P「オレと桃子に密着取材ですって?」 (62)

周防桃子ちゃんの誕生日祝いのミリマスSSです



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P「おはようございます! 今日は一日、よろしくお願いしますね」



――プロデューサーの朝は早い。



早朝、陽がのぼりかけた頃には出社してその日の活動内容を確認するのが彼の日課だ。


スレタイにミリつけろカス

P「始めは大変でしたよ。良くも悪くも、プライドの高い子でしたから」



――というと?



P「自分にはこれだけの能力がある。これだけの仕事をやってきた。だから、自分に求めるものがあるならそれ相応の根拠と自信を伴った上で仕事させてくれと……」

P「彼女には、アイドルを始める以前のキャリアがありましたから。担当したての頃は、彼女の求めるレベルのプロデュースを考えるだけでも骨が折れたものです」



苦笑する彼の視線は、手元のメモ帳へと注がれている。



そこには、過去から未来にわたっての周防桃子のスケジュールが記されていた。



小さなその手帳は、彼が彼女と歩む上で決して欠かすことのできない重要なアイテムなのだ。

見とるぞ

P「いつからだったかな。彼女と付き合っていく上で、自分は相手に何を要求したいのかというのを考えることから始めるようになったんです」

P「まずは、相手に伝えたいビジョンを自分の中で確立すること。それが出来ない内は、彼女に信頼してもらうのは難しいのではないかと思いまして」



――信頼、ですか



P「ええ。物心ついた内から、芸能界で活動してきた桃子です。人の嫌な面もいい面も、年不相応なくらいに見てきたと思います」

P「そのせいか、自分とかかわる大人たちを無条件で信頼するということもなくって。色々苦労して、互いに求めるもの、求められているものを理解し合えるようになっていきたいと思ってます」



――まして、アイドルとプロデューサーという関係になると



P「二人三脚みたいなものですから、信頼関係がないとやってられませんよね。その辺は、事務所のやり方にもよりますが」

P「特にオレなんて、桃子以外にも担当するアイドルやユニットがいるわけですから、二足の草鞋どころの大変さじゃぁ……」

P「……あっ、今の愚痴っぽかったですかね。カットしちゃってください、カットで!」



いたずらっぽく笑う彼の表情には、しかし、言葉にされたような不満の色は見てとれなかった。

P「…………」カタカタカタ



備え付けのキッチンで用意した軽い朝食を頬張りつつ、デスクワークに勤しんでいる彼の姿には、どこか楽しんでいるかのような雰囲気も見受けられる。



P「そりゃ、やりがいありますからね。疲れはするし、身体の健康を保つのも大変ですけど、それに見合うだけのものはあると思います」



――自分の担当するアイドルが信頼に応えてくれるというのは、やっぱり嬉しい?



P「まあ、仕事をする上で得られる喜びの一つですね。嬉しいことも辛いことも、片手じゃ数えきれないくらいありますけど」



こともなげに返事をする様には、日々のルーティンを怠らず、パートナーとの信頼関係を築き上げてきた彼の自負がにじみ出ていた。

オハヨウゴザイマース オハヨウ オハヨー ハヨゴザイマース



時計の針が9時を過ぎた頃。アイドルたちがちらほらと出社してくるのと対照的に、彼は身支度を整え始める。



これから、付近に併設された765プロ劇場に移動し、予定されたスケジュールを消化する見込みなのだ。



P「本当は、初めからシアターに出社するのが楽なんですけどね」

P「朝早くからあそこの鍵を開けるのも気が引けますから。……あ、車出してくれるんですか? ありがとうございます!」

「ワン、ツー、スリー、フォー! ワン、ツー、スリー、フォー……!」



劇場内のレッスン室には、トレーナーの声が響く。



P「…………」



我々の取材に動じることなく、少女たちはステップを踏み、プロデューサーは彼女たちを見守り続ける。



来月に行われる公演に備えてのレッスン。余念なく自己のタスクに集中するアイドルたちの姿が、765プロという事務所の一面を物語っていた。

――お疲れ様でした



桃子「休憩入っただけだよ? レッスンはまだまだこれからなんだから、『お疲れ様』はもう少し後で言うことだよね」



――いきなり手厳しいですね……



桃子「言っておくけど、桃子はこういう密着系の取材でも遠慮しないからね。猫被ったりするなんて、ガラじゃないし」

瑞希「あくまでガラじゃないだけで、周防さんは演技は得意ですよ」



――注釈ありがとうございます



瑞希「折角の取材ですから、周防さんのいいところは積極的に伝えていきたいと思いまして。……ぶいっ」

桃子「ぶいっ、ってそれ、瑞希さんが目立ちたいだけじゃない?」

瑞希「はい。私も密着取材、受けてみたかったです」



――それはまた、次の機会にお願いします



瑞希「おぉ……! まさかのセルフプロデュースが実るなんて、やったぞ、瑞希。……ぐっ」

桃子「もーっ! 瑞希さん、桃子の取材なのに目立ち過ぎ!」



二人のやりとりは、先ほどまでの緊張した空気を微塵も感じさせないほど和やかなものだった。



あるいは、このアイドル同士のフラットな距離感が765プロを支える柱の一つなのだろう。

正午になった。



厳しいレッスンを終え、少女たちは着替えの後に昼食休憩に向かった。



P「撮影お疲れ様です。桃子と話した感触は、いかがでしたか?」



――……遠慮のない子だなぁ……、と



P「ははっ。でも、子供っぽくてかわいらしいところもあったでしょう?」



――ええ



P「肩肘張ってるきらいもあるけれど。それも含めて、あいつのありのままの姿なんだと思います」

P「なんだかんだで、態度も正直で気持ちのいい子ですからね」

――765プロのアイドルには、まっすぐで性格の素直ないい子が多いように思えます



P「いえいえ、正直なのと素直なのとはまた別の話ですよ。そりゃ皆いい子だとは思いますけど、桃子は……」

桃子「ちょっとお兄ちゃん? もしかして、今桃子の悪口言おうとしてた?」

P「も、桃子!? どうしてここに?」

桃子「お昼ごはんの出前、届いたって。わざわざ呼びにきてあげたのに、お兄ちゃんったら……」

P「いや、悪口を言おうとしたわけでは……ははははは」



叱責するアイドルと、苦笑するプロデューサー。



一見すると不可解な構図だが、これもまた、彼の口にしていた信頼の現れなのだと思えた。

――これは、サンドイッチですか?



桃子「うん。お母さんの作ってくれたお昼も食べたりするけど、今日はお店のなの」

桃子「……」

桃子「……」

桃子「……」

桃子「……ち、ちょっと。密着取材だからって、黙ったまま桃子の食べてるところばかり撮らないでよ……」



――すみません



桃子「本当に悪いと思ってる? ……もー」

そんな風に昼食をとっている我々に、話しかけてくる者がいた。



ひなた「桃子センパイ、ちょっといいかい?」



桃子「うん。ひなたさん、どうしたの?」



周防桃子の同僚の一人、木下ひなた。



控えめに声をかけてきた彼女の手には、何やら菓子袋のようなものが提げられていた。

ひなた「あのね、この前、春香さんたちと一緒にお菓子作ったんだけど。たくさん作り過ぎたせいであましちゃったから、事務所の皆にもおすそ分けして回ってるんだぁ」

ひなた「よかったら、そこのカメラマンさんも食べてくれんかなぁ?」



彼女から手渡されたのは、1個のスイートポテトだった。

早速、いただくことにする。一口頬張ると、じゃがいもの風味と共に優しい甘さが口内に広がった。



桃子「おいしい……」

ひなた「そりゃよかったべさ。あたしたち、いつもセンパイにお世話になってるから、ちょっとでもお返しできると嬉しいねぇ」

桃子「別に、お世話なんて……。……それよりひなたさん、その、もう一つ貰ってもいいかな?」

ひなた「えへへ。いいよ。カメラマンさんも、もひとつどうぞ」



――ありがとうございます

心休まる時を過ごし、時刻は1時を過ぎた頃。



1時間後には、CM用のショートドラマの撮影が待っている。我々も同行し、その一部始終を撮らせてもらうことにした。

撮影場所に到着した。



関係者にあいさつを済ませた二人は、所定の場所で待機しながら撮影開始に備えているようだ。



P「いいか桃子。時間は短くても、企業にとってはとても重要なCMだ。いつものテレビやラジオ収録より出番が短いからって、気を抜くんじゃないぞ」

桃子「うん。わかってる」

P「とにかく、集中して。監督も妥協のない人だし、何度もダメ出しされるだろうけど絶対に凹むなよ」

桃子「そんな子供じゃないってば。お兄ちゃんは、桃子のことをちゃんと見守ってて」

P「……ああ、わかってるよ」

桃子「ん」

P「じゃあ、改めておさらいするけど、今回のCMは~~~~~」

桃子「……うん、うん」

撮影が始まった。



「よーい……アクション!」



桃子「はぁ~ぁ。毎日毎日親に言われて勉強ばかり、嫌になっちゃうな」

俳優「まあまあ、そう言わないで」

桃子「おじさん、誰? どうして私の……」



「カット! カットカット!」

「なあ二人共、今のところなんでカットされたかわかってるよね?」



桃子「は、はい」

俳優「はいっ」



「じゃあもう一度撮るぞ。照明、やっぱり、今の位置からもう少し~~~~~」



ざわめきを見せていた撮影現場も、今は撮影者たちの声が響くのみ。



ひたすらカメラが回り続ける中、周防桃子のプロデューサーは、片時も目を逸らすことなく彼女の立つ場所へ視線を向けていた。

「カーット! 周防さん、今のセリフもっかい復唱してみよう」



桃子「もう! 私、こんなことしてる暇なんてないのに!!」



「もうちょいヤケになってる感じが欲しいな。出来るよね?」



桃子「出来ます!」



「じゃあ、もう一回いってみよう」



桃子「はい! ……もう! 私、こんなことしてる暇なんて……」

「休けーい。20分後に再開しまーす」



P「……はぁ」



――お疲れ様でした。



P「いやいや、まだ休憩ですから。折り返しすぎたところでそういうのは、なにか違う気が……」



――同じことを、レッスンの際に周防さんにも言われました。



P「あはは。まあ、疲れたと言えばその通りなんですけどね」

――やはり、見てるだけでも緊張はする



P「緊張というか、気疲れというか」

P「こういう場でオレが揺らいでいたら、アイドルは目の前の仕事に集中できないですからね。これも、プロデューサーとしての役目です」



――恐れ入ります



P「そんな大したもんじゃないですよ。スポーツなんかの監督とかと似たようなもんで……おっ」

――厳しい仕事の中で得られる、つかの間の休息。



P「おかえり桃子。再開までしっかり休んでおけよ」

桃子「……うん」

P「ずっと立ちっぱなししゃべりっぱなしだったし、水分補給しないとな。お茶とポカリどっちがいい? それとも、コンビニで何か買ってこようか」

桃子「……お茶ちょうだい」

P「ほい、ゆっくり飲めよ」

桃子「うん、ありがと」

――その中ででも前面に出てくる、仕事へのひたむきさ。



P「さて桃子。休んでる途中悪いけど、さっき監督の言っていたあれは…………」

桃子「……だから、桃子は…………って感じで演技したつもりだったけど……」

P「それは…………。このCMのコンセプトが……だから……」

桃子「ううん、そこは…………で、ここが……」

P「つまり…………が……して、桃子の演じる女の子としては…………」

「始めまーす! 撮影に参加される方は所定の位置にお願いします!」



桃子「じゃあお兄ちゃん、行ってくるね」

P「撮り始めの頃はNGもあったけど、途中からダメ出しも少なくなってるんだ。この調子で頼むぞ!」

桃子「んっ! さっきみたいに、桃子の頑張るところをしっかり見ててよね!」

P「ああ!」



――後半戦開始、ですね



P「ええ。正直、最初は少し不安もありましたけど、なんとか持ち直したと思います」



言われてみると、確かに、彼女は撮影当初よりもどこか吹っ切れたような表情を見せていた。

――休憩時間でも演技を見直し続けて、大変ではありませんでしたか?



P「普段の動きであそこまで煮詰めるのは、ライブの直前くらいですかね。でも、今回のCMはゴールデンに流されるような大仕事ですから」



言い終わると、彼は再び真剣な目つきで撮影を見守り始める。



スポットライトの陰で、真摯に自らの役目を果たさんとするプロフェッショナルの姿がそこにあった。

「カット! 今の演技よかったよ! この感じ持ったまま、次のシーンは一発でいくつもりでね!」



桃子「……はい!」

俳優「はいっ!」



「よーし……アクション!」






P「…………」

「撮影終了です、お疲れ様でしたー!」



「お疲れ様でーす」



「ありがとうございましたー」



「お疲れ様でーす」



桃子「お疲れ様でした! ……ふぅっ」

――お疲れ様でした



桃子「ん、ありがと。……ところで、お兄ちゃんは?」



――監督やディレクターさんに呼ばれていたみたいですよ



桃子「あ、そうなんだ。……それより、ねえ! どうだった?」



――?



桃子「桃子の演技! 失敗もあったけど、ちゃんと上手に出来てたでしょ?」



――そうですね。早く、映像で見てみたいです



桃子「うんっ! 桃子も楽しみ!」

P「桃子、お疲れ! 今話してきたけど、監督もディレさんも桃子のこと褒めてくれてたぞ!」

桃子「……本当に? お兄ちゃん、気を遣ってるんじゃないよね?」

P「本当だよ。もちろん、手放しで褒めるだけじゃなくて苦言を呈する部分もあったけど……上々の評価みたいだったぞ!」

桃子「へぇ……。車の中で、どういう風に言ってたかきちんと教えてね?」

P「そういきたいところだが……それはまた、明日にしような」

桃子「えっ?」

P「桃子には言ってなかったけど、オレ、今から寄るところがあるんだ。移動はそちらの車に乗せてもらって、先にシアターまで帰っててくれないかな?」

桃子「あ、うん。……別に、いいけど」



彼女は、プロデューサーの言葉に戸惑っているようだ。



この移動に関しては、事前の打ち合わせ通りなのだが……なぜ彼女だけは知らされていなかったのだろう?

P「そういうわけで、よろしくお願いします」



――はい



P「じゃあな桃子。今日は、レッスンと撮影、どっちもよく頑張ったな」

桃子「ん。……ちょ、ちょっと。カメラの前で撫でないでよ……!」

P「ああ、ごめんごめん。それじゃ、一旦お別れってことで」

桃子「……そのまま帰るとか、ないよね?」

P「ちゃんと後で合流するから。先に向こうで待っててな」

桃子「うん。……桃子、待ってるからね」

P「ああ。それじゃ、また後で!」

桃子「…………」

――なんだか、名残惜しそうにしてましたね?



桃子「別に、そんなんじゃ……! ……もうちょっと話すことがあったのに、ってだけ」



――たとえば、今日一日の反省であったり



桃子「そうそう。……まあ、それは明日でもいいんだけど……」



――……今日のうちに話しておきたいことがある?



桃子「……うん」



それから765プロ劇場に戻るまで、彼女は車内で沈黙を続けていた……。

――着きましたよ



桃子「うん。ありがとう、送ってくれて」



――プロデューサーが帰ってくるまで、待ちますか?



桃子「んー、そうだね。とりあえず荷物だけ取ってきて、どこかの部屋で宿題でもして待ってよっかな」



そう話しつつ、劇場内の自分の荷物を取りに行った彼女だったが……。

桃子「……あの。今から事務所行きたいんだけど、もう一回車出してくれる?」



――何か、事務所に用事が?



桃子「……これ。誰かのイタズラだと思うんだけど……」



彼女が見せたのは、一枚のメッセージカードだった。



そこには、『荷物は預かった。返してほしければ765プロ事務所へ来い』……と、威圧的な文面とは裏腹に女の子らしい丸文字が記されている。



――……こういうことは、よくあるんですか?



桃子「イタズラ好きな人は、何人かいるんだけど……とにかく、事務所に行かなきゃ!」

夕陽もそろそろ沈み、夜の空気が顔を覗かせようという時間。



適当な駐車場に車を止め、少し歩くと目当てのビルが見えてきた。



更に歩くと、ビルの階段付近に、見知った顔が……。

桃子「……え、真さん? そんなところで何してるの?」

真「桃子! いや、実はも……プロデューサーさんが帰ってくるのを、待ってたんだよ」

桃子「ふーん。わざわざ、そんなところで待つ必要ないのに?」

真「はは……桃子の言う通りだね。外は寒いし、上がって待つことにしよっか」

桃子「……はぁ。まったくもう……」

真「ん、どうかした?」

桃子「……別に。カメラさん、桃子たちも上に行こ?」

桃子「ねえ、真さんってお兄ちゃんにどんな用事があったの?」

真「? どうしてそんなこと聞くの?」

桃子「だって、気になるもん。わざわざあんなとこで待ってるなんて、おかしいでしょ?」

真「あ、ああ、それは……」

真「……さ、先に事務所に戻ろっか。春香たちも待って……」

桃子「どうして春香さんが出てくるのかな?」

真「う……」



――あの、菊地さん? 何か……



真「……ぅぅ」

桃子「…………」

桃子「……そんなことだろうと思った。わざわざあんなイタズラした時点で、怪しいとは思ってたけど」

真「ぁ~。バレちゃったかぁ」

桃子「真さん、もうちょっと演技の幅広げた方がいいよ。かっこいい演技は出来るんだし、ね?」

真「耳が痛いなぁ。こういう役回りは苦手なんだよね……」

桃子「安心して真さん。桃子、ちゃんと気付かなかったフリしてあげるから」

真「そうしてくれるとありがたいよ……」



――あの、先ほどから二人はなんの話を……?



真「えーっと、そうですね。とにかく事務所まで行きましょう! そうしたら、ボクらが何を話してたのかも分かるはずです!」

桃子「そういうこと!」

首をかしげながら、765プロが事務所を構えるフロアまで歩を進める。



事務所の前まで来ると、先導していた菊地さんが、事務所のドアを叩いた。



真「春香、桃子連れてきたよ」



返事は、ない。



が、その代わりにと言うべきだろうか。事務所のドアは、すぐに開かれたのであった。

真「さあ、入って」



促されるままに、事務所へと入室する。



――すると……






「「「誕生日、おめでとーっ!!!」」」





桃子「わぁ……っ!」


星梨花「これ、私からのお誕生日プレゼントです!」

桃子「ありがとう……。クマくんとおそろいのリボンだね」

育「桃子ちゃん、大きくなっても仲良くしてね!」

桃子「育ってば……当たり前のこと言わないで!」

春香「今日は桃子ちゃんの誕生日だから、マドレーヌを作ってきたんだけど……どうかな? おかわりあるから、いっぱい食べてね!」

桃子「春香さん……あ、ありがとう。でも桃子、こんなに食べられないから……亜利沙さんとか、のり子さんとか、みんなも呼んでいい……?」

亜利沙「はぅ~! 桃子ちゃんセンパイにお呼ばれされるなんて、ありさ感激でしゅ!」

環「ももこ、おめでとう! たまきのプレゼントはね……」




事務所の中にいる同僚が、次々に祝福の言葉を口にする。室内には、誕生日を祝うメッセージで彩られたホワイトボードや風船・フラッグなどの装飾が見受けられた。



階段での二人の会話が指していたのはこのことだったのだろう。



11月7日。今日は、彼女の誕生日だったのだ。

――そういうことですよね?



真「ええ。普段から距離の近いメンバーが行くとバレそうだからって、ボクがエスコート役に抜擢されて……結局、バレちゃったんですけど」



――でも、喜んでくれているみたいですよ



真「本当によかったです。飾り付けとか、ボクも手伝いましたし、少しでも喜んでもらえたらめちゃくちゃ嬉しいですね!」



菊地さんと話している間にも、事務所には和気藹々とした少女たちの声はやむ気配を見せようとしない。



その中心にいる彼女は、はにかみながら、同僚からのプレゼントを受け取っているようだった。

P「よう桃子! ただいま!」

桃子「あっ、お兄ちゃん! ……お兄ちゃんの用事って、もしかして」

P「おお! これ、プレゼントのケーキと……」

P「それから、これも!」



――彼の手元から取り出されたのは、ホットケーキのレシピ本だった



桃子「プレゼントが、料理の本なの? 変わってる……」

桃子「えっ!? この中のホットケーキ、なんでも、お兄ちゃんが作ってくれるの!? ……ち、ちょっと待って、桃子、ちゃんと選ぶから! えっと、どれにしようかな……♪」



一番近い距離で接してきたパートナーから貰うプレゼントともなると、感動もひとしおだろう。



夢中になって本のページを繰る彼女の姿が、何よりも雄弁にそのことを物語っていた。

――お誕生日おめでとうございます



桃子「ありがと! ……あの、ケーキ、食べる?」



――いいんですか?



桃子「桃子の食べたいと思ってたケーキだけど、一人で食べるには、ちょっと大きいから。今日一日桃子をきっちり映してくれてたんだし、遠慮しないで!」



――それでは。……いただきます



桃子「ふふっ。味わって食べてね!」

――…………。



桃子「どう、おいしいでしょ?」



――はい。とてもおいしいですね



桃子「そうでしょ! ……だって、」



桃子「お兄ちゃんの買ってきてくれたケーキなんだもん! ねっ?」



――……ええ! そうですね!

こうして、周防桃子とそのプロデューサーの一日は幕を閉じた。



図らずも彼女たちにとって特別な一日を取材することになったわけだが、このカメラに収められた画は、普段から二人がどのような姿勢でアイドル活動に取り組んでいるのかも如実に伝えてくれることだろう。



成長著しい765プロと、そこに所属するアイドルたちの本質。



その一端が垣間見えたことを、改めて述べた上で今回の取材を終わりにしたい。



fin.

『来週のゲストは、315プロ所属の秋月涼さん。女性アイドルとしてデビューした彼が真の姿に回帰した理由とその先にあるものを取材しました……』



小鳥「……っぅぅ。桃子ちゃん、本当に立派になったわね……」

千鶴「ええ。初めて会ったときに比べて、ずいぶん雰囲気が柔らかくなりましたわ」

ロコ「あのケーキ、デリシャスに見えましたね……。ロコもイートしたかったです」

雪歩「まあまあ。まだお菓子は残ってるし、皆で食べながらもう一度見直そう? ね?」

小鳥「いい番組だものね。巻き戻し巻き戻し……」

千鶴「あら、紅茶が切れましたわ。どなたか、言ってくださればついでに淹れてきますわよ?」

ロコ「チヅル! お願いします!」

小鳥「さて、二周目再生っと……」





桃子「…………」

桃子「……ねえ「無理」



桃子「お兄ち「無理」



桃子「ねえってば「あきらめなさい」



桃子「……」



P「……」

桃子「……ねえ、お兄ちゃん」

P「なんだ?」

桃子「アイドルって、やっぱりすごく大変だから……。……これからも、よろしくね」

P「ああ。言われるまでもないさ」

桃子「うん。でも、辛いときは本当に辛いから……」

P「……ああ」

桃子「……なんていうかさ、ほら……」

P「ああ……」






「「密着取材なんて、受けるんじゃなかった~~~~~!!」」







以上です。オチはこんなのになっちゃったけど、桃子先輩誕生日おめでとうでした! html依頼してきます

おつ、カメラマンが新人後輩Pというオチを予想してたが別に全然そんなことはなかった

おつおつ
LTP12メンバー好き

ミリ付けろゴミクズ以下の低脳が

桃子先輩ツンデレかわいい

桃子可愛いよ桃子。

流石桃子先輩
余すところ無く可愛い

ああああああああああああああああかん >43 に書いた『桃子の誕生日』は『11月7日』じゃなくて『11月6日』です本当に申し訳ない!!!!!!!
 
まだ辛うじてスレが生きてる内に気付けてよかった……。もしこれ以後にこのSSを読む方がいらっしゃったらこの間違いについては寛大なお心で見逃していただけるとうれしいです……

おつおつ
かわいかった

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