絵里「花陽の前で声が出なくなった」 (17)

えりぱな短編ss
↓も見てくれると嬉しいです

進行中
花陽「安価で絵里ちゃんに告白しますっ!」
花陽「安価で絵里ちゃんに告白しますっ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453548828/)

完結済み
花陽「皆の背中」
花陽「皆の背中」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453217822/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453640714

花陽「皆の背中」の数ヵ月後の世界だと思ってください。
花陽「安価で絵里ちゃんに告白しますっ!」とは別なのでご注意を。

春が近付いてきた、屋上にひとり、私。どうしてこんなところに一人でいるのか。それは、自分の気持ちを整理するためだった。
花陽の前でだけ、声が出ない。
意味がわからないと思ってるでしょ?
大丈夫、私も意味がわからないわ。
少し前から変だなと思うことはあったけれど、少なくとも、話せてはいたはずよ。

そうね、声が出なくなったのは……花陽の悩みが解決したあと、かしら?
あのときは泣いていた花陽にびっくりしたわね……。
でも、花陽の成長が見えて私も嬉しかったのよ。
そのあとからね。
花陽に話しかけられて、答えようとしたとき、声が出なかったのは。
声を出そうとしても口から出るのは空気ばかりで、すごく……怖かった。

そのことが怖くて、私は少しずつ花陽を避けるようになっていたわ。
情けない。かしこいかわいいエリーチカ、なんて名ばかりじゃないのよ。
最初はどうにか声を出そうとしていたけれど、ダメだった。
花陽の驚いたような、悲しいような顔が頭から離れない。
とはいっても、花陽の顔が頭から離れないのは今に始まったことではないのよ。

私は花陽が好き。
気付いたら目で追っていて、花陽の声を聞きたくなる。
最初はこの気持ちがよくわからなかった。花陽と話していると、胸がドキドキして、顔がカァッと熱くなる。
小さくため息をついて、桜の木を眺める。
もう桜が咲いているのね。
今年は早いみたい。

桜の匂いが漂う。
花陽も、桜の香り、なのよね。
私は花陽の桜の香りが大好きだった。
日に日に距離が広がって、もう今はどうなのかはわからないけれど。
なのに、花陽との距離が広がれば広がるほど、花陽への想いは増すばかりだった。
ふと、鼻腔を桜の香りが刺激した。
……花陽?
正解。花陽は私の隣に来ると、ゆっくりと腰をおろした。

花陽「絵里ちゃん、久しぶりだね」

少し眩しそうに目を細めてやんわりと笑う。
ああ、なんて愛らしいのだろう。
こんなにも近くにいるのに、とても遠く感じる。

花陽「桜、もう咲いてるんだね……ねぇ、絵里ちゃん」

花陽「私、シャンプー桜の香りなんだあ」

花陽「私、桜の香りが好きなんだ……絵里ちゃんは、好き?」

絵里(ええ……大好きよ。桜の香りも、花陽も)

花陽「……絵里ちゃんは、私に対して怒ってるのかな……?」

絵里(怒ってるわけないわよ……私が怒ってるのは、私に対して、だけ)

花陽「こんなときに言うのはずるいかもだけど……私ね、絵里ちゃんが大好き」

絵里(!……ずるいわよ、そんなの)

花陽「……? 絵里ちゃん、泣いてるの?」

絵里(……え?)

花陽「ゆっくりでいいから……お話ししよう?」

絵里(無理よ……だって、声が出ないのよ?)

花陽「大丈夫、大丈夫だよ」ギュッ

……あたたかい。柔らかくて、心地いい。
もう一度だけでも。一言だけでも。
……神様、どうか私にチャンスをください。

絵里「は……はな、よ」

みっともない。とても小さく震えた声。それでも、花陽には届いていたみたい。
目を見開いて。

花陽「あ……っ」ポロポロ

絵里「わ、たし……ごめ、んなさい……」

花陽「いいよ、もう……っ」

絵里「……わたしも、桜の香り、好き、よ」

花陽「うん……っぐす……」

絵里「それだけじゃ、ないわよ。……私、ね?」

花陽「……っ……うん」

絵里「花陽のことがずっと、好き、でした」

短いですが完結です。
安価に集中します。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom