かに「ねえ、かえるくん」 (23)
かえる「なんだよ?」
かに「僕さ、ちょっと塀の向こう側に冒険してみようと思うんだよね?」
かえる「はあ?なんだそりゃ、まじで?」
かに「うん、まじまじ大まじめ」
かえる「死ぬぞ、おまえ。この庭にいりゃあ、鳥どもに狙われることもねーし、安泰だろうが」
かに「ここの人間、庭の池の手入れはすごく丁寧だし、鳥よけグッズもたくさんあるよね」
かえる「老い先短い金持ちジジイの、唯一の道楽なんだろ。快適じゃねーか」
かに「快適ではあるんだけどさ。やっぱ、自由でいたいっていうか」
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かえる「自由ねぇ…死んだらどうにもならんぜ」
かに「危険なのは分かってる。でも、どうしても外の世界を見てみたいんだよ~」
かえる「別に俺が許可することでもねーし、そこまで言うなら引き止めねーけど」
かに「ほんと?えーと、それでさ、言いにくいんだけど…」
かえる(あ、嫌な予感がする)
かに「かえるくんも一緒に行かない?」
かえる「ヤダ!絶対嫌だ!」
かに「そこをなんとか!お願い!」
かえる「ふざけんな!俺は行かねー!」
かに「ねえ、かえるくん~頼むよ~」
かえる「うぜぇ!触んな!おらっ」げしっ
かに「いたっ!…くない。全然痛くない」
かえる「行くんならてめー1人で行きやがれ!おらおらっ!」げしげし
かに「痛くないけど、なんか嫌だからヤメテ!」
かえる「くそ~、この甲殻類ヤロウめ…」ぜーぜー
かえる「なんで俺が行く必要があるんだよ?1匹で行きゃいーじゃねーか」
かに「だって、1匹じゃやっぱり心細いし…」
かえる「自分で言うのもなんだが、俺は何の役にも立てんぞ?
足はおまえより速いけど、体はおまえほど丈夫じゃないし」
かに「かえるくんがいたら、すごーく心強いんだけどなー…
どうしてもだめかな?」ウルウル
かえる「えぇ~………
ッチ………しかたねーな…分かったよ」
かに「ほんと!?ありがとー!」
かえる「ただし!危ない時は俺の指示に従うこと!俺が帰ると言ったらすぐ帰ること!この2つは守れよ!」
かに「分かった分かった!さー、行こう!すぐ行こうもう行こう!」
かえる「…」こそこそ
かに「どう、何かいる?」ひそひそ
かえる「人間も鳥もいねえ…今がチャンス!!」
かに「まずはどっちに行く?僕、道も何にも知らないけど」
かえる「てめーから言い出しといて考えてねーのかよ…
確か、表の道を右側に行けば近くに川があるとか、ジジイが他の人間に言ってたな」
かに「じゃあ、川に行こうか。水分は大切だしね」
かに「…」しゃかしゃか
かえる「…」ぴょこぴょこ
かに「…ねえ」しゃかしゃか
かえる「…なんだ」ぴょこぴょこ
かに「まだ着かないの?」
かえる「俺が知るか」
かに「近くなんじゃなかったの?」
かえる「俺たちは人間の歩くスピードよりずっと遅いからな」
かに「ずっと人間の家ばっかりで、思ったよりつまんない景色だなぁ…」
かえる「なら、もう帰るか?俺はそれでもいいぞ」
かに「せめて川を一目見てからにしたいなぁ…」
男の子「あー!!かにとかえるが一緒にいる!!」
かに「えっ!?」
かえる「まずい!隠れろ!」
男の子「つかまーえたっ」むんず
かに「ぎゃああああああああ!!はなしてええええええ!!」
かえる「ぐえっ…くるしい…」
女の子「気持ち悪い…そんなの、はやくどっかに捨ててよ」
男の子「だってかにとかえるが仲良くしてるんだぜ?珍しくね?」
女の子「かにってかえる食べるんでしょ?襲ってたんじゃないの?」
かに「どうすればいいの!?ねえかえるくん!!かえるくん!!」
かえる「く…くるし…」
男の子「マジで!?じゃあ食べさせてみよーぜ!」
女の子「やめなって…」
かに「かえるくん、聞こえてる?ねえかえるくんったら!!」
かえる「」
男の子「そりゃ~くえ~くえ~」ぐりぐり
かに「あっ、やめ…っ」ぶちゅ
かえる「」
男の子「うーんなかなか食べないな…」ぐりぐり
女の子「もーやめてってば!私もう行くからね!」
男の子「あっ…待ってよー」ポイっ
かに「た…助かった…」
かえる「」
かに「あっ…かえるくん!かえるくん!!しっかりして!!」
かえる「…はっ!?ここは!?」
かに「かえるくん…!よかった、気がついた…!」
かえる「苦しくて意識とんでたわ…
あのクソガキどもは?俺たち、結局何もされなかったのか?」
かに「こどもたちはもう行っちゃった……けど………///」
かえる「クソガキどもがぁ…次に会ったら容赦しねえ!
…なに赤くなってんだ?」
かに「えっ?んーん、なんでもない。
…ねえ、あそこに見えるの、川じゃない?」
かえる「おっ!?まじだ!すげえ!」
かに「見えてからたどり着くまで、またずいぶん歩いたけど…ついに着いた!」
かえる「かーっ!水だー!生き返るう!」
かに「これが川……大きいね!池より、ずっと!」
かえる「おっ!虫はっけーん!ばくり。
うめぇwwwww」
かに「僕もお腹すいたし、藻でも食べよう」
かえる「平泳ぎ楽しいwwwwwwwすいすいwwww」
かに「なんかかえるくん、急にテンション上がったな…
あ、ここの藻、おいしい」
かえる「ふひー、泳いだ泳いだ」
かに「楽しそうだったねえ。
もしかして、前から川に行きたいって思ってたりした?」
かえる「そりゃまー、池よりずいぶんと大きいらしいってのは知ってたしな。
でも、おまえが誘ってくれなきゃ、自分から行こうとは思わなかっただろーね」
かに「そうなんだ…!誘ってよかった~」
かえる「なんせ危険だからな…
着いたばっかりだけど、もう帰った方がいいかもしれん」
かに「えーっ…もうちょっと遠くまで行ってみない?」
かえる「最初に約束しただろ?俺が帰るって言ったらすぐ帰ること。
またさっきみたいな目にあわないうちに、とっとと帰るぞ」
かに「あーあ、もっと色んなものが見たかったなー」しゃかしゃか
かえる「川が見れただけでも十分だろ?これで、無事に帰れたら言うことなしだ」ぴょこぴょこ
かに「そうだけど…ねえ、またいつか川に行こうね?」しゃかしゃか
かえる「えええ…たしかに川は楽しかったけどなあ…
また人間に捕まったりするかもしれんぞ?」ぴょこぴょこ
かに「うっ…それは嫌…
でもかえr「カーーー!」」ぱくっ
かえる「ちょま!?」がしっ
かに「ぎゃあああああああ鳥にくわえられたあああああああ!!!」
かえる「とっさにかにの足にしがみついたけど、どうすりゃいいんだこれ!?」
かに「高いいいいいいいい!!怖いいいいいいいいい!!」
かえる「ヤバイ…もうこの高さだと落ちることもできなくね?これ絶体絶命ってやつじゃね?」
かに「ううう…
はっ!あ、あれは僕たちの池!」
かえる「まじだ!ちょうどあの上を通る時に落ちれたら…」
かに「あの上を通る時…」
おれもアリとアリを無理矢理くっつけて、噛み合わせさせたりしてた
かに「かえるくん…
ねえかえるくん、今日、一緒にお出かけできて本当に嬉しかったよ」
かえる「いや、今そんな話してる場合じゃ…」
かに「かえるくんのこと大好きだよ…
だから、かえるくんは絶対死なせない!!」
かえる「やめろ!!おまえ何する気だ!!俺の指示に従うって約束だろ!?やめろ!!」
かに「さよなら!」チョッキン
かえる「かに!!やめろおおおおおおおお!!」ヒュー…
バシャーン
かえる「ぶはっ!!………池に落ちた……
ていうかあいつ!!自分の足を切り落としやがった!!
くそっ…俺がもっとちゃんとしてたら…
なんで鳥が近づいてるのに気がつかなかったんだ…
ちくしょう…」
1週間後
かえる「……………………
……………………はあ……
あの時俺がしっかりしてたら………
はあ…………………………
寂しい………………………」
かに「あの~」
かえる「はあ…………………」
かに「かえるく~ん」
かえる「あの時俺がしっかりしてたら……」
かに「ただいま!!
…全然聞いてないし」
かえる「寂しい……………………」
かに「う~ん…えいっ!」つねり
かえる「いたっ!何すんだコラ!
って………え…………?」
かに「かえるくん!ただいま!」
かえる「お…おまえ…………」
かに「いや~、道が分からなくて帰れなくなっちゃうかと思ったよ~」
かえる「う……う……
うわーーーーーーーーん!!」ダキッ
かに「わっ!もう、ちょっとかえるくん、落ち着いて///」
かえる「ぐすん…」
かに「落ち着いた?」
かえる「ふんっ…別に取り乱してねーし!おまえ、どうやって帰ってきたんだよ?」
かに「あのあと、鳥が地面に降りたから、舌をはさみで思い切りはさんでやったんだよ。
鳥が痛がってる隙に川に…あ、かえるくんと一緒に行った川じゃないよ?
すぐそばに川があったから、川辺の石の隙間に逃げ込んだんだ。
鳥はしばらくしたら諦めて飛んでったよ。
そこでしばらく暮らして、脱皮して足が生えてから帰ってきたの。
道が分からなくて、帰れなくなるかと思ったよ~」
かえる「確かに、切り落としたはずの足が再生してやがる…
ったくよー、ほんとにもー、このヤロウめ…」
かに「そこの川で、新しい友達もできたんだ。
ねえ、かえるくん」
かえる「なんだよ?」
かに「かえるくんも一緒にそこの川に行かない?」
かえる「絶ッッッッッッ対ヤダ!!」
おわり
駄文失礼致しました。転載自由です。
ほのぼのしてていいな
乙!
良かった
生きてた
乙
乙
乙
ハッピーエンドで良かった!
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