白菊ほたる「裕子お姉ちゃん...?」堀裕子「はい!エスパーユッコです!!」 (35)


注意
オリ設定
キャラの言葉遣いが一部変
地の文と台本形式がごちゃまぜ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411742624


幼少の頃から両親が共働きだった私にはあまり家族と一緒にいた記憶がありません



保育園などに預けられていた覚えもありません。


今にして思うと家計にそんな余裕がなかったんだと思います


朝、目を覚ました私は一人、ちゃぶ台の上で冷めきった朝ごはんを食べ


夜、当時は明かりをつけるスイッチに手の届かないくらい小さかった私は真っ暗な部屋の隅で両親の帰りを待っていました


そんな生活でしたが、順調に成長し13歳となった今でも私はその過去を他人に嘆かれたり、ましてや同情を引くような類のものだとは決して思いません



私にはその頃一緒に遊んでくれるお姉さんがいました



朝、家を飛び出して公園で待ち合わせて、夜になるまで一緒に遊んでいました



何があってもいつも楽しそうに笑っていて



そんなお姉さんを見ていると私も楽しくなって一緒に笑ってました



13年という短い人生の中でおそらく平均以上に不幸な目にあってきた私ですが



そのときの私は決して不幸ではありませんでした

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ある日



ほたる「ゆうこおねえちゃん...おはよう」

裕子「おや!ほたるちゃん!おっはよーう!」



ほたる「おはよう...あっ、今日もスプーン...持ってるんだね」

裕子「そうだよ!ユッコはえすぱーだもん!」

ほたる「そうなんだ、でも...えすぱーってなぁに?」

裕子「むむ?えすぱーとは何か、と...ふっふっふ~ほたるちゃんには特別に教えてあげよう!」

ほたる「わぁ...ありがとうおねえちゃん!それで、えすぱーってなぁに?」

裕子「えっと...あの...」

ほたる「...?」

裕子「え~っと...え~っと」

ほたる「どうしたのおねえちゃん?」

裕子「えすぱー...えすぱー...は...」

ほたる「えすぱーえすぱー?」





裕子「えぇすぱぁーーだーーっしゅ!!!」

ほたる「おねえちゃんが走った!?」



裕子「えぇすぱーー...ぶげっ!?」

ほたる「おねえちゃんが転んだ!?」

裕子「えすぱー立ち上がり!!すたんだっぷ!!」

ほたる「おねえちゃんが立った!?」



裕子「ほたるちゃん見て!今のでスプーンが曲がったよ!」


ほたる「わぁ...すごいすごーい...!」


裕子「すごいでしょ!これがえすぱーだよっ!」


ほたる「えすぱーって...かっこいい...!」


裕子「むんっ!もっと褒めて!」

ほたる「ゆうこおねえちゃんすごい!とってもえすぱー!」

裕子「とってもとっても、えすぱーです!」




ほたる「ねぇねぇ...もういっかいやっておねえちゃん」

裕子「も、もういっかい?」

ほたる「うん!今度は曲がったスプーンを元に戻すところ見たい...!」



裕子「あっ...スプーンが...」

ほたる「この前おうちのスプーン勝手に曲げたとき...ゆうこおねえちゃん、おばさんに怒られちゃったもんね...だから、直さないと」

裕子「あぅ...ちょ、ちょっと待って...いま、えすぱーするから」



ほたる「えすぱーするの?」

裕子「うん、むんっ!!ぐぎぎぎぎ...!」

ほたる「スプーンに力を入れてるの?」



裕子「......も、もどらない...また、お母さんに怒られるよぉ...」

ほたる「えぇっ!?ごごごめんなさいゆうこおねえちゃん!ほたるがおねがいしたせいでおねえちゃんが不幸に...」

裕子「っ...いやいやいや!ユッコは不幸になんてなってないよ!?」

ほたる「で、でも...」

裕子「ほたるちゃん!」

ほたる「ひぅっ」

裕子「ユッコは不幸になったんじゃないよ!」



ほたる「えっ、不幸じゃないって、じゃ...じゃあ...まさか」




裕子「そう...そのまさか...えすぱーだよ...」

ほたる「え、えすぱー...」ゴクリ




この後、私も裕子お姉さんの家に謝りに行きました

おばさんは笑って許してくれて、そのあとお姉さんと一緒にお昼ご飯を食べました


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

またある日





ほたる「おねえちゃん、それなぁに?」

裕子「これのこと?これはゼ、ぜ...ゼナーカード?とかいう、えすぱーの道具です!」

ほたる「ぜなーかーど?」


裕子「そう!五枚のカードを裏向きにしてその模様をえすぱーで当てるのです」

ほたる「えっ...おねえちゃん、えすぱーするの?」

裕子「うんっ!えすぱーするよ!さぁ五枚のカードを置いて、と...」

ほたる「わぁー、裏もきれいなもようなんだぁ...!」

裕子「さぁいきますよっ!えすぱーっ!」




__________

______

___



ほたる「全部...外しちゃったね」

裕子「くすんっ」

ほたる「ねぇねぇ、つ、次はほたるがやってみてもいーい?」

裕子「ぐすっ...ほたるちゃんですか...いいですよ!さぁどうぞ!」


ほたる「えっと、このいちばんはしっこのは...」


裕子「むむむ...ほたるちゃんからもえすぱーな気を感じるよ...」


ほたる「そ、そう...?ほたるもえすぱー?ゆうこおねえちゃんと一緒?」


裕子「うん!一緒だよ!」


ほたる「えへへ......えっとじゃあじゃあ一番右のは」



カラス「カー!!」



ほたる「ひゃうっ」

裕子「あぁっ!!カラスがカードをもってっちゃった!?」


ほたる「あぁああ......ま、またほたるのせいでゆうこおねえちゃんが不幸に...」

裕子「そんなことないっ!ユッコはえすぱーなのでカラスなどあっという間にえすぱーしちゃうよ!」

ほたる「カラスさんにえすぱーするの?」




裕子「うん!むむーんの、ほいやっ!ってするよ!」

ほたる「えすぱーってすごい...!」



このあとゼナーカード?という絵札をくわえて飛んで行ったカラスを二人で追いかけて町中の走り回りました

最後は確か、警察のお姉さんに手伝ってもらってようやくカードを取り戻せたんだったと思います

そのお姉さんはカラスを追う最中、スカート姿で木に登ったりしてたのでいろんな意味で危なかったです


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
またまたある日


ほたる「おねえちゃんまだかなぁ」



A「ねえ、ちょっとそこのあんた」

ほたる「え?ほたるのこと?」



A「なんでこんな所で立ってるのよ、人の迷惑とか考えられないの!?」


B「あっちいきなさいよそこにいられると邪魔なのよ!」


C「そうよ!この公園は今から私たちが使うんだから、そんなこともわからないの!?」



ほたる「でもほたる、先にここにいたから...」

C「先にいたからなんなのよ、ここはあんたの公園じゃないでしょ!何様のつもり!?」


B「あー、ほんと、これだからワガママなお子様はイヤなのよ」






A「それにあんたがここにいると公園がカラスまみれになるのよこの疫病神!」

ほたる「っ!!」



B「そーよそーよ。あーあ、カラスのフンを掃除してる人がカワイソー」

C「カワイソーカワイソー!」



ほたる「......ぅぇ...」




裕子「おおっ!さすがはほたるちゃん!!」



A「は?」

B「なによあんた!」

C「カンケーないのに入ってこないでくれる?」

ほたる「ぅゆっ、ゆうこおねえちゃん...?」



裕子「ふっふっふ...何も言わなくてもわかりますよ...?」

ほたる「......?」



裕子「ほとんど徹夜で練習...いや、修行を積むことでマスターしたユッコの新たなえすぱーを見せるためのお客さんを集めていてくれたんだね!」



A「は?は?エスパー?なにいってんの?」

B「あたまおかしいんじゃないの?」



裕子「さぁ!折角ほたるちゃんが集めてくれたお客さんを退屈させるわけにはいきません!!」

「新!ユッコのすーぱーえすぱーをごらんにいれましょう!まずはこちら!」



C「はぁ?なによそのダッサイ帽子」





裕子「この帽子から~~~......はいっ!!」





カラス「ガァアア!!!」

カラス「カァアア!!!」

カラス「カーーー!!!」

迷子のイグアナ「......(不躾な連中と一緒に、随分狭いところに押し込んでくれたものだね)」


裕子「あら不思議!動物が出たよっ!!」


A「きゃーーー!!?」

B「ちょやめてぇっ!髪の毛突かないでぇっ!」

C「いたっ!いたいっ!ママに言いつけてやるんだからっ!!」






ほたる「きゃっ、くすぐったい...」

迷子のイグアナ「......(お嬢さん、泣いているのかい?それはいけないな。涙を拭ってあげよう。生憎と使えるのはこのざらついた舌だけだが)」







裕子「あらら、みんな帰っちゃった。まだ見せてないえすぱーがあったのにぃ...」

ほたる「ゆうこおねえちゃん......ほたる、もっとえすぱー見たい...」

迷子のイグアナ「......(ふむ、私はそろそろ主人の下へ帰りたいのだが...まぁ座興としてもうしばし楽しませてもらおうか)」

裕子「ふふふ、ではこのえすぱーをほたるちゃんとトカゲ君にだけこっそりみせちゃうよ!」




ほたる「......ゆうこおねえちゃん、ありがとう」

裕子「むむん?」

ほたる「ううん......なんでもない」





そのあと見せてもらったエスパーというのも厚紙を貫通するボールペンや増えるボール

トランプの模様当てといった今思い返せばデパートで手に入るような手品グッズのネタばかりでしたが、

その日の私はそれを驚きと期待に満ちた目でわくわくしながら見ていたと思います

そのあとはずっとイグアナの飼い主を探してました。私と同じくらいの女の子でした


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
またまたある日



裕子「ふーんふふーん♪」

ほたる「ゆうこおねえちゃん...おまたせ」







裕子「おや、ほたるさん!おはようございます!」

ほたる「......え?」






裕子「いやー、今日はですね!また飛びっきりのえすぱー、いえ、さいきっくな技をマスターしてきましたよ」

ほたる「ゆうこおねえちゃん...?」

裕子「どうしましたほたるさん?」





ほたる「......ふぇ...ぅゅ」




裕子「ど!?どうして泣くのですか!ほら!さいきっく!」

ほたる「ぁぅ...だって、だってぇ」



裕子「ほら!さいきっくいないいないばぁです!さいきっく消失!&さいきっく出現!いないいない...ばばぁん!!」



ほたる「ほ、ほたる”さん”って...それに他人みたいな言葉づかいで...ぅぇ」

裕子「はい?言葉づかいですか、ほたるさん?」


ほたる「...ぅん」

裕子「あーこれはですね、テレビで見たさいきっかーのマネなんです」

ほたる「......ほんと?」


裕子「そうです!」

ほたる「ほたるのこときらいになったとかじゃない...?」

裕子「勿論ですよっ!」

ほたる「よ、よかったぁ...うわあぁあん!」

裕子「あぁっ、また泣かないでくださーいっ!泣くのならユッコのさいきっくを目にしてからですよー!!」




そのあと泣き腫らした目でお姉さんの家に行き、お姉さんが影響を受けたという超能力者の出ている番組の録画を観ました

その人が敬語だったというより、その超能力者が外国人で吹き替えの人が敬語だっただけの話なんですがお姉さんはそれが大層気に入ったそうです

それからも何度もお姉さんと会っては一緒に遊びましたが、覚えている限りお姉さんは私にずっと敬語でした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




裕子「あいたたた...これは痛いですね」

ほたる「どうしたんですか?」


裕子「さいきっくぱわーが暴走しました...いたた...これを見てください」

ほたる「えっと...スプーンですね」





裕子「はい、スプーンじゃなくて指が折れました」

ほたる「病院行きましょうよぉ!?」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




裕子「さいきっく自分とまと!」

ほたる「わぁ...!ほんとに真っ赤です!......ってあれ?」


裕子「?...ちょっとクラクラしてきましたね」

ほたる「ゆうこおねえさん!それ熱ですよ!!」




裕子「え?いやいやそんなまさか!今までもよくありましたし...」

ほたる「病院行きましょうよぉ!?」

裕子「さいきっくなので大丈夫です!」





あとその日からお姉さんは「えすぱーゆっこ」ではなく「さいきっかーのえすぱーゆっこ」になりました。

それでもやっぱりお姉さんはお姉さんのままで、

最後の方は私もお姉さんのおかげか敬語で話すようになっていました。




そうです、




私たちの交流の最後の日も、私たちは敬語でした




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





ほたる「ゆうこおねえさん、ほたる、引っ越すことになりました」

裕子「......そうですか」





ほたる「ほたるのお父さんが...えっとよくは分からなかったんですけど、会社の事情だそうです」


裕子「......」


ほたる「えっと、いままでありがとうございました、おねえさんと遊べてほたるはとっても幸せでした」


裕子「.........むむーん...」


ほたる「えっと...おねえさん?」






裕子「さぁあいきぃーっく!!!カード選び!!!」



ほたる「ええっ!?」

裕子「さぁ一枚選んでください!!」


そういってお姉さんは私の前に五枚のカードを差し出しました。


いつの日かえすぱー、今ではさいきっくですが、それを見せてくれた時のゼナーカードです


私にはなんの超能力もないし、強いて言うなら家族や自分を嫌がらせのように苦しめる不幸体質だけしか私にはありません



そんな私がこのカードを引いてどうなるんでしょう?



それでもお姉さんはカード越しに私から視線を外しません、じっと黙ってこちらを見ています




私はその中から一枚を抜き取りました。



表を返すとシンプルで、それでいて変な模様がぽつんと書かれているだけです



しかもこのカードよく見ると他のカードよりも汚れていたり折れ目がついたりしていました。




やっぱり不幸な私だから五枚の中で一番状態の悪いものを選んでしまったのでしょうか







裕子「ふっふっふ、やはりそれを選びましたか...さすがほたるさんです!」

ほたる「えっ...これ、ですか?でもこれ古くなってますよ......」




裕子「覚えてませんか?それはカラスが持ち去ってしまったカードですよ?」

ほたる「......えっ、あっ!」


得意顔のお姉さんが私に言った言葉がそのとき私の記憶を刺激しました

私が選ぼうとして、カラスが飛び去り際にさらっていったゼナーカード、二人で町中を探し回ることになった一枚


裕子「これは一度失くして、二人で見つけた一枚です。...つ・ま・り!」


「このカードがあれば例えユッコたち離れ離れになろうとお互いを見つけることができるのですよ!!!さいきっくぱわーで!」




ほたる「...ぁ...あ...」

裕子「どうです?ユッコのえすぱーがこのさいきっくアイテムを作り出し、そしてそれをほたるさんが一発で引き当てた...」




ほたる「.........ぐすっ...ひっく...」

裕子「......は、はなっ、ひっく、離れ離れなんてっ、なにも...こわくなっ、いでしょう...!!ぅぅぐすっ」

ほたる「うああああああん!!!」

裕子「うぇえええええん!!!さい、さいきっく号泣ぅぁああん!!!」



二人で泣いて泣いて


泣きやんだ時には、空は真っ暗になっていました


私の幸せな日々は、こうして一度幕を下ろしました



そのあと数年たって今日に至るまでの間





進んで思い出したいことなど一つもありません





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日



ほたる「また、だめでした」


都会の真ん中から少し外れた通り


植え込みに腰を下ろして私は一つため息をつきます


足元には何枚かの書類と最低限の私物の入った小さなカバン


ほたる「これでいくつ目でしょう、私の入った事務所が倒産するのは」


書類には事務所の経営不振による無期限営業停止の知らせと、無効になった契約書の類


私物は事務所から与えられていた私のロッカーの中身です


なんとなくこうなることを予期して大した荷物を入れていなかったのは幸いなのでしょうか?それとも不謹慎なのでしょうか


私は今、アイドルを目指して自分なりに奮闘する日々を送っています



いろんな不幸が重なった結果、離婚とまではいかずとも両親が別居するようになってしまいました。


ですが、父が家を出たあとから何故か会社の経営が持ち直し、母と二人での生活は以前よりずっと楽になりました


だからこうしてアイドルを夢見る余裕ができたのかもしれません、これを不幸中の幸いというんでしょうね



ほたる「でもこうしてはいられません、またどこかオーディションを開催している事務所を探さないと」



私はよしっと意気込むとカバンを持って立ち上がります


こんなところでしょげていても始まりません。



目指すは人を幸せにできるアイドル

そして、出来れば、あのお姉さんのような笑顔が素敵な




ぶちり、と音がしてカバンの肩ひもが千切れ、

先ほど立ち上がった足元に荷物が散乱しました




周りの人は何も見てないかのように通り過ぎていきます。

実際私なんて視界にも入っていないのでしょう



ほたる「あ...このカバン、気に入ってたのに...」



私はもうこの程度の不幸ではびくともしません。



冷静に荷物を拾い集めていきます




レッスン着、ドリンクの容器、筆記用具...そういったあれこれを手早くカバンに詰めていく、紐が取れてるだけなら脇に抱えれば持ち運びは出来そう

肩から下げるタイプのカバンを小脇に抱えて、引越業者みたいに歩いている自分の姿を想像して自嘲的な笑みがこぼれる



ほたる「...えっと、何も落し物はしてないか、な...」


カバンの中と地面の上を交互に改め、地面の上に忘れ物がないかを確認する



腰を下ろしていた植え込みの隙間に小さな紙が一枚挟まっているのを見つけました。

他の物より軽かったから、一つだけ違う場所に落ちたみたいです



ほたる「.........」



なんの気なしに指でつまみ上げたところで私は停止しました




ゼナーカード

あの時の札でした




ほたる「...ふふ、なつかしい...」





カァアアア!!





ほたる「あっ」



不幸体質の私に過去を懐かしむ機会などなく、



どこからか飛んできたカラスが私の手からカードをくわえ去っていきました




急降下してきたカラスには流石に驚いてか私を無視していた人たちから悲鳴が上がり、




ほたる「ま、まって...!返して...!」


それを意に介さず私は走り出しました、



中身を拾い集めたカバンがまたその中身をぶちまけました



それを捨て置いて私は上空を飛んでいくカラスを追いかけ続けます


カラスはどんどん私を引き離して行き、今や気を抜いたら見失いそうなほど遠くを飛んでいます



ほたる「やだ...やだ...やだ...!」



いつの間にか呪文でも唱えるみたいに口からそんな言葉が漏れ出します

それが聞こえたのか前にいた通行人が不気味なものでも見るみたいに私から距離を取りました。



今更周りになんと思われても構いません、走りやすくなってむしろ良かったです



そうして人通りのない路地裏に入っていったカラスを追って狭い通路に体を滑り込ませました



ほたる「待っ...きゃぁっ!?」



ゴミ箱をひっくり返しながら盛大に転びました。


中身のゴミが宙を舞い、鼻をつく嫌な臭いのするものを頭から引っ被ってしまいました




ほたる「ひぅ......」



ゴミの臭気に刺激されたせいか、それとも頭からゴミを浴びた惨めな自分の姿を想像してか両目が涙に覆われて

私一人ではあのカードを取り返すどころかカラスを追い続けることさえできませんでした


カラスの姿も、もう見えません



ほたる「返してよぉ...」


地面に手をついて起き上がろうにも生ゴミだらけで手の置き場がありません



そこでばさばさと羽ばたく音がして、私のすぐそばにカラスが降り立ちました、クチバシにカードを挟んでいます

ほたる「...あれ?」


ゴミの臭いに寄ってきた?



ゴミをつつき始めたカラスのクチバシからカードがこぼれ落ちたのを慌てて拾い上げます


肌身離さず持っていたカードはさらに汚れてしまいました。


皺や折り目の具合を確かめるべく薄暗い路地裏の中、カードの表面を日に当てます







「どうしました?」






不意に、



汚れと傷を透かしていた日光が、


遮られました



視線を上げる。その声ははっきりと記憶にありました




ほたる「.........あ」


「おや?...あなたはもしかしてもしかすると...?」




目の前にいるシルエットが、どうしても記憶にある影と重なって___




白菊ほたる「裕子お姉ちゃん...?」


堀裕子「はい!エスパーユッコです!!」

以上終了


ほたると裕子を幼馴染するか、こずえを周子の従姉妹にするか、道明寺家の守り神を芳乃にするか迷った結果です


誤字脱字乱文乱筆失礼しました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom