南条光「黒い光」 (34)



……
-公園


ワー ワー キャー


光「あ! ……おーい!」

タッタッタ……


男児1「おおぉおん! おおん!」

男児2「てめーっ! 人間らしい心はもうなくしちまったのかよーっ!!」

女児「ウルトラ水流!」ジャバーッ

男児1「つめたっ!?」


光「や! みんな! おねーさんも仲間に入れてくれないか?」


男児1「……」

男児2「おねー……さん?」

光「ハッハッハ!」


光「ひ か る お ね ー さ ん と、いっしょにあそぼうな!!」グリグリ

男児2「あい」グリグリ




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男児1「じゃあ今日は光……おねーちゃんが怪獣ね」

光「えっ?」

男児2「星人でもいいよ」

光「う、うーん……アタシ、できればヒーローがいいなぁ」

男児1「えー? また?」

女児「あのねぇ、光おねーさんはアイドルなの。だから、イメージってものがだいじなの」

男児1「あぁ、ヒーローアイドルだから」

男児2「たとえごっこ遊びでも悪役はできないんだ。さすがプロだね」

光「あ、いや、べつにそーいうんじゃ」


男児1「でもアイドルってわりにテレビとかで見なくない?」

光「ぐはぁっ!!」


女児「おしゃれの本とかにものらないね」

光「ぐふっ」

男児2「にーちゃんが持ってた漫画雑誌で、水着の写真はのってた」

男児1(おいそれどーした)

男児2(切り取ってベッドの下に隠してあるぜ。あとで見せてやるよ)

男児1(へへ……さすが!)

女児「ちょっと」



光「ア、アタシの話はいいんだ!! それより、ごっこ遊びならみんなヒーローでもできるよ!」

男児1「? でも敵がいないとさ」

光「ヒーロー同士で戦えばいいんだ! お互いに敵だと誤解して……」

男児2「あー、あと操られてたり」

女児「本当の敵をあざむくために、戦うふりをしてたり」

光「ね! ありでしょ?」

男児1「……」

男児2「うーん……」

光「……あれ?」


男児1「正直もうマンネリなんだよね、それ」

光「えっ」

男児2「オールスター映画とかだいたいそれじゃん」

男児1「VS、って言っときながら、結局最後は強力して敵を倒すだけだし」

女児「もやし何回敵になるのって」

男児1「うっうー!」

男児2「そっちじゃなくて」


光「……わ、わかった」

光「アタシが怪獣をやるよ!!」



光「がおー! がおー!!」


男児1「早くー! 早く来てくれぇー!!」

男児2「なにしてるんだ! 戦え!!」

光「がおー!!」ズシンズシン


女児「ぎゃおぎゃお!」ピョコピョコ

光「がおー!」クルッ


ドガッ

女児「ぎゃぉ……」バタリ


男児1「ぁ…………ぁあ……!」

男児2「あんな小さな怪獣でさえ命を投げ出して戦ってくれたんだぞ! お前は恥ずかしいと思わんのか!!」

男児1「…………ぼ、ぼくが間違っていた……! くそぉおおおお!!!!!」ダッ


男児1「くらぇえええええ!!!」グオッ

光「えっ?」



ズブリ


光「っ!?!?!?!」ビクゥッ


女児「あっ」

男児2「あ」

男児1「……あ」


光「ぁっ…ぁ…………ぐ、ぁ……ぉ、ぉし……おしひ……こわれぅ」ガクガク

男児1「ご、ごめん……光、……ねーちゃん」

男児2「おまえ、さすがにカンチョーはないだろ」

男児1「まさかここまできれいに決まるとは……」

光「ぁぐっ……ひっぐ」ペタン

女児「よしよし……いたいのいたいのー」サスサス

光「ぃいいっさわらないでいたいぃ!」

男児1「ごめんなさい」

男児2「ほんとごめん」

光「うぅ…………ぅうう……」ベソベソ

男児1(や、やば)

男児2(あぁ……光ねーちゃんの泣き顔やばいな。ぞくぞくする)

男児1(や、そうじゃなくて)


光「もぅ…………もう敵役なんてやるもんかぁーーーー!! うわぁああああん!!!」ダッ


女児「あっ光おねーさーん!!」





……
-事務所


光「うぅ……泣いちゃうなんて……かっこわるい。ヒーロー失格だ……」トボトボ


ちひろ「? あら、光ちゃん。まだレッスンの時間には早いんじゃない?」

光「あ、うん。おはよう、ちひろさん。……プロデューサーさんは?」

ちひろ「えっと……奥の、会議室じゃないかしら」

光「ありがとう。それじゃ……」

スタスタ……


ちひろ「……」




……
-会議室


P「はい、えぇそれはもう。カワイイ子を用意してますよ。必ずご満足いただけるかと」


光(……電話してる。……静かにしないと)ソローリ


P「え……光、ですか?」

光(? アタシ??)

P「すみません。あれには、そういうコトは……いえ、できないんです。本当に申し訳……いえ! そういうわけでは!! 元気で小さい子、いますから! それでどうにか……」

光(?? なんの話だろう……)

P「はい。では……今後ともうちのアイドルをよろしくお願いします。はい……失礼します」

ピッ

P「ふぅ……」

光「なんの話してたの」

P「ひ、光!? お前……いつからそこに」

光「今さっき。なぁ、今の電話」

P「仕事だよ、仕事。営業の」

光「……アタシの名前」

P「あぁ、うちの光をよろしくって」

光「…………また、断ったの?」

P「いや、そういうわけじゃ」

光「なんでアタシに仕事をくれないんだ! まだレッスンが足りないのか!? 他の子たちはもうっ」

P「光……たくさん仕事があれば、いいってものじゃないんだ。しっかり一歩一歩進んで行かないと、」

光「っ…………うそつきっ!!」ダッ


P「光!? おい、光!!」





……
-事務所


光「はぁ……アタシ、なんであんな…………うぅ、あとで謝らないと」トボトボ

ちひろ「あ、光ちゃん。ここにいたのね」

光「ちひろさん。どうしたの?」

ちひろ「実は、お仕事のオファーがあったの」

光「え……? アタシに……?」

ちひろ「そうよ。企画側からのご指名でね。お芝居の悪役なんだけど」

光「あ、悪役……」

ちひろ「……嫌かしら?」

光「…………」


光「いえ、やります! やらせてください!!」

ちひろ「……ふふっ、光ちゃんならきっとそう言うと思ってたわ。先方には、私から連絡しておくわね」

光「ありがとう! ちひろさん!! 悪役か……よーしっ」




……
-会議室


P「なんで勝手なことをしたんですか!!」

ちひろ「あなたがいけないんですよ」

P「なんだって……」

ちひろ「光ちゃんにちゃんとお仕事をとってきてあげないから。だからアシスタントの私が」

P「っ……しかし、」

ちひろ「なにを怖がっているんですか?」

P「……」

ちひろ「この間のグラビアで『南条光にこんな格好させるな』って、批判が殺到したことですか? それとも、ヒーロー路線でのアピールを続けていたら、ファンから非人間的な人格だと認定されてしまったことですか?」

P「……それは」

ちひろ「ちょっとでもセクシーな格好をすると、猛反発をくらう。ヒーロー……英雄とか正義の味方という要素に過剰反応して、敵や災厄を求めているだとか、自己犠牲の都合のいい子供だとか、勝手なイメージを押し付けられる。それが嫌なんですか?」

ちひろ「でもそれも、あなたの勝手な押しつけですよ。光ちゃんに、光ちゃんのやりたいように、のびのびやらせてみたらいいじゃないですか」

P「……違う、違うんです」

ちひろ「権利関係ですか? そういえば以前取材でとった写真も、背景のおもちゃが問題になって差し替えましたね。でもそれは、むしろヒーローアイドルとしてコラボしていくとか」

P「違うんですよ!! あなただって……分かっているでしょうに!! この仕事を受ける条件はっ」

ちひろ「…………業界にいれば、みんなやっていることですよ」

P「……」

ちひろ「あの子だけ特別扱いなんて、それこそ卑怯です。なら……スカウトなんてしなければよかったでしょう?」

P「……あぁ、その通りだ。……とにかく、今回の話は俺から断っておきます。…………彼女に関して、余計なことはしないで下さい」

ちひろ「はぁ、業界トップクラスの大物に、今更断れるわけないじゃないですか。事務所自体危うくなりますよ。あなたの首だけでは足りないような損失が」

P「この話はここまでです。失礼します」

スタスタ……


ちひろ「…………」




……
-光の家、自室


光「フンフンフフーンフンフフーン、フンフンフフーンギンガマー」


ガチャッ

南条母「光ーちょっと。って、あんた、またおもちゃ増えてない?」

光「あぁ! それって覇王ゲキアツダイオー?」

南条母「それもだし、このサンダーバード2号も」

光「最近リメイクが作られたんだ! 人物は人形じゃなくてCGだけど、セットを使った撮影も健在で」

南条母「早速お年玉使いこんだのね……まぁ、何に使うのかは、あなたの自由だけど」

光「ちゃんと貯金した上で使ってるから大丈夫!」

南条母「これじゃあお友達も呼べなくない?」

光「そ、……そんなことない! 特撮を……趣味を誰にも恥じる必要なんてない!」

南条母「そぉ? 小学生の頃遊びに来てた男の子たちも来なくなっちゃったし」

光「それはっ、もう中学生だから……男女であんまり遊ばないだけだし」

南条母「でも女の子とおしゃれの話や恋バナできるのあんた」

光「うぐっ……」

南条母「恋愛映画見て泣いたり、ゲーセンでプリクラとってわいわいしたりできるの?」

光「も、もーっ! できるし! できるしそんな型にはまったJC像を押し付けないで!」

南条母「はぁ……アイドルになるって言うから、少しは女の子らしくなるのかと思ったのに」

光「アタシはアタシだからいいのーっ! それより、なにか用だったんじゃないの?」

南条母「あぁ! 電話よ。プロデューサーさんから」ポイッ

光「へ?」



光「は、早く言ってよもぉーっ!! はい! こちら南条!」

光「え……? それは、……うん」

光「な、なんで!? だってアタシが指名されてっ」

光「っ…………なんで……なんでなの!? プロデューサーのっ」


光「バカぁああああああっ!!!」ダッ




南条母「光? どこ行くの? パトロールならついでに買い物」

光「お母さんだって理央様~とかゼット様~とか言って特撮好きのくせに!! ヒーローグッズを集めるのはお子ちゃま!? イケメン悪役のファンになるのが大人の女だって言うの!?」

南条母「なにいきなり?」

光「立派な悪役になってやるちっくしょぉおおおおおお!!」ダッ

南条母「???」




……
-公園


光「…………」


光「勢い飛び出して来ちゃったけど……」

光「はぁ……どうしよ。……別に電話だったんだから、家を飛び出る必要なんてなかったのに」

光「……でも、……せっかくオファーが来た仕事を……断りたいだなんて」

光「…………プロデューサーの、ばか……」グスッ


??「そこのお嬢さん」

光「……?」キョロキョロ

光「アタシ?」

??「ウィ。せっかくの愛らしい顔が台無しだ。さぁ、このハンカチで、涙をぬぐいたまえ」

光「……ありがと、おじさん」

??「いやいや、礼には及ばないよ。……しかし、見れば芯の強そうな、いい目をしている……」ズイッ

光「え? そ、そう?」

??「……こんなに綺麗に透き通った君の眼差しを曇らすとは……何があったか、おじさんに、話してみないかい?」

光「……でも」

??「遠慮はいらないよ。あぁ、怪しい者ではないから安心したまえ。私は、こういう者だ」スッ

光「! これはっ……おじさんは……!!」



……




……
-事務所


ちひろ「……プロデューサーさん」

P「はい、なんですか」

ちひろ「あれから、光ちゃんと連絡、とりましたか?」

P「いえ。けど大丈夫ですよ」

ちひろ「そんな無責任な……いったいなにを考えて」


TV『……さて、ここで。本日は皆さまに、この961プロからデビューする新たなアイドルをご紹介いたしましょう。……その名も! 漆黒の光! イービルヒーロー・ナンジョルノ!!』

ナンジョルノ『私は全ての次元のアイドルを征服する!! 圧倒的な力で!!!』


ちひろ「」ブフーッ

P「……」


ナンジョルノ『私を信じろ!! 私こそが、真のヒーロー……真のアイドルだっ!!!』

『おぉおーっ』

『覇王! 覇王!』

『覇王! 覇王!』




ちひろ「……なんなんですか、これ」

P「……」

ちひろ「黒いヒーロー衣装……それも、けっこう露出の激しい……」

P「かっこいいですね。さすが961プロ。ダークヒーロー路線をうまくまとめてきましたよ」

ちひろ「どういうことですか。……知っていたんですか、まさか……あなたが」

P「961プロの力があれば、業界の大物だって手は出せないでしょう」

ちひろ「……我が社のアイドルを、勝手に……相当の処罰は覚悟して下さいね」

P「ご自由に。それまで、仕事は続けさせてもらいますよ。南条だけが担当ってわけじゃないんで。それじゃ」


ちひろ「…………」


『覇王! 覇王! 覇王!』

ナンジョルノ『フハハハハハハ!! ハハハハハハハハハハ!!!』





……


黒井「お疲れ様だ。光ちゃん」

光「ふぅ……ほんとに疲れた……ドリンク」

黒井「若いうちから栄養ドリンクに頼るのは関心しないな。セレブな私が、今夜は栄養たっぷりの料理をご馳走してやろう」

光「わーい! けど、いいの? アタシまだ……」

黒井「ウィ。光ちゃんはよくやった。今日の再デビューの受けはバッチリだっただろう? みんな光ちゃんを待っていたんだよ。強くて、かっこいい、本当の光ちゃんを」

光「ほんとの……アタシ」

黒井「歌もダンスも完璧だった。君は天才だ。そこにダークヒーローとしてのミステリアスさが加わることで、光と闇が合わさり最強に見える……否! 最強なのだ。間違いなくな」

光「……最強……アタシが…………」

黒井「ウィ。さぁ、これからの快進撃に向け、前祝いだ。パーっとやろう。ハハハハハハ!」

光「……うんっ!」





ナンジョルノ「ぐぁあっ!! ぐ……まだ、…………まだだ!!」

「目を覚ましなさい! アンタ、騙されてるのよ!!」

ナンジョルノ「黙れぇ!! 私は負けない!! 誰にも…………かつての友達にだって!!」

「っ!!」

ナンジョルノ「うぉおおおおおっ!!!」

「きゃぁああああっ!?」


ナンジョルノ「……はぁ、は……ぁ…………私は、勝つ……」

ナンジョルノ「たとえ…………どんなにボロボロになっても……」

ナンジョルノ「私はっ……!!」




……


黒井「光ちゃん、今日の演技も素晴らしかったよ。さすがだ。私の睨んだ通り、君の才能は本物だよ」

光「は、はは……ありがと」

黒井「? どうした? もじもじして」

光「い、いやぁ、このかっこ……ちょっと、破けすぎじゃない? 衣装……」

黒井「ノン! そのぐらいでいいのだよ。ヒーローには、ピンチがつきもの。ダメージ表現は見る者の様々なモノを盛り上げてくれる」

光「……アタシのお色気シーン……批判もあるって聞いたんだけど」

黒井「ハンッ! 言いたいやつには言わせておけ。所詮は弱者の戯言(たわごと)だ。それよりも、喜んでくれるファンの声をこそ聞くがいい。絶賛する声の方が、はるかに多く届いているぞ」

光「そ、そっか。なら、いーんだけど」

黒井「光ちゃんは何も心配しなくていい。私の言う通りにしていれば、全てうまくいく。全てな……フフ、フハハハハハ!!」




……
-961プロ事務所


光「おはようございまーすっ! 今日の予定はっと……」

ドンッ

??「うおっ危ねぇな!」

光「ご、ごめんなさい! えっと……」

冬馬「あぁ、最近移籍してきたやつか。俺は冬馬、天ヶ瀬冬馬。ジュピターのリーダーやってる」

光「はい! よろしくお願いします!」

冬馬「……なんだかテレビと印象が違うな。まぁいい。くれぐれも俺たちの邪魔は」

光「ああーーー!!!」

冬馬「な、なんだよ」

光「それ! SIC!! それにS・H・Fも!」

冬馬「あぁ、特撮のフィギュアな。フィギュア部屋に運ぶとこだ」

光「フィギュア部屋!?」

冬馬「家に置ききれないコレクションを、おっさんが特別に……」

光「わぁー」キラキラ

冬馬「……今、暇か」

光「え?」

冬馬「これ運ぶの手伝え。ほら」ポイッ

光「わわっ、あ、ちょ、ちょっと!? まってよ!」タタタッ




冬馬「ほら、ここだ」

光「わー! わー!! すごーい!!」

冬馬「ったく、ほんとにテレビではキャラ作ってんだな」

光「あ! 女の子のフィギュアもある!」

冬馬「お、おい、そっちはいいだろ。おいひっくり返すなスカートの中見るな」

光「うわぁ……すごい、服が脱げる……えっちだ」

冬馬「や、やめろって!!」

光「あ、これ……レイナの……」

冬馬「……」


光「あ、アタシだ! こ、これも、脱げる、のか??」

冬馬「やめろ」




光「ここの造形はさ……」

冬馬「でもそれだと、こっちが映えないだろ? だから……」

光「そっか! そこまで考えられてるんだ……」

冬馬「つーかお前、仕事はいいのかよ。そろそろヤバいんじゃねーのか?」

光「え? あっ! ほんとだ!! じゃ、じゃあアタシ行くから! またね冬馬さん!」

冬馬「お、おう。じゃあな。……また遊びに来いよ」

光「うんっ! ありがとっ!!」

タッタッタッタ……


冬馬「……ったく。おっさんもまた妙なやつを……」




……

ガチャッ


冬馬「おっさん、入るぜ」

黒井「ん? 冬馬か。なんの用だ」

冬馬「おっさんがスカウトしてきた新顔と会った」

黒井「そうか。それが、どうかしたのか」

冬馬「……正直に言う。…………うちのやり方に、向いてるとは思えない」

黒井「フン、何を言うかと思えば。私の方針に口出しする気か?」

冬馬「いや……おっさんは、自分の足でアイドルを見つけ、自分でいろんなとこの大物に営業かけまくって、あちこちに繋がりを作って……その眼力や、やり方に、文句はねぇよ」

黒井「……ならなんだ?」

冬馬「あいつ……寂しそうだった」

黒井「……」

冬馬「俺のフィギュア部屋に来ておおはしゃぎしてさ、以前の仲間のフィギュア見て、しゅんとしたり、……。王者は孤高じゃなくちゃならない。それは分かるけどよ、あいつには、まだ……」

黒井「冬馬…………お前はまだまだ甘いな」

冬馬「あぁ、そうかもな……」

黒井「ヒーローとは、孤独なものだ。それは王者(ヒーロー)にかせられた宿命とも言える」

冬馬「けどよ、ヒーローは助け合いだ、って言葉もあるぜ」

黒井「ノン。分かっていないな。……助け合いが成立するのは、独りで戦うことのできる者同士のみ、だ」

黒井「ヒーローの中には、複数が共に戦うと、互いをかばい合ってかえって弱くなってしまう者もいる」

黒井「光ちゃんの所属していた事務所は、その規模こそ我が961に引けをとらず、こちら以上に多様な事業に手を伸ばしてはいるが……それは逆に、一人一人にまで細やかなカバーができていない原因にもなっている」

冬馬「規模が……でかすぎる、ってことか?」

黒井「ウィ。そして数が多すぎる。数撃ちゃ当たるとでも思っているのだろうが……最初から才能のある者を見極めれば済むだけのこと! 所属するアイドルを無暗や増やせば、かえって個々人にかけられるコストは制限されてくる。かけられる、金も、時間も」

冬馬「あぁ、うちは少数精鋭だからな。そこは真逆なのか」

黒井「実際、光ちゃんは思うように仕事をとれず、才能を持て余していた。ならば私が利用し最大限にその才能を活かしてやるのが、あの子の為でもあるだろう」

冬馬「……最大限活かすために、今のままのメンタルじゃダメだと、俺は思ってる」

黒井「フン……なるほど。わざわざ報告ご苦労だった。……それよりお前は、自分のユニットのことだけを考えていろ。また大きな仕事が近々入るぞ」

冬馬「マジかよ……ついこないだライブも映画も一段落ついたとこだってのに……」

黒井「王者たる者には、王者故の責任がある。その務めを果たせ。私も会食の時間だ。では失礼する、アデュー」


冬馬「……確かに、他人の心配してる場合じゃーねぇよな。俺も。よしっ!」




……


飛鳥「……行くのかい」

麗奈「当然よ。今度こそあのバカの目、覚まさせてやるんだから」

飛鳥「今の光は、961プロの万全のバックアップを受けて、あらゆるライブバトル、フェスにて連戦連勝。不敗の伝説を築いている……まるで…………本物の英雄(ヒーロー)のように」

麗奈「ハンッ! なにがヒーローよ。正義の味方(ヒーロー)なんて、このレイナサマがメッタメタのギッタギタにしてやるわ! そして一人でなんでもできる気になってるバカに、思い出させてあげる……! 私達のことをッ!」

麗奈「連勝記録も今日までよ! 覚悟しなさい光!! アーッハッハッハッハッハっ……げほっ!」





光「……」

黒井「今日勝てば、またランクアップだ」

光「勝てば、じゃない。必ず勝つよ」

黒井「ウィ。いい覚悟だ。最早私から言うことはなにもない。本物の王者(ヒーロー)の力、見せつけてくるがいい。……そしてかつての仲間たちを安心させてやれ」

光「うん……!」


光(見ててよ…………プロデューサーさん、ちひろさん、レイナ、みんな……アタシの全てを)

光(アタシは、アタシを信じてる。だから、アタシが正義だ。そして、真実の王者だ)


光「それを…………証明するっ!!!」



黒井「……今、黒い太陽が昇る。黒い光が…………全てを照らすだろう。その時こそっ」


黒井「我が理想の勝利だ……!!!」

黒井「ハーハッハッハッハッハ!! ハハハハハハハハハハハ!!!!」





……


ちひろ「……今日のランクアップオーディション。麗奈ちゃんと、……光ちゃんが出るそうです」

P「そうですか」

ちひろ「二人が、本気で争うことになるなんて…………プロデューサーさんが、」


ちひろ「プロデューサーさんが、バンジーや珍獣探索の仕事を嫌がったばっかりに!!」

P「嫌ですよ」


P「そういうのは幸子とかユッコとかウサミンに任せますよ。光には芸人みたいなことさせたくないんです」

ちひろ「今どきどんなアイドルだって、ある程度バラエティのお仕事ぐらいやるもんです」

P「でも961プロは、アイドルの高貴で孤高なイメージを大事にしますから」

ちひろ「……今は身近なアイドルが流行りなのに」

P「確かに、親しみやすいヒーローでは、なくなりました。……けれど、光は今……確かに一つのヒーロー像を手に入れています」

ちひろ「ここでそうさせてあげられなかったのは」

P「えぇ、一重に俺の力不足です。分かってますよ」

P「それでも、……だからこそ、俺は光を応援しています。これで良かったのかは分からない。けど…………」






麗奈「……残ったのはアタシ達だけみたいね」

光「…………私は、負けない」

麗奈「いいわ。……アンタが本物のヒーローになるって言うなら、アタシも見せてやるわよ。……本物の悪役(ヒール)ってやつを!!」

光「行くぞっ……!」

麗奈「来なさいっ!!」


光「うぉおおおおおおお!!!」
麗奈「でりゃあああああああッ!!」



光(レイナ……超えていくよ。アタシは、全てを……!)


光(そしてトップに立って、認めさせるんだ)

光(アタシの信じる、ヒーロー)


光(最強の…………アタシ自身をっ!!!)






完!!




続けてどうぞ

イントロが終わったか、本編頼む

961では、それ一本で行けるなら
光のためなのかもしれんね

(ガチ犯罪やったり敵対してる人間の頭の上にステージのスポットライト落とすような人間が経営する所で上手くやっていける訳がない。とっくにあまとうが証明してるのに。)

この黒ちゃんはどう見てもゲーム版の黒ちゃんだから大丈夫だろう
ウソはつくけど熱心な人だ


二次創作での扱いが酷い点はちひろと黒ちゃん似てるな

や、黒ちゃんはむしろ二次創作で好感度上がってるだろ。
アニマスは論外としても、ゲーム版だって有能だし熱心だけど色々問題の多い人だったと思うし。
方針は違えど志の高いライバル、とか、なんか愉快なおっさん、とかの人物像は、二次創作発祥じゃないかね。

まあストーリーを作る上で「悪役」が必要となる場合もあるから、その際には容赦なく悪党にされてたりもするけど。

ゲーム版の黒ちゃんもジュピターに逃げられてるけど

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