・主な登場キャラ
池袋晶葉、一ノ瀬志希
モバP、ほとんど出番なし
※池袋晶葉
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※一ノ瀬志希
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●●
――ウブな晶葉ちゃん。可愛いねー、キラキラしてるね~。
――でも、恋を知っちゃってムズムズドキドキ、ピンク色になった晶葉ちゃんのココロは……
――きっと、もっとステキなんだろうね……♪
●
「ねーねープロデューサー、もとい助手くーん、志希ちゃんの試作品の実験台になってよ~」
「こら、プロデューサーにアホなこと言ってないで、早くシートベルト締めろよ、志希」
プロデューサーが運転する営業車の中。
運転席のプロデューサーの首根っこに、後部座席から志希が手を伸ばして腕を絡みつかせようとしていると、
左横に座っていた晶葉が、志希に蹴りを入れた。
二人とも、ハンドルを握っているプロデューサーの担当アイドルである。
「なんだよー晶葉ちゃーん、年上を足蹴にするとか、扱いひどくなーい?」
「年上なら年上らしく振る舞ってくれ」
志希は頬をふくらませながら、蹴られた左スネを大袈裟にさすっていた。
が、晶葉がそれを無視して自分のタブレットを眺め始めたので、
志希は痛ましげな手つきをすぐに打ち切ってしまった。
「志希、プロデューサーに妙なクスリを使うんじゃないぞ。プロデューサーは、私の……」
「私の?」
「……そう、もともと私の助手なんだからな」
「ふっふー♪ 晶葉ちゃんったら、絶対特権を主張?」
「茶化すなって。志希のクスリは、そこらのオモチャとはワケが違う。大変なことになるかも知れんのだぞ」
「うんうん、わかってるよ、池袋博士♪」
既にプロデューサーが発車させていたため、
晶葉はシートベルトを締めたまま、隣の後部座席に座る志希を睨んだ。
●
個性的なアイドルを数多く擁するCGプロのなかでも、
池袋晶葉と一ノ瀬志希のコンビは異彩を放っている。
晶葉はアイドルになる前から、ロボットコンテスト界隈では知られていた女子中学生だった。
アイドルになってからも、自作ロボットにチョコレートを作らせたり、ライブを盛り上げさせるなど、
その腕前をますます磨いている。
一方、志希はアメリカの大学を飛び級で卒業した俊才で、とりわけ薬理学についてはお手の物。
嗅覚が敏感で芳香について一家言あり、香水を自作するほどのこだわりを持つ。
その技能を活かし、香水ブランドとコラボレーションしたこともある。
二人は『理系分野に強い』というアイドルにおいて希少な個性と、
『理系のなかでも得意分野が少し異なっている』という相性を見込み、
プロデューサーは二人にユニットを組ませた。
プロデューサーの考えは図に当たった。
トーク番組などでは『暴走気味に突っ走る志希を、晶葉がたしなめる』という構図が、
ある種お笑いコンビに似た親しみやすさを醸し出し、人気にも幅が出てきた。
今や二人もプロデューサーも、仕事が次から次へと舞い込んで大忙しである。
「へー、『オートパイロットシステムの技術的――』……ふーん、ロボットも進んできたんだねー」
「志希、お前なぁ……私が買って読んでる雑誌を、なんの遠慮もなく覗き見するんだなぁ」
晶葉が移動中の暇つぶしにタブレットで雑誌を読んでいると、横から志希が口を出してきた。
「いやいや、あたし工学は畑違いで苦手なんだよー。だから、覗き見してもよく分かんなーい♪」
「志希に『早起き』と『待つこと』以外の不得手があるとは、初耳だが?」
結局、晶葉は志希と二人で雑誌の記事を眺め、
記事についてあれこれと喋りながら移動中の時間を過ごした。
晶葉にとって志希は、ロボットの話題を共有できる唯一の同僚だったのもあり、
仕事で組み始めて話す機会が多くなってからは、事務所の中でもかなり親しい人間となった。
●●
――レッスンや仕事から失踪したり、アヤシイ香水を持ち込んだり、
――アイドルたちのニオイを文字通り嗅ぎまわったり……
――そういう奇行のせいで、志希はイロモノ扱いされている……が、志希は本当にすごいやつだ。
――志希は私と4歳しか違わないのに、薬理学のPh.D.なんだぞ。
――しかも、畑違いのはずのロボット工学についても、ちゃんと話せるほど飲み込みが速い。
――私も、ちょっとばかりロボットがいじれるものだから、天才少女とか持て囃されたものだが……
――本当の天才とは志希のことだ。あいつに比べたら、私はまだ普通だ。
――もし白衣を着たままだったとしたら、一生追いつける気がしない。
――『白衣を着たまま』だったとしたら、だ。
――アイドルとして……女子としては、負けたくない。
●
ある日、晶葉と志希はレッスン後の疲れた体を、
事務所の一階にあるカフェで休めていた。
くつろいだ雰囲気のとりとめのない話で、話題が志希の新曲『秘密のトワレ』へ飛んだ。
「この間ねー、『秘密のトワレ』の収録で、実験をプロデューサーに手伝ってもらっちゃったんだ。
すっごくよかったー♪ プロデューサー、もとい助手くんの好き勝手楽しくできたし……
おまけにファンのみんなからも好評だったんだってー!」
志希から『助手くん』という単語が出た瞬間、
晶葉は眼鏡の奥の目蓋をわずかに引きつらせた。
「さっすが、晶葉ちゃんの助手として鍛えられてるだけあるよね。やーるぅ♪」
「……あんまり酷使してやるなよ。プロデューサーは、私の助手でもあるのだから」
志希はプロデューサーを通して晶葉を賞賛している風の口ぶりだったが、
それに対する晶葉の返答には、決まり悪さが混じっていた。
「ねーねー、晶葉ちゃんは何で、プロデューサーのコトを『助手』って呼ぶようになったの?」
「……たいした話じゃないよ」
「えー志希ちゃん気になるー! いーから、いーから、聞かせてよー!」
志希の笑みは、猫っぽい顔の造作のせいか、それとも普段の行動のせいか、
いたずらっぽい含みがにじみ出ているように見える。
それは表情のせいか、それとも何かしら腹に一物あるのか。
「……あれは、私がプロデューサーにスカウトされた頃の話だよ。
志希は、自分からプロデューサーへ声をかけてアイドルになったんだっけな。
じゃあ知らないかもしれない……プロデューサーのスカウトは、本職以上にしつこいんだ」
それでも晶葉は、志希にいきさつを語り始めた。
『助手』との思い出を語って聞かせるのが、まんざらでもなかった。
●
――
――――
――――――
「プロデューサーから声をかけられるまで、私はロボットいじりばかりで楽しく過ごしていたが、
アイドルに対する興味も、少しはあった。可愛さへの憧れが、人並みにはあった」
「……でも、声をかけてきたのが、あのプロデューサーだったからなぁ……。
私は、スカウトが本当か怪しんだよ。プロデューサー、ちょっとクセモノだろ?
何せ、初対面の志希と波長が合うぐらいなんだから。常人とは言いがたいよな」
「あの時は、アイドルなんて始めたら、ロボット製作がおろそかになると思っていて……
そう、私は将来ロボットで食っていくものと決めて、そういう人生の設計図を引いていた。
だからプロデューサーには、随分つれなく断ってやった」
「それでもプロデューサーは、懲りずに私を訪ねてきた。
それを私は、何度となく邪険にして……今思えば、悪いことしたもんだ」
晶葉は、口では過去を悔いていたが、志希へ語る顔つきは緩んでいた。
拒絶しても、なお求められる。
自分が特別な存在だ、と行動で語ってくれていて、それが晶葉の心をくすぐる。
「ある休日、私は秋葉原まで電子工作パーツを冷やかそうと、山手線に乗ってたんだが……。
ふと、財布を開くと、捨てられずに残っていたプロデューサーの名刺が挟まってたのを見つけた」
「事務所までは、一時間もかからない見込みだった。私は目的地を変えて……今の事務所までやってきた。
お一人様の気楽なおでかけの格好で、名刺に書いてあった住所までたどりついたら、このでかいビルだよ」
「……正直、怖気づいた。だいたい、名刺があるとはいえ、アポ無しだったし……。
でも、このままスゴスゴと帰るのもシャクだった。だから……」
「私は事務所1階のカフェで――今、私と志希がいるこのカフェだよ――で、
コーヒーを一杯頼んで、そこで名刺に書かれた番号に電話してみた」
「君の事務所に来てる。今なら、アイドルの話聞いてもいいって――ムチャクチャだよな」
●
「なんで、わざわざそんなことしたんだろうな、私は」
「確か、アイドルデビューの話を断るつもりだったハズなんだ」
「アイドルになれたら、面白いかもしれない……でも私は、アイドルかロボットどっちかとれ、
と言われたら、ロボットをとる――少なくとも、あの日はそう思ってた」
「ただ、何度も熱心に声をかけてくれたのが嬉しかったから、せめてもの義理として、
プロデューサーのところまで行って、面と向かって返事をしよう、と思ってた」
「それに……なんだか、プロデューサーは私の父に似てる気がしたんだよ。
機械いじりばかりにかまけてる父に……無碍にできなかったのは、そのせいもあるかな」
「プロデューサーは、私のことを覚えていてくれた――声だけで、気づいてくれた。
また、アイドルになろうかと心がぐらついた。時間はあまりとれないが、とにかくすぐ行く――と返事がきた」
「……驚くべきフットワークの軽さだよなぁ。
志希が失踪しても、プロデューサーならすぐ見つけられるはずだよ」
「プロデューサーは忙しそうだったから、私は自分の気持ちをすぐに告げた。
スカウトしてくれたのは嬉しいけれど、私はアイドルよりロボット制作を続けたい、
だからアイドルにはなれない――と。そうしたら……」
「プロデューサーが言った……『アイドルがロボット作ったっていいじゃないか』って」
「そのあたりのやり取りは、一字一句覚えてる。
『アイドルがロボットをつくって、ファンのみんなをドキドキワクワクさせ、心を動かせるだろうか。
俺はロボットはズブの素人だが、アイドルの専門家として、挑戦する価値が大いにあると思う』
『さて、晶葉は……アイドルは素人だが、ロボットの専門家だな。
ロボットの専門家としては、どう思う?』……なんて、な」
「――嬉しかった。こんなに嬉しかったことがあったか?」
「……私は、ロボットをつくってて褒められたことはいくらでもあったが、
その褒め言葉には、いつも『女子中学生にしては……』という前提が隠れていたんだ」
「助手はそうじゃなかった。対等な専門家として認めてくれた」
「もうロボットとかアイドルとか関係ない。
この人と何か大きなことをしてみたい、と思わされてしまった」
●
――――――
――――
――
「あの日から、私はアイドルを目指すことになった。
芸能界では、プロデューサーのが先輩だから、私はあの人を頼る。
でも、ロボット作りでは私が先輩で、プロデューサーが『助手』……これで二人は対等なのさ」
「……とまぁ、こんな感じで……面白かったのか、志希?」
一通り語り終わった晶葉は、志希にカフェテーブルの向こうから顔を見つめられているのに気づき、
照れると同時に驚いた。あの志希が、3分以上黙って他人の話を聞くなんて……。
「聞いちゃった……これが晶葉ちゃんと助手くんの……ナ・レ・ソ・メ♪ ってやつだね!」
「馴れ初めって、志希よ……いや、そうと言えなくもないがなぁ」
志希は依然として晶葉の顔へ視線を注いでいた。
晶葉は、眼鏡ごしに見える志希の瞳が、いつもより鋭く光っている気がした。
視線が絡んだ瞬間、晶葉の心臓がトクンと高鳴って、
晶葉は思わず自分の胸を抑えた。
「つまりプロデューサーは、助手として晶葉ちゃんのお墨付き、ってコトなんだ!」
「まぁ、そうだな……だから、あまりヘンなクスリとか使わんでくれ……大事な人なんだから」
「おっけー♪ そーゆーコトなら、早速、試作品を仕上げなきゃね!」
「志希は本当に人の話を聞かないな!?」
「晶葉ちゃんのお気に入りなら、ますます欲しくなっちゃう……かも?」
「ハハハっ、独り占めはよしてくれよ。
助手は志希のプロデューサーでもあり、私のプロデューサーでもあるんだ」
「ホントは、助手くんスキスキ~って独り占めしたいの――晶葉ちゃんの方じゃなくって?」
「……ハハハ、恋愛とか。志希もたまには女の子らしい話もするんだな」
晶葉の笑いが、一瞬にして乾いた。
「助手くんと晶葉ちゃんの話、もっと聞きたいけど……今日はここまで、かな。じゃあねー♪」
晶葉の表情が戻る前に、志希はカフェの席を立った。
「……おーい、お勘定置いてってくれよ。これ会議費じゃ落ちないだろう?」
「ハイハイ。年下に奢らせるわけにはいかないもんねー」
「あ、これ多いぞ志希、今おつりを渡す――」
「いーよ、いーよ。とっておきなさーい。
晶葉ちゃんは、コーヒーもう一杯分ぐらいココで――助手くんとの思い出の場所で――
その思い出に浸りながら、考えとくべきコトがあるでしょ♪」
「志希ったら、何を言ってるんだ……」
「ふっふー、じゃあねー晶葉ちゃーん!」
志希は、シワだらけの野口英世を3枚つまんで晶葉の手に押し付け、
鼻歌交じりで嵐のように去っていった。
「助手くん、助手くんって……志希め」
晶葉は、老人のようにシワくちゃだった野口英世の顔を、指で延ばして綺麗にしてやった。
「プロデューサーのことを『助手』と呼んでいたのは、私だけだったんだがな……」
●●
――falling loveのきざし、見せちゃう?
●
「CGプロチャンネルのみんな、よく来てくれた。池袋晶葉だ!」
「にゃーっはっはー! 一ノ瀬志希だよー♪」
晶葉と志希は、この日事務所のスタジオで小さな撮影をこなしていた。
媒体は、事務所公式のチャンネルでネット配信する番組の1コーナーだった。
「今日はねー、志希ちゃんと晶葉ちゃんの二人で、
モニタの前のみんなをハッピー☆ジーニアスな気分にさせちゃうぞ!」
今回は、社内外から寄せられたメールを元に、トークを二人で進めていく、という内容だった。
「――じゃあ、次のメールは……ハイ! おおっ、なんと、このメールは……
パリ出身の――ハンドルネーム『必殺! ブッシュ・ド・ノエル!』さんからです。
晶葉ちゃん、パリだってよ! あたしたち、いつの間にかこんなにインターナショナルになったんだって!」
「……今、ちらっと見えたメールの文面、日本語に見えるのだが?」
「細かいコトはキニシナーイ! じゃ、志希ちゃんがさっそく読み上げます!」
『池袋晶葉様 一ノ瀬志希様
前文お許しください。
お手紙をさし上げるのは初めてですが、いつもお二人のご活躍を拝見しております』
ハンドルネームに対する文面の落差に、晶葉は危うく吹き出しかけた。
『……さて、わたくしはかねがね人生の疑問として抱いていることがあります。
お二人はアイドルとしてご活躍されるほか、学問を修めておられるとうかがいました』
『お二人のような見識の高い方から、この疑問に答えていただければ幸い……
と思い、拙いながらお手紙したためさせていただきました』
「……なぁ、志希。途中で止めてごめんな……『人生の疑問』だって?」
「うん♪ なんだか責任重大そうだね。やめとく?」
「ここまで読んでソレはないだろ!」
「分かった分かった、じゃ続きね――」
●
『……わたくしは、父親は日本男児、母親はパリジェンヌという生まれです。
両親は恋の都とも称されるパリで出会い、その地にふさわしい大恋愛を経て結婚し、
一児――つまりわたくし――をもうけ、今でも仲睦まじく暮らしております』
『わたくしも、両親のような幸せな家庭を築くことができれば、と思っております。
しかし、わたくしは人生19年を閲(けみ)した今でも――恋愛というものが、よく分からないのです』
19歳って、私や志希より年上じゃないか――と、
晶葉は内心からあふれそうなツッコミを必死で抑えた。
『お二人はとても美しく、その上に見識も備えている才色兼備の方と存じあげております。
男性から想いを寄せられたこと、また自分から誰かに想いを寄せたこと
そういった経験があるのではないか、と僭越ながら推察いたします』
『その経験と知性をもって、わたくしの疑問――恋愛とはなにか? について、
ご回答いただければ、身に余る光栄と存じます。
乱筆乱文お許しください。 かしこ』
「以上、『必殺! ブッシュ・ド・ノエル!』さんからのメールでした!
ふっふー♪ ねーねー晶葉ちゃーん、あたしも、晶葉ちゃんの恋バナ、聞きたーい!」
「わ、私は……その……れ、恋愛……だろう……?」
「私は……物心ついてから、機械やロボットを弄くり回すのが、三度の飯より好きだったから……
惚れた腫れたとかのハナシは、普通の女の子より……たぶん、疎いと思う」
「ぶーぶー! 晶葉ちゃんお行儀良すぎー! ホントに晶葉ちゃんなの?
『アイドルたちをサイボーグへ改造してやろうか!』とか言ってたマッドな池袋博士はどこへ……」
「じゃ、じゃあ、そんなこと言う志希はどうなんだよっ。アメリカ時代とか……恋愛経験、あるのか?」
「……そーね。あるには、あるよ」
適当に流される、と思って聞き返した晶葉は、意味ありげな志希の声音にぎょっとした。
志希の発言が、アイドルとしてセーフの範囲に収まるのか。
「……そのヒトは、とっても熱心に、あたしへ声をかけてくれた。
ただその頃、あたしは別のコトに夢中で、『キミのハナシはキョーミないよ』ってつれなくして……
それでも、そのヒトは何度でもやってきて、ねぇ」
「そーしてるうちに、そのヒトのコト、ちょっと気になるようになっちゃったんだ。
でも、思いに応えられない事情があって……せめてきちっと返事しなきゃ、って思って、
そのヒトのおうちまで電車に――あ、あたし電車に乗れない設定だったっけ? まぁいいや、とにかく――」
プロデューサーが止めるより先に、晶葉が志希の口を手で押さえつけ、
無事収録はリテイクとなった。
期待
●
ボロボロのテンションになりながら、なんとか収録を終えた晶葉は、
例のカフェに志希を引きずっていき、テーブル越しに対峙していた。
「……志希。私は、怒ってるぞ。今までにないくらい、怒ってる」
「……知ってる」
晶葉から見て、志希の表情は珍しく――いつになく引き締まっていた。
それでも晶葉は、こう問い詰めた。
「私は、お前に茶化されるために、思い出話をしたんじゃないんだぞ」
「あたしも言っとくけど。志希ちゃん、茶化したつもりはないよ」
「ねぇ、晶葉ちゃん。晶葉ちゃんは、恋しちゃってるんじゃないの?
脳ミソかっさばいたら、フェニルエチルアミン出てるよ、きっと」
「……これはまた、志希らしい恋愛の定義だな、まったく」
「ねぇ、知ってる? フェニルエチルアミン出るほどのトキメキって、
せいぜい3年ぐらいしか続かないよ。恋の賞味期限が、ちょうどそれぐらい」
「……知らなかったよ。私、あいにくと恋愛は疎いもんでな」
「恋の賞味期限って、合理的だよねぇ。恋に落ちたとして、もしそれが叶わなかったら……
3年以上も恋煩いするの? みんな死んじゃうよ。3年もたずに死んじゃうヒトもいるみたいだけど」
「何が言いたいんだよ、志希は」
「晶葉ちゃん、助手くんに恋しちゃってるでしょ」
●
――プロデューサーは私のよき理解者だ! 天才の助手にふさわしい!
――私の事を色眼鏡で見ないでちゃんと評価してくれていたんだな……
――嬉しいぞ! お返しに私の手製のロボットを……
――天才はいつも孤独というが、助手がそばに居てくれたら私は孤独ではないな……!
――ずっと……ずっと一緒にいて……?
●
「……志希」
「何さ、晶葉ちゃん」
「私は……3年とか、そんな一過性の短いスパンじゃなく、もっと長い目で助手との関係を考えてる」
「……へぇ」
「何せ……私の人生の設計図を書き換えてしまった人間だしな!
人前に出るのが苦手だった私が、今や一端のアイドルだよ」
「はー、助手くんのセキニン、すごく重大だねぇ」
「……でも」
「……プロデューサーみたいな仕事に突っ走ってる男は、きっと恋人には向かない。
だから、担当アイドルとプロデューサーって立ち位置が、私には一番しっくりくるんだ」
晶葉は、言ってしまってから気づいた。
その言葉には『可能ならば……』という内心が、にじみ出ていた。
「……いつものドヤ顔に、陰りが見えるよ。晶葉ちゃん」
「ブラフだ。いくら志希のアタマが良いからって、何でもかんでもお見通しと思うな」
「……ふーん」
「あたし、晶葉ちゃんは仲間だと思ってるから……先に言っておくね。
あたしは、時間を無駄にはしない主義なの」
「……どういう意味だ?」
「3分で焦れちゃうあたしが、3年もつわけないよね……?」
「だからあたし、助手くんを3日でモノにしちゃうから」
晶葉と志希を担当するプロデューサーが仕事中に昏倒したのは、
ちょうどその3日後のことだった。
●●
――chu chu chu... 人体実験chu♥
●
志希から、プロデューサーが倒れたという連絡を受けた晶葉は、自分の学校を仮病で早退した。
教師たちは、普段の晶葉が優等生だったのと、
その時の晶葉の様子が実際におかしかったので、彼女の申告を信用した。
晶葉は、ローファーの底を地べたに叩きつけるような足取りで、
プロデューサーの担ぎ込まれた病院まで進んでいた。アイドルにあるまじき、荒っぽい立ち居振る舞い。
だが今日に限っては、周りに目をひそめられてもお構いなしだった。
「随分早かったね、晶葉ちゃん。まだ学校終わってないんじゃない?」
「志希だって学生だろうが」
「義務教育じゃないから、お仕事っていっとけば晶葉ちゃんより融通利くんだよ」
病院に着く間際に晶葉が志希へ連絡を入れると、病院の前で志希が待っていた。
志希はいつもの仕事着である白衣を脱いでいた――病院では着れないでしょ、とのことだった。
晶葉は詳しく把握していなかったが、志希ソロの仕事に付き添っている最中に、
プロデューサーが体調を崩したとのことだった。
「助手くんったら、いきなりぐったりしちゃってねぇ。最初、間違えて911にかけちゃったよ。
出先だったから、身内があたししかいなくて、救急車に乗って付き添って、ここまで来たの」
「その……助手の具合は、どうなんだ」
「いろいろ検査されてたけど、終わったあとは点滴一本刺されたっきり。
成分見たけど、入ってたのは電解質ばっかり。今のとこは深刻じゃないみたい。
……ま、今はプロデューサー寝込んでるから、お話はできないけどね」
昼間の救急外来は、晶葉が想像していたより静かで整然とした空気が流れていた。
「助手くんくらいの年頃の男の人が倒れて、付き添いで真っ先にやってくるのが、
あたしや晶葉ちゃんみたいなうら若き乙女ってのは、ちょっとアヤシイ画、かもね」
志希の軽口に、晶葉は生返事で応えた。
馬耳東風だと察した志希は、プロデューサーのいる処置室まで口を開かなかった。
処置室の扉を開くと、晶葉はまずベッドへ横たわるプロデューサーの顔を見て、
そのあとすぐに点滴に吊るされていたバッグの文字を見た。
「あたしの言ったコト、信じてなかった?」
「志希が言ってたから、一応見ただけだ。だいたい、私は点滴の成分なんぞ知らんからな」
「モルヒネ塩酸塩とか書いてなくて良かったね~」
部屋はベッドのほかに広げられたパイプ椅子が一脚――志希が座っていたものらしい。
晶葉は部屋の隅から畳まれたパイプ椅子を引き出し、ベッドのそばに広げて置いた。
「しっかし、助手くんがパッタリ倒れちゃうなんて。
この志希ちゃんともあろうものが、しくじっちゃったかなぁ……」
プロデューサーが寝ているため、話すこともなく黙っていた晶葉は、
わざとらしくも聞き捨てならない志希の独り言に反応した。
「志希、今……なんて言った?」
心拍数が上がり、顔の肌は紅潮した――まるで恋しているように。
「いや、ね。今日も助手くんに、新作を一服あおってもらったのさ。
もしかしたら、それとスタドリの飲み合わせが悪くて、悪さしたんじゃないかーって。
予備実験、あたし自身でしかやってなかったからかも――」
二脚のパイプ椅子が派手な音を立てて倒れ、志希の言葉が途切れた。
いつも工具を握っている晶葉の手が、今は志希の白いデコルテに指を食い込ませていた。
●
その光景はとても奇妙だった。
プロデューサーの眠る処置室の床で、晶葉は志希を突き倒し、馬乗りになって掴みかかっていた。
にもかかわらず、志希は涼しい顔をしていて、むしろ晶葉の方が息を荒げていた。
「――志希っ、おい、志希っ!」
「……自分の名前ぐらい、教えてもらわなくても知ってるよ」
「茶化すんじゃない、お前――助手に、何をした?」
天才ロボ少女の顔は、怒りでどこかへ弾け飛んでいた。
もし今プロデューサーが意識を取り戻しても、
起き抜けにこの二人の様子を見たら、またすぐ卒倒してしまうかもしれない。
「晶葉ちゃんが心配するコトなんかないよー。あたしだって、助手くんとアイドルやるの楽しいし。
まだまだプロデューサーとしてキリキリ働いてもらわないと、って思ってるから」
「私がっ……私が言ってるのは、そういう問題じゃ……っ」
「あたしのクスリなんかより、スタドリで慢性的過労を誤魔化してるほうがよっぽどヤバイよ。
助手くんに強制的に休みを取らせる、という意味では、コレちょうどいいでしょ。
休んで不都合があっても、あたしのせいになるし」
激高する晶葉を、志希は面白そうに見上げていた。
「それより……ねぇ晶葉ちゃん。あたしのクスリ、どんなの想像したの? 惚れ薬かな?
助手くんが、あたしに取られちゃって、手の届かないところに連れて行かれちゃうんじゃないかって、思った?」
晶葉は言葉がなかった。
ただ、志希の襟首を掴み続けるのが精一杯だった。
「父親が――とか、もっともらしい御託並べてたけど、もっと助手くんに構ってもらいたいでしょ」
志希の弁舌が、興奮で真っ白になった晶葉の心を叩く。
「助手くんを独り占めしたいでしょ。あたしに取られたくないんでしょ」
晶葉は俯こうとしたが、馬乗りになって志希を見下ろしていたため、これ以上首を下げることはできなかった。
「キスとか……したいよね。シテみる? 今なら、バレないよ……♪」
「認めちゃおうよ、恋しちゃってるって」
●
「……助手は」
志希が口を閉じてから、永遠とも思われるような間を置いて、晶葉が口を開く。
「……助手は、私の父に似てるんだよ……父はロボ作り、助手はアイドルのプロデュース。
自分の熱中していることに一直線で、恋人とか、家族とか顧みない、甲斐性の無さそうなヤツで……」
「……うん」
「だから……担当アイドルとプロデューサーって関係が、いいのかな、って思ってた。
仕事なら……私でも、ほかの子と同じくらいには、助手と一緒にいられるから……」
「……『ほかの子と同じくらい』で、満足できるの?」
志希の問いに、晶葉はまた言葉をつまらせた。
「その問いに対する答え、プロデューサーが目覚めるまでには、用意しておきなよ。
じゃなきゃ、想いをくすぶらせたままになって、色々と良くないもの」
「……ま、その前に、あたしのハンカチ使っていいから、顔を拭っておこっか。
泣いてるところとか――スキなヒトには、あまり見せたくないもんね」
●
――やれやれ。キューピッドの戯れも、ここらでオシマイかな?
(前編終了)
申しわけありませんが、
>>18は普通の黒字ということにしておいてください
(後編)
※前編と比べると1/3ぐらいの長さ
※ここから先は同性愛的描写を含むため閲覧注意
●●
その日の一ノ瀬志希は、朝から興奮していた。
「ふっふー……♪ え、プロデューサー?
ナニナニ、志希ちゃんが朝なのにテンション高くて珍しいって?」
プロデューサーの問いに、志希は声を弾ませて答える。
「実は今日ねー、お仕事が終わったあと、あたしんちで晶葉ちゃんと二人……
ハッピー☆ジーニアスなお泊り女子会をやっちゃうんだよー!」
「え? 『お前の部屋、客を招待できるような状況か』って……?
……だ、だいじょうぶだよ、晶葉ちゃんだから」
「おい志希っ、私のことなんだと思ってるんだ」
志希は自宅に一人暮らし。
その部屋は、置いてあるものすべてが彼女の趣味である科学実験のために最適化されており……
つまり、普通の人間が足を踏み入れるには、いささか躊躇されるような状況であった。
以前、志希の自宅まで志希を起こしに行ったプロデューサーは、そのことを知っていた。
年頃の女子が『友達の家へ泊まりに行く』といっても、
その言葉通りでないことが、世の中ままある。
ただプロデューサーは
『志希の家であれば、一人暮らしでも男を連れ込んだり逢引の場所にはされない』
という意味で彼女を信頼していた。
だからプロデューサーは、仕事が終わって並んで帰る二人を、安心して見送った。
●
一方、晶葉の方も、プライベートな外泊を楽しみにしていた。
アイドルとして忙しくなった今、仕事以外で家を空けることは本当に久しぶりだった。
「昼間いっつもお喋りしてるお友達とでも、夜を過ごすとなると、ちょっとドキドキするよね」
「修学旅行で、つい夜更かししてしまようなものか?」
「かもね。あたし、ティーンの頃にはもうあっちの大学にいたから、修学旅行ってのはよく分からないけど」
志希の家は、事務所最寄り駅から電車で数十分、駅から降りて徒歩10分ほど。
繁華街と住宅街の境目あたりに立っている一戸建てだった。
「……志希って、もしかしていいところのお嬢様なのか?」
晶葉は、その家を志希の持ち家だと推測した。
庭に得体の知れない植物の鉢植えがずらりと並んでいたり、
中身のよく分からないドラム缶が立っていたり、壁には小火のあとらしき焦げ跡が散見された。
借家だったとしたら、こんな狼藉を起こす志希はあっという間に追い出されていただろう。
「まぁ、留学費用とか工面してくれるぐらいのおうちではあったかな。
でもこの志希ちゃんラボは、志希ちゃんのポケットマネーでワケあり物件買って改造したものなのだー♪」
「ええっ、私たちそんなギャラもらってないぞ!?」
「んふふー、アメリカ時代に、ちょっとキワドい稼ぎやっててね……それで、ポーンと一括。
ほら、研究ってお金が湯水のごとく飛んじゃうでしょ?
だから先立つものが必要で貯めてたんだけど、ちょうど研究に飽きたから余っててさ」
親指と人差指で円をつくって得意顔をする志希を見て、晶葉は素直に感心した。
このぐらいの型破りは、志希と一緒に行動して慣れっこになっていた。
二人は志希の家へ入ると、志希の実験の成果物についてあれこれ談義したり、
あるいは同僚の出てる番組をテレビで見ながらお菓子をぱくついたり、
晶葉が手こずっていた英語の宿題を志希に教わったり、リラックスした時間を過ごしていた。
●
「ねー、晶葉ちゃん、そういえば……あれから、プロデューサーとはどうなったの?」
プロデューサーが救急車で病院に担ぎ込まれた日以来、
志希はプロデューサーのことを『助手くん』とは呼ばなくなった。
「どうって、その……」
「晶葉ちゃんの顔を見れば、なんとなーく分かるけど、
それでも晶葉ちゃんの口から、聞かせて欲しいなー♪」
それは、自分が背中を押した晶葉への義理立てか。
それとも――
「助手にとって、私は……せいぜい担当アイドル。希望的に見ても、仕事上のパートナー程度らしい。
そうでなくても、少し年の離れた妹とか、そんな感じで……だから、体よく断られてしまった」
「告白、したんだ」
「……じゃなきゃ、志希が次にナニやるか分かったもんじゃないしな」
晶葉の笑みからは、自分の想いを吹っ切ったのか、そうでないのか……
少なくとも、志希には読めなかった。
ただ、志希にとってそれは、もはやどちらでもよかった。
「ほかの人より、特別な目で見て欲しい……その目を独り占めしたい。
そう思うようになったら、恋なのかな」
「それに加えて、キスとかセックスもしたい! ってなったら、恋と言っていいんじゃない♪」
「志希は即物的だなぁ……間違っても、ほかの子にそんな言い方するなよ?」
「おおっ、その言い方ときめいちゃうかも♪ あたしも、キミの特別なヒトに、なれる?」
「いちいち言葉尻を捕らえるなよ。でも、まぁ……志希には、特に感謝してる。
恋愛とか、私にはよくわからないし、かと言ってロボットいじりばっかりやってる私が、
恋愛相談なんかしても、笑われてしまうよ」
晶葉の自嘲に、志希は首を横に振った。
「……そんなことない」
「志希?」
「晶葉ちゃんは、少なくともあたしが初めて会った時から、可愛いかった。恋を知るべき女の子だった。
プロデューサーの眼力も大したものだよ……ま、今のほうがもっとステキになってるけどね」
「そうか? て、照れるな……」
「だから、そろそろなんだよ……友達ごっこも、今日でオシマイにしよ♪」
●●
――キミから見たら、狂気の沙汰。
――それでもいいの。キミがスキ。
●
「わっ――ちょ、おい、志希、くすぐった――んぁあっ」
志希の家でソファの上に組み伏せられたとき、晶葉は戸惑っていた。
友人の域を超えた過激なスキンシップをいきなり敢行してきた志希と、
それに対して痺れるような感覚を走らせた自分の肌に、驚いていた。
病院の処置室とは逆で、志希が上になり、晶葉は下だった。
「ねぇ……晶葉ちゃん、キス、しよ。晶葉ちゃんの粘膜のフレーバー、知りたいなぁ……♪
プロデューサーが初恋で、その恋を袖にされたんだから、これが晶葉ちゃんの初めてになるのかな?」
志希が人差し指で晶葉のくちびるに触れると、そこが熱くぴりぴりと震えた。
「し、志希……おい、冗談、だよな……?」
「ううん、違う。志希ちゃん、面白くない冗談はキライ。晶葉ちゃんはスキ」
志希の吐息が至近距離に迫って、晶葉のアンダーリムのレンズを曇らせる。
「ね、晶葉ちゃんはどう? ドキドキする? してる?」
「そ、それは……」
晶葉の歯切れは、志希に相対するにはあまりに鈍かった。
「し、志希、私は、その、こういうのは……ちょっと……」
「んー、ダメなのー? 女の子同士だから? プロデューサーじゃないから?」
志希が晶葉のトップスのなかに手を差し入れて肌を撫でると、
晶葉の声帯は――本人さえ聞いたことのない――甘い響きを溢れさせた。
「ふっふー♪ 晶葉ちゃん、やっぱりドキドキしてるー!」
●
晶葉の思考は、混乱でぐるぐる渦を巻いていた。
志希は、すごいやつだけど自分勝手で、だけどお節介なところもある――そんな友人だったのでは?
それが、今は晶葉の体を組み敷いて、くちびるを、あるいはその先のものを奪おうとしている。
「し――志希、やめ……ん、くっ、んんんっ!」
晶葉は手足をバタつかせて志希に抵抗しようとしたが、
身長差10cm強の体格差で抑え込まれ、しかも力がうまく入らない。
「ホラホラ~、もっとジタバタしないと、晶葉ちゃんの初めて、もらっちゃうよー!」
志希は、曇ってしまった晶葉の眼鏡の上から、
晶葉の瞳を覗きこむように顔を寄せた。
「ダメ? プロデューサーには恋できても、志希ちゃんとじゃ、ダメ?」
「だ、ダメ……ダメ、だぞっ、わ、私たち、こういう関係じゃ……っ!」
「んー、おかしーなー」
志希は、晶葉の頭を無造作に撫でた。
志希の指に触れられた瞬間、晶葉の首筋から頭へ形容のし難い熱が立ち上った。
「今、晶葉ちゃんの脳ミソでは、フェニルエチルアミンとか、色々分泌されてるハズなんだけど」
「なっ……!?」
「惚れ薬――さすがに、クスリだけでマインドコントロールの如く好意を植え付けるのは、ムリ。
でも、脳内物質をちょーっといじるぐらいのコトなら、できる」
志希の瞳は、ベラドンナでも垂らしたように病的に開いていた。
その虹彩のなかに座った黒い色に、晶葉は視線を手繰り寄せられ、眼球まで引き摺り込まれる錯覚がした。
「あとは、パブロフの犬の要領。あたしの顔を見るたび、あたしの声を聞くたび、
あたしのニオイを嗅ぐたび……頭がぽわぽわ~ってするように、しちゃうの。
すこーしずつ……焦りは、禁物ね」
「でも……晶葉ちゃん、恋ってやつを知らなかった……。
だからあたし、晶葉ちゃんに教えちゃった。恋、そのキュンとした瞬間を」
●
「し……志希は、私に、ウソをついてたのか……?」
「ウソ? 何の話かな。ま、いいよ。
晶葉ちゃんとのお喋りは、いつも楽しいから……キスは待ち遠しいけど、付き合っちゃうっ」
「志希は……何で、助手に告白させるよう、私の背中を押したんだ……?」
晶葉は、ここに至っても志希の言動について半信半疑だった。
「本当に、そういう意味で『好き』なら……おかしいぞ……
私が助手のことを思ってるの、志希からしたら、面白くないはずだ……」
晶葉は、かつて志希に言われた『独り占めしたいでしょ――取られたくないんでしょ』
のセリフが思い出されて、それをとっさに投げつけた。
「ふっふー♪ やっぱり、憎からず思ってたんだよねー、プロデューサーのコト」
晶葉は、疑問に対する答えが何か知りたいわけではなかった。
ただ、志希の言葉を否定し続ければ、この目前の現実も何かの間違いと片づけられる気がしていた。
それはただの錯覚だった。
「話は、単純だよー」
晶葉は、その錯覚に浸ることも許されなかった。
「自分が恋しちゃってるコトに気づかないウブな晶葉ちゃんも、キラキラしててスキだったけどね……
あたしは、恋に気づいちゃってムズムズドキドキ、
ピンク色になった晶葉ちゃんのココロのが、もーっとスキ♪」
「だから、晶葉ちゃんに恋を教えちゃった……いや、気づかせちゃった。
かけひき。告白。そーゆーの全部、キューピッドの戯れ。オーケイ?
晶葉ちゃん、天才を自称する割には飲み込み遅くて……志希ちゃん、ハラハラしちゃったよー、もう」
志希は、晶葉のアンダーリムの眼鏡を外してしまった。
曇りが取れて、晶葉の五感はいよいよ志希の体で埋め尽くされた。
「さぁて、志希ちゃんのLove lessonもいよいよ大詰め。
晶葉ちゃんが私へ恋に落ちちゃってるコト、今夜からじっくりじーっくり、教えてあげる♪」
(おしまい)
晶葉CVもCDも欲しいけどまずデレステに出て欲しい ミツボシとか踊らせたい
志希の新曲はフルで聞いて歌詞読んでもっとハマりました
以下ダイマ注意
※『秘密のトワレ』歌:一ノ瀬志希(試聴) 税込¥720
https://www.youtube.com/watch?v=wD3olymAvN0
好評発売中
http://sasakitomoko.jp/2015/11/%E4%B8%80%E3%83%8E%E7%80%AC%E5%BF%97%E5%B8%8C%E3%80%8C%E7%A7%98%E5%AF%86%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%AC%E3%80%8D%E7%99%BA%E5%A3%B2%EF%BC%81/
上記『秘密のトワレ』について、
作詞・作曲・編曲を担当されたササキトモコさん(※)の談話です。
志希Pで未見なら必読です。
※アイマス関連曲として、ほかに
『きゅんっ!ヴァンパイアガール』『アタシポンコツアンドロイド』
などの作詞作曲編曲を担当されています。
それでは
乙乙
おつつ
おつー
乙
乙
乙ー
乙
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