鶴見留美は日陰で過ごしたい (209)

※注意点

・ルミルミものです
・モノローグ多いです
・想像と自己解釈で書いてる部分が多いので、他の人と解釈が違う部分もあるかと思います

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───またか。それが見えた瞬間、おもわず溜め息が漏れた。

登校してから教室でまず最初にするのは、その必要に駆られ、自衛のためにせざるを得なくなった確認の儀式。

くじ引きという公平なようで不平等なシステムによって自動的に決定された席につくと、鞄を置き屈み込む。

目で確認するまで決して手を入れないのが自然と習慣になった。長かった小学生の間のほんの一時ではあったが、執拗に続いた嫌がらせはこんなところにも私に寂しい影を落とす。

でも、ある出来事をきっかけにしてそれは徐々に減っていった。

だからといって簡単に仲良く溶け込むこともできなかったわけだけど、惨めな思いをしなくなって気が楽になったのも確かだった。

だからあの高校生達とあの出来事を、私は今もずっと忘れられずにいる。特に、印象的だったあの人のことは。

クリスマスイベントのお手伝いに参加して偶然再開できたその高校生達はとても優しくて、小学生の私には立派な大人に見えた。

やっぱりあのとき私達に向けた悪意は紛い物だ。私を救おうとやってくれたことなんだ。聞いてはいないけどそう確信できた私は、漠然と抱いていた憧れをさらに強いものにすることになった。

改めて机の中に入ったそれをうんざりした気持ちで眺める。幻覚でも見間違いでもなかった。

さすがに見つけてしまった以上このまま無視するわけにもいかず、そっと隠れるように開けて中を見ると、私を呼び出す内容の文章が男の子の字で書かれていた。

まぁわかってたけど、やっぱりねって感じ。

差出人は見覚えのある名前で、さらに気分が重く沈んでいくのがわかった。

話したことはほとんどないはずだけど、確か学年でそれなりにモテる部類に入る割と目立つ男子だったはずだ。

はぁ。面倒なことにならなきゃいいけど。

そんなことを思ってはみたけどもう慣れたもので、呼び出し時間である昼休みまでにあった午前中の授業は普段通り集中して受けることができた。



昼休みになるといつものように一人そそくさと教室を抜け出し、敷地内の隅にある木陰のベンチに向かった。

大体いつもこうして、あまり人の来ないお気に入りの場所で静かな昼食を済ませている。別に教室でそうしたっていいんだけど騒がしいのは苦手だし、何より微妙に気を遣われるのが嫌だ。

独りであることはさほど苦にならないのに、周りの女子は、大抵の教師は、私以外のほぼ全てはそれを善しとしない。

今の私は昔と違って嫌われてたり無視されてたりするわけでもないから、一人でいるとみんながその輪に加えようとしてくれる。

私なんかには有り難い話でそれも立派な優しさだと感じてはいるものの、正直ありがた迷惑でもある。

こんな相反する思いを抱えているから、唯一気楽に話せる友達、友達……なのかな。私にはよくわからない。その、クラスメイトの子とたまに一緒に食べることはあるけど、半分以上は一人での昼食を選んでいた。

こっそり持ち出した手紙を開き、お弁当を食べながら再度眺める。

TwitterだのLINEだのといったツールが蔓延る現代で、こんな風に手紙で呼び出されたりするのはおそらく私ぐらいなんじゃないかと思う。もちろん私もスマホは両親に買い与えられてはいるんだけど。

これには二つの理由があった。

まず、私はメールやLINEの類のものをあまり好まず、限られた人にしか番号やアドレスを伝えていない。教えた数少ない友人……知人?にも余程のことがない限り教えないでと言ってある。

それともう一つ、これは私の過去の行動が原因だ。中学生の頃私のメールアドレスをどこからか聞き出して、いきなりメールで告白してきた人がいた。それには返事すらしなかった。そして翌日、その人に教室で面と向かってこう告げた。

「そういうのは直接言わなきゃ伝わんないよ。そんなので伝えられても私は返事しないから」

まだ若いけど若気の至りだ。衆人環視の中だったからその話は妙な形で出回り、高校にまでついてきていた。私は直接面と向かっての告白以外、絶対に受け入れないと。

というわけで、高校でもこうしてお呼び出しの手紙を頂くわけです。

「はぁ……」

また力のない溜め息が漏れた。慣れたこととはいえ、告白を断るのには私も気力を使う。他人の好意を無碍にしてしまうというのは忍びないものだ。

初夏の暖かく穏やかな木漏れ日を浴びながらの昼食を終えると、呼び出された場所に向かうことにした。

その足取りは重かった。


* * *


私は憧れを現実にするため、小学校から中学、高校と一ランク上の学校を目指し勉学に励んだ。受験競争に勝利するごとに小学校の同級生は減っていき、ここ総武高校に入学してからはほぼいなくなっていた。

いたとしても小学校時代にほとんど面識のない人で、それはつまり、あの頃の私を知る人間がいないという意味でもあった。

中学生になった時点で、あの頃のような無責任で無機質で無意味な悪意に晒されることは完全になくなった。

他の人がどうなのかは知らないが、少なくとも私は進学先が変わった時点で人間関係は途切れ、リセットされた。

私も進学してからはスクールカーストの中でそれなりに溶け込み、大過なく生活を送れるだけの社交性を身に付けた。

かといって振り撒けるだけの愛想も愛嬌もあいにく持ち合わせていなかったので、たまに変な目で見られたりちょっと浮いてたりすることもあったけど、別に惨めじゃなかったから気楽なものだった。

なくなった嫌がらせの変わりに増えたのは、男子からの告白だった。中学二年の春が初めてだったかな。

こんなに愛想がなくて貧相な体つきの子のどこがいいのか私にはわからない。もっと媚びているような愛嬌たっぷりの子なら他にいくらでもいるでしょうに。

そう思いながらも、私は自らの美しさを自覚してもいた。

可愛いと言われることは決して嫌ではないし、だからというわけではないが、肌や髪なんかにはそれなりに気を使っている。あとは体つきに関する地道な努力も、一応……。無駄な努力なんてないんだから。頑張れ留美。

けど、私は当然のように男子からの告白を断り続けてきた。そしてきっと、これからも暫くそれは続くと思う。

だって同年代の男子なんか、全員子供にしか見えないんだもん。私はもっと年上の、私とは違う世界を持っている、目の…………。

「鶴見、ありがとう。来てくれて」

通用門へ続く道を通り人気のない校舎の陰に着くと、壁に寄りかかり佇んでいた件の呼び出し主が私に声をかけた。

なるほど。背も高いし、丹精な顔立ちは優しさも兼ね備えていそうだ。これならモテるというのも頷ける。

でも残念、私は同年代の男子に興味はないの。静かに首だけを降り、そんなのはいいから続きをという意思を目で伝えた。

「……あの、その、えー……。悪い、柄にもなく緊張してて……」

言うと、彼は照れるように鼻を掻いた。

確かに緊張するほど繊細には見えない出で立ちだけど、私はあなたのことををよく知らないの。

言葉を発することなく彼の様子を見守り、ただ待つ。特に不機嫌な顔をしてはいないはずだけど、せめてこんなときには薄く微笑んだりでもしてあげられたらいいのに。

さあっと爽やかな風が通り抜け、私の髪を揺らし肌を撫でていった。

「…………俺、お前のことが好きだ。よかったら俺と付き合ってくれ」

意を決したらしい彼から、予想していた通りの言葉が耳に届く。ほとんど面識のない同級生に何故お前呼ばわりされるのかはわからないが、驚きは特にない。これまで何度も繰り返してきたことだ。

だから、私も同じことを繰り返すだけ。

「ごめんなさい」

言いながら、腰を曲げ頭を深く下げる。余計な言葉は一切付けずに拒絶の意思だけを伝え、そのままの姿勢で次を待った。

「……そうか、駄目か。鶴見、頭を上げてくれ」

告白を断られた彼は眉をハの字に曲げて情けない顔だったけど、どこかスッキリしていた。

いつもそう。よく知りもしない私のことを大したきっかけもなく好きになって、ぶつけてきて、断られて、簡単に諦めてしまう。私には理解できない。

そんなの、本物の気持ちなわけない。本物の気持ちはそんなことで生まれたりしないし、そんなに簡単に捨てられるものじゃない。

私はそう思う。

「あの、聞いてもいいか?」

「……なに?」

私が無言でいるとそのまま気まずそうに去っていくのが慣例だったけど、今日の彼はまだそこに残っていた。

「俺の、どこが不満なんだ?」

呆れるほど意味のわからない質問だけど、一応律儀に答える。

「どこも何も……。私、あなたのことよく知らない」

「なら友達から……」

「ごめんなさい」

間、髪を入れずまた頭を下げる。

「……わかったよ。鶴見ってさ、誰に告られても断ってるよな」

「うん。だって私、告白されて誰かと付き合おうなんて思ってないから。だからあなたの何が悪いってわけでもないよ。誰でも断る」

「なんだよ、そうだったのか……。お前何度も断ってるらしいのに、なんでそれ広まってないんだろうな」

「ああ、それは私があんまり言わないでって言ってるからかも。広まってあいつ調子乗ってるとか思われたら嫌だし……私、目立ちたくないの」

そう。私はこの学校社会で目立つことなく、静かに日陰で過ごしたいだけなんだから、放っておいて。

「……そっか。最後、もう一つだけ教えてくれるか?」 

「……うん」

聞かれて困るようなことはさほど多くない。最後だというなら質問に答えるぐらい構わないだろう。

「鶴見さ、告白されて付き合う気はないって言ったけど、それって好きな奴がいるってこと?」

私の好きな人。高校生の頃のままの、私の中で時間が止まったあの人の顔が脳裏に浮かんできて、とくんと胸が高鳴った。

そうなのかな。でも本当のところはよくわかんないんだよね。あれからもう五年ぐらい会ってないんだし、私がいくら覚えてても向こうが覚えてくれてるはずないし。

「……好きな人、かぁ。…………んー、よくわかんないけど、いる、のかな?」

あれ、疑問系になっちゃった。

「……それってさ、同級生?」

「ううん」

「年上?年下?」

「……年上」

「俺の知ってる人?」

「知ってるはずない。この学校にはいないし」

最後の質問だったはずなのにいつまで聞いてるのよ。答える私も私だけど。

「……うん。ありがとう、鶴見」

「あ、うん。どういたしまして。……私、もう行くね」

そろそろお昼休みも終わりそうだ。さっさと戻ろう。

「あ、鶴見」

振り向いて戻ろうとすると、また声をかけられたので足だけを止める。

「さっきお前疑問系だったけどさ、そうじゃなくていいと思う」

「なんの話?」

また振り向いて顔を合わせ、首を傾げる。

「鶴見の好きな人の話。悔しいけどさ、きっとお前その人のこと好きなんだと思うよ」

「な、なんでそんなことがあなたにわかるの?」

「……そりゃわかるよ。だって俺、お前のそんな顔見たことないからな」

言葉を失った。

私は今、どんな顔をしているんだろう。

「……俺、出直してくるよ。今になって言うのはカッコ悪いんだけど、ずっと前からお前のこと見てたんだぜ」

もう彼の言葉は耳に届かなかった。

思いがけない他人からの言葉で自覚させられ、改めて想いを胸に問い掛ける。

そうか、私はまたあの人に会いたいんだ。あのときの私はただの小学生だった。

私は今、出会ったときのあの人と同じ学年になった。歳も16になった。法律上は結婚できる年だ。

私、あなたのおかげで今はそんなに悲しい思い、してないよ。

私、こんなに大きくなったよ。いっぱい成長したんだよ。

具体的に考えれば考えるほど、伝えたいことがたくさんある。

でもいくら会いたくても、あの人にとっての私はたまたま出会った小学生の一人に過ぎないし、そもそもどうやったら会えるのか、何をしているのかなんてわからない。

───そうだ、平塚先生なら知っているはずだ。

そこまで考えると、振り向いてお礼を言ってから足早に教室に戻った。やりたいことが見つかると、足取りは弾むように軽かった。

翌日、まさかの再会を果たすことになるなんてこの時は思いもしなかった。

☆☆☆

ここまで

時間かかった割に案外短かった
ぼちぼち更新してくので気長にお付き合いください
なおpixivでも同じもの投稿してます

またそのうち

乙です!

どうせ葉山か戸部か戸塚のことが好きなんだろ…

ゆきのんやガハマさんかもしれない

あーしさんに決まってるだろ、いい加減にしろ!

サキサキだろが!!

接点ほぼねぇだろwww

ク、クリスマス…?

ディケイドだろ

誰も材木座の名をあげないんだな

あのさ、なんでこういう話のヒロインは総じて貧乳なわけ?胸を大きくしてはいけないという決まりでもあるの?

大志一択なんだよなあ…

ルミルミは多分ゆきのんほどオッパイが悲惨なことにはならない

貧相は本人談だしまだわからんぞ

比べる対象がガハマさんやサキサキや平塚先生なんだよきっと

黒髪ロング美乳(巨乳)美少女最高じゃないか

お前だったのか

期待

ここのルミルミは知らんが原作ルミルミはおっぱいそこそこおっきくなるよ
吸いつきやすい綺麗なお椀型だよ

どうせ作者が雪ノ下みたいに成長しちゃった留美でイメージして書いちゃったんでしょ
留美好きなやつが求めるのはそういうのじゃないというのに…

知らんけどいろはぐらいでも貧乳って悩むんでないの?

>>39
(ヾノ・∀・`)ナイナイ

ルミルミは微乳で止まりそう

続きまだかね

>>41
美乳の間違いだろ!
ふざけるな!
出がらしのYノ下とはわけが違うんだよ!

必死に揉もうとして虚しくなるよな

性格や言動も雪乃意識して書いてたら普通に嫌だなあ

言葉遣い既に違うやん
ただ見た目は雪乃っぽいな
というかルミルミがそういうキャラだろ
林間学校で八幡がそんな想像してるし

まだなのかしら

誰も某美人教師の名字が変わっていないことに触れていない優しさ

え、入り婿?  ナイナ……ん、誰か来たようだ

>>48
お前はあの人を怒らせた

あけおめ
期待してますよ

待ってるからな
音沙汰なしなのが怖いけど

雪ノ下の劣化コピーみたいな留美を書こうとしてたのに突っ込み入ったからどうでもよくなった

なんで先もわからんのにそういうつまらんこと言うかね
冷やかすだけなら来るなよ

冷やかすために来てるんだから許してやれって

えー大丈夫ほんとに?
俺この人がいなくなると楽しみ減るんだけど

RPGの自演みたいなレスが飛び出してきたぞ…

この作者は平気で二ヶ月三ヶ月放置する人だから期待しないほうがいいよ。たいして話が進まないままあきてエタらせるから

>>57
お前消えろ

作者キターー(゚∀゚)ーー



───またか。目が覚めた瞬間、おもわずうんざりとした溜め息が漏れた。

うなされて飛び起きてしまったが、時計を見ればまだ朝の四時だ。掛け布団を払いのけ、水を飲むために気だるい体を動かし立ち上がった。

流しに置きっぱなしにしてあったコップに水道水を注ぎ、一息であおる。少しだけ気分も落ち着いたがまだ鼓動は早いままだ。寝巻きにしているシャツも汗で濡れており酷く気持ち悪い。着替えるか……。

もう何度目になるのだろう。あれからずっと、覚めることのない繰り返される悪夢に苛まれている。

夢の内容は抽象的というかとても漠然としていて、起きてしまえばいつも何がそんなにうなされるほど怖かったのかよくわからなくなる。覚えているのは、何かに追われ、逃げ、落ちそうになる何かを掴もうと手を伸ばすと、落ちているのは俺だった、という意外性もなければ面白くもない筋書きだけだ。いつもそこで目が覚める。

何に追われ、何が落ち、何故そうしようとしているのかは一向にわからない。だがこの汗の量と鼓動の早さが、懸命に目を逸らす俺に告げているのだ。

それは罪悪感だと。それが本当の後悔だと。

そんな悪夢を見せなくたってわかっているというのに、何故俺の夢は俺を苦しめようとするのか。

忘れさせないため?

馬鹿を言うな。あんなこと忘れられるはずがない。俺が数多繰り返してきた失敗の中で最も印象的なものの一つであるそれを忘れて過ごせるはずがない。事実、日常生活を送っていてもふとした瞬間に蘇り、痛みと罪悪感と後悔を与え音もなく去っていく。

いい加減にしてほしいものだが、あくまで俺の心という意思で制御できなくなる面倒な奴が勝手に見せている幻影なのでどうにもならない。

放っておいてくれ。俺はもう諦めたんだ。俺が求めていたものはやはりただの理想だった。絵に描いた餅に手が届くことはないように、俺が描くお伽噺もいいとこの都合のよい理想を他人に、彼女に求めてしまったことが間違いだった。

……違うか。そこじゃない。俺の犯した失敗の遠因となっているのはもっと前。

高校で俺は馴れ合いや欺瞞を否定し、ありもしないものを突き詰めることを選んだ。それにも関わらず彼女たちの優しさと強さによって三人の関係は保たれ、高校生活は平穏に終わらせることができた。

そこまではよかった。決して目に見える関係の変化はなくとも俺はそれで満足できていたのだ。何かを手にしたという実感はあったのだ。

そこで留めて陰で生きることを選んでおけば、こんな悪夢に苛まれることもなかったのに。


微睡んでいるうちに二度寝をしてしまい、スマホのアラームに起こされることになった。

今日は母校に登校しなければならない日だ。生徒としてではなく教育実習生という立場なので登校と呼ぶのが正しいのかわからないが、とにかくこれから三週間は総武高校へ通うことになる。

教育実習生として受け入れてもらうにあたり、何度か平塚先生や俺の時とは違う教頭なんかと打ち合わせを行っているので何年ぶりということはないのだが、朝から向かうのは久々と言ってもいい。

たった三週間ぽっちの研修であり、教師として正式に総武高校に赴任さえしなければこれから先も付き合っていくことになる人など平塚先生を除いてはいないだろう。それにもちろん俺の高校の時の知り合いがいるはずもないから、その辺りの人間関係の心配がさほどないのは俺にとってありがたい。

今は特に、以前にも増して他人に深く関わることを苦痛に感じる。にも関わらずこんな教育実習をすることになったのは、平塚先生の強い勧めがあったからである。

確か大学に入学して少し経ったあたりだったろうか。君は就職で苦労するかもしれないし取れるものは取っておいたらどうだと言われ、深く考えないまま教員免許に必要な課程も履修することを決めてしまった。

四年で楽をするため単位はできるだけ取っておく方針を固めていたのでそれは別に問題なかったのだが、教育実習が迫ると大いに悩んだ。

俺みたいなのがいるかもしれない教室で、三十人かそこらの高校生の前で授業?

何その拷問。そう考え教育実習から逃げようとする俺は平塚先生と以前こんな会話を交わしたことがある。

「案外教師にも向いているんじゃないかと思っているんだがね。君は痛みも苦労も知っているだろう?」

「はぁ。確かに人より余計な苦労とかはしてるんじゃないかって気はしますけど。俺はとてもそんな風には思えません」

「自分ではそういうものだよ。自らが教師に向いているなどという人間にまともな教師がいるはずないだろう」

「まぁそれもそうですね」

「教員免許を取るには教育実習は必須なんだし、まずは一度やってみたまえ。それに免許を取るからといって必ずしも教員になる必要はないんだ。なりたいと言うならうちで受け入れるよういつでも掛け合うがね」

結局、押し切られるような形で曖昧な肯定の返事をするに至り今へと繋がるわけだが、俺は教師に向いているとはとても思えなかった。

平塚先生には物凄くお世話になった。教師の鑑だと最大限の敬意を払っているし、歪んだ俺を導いてもくれたが、その後の俺のことに関しては過大評価だし見誤っているとしか思えない。

確かに俺は人以上にくだらないことで考えて考え抜いて余計な苦労をしてきた。思春期の高校生の悩みに共感できることもあるかもしれない。俺と同じように捻くれた奴等もいるだろうし、そんな奴等の抱える痛みも苦しみも経験してきたつもりだ。

だが、俺が知っているのはそれだけだ。それしか知らないのだ。俺はその先にあるものをまだ知らない。見つけることができなかった。

あの時のまま成長していない、前に進めなかった俺が教師として生徒に何を教えることができるというのか。

勉学だけであれば慣れの問題だろうし、そんな風に高校の教師を務めている人間もいるにはいると思うが、それではとても教師に向いているとは言えまい。やはり俺に教師など向いていようはずがない。

だが今さら断ると平塚先生に迷惑がかかる。それは俺としてもしたくないことだ。今はつつがなく教育実習を終えることだけを考え、無事終えても教員免許の申請はしないでおこう。


* * *


相変わらず慣れないスーツを着てぎこちなくネクタイを締めると、一人暮らしのアパートから総武高校に向かうことにした。少し早目に出すぎたかと思ったがそれは生徒としての時間感覚であり、教師はこのぐらいに出るのが丁度よいのかもしれない。

まだ人のまばらな通学路とも通勤路とも呼べない慣れた道を通り校門をくぐると、昔通った教室ではなく職員室へ足を向ける。

緊張しながら職員室の扉をノックし、ゆっくりと音を立てないように扉を開くと室内にいた教員達の目が一斉にこっちを向いた。

「失礼します。今日からここで教育実習をさせて頂く比企谷八幡です。短い間ですが、宜しくお願いします」

前もって用意しておいた簡単な挨拶を可能な限りハキハキと話し、腰を曲げて頭を下げる。

「おお、比企谷、きたか。こっちへ来てくれ」

俺の挨拶にさほど興味なさそうな教員達の中から、声とともに一つ手が挙がった。

頭を上げ平塚先生のもとに歩み寄るまでの短い間に、数名の教員とすれ違いざまに社交辞令じみた言葉を交わすことになった。わからないことがあったらなんでも聞いてとか、教育実習は大変だぞーとか、そんな感じの他愛もない一方的な助言だ。

教師達の顔ぶれは俺のいた頃とあまり変わっていないように見えた。文系理系国際教養科の違いで元々ほとんど知らない教師も多数いたのでその辺りはよくわからないが。

「おはようございます」

「ああ、おはよう。比企谷はそこを使ってくれ。もう少ししたら教頭と校長のところに行こうか」

平塚先生が指す隣の空席に座り、今日からの予定が事細かに記された資料を取り出し眺める。ビッシリと書かれた予定の詰まり具合に、もはや溜め息も出ない。

これから毎日放課後、俺が行う数回の授業の計画を作成し模擬授業を行うというものがメインの予定となっている。その他にも板書計画やら授業見学後のレポート提出やら、やることは盛り沢山だ。教員免許とかどうでもいいと思うと今さらながら物凄くウンザリしてきた。

「緊張してるか?」

「そりゃしてますよ。人前で授業をやるとか向いてません、俺は」

「それはじきに慣れるさ。もっとも慣れた頃には教育実習は終わっているだろうがね。君は授業については大丈夫だと思うから、それよりも生徒と打ち解けられるかを心配していたまえ」

「打ち解ける必要あります?」

「それは当然だろう。多少は人柄も知っておいたほうが比企谷も生徒も、お互いやりやすくなる」

平塚先生はさも当然とばかりに胸を張って話す。相変わらず凶悪なものをお持ちで。

三週間やそこらで簡単に人と打ち解けられたら俺はこれまでの人生もう少しうまくやれているというものだ。同年代同クラスであっても無理なのに、年の離れた高校生となんてハードルが高すぎる。これはいつも通りハードルを跳ばずにくぐるしかないですかね。

「……ま、ボチボチやってみます」

「そうだな、君は君のペースでやってみたまえ。生徒達には今日から実習生が来ることを伝えているからいろいろ期待していると思うぞ」

「なんの期待ですか……。というか高校生の期待に応えられる見た目でもないし性格でもないすよ俺」

「そうか?なら紹介前に期待はするなと念押ししておくか」

そう言うと、平塚先生はくっと意地悪そうに笑みを漏らした。そうか、今は生徒ではなく一応教師と呼ばれる立場だから、その分だけ高校生の時と距離感が違うんだな。

「そうそう、私のクラスには君のちょっとした知り合いもいるから楽しみにしておくといい」

はて、なんのことだろうかと思案してみるも、平塚先生は意味深な笑みを浮かべるだけで答えてはくれない。高校生の知り合い?心当たりがまったくないな……。

「きっと驚くぞ、比企谷は。……っと、そういえば雪ノ下とはどうしているんだ?上手くやっているか?」

その名前が耳に入った途端、体の何処かに鈍い疼痛を感じた。

そうか、平塚先生にまではさすがに伝わっていないか。

「……いえ。別れました。結構前に」

「……そうか。不躾なことを聞いてすまなかった」

平塚先生は心底申し訳無さそうに目を伏せる。

「いや、いいんですよ別に。俺が悪いし、なるべくしてなったことです。それにもう吹っ切れましたから」

そして俺は息をするように嘘を吐いた。既に何人かには同じことを聞かれ、その度に同じ嘘を吐いていた。

今日もまたうなされたばかりなのに吹っ切れてるとか、全然笑えねぇよ。でも別れてからの時間を考えるならそうなっていても不思議はないんだよな。けれど痛みは消えてくれないんだ、これが。

……馬鹿じゃねぇの、俺。

「よし、教頭と校長のところに挨拶に行くか」

「はい」

静かに頷き、重い腰を上げる。

緊張で痛みは収まってきたが、先ほどの平塚先生の発言が気にかかり、心に立ったさざ波が収まることはなかった。



教頭と校長への挨拶を済ませ、いよいよ教育実習が始まる。

平塚先生を含めて事前に打ち合わせた話では、俺の実施する現国の研究授業は来週と再来週で合わせて四回。これはどうも一般的な教育実習では少ない方らしい。

その理由はこの学校の現状が関係していると平塚先生は話していた。どうにも近年は総武高校の全体的な学力が低下気味らしく、教育実習生に多くの授業を任せられる余裕がないと、そういうことのようだ。

「すまないな比企谷。本来であればもっと授業を任せたいんだが私にはどうにもならなくてね」

「いやいや、問題ないですよ。生徒からしたって大変な時期なんですから、まだ半端者の俺にそんなに授業されても困るでしょう」

「それも一理あるが、私は君の授業を見てみたいんだよ。私の教え子が教育実習に来るなんて初めてだからな。卒業後にも成長を見られる機会なんてそうそうないんだ」

平塚先生はキーボードを叩きながら嬉しそうに話している。

成長か。おそらく期待しているものを見せることはできないんだろうなと思うと、申し訳なさで胸にちくりと痛みがあった。

「予定通りに進めることにばかり気を取られてそうですから、気の利いたことは話せそうにないですけどね」

「はは、最初はそんなものだろうな。だがアドリブで助言したり雑談したりしても構わないから、君の言葉を生徒に聞かせてあげてくれ」

「……善処します」

言われる言葉をまったく前向きに捉えられないまま曖昧に頷くと、平塚先生は呆れたような微笑を浮かべた。

HRが始まる前に行われた職員会議で全体的に俺の紹介が行われ、ついに教室に向かうことになった。まだ喧騒の残る教室を幾つも通り過ぎ、目当ての部屋に辿り着く。

懐かしい2年F組の教室の扉の前で立ち止まると、僅かに早い鼓動を確かめるように胸に手を当てる。

「比企谷は私が呼んだら入ってきたまえ」

「わかりました」

平塚先生が入り二言三言告げると、すぐに教室は静かになった。それから簡単なHRが行われていたようで、やがて俺の紹介をする言葉が聞こえてきた。

「では先生、どうぞ」

突然先生と呼ばれ誰もいない廊下でおもわずたじろいだが、数秒後、よしと口の中で呟き扉を開く。

中にいた三十数名の目が全て俺に注がれているのがわかった。若い大学生の教育実習生が来るとなれば当然の反応だろう。

さっと流すように教室内の生徒の顔を見渡すと、全員だと思っていたが、好機の目をこちらに向けていない人物が一人いることに気が付いた。

その少女は窓際の席で、柔らかい朝の日を浴びながら頬杖をついて外を眺めていた。

その少女は長く艶やかな黒髪と、横顔でも一際輝く端正な顔立ちを携えていた。

周囲の多数の生徒は俺の目に入らなくなり、自然と歩む足が止まっていた。

「比企谷先生?」

立ち止まる俺を怪訝に思った平塚先生が俺に言葉を投げる。

少女は驚いたように顔の向きを変え、そこで俺と初めて目が合った。

───不覚にも見惚れてしまった。

その少女の佇まいに、俺は彼女の影を見た。

☆☆☆

ここまで

長らく開いたと思ってたら二週間ぐらいだった案外短い
すみません年末年始忙しくて
わかる通り八幡パートはうじうじと重いです
リハビリにirohaのふざけたやつも書いたのでそちらも趣向が合えば是非

またそのうち

乙です!
待ってたよ

想定してたうちで一番残念な展開がきてしまった…

うーん…

irohaのやつあんたかよw
期待してるわ

irohaのやつお前だったのかwww
あっちも面白いよ!


あんな話書いた直後になんでこんなシリアスなの書くんですかね・・・(誉め言葉

まさかのiroha 作者ww

irohaの方はあんなに面白かったのになあ

いや、あれとこれを同じように読んで比較するって・・・真面目に言ってるのかそれは
まだ途中だからどうなるかはわからないけどそういう面白さを期待して読むものと違うんじゃないか?

誰も同じように読んだなんて言ってないのになんなの怖い

原作の八幡以上にナルシス全開の八幡はシリアス物だとほんときっつい
八幡はシリアスに書くとそういう傾向になりがちだから凄く意識して書かないと読者からすぐ
「つまんないわけじゃないけどなぜだか微妙・・・」みたいな感想を頂いてしまう

確かにこの八幡はさらに拗らせてそうだな
でもそこからルミルミがどうするか、八幡がどう変わるかが楽しみだ
期待してるぞ

拗らせてるっていうか気持ち悪い

まあ原作からしてキモいし



いつもの確認をして今日は何もないことに安堵すると、鞄から参考書を取り出して二時間目の数学の予習を始めた。一時間目は現国なので予習は必要ない。

私はあの頃も、それが解消してからも一人でいることが多く、自然と本を読んで過ごすことが多くなった。そのおかげもあるのか、国語に関しては昔からテストや授業で悩むことはなかった。

たまに国語が苦手という人もいるけど、私からしたらなんで現国が出来ないのか理由がわからない。古典や漢文等の読み慣れないものならまだわかるけど日本語なら毎日使っているでしょうに。暗号で書かれているわけでもあるまいし。

反面、理数系の科目を私は苦手としていた。

今でこそ総武高校に合格して校内でも上位の成績を収めているものの、昔から要領のいいほうではなかったし、優秀な頭をしているとも思わないので現在の私があるのはひとえに私の努力の成果だと言ってもいい。

憧れていた景色に少しでも近づこうとした結果ではあるが、その本質は現実から必死で逃げようとしていただけな気もする。

「おー、おはよールミルミ。いつも真面目で感心ですなー」

集中し始めた矢先、毎日のように聞こえてくる棒読みのような挨拶が耳に届き、目だけを動かして適当に返事をしてやった。

「おはよ佐和子。ルミルミって呼ばないでよ」

入学式で出会い、一年二年とクラスが同じになった彼女は、この校内でほとんど唯一私が親しげに話せる人物だ。

「まぁいいじゃん、韻を踏んでる名前って珍しいし」

「それあんたが言うの?」

菅沢佐和子。それが彼女の名前だ。初対面で自己紹介をしたときその話題で少し盛り上がったことも、今なおなんとなく仲良くやっている一助になっているのかもしれない。

「じゃあルミルミもサワサワって呼んでいいよ?」

「嫌、なんか気持ち悪いし」

「うわヒド」

「もう、予習してるんだから話し掛けないでよ。私はあんたほど器用じゃないの」

「へいへい、つれないなールミルミは」

強引に話を切ると、私の前の席の佐和子は鞄を置いてスマホを触り始めた。

彼女は不思議な人だと思う。それは愛想のない私とも親しげに話そうとしているということもあるが、どこまで本心かわからないその性格のせいだ。

私は彼女の全てを知っていると言えるほど親しくないが、話してたり見たりしているとわかることもある。彼女の交遊関係はとても広いが、とても浅いのだ。ちなみに私は狭く浅い。別に困ってもいないけれど。

一定の距離以上に近寄ろうとしないのは何故かわからないが、彼女自身もそうするよう努めていると話したことがある。だから、必要以上に踏み込まない私と居るのは楽なのだそうだ。

あと、彼女は私ほどではないにしろ結構モテる。今時の女子高生のような見た目、どちらかといえば派手な部類の外見をしているのに、意外に誰とも付き合ったことはないらしい。その辺りも不思議に感じる要因だ。

とりあえず、私はこの子がいるお陰で完全に孤立はしないでいられるので感謝はしている。

毎日楽しく遊んだりする子は別にいらなくても、話し相手が誰一人いないというのはさすがに少し寂しいし困るから。都合いいな、私って。

「あ、そうそう、忘れるところだった。ルミルミ、大ニュース!」

今日やりそうな三角関数の問題に頭を悩ませていると、佐和子が急に振り返って捲し立てるように話す。

無視して少し考えてはみたけど……あーもう数学わかんない、難しい。これは私、文系しかなさそうだなぁ。

ペンを置き顔を上げると、彼女のキラキラと輝く好機に満ちた瞳が飛び込んできた。

「なに、面白いことでもあった?」

「うん!なんとね、今日から教育実習生が来るんだよ!」

「…………そう。知ってる」

嬉しそうにしてるから何かと思えば、どうでもいい既知の情報だった。拍子抜けしてしまい、落胆の溜め息が漏れる。

そういえば昨日は平塚先生がいなくてあの人のこと聞けなかったな。今日はいるみたいだからちゃんと聞いておこっと。

「ちょっ、まだあるから。なんと教育実習生は男の人だよ!今朝それっぽい人を見た子がいるんだって」

「そう。それで?」

「イケメンだといいなー」

「あんたのはなんか違うでしょ……」

あまり大っぴらにはしていないようだが、彼女が特殊な趣味を持っていることを私は知っている、というか知らされていた。

見た目に似合っているのか似合っていないのかはわからないけど、彼女はどうも男性同士であんなことやこんなことをする爛れた関係が大好物らしい。なんでもここ総武高校のOB……OGだったかな?まあ卒業生と知り合いで、その影響を多大に受けたとのことだ。

「やっぱイケメンだと妄想が捗るんだよねー、わっかんないかなー」

「うん、わかんない。これっぽっちも」

「はー、つまらん、ルミルミの話はつまらん!」

佐和子はぷりぷりとわざとらしく怒ってみせるが、こんなやり取りはいつものことだ。そもそも私がその趣味に理解を示さないのは最初から彼女もわかっている。ただ私はそんな彼女の趣味を否定しなかった、それだけだ。

「そう。去年も教育実習生って来てたでしょ、男の人。あの人はどうだったっけ?顔はそれなりによかったような」

「んー、他のクラスだったからよくわかんなかったけど、あの熱血っぷりはちょっと苦手かなー」

「ふーん。イケメンならなんでもいいってわけじゃないんだ。私はどうでもいいけど」

「だよねー、ルミルミはどうでもいいよねー。決めた人がいるもんねー」

佐和子に目をやると、にやにやとした下卑た目をこちらに向けていた。

彼女とそれなりに打ち解けた頃、何故ここの高校を目指したのかという話になったことがあり、その際、彼女は先の先輩のことを話し、一方の私も馬鹿正直に憧れてる人がいたからと答えてしまったのだ。

「いや、あの人はそんなんじゃないから……」

「わぁー、あの人だってー。まあわたしはその人のこと知らないんだけどさ」

今なお鮮明に思い出すことのできる、総武高校の制服を着た彼。

「……また会いたいな」

自分以外には聞き取れない、声なき声で些細な願望を呟く。

「ん?まー楽しみにしとこうよ、ルミルミ」

そこで彼女は前を向き、聞こえてくるのは教室のざわめきだけとなった。

参考書に目を落とし、考える。

仮に会えたとして、あの人は私のことを覚えてくれているだろうか。覚えていないと言われたら、それからどうすればいいんだろう。

私は男女の付き合いというものを知識としてしか知らない。まだ経験したことがないからだ。それ以前に、人間関係の深め方がよくわからない。これまで必要としてこなかったし、避けてここまで来たからだ。

私はあの人とどうなりたいんだろう。今の私があるのはあなたのお陰なんだよってちゃんと伝えて、それから……。

それで終わり?

ううん、それは嫌だ。もっと近づきたい。

これは、ただの憧れ?それとも……。

常に穏やかであろうとしてきたこの心に、降って湧いたような違和感。この切なく遣りきれない感情の正体は、いったいなんなのだろうか。

その答えを、私はまだ言葉にできない。

「HR始めるぞー、お前ら席つけー」

気がつけばHRの始まる時間になっていた。入ってきた平塚先生が一喝するとざわめきが徐々におさまっていく、いつものクラスの光景。

普段通りの大して重要でもない連絡事項が終わると、普段は行われない追加の連絡事項があった。

「以前伝えた通り、今日は教育実習生のお披露目の日だが、本人からイケメンの期待はしないで欲しいと言付かっているので前もって言っておく。期待はするな」

何それ、と思っているとクラスメイトの一人が発言する。

「えー、そんなこと急に言われても……。先生はどう思うんですか?」

「私はそうは思わないんだがね、君たちは実際に見て判断したまえ。まぁ見た目はともかくとして、私の教え子でもあるし中身は優秀だぞ」

「だってさー、ルミルミ。期待はするなだって」

佐和子が振り返り、残念そうに小声で話す。

「ふーん。別に期待はしてないけどね」

興味のない私は外を眺めながら適当に返事をする。

「では先生、どうぞ」

今日は陽射しが穏やかだなぁ。こんな日はゆっくり木陰で本でも読んで過ごしたいな。

扉の開く音が聞こえ、続いて教室内にヒソヒソとした話し声が溢れ出す。

「おぉ、期待するなって言っといてなかなかじゃん。でもなんかちょっと目付き悪いかも」

こちらを振り向いたら佐和子が楽しそうに、まあそれがいいんだけどね!とか力説し始めた。相変わらず彼女の趣向はよくわからない。

目付きが悪い、か。そういえばあの人も変わった目をしてたなぁ。変わっているというかなんというか、捻くれているというか。

「比企谷先生?」

とくん。

聞こえてきた言葉に反応して、一度だけ心臓が強く鳴った。

なんで今、こんなところでその名前が?

記憶が確かなら、八幡の名字は比企谷だったはず。

驚き、そこで初めて教育実習生に目を向けると、そこには。

私の脳裏に深く刻まれた、いつの間にか大切にしたくなっていた人が制服からスーツに姿を変え、私を呆然と見つめていた。


* * *


「どうかしたか?」

「……あ、すみません。なんでもないです」

平塚先生と言葉を交わすその人は、紛れもなく八幡だった。あまりの驚きに頭も体も硬直し、どうしていいのかわからない。

なんで?どうして?私の会いたかった人がなんでここにいるの?

「あ、えー。今日から教育実習生として三週間、ここで勉強させてもらうことになりました。未熟な点も多いかとは思いますが、これから皆さんのお世話になります」

未だ頭の働かない私を余所に、教壇に立つ彼は挨拶を告げると振り返ってチョークを手に取った。

黒板の中央に書かれたその名前は、比企谷八幡。

「比企谷です。短い間ですがよろしくお願いします」

軽い挨拶と会釈が行われると、教室内に控え目な拍手が沸き起こる。私もそれに倣って、といっても意識的にではないが手だけを動かし、その人の一挙手一投足を眺めていた。

もう間違いない。八幡だ。私を救ってくれた、また会いたかったあの人だ。八幡が教育実習生として私と同じ教室にいる。

なんという偶然だろう。昨日になってようやく、八幡が何をしているのかを知ろうと思ったところなのに。こんな偶然、私の人生にもあるんだ。

「えー……話すこともあんまりないんですけど……」

困ったように頭を掻くその動きの中で、確かに一瞬だけ視線がこちらに向けられた。

また目が合った。確実に私のことを見た。きっと自意識過剰でも勘違いでもない。だって、私が初めて目を向けたときも、あの人は私を見て足を止めていたもの。

もしかして、私だってわかってるの、かな。

それとも、誰かはわからなくても私を見て、か、可愛い、とか?そんな風に思ってたり…………。こ、これは自意識過剰か。

えと、八幡……は慣れ慣れしすぎるよね。比企谷先生、って呼ばなきゃなんだよね。うぅ、心の中では八幡って呼んでたからなんかしっくりこない。

その比企谷先生は出身地や大学、専攻等、数分程度の軽い自己紹介を終えると、話すことがなくなったのか平塚先生に目線を送っている。

「比企谷……もうちょっとあるだろう……。まあいい、では恒例の質問タイムといこうか」

「え、そんな恒例あるんですか?」

「ああ、大体やっているな。放っておいてもいくらでも話すタイプにはしないがね。さあ諸君、彼に何か質問はないか?」

平塚先生が私たちを促すものの、やはり挙手はなかった。これは比企谷先生がどうこうというわけではなくいつものことだ。こういう風に突然振られても二の足を踏むのが当然という空気が大抵のクラスに蔓延している。

で、しばらくすると痺れを切らした先生が無理矢理指名を始め、当たり障りのない質問に終始する。曖昧に振られたことに対してはそういう流れになるのがお決まりのパターンだ。

でも私は今、強烈に質問したい。聞きたいことが山ほどある。

私のこと、覚えていますか?

でも衆人環視の中で踏み込んだ質問をするわけにもいかず、もどかしく落ち着かない気持ちで先生を見ていた。

比企谷先生と初顔合わせとなる生徒たちは小声で何事かを相談し合い、教室内にざわついた空気を作る。そんな中、身を捩って半身で後ろを振り向いた佐和子が私を見て口を開いた。

「……どしたの、ソワソワして。なんか顔赤くない?」

「え、私赤くなってる?」

「うん。なに?ああいう人がルミルミのタイプなの?」

聞かれて初めて疑問に思ったけど、どうなんだろう。好きな男性のタイプとかあまり考えたこともなかった。

「なんでそこでキョトンとするかね。ルミルミはかわいーねー」

「う、うるさいっ。いやね、その……。私が小学生のとき出会って憧れてるって言ってた人、いるじゃない」

「ん?うん」

「それ……あの人、比企谷先生、なの」

佐和子に進んで伝えたいわけではなかったが、どこかにこの喜びを吐き出したいという気持ちが勝り、恥ずかしい思いを我慢して事実を話すことにした。

きっと私だけで抱えていても何も行動はできない。下手をすると話し掛けにいくことも躊躇ったまま教育実習期間が終わるかもしれない。

だから、佐和子にだけは素直に話してみてもいいかなとも思った。具体的に何かをしてもらおうとまでは思ってないけど、それ行けやれ行けと臆病な私の背中を押してもらえるかもしれないから。

「……マジ?そんなことあるの?」

佐和子は驚いて目を丸くする。

「いや、私も信じらんないよ、こんな偶然……」

「うーん、これは運命だよ運命。あ、それでソワソワしてるのかー……」

彼女は思案顔になったかと思うと、おもむろに挙手をする。

「はい!」

「ちょっと佐和子」

小声で諌めてはみたが無駄だった。そして当然、比企谷先生の顔がこっちを向く。その目線は前にいる佐和子を通り過ぎ、また私に送られたような気がした。まずいなぁこれ、ここまできたらたぶん自意識過剰だよ……。

「えー、と……菅沢さん?」

先生は手元にある、おそらく席順と名簿であろう紙を見て彼女の名前を呼んだ。

「はい、比企谷先生、彼女いますか?」

!!

何を聞いてるのよ……とは思ったものの、かなり気になる情報だ。素直に答えてくれるのかはわからないけれど。

その質問に比企谷先生はたじろぎ、何人かの男子からは「おぉー」という感嘆とも冷やかしともつかない声が発せられた。

「……逆に聞くけど、いそうに見えますかね?」

「いえ、あんまり」

ちょっと、失礼じゃないの……。

先生は佐和子の歯切れのよい返事に苦笑いを浮かべ、答える。

「じゃあ聞かないでくれ、いないよ見た目通りだよ」

その回答に何人かがくすくすと笑い、教室内の緊張した空気が幾分か和らいだのがわかった。すると、それからは男子女子入り交じって矢継ぎ早に質問が飛ぶことになった。

先生は飛んでくる質問に自虐を交えて次々と答え、生徒達の笑いを誘っていた。なんとなくだけど、クラスのみんなからの第一印象は悪いものではなかったように見えた。

その中で私は、知らなかった八幡の現在をいろいろ知ることができとても楽しそうにしていたらしい。らしいというのは、後になって佐和子からニヤニヤしていたと聞かされたからだ。失態だ……。


* * *


「比企谷先生、彼女いないってさ」

「聞いた。いきなり何を言い出すのかと思ったよ……」

HRが終わり、先生たちは一度職員室に戻ったようだ。一時間目は現国だから二人ともこの教室に戻ってくるはず。だから、また会える。

「余計なお世話だった?」

「う、あ、いや、そうでも、ない……」

いろんな感情が混ざった結果しどろもどろになってしまい、カタコトにしか喋れなかった。

そんなことまで考えてなかったはずなのに、彼女はいないって言葉を聞いて私はとても安心した。だからたぶん、いるって言われたら私はショックを受けたんだろうな。

「おーおー、慌てるルミルミを見られるのはこれはこれで結構楽しいかも」

そんな私を見て佐和子は意地の悪い笑みを浮かべる。

「で、どうなの?あの人は留美のこと覚えてるのかな?」

「うーん……わかんない。たぶん、としか。一時間目終わったら話し掛けて、みる、よ」

「うふふ、頑張ってねぇ」

言うと、彼女は私の頭をぽんと叩き、別の子と話をするために席を移動した。

これも彼女なりの気の使い方なのだと思う。根掘り葉掘りは聞かずにいてくれるから私も気兼ねなく話せるのだ。ウザくならない適切な距離感、その感覚が私と佐和子は似通っている。だからお互い楽でいられる。

舞い上がったような気分でいる今の私は、比企谷先生…………やっぱ八幡でいいや。八幡との適切な距離を、正確に測ることができるだろうか。煙たがられないように気をつけないと、ね。



憧れだった、会いたかった人が教室の後ろにいる。

そう考えると頭に血が昇ったようになり、まったく身の入らない授業になってしまった。

終わったらなんて話しかけようということばかり考えていて、なんの授業をしていたか記憶に残っていない。当てられなくて助かった……。

おかしい。いつもの私じゃないみたいだ。こんなに心を乱されることなど、これまでの人生でも数えるほどしかなったのに。

結局、うまく話しかける策を何も思い付かないまま授業の終わりを告げるチャイムが鳴ってしまった。

「っと、では今日はここまで」

起立、礼と済ませたが、皆と違って私は着席しない。去る平塚先生に続き、教室を出ていこうとする八幡を目で追いかけていた。

「ルミルミー、比企谷先生行っちゃうよ?」

「…………うん。行ってくる」

「がんばれー」

高鳴る胸をおさえきれないまま、佐和子の声を置き去りにして先生を追いかける。教室を出て、階段へと続く廊下を曲がったところで二人に追い付いた。

「あ、あのっ!はち……ひ、比企谷先生っ」

声が裏返ってしまった……最悪。

「ん?」

突然声を掛けられた八幡は振り向くと、私を見て気まずそうな表情になった。

なんで、かな。私、変な顔してるのかな。

ふと目に映る光景に、長らく姿を変えなかった私の記憶の中の八幡が時間を取り戻す。

私はあの頃よりも大人になった。けど八幡も同じだけ歳を重ね、年齢差を保ったままさらに大人っぽくなってる。

頭の中で、昔の八幡と、眼前の八幡を重ね合わせてみる。

うん、大丈夫。どっちも私の憧れの人の姿だ。

「比企谷、私は先に戻っておくよ。あまり遅くならないようにな」

「……はい」

平塚先生は手をひらひらと振り、一人先に戻っていった。

人のあまり行き交わない廊下で、気まずそうな二人が立ち尽くす。

えと、聞きたいこと、伝えたいこと、ちゃんと言わなきゃ。

「……何?」

「あの、えっと……。私のこと、知って…………覚えて、ますか?」

なんとなく、知っていますかと聞くのが躊躇われ、変な聞き方になってしまった。

でも、言葉にしてから後悔が押し寄せてきた。

覚えてないって言われたら、怖い。覚えてるって言ってほしいけど、とても自信なんか持てない。そんな恐怖から八幡の顔を直視することができず、俯いてしまう。

しばしの空白。

そして返ってきた答えは。

「記憶に、ないな」

…………そりゃそうだよね。

あれから五年も経ってるんだもん。数日だけ出会った小学生の一人なんて、覚えてなくて当然だよ。

そんな建前で自分を慰めてはみたけど、あまり効果はなかった。

「で、ですよね。もう覚えてませんよね、あんな昔のこと。ごめんなさい、忘れてください。私は気にしてませんから、大丈夫です、ほんと」

俯いたまま早口で捲し立て、踵を返す。

なんだろう、この痛みは。やっぱり聞かなきゃよかった。私から見れば大きなことでも、八幡から見たら些細なことだったんだよ。人生にはそんなことが往々にしてあるんだ。私と八幡の見ている景色は違うんだ。

二人の目線が同じ高さではなかったことを再確認すると、瞼のあたりに不自然な熱さが込み上げた。だから早く立ち去りたかったのに、一歩足を踏み出したところで制服の袖を掴まれる。

「ちょっ、待ってくれ、…………留美、だろ」

「え……?」

掴まれた袖を振り払う力は湧いてこない。

「だから、留美だろ。鶴見留美」

「えっ、と……。あ、さっきの名簿で、名前……」

私の言葉に八幡は首を振る。

「違う。覚えてるし、知ってる。留美のこと」

「え、でも、さっき記憶にないって……」

「あー、あれはそういう意味じゃなくて……」

「じゃなくて?」

「……俺の記憶の留美はまだ小学生のままだったんだよ。だから、今の女子高生のお前は記憶にないって……」

そこまで話すと、八幡は袖を離して照れ臭そうに頭を掻いた。

ちゃんと私のこと、忘れないでいてくれた。

まずい、ヤバい。さっきは溢れそうになったけどなんとか我慢できた。けど安心したら、また。

もうどうしようもなくって、仕方なく八幡のネクタイを掴んで顔を押し付ける。

「……馬鹿」

「おい、引っ張るなよこんなとこで……。一応俺は教師でお前は生徒なんだからな」

「ここ、あんまり人通らないから大丈夫だよ、たぶん。…………八幡の、バカ」

「バカバカって、俺は教師だつってんだろ。…………でも、あれだな。お前に八幡って呼ばれるの、なんか懐かしいな」

「……うん」

ネクタイから顔だけを離し、八幡を見上げる。

そこには、困ったようなはにかむような、不器用な笑顔。

ああ、あの時の顔だ。私の、好きな顔。

でも、うわわ、近い、近いよ。

んー、昔よりも髭が少し濃いような気がする。けど、八幡なんか痩せた?昔よりちょっと細い、かも。スーツ着てるからそう見えるだけなのかな。

「……ネクタイ、離してもらえる?」

「……はい」

その距離が急に気恥ずかしくなり、手をパッと離して横向きになる。

「…………あの」

「…………大きくなったな、留美」

もっと話さなきゃと私が意を決したのと、八幡が口を開いたのは同時だった。

「え?あ、わた、私……」

どど、どうしよう、何を話そうとしてたのかわかんない。全部ふっとんじゃった。

「いや、そんな慌てんでも。……本当に驚いた、いろいろと」

「えぇ……。えー……?」

なに!いろいろって!

綺麗になったとか、もしかして色っぽくなったとか!?

いやもう無理!恥ずかしい!

「つ…………」

「つ?」

「次の授業あるから、戻ります!また!」

「お、おお。また」

腰を折り勢いよく頭を下げると、顔を見られないように振り返り足早に立ち去る。

あーもうやだ、なんでこんなに挙動不審なの私。まるっきり不審人物じゃないの。誰に告白されてもこんなこと今までなかったのに。

自分でも理解のできない私の行動が、改めて私にその思いを確信させる。

あの人は、やっぱり私にとって特別な人なんだ。

教室に戻る途中、廊下から見た窓の外の景色は、昨日と比べて一層鮮やかに色づいて見えた。


* * *

ここまで
友人出さないと会話が書けなくて、名前ないのはさすがに不自然になったので鶴見区から探して適当に名付けました
けど本筋には絡まないと思います

最近忙しくてあまり書けない悲しい
ではまたそのうち

乙です!
かわいいよルミルミ

これの更新だけ確認しに来てるわこの板

乙です
今一番期待してるss


あなたの作品が一番安心して読める
俺ガイルssの良心だわ

八幡視点になった時クッソつまんなくなってがっかりしたけど留美視点に戻ったら超絶面白く戻った
続きはようはよう

マダカナー

こっちの方が好きだわ
更新待ってる

超絶期待している!もう先走って☆5つ付けちゃいそうなくらい。

http://i.imgur.com/eRMUz7N.jpg
高校生ルミルミはこれの印象が強すぎて容姿ゆきのんなイメージだなやっぱり

>>139
続きどこで読めるんだよ

>>139
詳細はよ

自己解決
スレ汚し失礼しました

>>139
続きが存在しないとかこの世に絶望した



早足で教室に戻り扉を開くと、無意識に力が入りすぎてしまい大きな音を立ててしまった。一瞬だけ中にいるみんなの注目を集めてしまい、恥ずかしさから下を向いて窓際の席に向かう。

椅子に座るとすぐに腕を枕にして机に突っ伏した。

八幡は私のことを覚えていてくれた。その上、成長した私の姿に驚いた、らしい。

だから何?って話なんだけど、私はそれがもうどうしようもなく嬉しい。再会できただけでも奇跡なのに、あのときみたいに留美って呼んでくれるなんて、これはもしかしてもしかするんじゃないの?みたいな馬鹿みたいな妄想が頭から離れてくれない。

「あー……なんていうの?大丈夫だよ、ルミルミ。まだ終わってない!」

頭の上で佐和子の声が聞こえる。私に向けられた言葉みたいだけど、言っている内容が理解できない。

「……意味がわからない。なに?」

突っ伏したまま姿勢は変えずに返事をする。

「いやさ、先生は彼女いないって言ってたし、ここから始めたりだってできるんだからさ。そんなに落ち込まなくても」

「別に落ち込んでないけど」

「え?泣いてるんじゃないの?」

「泣いてる?なんで?」

「比企谷先生に忘れられてたから?」

「わ、忘れられてない。ちゃんと覚えててくれた……」

なるほど、これで合点がいった。佐和子は私がショックだから伏せて泣いていると勘違いしたらしい。でも伏せている理由はそんなことじゃない。

「じゃあなんで伏せてそんな不機嫌そうな声出してんの?」

「…………にやにやしてそうだから、見せらんない。不機嫌でもなくて、はしゃぎそうだから意識的にそうしてるだけ」

「おぉぉ……ルミルミがデレている……。ちょっと顔見せて」

「やだ」

即答してやった。

「あれ、比企谷先生だ」

「うそっ!?」

次は現国じゃないのになんで戻ってくるの!?

おもわず顔を上げ、八幡の姿を目で探す。

「ウソ」

佐和子はてへっとでも言いたげにウインクしながら舌を出す。……どうしてくれようか、この思い。

「…………怒らせたいの?」

「ルミルミー、頬緩んでるー」

「だっ、ばっ…………うるさいっ!」

まともな反論ができず、顔を隠すためまた机に突っ伏した。

「あっはははー、たのしー」

佐和子はけらけらと楽しそうな声を上げ、私の肩を叩く。

くそぅ……なんか八幡が来てから佐和子にいじられっぱなしだ。悔しい。私はもっと落ち着きのある、何事にも動じない子だったはずなのに。

「でもさー、覚えててくれたんならよかったじゃん。脈あり?」

佐和子はひとしきり笑い終えると、何事もなかったように話を再開する。

脈ありか、と言われても。全部が未知の体験なんだから、そんな感触が私にわかるわけがない。

覚えられてないよりはマシな気がしないこともないけど、覚えていたとしても過去の私は小学生の子供なわけで、八幡が極度のロリコンでない限り、昔の私がそんな目で見られていたわけがない。

ロリコン……。あるの?

だから八幡にとっては、ただの大人ぶった生意気で孤独な小学生として印象に残っていただけという線が濃厚だ。そこから、その、恋愛的だとかなんとか的な目で見られるようにするにはどうしたら。もう何考えてるのかわかんなくなってきた。

「…………どう思う?」

結局、適当な性格のくせに私よりはそういう機微に聡い佐和子に疑問を投げ掛けてみた。

「話すとこを見たわけじゃないしなんとも。ただ、んー、留美のことを覚えてたんなら、なるほどそれでかーって思うこともあるかな」

「どういうこと?」

「いやさ、先生が教室に入ってきたときなんだけど、何かに気づいて立ち止まったように見えたんだよね。それがルミルミで驚いたりしてたんならわかるなーと」

「よく見てるね……」

そうだ。あのとき八幡は私を見て立ち竦んだように見えた。私が驚いて衝撃を受けたのと同じように、八幡もそう感じていたのだろうか。

「いや、んー……。でも比企谷先生が知ってるのは小学生のルミルミなんだよね。わたしは小学生のルミルミ知らないけどさ、高校生になってるのにそんなすぐわかるもんなのかな?」

佐和子の言葉で、抱えていた僅かな引っ掛かりがぼやけた輪郭を伴う。

私があれからどのぐらい変わったのか自分ではよくわからないけど、小学生から高校生への変化は少なくないんじゃないかと思う。それでも一目で気づけるものなんだろうか。

私が長く一緒に過ごした小学校の同級生の子ですら、高校生になった今いきなり会ったらすぐには誰かわからない気がする。

なら、ほんの数日しか会っていなかった八幡が私に一目で気づくとは思えない。そうとしか思えなくなってきた。

ということは。

「……最初は私とはわからず、私に見惚れてた、とか……?いやごめんなんでもない」

「そのあと名簿で名前見て留美だってわかった、か……うん、ルミルミ可愛いし、それなくもないんじゃない?」

「そこは何言ってるのって否定してほしかった……」

「いやいや、可愛いの自覚しておきながらそんなことないですぅ~って子のほうがムカつくから。ルミルミっていろいろ正直だよね。てかわかりやすくて面白い、からかい甲斐があるというか」

「……からかわないでもらえる?」

そこで二時間目の数学教師が現れ、私たちの会話は打ち切られた。

八幡は窓際の私に何を見て、何を思ったのだろうか。それが聞けるようになる日もいつかくるのかな。

くるといいな。

人と関係を深めたいと願うことなんて、これまでにはなかったことだ。どんなに自分が惨めな立場だろうと、一人にしてほしいと願うことはあってもみんなと仲良く楽しくなんて別に考えたりはしなかった。

あの頃と今の私。いろいろ変わりはしたけど、本当に欲しいものは結局変わらない。そう思ってた。

林間学校で初めて私は誰かに変えられた。その時変えられたのは環境だった。そして訪れた、二度目の変化。変化の傍にはどちらも同じ人がいる。

今、私が変えられようとしているのは、私だ。

人間関係は互いに影響を及ぼし合う化学変化のようなものだと誰かが言った。だとしたら私と同じように、私も八幡に影響を与えているということだろうか。あんまりそうは思えないなぁ。

と、そんなことを思いながら解く数学の問題は、いつもの倍ぐらい難しかった。


* * *



昼休み、いつものように教室を抜け出して人のいない木陰にやってきた。

うん、涼しくて暖かくて気持ちいい。ざわつく教室の空気よりよっぽど落ち着く。

膝の上でお弁当を広げて食べ始めると、さあっと心地好い風が通り抜け頭上の木々を鳴らした。

そういえば、八幡って食事はどうしてるんだろう。自己紹介の質問攻めの中で一人暮らしをしてるって言ってたけど。

料理は……あんまりしそうにないなぁ。ましてやお弁当とか絶対作りそうにない。コンビニか学食か、なんだろうな。不健康そうだなー、栄養偏っちゃうじゃない。

そうだ、お弁当作って……は無理だよね。明らかに不自然というか下心見え見えというか、何より恥ずかしい。

でも食べてもらえたら嬉しいだろうなー。ついでにこんな風に卵焼きをとって、口に持っていってあーん、とか……。

うわぁぁ!

危ない、妄想が過ぎてトリップしてしまうところだった。だった、というかむしろ実際に卵焼きをフォークに差して手を伸ばしてたりする。何をしてるの私は……一人で助かった……。

「えー、おい、菅沢。どこまで行くんだよ……」

「あ、いた。ルミルミー」

フォークが傾き、卵焼きが地面に落ちた。

「ねー、卵焼き落ちたよ」

「……何してんの、お前」

無言のままお弁当を横に置き、落とした卵焼きをティッシュで拾う。座る。俯く。

見られた。死にたい。

「ルミルミ、一緒にご飯食べよっか」

「いや、なんではち……比企谷先生がいるの?」

「あー、なんか平塚先生に生徒と一緒に食べるようにしろって言われてな。教室行ったはいいが居場所がねぇなと思ってたら菅沢に拉致られた」

「そういうこと!」

佐和子はわたしグッジョブ!とばかりに得意気な顔でサムズアップしてみせる。頼んでないし、そのせいで物凄く恥ずかしいんだけど。

「まぁ折角ここまで来たし、もうここで食うわ」

「食べましょう、先生」

二人は中央の私を挟むようにして座り、佐和子はお弁当を広げ、八幡はパンの袋を開封する。

私まだ何も言ってないけど……まあ、断る理由はない。むしろお願いします。

楽しんでる感ありありだけども、きっとこれも彼女なりの"応援"なんだろう。誠に遺憾ではあるが、余計なお世話、ウザい。とは口が裂けても言えないので、ある意味弱味を握られているような状態だ。

「食べないの?」

「た、食べるよ、食べる」

さっきの謎行動を見られたショックを引き摺ってはいるが、食事についてとかいろいろ聞けるチャンスだ。そう自分を鼓舞しないと羞恥で挫けてしまいそうだった。

「留美……はよくないか、鶴見つったほうがいいよな。鶴見はいつもここで食べてんの?」

会話の口火を開いたのは意外にも八幡だった。平塚先生の指示かもしれないけど、一応生徒と打ち解けようとしてるのかな。

「うん……はい、だいたいは。雨の日とかは教室だけど」

八幡も私も半端に面識があるせいで言葉遣いや呼び方に戸惑いがあり、どこかぎこちない。

年齢差は変わってないけど、私としては昔ほど子供と大人という壁、隔たりは感じない。だから会話自体は昔よりスムーズにできてもおかしくないのに、今度は教師と生徒という新たな壁が互いに遠慮を生んでいる気がする。邪魔。

「ふーん。寂しくないのか」

「うん、別に。私、日陰とか静かなところが好きだから」

「そうか。日陰ねぇ……。まぁお前は目立つのが好きなほうじゃねぇよな」

「うん、そう。ひっそりと暮らしたいな、私は」

「……なるほど。えー、友達は?」

ふと、会話を繋げようと無理矢理話題を探しているような、そんな印象を受けた。盛り上がらない合コンとかお見合いとかこんな感じなのかな。行ったことないからわからないけど。

「んー、いない、かな」

「いやここにいるじゃん……」

隣の佐和子が不満そうに箸を伸ばし、私をつんつんとつつく振りをする。

まぁ今日みたいに八幡のことを話すのも佐和子にだけだし、踏み込んだ関係でなくとも友達と言えるのはこの子ぐらいかな。

でもそれより、彼女が私を友人と見ていたということに驚いた。不思議とちょっとだけ嬉しかったのは、内緒。

「あ、そうだった。友達とかよくわかんないけど、せいぜい佐和子ぐらい」

「せいぜいって……」

「……ほーん。俺も友達いないからよくわかんねぇし、別にいなくてもなんとでもなるけど。ま、あれだな」

八幡は言いかけてパンの最後の欠片を口を放り込み、もぐもぐと咀嚼を始める。それを缶コーヒーで流し込むと、急に優しい目付きになって私に語りかけた。

「今のお前が楽なら何よりだ。……よかったな、留美」

目の前の人の紡いだ音は、私の身体の内にすっと染み込むように広がっていった。その言葉には、あの頃の惨めな私を知っている人だからこそ伝えられる思いと意味が込められていた。

顔の熱が増し、ゆっくりと、でも確かに胸が高鳴り始めた。一度叩くごとに鼓動は徐々に強くなる。

まずい、顔が見られない。でも俯かずに、目を逸らさずに、ちゃんと言うんだ。

「……うん。でも、今の私があるのは八幡のおかげ、だよ。私はそう思ってる、ずっと思ってた。だから、その…………ありがとう、ございました」

散り行く花を見るような眼差しの八幡と向き合い、必死になって絞り出したのは五年越しの感謝の想い。

あのすぐ後にも、クリスマスにも言えなかった伝えたい言葉は、タメ口と敬語が混ざって考えていたよりもずっと不格好なものになった。

「……そか。俺は別になんもしてねぇけどな」

嘘だよ、そんなの。あんなこと八幡以外に考え付くわけない。

「ううん、そんなことない。変えられて、変えてもらって私は救われたよ」

「お、おお……そうか」

そこで八幡は頭を掻きながら明後日の方向に目をやり、私は耐えきれず俯く。

「八幡?留美?…………はーん?」

私たちのやり取りをお弁当を食べながら眺めていた佐和子が、ぽかんとした顔で声を上げた。

「……何よ」

「いやいや、なんか思ったよかずっと仲良さそうだなーと。昔付き合ったりしてたの?」

何を言い出すのよ、この子は。

「その発想の飛躍やめてもらえる?そんなことあるわけないでしょ……」

「ああ、菅沢も知り合いだったって知ってんのね……。アホか、小学生と付き合うわけねぇだろ」

二人してきっぱりと否定する。でも八幡は小学生に興味はなかったようで、悲しむべきか喜ぶべきかよくわからなくなった。

……いや、絶対安心するところだから。私だいぶおかしくなってる。

「はー、よかった。比企谷先生は小学生と付き合ってたロリコンなのかと。ルミルミ、小学生より女子高生のほうが好きだって!」

「その言い方もなんだかな……。別に女子目当てでここに来たわけじゃねぇよ」

「……はっ!まさか……男子目当て!?そうなんですか!?」

「なんでだよ……。なぁ、菅沢ってそういう趣味あんの?」

「うん、そう。佐和子うるさい、黙って」

脱線しそうな会話を強引に打ち切り、さっきから気になっていたことを八幡に尋ねることにした。

「ねぇ、はち……比企谷、先生」

「あー……。もういいよ、他の奴がいないときは八幡で。なんかお前に先生って言われるとくすぐったいというか……」

「……うん、私も慣れない、かな」

五年前に数日会っただけの人なのに、私はこの人を八幡以外で呼ぶと違和感を覚える。

それだけ長く私の中に居続けたということなんだろうか。八幡のことをずっと考えてたりとか、そんなことはなかったはずなのに。

「じゃあ……八幡?」

改めて呼ぶと、なにこれ凄い恥ずかしいんだけど。

「ん?あ、おう……。けどみんないるとこではちゃんと先生って呼べよ」

八幡も物凄く照れ臭そうだ。

「うっふっふ、なんか付き合いたてのカップルみたい」

それを見て佐和子が笑う。もう無視しよう、今の私に彼女をあしらえるだけの余裕はない。

「えと、お昼ご飯ってそれだけ?」

八幡はいつの間にか次のパンを取り出してかじっているが、どうやらパン二個とコーヒーが今日の昼食のようだ。

「おお、そうだよ。金がねぇんだこれが……」

情けなく項垂れる八幡に佐和子が突っ込みを入れる。

「えー、先生なのに」

「先生つってもただの教育実習生だから給料もねぇし、中身はただの貧乏学生なんだよ」

「ふーん、そうなんだ。八幡って一人暮らしなんだよね、もしかしてろくなもの食べてないんじゃない?」

「……まぁ、あんま栄養満点とは言えねぇな」

八幡はそう言いながら焼きそばパンを名残惜しそうに食べきった。

はぁ。そんな生活だから痩せてるんじゃないの?もっと栄養バランス考えないと。

と、そう思ったところでお弁当箱の隅にあるプチトマトが目に入り、私らしくないことを、とはいえさっき妄想していたことが頭をよぎる。

これに必要なのは勇気と、羞恥心に耐える心。

決意を固めフォークをプチトマトに突き刺そうとしたが、なかなか刺さらなくて二度、三度とプチトマトが転がり逃げる。

苦心したがようやく刺さった。ごくりと息を呑み、八幡へ手を伸ばす。

「…………こ、これ、食べる?ますか?」

もうダメだ何言ってるのかわからない。見えないところで佐和子の噴き出す声が聞こえた。あとで冷たい態度をとってやる。

逃げたくなる程度には言ったことを後悔してるけど、既にフォークを八幡へ向けてしまっている。この手はもう下ろせない。

「は?なんで?」

「え、栄養!バランス、悪いから、野菜摂らないと……」

「すまん、いらない」

「……そ、そう。ごめんなさい……」

きっぱりと拒否されると、恥ずかしくて情けなくてもう顔を上げていられなかった。仮にも教師が生徒のお弁当をもらうとか、そりゃ嫌だよね。うぅ、調子に乗りすぎた……。

「あーいや、勘違いすんな。いや勘違いってなんだ、えーと。気持ちは凄く有り難いんだが、あのな、俺、トマト苦手なんだよ……」

俯く私を見かねてか、八幡は不自然なぐらいに慌てて弁解の言葉を重ねる。

その不器用なフォローを、優しさを見て、聞いて、私は。

笑いが込み上げてきた。

「ぷっ……あははっ。トマト嫌いって、八幡子供みたい」

「し、仕方ねぇだろ、苦手なもんは苦手なんだ」

バツが悪そうに目を逸らす八幡に私は親近感を覚えた。あのとき、子供の私から見れば大人に感じた高校生のあの人は、トマトが嫌いな大学生。私も今や高校生。

それなら、やっぱり昔ほどの隔たりは感じなくてもいいはず。私、少し近づけてるのかも。そんな気になった。

「……お前もそんな風に笑えるようになったんだな」

八幡が小声で呟いたけど、何を言っているのかまでは聞き取れなかった。

「じゃあこれなら食べられる?」

気を取り直しプチトマトは私が食べ、今度はブロッコリーを刺して持ち上げる。

「……食えるけどよ。なんでそんなに俺に野菜食わせたいの、お前」

「だから、栄養。体、心配だし……」

好きな人に食べてほしいとか、そんなことは当然言えない。だからこれが精一杯。

「これ一つ食ったからってどうにかなるもんじゃ」

「あーもう、じれったい。比企谷先生、早く食べてくださいよ。じゃないとわたしが食べますよ?」

佐和子が八幡の言葉を遮る。彼女の言う「じゃないと」以降の理屈は意味不明だ。なんであんたに食べさせないといけないの。

「わかったよ、食うよ。食えばいいんだろ……」

半ばヤケクソ気味な言い方なのが気になるけど、八幡ははぁ、と溜め息をついてフォークに口を……ではなく、手でフォークに刺さったブロッコリーを取り口に放り込んだ。

「食ったぞ」

「……よ、よくできました」

「んだよそりゃ。俺はガキじゃねんだぞ」

うん、今はこれで満足。あーん、はまた今度、そのうち、いつか、きっと。

できたらいいな。間接キスはまだ早い、とかそんなことを考えるあたり、私も子供だなーとしみじみ思った。



それから佐和子も交えて三人で談笑しながら昼食を終え、教育実習がいかに大変かということを聞かされていると八幡がスマホを取り出した。

振動して着信を告げているようで、ディスプレイを見て眉をしかめる。

「んじゃ俺戻るわ、またな」

「はーい、比企谷先生またねー」

「うん、また」

ふと、またって言えることが凄く嬉しくなった。今日はもう現国の授業はないけど、帰りのHRでまた会えるはずだ。次があるっていうだけでこんなに嬉しい。

そんな余韻に浸りかけたところで、去り際に通話を始めたらしい八幡の声が耳に届く。

「なんだよ一色。あ?……俺今大学行ってねぇよ、教育実習だつったろ。…………無理、忙しい。帰りも夜遅く……ん?それならまぁ…………おぉ……」

最後の方はよく聞こえなかったけど。一色?

「…………友達、かな」

「友達いないって言ってたよね」

「…………女?」

「さぁ。聞いてみる?」

「い、いやいい。なんか怖い……」

「はー、今日のルミルミ見てるとほっこりするよ」

佐和子は微笑ましく子供を見守るように私を見つめる。

ぐぬぬ……。なんでこんな佐和子なんかに……。そうだ、さっき笑われたのも気に入らないし無視してやろう。

「…………」

「ねぇ、わたしがここに来たとき手を伸ばして何してたの?」

結局、鳥を呼んでたとかわけのわからない言い訳を取り繕う羽目になった。

今日はもう駄目だ、私。


* * *

半端だけどここまで

眠い
またそのうちー

おつ
待ってました

いろはす好きだけどルミルミかわい過ぎるから今回は譲ってあげてください!



大学生八幡SSのいろはす登場率は異常

雪ノ下は国立だし由比ヶ浜は馬鹿すぎるしで同レベルなの一色くらいしかいないからしゃーないんだよなあ

乙です


毎度だけどこれが片栗粉で水増しとか書いてた人かね本当に

相変わらず片栗粉で水増しの字面が酷い……
ルミルミHAPPYENDを期待してる

>>175
川なんとかさんはやっぱり家計的に私立厳しいんかなぁ
大学の性格上いろはすが出番作り放題なのが悪い、あざとい

>>180
そもそも川崎さん理系志望だしね
家を出て一人暮らしする可能性が高そうな八幡の近くに配置できるのって原作読めば読むほどマジで材木座と一色しかいないんだよね

八幡のターンは書かんのかな
なんかつまらんとか言うのいたけど気にしないで書いてほしい
俺はそっちも気になるから

いや普通にいらんでしょあれ

八幡のナルシス文章なんて他で嫌になるほど読めるのにルミルミの話見たくて開いたスレで
わざわざ八幡のキザったらしいだけの胡乱なモノロとかが気になる気持ちがさっぱり分からんww

プロ読者はこえーなー

ほんと怖い、みんながお前と同じ感想じゃねーんだぞ
八幡になんかなきゃハッピーエンドにならんだろこれ
そもそもならんのかもしれんけど

あぁ^~ルミルミ尊いんじゃぁ^~

俺の気に入ったルミルミだけ書いときゃいいんじゃとか
どんだけプロ読者なんだよ
完全に基地外クレーマーで草も生えんわ
それも自覚なしの素で言ってるからほんとに恐ろしい

ようわからんけど、俺は読み飛ばすだけだから書いてても別に構わんぞ
八幡パートだけじゃなくて留美視点のも同時に投下してくれるなら。八幡サイドだけの更新ならどうでもいいやって感じ

おう
ここから八幡パートがしばらく続くで

スレ分けちゃえばいいんじゃないかな?

どっちも好きだから更新はよ

>>181
亀レスだが、サキサキは国公立文系志望のはず

>>193
さーちゃんのことなら国立理系だよ

原作10巻の進路相談室の件で国公立文系って言ってるね
11巻は知らん

序中盤の予備校のクラスは理系
ゲームでは理系
10巻では文系志望になってて新しい版だと文系に変えてある

俺ガイルでは良くあること

失礼、理系に変えてある

音沙汰ないけど大丈夫?
作者が書いてるのは全部読んでると思うんだけども・・・

一週間もまだたってないぞ
気がはやい

待ってる

待つのが辛いな…。

良作だから期待してるぜ。

ルミルミ可愛すぎてものすごく待ち遠しい

あの、これhtml依頼出されてるんだけど・・・
作者さんが出したの?
それとも別人?

本人です
諸事情によりしばらく手付けられなくなるので一回落とすことにしました
書けるようになることがあればまた建て直します
読んでくださっていた方には本当に申し訳ありません
また読んで頂ける機会があれば是非、また何処かで

まじか
いつまでも待ってるからはよ

マジかよもうしねよ

>>206
辛辣でワロタ
いつでもいいから書いてくれるのを待ってるよ

待ってるよ

商業デビューってもしかしてあなた?

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