怖かった。
そのことが怖くて、私は少しずつ花陽を避けるようになっていたわ。
情けない。かしこいかわいいエリーチカ、なんて名ばかりじゃないのよ。
最初はどうにか声を出そうとしていたけれど、ダメだった。
花陽の驚いたような、悲しいような顔が頭から離れない。
とはいっても、花陽の顔が頭から離れないのは今に始まったことではないのよ。
私は花陽が好き。
気付いたら目で追っていて、花陽の声を聞きたくなる。
最初はこの気持ちがよくわからなかった。花陽と話していると、胸がドキドキして、顔がカァッと熱くなる。
小さくため息をついて、桜の木を眺める。
もう桜が咲いているのね。
今年は早いみたい。
桜の匂いが漂う。
花陽も、桜の香り、なのよね。
私は花陽の桜の香りが大好きだった。
日に日に距離が広がって、もう今はどうなのかはわからないけれど。
なのに、花陽との距離が広がれば広がるほど、花陽への想いは増すばかりだった。
ふと、鼻腔を桜の香りが刺激した。
……花陽?
正解。花陽は私の隣に来ると、ゆっくりと腰をおろした。
花陽「絵里ちゃん、久しぶりだね」
少し眩しそうに目を細めてやんわりと笑う。
ああ、なんて愛らしいのだろう。
こんなにも近くにいるのに、とても遠く感じる。
花陽「桜、もう咲いてるんだね……ねぇ、絵里ちゃん」
花陽「私、シャンプー桜の香りなんだあ」
花陽「私、桜の香りが好きなんだ……絵里ちゃんは、好き?」
絵里(ええ……大好きよ。桜の香りも、花陽も)
花陽「……絵里ちゃんは、私に対して怒ってるのかな……?」
絵里(怒ってるわけないわよ……私が怒ってるのは、私に対して、だけ)
花陽「こんなときに言うのはずるいかもだけど……私ね、絵里ちゃんが大好き」
絵里(!……ずるいわよ、そんなの)
花陽「……? 絵里ちゃん、泣いてるの?」
絵里(……え?)
花陽「ゆっくりでいいから……お話ししよう?」
絵里(無理よ……だって、声が出ないのよ?)
花陽「大丈夫、大丈夫だよ」ギュッ
……あたたかい。柔らかくて、心地いい。
もう一度だけでも。一言だけでも。
……神様、どうか私にチャンスをください。
絵里「は……はな、よ」
みっともない。とても小さく震えた声。それでも、花陽には届いていたみたい。
目を見開いて。
花陽「あ……っ」ポロポロ
絵里「わ、たし……ごめ、んなさい……」
花陽「いいよ、もう……っ」
絵里「……わたしも、桜の香り、好き、よ」
花陽「うん……っぐす……」
絵里「それだけじゃ、ないわよ。……私、ね?」
花陽「……っ……うん」
絵里「花陽のことがずっと、好き、でした」
短いですが完結です。
安価に集中します。
おつ
おつ
安価の方も期待してる
乙
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