提督「曙の様子がおかしい」 (66)

艦これSS、ゆっくり書いていきます
ひょっとしたらR-18注意かも

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きたい

初めて異変を目の当たりにしたのは、つい先週のことだった


粗方の書類整理を終えて、残りが済んだら間宮さんのところにでも顔を出そうかと考えていた夕暮れ──およそヒトロクサンマル頃のこと
すぐそばで書類を整理する、秘書艦である曙の動きが止まっていることに気がついた

「曙、どうかしたか?」

何の気なしに言葉を投げ掛けると、曙は座っている椅子が音を立てるほどに体を揺らした

「えっ!? ……あ、ぅ、……な、何でもないわよ、クソ提督」

最初は何かと思ったが、すぐにいつもの調子を取り戻したので、あまり気にせずにいた

次は、その翌日の執務前
朝礼を終えて、曙を連れて執務室へ移動しようとした時の話

艦娘が各々の持ち場へ移動するのを確認し、曙に目をやると、そこにはどこか上の空めいた様子でこちらを見つめている曙の姿があった

「……曙?」

「……提督……? ……っ!?」

どこか気の抜けたような一言の後、我に返った曙はさっと目をそらし、何も言わず、一目散に執務室へと向かっていってしまった

その日の曙はいつもより、どこか刺々しかった気がする

小さな異変は、日を追うごと、時間を経るごとに短いスパンで訪れるようになった
また異変が起きるごとに、曙の様子に対する不安感も募っていった
大人しくなったと言えば聞こえはいいが、どうもそれだけが原因ではないように思う


 ***


曙の様子が俺を行動させる決定打となり得たのは、まさに昨日の話だった

夜警のために駆逐艦の寮に足を踏み入れていた俺は、ある一室から僅かではあるが物音が立っていることに気がついた
夜も更けたマルヒトヒトゴ、まだ起きている者がいるのだろうか
幸い窓は普通のガラスだったため、中にいる艦娘達に気付かれないよう電灯を消し、様子を窺った……

見ると、布団がひとつ、もそもそと動いている
そこで俺は、ここが第六駆逐隊の部屋と気付く。六駆は一人を除いて他は遠征へ出払っているはず

……曙か

何か夢を見ているのかもしれないし、単に寝返りを打っていただけかもしれない
そう自分に言い聞かせ、立ち去ろうとした時だった
確かにこの耳で、馴染み深い声を聞いた


「提督、嫌なの」

提督、嫌なの

自分が呼ばれていることがとても気にかかるが、その直後の嫌とはどういうことだろうか
気になる反面、何か触れてはいけない何かが隠されているのでは?と無駄に勘繰ってしまう


……その時俺に、部屋の中に立ち入る勇気はなかった

ぼのSSいいゾ~これ

ぼのは七駆だバカヤロウ

そして、今に至るのだが……

ヒトサンマルマル、午後の執務の途中ではあるが、ここまで曙に今までのような異変らしい言動は見て取れない
昨日の今日でここまで違うものかとも思うが、きっちり任務をこなしてくれていることには違いない
安堵を覚えた俺は、そのまま執務を進めることにした



……安心したのは、まさしく束の間だった

>>9
ほんとだバカヤロウ…脳内補完してくださあ

第六は暁型四姉妹だバッキャロー!

許してあげるから続きはよ!

風呂から上がり、自室でゆっくりしていると、突然扉をノックする音が響いた

「どうぞ」
「失礼します」

椅子にかけながら顔だけを扉の方へ向けると、そこにはまだ制服を着たままの曙がいた

「曙。どうかしたか?」

反応はなし
ただ、俺が言い終わってすぐ、曙は俺の方に向かって歩いてくる
表情は俯いていて分からない

「……曙?」




まさに一瞬の出来事

長い髪が舞い躍り、
それは俺の胸元にすっぽりと収まった

「え……?」

あまりに唐突で、驚く間もなかった
胸元には曙の頭、首には両腕がかけられている
抱き締められているというよりは、もたれ掛かられている感じだ

「お、おい? 曙?」
「……」


そのまま一分?十分?はたまた一時間?
言葉もなく、ただ抱き付き、また抱き付かれていた

そこにいたのは紛れもなく、いつもの曙とは思えない、か弱い一人の少女

非現実的な光景を受け入れ始めた頃、曙はいつの間にか消えていた

ほう



良いぞ。

翌朝

目が覚める、体の節々が痛い
どうやら俺は自室の机に突っ伏して寝ていたらしい……夢と現の区別が未だにあやふやな状態だ
すぐに朝礼がある、顔でも洗って気を引き締めなければ


……洗面所へ行くと、制服を着た曙がいた

「あ、曙」
「おはようクソ提督、顔を洗うついでに髭も剃っておいた方がいいわよ」

……?

いつもの曙だ
ごくいつも通りの……

「ああ……なぁ、曙」
「何よ」
「……昨日の夜、何してた?」

俺の横を通り抜け、洗面所から離れようとする曙に、俺は自分ですら真意をはかりかねる質問を投げ掛けていた
俺は夢と現を未だにさ迷い続けているとでもいうのか


「……何言ってるの。普通に寝てたわよ」


……それからは、特に変わったこともなく、まさにいつも通りの日々が続いた
つんけんする曙を見かけた潮や朧が宥め、漣がちょっかいを出し
七駆のみんなもそこはかとなく違和感を覚えていたようで、それが払拭されたと分かるや否や、また騒がしい日々が戻ってきた

「さて、曙、そろそろ昼飯にするか」
「ん……そうね。クソ提督にしちゃ気が利くじゃない」
「はは、前半が余計だぞ」

いつも通り、昼は曙と連れ立って食堂に顔を出す
いつも通りに、いつも通りに



 ***


「……提督」
「…………曙」

そしてこれは、俺が"いつも通りに"見ている夢だ

部屋の電気を消し、ベッドに腰かけて窓から月を眺めていると
ゆっくりと扉が開く音に続いて、弱々しく、まるで曙その人とは思えない声が俺を呼ぶ

俺もまた曙の名前を呼び返すことで、曙をこの、月が見える暗がり、一人で腰かけるには少し大きすぎるベッドへと招く


そう、これは神か何かの気まぐれが俺に見せた夢なのだろう

夢や幻でもなければ、こんな光景は、説明がつかないのだ──

「はぁ……提督」
「ん」

ベッドに腰かけると同時に、曙は俺の胸元にしなだれかかってきた
すぅ、はぁ、とゆっくり大きく呼吸する音が聞こえる
男の臭いなど女性にとって、まして曙くらいの子にとってそんなにいいものではないだろうに

俺の右手は、自然と俺に寄り添う曙の頭を撫でた

「ん……それ」
「あいよ」
「提督……」

連日この夢を見ていて気付いたこと
"この"曙は、とても素直で、甘えたがりだ
気の強い普段の姿はなく、年相応──またはそれ以下の、吹けば崩れてしまいそうな雰囲気

また、あまり言葉を発しない
ただただ体を擦り付けたり、臭いを嗅いだり……有り体に言えば、まるで犬のようである

曙可愛い

「はあ、はあ……!」
「大丈夫、俺はここにいるから」

そして
何かに怯えるように、強く抱き締めたかと思えば体を震わす
その時は俺も、左腕で曙を抱いてやり、頭を撫でる右腕でも包み込んでやるようにする

「提督、ていとく」
「うん、うん」

慰めにも似た光景は続く
曙を抱いていると、普段はふんわりと風に乗って流れてくる曙の香りが強く感じられて
その香りは、冷たく暗い月夜と共に五感を鈍らせて、または尖らせていく
曙がいる、曙の匂いがする、絹のような髪を俺の手が撫でている

これは、夢か、現か

いいぞー



そしてまた俺は、目を覚ます

上る朝日が鎮守府を、そして海を照らし、空を舞う雀が囀ずる


曙の姿はなかった

このままどんどんエスカレートして、どうぞ

また別のある日

潮の改修のために、潮と工廠へ向かっていた時の話
潮がぼそりと呟いた

「最近」
「曙ちゃんが、心なしか明るくなった気がするんです」

曙が?と、ふと見た潮の顔は、嬉しげな表情をしていた
潮は曙と大の仲良しだからか

「提督、ありがとうございますっ」

えっ、と聞き返す間も無く、潮は俺に頭を下げていた
えっと、とか、頭を上げて、とか
そんな言葉しか出てこなかったが

俺が曙に、何かしてやれているのだろうか



「曙、改装の報告書ってあるかな」
「ん。これ」
「助かる」

来る日も来る日も作業の繰り返し
曙に関しては出撃までしてもらっていて、頭が上がらない

そこで、ふと思い出す潮の言葉

『心なしか明るくなった気がするんです』

……曙には、何も出来ていない気がするが
自然と口は動いた

「……なあ曙」
「今度は何よ」
「曙は今、幸せか」


少し、曙の動きが止まった気がした

しかし、またいつものつんけんした声と顔で
曙らしい、可愛らしい仕草で返した

「な、何変なこと言ってんのよクソ提督っ。そんなこと言ってる暇あるんだったら、とっとと仕事しなさいよ!」

やはり、曙には元気が似合う
棘のある言葉に、俺は苦笑いで返すしかなかった

……夢は夢、か

一応ここで一旦区切り
次は大体考え付いたら投下します
あと六駆と七駆間違えたのほんとバカヤロウでした…ぼののごめんよ

おつおつ
続き待ってるからね

おつん

乙乙
期待

方向性に迷うダメ>>1です_(:3」 ∠ )_
エロ期待してる人いる?

いらん

元々の構想ならともかく無理に入れる必要はないと思う

レスくださったり見てくださってる方々に感謝
意見もありがとうございます、ゆーっくり進めていきます


 ***

小さな異変から暫く

あの夢は今でもたまに見る
しかし、曙はいつも通りつんけんしているし、七駆のみんなは元気で、鎮守府には活気がある
夢が執務に影響を及ぼすかと言われればそんなこともなく

……気になる点があるとすれば
やはり夢の中の曙のことになるのだが

「曙」
「なに、提督」
「これは、夢なのかな」
「夢……そう。夢」

薄暗く、だんだんと気温も下がってくる時期
ベッドの上で胡座をかく俺に、すっぽり収まっている曙はそう返した
最初の頃ほど、不安げな声を上げることはなくなった
体を擦り付けたり、臭いを嗅いだりはするが

「夢……か」
「ええ。本人からしたら、こんなに奇妙で、恥ずかしくなる夢なんかないわ」
「……」

後ろから回す俺の両腕を、曙はもっとと言わんばかりにぐいと引っ張った

夢だけど夢じゃない!

腕を引き寄せられて、自然と曙の肩に頭が乗る

「こうして、曙の匂いを嗅いでると」
「俺は今、どうなっているんだとか、何をしているのかとか」
「全てがあやふやになるんだ」

本音が漏れる
昼間が快活で、少女らしさ溢れる曙だとしたら
こちらの曙は、儚さや母性が謎めいて、ない交ぜになっていて
これが現実であれば、この二つの面は解離しすぎていて、ともすれば危険性孕んでいるようにも感じる

すると突然、曙はこちらに向き返り、膝立ちになって、首に両腕を絡めて耳許に口を寄せる

「ねえ、提督」

背筋に心地好く、甘い寒気が走る

「私は……私はね」

息遣いが、俺の全てをベッドの上に縛り付ける

「提督が──」





そして俺はまた、目を覚ました

「……」

俺は既に、夢と現の区別がつかなくなっているのだろうか

確かに書類を整理するために握ったペンの感覚はあるし、外では追いかけっこをする駆逐艦達の黄色い声がする
太陽は眩しいし、鎮守府近海の水面は太陽光を反射して輝いている
潮風が鼻腔をくすぐり、隣には秘書艦の曙が

曙が……

「……何よ?」



…………俺は今、夢の中にいるのだろうか?

微エロくらいなら見たいなぁ
イチャラブ

いつの間にか曙という存在は、俺の中に何か暴力的と言えるまでの衝動を生むスイッチになっていた
すらりとした姿が、ふわりと風に乗る匂いが、他を鼓舞する声が、時折触れる手が

もはや、夢だけでなく現実の曙すら、俺を狂わすのだ

「クソ提督!」
「!」

物思いに耽る俺を呼び戻したのは、秘書艦である曙の声だった
俺の腑抜けように、眉をつり上げる曙の姿を見て
俺は明晰夢を見ているような、不思議な感覚に陥っていた


どうすればいいのか分からない
俺は、曙を……



また、夜が来る──


ドアが開閉する
足音が近付いてくる
雲のない、月の大きな夜

ベッドに寝かせていた体を上半身だけ起こし、上半身から毛布をどかした手をぼうっと見つめる
扉から真っ直ぐ進む足音が、真横で止んだ

「……曙、か?」

俺はその質問を、どういう意図で投げ掛けたのか?
考えすらも、夜闇に紛れて霧散していきそうな感覚がする

長いサイドテールをゆらりと流す人影
ベッドに両手をついたその姿は、あるいは女豹のように見えた




「────そうじゃ、なかったら?」



耳許で囁く言葉は

"俺"を喰らった

「っ」

ばさりと、ベッドに引き込んでそのまま押し倒す形になる
靴でベッドが汚れることも厭わなかった
曙の顔が見える
突然のことに息を呑んでいるらしく、見開いた目は少し潤んでいる
嫌がる様子は、なかった


「俺は、曙が分からない」
「これが夢なのかも、現実なのかも」
「お前を見ていると、俺が俺じゃなくなる感覚に囚われるんだ」
「なあ、お前は一体、何なんだ」

思わず、息を荒げる
俺に倒された曙は、驚きではなく目を見開いていた

心の底から吐露された言葉だった
もう、夢だろうがなんだろうが構わなかった

もしかするとその言葉は、今の俺が今の俺たる証明だったのかもしれない
ない交ぜになり、どろどろに溶かされ、喰らわれて
それでも残ったそれは、果たして提督と呼べるものではなかったが
少なくとも俺が"俺"と呼べるものの証明



薬指に指輪をはめた左手が、頬へ差しのべられると同時に
元気さや気高さ、儚さや危うさも、全てを、包み込むように

いたずらっぽさの滲む笑顔で



「……あたしは曙、あたしが大好きな提督の、秘書艦よ。それくらい気付きなさいよ、

この、クソ提督」



俺は、紛れもなく、自分の意思で


曙と、口付けを交わした──



 ***


……曙もまた、不安だったらしく

ケッコンカッコカリまでして、秘書艦という立場を与えられてすら
それらしいことはなく、ただ過ぎていく日々
ふと街で見かけた夫婦を思い出すと、自分の立ち居振舞いまでも思い起こされて、日に日に不安が募っていった、とのことだった

俺も、壁を作っていたのだと痛感させられた
常に自分の近くに置いておきながら、駆逐艦だからと、少女だからと
……ケッコンカッコカリというシステムを考え付いた大本営に、思うところがないではないが

その後、曙は驚くほど強かった

いつも通りに執務を補佐していると思えば
昼、食堂に行けば気付かぬうちに隣でカレーを食んでいる
それに気付いた漣が、事件だとばかりに声高に曙を煽る

「珍しい!」
「どうしたの?」

すぐにその場にいた艦娘逹に囲まれ、どやされる

「あ、曙?」

隣で座っていた俺も勢いに圧され、曙に助け船を求めると、曙は


スプーンを置くと、空いている俺の左腕に抱きつき


「クソ旦那と離れるのが嫌なの、悪い?」


と、言い放つと
俺に向かっていたずらっぽく、舌をちらりと覗かせたのだった


暫く、曙の様子はおかしいままだろうと思うと
夢とも現とも分からないあの世界を、自分で少し、羨ましく思うのだった──




おしまい

お読みいただきありがとうございました
寂しがる曙も書きてえ…と思って書いた次第
こんなの曙じゃないやいとか六駆と間違えんなハゲとかの突っ込みはナシで…

HTML化依頼出してきますノシ

おつー

乙乙

おっつー


これがよかった

完結乙!
終わってしまった寂しい…ぼのちゃんにクリスマスケーキあげてこよう

やっぱり…ぼののSSを…最高やな!

乙!
結局アレは現実だったのか?

いいゾ~これ
憲兵にしょっぴかれないなら沼でもいいよね・・?

オツオツ

流石の可愛らしさ。これで堕ちないクソ提督はいませんよ!

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