黒ジャンヌ「どうして私の下着が白なの!」 (32)

黒ジャンヌとジルのSSです
若干のキャラ崩壊があるので苦手な方はご注意下さい
次レスから投下開始します

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 城内・ジャンヌの私室


黒ジャンヌ「ついにこの時が来たわ……」

黒ジャンヌ「私を裏切ったフランスに血の報いを与える時が……」

黒ジャンヌ「私はジャンヌ・ダルク! 地獄より蘇った竜の聖女! 愚昧なるフランス国民よ、私の怒りを思い知るがいい!」

黒ジャンヌ「前口上はこんな感じでいいわよね……後でジルに聞いてもらわないと」

黒ジャンヌ「まずは私を異端認定した教会の豚ども……それと、親愛なるピエール・コーション司教をお呼びしなくてはいけないわ」

黒ジャンヌ「ふふふ、これから私が愛した……愛していた祖国フランスを、邪悪と悪徳をもって陵辱するなんて、数日前の私が聞いたらなんて思うのかしら」


黒ジャンヌ「では行くとしましょうか」

黒ジャンヌ「…………そういえば、気がついた時にはこの格好でしたが、下着はどうなっているのかしら」ペラッ

黒ジャンヌ「なっ……!? そ、そんな……ジル! ちょっと来て!」

ジル「お呼びですかな、ジャンヌ」ガチャリ

黒ジャンヌ「ずいぶん早かったわね……じゃなくて、女性用の下着の替えはないかしら?」

ジル「下着の替え、ですか。サーヴァントである貴女には生理現象そのものが起こりえない。従って、着替えの類を持つ必要などないと思いますが」

黒ジャンヌ「そういう問題じゃないの! 見なさいよこれ!」バサッ

ジル「ふむ、実によく似合っておりますぞジャンヌ。して、何か問題でもありましたかな?」

黒ジャンヌ「見れば分かるじゃない! この私が、悪徳に身をやつしたジャンヌ・ダルクの下着が白って! しかもレースつきの上品なの! こんなの最低よ!」

もうこの時点でジャンヌかわいいよジャンヌ


ジル「やはり乗馬用のズロースなどの方がお好みでしたか。でしたら早急に用意させましょう」

黒ジャンヌ「もっとダメ。こんな大胆なスリットからだぼっとしたズロースが覗いてるなんてそれこそ最悪です。イメージに関わります」

ジル「イメージですか?」

黒ジャンヌ「そう、イメージですイメージ。これから私は破壊と暴力の化身、邪悪と悪徳の象徴としてこのフランスを席巻しなくてはなりません」

ジル「そうですとも」

黒ジャンヌ「泣く子も黙る恐怖の代名詞、姿を見ただけで命乞いをしたくなるような圧倒的存在。それが私の目指すもの」

ジル「私も貴方がそうあれるよう全力を尽くす所存でございます」

黒ジャンヌ「なのに、そいつの穿いている下着が生娘みたいな白? いい笑い者じゃないの」


ジル「杞憂ではありませんかな? 第一、恐慌する民にわざわざ貴女の下着を確認するような余裕があるはずがない」

黒ジャンヌ「見える見えないの話じゃなくて、私は『見えたら』の話をしているんだけど?」

ジル「ふむ、貴方のご不満も分からないではありません。ですがないものねだりをされても困ります」

ジル「その件については、また後ほどということでお許しを」

黒ジャンヌ「……分かりました」



 オルレアン 某所上空


黒ジャンヌ「(とは言ったものの、やはり気になりますね……)」

ワイバーン「ギャオー」バッサバッサ

黒ジャンヌ「(今日は風が強いですし、初めに降り立つのは村で一番高い教会の尖塔。おまけにこの服装ではほぼ下から丸見え状態ではないですか)」

ふんどし坊主フェスティバル


ジル「ジャンヌよ、準備はよろしいか!?」

黒ジャンヌ「はい、問題はありません! というか、念話で話しかければよいではないですか!」

ジル「失礼! ですが、せっかくまたこうして貴方と相見えたというのに、意思の疎通を念話などで済ませてしまってはあまりにも味気ない!」

ジル「貴方のお声を、地獄に堕ちる前に、今一度このジル・ド・レェの耳に染み込ませておきたいのです!」

ジル「ああ……ジャンヌよ! よくぞ、よくぞ蘇ってくださった……!」

黒ジャンヌ「ジル……」

黒ジャンヌ「(そうです、こうして私を信じてついてきてくれる者たちのためにも、私は立ち止まっている暇などありません)」

黒ジャンヌ「(たかが下着のことをくよくよといつまでも気にしているなんて、私はどうかしていたのかしら?)」

黒ジャンヌ「(私が懸念すべきはただ一つ。このフランスを蹂躙し尽くすことのみ!)」

黒ジャンヌ「皆の者! 私についてきなさい!」


 同所・教会


町人1「な、何だ!? 空から馬鹿でかいトカゲが飛んできたぞ!」

町人2「しかも凄い数だ!」

町人3「お、おい! 見ろ! 教会の上に誰か降ってきたぞ……!」

黒ジャンヌ「ふんっ!」ボキッ

町人1「ああっ、十字架が!」

町人2「なんて不敬な……!」

黒ジャンヌ「フランス国民よ! 私を覚えているか!」

黒ジャンヌ「救国の聖女と祭り上げられ、ほんの三日前に、人としての全てを奪い尽くされて死んだちっぽけな田舎娘を!」


町人1「救国の聖女……三日前に死んだって、まさか」

町人2「ジャ、ジャンヌ様! ジャンヌ・ダルク様が復活なされたのか!?」

黒ジャンヌ「私が蘇った理由はただ一つ! この国を、フランスを、フランスという過ちをこの地上から一掃する!」

黒ジャンヌ「行きなさい、ワイバーンと海魔たちよ! この街から、生命という生命を消し去るのです!」

ワイバーン「ギャオー!」

海魔「」ヌルヌル

町人たち「う、うわああああああ!!」



 城


黒ジャンヌ「……ふう。初陣にしては中々でした」

ジル「損耗の少ない死体はゾンビとして再利用いたしましょう」

黒ジャンヌ「ええ、そうしてください」

デオン「主よ、ただいま帰還いたしました」

黒ジャンヌ「お帰りなさい、バーサーク・セイバー。務めは果たせましたか?」

デオン「はい」

黒ジャンヌ「それはよかった。……他の者はどこへ?」

デオン「バーサーク・アサシンとバーサーク・ランサーは未だ現地に残っているようですが、それ以外の者については存じ上げません」


黒ジャンヌ「そうですか。では早速次の街へ向かってもらいましょう」

デオン「…………」

黒ジャンヌ「どうしました、何か言いたいことでも?」

デオン「いえ、何も。私に主の趣味に口を出す権利はない」

デオン「ただ――――身も心も闇に染まった貴方には、やはり黒が似合う」

黒ジャンヌ「は?」

デオン「必要とあらば、このシュヴァリエ・デオンが微力ながらお力添えを差し上げます」

デオン「では、行って参ります、主よ」スタスタ

黒ジャンヌ「……待ちなさい、バーサーク・セイバー」

デオン「はっ、何でしょう」

黒ジャンヌ「少し、貴方の意見を聞きたいんだけど――――」

前にも黒ジャンヌで書いてた?
かわいいよ邪ンヌ


黒ジャンヌ「――――というわけで、バーサーク・セイバーに選んでもらいました。どうです? 何故ドレスまで着替える必要があったのかは分かりませんが」

ジル「お、おお……! なんと、なんと美しい……! まさに美の化身! 芸術そのもの! このジル・ド・レェ、感涙を抑えられませぬ……!」

黒ジャンヌ「な、何も泣かなくてもいいではないですか……」

ジル「しかし、貴方にはそのような可憐な衣装を纏うことさえ許されなかった。戦いが終わった暁には、ジャンヌよ。貴方にも歳相応の少女としての生が約束されていたはずだったと思うと……」

黒ジャンヌ「……無駄な議論です。歴史にIFなどありえない」

ジル「ええ、ええ。そうですとも。だからこそ、今という奇跡を必ずものにしなければなりませぬ」

ジル「例え、この身が地獄の業火に焼かれようとも……!」


黒ジャンヌ「(……下着なんてどうでもいいと思っていたけれど)」

黒ジャンヌ「(彼を喜ばせることができたのなら、それで……)」

ジル「ところでジャンヌ。何故胸元を抑えているのです? もしや、お怪我でもされましたか?」

黒ジャンヌ「何故と言われても、何もつけていないからに決まっているでしょう。動くと落ち着かないのです」

ジル「ほう、それはいけませんな。ところでジャンヌよ、『ブラ』と呼ばれる女性用下着のことをご存知か?」

黒ジャンヌ「馬鹿にしているの? そのくらい一度でも現代に召喚されたことがあれば知っているわ」

ジル「それは失礼いたしました。では、こちらに件のブラとショーツがございます。どうぞ、お召しになってくださいませ」


黒ジャンヌ「……ねえジル。これ、さっきまで私がつけてた奴じゃありません?」

ジル「そのようなことは断じて! この私がジャンヌに洗濯も済んでいない衣服をご用意するなど、天地がひっくり返ろうともあり得ませぬ! 紛れもないおろしたてですぞ!」

黒ジャンヌ「ふうん。この下着、貴方がおろしてきたの。しかも私が嫌いって言ったはずの白を」

ジル「……こうなっては仕方がない。ここに告白いたしましょう――――貴方の下着を選んだのは私です」

黒ジャンヌ「最初から知ってた! だってこれ完全に貴方の趣味だもの! いつゲロするのかってずっと待ってたんだから!」

ジル「ですがジャンヌ。私とて、単に趣味で貴方のお召し物を決めたわけではありませぬ」


黒ジャンヌ「聞いてあげるわ。話しなさい。貴方への罰はそれから考えます」

ジル「ジャンヌ、貴女は万を超える軍勢を率いる将軍が、肩書通りの勇猛果敢な人物であった場合と、実は小心な臆病者だった場合。どちらが物語の題材としてふさわしいと思いますか?」

黒ジャンヌ「そんなの後者に決まってるわ。だって、そっちの方が意外だもの」

ジル「そういうことなのです、ジャンヌよ。邪悪に落ち果てし竜の聖女が、実は清楚な下着をつけている……」

ジル「『悪女なら下着は絶対に黒だろう』という神と衆生の思い込みに、真っ向から唾を吐く圧倒的裏切り……まさに悪徳、何とも恐るべき神への背信行為です。素晴らしいではありませんか」

黒ジャンヌ「な、なんて妙案なのジル! やっぱり私、貴方がいないと駄目なんだわ!」

ジル「もったいなきお言葉です、ジャンヌ……僭越ながら、まだまだ悪徳のアイデアは豊富にありまして、そちらもぜひお耳に入れておきたいのですが……」


黒ジャンヌ「おきたいのですが?」

ジル「……ふむ。どうやらうるさい小バエが湧いているようです。早急に増援を送るべきかと」

黒ジャンヌ「それには及びません。私が直々に始末してきます」

ジル「分かりました。ではワイバーンの間へ……」


 ワイバーンの間


ワイバーン「ギャオー」

黒ジャンヌ「ジル、件の小バエについて詳しいことは分かりますか?」

ジル「申し訳ありません。ただ、局所的にワイバーンの損耗が著しくなっておりまして……」

黒ジャンヌ「なるほど……では、行きましょう」グイッ


 ビリッ!


黒ジャンヌ「……レースの多いドレスだと、鱗に引っかかってひどく邪魔ですね。やはり元の服装が一番のようです」シュウウン

ジル「そのようですな」

黒ジャンヌ「……心なしか落胆しているように見えますが、バーサーク・セイバーにあのドレスを持たせたのは貴方ですか?」

ジル様は本当に頭の良いお方


ジル「め、滅相もない! 何故私がそのようなことを……!」

黒ジャンヌ「そんな回りくどいことをしなくても、言えば普通に着てあげたのに……」

ジル「む? ジャンヌよ、ワイバーンの羽ばたきにかき消されてよく聞こえませんでした。もう一度お願いいたします」

黒ジャンヌ「二度も言いません! さあ、行きますよジル! 我らの戦場へ!」

ジル「は、貴方にならば、例え地の果てまでもお供いたしますぞ、ジャンヌ!」

ワイバーン「ギャオー!」バッサバッサ

黒ジャンヌ(ジル――私みたいな小娘を、最後まで信じきってくれた尊い人。貴方がいたから、私はずっと旗を振っていられたようなもの)

黒ジャンヌ(ふふ、帰ったら悪徳のアイデアとやらを聞かせてもらおうかしら)


ジル「は。喜んでお聞かせいたしますぞジャンヌ!」

黒ジャンヌ「ちょ、心の声だったのにどうしてしっかり聞いているんですか!」

ジル「念話の方からダダ漏れでしたので、不肖ジル・ド・レェ不躾と知りつつも小耳に挟んでしまいました! 申し訳ありませぬ!」

黒ジャンヌ「ぜ、絶対に許しません! 人の心を勝手に盗み聞きするなんて――――!」

ジル「ご安心下さいジャンヌよ。私めのアイデア、必ずや貴方のお気に召すと存じますぞ!」

黒ジャンヌ「聞きません聞きません! もう最低です! ぜーったい聞いてなんかあげません!」

ジル「ジャンヌよ。目的地は近い。降下に入りますが故、手綱をしっかりと握っておいてくださいまし!」

黒ジャンヌ「聞いているんですか、ジル――――!」


 おわり

そういやジャンヌは最終降臨させても下は黒なんだよな。白の中の黒、黒の中の白とはある意味哲学。

これにて完結です
>>13
自分は先達が書かれた黒ジャンヌSSの書き手の方とは別人です。あちらも非常に楽しく読ませていただきました
では読了いただきありがとうございました

そうだったか

やはり旦那は天才であった乙


黒ジャンヌはどうしようもなくなった時に泣いてジル呼びそう可愛い

ジルもカワイイ乙

やっぱりジャンヌかわいいよジャンヌ


旦那のアイディアがcool過ぎて辛い

旦那はやっぱり最ッ高にcoolだぜ!!

おつ
死に際に白いの見れたら天国いけそう

この聖女かわいい

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