死神娘「死んでくれたら嬉しいな」(79)
虐められた中学時代。
腫物扱いの高校時代。
よくある境遇だけど、
辛いものは辛いんだ。
男(……はぁ)
最近、考えることが趣味で、
“どうしてこうなったか”
考えてみたりする。
\ワイワイガヤガヤ/
リア充どもがうるさい。
まったく。休み時間なのに。
男(……)
でも小学生の頃は、
自分もあんな感じだった。
男(……)
ほんと、何でだろう。
男(……)
おそらく原因は、
自分にあるんだろうけど。
やはりコミュ障が原因か。
男(……)
他人に興味がない癖に、
他人の評価を気にする奴。
自分を卑下する癖に、
自尊心が人一倍高い奴。
それが俺という人間。
傷つくのが怖い。
嫌われるのが怖い。
だから余計に縮こまっちゃって、
自分の発言には細心の注意を払う。
男(……)
でもそんな生活は凄く疲れるんだ。
だから俺は今、こうして無言なワケで。
男(……)
改めて思う。無言は効率良すぎだ。
まず疲れない。それに失敗もしない。
ゆえに黒歴史も増やさないで済む……。
『キーンコーンカーンコーン♪』
1時限目の開始鈴が鳴り響く。
男(……ふぅ)
そっと溜め息。
休み時間という拷問から解放された今、
俺にとっては、今からが休み時間なワケで。
『ガラガラッ』
男(……ん?)
入ってきたのは、我が2年c組の新担任。
担任「えーっ、1時限目の授業だが」
担任「緊急で全校集会に変更となった」
担任「今から全員、体育館に集まるよーに」
男(……マジかよ……めんどくさ……)
◆9時05分://学校/体育館◆
男(……まったく……)
男(先週、始業式だったってのに)
男(何でまた全校集会なんか……)
幼馴染『まぁまぁ♪ そう言わないで』
男(はぁ……お前は本当、気楽な奴だな)
幼馴染『それだけが取り柄ですから♪』
男(……はいはい……そうですか)
司会「それでは校長先生、お願いします」
校長「オホン……えーっ、おはようございます」
\オハヨーゴザイマース/
校長「早速ですが、本題に入ります」
校長「皆さん、部活動には入っていますか?」
男(……え?)
校長「もちろん、入ってない学生もいるかと思いますが」
校長「本校は今年度から――」
校長「”完全部活制度”を実施することになりました」
男(……完全……部活制度?)
校長「簡潔に言うと、学生は原則として全員――」
校長「”何らかの部活動に参加しなければならない”」
校長「――という制度です」
男(……は?)
校長「近頃、ニートと呼ばれる若者が増えていますが」
校長「総務省の調べによりますと、そのおよそ70%が――」
校長「中学・高校時代と、帰宅部だったことが分かっています」
校長「本校では、このような事実から――――」
男(……マジかよ……冗談じゃないぞ……)
男(……何で部活なんかやらなきゃいけないんだ!?)
男(……そんなことをしたところで……何の意味が……)
俺を見てるようだ
幼馴染『そういえば男って、帰宅部だったよね?』
男(……そうだけど……絶対入りたくないぞ)
幼馴染『でも入らないと、怖い罰があるって……』
男(分かってるよ。でも部活になんか入ったら――)
??『くすくす……』
男(……傷つくだけに……決まってるだろ)
幼馴染『ん~、じゃあどうするの?』
男(……適当な同好会の、幽霊部員にでもなるさ)
幼馴染『……あぁ……なるほど……』
男(何だよ? 何か言いたそうだな)
幼馴染『べ、別にそんなことないよ』ブンブン
男(……)
妄想の幼馴染が、俺を軽蔑してる。
つまり俺自身が、俺を軽蔑してるということ。
胸の奥では分かってるんだ。
このままじゃ、ダメだってことが……。
◆9時30分://学校/教室◆
担任「それじゃ部活動の一覧を配るぞ」
女教師が何やら薄い冊子を配り始めた。
最後列の俺は、最後の1冊を受け取る。
「野球部」「サッカー部」「軟式テニス部」
「バスケ部」「ラグビー部」「硬式テニス部」
男(運動部か……メジャーどころだな)
男(入るくらいなら死んだ方がマシだ)
ページを2、3ページ捲る。
「吹奏楽部」「美術部」「文学部」
「合唱部」「茶道部」「棋道部」
今度は文化部らしい。
男(……運動部よりはマシだけど)
男(全然興味が湧かないんだよな……)
男(というより、人と関わりたくない)
『パラッ』
「フットサル同好会」「ハンバーガー愛好会」
「鉄道模型同好会」「アマチュア無線同好会」
「レトロゲーム同好会」「特撮研究会」
「サンドイッチ愛好会」「2d映像研究会」
男(……はぁ……どれもこれも……)
男(まぁ、どうせ幽霊部員なんだ)
男(どこでもいいから選ばなきゃ)
男(…………)
男(……フットサルでいいか……)
男(全然活動してるところ見ないし)
男(俺が入ったところで支障は――)
??『くすくす……』
男(ッ……!)
まただ……また笑い声の幻聴……。
男(はぁ……最近よく聞こえるな)
男(……疲れてるんだろうか……)
担任「はいちゅーもーく」パンパン
男(ん?)
担任「入部届けは、来週の月曜までに出せよー」
担任「あと提出前に、私のとこにも持ってくるよーに」
男(……二度手間かよ……めんどくさっ……)
生徒a「ところで先生~、結婚の話はどうなったの~?」
担任「え? って……急に何だよお前ら……」
生徒b「いいからいいから♪」
担任「まぁ一応……次の土曜に式を挙げる予定だが……///」ボソッ
\お~/ \ひゅ~ひゅ~/ \おめでと~/
男(……へぇ。アイツ結婚すんのか……初めて知った……)
担任「ったく……///」ボソッ
男(……)
なんというか、よく貰い手がいたものだな。
あの教師、見た感じ難しそうな性格なのに……。
生徒c「オレ絶対、結婚式行きますからwwww」
生徒d「わたしもwwwwドレス見に行くwwww」
男(……うわぁ……気持ち悪い奴ら……)
担任「お、オホン!/// えーっ、連絡も終わったことだ」
担任「残りの時間は自習にする。分かったか?」
\はぁ~い/
担任「……じゃあ私は一旦、職員室に戻るからな……///」スタスタ
『ガラガラ』
担任「あ、そだ! 男、ちょっと一緒に来てくれないか?」
男(はっ……!?)
生徒達(えっ……?)
生徒達「……」
俺の名前が響き渡ったと同時に、
教室には、冷たい空気がほとばしる。
男(……何だよ……何だって言うんだよ……)
『ガタン』
俺は素早く立ち上がり、
これまた早歩きで移動する。
男(用があるなら、後でこっそり呼べばいいだろ!)
男(そんなに俺を、晒し者にしたいのかよ!)
生徒達「……」
担任「ん? どうしたお前ら、急に静かになって……」
男(黙れ。鈍感すぎだ。それでも担任か!)
生徒達「……」
男(お前らもお前らだ。何で急に黙るんだよ!)
男(俺がお前らに何をしたっていうんだ!)
??『くすくすっ……』
男(くっ……!)
男(誰だ! 今笑った奴は!!)
生徒達「……」
男(……)
また幻聴だった。
男(くそっ……!)
最近の自分は、本当にどうかしてる。
早く帰りたい。帰って自室に引き蘢りたい。
それでネットして、漫画見て、寝て、
アニメ見て、ゲームして、オナニーして……。
担任「……おい男……何かあったのか?」
男(……)
担任「……まぁとにかく、職員室まで来い、な?」
男(……お前は本当に、分かっていない……)
◆9時45分://学校/職員室◆
気まずくも職員室に到着。
移動中は、終始無言だった。
担任「なぁ……」
口火を切った女教師。
担任「もしかしてお前、虐められてるのか?」
男(……)
……何も分かっちゃいない。
担任「……どうなんだ?」
男「……別に虐められてませんよ」
担任「……」
ふん。今、「声小さ」って思っただろ?
ほっとけ。お前なんかと喋りたくないんだ。
担任「……本当か?」
男「……はい」
担任「じゃあ何でさっき、教室の空気が変わったんだ?」
男「……分かりません」
大方、反応に困ったとか、そんなとこだろうよ。
結婚の話題で、教室が盛り上がってるところに、
お前はその響き渡る声で、俺の名前を呼んだんだ。
空気を読めないにも程がある。
俺をそんなに苦しめたいのかよ。
担任「……そんなに先生が頼りないか?」
……は? 誰もそんなこと言ってないっての。
担任「確かに私はまだ若いが、列記とした担任だ」
担任「少しくらい、信頼してくれてもいいだろ?」
男「だから虐められてませんって」
担任「……まぁ……そこまで言うなら信じるが……」
男「それより、何で俺は呼び出されたんですか?」
担任「……え? あ、ああ……本件はそっちだったな」
男(忘れてたのかよ)
担任「実はウチのクラス、帰宅部はお前だけなんだ」
担任「だから、ちゃんと部活に入るよう――」
担任「親身に助言してやろうと思ってな」ニコッ
男(……)
そんな用件で呼び出したのか。
余計なお世話にも程がある。
男「あの……入る部活なら、もう決めたんですが」
担任「おお、凄いな。もうやりたいこと見つけたのか?」
男「はい……ですから助言は結構です……」スッ
『ガラガラ』
担任「え……?」
男「失礼しました」
担任「え!? ちょ、まだ話は終わって――」
『ピシャン』
担任(えええ……何だよアイツ……)
◆9時50分://学校/職員室前廊下◆
男(……ふぅ……)
話を打ち切り廊下へ退避する。
コミュ障にとって会話は苦でしかないのだ。
男(……結構喋ったな……)
やっぱり人と話すのは好きになれない。
疲れるし、自己嫌悪に陥る。最悪だよ。
男(……あぁ……まだ自習の時間か……)
男(……教室、戻りたくないなぁ……)
授業中にドアを開けると、
皆が一瞬、こっちを振り向く。
あの瞬間が、途轍もなく大嫌いなのだ。
男(……休み時間まで、トイレでサボっとくか)
踵を返し、トイレのある方へ向かう。
完全個室でウォシュレット付きの最高設備。
この学校のトイレはまさに天国。
そこは“流石私立”と言うべきか。
「都内トップの附属高校」
俺の通うこの学校の代名詞だ。
一度入ってしまえば後はエスカレータ式。
そこまで勉強しなくとも、
皆が褒め称えるような大学に入れる。
プライドが高い癖に、勉強したくない、
働きたくないし、将来について考えたくもない。
そんな人間にぴったりの高校なのだ。
男(……)
しかし欠点があるのも事実。
この学校は一応、専門学校なのだが、
そのためクラスが専攻別に別れており、
それゆえにクラス替えが一度もないのだ。
だから第一学年でコミュニケーションに失敗すると、
それすなわち高校生活終了のお知らせ、なのである。
まぁ俺は最初から諦めてるワケで、
そんなことはどうだっていいんだけど。
男(……ん?)
トイレまであと数メートルのところ。
中庭の見える玄関ロビーから、
中庭に小さな人影を見つけた。
教師や庭師ならともかく、
その姿は間違いなく生徒。
男(まだ授業中だろ……何してんだ?)
人のこと言えないけど、当然の疑問である。
見た感じ、下級生っぽい……新1年生だろうか。
男(……ま、どうでもいいけど)
引き続き、歩みを進める。
男(今日はトイレで何をしよう……)
男(やっぱスマホで2chかなぁ……)
そんなことを考えていたら。
「ふふふ、決めたわ」
男「……!」
中庭の生徒が、陰湿に微笑んだ。
男(……きゅ、急に何だよ……)
思わず足を止めてしまったが、
まぁ関係ないし、興味があるわけでもない。
あんなのは放っとくべきである。
男(えーっと、トイレトイレ――)
「ちょっとそこのあなた」
男「!」
――え?
「聞こえてるでしょ? あなたよあなた」
……もしかして……俺……?
男「……」バクバク
男「……」バクバクバクバク
暴れる心臓。震える手足。
頭の中から、色が失われていく……。
「ふふふ。無視してるのバレバレ」
教師ならまだいい。
話そうと思えば話せる。
だが生徒は無理だ。
奴らは面白さを求めてきやがる。
俺なんかと話してみろよ。
気まずくなるのは目に見えてるだろ?
どうせ離れたがるなら、最初から話しかけないでくれ。
俺は嫌われたくない……無関係のままがいいんだよ!
「あら、凄い汗。疾しい事でもしてたの?」
男「!!!」ビクッ
いつの間にか、彼女は横にいた。
何だよ……何なんだよコイツ……!
「さぁ吐きなさい。授業をサボって何をしてたのか」フフフ
男「……っ!?」
「まぁいいわ。このことは黙っといてあげる」
「その代わり条件として――」
「我が研究会に入ることを命ずるわ」
男(……は?)
研究会? 何のことだ?
「ふふふ、これは先輩命令よ」
……え?
男「……先輩……?」
先輩「あら、やっと喋ったわね」
先輩「そう。私はあなたの先輩」
男(……)
思わず声が出てしまった。
まさかこんな小さいのが年上とは……。
先輩「ふふふ、よろしくて?」
スロー&ロートーンな陰湿口調。
独特な微笑み。これが電波というやつか。
先輩「あなた、2年生よね?」
男「……え? あ、はい」
先輩「ふふふ、やっぱり」
先輩「道理で見ない顔だと思ったわ」
男「……あの……研究会って……」
先輩「名前はまだない」
先輩「ついさっき思いついたから」
男「……じゃあ研究って何を……」
先輩「ふふふ。我が研究会の掲げるテーマは――」
先輩「――死後の世界についての研究、よ」
男(……)
こういう時、どうしたらいいんだろう。
やっぱり思った事を口にした方が良いんだろうか。
先輩「あら、どうしたの?」
でも、それで嫌われたらどうする。
面白くない顔をされたらどうする。
男(……結局俺が、傷つくだけじゃないか……)
先輩「ふふふ、また無視するつもり?」
男「あ……いえ……その……」
先輩「あなたも興味あるでしょ? 死んだらどうなるか」
男「……」
男「……は、はい……もの凄く興味があります……」
先輩「あら、なかなか物分りが良いじゃない」フフフ
男「……」
こういう時、俺は決まって嘘をつく。
俺はただ、嫌われたくないだけなのに……。
嘘は後悔するって、分かってるのに……。
先輩「じゃあ決まり。あなたは会員1号」
先輩「――黄泉の国研究会、のね」
男「……黄泉の国……研究会?」
先輩「ふふふ。今決めたの。どうかしら?」
男「……はい……良いと思います……」
……そんな名前で承認されるかよ。
先輩「じゃあ残り3人、勧誘よろしく頼むわ」
男「……え?」
先輩「同好会申請には、会員が5人必要なの」
男「ぼ、ぼく一人でですか? それは流石に……!」
先輩「ついでに顧問も見つけてくれると助かるわ」
男(……聞いちゃいない……)
先輩「ちなみに先輩命令。逆らったらパンチよ?」
男(え……ええええ!?)
先輩「ふふふ。よろしくね。2年生君♪」ニヤリ
男(……)
立ち去る少女……もとい先輩。
つまんない自分を、どうか許してください。
男(……)
でも先輩。コミュ障の俺に会員集めなんか無理です。
それも3人だなんて……無茶ぶりにも程があります。
男(……)グスン
すみません……役立たずで……すみません……。
男(……)グスン
??『くすくす……』
男(……え?)グスン
??『もー、男の子が泣いちゃダメだよ』
男(……幻聴が……鮮明に……?)グスン
男「!!!?」ビクッ
死神娘「……えへ♪」
男「……は……え……?」
ソイツは突然現れた。
黒を基調とした可愛らしい衣装。
大鎌を重たそうに構えるその姿。
男「……」
頭の回転が追いつかない。
何が何だか、俺にはさっぱりで。
死神娘「あ、初めまして。死神娘です♪」ニコッ
『ぷかぷか』
男「……」
唯一、分かってることといえば、
彼女が物理的に浮いてることぐらい。
死神娘「えへへ。やっぱり驚いた?」
死神娘「まぁ普通、死神なんか見えないからね」
男「……」
何だよ……何なんだコイツは!?
死神娘「死神はね、“死にたい人”にしか見えないんだ」ニコッ
死神娘「だから、ボクが見えるようになったってことは――」
死神娘「男君の中が、“死にたい”で満たされたってことなんだよ♪」
男「……」
『ゴシゴシ』
目を擦ってみる……しかし、目の前のそれは消えない。
妄想かと疑ってみる……しかし、どうやら現実の模様。
死神娘「あはは。そんなことしたって無駄」
死神娘「ボクの存在は紛れもない現実だもん♪」
男「……」ゴクリ
唾をひとのみ。
男「……俺に……何の用……?」
死神娘「えへへ……もちろん」
死神娘「男君の、命を貰いにきたんだよ♪」
男「……え?」
……命を……貰いにきた?
どうなるか知らないがバッドエンドでも構わん
寝落ちか
とりあえず投下後にでも区切りと書いておくといいよ
男「……俺の命を?」
死神娘「うん♪ だって死にたいんでしょ?」ニコッ
男「……まぁ……確かに今は死にたい気分だけど……」
死神娘「じゃあ決まりだね♪ 早速手続きを――」
男「ちょ、ちょっと待った!!」
死神娘「わわっ……! どうしたの急に?」ビクッ
男「急なのはそっちだろ? 何だよ命を貰うって……」
死神娘「え? だ、だって死にたいんじゃないの?」
男「いや、そうだけど……そんなの急に言われても……」
死神娘「……ったく。つべこべ言わずさっさと死ねよ」ボソッ
男「……へ? 今なんて……?」
死神娘「え!? あ、んーん♪ 何も言ってないよー♪」
死神娘「男君、死にたいのに、死にたくないんだね♪」ニコッ
男「……」
男「……何でそんなに俺を死なせたいの?」
死神娘「え? あはは。話すと長くなるよ?」
男「別にいいよ。今から帰るところだし」
死神娘「へ? 帰る? 死んでくれないの?」
男「……よっぽど俺に死んで欲しいみたいだな」
死神娘「あ……いや……うぐぅ……」
男「……教えてくれ。何で俺の前に現れたか」
死神娘「……教えたら……死んでくれる?」
男「……考えとく……」
死神娘「じゃあ、掻い摘んで説明するね」
男「うん」
死神娘「昔々、神様は2人の人間を創りました」
男「……のっけから壮大だな」
死神娘「えへへ……」
それでね、子供を作る過程がよっぽど楽しかったのか、
人間は尋常じゃない早さで繁殖していったの。
神様はそんな状況に、危機感を覚えました。
『知恵を有する人間が、増えすぎるのはよくない』
『“真実”に辿り着かれてしまったら、ワシは終了じゃ』
死神娘「――ってね」
男「へぇ……辿り着かれたらマズい“真実”って?」
死神娘「アホか。人間なんかに教えるわけないだろ」ボソッ
男「……」
男「あの……さっきから全部聞こえてるんだけど」
死神娘「え? 何? 何のことかな?」アハハ
男「いや、だから……所々、素の性格が――」
死神娘「もー。何言ってるの男君」
死神娘「いいから話を続けるよ? えへへ♪」
男「……」
何だよコイツ。
えとね、だから神様は、人間界に死神を派遣して、
“真実に比較的近い人間”を消し去ろうと考えたの。
男「……それでお前は俺のところに……」
死神娘「えへへ♪ まぁね」
男「じゃあ、死亡願望のある人間ほど――」
男「その“真実”とやらに近いってことか?」
死神娘「うん♪ そんな認識でいいと思うけど――」
死神娘「というか男君って、思ったより会話できるんだね♪」
男「え……?」
死神娘「だってボクと、普通に話してるんだもん♪」
男「……」
確かに……言われてみれば……。
コイツが人間じゃないからだろうか……。
会話してるのに、全然疲れないな……。
男「……」
よし。この感覚、よく覚えておこう。
死神娘「んーと……話はこんな感じでいい?」
男「うん、大体分かった……まとめると――」
①神様は“死にたい人間達”を抹殺したくて、
②そのために、人間界に死神を送り込んだ。
③お前は送り込まれた死神の一匹で、
④そんなお前が、俺の担当になった。
男「――ってところか?」
死神娘「そうだね♪ 大体そんな感じだよ」
死神娘「じゃあ約束通り、死んでくれる……かな?///」
男「誰も死ぬなんて約束してないだろ」
死神娘「ええええ!? そんなのひどいよぉ!」グスン
男「一応、考えとくとは言ったから、考えるけど……」
死神娘「くそっ。ふざけんな。今月のノルマどうすんだよ」ボソッ
死神娘「まだ3人だってのに、てこずらせやがって……」ボソッ
男「……」
ああ……やっぱりこっちが本性なんだろうな。
男「あのさ、そんなにノルマが大変なら他をあたったら?」
死神娘「ひゃっ、聞こえてた? えへへ、ごめんなさい♪」
男「……」
死神娘「でもだめなの。“死にたい人間”を放置したら――」
死神娘「それこそ神様にお仕置きされちゃうからね……」
男「へぇ……大変なんだな……死神って」
死神娘「もー。同情するなら死んでくれ、だよ……」ショボン
男「悪いけど……そこまで死にたくはないんだ」
男「かといって生きたいわけでもないけど……」
死神娘「んー。はっきりしないねー」
男「多分、死ぬ勇気がないだけだと思う」
男「俺が死ぬことで……色んな人が迷惑を被る……」
男「そう考えただけで、死ねなくなっちゃうんだ……」
死神娘「ふぅん……さっさと死んじゃえばいいのにね♪」
男「……」
男「じゃあどうする? 俺を強制的に死なせるか?」
死神娘「残念ながら、それはできません」
男「……え? 何で?」
死神娘「神様の理念に反するからです」
男「……神様の……理念?」
死神娘「うん……だってそもそも――」
死神娘「人間を創ったのは神様なんだよ?」
死神娘「創っておいて殺すなんて、勝手すぎるでしょ?」
男「……へぇ……一応、筋の通った奴なんだな……」
死神娘「だから、あくまで合意のもとじゃないとね……」チラッ
男「……悪いけど、俺は死の契約なんて結ばないぞ」
死神娘「……」ジィー
死神娘「……はぁ……何でこんな奴にボクが見えるんだろう……」
男(……だんだん素の性格が表に出てきたな……)
男「じゃあ……俺は帰るから」
『タタタ』
死神娘「……」
『スゥー』
男「……」
死神娘「……」
男「……何で付いてくるんだ?」
死神娘「だって……神様に怒られるもん」
男「……」
男「まさか……契約するまでずっと付いてくる気?」
死神娘「えへへ♪ その通り」ニコッ
男「……もしかして……一緒に住むつもりか?」
死神娘「うん♪ そうだよ」ニコッ
男「……」
死神娘「嫌なら死の契約を結ぶことだね♪」
男「はぁ……もう勝手にしてくれ」
死神娘「……え?」
男「付いてきたきゃ、勝手に付いてこればいい」
死神娘「ほんと? ありがとー♪ てへへ」
男「でも、そのぶりっ子はやめろ」
死神娘「は? ぶりっ子なんかしてねーよ」カチン
男「嘘つけ。それがお前の本性だろ」
死神娘「くっ……下手に出てりゃいい気になりやがって」ボソッ
男「それそれ。小声のつもりかもしれんが、丸聞こえだぞ?」
死神娘「うっせーな……いつから気づいてたんだよ?」
男「んーと……会ってから割とすぐかなぁ……」
死神娘「……ふん。ゴミ人間にしてはやるじゃねーか」
男「お前、口悪すぎだからな……顔は凄く可愛いのに」
死神娘「……か、顔は関係ないだろ! さっさと死ね!!」
男「……やっぱり可愛くない……」
死神娘「ふっふっふ。どうだ? 幻滅しただろ?」
男「まぁ、最初はしたけど……もう慣れたかな」
死神娘「何が慣れただよ。余裕ぶっこいてんじゃねー」
死神娘「ったく。可愛こぶってりゃすぐ死ぬかと思ったのによ」
死神娘「これだから人間は嫌いなんだ。あーマジうざい」
男「お前の中の人間って……そんなに単純な生き物なのか?」
死神娘「は? 当然だろ。バカじゃねーの」
死神娘「実際人間なんて、甘い顔してりゃ言うこときくだろ」
男「俺にはその甘い顔は通用しなかったじゃねーか」
死神娘「ちょーしのんな。あームカツクムカツクムカつく!」
男「……ほんと、残念な仕様だよ。お前は」
死神娘「うっせーな! いいからさっさと死ね!」
男「まぁいいや……ほっといて帰ろ」
『タタタ』
死神娘「あ! こら待てよ!!」
◆10時30分://学校/正門前◆
男「ふぁ~あ……」
死神娘「眠そうだな、ゴミ人間」
男「……だから口悪すぎ……ほんとに直せってそれ」
死神娘「ふん。コミュ障に言われたくねーよ」
男「……ああ……本当にもったいない……」
死神娘「……は?」
男「黙ってたらお前、普通に可愛い女の子なのに」
死神娘「……」
死神娘「……さっきから、何のつもりだ?」
男「……え?」
死神娘「ボクの容姿を褒めて、何が狙いなんだ?」
男「……別に目的なんかないけど」
死神娘「嘘をつくな。ボクを油断させようとしてるだろ」
男「お前……性格歪み過ぎだよ……」
◆10時40分://都内某所◆
死神娘「ゴミ人間の家は、こっちなのか?」
男「いや、違うよ。少し寄り道してるんだ」
死神娘「は? 何で?」
男「何でって……家に居てもコミュ障は治らないからな」
死神娘「……へぇ。意外と向上心あるんだ」
男「まぁ、一応な……」
死神娘「……それで、行き先は決まってんのか?」
男「いや、特に考えてないけど」
死神娘「は? バカじゃねーの」
男「いちいち突っかかってくるな面倒臭い」
死神娘「め、面倒くさい!?」
男「ああ、それと用もないのに話しかけるな」
死神娘「なっ……!? そんなんじゃコミュ障は治らんぞ」
男「別にお前で治そうとは思ってないよ」
◆10時50分://路地裏◆
男「……何か変なところに迷い込んじまったな」
死神娘「ったく。適当に歩くからこうなるんだよ」
男「うるさいな。喋りかけるなって言ったろ」イラッ
死神娘「ふん。人間の言うことなんか聞くもんか」
男「……」イライラ
死神娘「……な、なんだよ?」
男「……やっぱり俺、お前のこと嫌いだ……」
死神娘「えっ……?」
男「だって……話すと別の意味で疲れるし……」
死神娘「なっ……!? そ、それはこっちのセリフだ!」
死神娘「ボクだって、この世で一番、人間が嫌いなんだよ!」
男「はいはい。それくらい見てりゃ分かるよ」
死神娘「……特に人間の雄は……下衆ばっかりだ……」ボソッ
男「え?」
死神娘「な、何でもねーよ! さっさと死ね!!」グスン
男「……」
死神娘「……」グスン
男「……」
何だよコイツ……いきなり泣き出して……。
これじゃまるで、俺が泣かせたみたいじゃねーか……。
死神娘「……おい……ゴミ人間……」グスン
男「な、なんだよ?」
死神娘「お前も……やっぱり……」
死神娘「……えっちなこと……好きなのか……?」
男「」
男「は、はぁ!?」
……いきなり何言ってんだコイツ?
男「……なんでまた急に……?」
死神娘「……いいから答えろ」グスン
男「……男なら……嫌いな奴は少ないと思うけど……」
死神娘「ボクが聞いてるのは、お前のことだ」
男「いやだから……嫌いじゃないって」
死神娘「……」
死神娘「ふん。やっぱりお前も下衆だったか」
男「何でだよ。本能なんだから仕方ないだろ」
男「お前がエロいことを嫌うのは分かるけどさ」
死神娘「はぁ? 何でそんなことが分かんだよ?」
男「え……だってあれだろ?」
男「死神の仕事が増えたのは、人間がエロいからで……」
死神娘「……」
男「あれ……違うのか?」
死神娘「……さっさと死ね……ゴミ人間……」
男(……何だよ……気分悪いな……)
死神の仕事が増えたことに腹を立てている
↓
仕事が増えたのは、人間が増えたから
↓
人間が増えたのは、性行為ばっかするから
↓
性行為ばっかするのは、人間がエロいから
↓
だからエロいことが嫌い
男(……じゃないのかよ……)
死神娘「……」
男(……まぁいっか。大人しくなったし)
これで心静かに徘徊ができるってもんd――
男「……ん?」
老婆「……」
男(……なんだ、あの老婆?)
気持ち悪いな……占い師か何かか?
老婆「……」
男「……」
こんな所で何やってんだろう?
神秘的というか、怪しすぎる……。
男(……ん?)
紫色のテーブルに、何か書いてあるな。
どうやら何かを路上販売してるようだ。
男(……どれどれ……)
『貴公の妄想、具現化致します』
男(……妄想を……具現化する……?)
何だよそれ。
===御品書===
“能力系” 七拾万円
“存在系” 伍拾万円
“心理系” 壱拾万円
“身体系” 壱拾万円
=========
男(……うわっ……意味分からん上に高い……!)
面白い!支援
妄想を具現化って
カオスヘッドか
幼馴染みいるとかリア充じゃねーか、と思ってたら妄想で泣いた
レイプでもされたのか
週刊ストーリーランド?だっけ?
を、意識してるのか?
好きだよー④
老婆「クックック……興味があるのかい……?」
男「!!!!?」
おわっ、喋った!
老婆「私を見つけるとは……坊やはとても運がいい……」
男(……運がいい……だと……?)
死神娘「ふふっ。コミュ障を治すチャンスじゃねーか」
男(……あ?)イラッ
死神娘「ほらほら、さっさと喋れよゴミ人間」ニヤニヤ
死神娘「人と喋らないと、一生治らないぞ」ニヤニヤ
男(くっ、うぜええ! てかもう機嫌直ったのかよっ)イライラ
老婆「……ところで坊や……いい顔をしてるねぇ……」
男(……え?)ブルッ
うぉ寒気……今はこっちに集中しないと……。
老婆「……可愛いから、特別に安くしとくよ」
男(……と、言われましても……)
死神娘「てかいい加減喋れよ。コミュ障だせーぞ?」
男(うっせーな! 今喋ろうと思ったんだよ!!)イラッ
男「……ふぅ……あ、あの……」
老婆「クックック……ようやく喋ったねぇ……」
男「あの……妄想を……具現化するって……?」
老婆「気になるかい?」
男「……まぁ……少しだけ……」
老婆「クックック……じゃあ説明してあげようかねぇ……」
男「……お、お願いします……」
老婆「古今東西、老若男女……人は誰だって妄想するだろう?」
男「……はぁ……」
老婆「ここはねぇ、そんな妄想を具現化する店なんだよ」
老婆「具現化できる妄想は、能、在、心、体の4種類だよ」クックック
◆能力系◆
ギターを弾けるようになりたい、手から炎を出したい、
アイツの歌唱力を落としたい、コミュ力を上げたい、等。
◆存在系◆
脳内彼女を具現化させたい、未知なる兵器を生み出したい、
恐竜を復活させたい、アイツの存在を消したい、等。
◆心理系◆
アイツに好かれたい、総理大臣の思想を変えたい、
自分の性格を良くしたい、他人の性格を悪くしたい、等。
◆身体系◆
筋肉質になりたい、イケメンになりたい、
ハゲを治したい、アイツを貧乳にしたい、等。
男(……へぇ……これが本当だったらすげーな……)
ふと、妄想幼馴染の顔が脳内に浮かぶ。
男「……あ、あの……これってどんな妄想でも具現化できるんですか?」
老婆「それなりの妄想には、それなりの妄想力が必要だねぇ」
男「……妄想力……ですか……?」
老婆「そう。妄想する力が強い人ほど、強い妄想を生み出せるのさ」
老婆「それゆえに、比較的高レベルな――」
“全人類の存在を消す” “全死者を生き返す” “銀河消滅”
老婆「――といった類いの妄想は、絶対に実現しないんだよ」
男(……そ、それはそうだよな……ああ、良かった……)
死神娘「ふぅん……つまんねーの」
男(……この死神……)
死神娘「じゃあボクは、ゴミ人間を下僕にする妄想でいいや♪」
男(……勝手に言ってろ……)イラッ
老婆「あと、妄想を具現化すると、必ず矛盾が生じるだろう?」
男「え……あ、ああ……そうですね……」
ある人が、どんな盾でも貫通する矛を具現化させて、
他の人が、どんな矛でも防御できる盾を具現化させたら……
老婆「その場合は、妄想力の高い方が勝つんだけどねぇ」
老婆「私が言いたいのは妄想と妄想の矛盾じゃなくて――」
老婆「妄想と現実の摩擦による矛盾のことだよ」
男(……妄想と現実の矛盾……?)
老婆「例えば、坊やの妄想幼馴染を具現化するとしよう」
男「ブブブッッ!! な、何でそれを……!!?」
老婆「おやおや……どうしたんだい?」
死神娘「うわっ、最悪……ゴミ人間、そんな妄想してんのかよ」
男(う、うるさい! お前は黙ってろ!!)
老婆「クックック……死神とは仲良くした方がいい」
男「!!!!!」ブブブブッッッ
男「も、もしかして、俺の心の中が読めるんですか!?」
老婆「ああ……私はねぇ……能力系の妄想で――」
老婆「――“人の心を読む力”を手に入れたんだよ」
男「!!!!!」
……おいおい……この店……ガチじゃねーか……。
老婆「まぁ、商売柄、必要な能力だったからねぇ」
老婆「お陰で今の私には、妄想力は殆ど残ってないよ」ククク
男(……妄想力って……減るものなのか……)
男「た、他人の心の声が聞けるって……すごいですね……」
老婆「もしかして、坊やも聞けるようになりたいのかい?」
男「……え? 俺なんかが具現化できるレベルなんですか?」
老婆「いや、心の声を聞くってのは、かなりの妄想力が必要だね」
男「……じゃ、じゃあダメですね……俺、凡人だし……」
老婆「そんなことはない。坊やには死神が憑いてるじゃないか」
男「え……死神が関係あるんですか?」
老婆「死神が憑いてるってことは、坊や、“死にたい”んだろう?」
男「!!!!」
男「……おばあさん……何でも知ってるんですね……」
老婆「商売柄、情報には敏感だからねぇ」
男「……でも、死にたいことが、妄想力にどう関係……」
老婆「一般的に、死にたい人間ほど、妄想力が高いんだよ」
男「……え? そ、そうなんですか?」
死神娘「へ、へぇ。初めて知った。良かったなゴミ人間」
老婆「どうする? “人の心を読む力”にするかい?」
男「……で、でも俺……そんな能力、望んだことありませんよ?」
老婆「なんだ……そうだったのかい……じゃあ成功率は低いねぇ」
男「……やっぱりそういうの……関係あるんですか?」
老婆「ああ……強く妄想してなきゃ、具現化なんてとてもとても……」
男「……じゃあ……俺に具現化できる妄想って……」
老婆「そうだねぇ。今のところ、その幼馴染くらいじゃないかい?」
男「……そういえば……妄想と現実の矛盾の話がまだでしたよね?」
老婆「ああ、すっかり忘れてたねぇ……簡単にいうと――」
老婆「その幼馴染が具現化することで生じる一切の矛盾は――」
老婆「記憶、環境、書類含め、全て都合良く再調整されるんだよ」
男「!!!」
老婆「そして彼女自身の記憶にも大雑把な仮想人生ができあがる」
老婆「つまり彼女は、自分が妄想であることを自覚しないってことさ」
男「じゃあ俺の妄想幼馴染が……完全な人間になるってことですか?」
老婆「細かい記憶までは支援されないから、完全ではないねぇ」
男「でも、小さな思い出はなくても、一応、幼馴染なんですよね?」
老婆「ああ、2人の関係は間違いなく幼馴染。それだけは言えるさ」
男「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
死神娘「わっ!? こ、こら!! 急に大声出すなよ!」
男「おばあさん! 俺、買うよ。存在系を具現化してくれ」
死神娘「おいゴミ人間、興奮しすぎだ。コミュ障を自覚しろ」
男「ははっ、すっかり忘れてたぜ!」
男「てかこういうのが大事なのかもしれないな!」
男「“自分はコミュ障でない”と自覚する! まずはそこからだ!」
老婆「坊や……私には一応、独り言にしか見えないんだよ?」
男「……あ……す、すみません……///」
老婆「クックック……“存在系”……壱萬円まで負けとくよ」
男「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます!!」
ばあさん俺にも売ってくれ
>>62
ばあさんなら俺の隣で寝てるよ
◆11時30分://都内某所◆
男「いやー、それにしてもすげー婆さんだったなぁ」
死神娘「具現化するのは1週間以内だっけ?」
男「ああ。それまでは楽しみに待っとくさ」
死神娘「……てか、何で幼馴染なんか選んだんだよ?」
死神娘「コミュ障なんだから、素直にコミュ力上げればいいだろ」
男「バカ。コミュ障は自分で治せるかもしれないけど」
男「幼馴染のは、そういう力に頼るしかないだろ?」
死神娘「……」
死神娘「もしかして、同棲するつもりか?」
男「いや、俺の中で幼馴染は近所に住んでる設定なんだ」
男「だからきっと、現実でもそうなるはずだよ」
死神娘「……」
死神娘「キモい」
男「……う、うるさいな……」
男「まぁ何にせよ、あと2人ってワケだ」
死神娘「……何が?」
男「研究会の会員集め」
死神娘「……幼馴染をカウントするのかよ?」
男「だってアイツは、一応、俺に惚れてる設定だし……」ニヤニヤ
死神娘「キモすぎてヤバい。死ね。さっさと死ね」
男「……」
死神娘「てか、泣いてた割りに結局集めるんだな」
男「仕方ないだろ。新しい制度が出来たんだし」
男「まぁ最初は既存同好会の幽霊でいいかと思ったけど――」
男「やっぱりそれじゃ、何も変わらないからな……」
死神娘「ふぅん……何か前向きになってきたな、お前……」
男「ん? 褒めてるのかそれ?」
死神娘「ほ、褒めてねーよ! このゴミ人間が!」
死神娘「区切りが付いたら絶対に死んでもらうからな!!」
◆12時00分://都内某所◆
男「さて……腹も減ってきたし、そろそろ帰るか」
死神娘「……ボクもお腹すいた。何か食わせろ」
男「……死神って飯食うのかよ?」
死神娘「当たり前だろ。それに人間界の飯は旨いし」
男「へぇ。人間は嫌いだけど、人間が作る飯は旨いと?」
死神娘「悪いかよ。実際そうなんだから仕方ないだろ」
男「……お前、一体人間に何されたんだ?」
死神娘「……え?」
男「だって、仕事が増えたから人間が嫌いってワケでもなさそうだし」
男「人間に何かをされたから、人間が嫌いになったんだろ?」
死神娘「……うるさい……さっさと死ね……」
男「……まぁ……言いたくないなら別にいいけd……!?」
死神娘「……ん? どうしたゴミ人間?」
男「……」
そこには小さな公園があった。
男「……」
錆び付いた、ぶらんこと滑り台。
砂場で山を作る、一人の幼女。
男(……何だ……この懐旧感は……)
頭の中を冷たい風が吹き抜ける。
まるで故郷を訪れたかのような、
そんなノスタルジアを感じて。
幼女「……あ」
立ち尽くす俺、彼女と目が合う。
寂れた公園に一人でいた幼女。
何でだろう。
初めて会うはずなのに、
“久しぶり”、と言いたかった。
死神娘「……知り合いなのか?」
男「……いや、知らない子だ……」
幼女「……」
死神娘「じゃあ何で見つめ合ってんだよ」
男「……分からない」
死神娘「はぁ?」
幼女「……男」
男「!?」
……え……何で名前を知って……。
男「俺たち……どこかで会ったことあるっけ?」
幼女「……んーん、今初めて会った……」
男「……だよな……じゃあ何で名前を……?」
幼女「私、探偵だから……それくらい分かるの」
男「……探……偵……?」
……確かに探偵のコスプレみたいな格好してるけど……。
幼女「……」スゥー
男「……」
幼女「……」ハァー
男「……」
玩具のパイプで一服する彼女。
もちろん煙は出ていない。
男「……」
何だろうこの気持ち。
彼女を見てるとすげー落ち着くっていうか……。
死神娘「……このロリコン!」
男「!!!!」
男「だ、誰がロリコンだよ! んなワケないだろ」
死神娘「じゃあさっさと帰るぞ。いつまで眺めてんだ」
男「ちょ、ちょっと待てよ……お前も気になるだろ?」
死神娘「は? あんなのただのガキじゃん」
男「いや、だって……今は平日の昼時だぞ?」
はやく
しえん
死神娘「知るか。こちとら腹が減って――」
男「なぁお前……小学生だろ?」
幼女「うん……そうだよ」
死神娘「無視すんなゴミ人間!」
男「学校には行かなくていいのか?」
幼女「うん」
男「……何で?」
幼女「通ってないもん」
男「……え?」
幼女「だから厳密には、小学生じゃないの」
男「……通ってないってどういうことだ?」
幼女「私、戸籍がないから」
男「……は?」
幼女「お父さんもお母さんもいないよ」
幼女「生まれた時から、1人ぼっちだから」
男「……」
幼女「……」
男「……じゃあお前……どこに住んでるんだよ?」
幼女「今は探偵事務所に住んでるの」
男「……探偵事務所? マジで?」
幼女「うん。この前建てたから新築」
男「……建てたって誰が?」
幼女「私」
男「嘘つくな」
幼女「嘘じゃないよ」
男「信じられるわけないだろ」
幼女「だってお給料たくさんもらってるもん」
男「……給料? お前……働いてんのか?」
幼女「うん。探偵のお仕事。楽しいよ?」
男(……全く信じられん)
男「……探偵って具体的に何するんだ?」
幼女「私は妄想探偵なの。だから妄想を駆除するのが仕事」
男「……妄想……駆除?」ピクッ
幼女「そうだよ。この世は妄想だらけだからね」
幼女「具現化した妄想を見つけ出し、それを駆除するんだよ」
幼女「特に最近は、変な老婆のせいで妄想が蔓延ってるから」
男「……変な……老婆……?」ピクッ
幼女「うん。だからもし見かけたら私に教えてね」
幼女「“貴公の妄想具現化致します”、が商売文句の老婆」
男(……ついさっき……会ったような気がするんだが……)
幼女「あ、もちろん、老婆の商品に手を出しちゃダメだよ?」
男(……ついさっき……手を出したような気がするんだが……)
死神娘「あーあ……完全にアウトじゃん。ゴミ人間」
男(……てかこの子に幼馴染がバレたら、駆除されちゃうんだろうか……)
男「と、ところで妄想って……どうやって駆除するの?」
すみません
勝手ながら終わりです
最後にメモを置いていきます
◆登場予定人物◆
(研究会会員)
・男 コミュ障
・先輩 陰湿なドs
・後輩 ツンデレ
・幼馴染 男の妄想
・風紀委員 内気な関西弁
・担任 新妻顧問
(その他)
・死神娘 性格も口も悪い
・幼女 ヤンデレ妄想探偵 捨て子
・老婆 妄想の具現化屋(イヴ)
・爺 妄想駆除組織の頭(アダム)
◆予定してたオチ◆
男が、幼女の妄想だった、というオチです。
コミュ障はヤンデレの幼女が作った設定。
男が幼女のことを忘れていたのは、
幼女が男との日々を、出会いから再現したかったから。
このssのテーマは、男が幼女の妄想であったように、
どこかに必ず、自分を必要としてくれる人がいるということです。
死んだらどうなるかとか、神様の真実だとか、
妄想とか妄想駆除だとかは、全て一つの事柄に収束する予定でした。
本当に完結できなくてすみません。
次は短くてエロいの書きます。
えええーそりゃないぜ
>次はエロいの
ってあるからそれに期待するか…
おまww
どうしてそこで諦めたんだ!
まあ無理すんな
次立てる時はここにurl貼ればチェックするよ
このSSまとめへのコメント
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