星輝子「し、親友だからな…フヒヒ」 (12)

アイドルマスターシンデレラガールズ
星輝子(15)
6/6生まれ

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都内某ラジオスタジオ。
激しいアウトロがフェードアウトしていきます。

「はい、人気上昇中キノコ大好きアイドル! 星輝子ちゃんのデビュー曲でした」

輝子「き、キノコ大好き……フヒヒ」

「いやーふだんの輝子ちゃんからは想像もできないハードな曲ですねー。この曲のジャンルというと…?」

輝子「フフ……キノコメタル、かな」

「キノコメタル! 新しいジャンルですね。えー曲を聞かせてもらったところでですね、こちらをですね」

輝子「へ……ケーキ?」

「そうです! 今日は輝子ちゃんの誕生日ということで、スタッフのほうでケーキを用意させてもらいましたー!」

輝子「え、ほ、ほんと……?」

「ホントです! こっちにはお皿とフォークがありますのでね、はい、おめでとうございます!」

輝子「ヒャッハー! ナイトメアビフォアバースディッ!」

「はい、シャウトを頂いたところで、今日はここまで! 今日のゲストは星輝子ちゃんでした、ありがとうございましたー」

輝子「あ、ありがとう、フヒヒ……」

「はーいオッケーでーすお疲れ様でーす。あ、輝子ちゃんはケーキ食べてていーよ」

輝子はそうしました。

収録を終えてロビーへと輝子が降りていきますと、

P「おう輝子、おつかれー」

輝子「あ、おつかれ、フヒ」

プロデューサーが立ち上がって歩み寄ってきます。
輝子もとてとてと駆け寄りました。

輝子「け、ケーキ、もらっ、もらっちゃった…」

P「えっマジか。すげーな。よかったなぁ」

輝子「うん、フヒヒ…」

スタジオを出て、歩き出します。
空は快晴で、気持ちのいい風が輝子の細く長い髪を揺らしました。

P「マジかー、俺も負けてられんな。よし、輝子、なんか食べに行こう」

輝子「えっ、お、い、いいの」

P「輝子は今日はこれで仕事終わりだしな。ていうか誕生日なのにオフにできなくてごめんな」

輝子「う、ううん…し、親友と、あ、会えるからな…フヒヒ…」

両手の指をつんつんとしながら、少女がそう言うと、隣を歩くプロデューサーの歩調が一瞬乱れました。

輝子「…? ど、どうしたの…? あれ、ぷ、プロデューサー、顔真っ赤だけど…」

P「はァ!? ああ、いや、これはな、うーん、あっホラ、最近外回りが多くてな、日に焼けちゃったんだ」

輝子「ほ、あ、そ、そうなんだ…」

P「そうそう! あー輝子も気をつけろよ、輝子はわりと肌白いほうだし」

輝子「うん…ま、眩しい太陽より、じ、じめじめしたところのがいいよね…ほ、ほらキノコとか、あ、あるしね…」

P「確かにちょっと暑すぎるな。お、ちょうどいいところに公園があるぞ」

輝子「大きな、樹があって、こ、これはキノコが見つかる予感…!」

木陰のベンチにふたりは腰を下ろしました。

P「あー、影はちょうどいい感じだな。風もあるし」

輝子「ち、ちょっと、き、キノコ探していい…?」

うずうずしたように少女は樹の根のあたりを見回しています。
彼は苦笑しながらうなずきました。

P「じゃあ、俺は向こうでサンドイッチでも買ってくるよ」

輝子「う、うん…」

不審者のような挙動で、少女は樹々へと歩いていきました。
彼はそんな彼女の姿をしばらく目で追っていましたが、肩をすくめて屋台へと足を向けるのでした。

サンドイッチを買ってベンチへと戻ってきたプロデューサーは、輝子を見つけて目を剥きました。

P「うわぁ! おい輝子!」

輝子「フヒ…?」

少女は地面にひざをついて頭をぐっと下ろしていたので、あやうく白いスカートの中が見えるところでした。

P「気をつけろって! 女の子なんだから!」

慌ててベンチに荷物を置いて、彼は輝子を起き上がらせました。

P「あーもー土ついてるじゃないか」

そういいながら彼が少女の膝についた土をハンカチで払っていると、少女はきらきらした笑顔で、

輝子「ほ、ほら…ど、ドクベニタケだよ…フヒヒ。ちょっと早いけど、た、たぶん。たい、退色してるしドクベニダマシじゃ、な、ないと思う」

P「おお、毒キノコか…。よく見つけたな」

輝子「フフ…友達だからな…」

P「よし、とりあえずサンドイッチ食べようぜ」

彼が促すと、輝子は素直にベンチに戻りました。

P「お昼時からちょっと過ぎたけど、さっきケーキ食べたし小さめのサイズ頼んだけど良かったか?」

輝子「あ、ありがと…。フヒヒ…さ、さすが親友だな…」

P「はは、任せろ。俺は輝子のプロデューサーだからな」

プロデューサーはサンドイッチにかぶりつきます。
少女も、もそもそと食べ始めました。

輝子「フヒヒ…私の友達はキノコとプロデューサーだけだ…」

P「え? なにいってんだ、事務所のみんなも友達だろ?」

プロデューサーの言葉に、輝子はつまさきを見つめました。

輝子「……そ、……で、でも」

輝子「み、…みんなも、わ、私のこと、とも、友達だって思ってくれてるか、わ、わからないし……」

P「だいじょうぶだって。まずは輝子から友達だって思えばいいだろ?」

あくまで軽い調子のプロデューサーに、もごもごと輝子は言い返します。

輝子「な、馴れ馴れしいと、きら、嫌われるかも……」

P「嫌われない」

プロデューサーはそこで真剣な様子で断言しました。

P「あいつらはそんなやつじゃないよ。俺は知ってる。輝子は俺が嘘ついてると思うか?」

輝子「ううん…プロデューサーは、う、嘘つきじゃない」

なんか言わせたみたいになっちゃったな、と相好を崩しながら彼は少女の口元をぬぐってやります。

P「それに、あいつらはどちらかというと……」

そのとき、輝子のケータイがぴろぴろと鳴りました。

輝子「あ……め、メール」


From:若林智香
To :輝子ちゃん
Sub :バースデー☆
 ------------
おつかれー☆
事務所でパーティしよっ!
待ってるよー


文面を見せられたプロデューサーはくっくと喉を鳴らしました。

P「そうだな、こういうやつらだよ」

嬉しそうに照れ笑いをして、輝子はメールの返信を打ち始めるのでした。

ふたりが事務所に帰ると、

ぱん! ぱぱん!

クラッカーの音が鳴り響きました。
破裂音に驚いて反射的に逃げ出そうとした輝子に、

智香「輝子ちゃん! 誕生日おめでとーっ☆」

千秋「誕生日おめでとう」

みく「きの子チャン、おっめでっとにゃ〜!」

小梅「お、おめでとう…ございます…」

茜「おめでとーございます!!!」

次々と声がかけられます。

輝子「お、は、え……」

P「ほら輝子、こういうときはありがとうだ」

プロデューサーに背中を押されて、一歩、事務所の中に入る輝子。
色紙とモールで少しだけ飾り付けられたテーブルに、お菓子やジュース、そしてケーキが置かれています。

輝子「あ……! え、あ、ありがと、ござます……っ」

智香「さぁさぁパーティしようパーティっ☆」

茜「本日のシュヒンの方のお席はこちら!!!」

ずいずいとふたりにひっぱられていく輝子。
その後ろを、まったく強引ねとため息をつきながら千秋が、
そして嬉しそうに袖を揺らしながら小梅が続きます。

みく「Pチャ〜ン?」

P「ん、どうした」

扉を閉めたプロデューサーに、みくがすりよるように近づいてきました。

いいぞ

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