白菊ほたる「かげろう、プロデューサーさん」 (39)

 二万円を稼ぐのに、俺は何時間働くのか。
 夜勤で入れば多少時給も上がるが、たかが知れている。
 煌々と蛍光が灯るコンビニに、二十時間もいなければならない。

 二万円を稼ぐのに、俺はどんなにすり減っていくだろう。
 給与明細表は断末魔の叫びだと思う。
 人が見れば鼻で笑いそうな数字が、恥じらいなく浮かんでいた。

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 夜勤明けで頭がぼーっとしていた朝、素晴らしいことを思いついた気がした。
 お金を貰ういい方法だ。コンビニで、流行りのアイドルの曲が延々と繰り返されていたからか、手口はすぐに決まった。

 かわいい女の子に声をかけて、お金を貰う。女の子は中学生か、高校生くらいが望ましい。
 自分はスカウトマンだ。プロダクションへ所属するためには、事前に登録料が必要だと説明する。
 親からお金をいただく。ある程度集めたらドロン。
 二万円くらいなら、いい勉強料だと思ってくれるかもしれない。
 というわけで、事前登録料は二万円に決めた。

 そう決めて家へ帰り、押し入れの中からスーツを引っ張り出した。
 埃っぽかったし、シワが寄っていた。クリーニングに出すか迷ったが、やめた。
 本気で、人を騙そうと思ったわけじゃない。

 計画している最中は、それは刺激的で面白くて、なにか自分を越えて行くような感覚があった。
 だが、いざ行動に移す――その第一歩であるスーツを出してみると、計画を完璧に遂行する気分じゃなくなった。
 穴があっていい、完璧なやり口でなくて、必ず失敗するようなものじゃなければダメだ。

 やっぱり悪いことはできないな、って、トホホな自分を笑ってくれたらいい。

 シワだらけのスーツ、にょろにょろ伸びた髪と剃り残しのある髭。
 鏡へ映してみると最高に胡散臭かった。

 朝っぱらから、俺は街へ出た。
 駅前まで流されるように歩いて行くと、なんとなく、通勤する人々と自分とが似た者同士のような感じがした。
 中でも俺のスーツは一段と汚らしくて、もしかしたら一番の働き者だと勘違いされているかもしれない。

 人混みの中で、俺はかわいい女の子を探した。
 最初のうちは声をかけようとしても喉の辺りがキュッとなって、声が出なかった。
 登校途中の女子学生が何人も目の前を通り過ぎた。
 道行く人に訝しげな目を向けられ、おどおどしていたら却って怪しく見えるものなのだと開き直り、ようやく声が出るようになった。

 最初は三人並んで歩く女子学生に声をかけた。
 お嬢さん方、アイドルに興味ありませんか。
 三人とも一瞬ポカンと口を開けて、それから少し遅れて笑い声を上げながら、俺から離れて行った。
 なにあれ、とか、今の人アヤシー、とか、口々に言いながら。俺もつい、笑ってしまった。

 周りと自分とを比べるとあんまり違和感はないと思うのだが、多分、見るからに怪しいのだろう。
 目についた学生へ片っ端から声をかけてみたが、誰も相手にしてくれなかった。
 それから一時間もしないうちに、学生連中は姿を消してしまった。

 次は下校時間だな、と俺は近くのハンバーガー屋でコーヒーだけ注文して、窓際の席へ座った。
 ここからは駅の様子がよく見える。けれど、やっぱり学生はもういなかった。
 ぼんやり頬杖をついて、つまらない道を見つめるのにも段々と飽きて、瞬きのつもりでまぶたを下ろすと眠ってしまった。

 はっと目を覚ますと、身体にものすごい熱が篭っていた。
 俺の頭を、バター色の西日がジリジリと焼いていた。

 どろどろの目で覗いてみると、駅の出入り口は人を飲んだり吐いたり大変そうだった。
 俺は紙のカップをゴミ箱へ捨てて、そそくさと店を出た。

 ぐーっと伸びをすると、いよいよスカウトマンを演じる気がなくなっているのに気づいてしまう。
 それはそれでいいのだが。

 俺はこれから、下校していく途中の女子学生に声をかける。
 笑われたり、怯えられたりして、結局、誰も俺のことを信じない。
 みんな夢がないな、と笑って家へ帰り、胡散臭い嘘を脱ぎ捨てる。
 そうなるべきだと思ったのだが。
 いったい、白菊ほたるに声をかけたのは、俺にとって不運だったろうか。

 白菊ほたるは、十二分にかわいい女の子だった。
 色白で、少し憂いのある表情が男心をくすぐるような、儚げな女の子。
 歳は十いくつとかで、まだ中学にも上がっていないらしい。

 ちょっといいですか、と声をかけると、彼女はビクッと身体を震わせて、この世の終わりみたいな顔を振り向かせた。

「怪しい者じゃないんです」

 自分で言ってて、ついつい吹き出してしまった。

「アイドルに興味はありませんか」

 今日、俺が声をかけた誰も、そんな言葉には足を止めなかった。
 けれど、彼女は足を止めた。

「アイドルの卵を、探しているんだ。僕、プロデューサー」

 俺は胸ポケットを探るふりをして、あちゃーとわざとらしく頭をかいた。

「ごめん、名刺を忘れてきたみたいで」

「あ、いえ……あの」

「そう、君、アイドルになりませんか」

 俺はぐいっと口角を持ち上げて前歯を見せつける。
 学生の時分は歯列矯正器が邪魔っけで笑うことに抵抗があり、今日みたいに一日中ニコニコすることもなかった。
 見せかけの笑顔ではあるけれど。

 ――――

 家に帰ってから、頬が引きつっていないか鏡で確認した。
 スーツを脱ぐと身体中の筋肉が一気に緩んだ気がした。
 布団へ倒れこんで、すぐに意識は形を崩した。

 うつらうつらとわずかばかりの時間、白菊ほたるのことを考えた。
 結局、足を止めてくれたのは彼女一人だけだった。
 彼女に電話番号を教えて、別れたあとも引き続き女子学生に声をかけまくったけれど、誰も俺の話を聞いてくれなかった。
 日が落ちて薄暗くなった辺りで交番から警察官がひょこっと顔を出したのを見て、俺はそそくさと家路についたのだった。

 ――プロダクションに所属するとき、どうしても登録料が二万円必要なんだ。

 俺がデタラメを言うと、ほたるちゃんは「両親に相談してみます」と眉をハの字にした。

 二万円か。彼女くらいの子どもには途方もない大金だろう。
 いや、それは俺にとっても大金だった。いったい、何時間働けばいいのか。

 今頃、ほたるちゃんは俺のことを話しているだろうか。
 時分の娘がアイドルとしてスカウトされたと知って、最初のうちは喜ぶかもしれない。
 けれど、スカウトマンの素性が、全然わからない。

 名刺はない、会社の名前も聞かなかったと言うし、ほたるちゃんが持っているのはメモに殴り書きの電話番号だけ。
 そして、登録料に二万円? 怪しい。
 ほたるちゃんの両親がよほどのバカでなければ、本当にスカウトマンだったのか確かめようとするだろう。
 いや、それさえしないはずだ。

 怪しいし、危ないからやめなさい、諦めなさい。

 そう言われてほたるちゃんはしょんぼりする。それで終わりだ。

 翌朝、目を覚ますと携帯電話に留守録が残っているのに気がついた。
 再生してみると、ほたるちゃんの泣きそうな声が聞こえた。

『――反対されたんですけど、私……アイドルに、なりたいです。
 あの、両親は……やめなさいって、言うんですけど……。
 会社の名前とかプロダクションのこととか、あのときは訊けなかったですけど、
 ちゃんと教えてもらえれば、親もわかってくれると思うんです……』

 なるほど、ほたるちゃんの両親は聡明だ。きっと、電話番号のメモも捨てるよう言われただろうに。
 朝食を口に押し込みつつ、どうしたものかと考える。

「二万円かー」

 結局、最適解は見つからないまま、朝食を食べ終わる。今日は何時間働くんだっけ。

 隅に脱ぎ捨てたままのスーツが目について、拾い上げる。
 昨日見たよりもずっとシワが寄っていて、しかもコーヒーの染みがついていた。
 次に、いつ着ることになるかもわからないが、クリーニングに出しておこう。
 バイトまでまだ時間があった。スーツを小脇に抱えて、自転車の鍵を取って、部屋を出た。

 ――――

 一週間という一括りはいつからか空っぽのハリボテになっていた。
 バイトに行って、寝て、何曜日と何曜日が休み。
 待っているものはなく、ただ老いと死まで続く一本道を無感動に歩いているだけ。

 この一週間も同じだった。けれど、ほたるちゃんにとっては違ったのだ。

 この一週間、バイトが終わってから携帯電話を見ると、いつも留守録が残っていた。
 ほたるちゃんからだった。

『――お願いします……連絡、待ってますから……私、本当に、アイドルやってみたいんです……』

 両親に気づかれないようにヒソヒソと囁く、彼女の声を聞くのはつらかった。
 切実に、ほたるちゃんはアイドルになりたいのだ。

『――お金、きっと用意します……私のお小遣いじゃ、全然足りないですけど……。
 今、二千円だけあるので……全部用意できるまで、どうか待っていてもらえませんか……』

 自分がほたるちゃんと同じ歳の頃、二千円はどれだけ大金だったろう。
 必死に思い出してみて、それから二万円という金額の大きさに涙が滲んだ。

 ほたるちゃんと出会ってから一週間が経った、夜勤明けの朝。
 今日も、留守録が残っている。やっぱり、ほたるちゃんからだった。
 いいかげんにしてくれ、と思う。俺は、君の期待には応えられない。
 全部嘘だったんだ、早いとこ諦めてくれないか。どうだ、ひどい男だろう。

「プロデューサーさん」と、ほたるちゃんが呼ぶその男は、俺だ。

 悪いことをしてしまったな。そう思いつつも、シャワーを浴びると一切が洗い流されるような気がしてしまう。
 ただでさえ、夜勤明けで頭がぼーっとしているのに。シャワーを浴びてから万年床の布団へ横になった。

「寝て起きたら全部夢になってねーかなあ」

 それとも、二千円を貰って着信拒否でもしてしまおうか。
 当初の予定通りにさ。桁が一つ少ないけど。
 目を閉じると、すぐにトロトロ微睡んだ。

 携帯電話の鳴る音に気づいて飛び起きたのは多分、ほたるちゃんのことが気にかかっていたからだった。
 もしもし! なんて電話を取ったけれど、この間スーツを預けたクリーニング屋だった。

 肩透かしを食らって、気の抜けた受け答えをしつつ、横目で時計を見るとまだ正午過ぎだった。
 ほたるちゃんが電話をしてくるとしたら、学校が終わってからだろうから、まだ早い。
 すっかり目が醒めてしまったし、クリーニング屋へスーツを取りに行くことにした。

 餅は餅屋と言うが、流石はプロだと思った。
 コーヒーの染みも、しわも消え、スーツはまるで生まれ変わったようだった。

 家へ持ち帰ると、ビニールから取り出して、袖を通してみる。
 鏡に映る自分は以前よりマシだが、まだ胡散臭かった。
 無精髭とにょろにょろ伸びた髪が邪魔していた。

 こんな男の言うことを信じるとは、ほたるちゃんの今後が少し心配になる。

 彼女は今も待っているのか? この胡散臭い男を。
 信じさせる気もない、湿気ったマッチみたいな嘘に、胸をときめかせて。
 悪いことをしてしまった。そう思う。

 心が痛むか? だが、今のままで傷つくのはほたるちゃんだけだ。
 せめて、彼女には夢を信じたままでいてほしいと、俺は思った。
 そして、鏡に映る胡散臭い男は考えた。
 それには、彼女を騙さなければならないだろうさ。

 スーツに身を包み、俺は床屋へ出かけた。

「真面目そうな髪型にしてください」

 俺がそう言うと、理容師はちょっと困った顔を見せた。

「短めに切るってことッスかね?」

「はい、そうですね」

「結構、切ることになっちゃいますけど」

「構わないです。バッサリやってください」

 理容師はわかりました、と俺の髪に櫛を当て始めた。

「就活ですか?」

「そんなとこです」

 チョキチョキと、ものの十分間でにょろにょろの髪は床に落ちた。
 顔剃りとシャンプーを終えて店を出た俺は、着ているスーツと同じく生まれ変わったようだ。

 俺は駅へと歩いて行く。
 クリーニング済みのスーツ、さっぱりと短い髪、髭の剃り残しはなく、この夕方に紛れる俺は人の目にどう映るのだろう。
 ほたるちゃんは、どう思うだろう。

 人々を飲んでは吐く駅の前、俺はほたるちゃんを探した。
 今、彼女を見つけなければと思った。今じゃなければ、もう二度と会えない気がして。
 ちっぽけで、色白の、かわいい女の子。あまりに人は多かった。見つけられるだろうか、不安になる。

 だが、ついに俺はほたるちゃんを見つけた。
 何億コマの一瞬だとしても、見逃すことはできない彼女の背中に、俺は走った。
 人とぶつかりながら、俺は確かにほたるちゃんへと近づいた。

「君、ちょっと、いいか」

 手を伸ばして、肩を叩く。振り向いたほたるちゃんの表情は、この世の終わりみたいだった。

「僕だよ。……ほら、プロデューサー」

 俺がそう言うと、ほたるちゃんは表情をうまいこと和らげた。

「あ……プロデューサーさん。すみません、なんか、雰囲気が変わってて……」

「ああ、そう……髪、切ったんだ」

 やっぱり、別人みたいに見えるのかな。
 なぜだか少し寂しくなるが、俺が寂しがるのは見当違いなことだと、その感情は大事に忘れることにした。

「それより、会えてよかった。話したいことがあるんだ」

「あ、その……私、何度も電話して、お金のことも……あの、二千円だけなら」

 ほたるちゃんはゴソゴソとポケットから封筒を取り出した。
 いつでも渡せるように準備をしていたんだろう。
 俺は一瞬、受け取るべきか思案してから、いや、と手で制した。

「それならいいんだ、もう必要なくなった」

「えっ、もう必要ないって……あの、それって」

 ほたるちゃんの表情はこの世の終わりに逆戻りした。
 そんな表情も本当はする必要ないんだ、と思う。

「実は……プロダクションが倒産してしまったんだ」

「ええっ!? と、倒産だなんて……」

 俺が大げさに言うと、ほたるちゃんは同じくらい大げさに驚いた。
 きっと、これだって、最適解ではないのだろうと思う。

「だから、すまない。君をアイドルとしてプロデュースすることができなくなったんだ」

「そんな、私……」

 ほたるちゃんは微かに呟くと俯いて、そして泣き出してしまった。

「ごめん」

 俺の言葉はあまりに軽すぎる。
 それは軽い嘘をどうにか終わらせるために出た言葉だからだった。

「い、いいえ……ち、違うんです……!」

 ほたるちゃんは、自身の制服の裾をぎゅっと握りしめた。

「私、今まで、なにもいいことなくって……」

「……そうなのか?」

「昔から、運が悪くて……どうして、私ばっかりって……」

 涙は睫毛を湿らせ、頬を伝い、そして華奢な指に拭われた。

「私が関わると、全部ダメにしちゃって……きっと、プロダクションも私のせいで……」

「いや、そんなことはないよ?」

 もともと、ありもしないプロダクションなんだから。

「私の不幸が移ったんです……」

「バカ言うな」

「バカじゃないです、本当に、私、不幸なんですっ」

「お前は不幸なんかじゃねぇよ」

「どうしてわかるんですか……私のことなんか、全然知らないのに……」

「ん……まあ、理由は言えないけど」

 ほたるちゃんは納得がいかないようで、グスグス泣き続けた。

 いつの間にか、日は随分と傾いていた。
 橙ののっぺりとした空を背に、黒い影があらゆる方向へはじけ飛んだ。
 熱が逃げていくように東の空は青白く、西の空を蝕み始めていた。
 その景色も、たくさんの人も、俺たちだって、一週間前となにも変わりはないのだ。
 それなのに、代わりはない。それが悲しい。

「……アイドル、なりたかった?」

 訊くと、ほたるちゃんは頷いた。

「俺は、ほたるちゃんをアイドルにできなかったけど、ほたるちゃんが望むなら、きっと、アイドルになれるよ」

 ほたるちゃんは、やっと、びしょびしょの顔を上げた。そして、しゃくりあげながら、言った。

「私……嬉しかった、スカウトしてもらえて……こんな私でもアイドルに、なれるかもしれないって……」

「オーディションを受ければいい。君はかわいいからな。それに、俺が声をかけなくても、誰かが君を見つけていたさ」

「本当ですか?」

「君は不幸なんかじゃないぜ」

 空が徐々に死んでいく。橙色が悪寒に震えて、太陽はビルの谷間にぶるぶると吸い込まれる。
 夜だ、夜が来た。

「ごめん。もう、行くよ」

「あっ……あの、プロデューサーさんは、これから……どうなるんですか?」

「ああ、倒産したもんな」

 自分で言って、それがなにか面白いジョークのように思えてしまう。

「これからは、コンビニで働くのさ」

「こ、コンビニ……」

「悪くないよ、レジ打ち品出し発注作業。たまに、遊びにおいで」

「……はい」

 ほたるちゃんはゴシゴシと涙を拭って、ペコリと頭を下げた。

「ありがとうございました」

 俺はなんでか、鼻の辺りがツンとした。
 なにも変わらないのに、これからの生活だって変わるはずもないのに。

「じゃあな」

 ちょっと離れただけで、ほたるちゃんと自分との間には人間の影が隔たった。
 水が易きに流れるように。

「さようなら……さようなら……」

 悪いことってできないな。ほたるちゃんの声を聞いて、そう思った。

 ほたるちゃんのいた方へ振り向いたけれど、人波に飲まれて、ちっぽけな女の子は見えなかった。
 誰が、ちっぽけな彼女を見つけてくれるだろうか。
 誰か、誰かと呼ぶ声がするなら、誰か、誰かと呼びかけよう。

「さようなら、プロデューサーさん……」

 もう、彼女の声も消えかかっていた。
 さよならなんて言うな。そのプロデューサーさんには、これから出会うんじゃないか。

 ――――

 また、同じ一週間。バイトに行って、寝て、何曜日と何曜日が休み。
 いつからかずっと変わらない一週間。あれから、特に変わったことはない。
 強いて言えば短くなった髪をアルバイト仲間に茶化されるくらいで、店内に流れるアイドルソングもしばらくは繰り返されるはずだった。

 ほたるちゃんは、今頃どうしているだろう。
 どっかのオーディションを受けて、念願のアイドルになれただろうか。

 少し気が早いかもしれないけれど、彼女の歌がこのコンビニに流れるのを、俺は心待ちにしている。
 ついでに言えばなにかのインタビューで「アイドルになったきっかけ」とかって訊かれたときは、俺の話をしてくれたらいいと思っている。
 ほたるちゃんと俺の一週間はデタラメな様相だったけれど。

 そうだ、俺は待っている。
 いつの日か、なんの変哲もない一週間に、ほたるちゃんの歌が流れることを。

 俺はずっと待っている。



『白菊ほたる「かげろう、プロデューサーさん」』

END

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こういう掌編好きだ
ほたるちゃんはもっと好きだ
声つかないかなー
せめてデレステ出ねーかなー

素敵

こういうのいいな

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