梅木音葉、瀬名詩織「私達……っ」 (26)


「あ、瀬名さん……おはようございます」
「奇遇ね、音葉さん……。今日はレッスンだったの?」
「いえ……コラムの書き直しがあったもので」
「そういえば……音葉さん、音楽雑誌でコラム持ってたものね……」
「はい……」
「そうね……」



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「…………………………」
「…………………………」



「「……あの……」」


「――せ、瀬名さんから……どうぞ……」
「――い、いえ……音葉さんこそ……」



「そ、そ、そ、そうですね……。では失礼して……」
「は、はい……」
「――友達って……どう作るのでしょう」
「――友達……」


「私……人と接するのが苦手で……音が波にように聞こえるので長い時間お話することができなくて……」
「わかります……。衣装を着けたりすると、意識が切り替わるんですけれど……」
「プロデューサーさんには心地いい場所だから事務所に来てるって言ったんですけど、それだけではないんですよね……」
「そうよね……。高校生の時も、特に用もないのに教室に居残ったりして……」



「森や自然が好きなので……誰かとハイキングに出かけたいと思っても、気軽に誘える人がいなくて……。皆、同年代はテンションが上がると競争を始める人が多くて……」
「私が海が好きだからと言っても、波の音を聞き入っているだけで……釣りにもサーフィンにも興味がないんですよね……」
「アウトドアも悪くはないんですけれど……こう……」
「こう……ね……」



「……別にお仕事とかレッスン中にお話するのは簡単なんですよ……」
「話題とか昨日、どこかにお出かけしてきました、とか――そういうのなら問題なく会話できるのだけど……」
「はあ……」
「はあ……」



「お仕事の合間に軽く遊びに行くとか……待ち時間が多いんだから共演者の人とか卒なくしている筈なのに……」
「そういうのにお誘いしていただいたことが、ほとんどないんですよね……」
「お仕事の関係って事なのかしら……」
「実はそっけない態度にしか見えなかったのでしょうか……」

「はあ……」
「はあ……」



「ツアーの控室で流れを合わせるだけなら……梨沙さんのふりにおどけてみたりとか……」
「海の神秘さが好きなのであって……食料を確保するための猟場として見ているわけではないのよ……」

「それに、カッコいい役柄だったのに……きっと私の個性を生かした音波攻撃とかで刑事役を攪乱して、お嬢様すら手玉に取る美人怪盗になれた筈なんですよ……」

「――ウッ!?――コホッ、コホッ、コホッ……ッ!?」

「瀬名さん!大丈夫ですか!?音階が喘息みたいになってますよ!?」


「わ、わ、わ……私……SR来たの、一年前……」
「ごめん、なさい……私が悪かったですなのでお気を確かに」



「はあ……」
「はあ……」

「友達……欲しいです」
「ひぐっ……」



「友達って何なのでしょう……」
「その概念は多岐に渡るわ……汎用性が高すぎて、何が何だか」

「お茶会にお誘いいただいてほいほい飛び込んでも、自然と輪から外れてしまうんですよね……ふわふわ浮いてる綿毛みたいに」
「まるで――海を掴むみたいに、手に入らないわよね……」

「手を繋いでもらっても、一緒に合唱しても――友達付き合いになるわけではないですからね……」
「友達……」

「はあ……」
「はあ……」



「あ、あの、あの、あの……!」
「ど、どど、どどどうしたの音葉さん……」
「わ、わ、わ、わ、わ、わ……っ」
「川に足を滑らせそうな声をしてるわよ!?大丈夫!?」


「わ……私達……ともだ、ともだち……になれません、か……っ」


――ぶわっ。

「な、涙が滝の様に!?ごめんなさい!友達なんて空想上の概念としか捉えられない私が申し訳ないことを!」

――ぶわっ。

「ともだち……すごい……そんな言葉を掛けられたの、何年振り……」


――ぶわっ。

「瀬名さん……っ」
「音葉さん……っ」


――ぶわっ。

「私達、親友よね……」
「そうです。そうです。そうですよ。友達ってよくわかりませんけど、きっとそうです……っ」
「共通点は同じ19歳でアイドルで雰囲気が似てるっていわれるぐらいの、私達だけど」
「ダンスが若干不得意な私達ですけど……」


――ぶわっ。


「「きっと、友達、っ!!」」




「あ、で、でも……SRが再び出た音葉さんに友達って畏れ多いかしら……」
「そ、そ、そんなことはないですよ!」
「SR……ふふふ、やはり私は人魚姫のお父さんのように――皆、私を置いて行ってしまうのよ……あはははは!」
「瀬名さーんっ!?」



………
…………………
………………………



「音葉お姉ちゃんと詩織お姉ちゃん、なにお話してるんだろうねー」
「ねーっ」

「……音葉さん……声が素敵だから…………お絵本読んでほしい……」
「――でも……何だか声かけしていいのかわからないし……」

「瀬名さんも、もの言いたげっていうのかな、お話してると、お口もごもごさせてる時があるから、邪魔しちゃってるのかなって……」
「千枝。怒らせちゃったらどうしようって……お仕事でも、ドキドキしてます……」

「おしごととか、いべんとで、あそびに行ったらとっても優しくしてくれるんだけど……ごあいさつ以外にゆっくりお話ししていいのかな……」
「他のお姉さんとも、あんまりお友達みたいなお話してないみたいだし……」



≪ねーっ!≫



「……お仕事を一緒にした人とは、普通に話せていますわよ?」



PS;『コラム:友達の作り方』

Q:友達ってどう作ればいいですか?
A:旋律は友を交えず(友達よりも仕事仲間を作りましょう)


おわり

劇場で雑談する描写はありますけど、友達的な会話がないのは何故だ。

やめてくれ、その攻撃は俺に利く。やめてくれ。
ジャンル的にはのあさんもその系統に近い筈なのに、やっぱりはっちゃけ具合の差かな?

音葉は言葉よりも、歌とかハミングで会話してそう。

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