エレン「じゃあ、行ってくるよ母さん!」 (16)


~845年シガンシナ区~


カルラ「いい? 太くて長いのを買ってくるのよ!」

エレン「うん! 母さんが泣いて喜ぶような太くて長いの買ってくるよ!」

カルラ「間違えるんじゃないのよ! ネギだからね! 『太くて長い』からってダイコン買ってきちゃだめよ!」

エレン「大丈夫だよ! 母さんが気絶するほど太くて長いネギ買ってくるよ!」


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ハンネス「おうエレンそんなに急いでどうした?」

エレン「買い物だよ。うちの母さんが泣いて喜ぶような、ぶっとくて長いネギ買って来いって言われてさ!」

ハンネス「……そ、そうか。じゃ、しっかり、太くて(ゴクリ)、長いヤツ買って来い」



エレン「お、アルミンお前何してるんだ?」

アルミン「お爺さんのところに薪を届けてきた帰りだよ。君は?」

エレン「買い物頼まれてさ。母さんが気絶するほど太くて長いネギ買ってこなきゃならねえんだ!」

アルミン「……そ、そうなの。じゃあ、頑張って……」

エレン「おう!」

アルミン「……」


エレン「えーと、野菜野菜。……あった」

野菜売り行商「おう坊主、お使いか?」

エレン「うん、ネギ買いに来た。太くて長いヤツあるかな? うちの母さんが泣いて喜ぶような!」

野菜売り「お前の、あの美人の母さんが泣いて喜ぶようなヤツか?」

エレン「そう! そんで最後には気絶しちまうほどのぶっといヤツ!」

野菜売り「任せとけって! お前の母さんが泣いて喜んで失神しちまうほどの、極太の長いヤツがあるぜ!」

エレン「本当?」

野菜売り「ちょっと待ってな……」ゴソゴソ

野菜売り「これならどうだ!」

エレン「すげぇ…… こんな太いの見たことないや」

野菜売り「きょうはこの程度のしかねえが、勘弁してくれ」


エレン「いやぁ…… これなら母さんだって、きっと目を回すんじゃないかな」

野菜売り「そうか? ……ったく、お前の母さんときたら買い物上手で商売上がったりだ。それからな、坊主」

エレン「何?」

野菜売り「……本当にぶっとくて長いヤツが欲しかったら、……自分の目で見に来なって、母さんにそう言いな」

エレン「もっと太いのがあるの?」

野菜売り「あるとも…… お前の母さんが泣いて喜ぶどころか、天国に昇っちまうほどぶっとくて長い絶品を用意しとくって…… しっかりそう言えよ」

エレン「うん分かったよ。おじさんありがとう!」

野菜売り「毎度あり!」


~その日の夕食~



グリシャ「きょうの料理のこれは、ネギか? ずいぶんと太いネギだな」

エレン「俺が市場で買ってきたんだ。母さんが泣いて喜んで、しまいには気絶しちまうほど太くて長いヤツをって言って」

グリシャ「……で、どうだったカルラ?」

カルラ「何が?」

グリシャ「君が泣いて喜ぶほどの太さと長さだったかね?」

カルラ「そりゃ、ネギなんかで泣いて喜びはしないわ」

グリシャ「……だろうな」


エレン「でもさ、野菜売りの人が言ってたよ。『今度は母さんが天国に昇っちまうほどの、もっとぶっとくて長い絶品を用意しとくから、母さんが自分で買いに来い』って」

グリシャ「!」

カルラ「大げさね。たかがネギぐらいで」

ミカサ「……今度、私がお使いに行ってもいいかな」

グリシャ「そ、そうだそうしなさい! ミカサも女の子なんだし、買い物のしかたを覚えた方がいい! 何しろ人間の探求心というものは、抑えられるものでは」

エレン「大丈夫かお前? 一人でしっかり野菜選べるのか?」

ミカサ「こう言えばいいんでしょう? 『私が泣いて喜ぶほどの太くて長いネギはありますか』って」

グリシャ「げふんげふん!」

なんだよこれww
期待


エレン「無理だよ。お前は野菜作るのは得意だろうが、買うのは俺の方が先輩だからな!」

ミカサ「そんなに威張ることでも……」

カルラ「じゃあ、明日はミカサに買ってきてもらいましょうね。ミカサは家で野菜作ってたんだし、良い悪いは分かるんじゃない?」

ミカサ「うん。太くて大きいのが良いものとは限らない」

グリシャ「ぶふぉ!」

エレン「父さんどうしたの?」

グリシャ「い、いや何でもない…… だがミカサの言う通りだ。太くて大きければいいとは限らんのだよ!」

カルラ「そうかしら? 細くて小さいんじゃ話になんないわ」

グリシャ「」


~翌日の夕方~


ミカサ(これは大事なお使いだ。失敗は許されない)

ミカサ(エレンがきのう買ったネギをはるかに凌ぐ、太くて長いものを買わなければ、カルラおばさんを失望させてしまう!)

ミカサ(野菜売りの行商さんは……あそこか)

ミカサ(? あそこに立っているのはイェーガー先生! どうしてここに……)

ミカサ(物陰)(様子を見よう)


グリシャ「景気はどうかね」

野菜売り「おやこれはイェーガー先生! きょうはまたどうしてこんなところに」

グリシャ「妻に買い物を頼まれてね。ここじゃ大層イキがいい、私の妻が泣いて喜ぶほど太くて大きな野菜が買えるそうじゃないか」

野菜売り「……い、いやあ、それほどのもんじゃありませんよ」

グリシャ「謙遜しなくてもいいよ。君のご自慢の、その極太の長いヤツを私に見せてくれないかね」

野菜売り「いや、いくら先生でも、こんな人込みの中で私のをお見せするのは……」

グリシャ「君は何を言ってるのかな?」

野菜売り「あ! 野菜ですね失礼しました! きのうおたくのエレン坊ちゃんがネギ買っていきましたが、きょうもとっておきのがありますよ! こんなのはどうです」

グリシャ「うーん…… 昨晩の食卓に出たものに比べると見劣りするな」

野菜売り「こりゃお恥ずかしい! ネギは今、いい品が入ってきてないんですよ! こうなったら私も意地だ、こいつはニンジンですがどうです? 極太でしかも馬の○○○ほどの長さがあるときた!」


ミカサ(物陰)(馬の○○○? 何のことだろう。分からない)


グリシャ「見事なニンジンだ。だが…… この程度でうちのカルラを鳴いて、もとい泣いて喜ばせられるかな?」

野菜売り「こりゃたまげた…… 大した奥様だ。つくづく先生が羨ましくなりますわ!」

グリシャ「ほう? この程度のニンジンで、そこまで言うかね君?」

野菜売り「くっ…… ニンジンだけじゃありませんよ! こいつはキュウリですがどうです!」


野菜売り「見てくださいよ、この太さにこの長さ! それにこの弾力! しかも表面にはこう、手をザァーッて滑らせただけで痛くなるくらい凸凹がびっしり…… これなら奥様でなくても、女神様だって泣きわめいて天国行き間違いなしですわ!」

グリシャ「ふむ。野菜の目利きというのは不思議なところでするものだね。勉強になったよ」

野菜売り「見損なってもらっちゃ困りますよ先生! わたしゃこの道20年で奥様方の好みは何から何まで……」

グリシャ「分かってるというのだな?」ギロッ

野菜売り「は……はい」

グリシャ「では、一つ用意してもらおうか。この 私 が 泣いて喜んで昇天してしまうような、極太のダイコンはあるかね?」


・・・・・・・



ミカサ(結局イェーガー先生は巨大なダイコン1本を買って帰った。あれをどうするつもりだったのか、とうとう分からずじまいだった)

ミカサ(私はその後でネギを買ったのだけれど、エレンが前日買ったものよりずっと細くて短かった。私は悲しくなった)

ミカサ(野菜売りのおじさんは言った。『お嬢ちゃんが泣いて喜ぶような? お嬢ちゃんには今はこれで十分』)



超大型巨人の襲撃まであと××日。


終わり

そうなんだよな、この話、襲撃前なんだよな

悲しくなってきた


若りし頃のカルラさんエロいよな

壁の中の人類が滅んでもいいような気がしてきた

このSSまとめへのコメント

1 :  山陽須磨   2018年07月08日 (日) 13:19:35   ID: j_Q3qh3e

楽しく読めた。

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