男「こんなところにいられるか! 俺は部屋に戻る!」 (24)


とある屋敷――

探偵「――これは殺人事件です」

青年「な、なんだって!?」

メイド「殺人……ですって!?」

探偵「そして、我々はこの屋敷から出られなくなってしまいました」

社長「そんな……!」

女「嘘でしょ……!?」

探偵「ともかく、警察が来るまでの間、全員でこのリビングに待機することにしましょう」

老人「それが一番でしょうなぁ」

男「…………」

男「ふざけるな! この中に殺人犯がいるかもしれないんだぞ!」

男「こんなところにいられるか! 俺は部屋に戻る!」


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社長「貴様、勝手な行動は……!」

男「うるさいっ! あいにくこっちはいい年した大人なんだ!」

男「こんなうさん臭い探偵の指図は受けん! 好きにさせてもらう!」

青年「うさん臭いって、この人は名探偵ですよ……?」

探偵「……かまいません。ただし、くれぐれもご注意を」

男「ふんっ!」スタスタ…


部屋――

男(しっかりカギをかけて、と……)ガチャ…

男(これでもう安心だ!)

男(警察が来るまで、ずっとここにいればいいんだからな!)

男「フフフ……ハハハハハ……! ハーッハッハッハッハ!」


男「…………」

男(なんだか心細くなってきた)

男(いやいやいや! ずっとこのままここにいる方が最善に決まってるんだ!)

男(なにしろ、あの中には殺人犯がいる可能性があるんだからな!)


男「…………」

男(それにしても、みんな薄情すぎやしないか?)

男(だれか、俺の様子を見に来てくれてもいいんじゃないか?)

男(まぁいいけどさ……)


男「…………」ゾクッ

男(この悪寒! そろそろ何かが起こるような気がしてきた!)

男(もしかしたら、一人で閉じこもるのは悪手だったのでは……)

男(いやっ、かまうもんか!)


男「…………」

男(なにも起こらない)

男(いやっ、そろそろなにかが起こるはずなんだ! 起こらなきゃおかしいんだ!)

男(ええい起これよ! なにか!)


男「!」ハッ

男(いつの間にか、ドアの下の隙間に……メモが挟まれている!)

男(これだよ、俺はこれを待ってたんだ!)

男(きっと俺の弱みを知ってる犯人によるものに違いない!)


男「…………」

男「“お夜食をドアの外に置いておきます メイド”」

男(俺は引きこもりか! いや……たしかに引きこもってるんだけどさ)

男(だが……ドアを開けた瞬間襲われたり、夜食に毒が仕込まれてる可能性は大!)

男(ついに俺も年貢の納め時か!?)


男「…………」ゲプッ

男(特に襲われることもなく、普通においしい夜食だったな……)

男(どうやら、一人で部屋に閉じこもるという決断は間違ってはいなかったようだ)

男(だけどなーんか、物足りないんだよな)


男「…………」ウト…

男(やべえ、満腹になったら眠くなってきた……)

男(寝たら死ぬぞ! 犯人がドアをこじ開けてくる可能性もあるんだ!)

男(絶対寝るもんか!)


男「…………」ハッ

男(目が覚めた……)

男(特に俺の体に異変はないようだ……)

男(ったく、犯人はなにをやってるんだ。絶好のチャンスだったのに……)


男「…………」

男(外はどうなったんだろ? 事件はどうなったんだろう?)

男(ドアを開けたら、犯人が待ち構えている可能性もあるが――かまわん!)

男(事件がどうなったのか確認しよう!)


……

……

……



探偵「ああ、全て終わりましたよ」

男「え……」


探偵「犯人はあの青年でした」

男「あ、そう……」

社長「あの心優しい青年がな……」

メイド「すごいトリックでしたね」

女「だけどあれを解いちゃう探偵さんもさすがよね」

老人「人の心にはどんな闇が潜んでるか分からんのう」

男(なんだよ……これ。なんで終わっちゃってるんだよ、事件……)


青年「…………」

男「おいっ!」

青年「なんですか?」

男「なぜだ……!? なぜ俺を殺さなかった!?」

青年「だってぼく、あなたになんの恨みもないし」

男「……だよね」


男「だけど、こんなの納得できない! こんなの絶対おかしいだろ!」

男「なんで俺はこうして生きてるんだ!?」

探偵「ほう、もしやあなたにはなにか後ろめたい過去があるのですか?」

男「うーんと……特にないけど」

探偵「なら、いいじゃないですか」

男「いや、だけどさ……」

探偵「事件は解決、あなたは無事、これ以上なにを望むんです?」

男「あの、ええと……」

探偵「はっきりしない人ですね。私にいわせりゃ、あなたの方がよほどうさん臭いですよ」

探偵「私は眠いんです。部屋に戻らせてもらいますよ」ファ…

男「す、すみません」


男(やがて警察がやってきて、青年は大人しく逮捕され、事件は解決した……)

男(だけどなんだろう。なんかこう、しっくりこないんだよな)

男(このもやもや感は、きっとあの名探偵でも解決できないに違いない)






                                   ― 完 ―

以上で終わりです

乙。

おつおつ

今後もずっと事件の話で盛り上がれなくてつらそう
好奇心は猫を[ピーーー]かも知れないが退屈過ぎても死にそうだ

これはもやっとするなww

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