結衣「ふーふー、ふーふー」 (24)
八幡「由比ヶ浜……。お前、その紅茶、いつまで冷ましてるんだ? もう十分以上やってるだろ」
結衣「だって、熱いの苦手なんだもん。仕方ないじゃん」
雪乃「……由比ヶ浜さん。もしかしてそれは猫舌というやつかしら可愛い」
結衣「うん……。熱いの駄目なんだよね。だからこうして冷ましてからじゃないと。ふーふー、ふーふー」
八幡「いや、いくらなんでも、もう常温ぐらいに冷めてると思うんだが……」
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雪乃「比企谷君は犬舌だから平気よね。はい、ボコボコ沸騰してるのをあげるわ」スッ
八幡「怖いんだが、何だこれ」
雪乃「中に焼いた石をたんまり入れておいたのよ。しばらくは沸騰し続けるわね」
八幡「加減ってものを知らないのか、お前は?」
結衣「ふーふー、ふーふー。……もうそろそろいいかな?」ゴクッ
結衣「あちゅい!」
雪乃「どんな声を出してるのかしら可愛い」
八幡「ところで最近、あまり依頼が来ないな」
雪乃「そうね。でもそれは困ってる人がいないという事だから、良い事ではないのかしら」
結衣「ごくっ。ふぁ……美味しい……」
八幡「しかし、ここで本をじっと読むのもいい加減に飽きてきてるんだがな……」
雪乃「そうね……。それなら、しりとりでもしましょうか? 私は別に構わないけれど……」
八幡「しりとりか……。由比ヶ浜はどうする?」
結衣「この紅茶美味しいね、ゆきのん!」
雪乃「そう言ってもらえると嬉しいわさっきから可愛い」
八幡「お前もさっきから心の声が駄々もれしてるぞ、雪ノ下」
雪乃「それじゃあ、しりとりを三人でしましょうか。ただ、普通のしりとりをしていたのでは面白くないわよね……」
八幡「なら、何かルールをつけるか? 五文字限定のしりとりとか……」
雪乃「そうね。そういう特殊ルールを何かつけたいわね。例えば、言った物を必ず持ってこないといけないとか……」
結衣「あ、それ、面白そう! やろうよ!」
雪乃「あらそう? 由比ヶ浜さんがそう言うなら、そのせいで世界が滅びようともやらない訳にはいかないわね」
八幡「お前、大好きだな、由比ヶ浜の事……」
雪乃「それじゃあ、最初は部長である私からね……。そうね……シンプルに『灯り』でどうかしら。今、こんな物を持っているし」スッ
八幡「ペンライトか……よくまあこんなのを持ってたな」
雪乃「私は常々ゾンビが発生した時に備えているのよ」
八幡「前提が間違っている」
結衣「ペンライトとか、私、初めて見たよ、ゆきのん」
雪乃「ぴかー」
結衣「まぶしっ!」
雪乃「次はあなたの番よ、比企谷君」
八幡「今、何で由比ヶ浜に光を当てた?」
八幡「次は、『り』か……。それで、持ってこれるやつとなると……」
雪乃「なるほど……リオデジャネイロね」
結衣「ヒッキー、ブラジルの首都とか持って来れるなんてスゴいね!」
八幡「……無理に決まってるだろ。それにブラジルの首都はブラジリアだ」
結衣「え、そ、そうだっけ? あ、あははぁ……よく似てるから間違えちゃった」
雪乃「もうリオデジャネイロでいいわよ誤魔化し方が下手すぎて可愛い」
八幡「溺愛し過ぎだ、お前は……。それと、しりとりは普通にリポピタンDで。今、丁度持ってるしな。ほら」スッ
雪乃「えいっ」ポーイッ
八幡「おい、窓から投げんな! いきなり何する!」
結衣「それじゃ次は私かあ……えっとリポピタンDだから、これって『い』? それとも『で』?」
八幡「まあ、『い』でいいんじゃないか。それが普通だろ」
雪乃「私も『い』でいいと思うわよ。その方が簡単でしょうし」
八幡「由比ヶ浜にはとことんまでイージモードだな」
雪乃「可愛いは正義って言葉をあなたは知らないのかしら?」
結衣「『い』かあ……。じゃあ、『イルカ』!」
八幡「おい、どうすんだ……。水族館まで行って連れて来るのか?」
雪乃「……ね、姉さんに頭を下げれば何とかなるわ、きっと」
― 雪ノ下家 ―
プルルル、プルルル
陽乃「あれ、珍しい。雪乃ちゃんから電話じゃん」ピッ
陽乃「はーい、ひゃっはろー。久しぶりだねー、雪乃ちゃん。どうしたのー、急に電話だなんて? お姉ちゃんに甘えたくなっちゃったー?」
陽乃「え、ホントに……? ……雪でも降るのかしらね。ああ、うん、いいよ。雪乃ちゃんに貸しを作るのは楽しいし。私で出来る事なら大体の事は……」
陽乃「イルカ……? え、どういう事?」
陽乃「訳は聞いちゃダメなの? だけど、イルカを総武高校まで運搬して欲しい? ちょっと雪乃ちゃん、あえて聞くけど頭は平気?」
陽乃「いや、流石に私でもイルカはちょっとね……」
陽乃「ん? 電話を比企谷君に換わる? 別にいいけど」
陽乃「って君もイルカかーい! イルカはいるかーい! どうしたのよ、一体。何があったのよ?」
― 部室 ―
八幡「駄目か……。やはり陽乃さんでもイルカをここに連れてくるのは無理らしいぞ」ピッ
雪乃「肝心な時に使えない姉さんね。弱ったわ……」
結衣「えっと、あの、ご、こめんね、二人とも。このしりとりは私の負けでいいから……」
雪乃「駄目よ。由比ヶ浜さんが負けるなんてあってならない事なのだから」
八幡「だけど、どうするつもりだ? このままだと間違いなく由比ヶ浜の負けになるぞ」
雪乃「いいえ。そうはさせないわ。ここは逆転の発想でいくのよ」
結衣「逆転の発想って?」
雪乃「確かに、ここの部室にイルカを連れてくるのは不可能かもしれないわ。でも、それなら、逆に私達がイルカの元に近付けばいいのよ」
八幡「そうか……。その手が……」
雪乃「そう。つまり、私達がイルカのいる水族館に揃って行けばいいのね。そうすれば、結果的に由比ヶ浜さんはイルカを連れてきた事になるわ」
結衣「あれ……? って事は……」
雪乃「ええ。奉仕部の部長としての命令よ。今度の休みはこの三人で水族館に行くから。いいわね、比企谷君」
八幡「……まあ……いいぞ。部長の命令なら仕方がないからな」
雪乃「そう。それなら決まりね」
結衣「皆で水族館とか楽しみだね、ゆきのん! ヒッキー!」
八幡「……お、おう。そうだな」
雪乃「…………」
結衣「…………」
雪乃(計画通り!)ニヤリ
結衣(ダメ、まだダメだよ、笑いを堪えなきゃ。まさか、こんなに上手くいくなんて!)ニヤリ
八幡「何故か知らんが、二人とも……さっきから肩が震えてる様に見えるんだが?」
雪乃「き、気のせいよ。特に嬉しくなんかないわ」プルプル
結衣「べ、別に、三人で水族館行く計画だったなんて事ないし」プルプル
八幡「……そうか。ん?」
雪乃「いいえ、比企谷君は特に何も気にしないでちょうだいチョロいわね」プルプル
結衣「あー、な、なんか喉乾いちゃった。お茶もらうね、ヒッキー」スッ
八幡「あ、おい、それは……!」
結衣「あちゅい!!」ビクッ
雪乃「どんな声を出してるのよ可愛い過ぎよ」
結衣「ふーふー、ふーふー」
雪乃「ほーほー、ほーほー」
八幡「……何で対抗意識燃やしてフクロウの真似を始めた」
結衣「あ、そういえばヒッキー。この前貸したDVD、もう観た?」
八幡「ああ、あれか。まだ途中までだな。小町と一緒に観てるんだが、観る時間帯が妙にずれてな」
結衣「そうなんだ。どこら辺まで観たの?」
八幡「もう最後らへんだぞ。アジトに侵入して、テロリストが仕掛けた爆弾の起爆装置を探し出したところまでだ」
結衣「あー、あそこまで観たんだ。あれ、スゴくない? だって、部屋に置いてある普通のシャープペンが起爆装置だったんだよ。もうビックリだよね!」
八幡「そうだな。俺もまさか、こんなどこにでもあるシャープペンが起爆装置だなんて思わなかったな」カチッ
ドッカーン!!
雪乃「びゅーーーーーーーーーん!!」
八幡「しまった! 雪ノ下が四階の窓から飛んでいったぞ!」
結衣「ゆきのーん!」
― そして水族館 ―
八幡「やはり今度から部室の窓は閉めとくべきじゃないか? 雪ノ下が飛んでいき過ぎる」
結衣「あ、ヒッキー、見て見て! ガラパゴスペンギンだよ!」
雪乃「由比ヶ浜さん、あれはメガディプテス属のキガシラペンギンよ。スフェニスカス属のガラパゴスペンギンは向こうね」
八幡「何でそんなペンギンの種類に詳しいんだ……?」
ゆるゆりじゃないのか
結衣「あ、今度はミンククジラだ! こっちも可愛いよね!」
雪乃「見なさい、比企谷君。あちらにはガンギエイ目のシノノメサカタザメがいるわ」
八幡「エイなのかサメなのかどっちだ」
雪乃「これだから、物を知らない男は困るわね。シノノノメチャカタジャメはう」
八幡「思いきり噛んだな超可愛い」
ピンポンパンポーン
結衣「あ、ヒッキー、ゆきのん、まずいよ! もうそろそろショーが始まっちゃう! 急ごう」サッ
雪乃「え、そんな手を握るだなんて大胆過ぎよ由比ヶ浜さん恥ずかしい」
結衣「ゆきのん、ちょっとごめんね」
雪乃「え、何かしら?」
結衣「そーれっ!」ブンッ
雪乃「びゅーーーーーーーーーん!!」
八幡「大変だ! 雪ノ下がショーまで真っ直ぐに吹き飛ばされたぞ!」
結衣「ゆきのーん! 席を三つ確保しといてね!」
トレーナー「はーい! 皆さん、お待たせ致しましたー! これからショーを始めますねー」
ワーワー、ワーワー!!
トレーナー「それでは早速登場してもらいましょうかー。おいでー」ピーッ
アシカ「」ピョインッ
アシカ「」テケテケ
トレーナー「はい、アシカのコージロー君です。みんなにご挨拶してー、コージロー」
アシカ「」アウッ、アウッ
トレーナー「はい、よく出来ましたー」
パチパチパチパチ!!
結衣「すごーい! 可愛いね、コージロー君!」
雪乃「…………」
八幡「……イルカいないじゃねーか」
完
あれ……薄汚いオルフェノクは……?
乙
ゆきのん可愛い
面白いやん
どうした面白くないぞ
由比ヶ浜に甘い雪ノ下きもい
乙
なんだろうな、見慣れたせいか狂気が足りないとか思えてくる…
いや面白かったけどね
このSSまとめへのコメント
窓から投げるとか教養ないのかよ