【ゆるゆり】京子「割れない壁」 (78)

以前別のところで公開したSSですが、まとめにも載らないような所に書いてたやつなので、微修正も兼ねてこちらで再投稿させて下さい!

ごらく部4人が出てくる結京SSになります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442756727

3月26日。

明後日は私の誕生日。
今年も、結衣のご馳走楽しみだなー♪

去年は「北京ダック食いたい!」って言ったのにオムライスだったっけ。
まぁ結衣も冗談だって分かってくれてるし、結衣のオムライス好きからいいけど!


「まったく、京子は幾つになっても変わらないなぁ」


よく呆れた顔でそう言うけど、そんな事ないんだよ、結衣。

私さ、昔はすっごい泣き虫で、転んだだけで家に帰りたいって泣いて。
その度に結衣に引っ張って貰ったり、あかりに元気付けて貰ったり。

そんな時、たまたま見たテレビでミラクるんを知った。
こんな世界があるなんて思ってもみなかった。

現実離れした設定やストーリーが、新鮮で面白くて、
自分もこんな風になれたら、って憧れてさ。

何度も見るうちに自分の中にミラクるん達が住み始めて、
私が「もしこうだったら」なんて思わなくても独りでに動くようになって。

真似事で絵を描いてみたり、もっと上手くなりたくて色々調べたり。
ちょっと楽しい事があると、私の中のミラクるん達も楽しそうにはしゃぐんだよ。

私が弱いままじゃ、ミラクるん達もガンボーに勝てない、このままじゃいけないって、話した事もない人と話すようになったり、行った事のない場所にも行くようになって。

気が付いたら、毎日が楽しくて。
気が付いたら、私は泣き虫じゃなくなってて。

結衣もあかりも、こんな風に変わっていく私を見守っててくれてる。


あかりはいつもニコニコしながら、本当に面白そうに読んでくれて、毎回「また上手くなったね」って褒めてくれて。
あかりは嘘を言わないから、素直に受け止められる。

コムケに出るようになってからは、結衣も手伝ってくれるようになったよね。

一度、アニメも描いてもらったっけ・・・
相変わらず、ミラクるん自体にはあんまり興味なさそうだけど。

でも一緒にコスプレしてくれる辺り、満更でもないと思うんだけどなぁ。
実は私に隠れてコッソリ見てたりして・・・にひひ。

ちなつちゃんは、外見は勿論、あのちょっと腹黒いところとかもそっくりだよね!
本当は優しくて、ツンデレな所も似てるかも。

ちなつちゃんを見てると、本当にミラクるんが目の前に居るみたい。
新しいストーリーがどんどん湧いてきて、楽しい!

結衣、あかり、ちなつちゃん。
この4人が揃って今のごらく部になった時、すっごい嬉しかったなぁ。
なんていうか、理想の姉妹、って感じがしない?


──姉妹、かぁ。
あかりやちなつちゃんにとって、私はいいお姉さんになれてるのかなぁ。

私達が姉妹なら、私と結衣はどうなんだろう。
双子、ではないよねぇ。誕生日自体は1年くらい違うし。

ちょっと遅く産まれてたら、あかりやちなつちゃんと同じ学年、か。

昔から結衣とはずーっと一緒だし、親友は私だけだって思ってる。
結衣も私を親友だって思ってるからこそ、いっぱいワガママ言っても、連絡しないでいきなり遊びに行っても許してくれるんだろうな。

そんな私を「しょうがないな」って笑って、なんだかんだで優しくしてくれて。

我慢したり、無理したりさせて・・・ないとは言い切れないか。
ラムレーズンだって安くはないもんね。

普通なら、怒って絶交!とか言われてもおかしくないけど、結衣はなんであんなに優しいんだろ。

小さい頃は「私が京子を守ってやる!」なんて言ってたっけ。

もしかしたら結衣は今でも、私の事を保護対象とか、ペットとか、そういう風に見てたりするのかなぁ。

もしかしたら結衣は私の事を、あかりやちなつちゃんと同じように、妹みたいなもんだって思ってたりするから優しいのかな。

ひょっとしたら、親友だって思ってるのは私だけ・・・とか。


「・・・」

「ない・・・な。うん、ないない!」

「・・・」

「あぁ~もう! ないったらないの!!」


はぁ。なんでこんな事考えちゃったんだろ。


「・・・寝よ」

「ん・・・ん~・・・」


結局モヤモヤしてあんまり寝られなかった・・・
漫画読んでて寝不足なんてのは全然平気だけど、こういうのはダメだわ。

まぁ、ごらく部のみんなと遊べば、きっとまた元気になれるよね!
何より明日は私の誕生日! 今年も楽しい誕生日になりそうだな!


んん~~~待ちきれん!
なんか今すぐにでも結衣んち行きたい!

いや、行く!

「・・・」ピン…

・・・

・・・・・・


ガチャッ


「ポーンはどうした!ポーンは!」

「おはよー結衣!遊びに来てやったぞ!」ポーン

「ボケっぱなしかよ・・・入りなよ」


にひひ、ほらいつも通り!
結衣はいつも、欲しいツッコミをくれるなぁ・・・♪

それにしてもまーたレベル上げやってたんか。
そんな簡単に倒せちゃったらつまんないと思うんだけどなー。


「ねぇ結衣ー」

「んー?」ピコピコ テッテレレー

「明日は何の日でしょう☆」キャルン

「・・・明日?なんかあったっけ?」バシューン ズガガッ


──え。


いやいやいや、これは結衣なりの冗談、だよね・・・?
でも自分から言うのもちょっと悔しいし。

「まーたまたー! 大事なイベントがあるじゃん!」

「うーん・・・あ!」

「おっ? 思い出したか?」

「明日ナモクエの新作発売日だ。ありがとう京子。忘れてた」メモメモ

「そうそう、ナモクエももう5かぁ・・・ってちげぇよ!」

「んー・・・スーパーの特売日、は昨日終わったし・・・
 思いつかないなぁ・・・」ピッピッ

・・・おかしい。
結衣はこんなタチの悪い冗談言わないのに・・・

それに去年までは、私から言い出さなくても結衣から言ってくれたじゃん!


「違うよ、ほらアレだよ! 毎年恒例だろ?」

「えー、他に何かあったっけ・・・」ガスガスッ ピューン


「結衣・・・本当に覚えてないの・・・?」

「うーん・・・悪い、思い出せない・・・あ、あと1上げれば・・・」ガスッ テッテレレー

結衣にとっての、私の誕生日。

そんなに大事じゃなくなっちゃったのかな。
レベル上げとか、ゲームとか、スーパーの特売日以下・・・か。


・・・あれ。


結衣の部屋、こんなに広かったっけ・・・

なんかぐにゃぐにゃして見えるし。


寝不足のせいかな。

「・・・あ! そういえばお母さんにおつかい頼まれてたんだった!
 ごめん結衣、今日は帰るね! 頑張って明日までに思い出しておくこと!」

「え、そうなの?
 ・・・わかった。気をつけて帰れよ」

「うん!また!」



──なんだよ。

結衣も私と同い年になれる日を大事に思ってくれてるって思ってたのに・・・
私だけ楽しみにしてるなんて、バカみたいじゃん。

「・・・行ったか」

「ふぅ~、緊張したぁ」


あいつが自分から言い出したら空耳かなんかで誤魔化すつもりだったけど、
不自然になりかねないし、危なかったな。


「・・・ちょっとやりすぎたかなぁ」


でもこれくらいしないと、あいつ変なとこで勘だけはいいからな。
・・・でも、京子にしては妙に素直に引き下がったな。

せっかくあかりやちなつちゃんも協力してくれるんだし、打ち合わせ通りにしないと。


「さて、とりあえず第一ミッションクリアって感じかな。
 食材買いに行かなきゃ。えーっと、骨付き肉と・・・」

「結衣・・・私の誕生日、忘れちゃったのかな・・・」

普段なら「またまたー! 私の誕生日だろ! 忘れんなよー!」とか言えるのに。
昨日あんな事考えちゃった後だからか、なんか言えなかった・・・


結衣に忘れられるのがこんなにショックだなんて。
もう泣き虫は卒業したはずなんだけどな。

やっぱり私、まだまだ結衣がいないとダメなのかな。
これじゃ、あかり達と同じように見られても仕方ないのかも・・・


いやいや、でも!
結衣に叩かれたりするのって私だけだし、それだけ私は結衣に近い・・・

・・・はず。だけど・・・

「あれっ、京子ちゃん?
 もう暗いのに、フラフラ歩いてたら危ないよ?」

「・・・あかり?」


やば。

涙、バレなかったかな。


「あかりこそ、こんな遅くに外歩いてたら、悪い人に連れてかれちゃうぞ?」

「あはは、それは京子ちゃんも一緒だよぉ」

「ふふん、京子ちゃんは24時間365日モテモテだからな☆」

「それより、今日は結衣ちゃんちに泊まるんじゃなかったの?
 もう京子ちゃんちの近くだよ?」

「あ、あかりにスルーされるとなんか傷付くな・・・
 ちょっと、お母さんにおつかい頼まれちゃってさ。
 また結衣んち戻るのも面倒だから今日は帰る事にしたんだ」

「おつかいかぁ、実はあかりもなんだぁ。
 京子ちゃん、一緒に行こっ」

「あかり、暗くてちょっと怖かったんだろ~?」ニヤ

「えへへ・・・バレちゃった」

「あ、そだ。
 あかり、明日は何の日か覚えてる?」

「明日?京子ちゃんのお誕生日だよね?
 小さい頃からずっとお祝いしてるんだもん、忘れるわけないよぉ」

「そ、そうだよな!」

「結衣ちゃんからは特に何も聞いてないけど、今年も結衣ちゃんちでお祝いするんだよね?
 あかり、結衣ちゃんのご馳走、今から楽しみだよぉ~♪」

あかりの無邪気な笑顔。
弱ってるから、かな。見てるだけで癒されるなぁ。


「今年は何言おうかな~♪
 『わ~い、祝え祝え~!』とか言っちゃおうかな~♪」ニシシ

「もぉ~京子ちゃん!
 それじゃあかりだけ大火傷だよぉ!」(●` 3 ´●)プスンプスン

「へへ。冗談、冗談♪」

ウィーン ラッシャーセー


「京子ちゃんは何を頼まれたの?」


しまった、考えてなかった。


「え、えーっとアレだ、ブロッコリーだ、ブロッコリー!
 サラダに使うんだってさ」

「そうなんだぁ。あかりはケチャップ。
 今日はお姉ちゃんがオムライス作ってくれるんだぁ~♪
 あっ、オムライスと言えば、結衣ちゃんのオムライスも美味しいよねぇ♪」

・・・うぐ。

こんな所から刺客が来るとは・・・
そういや結衣のご飯、食べ損ねちゃったな・・・

結衣のオムライス、食べたいな・・・


「っと、もう結構遅いな。パパッと買って帰ろうぜ!」

「うんっ!」

「じゃあなーあかり。また明日!」

「うん、また明日ねっ」タタ..

「・・・」フリフリ


本当なら今頃、結衣んちでご飯食べてゴロゴロしてたはず、なのにな──


「結衣の馬鹿・・・」グス


星がくっきり見えないのは、きっと暖かくなってきたから、だよね・・・はは・・・

ブロッコリー、どうしよ・・・
お腹空いてるけど、さすがにこのままじゃあ美味しくないしなぁ・・・


「あれ、京子先輩?何してるんですか?」

「・・・およ、ちなちゅ」

「ちなちゅ言うな」


「・・・で、ブロッコリーなんか見つめてどうしたんですか?
 流石に生のままじゃ固いし美味しくないですよ」

「いやー、ブロッコリーって、むしられる時どんな気持ちなんだろうなーって」

「・・・深く考えちゃダメですよ」


「え・・・え、なんで?」

「ダメですよ」


「・・・」

「・・・」

「あ、あぁーーそういえばちなちゅ、明日何の日か知ってる?」

「だからちなちゅ言うな。
 明日は京子先輩の誕生日じゃないですか」

「あ・・・//」


──あかりだけじゃなく、ちなつちゃんまで覚えてくれてるのに。
  結衣・・・どうして・・・

「自分から聞いといて、何赤くなってるんですか」

「あ、い、いや~、誰か忘れてる人居ないかな~ってさ。はは・・・」

「部室どころか、私達の教室のカレンダーにまで印付けたの京子先輩じゃないですか。
 あ、私ジュース買いに来ただけなんで、もう帰りますね」

「えぇ~ちなちゅもう帰っちゃうの~?
 もっと私とちゅっちゅらびゅらびゅ・・・」

「あぁ~もう離れて下さいよこの脳味噌固形燃料!」

「・・・これは私の役じゃない、そんな気がする」

「・・・私は、なぜかバールのようなものが欲しい気持ちになりました」


「・・・」

「・・・」


「深く考えない方が良さそうだな・・・んじゃ明日ね!」

「はい、じゃあ」

・・・あ~あ。
明日も結衣が思い出してなかったらどうしよ・・・

毎年『ちょっとの間だけど、また同い年になったな』って、言ってくれるのに。


「・・・」ガリ


「・・・固いし美味しくない・・・」

「・・・帰ろ」

prrrr..

「もしもし、あかりちゃん?」

『ちなつちゃん、どうだった?』

「作戦通りかな。あかりちゃんは?」

『こっちも大丈夫だよぉ。
 でも京子ちゃん、凄い寂しそうな顔してた・・・
 うう・・・明日、ちゃんと来てくれるかなぁ』グス

「なんであかりちゃんまで泣いてるの・・・
 京子先輩の事だもん、きっと明日にはケロッとしてるよ」

『だって、サプライズだとしても、泣いてるの見ると罪悪感が・・・』

「ふふ、優しいなぁ、あかりちゃんは」ポソッ

『ん? 何か言った?』

「なんでもな~い」

『そ、そう言われると逆に気になるけど・・・
 明日も早いし、もう寝なきゃだよね。
 おやすみ、ちなつちゃん』

「うん、おやすみ、あかりちゃん」

はぁ、まったく京子先輩のくせに。
京子先輩が元気ないと、こっちの調子が狂うじゃないですか。


──私の誕生日の時、京子先輩が色々、企画とか考えてくれたんだっけ。


「・・・明日くらいは、ちょっとだけ甘やかしてあげます」


・・・ちょっとだけ。

3月28日。
今日から4月21日まで、結衣と同い年。


──なのに。


「はぁ・・・結局あんまり寝られなかったなぁ・・・」


一番私の事を理解ってくれてると思ってたのに。
ひどいよ、結衣・・・

\オッオッオッオオッオー オオオ/


「・・・結衣からメール!」


 『今日、昼からあかりとちなつちゃんが遊びに来るってさ。
  お昼一緒に食べるけど、京子も来るか?』


「・・・」


「思い出してない、か・・・」

カチカチ


「『行く!和牛ステーキがいいなっ☆』と・・・」ピピ


\オッオッオッオ.. ピッ


 『やかましい』


「・・・まだ8時、か」

「・・・ふわぁぁ・・・ちょっとだけ寝てから行こ」

「結衣ちゃーん!これ、どこに運べばいい?」

「あ、丁度いいや。すぐ使うからちょうだい」

「はーい」パタパタ

「結衣先輩、大根おろし出来ましたよー!」

「ありがとう。それはその台の上に置いといて。
 ・・・あ、コショウなくなってる・・・」

「あ、じゃあ今から買ってきます!」タタ..

「ごめんねちなつちゃん、頼んだよ」


10時か。流石にまだ来ないよな・・・

今来られると全部台無しだ。
念のため、窓から逐一確認はしとかなきゃ。

「和牛ステーキは無理だけど、こういう時くらいはいいもん作ってやらないとな」

「えへへ、結衣ちゃんは、ほんとに京子ちゃんが大好きなんだねぇ~♪」ニコニコ

「そ、そんなんじゃないって・・・//」

「・・・早く京子ちゃんの嬉しそうな顔、見たいなぁ・・・♪」ワクワク

「ふふ・・・そうだね」


今日は、京子の誕生日。

去年までは親も一緒だったりしたけど、今年は私達だけ、か。
賑やかなパーティーになりそうだな。

「11時か・・・ちょっと早いけど、じっとしてると気が滅入りそうだし、ゆっくり行こ」

    ヘンシン!! イジメイケナインジャー!!
アハハ
        ナニソレヘンナノー


公園の横を通る時、昔の私達みたいに3人で遊ぶ子供を見かけた。
何が楽しいのかは分からないけど、ずっとずっと笑ってる。

「いいなぁ・・・楽しそう。
 ・・・あー、転んじゃった」


ビエーーー
     ダイジョウブー?
  コンナンナメタラナオルッテ


転んで手を擦りむいた時、結衣に舐めて貰ったっけ。
あかりは葉っぱ仮面とかやって、元気付けてくれたっけな・・・

──あかりもちなつちゃんも、当然のように覚えててくれたのに。
  今朝になってやっと連絡してきたと思ったら、ただのお昼ご飯だし。


中学生になって、先輩になって。
この年で誕生日を祝って貰えなくて拗ねるのは、やっぱりまだ子供なのかなぁ。


「でも、去年だって中学生だったし・・・」


あー、もうっ!
考えないようにしようとすると、逆にダメだわ。

・・・行こう。

「ふぅー、なんとか間に合ったね。2人とも、手伝ってくれてありがとね」

「えへへ、普段結衣ちゃんに任せっきりだから、お手伝いするの楽しいよぉ。
 あ! ちなつちゃん、まだ食べちゃダメだよぉ~!」

「あぁん、だってお腹空いたんだも~ん!」


キャッキャッ

    モーチナツチャンッタラー

「あはは。2人はもう、すっかり仲良しだね」

「うん!ちなつちゃんと同じクラスになれてね、毎日すっごく楽しいんだぁ♪」

「・・・あかりちゃんって、そういう事を恥ずかしげもなく言うよね・・・//」

「えぇー!? へ、変かなぁ?」

「う、ううん!
 私も、あかりちゃんと同じクラスで良かった♪」

「えへへ・・・//」

「ふふ♪」

「・・・あ。もうすぐ京子が着くよ。
 あかり、ちなつちゃん」

「「はーい!」」

「・・・」ピンポーン

『今日は普通だな。開いてるから入って』

「ういー」


ん、いい匂い。
流石に和牛ステーキではない、か。

「あれ、あかりとちなつちゃんは?」

「あぁ、2人ともちょっと遅れるってさ。
 もうすぐ出来るから、冷める前に先食べてよう。とりあえず手洗ってきなよ」

「てやんでぃ」


あかりもちなつちゃんも、主賓より遅れるとは・・・
後でほっぺたムニムニしてやる。

ザー.. キュッ


「ふぃー」


うわー・・・我ながら酷い顔してる。
あんまり寝てないもんな。


「そういや朝ご飯も食べてないからお腹空いたな・・・」ハァ

ガチャ


「結衣ー、お腹空いt


\パァン!/ \パァン!/


「ひえっ!?」


「京子ちゃん」

「京子先輩」

「京子」

「「「誕生日、おめでとーー!!!」」」ワーパチパチ

「・・・え?」

「ほらー、なに突っ立ってんですか京子先輩。
 私達だってお腹空いてるんですよ!早く座って下さい!」

「えへへ、隠れてる時にクシャミしちゃわないか、ドキドキしちゃったよぉ~」


──え? え? 何?


「どうだ、びっくりしたか?
 あかりもちなつちゃんも、早く来て手伝ってくれてたんだぞ」

結衣?


「お前が昨日もうちに泊まるって言ってたらどうしようかと思ったよ」ハハ


ゆ、い・・・


「・・・おーい、京子ー?」フリフリ


──忘れてたんじゃ、なかったんだ。

「京子先輩」ニコ


──なんだよ、なんだよぉ・・・


「京子ちゃんっ」ニコニコ


──こんな事・・・


「京子」

「結衣の・・・」

「ん?」

「結衣の馬鹿!!」ギュウッ

「・・・」

「結衣に忘れられて・・・私がどれだけっ・・・傷ついたか・・・」ジワ

「・・・」

「毎、年っ・・・結衣とっ・・・同い年に、なるの・・・
 楽しみに・・・してんだぞっ・・・」

「・・・知ってるよ」

「結衣のバカ・・・バカバガバカあああ・・・・あああ・・・」

「京子ちゃん・・・」

「京子、先輩・・・」

「・・・京子」

「結衣ぃぃ・・・」

「3人で計画してから今日まで2週間。
 お前にバレないようにやるの、大変だったよ」

「うぇ・・・ぅぁ・・・っぐ・・・」

「・・・よしよし」

「・・・っぐ・・・子供っ、扱いっ・・・ひっく・・・するなぁああ・・・・」

「ごめんね京子ちゃん・・・
 昨日京子ちゃんが泣いてたの、気付いてたけど・・・
 本当の事話せなくて、凄く辛かった・・・」

「うっ・・・ふぐっ・・・あ゛か゛り゛いいぃぃぃ・・・」

「・・・ごめんな。
 京子には、これくらいしないとサプライズにならないと思ってさ」

「ふぐぅ・・・結衣のバガぁあああぁ・・・」

「まったく、手のかかる先輩です・・・
 でも、その・・・私の時のお礼も・・・あるし」

「ぢなっぢゃああ・・・んん・・・」


「ぅあっ・・・ありがとおおぉぉぉ・・・・」ウワーン

──その後。

私が泣き止むのを、3人とも待っていてくれて。
私達がご馳走を食べ始めたのは、30分くらい後だったかな。


「結衣にゃん、和牛ステーキは~?」

「無茶言うな、高すぎ。
 その代わり、今日は特別にラムレーズン2個食べていいから」

「ほんとー!? やったー★」

「ラムレーズンって、お酒入ってるんだよねぇ?」

「・・・池田先輩には、食べさせちゃダメだね・・・」

「ぁ・・・」チーン

「! あかりちゃん!戻ってきて!あかりちゃん!」ペチペチ

「ハッ・・・!?
 ご、ごめんね、思い出したら・・・」

「いやーでも、まさか千歳があんなになるとはなぁ」

「そういえば・・・結衣先輩の唇が奪われて・・・」ゴゴゴ..

「あ、あはは・・・そんな事もあったね」

結衣は普段は絶対やってくれないのに、いっぱい「あーん」してくれて。

結衣の笑顔も、いつもより優しくて、柔らかくて。

あかりも「京子ちゃんが喜んでくれて嬉しいよぉ」って、ずーっとニコニコしてて。

ちなつちゃんなんて、こんなとこ見たら絶対茶化すと思ってたのに。
我が儘言っても、ニコニコしながら、しょうがないですねって。
いつもはそんな風に笑ってくれないのにさ。


・・・相変わらず、ちゅーはさせてくれなかったけど。

今日で一つ年を取ったってのに、私だけ子供みたい。


みんなが作ってくれたご馳走。

ちょっと冷めてしまってたけど。

ちょっとしょっぱかったけど。



凄く、美味しかったよ。
ありがとっ★

ガララ..


「はぁーー~~・・・」


外はもう、夕日も落ちて暗くなってた。

お昼にここに来たのに、もうこんな時間かぁ・・・

「そんな薄着だと風邪引くぞ」ファサ

「ん・・・へへ。結衣の匂いがする~」クンクン

「ちょ、嗅ぐなよ・・・」

「いいだろ、今日くらいはさっ」

「し、しょうがないな・・・///」

「結衣」

「ん」

「ありがと」

「・・・うん」

「でも、今回のはだいぶ堪えたなぁ。
 結衣に忘れられるのが一番ショックだった」

「悪かったよ」

「結衣んちのカレンダー全部に◯つけてたのにさー」

「・・・そんな事しなくても、忘れるわけないだろ?
 小学校入る前からずっと、毎年祝ってるんだからさ」

「へへ」

「ねー、結衣」

「ん」

「私と結衣が本当に同い年なのって、1ヶ月くらいしかないじゃん」

「そうだな」

「昨日結衣んち来る前にさ。ちょっと考えてたんだ。
 あとちょっと遅く生まれてたら、あかりやちなつちゃんと同じ学年だったんだなって」

「・・・」

「私は結衣とずっと一緒に居て、結衣を親友だと思ってるけど。
 結衣からすると私は、昔みたいに守ってやらなきゃいけないとか、
 あかりやちなつちゃんみたいに、妹とか、そんな風に思う事もあんのかなーって」

「・・・」

「そう考えると、結衣と対等だと思ってるのは私だけなのかなぁって。
 急に結衣と私の間に、透明な壁みたいなのを感じてさ」

「壁のすぐ向こうに結衣が見えるくらい薄くて。
 ちょっと突けば割れそうなのに、全然割れないの」

「・・・」

「そこに結衣が私の誕生日覚えてないーとか言うもんだからさー。
 負のスパイラルっていうの?そんなのになっちゃってさ」

「・・・なんか、タイミング悪かったんだな・・・」

「んーん。私が勝手に悩んでただけだし」

「でも、泣かないようになった頃から溜め込んでた涙、全部出てスッキリしたかも」

「・・・そっか」

「今日だけで2キロくらい痩せたかもしれないな~」

「・・・痩せたか?」

「・・・ご馳走で1キロ太った」

「だろうな」クス

「へへ」

「・・・京子」

「ん?」

「私は、京子を年下だとか、妹みたいに思ったことはないよ」

「・・・」

「そりゃあ・・・昔は泣き虫だったし、ずっと私とあかりの後ろをついてきてたし。
 守ってやらなきゃ、なんて思ってたけどさ」

「・・・うん」

「でも今は、さ・・・
 いっぱい振り回されて来たけど、私は京子がくれる楽しい事が好きなんだ」

「・・・私が頭打って変になった時、言ってくれたんだってね。覚えてないけど」

「・・・だから、何て言うか・・・
 京子はもう、弱虫でも泣き虫でもない、それどころか・・・」

「・・・?」

「京子が賑やかだから、私も落ち着いていられるっていうか・・・さ。
 京子が居ないと、なんかバランスが悪いっていうか」

「・・・」

「わ、私の弱いところとか、解って、受け止めてくれるし・・・
 その・・・居なくなると困る、大事な親友・・・なんだよ・・・」ゴニョゴニョ


(結衣・・・)

「・・・・・・な、なんか言えよ・・・恥ずかしいだろ//」

「結衣ぃ・・・へへ、良かった!」ニッ

「う・・・//」ボッ

「どっちが欠けてもダメ・・・か。如何にも親友、だな!」

「・・・そうだな」クス

「ねー結衣・・・誕生日プレゼントにさ、1個だけ、我が儘聞いてよ」
 
「・・・あんだけご馳走食っといて欲張りな奴だな・・・
 わ、私が出来る範囲で頼むぞ・・・」


「結衣は今から明日の朝まで、私の抱き枕な!」ギューーー

「ちょ、わかった、わかったから離せ危ない落ちるって!//」

「だめー!明日の朝まで抱き枕なの!」


~Fin.~

おしまいです。

京子の誕生日記念として今年の3月に書いたSSだったんですが、
最後のシーンは個人的にも結構好きです。

近いうちに結綾・京綾あたりも書いてみたいです。

ありがとうございました!

乙です

乙!

よかったぞ

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