海未「Sea Anemone」 (189)


うみぱなです。
花陽「イソギンチャク」
花陽「イソギンチャク」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439121941/)
のアナザーストーリーになります。
海未視点の地の文あり。不定期更新です。
前スレを読んでいなくても分かるような話にしたいと思っていますが、読んでいた方がお楽しみいただけると思います。
では、始めていきます。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1442058848

きっかけはわかりません。
でも気づいた頃には、あなたの顔ばかり見ていて、言葉に聞き入っていて、その姿を目で追っていました。
この気持ちは勘違いではないかと疑った事もありましたが、日を重ねるにつれ想いは大きくなるばかりです。
私は…

海未「ワン、ツー、スリー、フォー…」パンパン

海未「花陽!もう少し動きを大きく!」

花陽「はいっ!」



ああ、またです。
また花陽のことばかり見ていました。
今は全体練習。花陽の個人レッスンの時間ではありません。
周りにも目を配らないと………。



海未「穂乃果!そこ足が逆です!」

穂乃果「うぇっ!?ごめん!」



ラブライブの地区予選が近く、皆が気合を入れて練習に臨んでいるのは見てわかります。私だってそうです。
ですが、これではまだ力不足。
最終予選を見据えればいずれあのA-RISEと戦うことになるわけですから、気を抜くことはできません。
もっと完璧なライブができるように練習を重ねなければ…。

花陽「わあっ!」ドテッ

海未「花陽!大丈夫ですか!」

花陽「いてて…」



そう思った矢先、花陽が転倒してしまいました。
花陽は正直、9人の中で最もダンスが不得意です。
…ずっと見ているから、どうしても粗が目に入ってしまうだけかもしれませんが。



海未「少し休憩にしましょう。根を詰め過ぎてもいけませんから」

花陽「みんな、ごめんね…」

凛「いいのいいの!次は頑張ろっ!かよちんならできるよ!」

穂乃果「そうそう!何回失敗してもいいの!ファイトだよっ!」

海未「…センターである穂乃果にミスがあっては困るのですが」

穂乃果「あ、あはは…」

ことり「まあまあ。それよりみんなお菓子食べる?マカロン作ってきたの!」

花陽「う、うん!」



もしかしたら、甘やかしているだけになっているかもしれません。
このままでは、お客さんどころか自分たちも満足のできないライブになる可能性すらあります。



にこ「まあどうせ~?にこにーがお客さんの視線、ぜーんぶ集めちゃうから~?ミスってもバレないけど~?」

真姫「キモチワルイ」

にこ「ぬぁんですってぇ!?」



…そうなってくれた方がありがたい可能性も。
いや、何を考えているのですか私は。
やはり、甘いのでしょうか。

いいね

花陽「はあ…」



花陽も、このままではいけないとわかってはいるようですね。
…おや、希が後ろからそろりと近づいて…。
…まさか



希「そーんな大きいため息ついたら幸せが逃げてくで~?」ワシワシ


花陽「ぴゃああああっ!?の、希ちゃんっ!?」

希「むふふ~」ワシワシ

花陽「や、やめてよぉ!//」

海未「希!!やめなさい!」

希「海未ちゃんもやる~?」

海未「なっ…/// は、破廉恥です!!とにかくやめなさい!!」

絵里「希、もはやただのセクハラよ。ストップ」

希「は~い」パッ

花陽「うう…//」

希「元気出たやろ?」

絵里「出るわけないでしょ…。希がやりたいだけじゃない」

花陽「もうっ!」



希の行動には困ったものです!
あんな行為をしても元気が出るわけがないでしょう!
ましてや、花陽の胸を…


花陽『や、やめてよぉ!//』


胸を…

…はっ!!何を考えているのですか!!
精神統一、精神統一…

海未「さ、さて、そろそろ休憩を終わりにして練習を再開しましょうか」

穂乃果「ええーっ!?もうちょっとおやつ食べたいー!!」

海未「予選が近いのですよ?あまり時間に余裕はありません」

穂乃果「うっ…。わかったよぉ…」

海未「では、通しでやりますので配置についてください」

ことり「はぁーい」



私がまとめ役をしている以上、うろたえるわけにはいきません。
当然、恋愛をしている場合でもないのです。
しっかりした様子を見せて、皆の手本になれるよう努めなければ。

海未「ワン、ツー、スリー、フォー…」パンパン


海未「…みなさん良い感じです!その調子で!」



先ほどよりも完成度が上がっているように見えます。
やはり練習は嘘をつきませんね。
これなら地区予選も…



花陽「うわぁっ!」ドテッ

海未「! ストップです!」



またです。
また花陽がミスをしてしまいました。
皆が花陽のところに集まっていきます。



凛「かよちん、大丈夫?」

花陽「う、うん…。ごめんね…」

凛「気にしない気にしない!さ、もう一回やろ!」



はたして、このまま続けることが勝利へつながるのでしょうか。
花陽以外のメンバーは8割方完成しています。
これなら地区予選には間に合うでしょう。

…花陽のためだけに、時間を割くことはできません。

海未「…いえ。ダンスはここまでにします」

海未「少し水分補給をしたら音楽室に行きましょう」

花陽「ご、ごめんなさい…。花陽のせいで…」

海未「謝る必要はありません。次こそは成功させましょう」

花陽「…うん」

海未「では、真姫。あとはお願いします」

真姫「わかった。まだDTMでの音源が完成してないから、ピアノで我慢してね」



これでよかったのでしょうか?
花陽はきっと落ち込んでしまうでしょう。
それを考えるとどうしようもなく胸が痛みます。

…こんなことを考えるのは、雑念がありすぎる証拠ですね。
私情を挟んでは失敗に繋がりかねないというのに。
監督役が聞いて呆れます。

音楽室


穂乃果「ゆめーのとっびっらー…ずっとさーがしっつーづっけーたー…」

海未「きみとーぼくーとーのー…」

絵里「つながりをさーがぁーしぃーいてぇーえたぁー…」



のぞうみりん「Yes! じぶんをーしーんーじーてっみんなをーしーんーじーてっ……」



歌はだいぶ良いですね。
作詞した甲斐があるというものです。
真姫の作った曲とイメージも合っています。



ことほのぱな「つかれーたとっきーにーぼくをーはげーまーすー…」



花陽も歌は上手いですね。
今回はほぼ地声に近いですが、たまに発せられる別人のような声も私は好きです。

…ああ、また花陽ばかり。
花陽以外にも気を配らなくては。



花陽「…」チラッ

海未「?」


花陽「…きみのーえがーおーはさーいこーう!!」


真姫「…ストップ。花陽、ハネすぎ。もう少し抑えて」

花陽「あっ…//」



なぜ一瞬こちらを見たのでしょう。
まさかずっと気にしていたのがばれたのでしょうか。
そのせいで心を乱し声が跳ねたのだとすれば…。
これからはもっと注意して花陽を見なければいけませんね。

…いや、なぜ見る前提なのですか。
いつの間に、ここまで私の思考に花陽が居るようになったのでしょうか。

とりあえず今日はここまで。
自分の書いたものを読み返すのが恥ずかしくてしょうがないです。
では。

乙、前のも読んでたから楽しみ

ことりちゃんの誕生日に当て付けのようにうみぱな...
せめて次の日にするくらいの配慮はないんか

>>14
なに言ってんの?

>>15
いや誕生日くらいことり誕ss書けよってことだよ
イチイチ言わせんな馬鹿

>>16
もしかしてss評論家様ですか?
すごい!初めて絡めた!
いち読者としてはキャラの誕生日に他のカプssでもなんでも気にならないけど、やはりss評論家様ともなるとそんな些細なことにも妥協を許さないんですね!!立派です!!格好いい!!

因みに「当て付けのようにうみぱな」の意味が分かりません
教えて頂けませんか?


前作読んでたから海未ちゃん視点楽しみ!

>>17
長文キモいな[ピーーー]よ餓鬼

これを待ってた

お待たせしております…。
木曜か金曜の夜にまた書き溜めを投下します。
元々そのつもりだったのですが、前スレと雰囲気は少し違ってくると思います。
では、もう少々お待ちください…。

待っとるで

あさ!そのだけ!


花陽『海未ちゃん、おはよーっ!』フトンダイブ

海未『ふぐぅっ!?は、花陽!?』

花陽『えへへ~』スリスリ

海未『ちょっ、何をするんですか!///』

花陽『海未ちゃん、どうかなあ?』モッギュー

海未『どうとは!?///』

花陽『いつも頑張ってる海未ちゃんに、花陽がご褒美をあげようかなって!』

海未『そ、そんなこと、頼んだ覚えは…//』

花陽『…いやだった?』ウルウル

海未『!?』

花陽『そうだよね、いきなり、こんなことされて…』ポロポロ

海未『い、いえ、あのっ』オロオロ

海未『う、嬉しいです!花陽ともっとくっつきたいです!』

花陽『…ほんと?』

海未『冗談でこんなこと…はっ!!』

花陽『海未ちゃぁんっ!』ガバッ

海未『わっ、花陽、そんないきなりっ///』

海未「だめですっ、まだ、心の準備がっ…」ジタバタ

海未「準備…が……」

海未「………」


コケコッコー


海未「……………」


海未「…………………」

昼・2年生教室


穂乃果「海未ちゃん、今日元気なくない?大丈夫?」

海未「大丈夫です…」



まさかあんな夢を見るとは…。疲れているのでしょうか。
あれのせいで朝練の時間はまともに花陽を見ることができませんでした。
午前の授業中にも頭の中にあの情景がちらついて…。

今日は練習が終わったら弓道部に寄っていくことにしましょう。
このままでは生活に支障が出そうです。心を落ち着けなくては…。



海未「はぁ…」

穂乃果「わっ、海未ちゃんの溜息すごく色っぽい!」

海未「はい!?」

ことり「なんだか少女漫画のキャラみたいだったよねぇ」

穂乃果「そうそう!穂乃果もそう思った!」

海未「か、からかわないでください!//」

ことり「もしかして、そういう人が…?」

海未「知りませんっ!お手洗いに行ってきますっ!//」ガタッ

穂乃果「あっ、もう授業始まるのに…」



ことりならともかく、穂乃果に気取られるとは…。
私、そんなに分かりやすいでしょうか?


キーンコーンカーンコーン…


あっ。
私としたことが…。
ここ最近、本当に調子が狂いますね。

放課後練後・部室


花陽「ご、ごめん2人とも!私ちょっと急いでるから先行くね!」ダッ

凛「え、ええっ!?」

花陽「また明日ー!!」ダダダ

凛「はやっ!?あっ、また明日ねー!!」



放課後練が終わり皆が帰り始めた時、花陽が突然走って帰ってしまいました。
用事とは何だったのでしょう。アイドル番組でもやるのでしょうか。
あれだけ急ぐのですから、きっと花陽にとって重要な用事なのでしょうね。
あれこれ考えているうちに、部室は私たち2年生を残すのみとなりました。



穂乃果「…さて、戸締まりもしたし穂乃果達も帰ろっか!」

ことり「うん!」

海未「あ、私は弓道部の方に少し顔を出していきますので、先に帰っていてくれますか?」

穂乃果「えー?そのくらい待ってるよ!」

ことり「んー、穂乃果ちゃん、帰ろう?」

穂乃果「でもぉー…」

ことり「…」コソコソ



ことりが穂乃果に何か耳打ちすると、穂乃果は態度を一変させ2人で帰って行きました。
何を考えているかはだいたい分かりますが、帰ってもらうためにも今日は放っておいて明日問い詰めることにしましょう。



海未「さて…私も行きますか」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

校舎を出て弓道場へ向かう時、後ろの方で足音がしました。
完全下校時刻も近いです。気になって振り返ってみると…



花陽「………」コソコソ



花陽がなにやら周りを気にしながら校舎に入って行きました。
急ぎ足で帰ったはずの花陽が、なぜ学校に戻ってきたのでしょう?
気になった私は、話しかけずに後をつけることにしました。
…なんだかストーカーみたいで、あまり良い気分ではありませんね。

しかし、何をしに来たのでしょう。
1年生教室にも部室にも向かう様子はありません。
この方向は…。



海未「屋上…?」



足早に屋上へ入っていった花陽を、ドアの隙間からしばらく見ていることにしました。
忘れ物を探すでもなく、荷物を床に置いた花陽はそのまま…。



海未「なっ…///」



おもむろに服を脱ぎ始めました。
思わず目をそらすと同時に、今朝の夢が頭をよぎります。
まさか、花陽にはそういう趣味が…!?


…練習着に着替えただけでした。
誰もいないとはいえ、少々不用心ですね。
陰から誰かが見ていたらどうするんですか。

自分がその陰から覗いてる誰かであるという事実に少々自分が嫌になってきているうちに、
花陽は携帯電話から音楽をかけ、一人で踊り始めました。



花陽「よっ、ほっ、たっ、はっ…」



なるほど。居残り練習をするつもりだったんですね。
恐らく、自分がμ'sの足を引っ張っているんじゃないかと気にして。



海未「言ってくれれば練習くらいいくらでも付き合って…」



そう思いドアノブに手をかけたところで、なぜ一人で練習をしているのか、その意図に気が付きました。
花陽が他人の迷惑になることを気にしているのだとしたら、
誰にも声をかけなかったのもそのため…?



海未「………」



少し考えて、私は花陽の練習を見守ることにしました。

花陽「うわっと!」ドテッ

海未「っ!」ピクッ



花陽が、昨日と同じところでミスをして転んでしまいました。
今すぐにでもかけつけたいところですが、それは同時に花陽の決心を無下にすることになります。
ああ、どうすれば…

と考えていましたが



花陽「…っ!」ググッ



花陽はすぐに立ち上がり、また最初から踊り始めました。
その顔は、最初よりも闘志の感じられる顔つきに変わっています。

花陽「わたたっ…」グラッ

海未「!」



惜しい!
バランスが少し崩れはしましたが、転ぶことはありませんでした。
これなら明日にでも完成まで持って行けるでしょう。
完全下校時刻はもうとっくに過ぎていますし声をかけて帰らせようと思いましたが、花陽はまだ満足しない様子で練習を続けています。
もう、止めてしまうほうが逆効果でしょうね。
こうなったら私も最後まで見届けることとしましょう。



花陽「よっ、ほっ、たっ、はっ…」



次!
集中して……



花陽「てぇいっ!」タンッ

花陽「!!」

海未「!!」



ついに…!
弱点を克服した花陽は、何かがふっ切れたような笑顔をしていました。
それと同時に…



花陽「ってうひゃあっ!!」ドテッ



派手に転びました。

成功したのがよほど嬉しかったんでしょう。
そろそろ出て行ってみましょうか。





パチパチパチパチ…



花陽「え!?」


海未「とてもよかったですよ。花陽」


花陽「う、海未ちゃん!?なんで!?いつからここに!?」


海未「少し前からです。ドアの隙間から様子を伺っていました」

海未「弓道場へ行く際に花陽が校舎に入っていくのが見えたので、もしかしたら…と思ったのですが」

海未「まさか本当に練習してるとは思いませんでしたよ」ハァ

花陽「ご、ごめんなさい!すぐ帰るね!」バッ



花陽はすぐに帰り支度を始めました。
当然です。もう本来なら家で夕飯を食べ終わっていてもおかしくない時間になっています。

…ですが。

海未「…待ってください」

花陽「?」


海未「誰も帰れとは言ってませんよ」

花陽「え?」

海未「一番の問題点は克服したようですが、さっき転んでいましたよね?」

花陽「う、うん」


海未「…どうせなら、全部できるようになるまで練習しませんか?」



恥ずかしながら、私も花陽の姿を見てスイッチが入ってしまったようです。
こんなところ、他の誰かにはあまり見せたくありませんね。

海未「…はい。お疲れ様でした」


花陽「ふぅ、ふぅ…」



3回目でノーミス。まあまあですね。
さすがに花陽にも疲れの色が見えますが、それ以上に勝ち誇った顔をしています。
さて、残る問題は…。



海未「…時に、花陽」

花陽「え?なに?」


海未「あなたは、何のためにここまで練習に打ち込んでいるのですか?」



そう切り出すと、花陽は少し曇った顔をしながら答えました。



花陽「…本番で踊る時に、みんなに迷惑をかけないためだよ」


海未「…だと思いました」

海未「もう1ついいですか?」

花陽「うん」


海未「私たちは、何のためにライブをするのですか?」

花陽「なにって、それは…」



質問攻めを不思議に思ったのか、それとも質問の意図に気づいていないのか。
頭上に疑問符が浮かんでいるのが見えます。

花陽「ラブライブの最終予選に出場して、最終的には優勝するため…だよね?」


海未「…まあ、間違ってはいませんが」

海未「私たちは、μ’sとはどういう存在でしょうか」

海未「花陽が憧れ、目指していたものとは、なんだったでしょうか」

海未「そしてそれは、ただラブライブに出場するために活動するものだったでしょうか」


花陽「………あっ」



…気づいたようですね。

海未「私たちは、スクールアイドルです」

海未「踊りを頑張るのも歌を頑張るのも、悪いとは言いません」

海未「むしろ褒められるべき行動です。花陽の練習に対する姿勢はとても素晴らしいと思います」

海未「ですが、その根底にある目的を忘れてはいけませんよ」

海未「私たちのやるべき事は、応援してくださる皆様を笑顔にすることです」

海未「そしてその姿勢がラブライブへの出場、そして優勝という結果に繋がるのだと思います」

海未「先ほどのダンス、険しい顔ばかりで可愛い顔が台無しでしたよ?」


花陽「あっ…」カアァ



可愛い顔が台無し…。
ほとんど何も考えず自分の思った言葉を放つと、こんなにも歯の浮くような台詞が出てくるんですね。



花陽「も、もう一回!お願いします!」



花陽はそんなこと気にも留めていないようですが。



海未「…いえ。今日はもう遅いので明日にしましょう」

花陽「えっ?…あっ!もう21時!?」

海未「警備の方に見つからないように、こっそり出ますよ」

花陽「う、うん」



時間のことが気にならないほど集中していたのですね。
それほどのやる気、私も見習わなくては…。
明日からの練習が楽しみです。

帰路


花陽「ふう…。なんとかバレなかったね」

海未「もうこれっきりにしてくださいね?不法進入になるかもしれませんし」

花陽「うっ…。気をつけます…」


花陽「えーっと、じゃあ、また明日ね」



「また明日」、ですか…。
なんでしょう。聞きなれた言葉なのに、今日はその言葉が妙に重みを伴って私の心に入ってきます。
まだ、花陽と一緒に居たい。



海未「…いえ」

花陽「?」

海未「夜道を1人では危険です。送って行きましょう」

花陽「ええっ!?でも海未ちゃんの家ってあっちじゃ…」

海未「お母様には帰りが遅くなると伝えてあるので大丈夫です」

花陽「じゃ、じゃあ…。お願いします…」



花陽を家まで送り届けることにしました。
本当に、最近は物騒ですからね。か弱い花陽一人では心配です。
その根底に下心がある事は否定しませんが。

海未「………」スタスタ


花陽「………」テクテク



これは……。



海未「………」スタスタ


花陽「………」テクテク



考えてみれば、花陽と二人きりになることが滅多に無かったので何を話せばいいのかがわかりません…。
私の周りには穂乃果やことりがいますし、花陽にはいつも凛がぴったりくっついていますから、もしかしたら初めてかもしれませんね。
どんな話題を振れば…。やはりアイドルでしょうか。しかし私は花陽やにこのように知識があるわけではありませんし、ついていける気がしません。
あとは…。



グゥ~…



花陽「!!///」

海未「…おや」

花陽「き、聞こえた!?///」

海未「ええ。お腹に随分と大きな虫を飼っているんですね」クスクス

花陽「う、うぅ…///」



助かりました。
花陽には悪いですが、これでなんとか話が続きそうです。
何かフォローでもいれておきましょうか…。



海未「…まあ、それだけ練習にエネルギーを使ったということです」

海未「よく頑張りましたね。花陽」ニコッ

花陽「…!!」



先ほどとはまた違った様子で照れている様子を見ると心が洗われるようです
花陽に対して向けられていた雑念が、花陽によって祓われるとは…。
おっと、会話を絶やしてはいけませんね。



海未「…穂乃果も花陽を見習ってほしいものです」

花陽「え?穂乃果ちゃん?」

海未「きっとことりに誘われて何か甘いものを食べに行ったはずですから」

花陽「あ、海未ちゃんがいないから…」

海未「少しキツめのダイエットメニューでも考えてみましょうか」

花陽「…他人事に思えないや」



…大失態です。
なんでここで体重の話を持ち出すのですか私は!
花陽が体重を気にしているのは観察していればすぐわかります!
さらに言うならば、他の人物の話題を出すことで二人きりでの話という感覚が薄れてしまいます!
屋上でも思いましたが、言葉は歌詞を書くときのように考えてから発さなければなりませんね…。

小泉家前


花陽「ありがとね。海未ちゃん。ここまで付いてきてもらっちゃって…」

海未「私が好きでやったのですから、気にしないでください」



名残惜しいですが、ここまでですね。
まあ明日は休日。練習のおかげで一日中花陽と同じ空間に居ることができます。
今日はもう帰って、明日に備えましょう。



花陽「じゃあ、また明日ね!おやすみなさい!」

海未「ええ。おやすみな


グゥ~...


海未「!!///」


花陽「へ?」



な、な……。



海未「……///」プルプル



最悪です…。
なぜ、あと数秒耐えられなかったのですか…。
先ほどの花陽を笑ったからでしょうか…。

花陽「よ、よかったらご飯食べてく?」

海未「い、いえ!このくらい我慢できます!」

花陽「でも今日はお世話になったから、そのお礼もしたいし…」

花陽「あっ!そうだよ!こんな夜中に出歩くなんて危ないって、海未ちゃんさっき言ってたし!」

海未「わ、私は鍛えていますので…」

花陽「でも女の子だもん!危ないよ!」

花陽「ね?上がって?」



…嘘でしょう?
このまま花陽の家で夕飯をごちそうになると、時間的に帰ることはできなくなります。
つまり、半自動的にお泊りに…。

はっ!!
まさか、花陽もそれを承知で…?
誘われている?私を家に泊めたいと思っている?



海未「うう…。で、ではお言葉に甘えて…」



なぜこんな事になったのでしょう。
嫌ではないですしむしろ嬉しいですが、何か恥ずかしいですね…。
もし、もしですよ?私たちが交際していたなら…。
…やめましょう。せっかく雑念が消えたというのに、今度は邪念が入り込んできそうです。

今日はここまで。
僕もかよちんとご飯食べたいです。
次の投下までまた日が空いてしまうと思います。ごめんなさい。
なるべく早く書いてくるので、少々お待ちください。
では。

乙です
HJNNかよちん保護すればご飯一緒に食べられますぜ

乙やで

ぼくもかよちんとご飯食べたい

こんばんは。
せっかくの連休に投下しないのは自分でもどうかと思うので、明日か明後日の夜に投下しに来ます。

P.S.
HJNNかよちんは金曜保護してきました。かわいい。
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira089056.jpg

自分のペースでゆっくりやってくれて良いんやで
かよちんかわいい

ガチャッ


花陽「ただいまー」

海未「お、お邪魔します…」

花陽ママ「ああ、おかえりなさい…って、あら?お友達?」

海未「そ、園田海未と申します。花陽さんと同じ、スクールアイドルのメンバーで…」

花陽ママ「ああ!あなたが海未さん!えーっと確か…PVでウサ耳付けてた子ね!」

海未「な、なぜそれを!?」

花陽ママ「ウチの子の初めてのPVよ?何回も見返したわ!可愛かったわねえ~」

海未「あ、ありがとうございます…///」



これが花陽のお母様…。
どこか花陽に似ている雰囲気があって、とても美人です。
花陽も数十年すればお母様のようになるのでしょうか?
ああ、ぜひとも見てみたいです…。



グゥ~…


海未「わあああっ!?///」

花陽ママ「あらあら、お腹空いてるの?」

花陽「私の居残り練習につき合わせちゃって…」

花陽ママ「あら、そうだったの。で、ウチで食べてくってことね?」

海未「は、はい…。急に押しかけて申し訳ありません…」

花陽ママ「大丈夫よ。お米は花陽用にちゃんと2合炊いてあるから」

花陽「お、お母さん!!///」

海未「…まさか、いつもはそれを花陽1人で?」

花陽ママ「育ち盛りって大変よねえ~…」

海未「いや、育ち盛りにしても、2合ってお茶碗約4杯分では…」

花陽「も、もうその話はいいからっ!!はやく用意してぇっ!///」

花陽ママ「はいはい。海未さん、座って待っててね」パタパタ

海未「あ、はい…」





…本格的にダイエットプランを練る必要があるかもしれませんね。
いくら白米が好きだからといっても、1人で2合はさすがに…。
あの小さな体のどこに吸収されていくのでしょう。謎ですね。

リビング


海未「ごちそうさまでした」カチャッ

花陽ママ「はい、お粗末様でした。お口に合ったかしら?」

海未「はい。さすが花陽の家と言いますか、白米と豚の生姜焼きとの組み合わせが絶品でした」

花陽ママ「ふふっ。ありがと」



決してお世辞や社交辞令などではありません。
本当に美味しかったのです。これはご飯のおかわりもしたくなりますね。
突然押しかけた身でそんなことできませんが。
それに…。



花陽「はわぁ…」モグモグ



ご飯を美味しそうに食べる様子を見ているとこちらまでお腹が膨れてきそうです。
花陽の取り分を減らすことはしたくありませんね。



花陽ママ「特にお米は、炊き方を間違えると花陽に怒られちゃうからねえ」

花陽「お、お母さん!!///」モクモグ

海未「こら、花陽。口の中にものを入れながら喋らないでください。お行儀が悪いですよ」

花陽「ご、ごめんなさい」ゴクン

花陽ママ「海未さんはしっかりした子ねえ…」

花陽ママ「そういえば、着替えは持ってきてるの?」

花陽「へ?」

花陽ママ「見た感じ荷物ってカバンだけでしょ?あれに着替え一式入ってるの?」

花陽「え??」

花陽ママ「あら?お泊まりするんじゃなかったの?てっきりそうかと思ったんだけど…」

花陽「ええええっ!!?」



…え?
花陽がなぜこんなにも驚いているのかがわかりません。
まさか、食べたら帰ってもらうつもりだった…?
お母様への連絡も済ませてしまいましたし、なによりその反応は少しショックなのですが…。



花陽ママ「というか、こんな時間に外を出歩かせるわけにもいかなかいでしょう」

花陽「そ、それはそうだけど!」

花陽「なに、何かまずいことでもあるの?」

花陽「ない、けど…」

花陽ママ「じゃあ決まりね。お風呂沸かしてあるから、適当に入ってね?洗い物してきちゃうから」

海未「えっ、あっ、は、はい」



もし花陽のお母様が話を切り出してくれなかったらどうなっていたんでしょう…。
いえ、確かに私も期待しすぎた感じはありましたが。
あれこれ妄想…想像していたシチュエーションが実現できなくなるところでした。

花陽ママ「海未さーん?洗濯物洗っちゃうから練習着とか出しといてくれるー?」

海未「い、いえ!そこまでお世話になるわけにも…」

花陽ママ「どうせ洗うんだから一人も二人も変わらないわよ。それに早く洗わないとシワになっちゃうでしょ?」

花陽ママ「朝までには乾くようにするから、洗濯物は全部出しておいてね?」

海未「わ、わかりました…。何から何まですみません…」

花陽ママ「いいのいいの!花陽が凛ちゃん以外を連れてくるなんて珍しいんだから!」

海未「やはり、凛もよく来ているのですか?」

花陽ママ「ええ。小さい頃から何度も来るから、もう1人の娘みたいに思ってるわ」フフッ

海未「そうですか…」



…当然、ですよね。
二人は私でいうところの穂乃果やことりのような、かなり昔からの友達です。
泊まりに来ることだってあるでしょうし、とても仲が良いことも分かっています。

分かって、いるのに。
なんでしょうか、このモヤモヤした気持ちは…。

花陽「海未ちゃん、先お風呂入ってていいよー?」

海未「あ、あの…」



凛が泊まりに来るときは、一緒に入ったりするのでしょうか。
きっとそうでしょうね。凛の性格を考えれば容易に想像できます。
なら、私も…
と思いましたが、花陽にそんな気は無いようで。



花陽「お客さんなんだから遠慮しないで!後で着替え持ってくね?」

海未「…わかりました。お願いしますね」



と、すぐに返されてしまいました。
先ほど感じたモヤモヤが大きくなったような気がします。

脱衣所


海未「ふぅ…」ガララッ

海未「えーっと…これですね」



お風呂を上がると、脱衣所には花陽が用意してくれた寝間着が一式置いてありました。
下着は明日私の家に一旦帰るまで同じものを使うことになったので問題ないですが、私が思うに、この寝間着も寝間着で問題です。



海未「…」スルスル

海未「甘い、匂い…」



花陽が普段使っている服ですから、匂いが染みついていました。
全身が花陽に包まれているような感覚に陥ってきます。
花陽の性格を表すかのような、甘くて優しい匂い…。

…今朝の夢も、案外私の心を的確に表していたのかもしれませんね。
私はそのまま、不自然に思われない程度の時間、その匂いに浸っていることにしました。

リビング


海未「上がりましたよ。良いお湯でした」

花陽「そ、そっか。それじゃあ、えーっと…花陽の部屋でくつろいでる?」

海未「そうですね。案内してもらえますか?」

花陽「うん。こっちだよ」



ついにこれから花陽の部屋に…。
何かあるわけでもないというのに、少しだけ緊張してきます。





花陽部屋


花陽「散らかってはないはずだけど…」

海未「大丈夫ですよ。花陽はいつも部屋を綺麗に保っているのですね。良い心がけです」

花陽「…もしかして、穂乃果ちゃんと比べてる?」

海未「穂乃果の部屋もせめて常に物が片付いていればいいな、と」

花陽「ひどいよ海未ちゃん」クスクス

花陽「じゃあ、花陽も入ってくるね」

海未「ええ。ごゆっくり」


海未「…さて」



………。
何が「さて」ですか。
違いますよ?決して部屋あさりをしたいとか、そういうのではなく…。
そう、初めて入る部屋なので、何があるのか気になってしまうのはしょうがないことなんです。

海未「誰に弁解してるんですか私は…。自分でしょうか」キョロキョロ

海未「…あっ、これは…?」



目に留まったのはアルバムでした。
恐らく、様々な花陽の写真がそこにはあるのでしょう。



海未「…」ソーッ

海未「…っ!」バッ



いけません!勝手に他人の部屋の本棚を漁るなど…。
花陽に言えばきっと見せてくれます。それまで我慢です!



海未「…」チラッ



…。
…ちょっとだけ、ちょっとだけなら…。

海未「…」スッ

海未「…」ペラッ ペラッ

海未「おお、これは…」



思った通り、花陽の写真が何枚もあります。
これは、まだ幼少期でしょうか。幼い花陽がおもちゃのマイクを持って、恐らくアイドルの真似事をしています。
こんなに小さいころからアイドルが好きだったのですね。とても可愛らしいです。



海未「ふふっ…」ペラッ

海未「…!」



年代が小学生に入ったぐらいでしょうか。

凛と一緒にいる写真が増えてきました。
遠足、修学旅行、何気ない日常の写真。
そして…。



海未「…」ピクッ



お泊りの写真。
二人が一緒のベッドで、向き合って寝ています。年代は小学校高学年といったところでしょうか。
少なくとも小学校高学年までは、凛が泊まりに来ると二人で一緒のベッドに入るのですね。
ほほえましい写真ではありますが、今の私には少々精神的にきます。
今夜は、どう寝るのでしょうか。…あまり考えないほうがいいですかね。

一度好奇心に負けてしまった私は、さらに次のページをめくっていきます。
中学生になっても、花陽の隣には凛。写真の半分以上に凛がいます。
どれも最高の笑顔が写っていて、さらに二人の距離が近いせいか、それはもう、恋人同士の記録のようで。
もしや、両想い?はたまた交際中?

ついにそれらを見る事が辛くなってきた私は、そこでアルバムを開くのをやめ、元の位置にしまいました。



海未「………」



モヤモヤは晴れないどころか、さらに暗くなったようです。
ですが、確信したことがあります。

まず、このモヤモヤの正体は、嫉妬。
私は凛に嫉妬しているようです。
私の狭い心が露呈していますね。ああ、情けない。

そして私は、凛以上に花陽と仲良くなることはできない。
思い返してみても、花陽は凛といる時が一番いい笑顔を見せている気がします。
この春知り合ったばかりの私が、ずっと前から親友である凛にかなうはずもないのです。
ましてや付き合うだなんて、もってのほかです。



トンッ トンッ

海未「!」



花陽の足音でしょうか。
今の心境を悟られてはいけませんね。
何気ない表情で待ちましょう。

花陽「ふうー…。あがったよー」ガチャッ

海未「お帰りなさい。日付も変わりましたし、髪が乾いたらもう寝ましょうか」

花陽「えっ、もうそんな時間…」



正直、もう起きているのも辛いです。
眠いのもそうですが、これ以上起きているとまた余計なことを考えそうで。
一刻も早く夢の中へ落ちていきたい、なんなら今朝の夢の続きが見たい。
そういった気持ちでいっぱいでした。

海未「………」

花陽「………」



また、何も話さない時間がやってきました。
もう都合よくお腹が鳴ることはないでしょうし、話題を考えなくてはなりませんね。

いっそ、「凛と花陽は付き合っているのですか?」とでも聞いてしまいしょうか。
…やめましょう。答えが「はい」だった時のことを考えると、こんな質問できません。
あれこれ考えているうちに、先に口を開いたのは花陽でした。



花陽「う、海未ちゃんって、好きな人とかいる?」

海未「はいっ!?」


花陽「……あ」


花陽「わわわっ!!待って待って!!今のナシ!!ナシでっ!!」



いきなりなんでその質問なのですか!?
しかもこれは、片想いをしている人が意中の人に向けて「自分にチャンスはあるか?」という趣旨の質問をする常套句ではないのですか!?穂乃果の漫画で何度か読みました!!



海未「れ、恋愛ですか…。私には、まだ早いかと…」



嘘です!!あなたが好きです!!
はっ、と、取り乱しそうです。冷静に、冷静になるのです、園田海未…。

…もしかしたら恋愛相談かもしれませんね。
凛との関係がまだ友達で、どうすれば進展するだろうか、という…。



海未「と、というか何故突然その話題を振るのですか?」

花陽「ふぇ!?あ、いや!!深い意味は無いの!!ただ、お泊まりの定番だから!!」



つまり深い意味は無いということですね…。
恋愛相談でなくてよかったですが、最初に期待した分だけ落とされるのもわりと…。



海未「そ、そういうものなのですか…。穂乃果やことり達とはそういった話はしないので…」

花陽「そ、そうなんだ…。花陽も凛ちゃんとそんな話はしないけど…」


花陽「………」

海未「………」


花陽「も、もう寝よっか!」

海未「そ、そうですね!」

>>59
うっわ、同じ文体使ってやがる気持ち悪い。
納得・安心した風に適当に脳内補完しておいてください…。

花陽「で、どこで寝るかなんだけど…」


花陽「花陽のベッドしかないね…」

海未「そうですね…」

花陽「2人じゃちょっと狭いかもだけど…」

海未「わ、私は構いませんので」



むしろその方が…。
と言いかけましたがさすがに自制しました。



花陽「じゃ、じゃあ2人で寝よっか。花陽は、向こう向いて寝るから」



向かい合って寝ましょう、とは言えませんね。
…あの写真の凛と花陽は向かい合っていましたが。



花陽「じゃあ、おやすみなさい」

海未「おやすみなさい」

数十分後


海未「………」

海未「………」パチッ



どうしたことでしょう。
あんなに眠たかったのに、寝れません。



海未「…」チラッ

花陽「スー……スー……」



花陽はもう眠っているようです。顔は見えませんが。
私が眠れないのは、花陽と一緒のベッドにいるからでしょうか?
そう考えると何か緊張してきて、余計に目が冴えていきます。



花陽「んぅ…」ゴロン

海未「!!」



花陽が寝返りを打ってこちらに近づき、さらに顔を向けました。
ああ、寝顔も可愛いです…。写真を撮っておきましょうか…。
って、駄目です。盗撮など…。電源を切っておきましょう。

花陽「スー……スー……」

海未「…」マジマジ



しかし、本当に気持ち良さそうに眠りますね。
確かに向き合って寝ることを望んでいましたが、これでは余計に眠れないじゃないですか…。



海未「………」



――今なら、何をしても…?
いけません、さっきも携帯も電源を切ったばかりじゃないですか

――顔はすぐそこにあります。少し動けば届く範囲です。
いけません。

――キス、とか…。



海未「…っ」ゴクリ



少しだけ、少しだけなら…。

海未「…」ソーッ


海未「…」コツン


海未「~っ!///」



額と額がぶつかる距離。花陽に起きる気配はありません。
…その柔らかそうな唇まで、あと5cm。
これ以上は後戻りができません。
ですが私の欲望はそんなことお構いなしで、早く早くと急かしてきます。



海未「ハァ…ハァ…」



体が熱い。吐息がこぼれる。
あと3cm。



心臓の鼓動だけが耳に届きます。
あと2㎝…。



あと、1㎝…。





花陽「りんちゃん…」ボソッ

海未「っ!!?」バッ

花陽「えへへぇ…」ニヘラ

海未「はぁっ、はぁっ…」バクバク



寝言、ですか…。
凛の出てくる夢でも見ているのでしょうか。
いや、それよりも。


私は何をしようとしていたのですか?


無防備な花陽に対して。無抵抗なのをいいことに。
その唇を奪おうとしていたのですか?

…最低ですね。
こんな私が、花陽の隣にいたいと願うことが許されるのでしょうか。

嫌悪感に押しつぶされながら、私は眠りに落ちていきました。

ここまで。
海未ちゃんはもっと自分をさらけ出していくべき。園田ァと言われない程度に。
>>59はかよちんイベと並行して投下してた結果ミスを見つけられなくて…。お恥ずかしい。
また、できるだけ早めに書いてきます。
では。

乙…細かい事だけど
>>49
花陽「なに、何かまずいことでもあるの?」

花陽「ない、けど…」
これって花陽ママが花陽に聞いたってことだよね?

切ない…

>>67その通りでございます…。
前スレと重なる会話部分はコピペしてるんですけど、見返してみたら前スレでも間違ってました…。
次からはもっとミスの確認を徹底してから投下します。ああ恥ずかしい…。

お詫びです…。
作業が難航しているうえに書く時間があまり取れていません…。
1週間も空けたくなかったんですけど、次の投下が早くても水曜の夜になりそうです…。
遅くとも金土の夜には投下できると思うので、どうかもうしばらくお待ちください…。

待ってますぜ

???


海未『ここは…?』キョロキョロ

海未『!』


花陽『…』


海未『はな『かーよちーんっ!』

海未『!』

花陽『わあっ、凛ちゃん!』

凛『行こっ、かよちん!』グイッ

海未『待っ…』

花陽『うん!』タッ

海未『あっ…』


タッタッタッタッ…


海未『…』

海未『違います…』

海未『これは…夢です…』

海未『夢なら、早く覚めてください…』

海未『早く…』

海未「………」パチッ

花陽「」ビクッ

海未「…」



本当に夢でしたか…。
花陽が顔を覗き込んでいるのが気になりますが、眠くて頭が回りません…。
起こしてくれたのでしょうか…?



海未「……おはようございます…」


花陽「え?あ、お、おはよ!」

海未「私より早く起きているとは…。花陽は早起きなんですね…」

花陽「あ、違うの。今日はたまたま…」

海未「そうですか…。少し、顔を洗ってきますね…」

花陽「あ、うん。洗面所はお風呂と同じとこだから」

海未「わかりました…」テクテク

洗面所


海未「…」パシャパシャ

海未「…」パシャパシャ

海未「…」ジーッ



鏡に映る私の顔。
いかにも眠たそうです。
こんな顔では皆に笑われてしまいますね。



海未「…」パシャパシャ



だんだん目が覚めていくと同時に、昨夜のことも思い出してきました。

なぜあんなことをしたのか。なぜ欲求に勝てなかったのか。
全ては私の心の弱さゆえでしょうか。



海未「…修業が足りませんね」

玄関


海未「何から何まで、ありがとうございました」

花陽ママ「いいのよ気にしなくて。また来てね?」

海未「はい。また近いうちに」



嘘です。
恐らく当分来ることは無いでしょう。
次は自分を抑え切れるかもわかりませんし。



花陽ママ「じゃあ、行ってらっしゃい。練習頑張ってね」

花陽「いってきまーす」

海未「お世話になりました。行って来ます」





園田家前


海未「では、すぐに着替えてくるので少し待っていてください」ガララッ

花陽「うん。わかった」



家に着くまでに花陽はいろいろと話を振ってくれましたが、内容はほとんど頭に入ってきませんでした。
失礼だとは思いましたが、どうしても昨夜の出来事がどうしても頭をよぎって、話を長々とする気分にもなれなかったのです。
そして何より、そんな気分でいるにも関わらず「キスぐらいはできたのではないか?」と考えてしまう自分が嫌でした。
花陽の顔を、唇を見るたび、私の意志とは裏腹に顔が熱くなるのがわかるのです。

海未ママ「あら、お帰りなさい。海未さん」

海未「ただ今戻りました。突然の外泊、申し訳ありませんでした」

海未ママ「いえ、たまにはそういう時も必要でしょう」

海未ママ「楽しかったですか?」

海未「…はい。とても楽しい時間を過ごせました」

海未ママ「そうですか。それはよかっです」

海未「あの、少し着替えてきてもよろしいでしょうか?外にその友達を待たせているので…」

海未ママ「あら、そうでしたか。引き留めてしまいましたね」

海未「いえ。では、失礼します」





海未部屋


海未「…」キュッ

海未「…」チラッ



鏡に写る自分の顔。
なんとか、いつも通りですね。



海未「…行きますか」

海未「お待たせしました…おや。穂乃果、ことり」ガララッ

花陽「!」

ことり「あっ、海未ちゃん!」

穂乃果「海未ちゃん!待ち合わせ場所に来ないなら連絡してよー!電話にも出ないしー!」

海未「電話…?電話なんて…あっ、すみません。携帯の電源を切っていたんでした」

穂乃果「もうっ!」プンプン



そんなこと気にしている場合ではなかった、といいますか…。
おっと、いい加減にしないとまた気取られてしまいますね。穂乃果も意外と鋭いところがあるようですから。
さてこの状況、いつもの私なら…。



海未「…それはそうと、穂乃果」

穂乃果「?」


海未「昨日はことりと甘いものを食べに行きませんでしたか?」

ことり「!?」ビクッ

穂乃果「え、ええ~?穂乃果は知らないなあ~…」

海未「…制服の袖のところにクリームが付いていますよ」

穂乃果「えええっ!?うそっ!?」バッ

海未「嘘です。やはり食べに行ったのですね」

穂乃果「い、いやあ~……」ダラダラ

海未「練習量を増やされたいのですか?」キッ


穂乃果「ご、ごめんなさーいっ!!」ダッ

海未「あ、待ちなさい穂乃果!!まだお説教が終わってません!!」ダッ

穂乃果「助けてことりちゃーーーん!!」



これぞ、いつもの日常ですね。
ライブも近いのです。今は目の前のことに集中しましょう。

昼間・屋上


海未「もうダンスは完璧ですね。お疲れ様でした」

凛「かーよちーーんっ!」ダキッ

花陽「わあっ!?凛ちゃん!?」

凛「やっぱり凛の言う通りだったでしょ!かよちんならできるって!」

花陽「うん!ありがと、凛ちゃん!」

凛「へへへ~」

海未「…」



ダンスが完璧に成功した直後、労いの言葉をかけようとする私よりも早く凛が花陽に飛びついて行きました。
何かデジャヴを感じると思ったら、今朝の夢と状況が似ていますね。
やはり、今の私にとっては見ていてあまり気分のいいものではありません。



海未「本当に、よく頑張りましたね。花陽」

花陽「ううん、海未ちゃんのおかげだよ。頑張ろうって思えたのも、頑張れたのも…」

凛「えっ?2人で何かしてたの?」

花陽「あっ、な、なんでもないよっ!」



やはり、どうあってもあの練習は秘密にしたいようですね。
凛すらも介在できない、私と花陽だけの秘密…。
何か優越感を感じる私は、小さいでしょうか?



凛「? まあかよちんが踊りきれたし、凛も鼻が高いにゃ!」

海未「凛が誇る事ではないでしょう。頑張ったのは花陽なのですから」

凛「そんなことわかってるよー。海未ちゃんお堅いにゃー。カタブツだにゃー」

海未「なっ…!凛!」

凛「わあっ!にっげろーーー!」ピューッ

海未「待ちなさい!!」ダッ



凛は無邪気なのかおちょくるのが好きなのかよくわかりませんね。
花陽にずっとくっついているのも無邪気さゆえだといいんですが。

練習後・校門



凛「かよちんっ!帰りにラーメン食べていこうよ!」

花陽「今から?うーん、行きたいけど、でも、カロリーが…」

凛「いっぱい動いたんだし大丈夫にゃ!ねっ?」

花陽「そ、そうかな…。…うん、行こっか」

凛「真姫ちゃんも来るよねー?」

真姫「ヴェェ…。なんで私も…」

凛「行きたいって顔に書いてあるよ!さあっ、出発にゃー!みんなまたねー!」ダッ

真姫「ちょっ、引っ張らないで!」タッ

花陽「わっ、凛ちゃん待ってよ~!お、お疲れ様でしたーっ!」タッ


ことり「…元気だねぇ」

海未「どこにあんな体力があるのでしょうか…」



凛はよく周りを巻き込んでいきますね。
その行動力だけは見習いたいものです。
私も、あんな風に花陽を引っ張っていけたら楽しいのでしょうか…。



穂乃果「海未ちゃーん?穂乃果たちも行こうよー」

海未「あっ、すみません」タッ

ことり「…?珍しいね。海未ちゃんがぼーっとするなんて」

穂乃果「そんなに疲れたの?」

海未「…かもしれませんね」

ことり「疲れた時は~…甘いものだよねっ!」

穂乃果「おおっ、ことりちゃん名案!じゃあ、この前行ったクレープ屋にレッツ

海未「行きません」

穂乃果「えーっ!?そんなこと言わずに行こうよー」ブーブー

海未「こんな時間にクレープだなんて、夕飯を食べる前にお腹が膨れてしまうじゃないですか」

穂乃果「でも、あそこのクレープほんとに美味しかったんだよ?海未ちゃんにも食べさせてあげようって話してたの!」

ことり「あまぁい生クリーム…」

海未「っ!」

穂乃果「新鮮なフルーツ…」

海未「ぐっ…だ、駄目なものは駄目なんです!太りますよ!?」

穂乃果「動いたんだから大丈夫だよ!凛ちゃんだって言ってたじゃん!」

ことり「凛ちゃんたちはよくてことりたちは駄目なの…?」

海未「そ、そういうわけでは…」タジタジ


穂乃果「ああ、もうっ!ことりちゃん!」ガシッ

ことり「うんっ!」ガシッ

海未「!?」

穂乃果「さっき一瞬顔ゆるんだの、穂乃果にはわかるんだからね!」グイグイ

ことり「一名様、ご案内で~す」グイグイ

海未「は、離してください!わかりました!行きますから!」

ことり「だーめっ!海未ちゃん逃げるかもしれないもん!」

海未「ま、周りに見られてるんです!恥ずかしいです!」

穂乃果「さあっ、レッツゴー!」ダッ

海未「離してくださいぃぃっ!!」



私は引っ張られる側の立場から抜け出すことなんてできるんでしょうか…?

クレープ屋


海未「ここですか…」

穂乃果「うん!しかも開店セールで少し安いの!」

ことり「う~ん、どれにしようかなぁ」

店員「ご注文はお決まりですか?」

海未「あ、はい。えっと、私はこのチョコバナナでお願いします」

穂乃果「えーっと、じゃあストロベリー!」

ことり「私はブルーベリーで!」

店員「かしこまりました。横にずれてお待ちください」


海未「ここまでくると私も食べたくなってくるじゃないですか。ズルいです」

ことり「えへへ。海未ちゃん、甘いもの大好きだもんね♪」

穂乃果「食べたいなら素直に食べたいって言えばいいのに!あっ、出来たみたいだよ!」



お会計を済ませどこかに食べるところは無いかと辺りを見回すとちょうどいい所にベンチがあったので、私を真ん中にする形で三人で座りました。
受け取ったクレープは見たところ別段変わったところは無さそうですが…さて、味はどうなんでしょうか。

海未「いただきます」ハムッ

海未「…!!」

穂乃果「どう?どう?」

海未「美味しいです…!!なんでこんなに美味しいのですか…!!」キラキラ

穂乃果「でしょ?穂乃果もこの前来た時に感動しちゃったよ!」

ことり「ブルーベリーも美味しいよ!海未ちゃんも一口食べる?」

海未「い、いただきます…!」ハムッ

穂乃果「じゃあ穂乃果は海未ちゃんのもらいー!」ガブッ

海未「ああっ!」

穂乃果「んん!これもおいしい!」

海未「人のを勝手に…!もうっ、穂乃果のも一口ください!!」

穂乃果「いいよ!はい、これ!」

海未「おお、これもなかなか…!」ハムッ



クリームの甘みが疲れた体を癒していくようです…。
食べに来てよかった、そう思わざるを得ませんでした。
ここまで美味しいなら何度も足を運びたくなるのもわかりますね…。

ことり「穂乃果ちゃん。そろそろ…」

穂乃果「え?ああっ、そっか!」

海未「どうかしましたか?」

穂乃果「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」

海未「はぁ」

穂乃果「海未ちゃんってさー…」

海未「?」モグモグ



穂乃果「花陽ちゃんのこと好きでしょ?」

海未「!!?」ブホッ

ことり「あっ、口元にクリームが…」フキフキ

海未「あ、ありがとうございます…」

穂乃果「それでそれで?どうなの?」

海未「い、いきなりなんですかその質問は!!//」

穂乃果「いつか絶対聞こうって、ことりちゃんと話してたの!」

海未「なっ…!?」

ことり「だって、練習中ずっと気にかけてるみたいだったから…」

穂乃果「この前言ってたお泊りって、そういうことじゃないの?」ニヤニヤ

海未「違いますっ!!あれは、本当に成り行きで…!!」

ことり「それより、どうなの?」ズイッ

海未「い、いや…」

穂乃果「嘘ついても穂乃果たちには分かるんだからね?」ズイッ

海未「ううっ…」

ことほの「海未ちゃん!!」

海未「ぐぅっ……」



海未「す………」

ことほの「す?」

海未「好き……です…///」ボソッ

ことほの「おお~~~っ」パチパチ

海未「…もうっ!!なんなんですか!!///」

穂乃果「いやあ、幼馴染の大親友としては、やっぱり海未ちゃんの恋路を応援したいと言いますか…」

ことり「気になっちゃうよねぇ」

海未「結局好奇心じゃないですか!!まさか、それを聞き出すためにわざわざここまで来たんですか!?」

穂乃果「甘いものを食べて機嫌が良い海未ちゃんなら正直に話してくれるかなーって」

海未「まさか、穂乃果の手の上で踊らされていたなんて…。屈辱です…」

穂乃果「それひどくない!?」

キリのいいところまで書きあがってないのでひとまずここまでです…。
続きはわりと早めに投下できると思います。
最初書いてた分が何か気に入らなくて、一旦全部消して大枠から考え直していたらこんなに時間がかかってしまいました。
同時進行でかよちんイベ走ってたなんて申し訳なくて言えません。
その分、なんとか満足していただけるような仕上がりにしてお見せしたいです。
では。

乙!続き待ってるよ

乙です
楽しみに待ってます!



やっぱり素晴らしい

ずいぶんと前から私の気持ちに気づかれていたようで、もう隠し事はできないと感じた私は今までのことを全て話しました。
もちろん、花陽の居残り練習のことはうまくごまかして、それ以外のことだけですが。
…それと、最近気になっている凛の存在についても。



海未「…以上です」

穂乃果「お、おお…。海未ちゃんが青春してる…」

海未「人から聞き出しておいて、なんですかその言い方は…」

ことり「ことりも、ちょっとビックリしちゃった」

海未「私のイメージってどうなってるんですか…」

穂乃果「だって、海未ちゃんって恋愛とかそういうの絶対『ハレンチですっ!』とか言ってしなさそうなんだもん!」

海未「…確かに、以前の私は恋愛など高校生の身分ではまだ早い、という考えを持っていました」

海未「しかし、現にこうして花陽に恋をしたことで、都合が良いようですが考え方が変わったのです」

ことり「それだけ、花陽ちゃんが好きってことなんだね。頑固で自分に厳しい海未ちゃんが考え方を変えるぐらいだもん」

穂乃果「恋愛は人を変える、ってやつだね…。うむむ…」

穂乃果にはまだ分からないでしょうね。
私が言えたことではないですが、恋愛とは縁遠そうですから。
少女漫画のようなことが目の前で起こっている、程度の認識でしょう。

しかし、これを現実と認識してもらわないと困ります。
一つ、はっきりさせなければならないことがあるのです。



海未「…二人とも、さっきから少し気になっていたのですが」

ことほの「?」

海未「…軽蔑しないのですか?」

穂乃果「…えっ?」

海未「私は、同性愛者なんですよ?」

そう。
女性ならば恋をする対象になるのは男性。ですが私が恋をしているのは女性である花陽です。
私は、普通の人とは違った考え方を持っているのです。
正直、理解もされないで話を聞かれることに対しあまり良い気分はしません。



ことり「…なるべく、避けてたんだけどなぁ…」

海未「…すみません」

ことり「ことりは、軽蔑なんてしないよ。同性愛について理解もあるし、別に気持ち悪いとかも思わない」

ことり「海未ちゃんは海未ちゃんだもん。海未ちゃんはことりの大切なお友達。それはずっと変わらないよ」

海未「…ありがとうございます」

ことり「それに、花陽ちゃんもきっと…」ボソッ

海未「? 何ですか?」

ことり「あ、ううん!なんでもないの!」

海未「はい…?まあ、いいですが…」

海未「それで、穂乃果は…」

穂乃果「………えーっとね」

穂乃果「穂乃果は正直、恋愛なんて全然わかんないから口出ししていいのかもわかんないけど…」

穂乃果「…誰かを好きになるのは、自由だと思うよ。海未ちゃんはそれがたまたま女の子だったってだけで…」

穂乃果「あんまりうまくは言えないんだけど…。うん、海未ちゃんが好きなようにやればいいと思う!」

海未「………」

海未「……ふふっ、答えになってませんよ」クスッ

穂乃果「ちょっ、真面目に考えたのに!」

海未「すみません、穂乃果らしいな、と思いまして…」クスクス

穂乃果「……えへへ」ニッ

ことり「それで、あとは凛ちゃん、だっけ?」

海未「…はい」

ことり「別に気にすることないと思うけど…」

海未「し、しかし、いくらなんでもくっつきすぎでは…」

穂乃果「そんなこと言ったら穂乃果だってよく海未ちゃんとかことりちゃんにぎゅーってしてるよ?」

ことり「さっきだって、言ってみれば間接キスしちゃったと思うんだけど…」

海未「そ、それとは何か違うのです!」

ことり「たぶん、花陽ちゃんが気になりすぎて海未ちゃんが考えすぎてるだけだと思うんだけど…」

海未「そうだといいのですが、凛と花陽が実は付き合っているのではないか、という疑念がどうしても拭えなくて…」

ことり「まあ、しょうがないのかな…。人を好きになったら、いっぱい悩むこともあるだろうし…」

海未「これが思春期というものなのでしょうか…」

海未「いつか、乗り越えられるのでしょうか」

ことり「それは今後の海未ちゃん次第かなぁ」

ことり「海未ちゃん的には、花陽ちゃんと付き合うのが一番の理想だよね?そうしたらそのモヤモヤも消えるわけだし」

海未「つ、付き合うだなんて、話が早すぎます…」

ことり「でも、付き合いたいんだよね?」

海未「………はい」ボソッ

ことり「なら、それを目標にがんばろ?凛ちゃんのことは一旦忘れて。ね?」

海未「それでいいのでしょうか…」

穂乃果「…ファイトだよっ!」

海未「…話に入ってこれないのですね」

穂乃果「…うん」

海未「…わかりました。なるべく考えないようにして、花陽との仲を深めていきたいと思います」

ことり「うん!がんばってね!応援してるし、相談も乗るから!」

穂乃果「穂乃果にも言ってね!あんまり、役に立てないかもしれないけど…」

海未「こうして話を聞いてくれるだけで、とてもありがたいですよ」

穂乃果「えへへ…。それじゃ、帰ろっか!」

園田家


海未「ただいま戻りました」ガララッ

海未ママ「お帰りなさい。帰りがいつもより遅かったですけど、すぐ夕飯にしましょうか?」

海未「はい、お願いします。私も少ししたら向かいますので」

海未ママ「はい。わかりました」パタパタ



穂乃果、ことりと話して、少し心が楽になった気がします。
やはり一人で抱え込むより、誰かに相談したほうが自分にとっても良いですね。
これでまた明日から頑張ることができます。

さて、そのためにはまず腹ごしらえをしなければなりませんね。
夕飯を食べに行きましょう。



海未「………あっ」

海未「…クレープを食べたので量を減らしてほしいと言い忘れてました…」ガクッ

翌日・夜

海未部屋


海未「………」カリカリ

海未「…ふぅ」



今日はライブ後の休養日ということで練習も無かったので、久しぶりに時間をかけて勉強をすることができました
部活にばかりかまけて勉強をおろそかにしては本末転倒。学生の本分はしっかりと守っていかなければ。



海未「お風呂に入って、少し続きをやったら寝ましょう」


アーリーガトーオテー♪


海未「!」ピクッ

花陽からメール?珍しいですね。
要件はなんでしょう。



海未「…デートのお誘いとか」ボソッ

海未「はぁ…。そんなわけないじゃないですか」ポチポチ

海未「えーっと…これですね」


『昨日はライブおつかれさま!楽しかったね!
本番でミスしなくてよかったよ~。

でね、花陽がちゃんと踊れたのも、きっと海未ちゃんのおかげだと思うの。
だから、そのお礼も兼ねて今度の日曜に2人で遊びに行かない?』


海未「……………」

海未「……………」ゴシゴシ

海未「……………」ジーッ

海未「!!?!??!?」

いや。
いやいやいや!!!
こ、これはきっと凛に送り間違えたとか、そういうことでしょう!
なんだ、そういうことですか…。
ふっ、私はぬか喜びなんてしません。


『海未ちゃんのおかげだと思うの』


ありえません。
きっとこれは私の願望が作り出した夢とか幻想の類なのです。
ほっぺたをつねれば夢は醒めるはずです!
いざ!



海未「痛い痛い痛いです!!!」ギュゥゥゥ



な、なぜ醒めないのですか!
こんな幸せな時間、私の最近の傾向からして全て夢なはずです!



海未ママ「海未さん?大丈夫ですか?」ガチャッ

海未「お、お母様!?」ビクッ

海未ママ「なにやら痛がっていたようですが…」

海未「あっ、だ、大丈夫です!ちょっと、箪笥の角に小指をぶつけてしまっただけです!」

海未ママ「そうでしたか…。海未さんが、珍しいですね」

海未「た、たまたまです!」

海未ママ「まあ、何もなかったならよかったです。失礼しました」バタン

海未「……はぁぁぁ…」

どうやら現実なようです。
だとすると、これは本当にデートの…。
いや、まだそう決めつけるのも早いですね。花陽にその気が無い可能性だって十分にあります。



海未「と、とりあえず返信をしましょう」ポチポチ





20分後


海未「…どう返せばいいのかわかりません」ズーン



いつもならこんなに考えることも無く返しているのに…。
どこか緊張して書いては消し、書いては消し、気づいたら20分も経っていました…。
作詞をするわけでもないですから、普通に返せばいいのです。普通に。
伝えたい用件だけ簡潔にまとめて送ることにしましょう


『ええ、構いませんよ。
お昼からでいいですか?朝は稽古があるので…』



海未「送信…っ」ポチッ

海未「………ふぅ…」

海未ママ「海未さん?そろそろお風呂に入ってくれませんか?後がつかえているので」トントン

海未「あっ、すみません!今から入ってきます!」



一旦お風呂に入って疲れを取り、ここからのメールに備えましょう。
送信完了した途端にドッと疲れがきましたから。
これはもう一種の戦い、ですね。



海未「メールってこんなに体力を使うものでしたっけ…?」

早めとはなんだったのか。
前スレから読んでくれている方はわかると思いますが、次回はデート編です。
1回の投下でデート編を全て投下しきりたいので、今回は早めとか言いません。
1週間を目処にしておいてください。遅筆ですいません。
では。

乙です
ゆっくり自分のペースで素晴らしい作品作ってくださいな
待ってます



更新さえしてくれればゆっくりでもええんやで

日曜、投下しに来ると思います。というか日曜を逃すと次が水曜になりそうです。
今月中には終わらせたいので宣言効果に期待してる自分です。もうしばらくお待ちください。

頑張れ
待ってます

日付変わったぐらいに来ます…たぶん

土曜

夜・穂乃果部屋


穂乃果「えっ、それってデートのお誘い!?」

ことり「花陽ちゃんもやるねぇ…」

海未「い、いえ、まだデートと決まったわけでは…」



花陽とのデート…いえ、ただの遊びを翌日に控えた今日。
気持ちが落ち着かない私は、二人にこのことを話してみることにしました。



穂乃果「ていうか、なんでもっと早くに教えてくれなかったの!」

海未「し、仕方ないではありませんか!その、は、恥ずかしかったのです!」

ことり「まあこうして話してくれたんだし、許してあげよう?」

穂乃果「怒ってるわけじゃないけど…。どうせなら二人のデートをこっそり見学したかったなー。明日はお店番頼まれちゃってるし」

ことり「じゃあ、ことりがずっとついて行ってメールでどんな感じか教えてあげる!」

海未「待ってください!なんでついてくる前提で話が進んでいるのですか!」

穂乃果「いいじゃん!二人の邪魔をするわけじゃないんだからさ!ねっ?」

ことり「海未ちゃん、おねがぁい!」

海未「駄目に決まっているでしょう!?ついてきたらほんとに怒りますからね!?」

ことり「むぅー…」

穂乃果「じゃあ、どんな感じだったか、デートが終わったらすぐ報告してね?約束だよ?」

海未「だからデートではないと…。はあ、わかりましたよ」



私は相談したことを若干後悔しました。
まあ、こうなることは少し考えればわかったはずなのですが…。

穂乃果「そしたら、どんなかっこいい海未ちゃんを花陽ちゃんにアピールしてあげられるか考えよっか!」

海未「か、かっこいい私ですか?」

ことり「確かに…花陽ちゃんって見た感じ、引っ張るより引っ張ってほしいタイプだもんね」

海未「な、なるほど…。でも、かっこいいアピールなんてどうしたらできるのでしょうか…」

ことり「うーん、花陽ちゃんをエスコートしてあげる、とか?」

穂乃果「それいい!どこに行くとかは決まってるの?」

海未「いえ、そういえば集合場所を決めただけで何をするとかは特に…」

ことり「じゃあどこに行くか目星をつけておいて、そこで案内してあげるのはどう?」

海未「…わかりました。やってみます」

穂乃果「うんうん、なんだか穂乃果が楽しくなってきちゃったよ!」

海未「私も、緊張が増してきました…」

ことり「明日の報告、楽しみにしてるねっ!」



二人は、自分らが遊ぶわけでもないのに本当に楽しそうで。
そんな様子を見ていると、少し緊張がほぐれた気がしました。

数時間後・海未部屋


海未「さて、下調べでしたね…。『東京 デートスポット』と検索すればいいのでしょうか?」カタカタ

海未「おお、やはりいろいろあるのですね…」



定番の遊園地…。昼からではあまり回れないでしょうし、そもそもエスコートできる自信がありません。
新しくできたショッピングモール街…。こちらはいつでも行ける気がしますね。
少し遠出して海を見に…。いえ、時期は過ぎていますし、東京周辺だとあまり綺麗な海は望めないでしょう
あっ、あるいは少し遠出して山…。…山はあまりデートで行きたくありませんね。



海未「なかなか難しいですね…」カタカタ

海未「おや、これは…?」

海未「ふむ…良さそうですね!」



ここなら私でも花陽をエスコートできそうです!
それに、運が良ければ想いをこっそり伝えることも…!
行き方と時間を調べて、あとは明日に備えて寝ることにしましょう!
あっ、シュミレーションも大事ですよね。
ああ、楽しみです…!

日曜日

朝・海未部屋


海未「きょ、今日はついに花陽と…」ドキドキ



って、今から緊張してどうするのですか。
待ち合わせは昼、私にはまず日舞のお稽古があります。
とりあえず道場に向かいましょう。





道場


海未「お母様、本日もよろしくお願いいたします」

海未ママ「はい、よろしくお願いします」

海未ママ「それではまず、この間教えたところがちゃんと覚えられているか確認しておきましょうか。海未さんなら問題ないとは思いますが」

海未「はい、わかりました」

~♪


海未「…」スゥッ

海未「…」スッ スッ



確か、ここの動きをもっと滑らかにしたほうが良いと言われましたね。
μ’sでは基本的に指導する側であるためされる側の心情があまりわかりませんが、皆がダンスの練習をしている時は何を考えているのでしょうか?
例えば、花陽…。



海未「…っ」ピタッ

海未ママ「? どうかしましたか?」

海未「い、いえ。集中が途切れてしまいました。もう一度よろしいでしょうか?」

海未ママ「珍しいですね…。次はしっかりやり切ってくださいね」


~♪



花陽の顔が浮かんだ途端、扇子を振るう手が止まってしまいました。
いけません…。こんな簡単に心を乱しては、稽古をつけてくださっているお母様に失礼です。
集中して、無心に…。


花陽『海未ちゃんっ!』



海未「っ!」ピタッ

海未ママ「また、ですか…」

海未「も、申し訳ありません!もう一度!」

海未ママ「これで最後ですよ?」


~♪



集中です。
いつも通りの稽古だからといって、何を油断しているのですか。
集中、花陽のことを忘れて、集中………



海未「………」ピタッ



…え?

さっきまではできていたのに…。
この次、どう動くんでしたっけ…?



海未ママ「…今日の稽古はやめにします」

海未「ま、待ってください!まだ…」

海未ママ「黙りなさい」

海未「っ!」ビクッ

海未ママ「そこに座りなさい」

その言葉には明らかに怒気が含まれていました。
とても、いつも温厚なお母様とは思えないほどの。
本気で怒っている証拠です。こんな体たらくでは当然ですが
こんなに人を怒らせるのはいつぶりでしょうか…。



海未ママ「なぜこの間できていたことが今日はできないのですか」

海未「…雑念が、入ってしまいました」

海未ママ「その雑念とはなんですか?部活の大会が近いわけでも、テストが近いわけでもないでしょう」

海未「そ、それは…」

海未ママ「そういえばこの後予定があると言っていましたね。それと関連があるのですか?」

海未「っ!」ピクッ

海未ママ「…本当に、わかりやすいですね」

海未ママ「ただの遊びではないのですか?例をあげるならば…色恋ですか?」

海未「…っ」ドッドツ

海未ママ「…全て話しなさい」

海未「………はい」



終わった、と思いました。
この後花陽と会うことを知られることが恥ずかしいのではなく、問題はこれから会うのが花陽、つまり女性であること。
色恋沙汰であるとは知られているのに、私の口から女性の名前が出てきたらお母様はどういう反応をするでしょうか。

お母様は終始無言で私の話を聞いていました。
私が話し終わると、お母様は少し難しそうな顔をして私に質問を投げかけてきました。



海未ママ「…海未さんは、同性愛者なのですか?」

海未「…申し訳ありません」

海未ママ「謝ることではありません。私も、少し不味いことを聞いてしまいました」

海未「………」



私は何も言いませんでした。
いえ、言えなかったの間違いでしょうか。
少しの沈黙が流れた後、お母様がまた私に語りかけてきました。



海未ママ「…母親としては、娘の恋は叶ってほしいと思います」

海未ママ「しかし日舞の家元の次期当主を育てている立場上、それが今後も障害になりうるのであれば、その恋は諦めてもらうしかないと考えます」

海未ママ「どうですか?障害となりえますか?」

海未「それは……」



なりえない、と言い切ることができませんでした。
数週間前は同じベッドに入ることで心を乱し、今日は3回も続けて舞をこなすことができなかったからです。
今、この気持ちは完全に私の枷になっていると言わざるをえません。

海未ママ「第一、そもそもその恋は叶うのですか?花陽さんも同性愛者なのですか?」

海未「それは…わかりません…」

海未ママ「非難するつもりはありませんが、正直同性愛は正常ではないと私は考えます」

海未ママ「それに、学生時代の恋愛は最終的に破局するのが定番であると思います。私はそんなことで心を乱してほしくありません」

海未ママ「…これからのことについて、よく考えておいてください」



それだけ言うとお母様は道場から出ていきました。
少しして私も自分の部屋に戻り、これからのことについて考えることにしました。





海未部屋


海未「これから、どうすべきか…」



正直、もう考えたくありませんでした。
女性同士。凛の存在。
これまで何度も考えてきましたが、結論が出てこなかった問題です。

…いえ、ひたすらに遠ざけて逃げてきた問題と、ついに向き合う時が来たのかもしれません。



海未「…待ち合わせ場所に向かう間に考えましょうか」



これも逃げでしょうか。
いえ、逃げではありません。途中で考えるのです。
そう言い聞かせながら支度を済ませ、足早に家を後にしました。

昼・駅前


海未「…早すぎたでしょうか」



待ち合わせの時間までまだ30分近くあります。
遅れるよりはいいですが、それにしても早すぎました。
どうにも、家を出る時間が早かったようで…。
どれだけ家に居たくなかったんですか、私は。

…考えましょうか。これからのことを。
お母様の言う通り、日舞のことを考えるのならこの恋は叶えようとしないほうが正解かもしれません。
園田の家のことを考えても、将来的には男性と結婚し跡継ぎを産むべきなのです。
でも、だからといってこの想いを消すことはできません。
どうすれば…。



「あっ、海未ちゃーん!」タッタッ



…えっ?
花陽?



海未「おや、早いですね。まだ集合20分前ですよ?」

花陽「それを言うなら海未ちゃんだって!いつから待ってたの?」

海未「10分ほど前に着いたばかりですよ。朝稽古がいつもより早く切り上げられたので…」



まだ考えがまとまっていないというのに…。
とりあえず、平常心を心がけましょう。
花陽につまらない思いをさせてはいけません。

花陽「じゃあ、どこ行こっか?海未ちゃんはどこか行きたいところとかある?」

海未「…実は一か所あるのですが、そこは後回しにします」

花陽「えっ?」

海未「その方が都合がいいんです」

海未「花陽は、どこか行きたいところはありますか?」

花陽「むー…。今日は一応海未ちゃんへのお礼も兼ねてるんだけど…」



本当に、何も考えていなかったのですね…。
花陽が少し困った顔をするので、私は昨夜念のため考えておいたプランを思い出し提案することにしました。



海未「…でしたら、アイドルショップへ連れて行ってくれませんか?」

花陽「え?どうして?」

海未「今、スクールアイドルでもプロのアイドルでも、どのようなアイドルが注目されているのか、参考にしたいので…」

海未「花陽なら、そういったことには詳しいでしょう?」

花陽「…うん!海未ちゃんがそう言うなら!花陽の持ってる情報を全部伝授しちゃうね!」

海未「ええ、お願いします」クスッ

花陽「あ、そしたらこの前にこちゃんに教えてもらったお店があるの!最近できたばっかりなんだけど、結構広くてラインナップも豊富なんだって!花陽もまだ行ったことは無いんだけど…」

海未「では、そこに行きましょうか」

花陽「うん!」



花陽の顔がキラキラしてきました。
本当に、花陽はアイドルが大好きですね。アイドルショップを提案して正解でした。
好きな人がキラキラした顔を見せると、こっちまで嬉しくなります。

アイドルショップ


花陽「…でね、プロで最近注目されてるのはこのグループでね」

海未「ああ、このグループなら私も知っています。音楽番組などで最近よく見かけますね」

花陽「そうなの!この人たちはルックスも良いけどなにより曲が評価されててね、スクールアイドルみたいに作詞作曲、振り付けまで自分たちでやっちゃうの!」



この店に入ってから、花陽のマシンガントークが続いています。
スクールアイドルやプロだけではなく地下アイドルなど、本当に花陽の持っている情報が全て私に流れ込んでくるようで、アイドルの奥深さがうかがえます。



海未「それはすごいですね…。こう言っては失礼かもしれませんが、ただの歌手や音楽プロデューサーとして活動しても売れるのではないですか?」

花陽「うん。きっと売れるかもしれないけど、きっと本人たちがアイドルであることにこだわりが……ってあぁーーーーーっ!!!」

海未「わっ、は、花陽?」ビクッ



花陽が突然、周りの目も気にせずショーケースに釘付けになりました。
並んでいるグッズの何かに目を輝かせています。

花陽「こ、こここれは、これはあああぁぁぁ…」ワナワナ

海未「あ、部室にも置いてある…」

花陽「伝伝伝っ!!!まさかこの店にも置いてあるなんてぇ…」パァァ

花陽「お、お値段は…」チラッ

花陽「………はあ…そうですよね…」ズーン



極限まで緩んだ表情を見せたと思ったら、少し覚悟したような顔で値段を見て、落ち込んだ顔で目を離す。
なんですかこれ、可愛すぎますっ…!
これは思わぬ収穫でした…。



海未「そ、そろそろ出ましょうか?」

花陽「うん…。ああ、伝伝伝が遠ざかってくぅ…」



本当に残念そうな顔をした花陽と、お店を後にします。
お店から出る直前まで何回か振り返ってDVDボックスを見つめ、その度に肩を落とすのが本当に可愛くて。
この表情を見にまた来てもいいかもしれない、と私にしては少し意地悪なことを考えました。

道中


海未「そろそろ良い時間ですかね…」

花陽「あ、最初に言ってた行ってみたいところ?」

海未「はい。少し電車で移動することになりますがいいですか?」

花陽「うん!お母さんには遅くなるかもって言ってあるから!」

海未「では、行きましょうか」

某所


海未「着きました。ここです」

花陽「水族館…?海未ちゃん、魚とか好きだっけ?」

海未「特別好きというわけではないのですが、この時間は『夜の水族館』というイベントがあるそうです」

花陽「へえー…」



やはり、あまり頻繁に来る場所ではないですよね。
花陽は辺りをキョロキョロと見渡しています。
周りはさすがに日曜というだけあって人が多く、家族連れや、カップルも…。


海未ママ『これからのことについて、よく考えておいてください』


…今ぐらい、忘れさせてください。
周りのカップルのような時間を、私も過ごしたいのです。



海未「楽しいかと思ったのですが、大丈夫ですか?」

花陽「うん!なんだか、ワクワクするね!」

海未「では、入りましょうか」

館内


花陽「わあ…」

海未「これは…綺麗ですね」



水槽はまるでステンドグラスのように輝いていて、1つ1つが幻想的な空間を作り出していました。
ここを選んでよかった、ここに花陽と来られてよかったと強く思います。



花陽「わあ…。いろんな色の水槽があるね」

海未「はい…。小型の魚のスペースでしょうか」



もしかしたら、あの魚がいるかもしれない。
いたら昨夜思いついた方法が使えるかもしれないと、私は目的の水槽を探しました。
そして見つけた水槽に、偶然花陽も目をとめたようで…。



花陽「あ、この魚は知ってるよ」

海未「クマノミ、ですね。私も、昔やっていた映画で知りました」

花陽「うん、花陽も。子どものクマノミが頑張る話だったよね」

海未「いえ、タイトルはそのようなストーリーを連想させますが、メインはその父親の話だったと思います」

花陽「…あれぇ?」

花陽「…あ、そうだったかも。よく覚えてるね」

海未「子どものころ、あの作品に惹かれて魚に興味を持った時期もありましたからね」

花陽「そういえば花陽の周りも、魚博士になりきってる子が何人かいたなあ」



ふいに、小学生時代の記憶が甦ります。


ほのか『あ!海未ちゃんが海のことしらべてるー!』

うみ『べ、べつによいではありませんか!//』


このことを話したら………盛り上がることは無いでしょうね。やめましょう。
それより、話題を移していかなければ。

海未「では、昔のなりきり魚博士から雑学を1つ」

花陽「え、なになに?」

海未「この水槽にも展示されていますが、クマノミがよく住処にしているこれは何か、知っていますね?」

花陽「イソギンチャク、だよね?」

海未「ええ。触手の先には毒を持っていて、クマノミ以外の魚が住もうとするとその毒にやられてしまいます」

花陽「すごいよね、植物なのに、クラゲみたい」


海未「やはり、間違えていましたね」クスッ

花陽「え?」

海未「海藻と同じかと思うかもしれませんが、イソギンチャクはれっきとした動物です。餌を食べますし、移動も繁殖もするんですよ」

花陽「ええ!?そうなの!?」

海未「はい。ちゃんと口や吸盤のような器官を持っています。先ほど言っていた毒にやられた魚は、イソギンチャクに食べられてしまうんです」

花陽「し、知らなかった…」



ここまでは順調ですね。
問題は次、花陽が知っていればなお良いのですが…。

海未「さて、イソギンチャクが動物であることがわかったところでもう1つ」

花陽「今度はなに?」ワクワク

海未「イソギンチャクの英名を知っていますか?」

花陽「英名…?うーん…」


花陽「…Sea Kintyaku?」

海未「…クスッ」

花陽「わ、笑わないでよぉ!// わかんないんだもん!」

海未「ふふっ、失礼しました。では正解発表です」



そして、私の想いも。



海未「正解はSea Anemoneです」

花陽「アネモネ…?」

海未「春に咲く花のことです。つまり直訳すると、海の花となります」



そして、運良くこのイソギンチャクの色は赤。

赤いアネモネの花言葉を知っていますか?

『君を愛す』です。



花陽「なるほど…。イソギンチャクの触手を、花にたとえたんだね」



…まあ、こんなこと恥ずかしくて、とてもではないですが言えませんね。



海未「ええ。恐らくそうでしょう」

海未「動物であるのに『花』とは…と、子どものころにこれを知った時、なにか自分が賢くなったような気がしました」

花陽「確かに…。ちょっとおかしいね」クスッ

伝わることはありませんでしたが、私は少し満足していました。
さらに、一通り見て回った後立ち寄ったお土産屋で花陽がお揃いを買おうと提案してくれ、私たち二人だけの思い出を作り、今は二人で帰り道にいます。

他愛もない会話をしているうちに、私は覚悟を決めました。

私は、花陽と付き合うことはしません。
日舞のこともありますが、なにより失敗する可能性のほうが高いこの恋を、手放したくなかったのです。
こうしてたまに二人で遊びに行ければ私は満足できます。何も想いを伝える必要はありません。
これで、いいんです。これが、最良の選択肢なんです。





帰路


海未「今日はありがとうございました」

花陽「ううん、こちらこそ!」

海未「たまには、2人で遊ぶのもいいですね」

花陽「…うん!」



たまには、良いのです。
二度と会えなくなるわけでもありません。
私が、我慢すれば…。



花陽「あ、公園のベンチがあるね。ちょっと休んでいかない?」

海未「えっ?まあ、いいですが…」

花陽「ふう…」トスッ

海未「疲れたのですか?でしたら早めに帰って寝たほうが…」

花陽「…ううん。もう少し、ここにいさせて」

海未「…?はあ」トスッ


海未「どうしたんですか?もしや体調が悪いのでは?」

花陽「ううん。体は大丈夫だから。心配しないで?」

海未「それならいいのですが…」



なにやら不安そうな顔…。本当に大丈夫なのでしょうか。
連れまわしたせいなのだとしたら、悪いことをしましたね…。



花陽「…今日はほんとに楽しかったね」

海未「ええ。アイドルショップに水族館。どちらも普段行かない所だったので、とても有意義な休日でした」

花陽「また、行こうね?」

海未「はい、勿論です」ニコッ



『また』がいつになるかはわかりませんが。
その日を楽しみにこれからを過ごしましょう。

花陽「………」

海未「………」



この黙りこくるのももう定番ですね。
何か、話しかけてみましょうか。



うみぱな「…あの」

うみぱな「あっ…」


花陽「う、海未ちゃんからでいいよ」

海未「い、いえ。花陽からどうぞ」

花陽「いやいや、そこは海未ちゃんから!」

海未「いえいえ、是非とも花陽から!」


うみぱな「「…ふふっ」」クスクス



幸せ、ですね。
こうして隣に座って笑い合って。
これがカップルだったらどんなに嬉しいことか。



花陽「…じゃあ、花陽から、いい?」

海未「はい。どうぞ」


花陽「…あのね」


花陽「……っ」グッ

海未「………花陽?」

花陽「………」

海未「……?」



…?
何をためらっているのですか?
そして、今にも泣きそうな顔をしているのはなぜですか?



花陽「……っ!」スクッ


花陽「海未ちゃんっ!!」

海未「は、はいっ!?」ビクッ


花陽「私は、あなたの事が好きです!!どうか私と、付き合ってください!!」ガバッ


海未「っ!?」

いきなり、何を言い出すのかと思えば…。

…嬉しすぎて、涙が出そうになります。
花陽が顔を伏せていてよかった。泣き顔なんて、見せたくありませんから。

両想い、だったのですね。
こんなに苦しむ必要もなかったのですね。

…でも、駄目なんです。



海未「……顔をあげてください、花陽」

花陽「は、はいっ!」スッ



こうなってしまったのも、全て私のせいなのでしょうね。
正直、今すぐにでもOKをしたいです。
でも、それではお母様の期待に応えられなくなるかもしれないのです。

花陽、ごめんなさい。
どうか、私の不甲斐なさを許してください。
私の未熟さを憎んでください。



海未「…花陽。あなたがそんな気持ちを私に抱いてくれることは本当に嬉しいです」

海未「今まで手紙をもらったことは何度かありましたが、今回ほど嬉しかったことはありませんでした」

海未「ですが、私はこう思うのです」


海未「その気持ちは、勘違いではありませんか?」

花陽「…えっ?」

海未「自分でいうのも変ですが、憧れや尊敬。そういった気持ちを恋心と誤認してしまってはいませんか?」

花陽「ち、違うよ。花陽は…」ポロッ

花陽の目から涙が零れ落ちていきます。
分かっていますよ。あなたは思いつきや勘違いで告白するような人ではない。
でも、そういうことにしておいてください。

…さようなら。私の、初恋。



海未「そもそも、女性同士でそういった感情が芽生えることはほとんどありえませんから。きっと私の言った通りのはずです」

海未「…突き放すようで悪いですが、これで失礼します。今日はありがとうございました」

花陽「ま、待って!まだ、話は…」

海未「今夜はじっくり考えてみてください。おのずと答えは出るはずですよ。では」タッ

花陽「う、海未ちゃんっ、海未ちゃぁんっ!!」



後ろから聞こえる花陽の声から、逃げるように公園を後にしました。
花陽が追いかけてくるようなことはなく、一人で帰り道を急ぎます。
私は、最低です。

今日はここまでです。長らくお待たせしました。
書いてるうちに書きたいネタが増えてきて、現時点で前スレの文章量よりこのスレの文章量が多くなりました。なんてこったい。
次はうまくいけば土日に投下予定です。新しく書きたいテーマも思いついているので、ペースあげて頑張ります。
では。

乙です!
いつも楽しみに待ってます

水曜にたぶん、自己満を投下しに、来ます…

待ってますぜ
それまで正座待機

穂乃果部屋


穂乃果「うーん、海未ちゃんからの連絡、来ないねぇ…」

ことり「ひょっとして、デートが上手くいってまだ一緒にいるとか…?」

穂乃果「そうだといいんだけど、待ってる穂乃果たちの事も考えてよー…」

ことり「海未ちゃんなら、知りません、って言うだろうね…」アハハ


キミヨサーイテ♪


ことり「!」

穂乃果「きた!」バッ

穂乃果「もしもし海未ちゃん!?どうだった!?」


『…………………』


穂乃果「海未ちゃん?おーい?もしもーし?」


『……………っ』


穂乃果「海未ちゃん…?」

ことり「海未ちゃん、どうかしたの?」


『…ぐぅっ、うううぅ…』


穂乃果「う、海未ちゃん!?」

『穂乃果ぁっ……私、私はっ…あぁあああぁっ…』


穂乃果「大丈夫!?お、落ち着いて!?」

穂乃果「今からそっち行くから!どこにいるの!?家!?」


『うっ、ううぅううううぅっ…』


穂乃果「と、とりあえず今から海未ちゃんの家に行くからね!」ピッ


ことり「う、海未ちゃんどうかしたの?」

穂乃果「わかんない…。けど、泣いてた」

穂乃果「…行こう、ことりちゃん!」

ことり「うん!」

海未部屋


海未「…………………」



気づいたら穂乃果に電話をかけていました。
無意識に助けを求めたのでしょうか。
しかも、何から話そうかと今日の出来事を思い出すと感情が溢れ出して止まらなくなり、みっともない声を聞かせてしまいました。
どうやら穂乃果とことりは私の家に来るそうで、今はただ2人を待っています。



ガララッ ドタドタドタドタ



…来たみたいですね。足音が近づいてきます。
まったく、足音を立てずに歩けないのですか。



穂乃果『海未ちゃん、入るよ?』

海未「…どうぞ」



さて、私は冷静な対応ができるでしょうか?

穂乃果「お邪魔しまーす…」スーッ

ことり「こんばんは、海未ちゃん」

海未「…こんばんは」


穂乃果「…なにがあったの?」

海未「……………」

ことり「落ち着いてからでいいからね?」

海未「…ありがとうございます。もう、だいぶ落ち着いていますよ」

海未「そうですね…。結論から話すと…」

海未「花陽を、振ったんです」

穂乃果「…振った?えっ?振られたじゃなくて?」

海未「ええ。良い間違いでも聞き間違いでもありませんよ」



穂乃果、口が開いていますよ。
まあ無理も無いでしょうね。大方、私が振られたのだと予想を立ててからここに来たのはずですから。
ことり…も、驚いた顔はしていますが、穂乃果ほどではなさそうです。
何か知っていたのでしょうか。全て察したような、そんな顔です。

ことり「…なんで、振っちゃったの?」

海未「…だって、おかしいじゃないですか。女性同士の恋愛なんて」


海未ママ『非難するつもりはありませんが、正直同性愛は正常ではないと私は考えます』



あの言葉。
非難するつもりが無いなんて、嘘にしか聞こえません。
もしたとえそれが本当だったとしても、世間の人々が全員お母様や穂乃果、ことりのように同性愛に寛容ではないのです。



海未「私は園田の家を継がねばなりません。跡継ぎを産むことも期待されているでしょう」

海未「私は男性と普通にお付き合いをして、普通に結婚して、普通の生活を送らなければいけないんです」

ことり「海未ちゃん…」

海未「さらに言うならば、私と花陽が付き合うことによって花陽まで冷たい視線を浴びせられるかもしれません」

海未「私だって耐えきる自信は正直無いのに、花陽にまでそんな負担をかけたくはありません」

海未「…以上です」

穂乃果はずっと黙ったまま下を向いていて、表情を窺い知ることができません。
ことりは非常に悲しそうな顔をしてこちらを見ています。
2人はこんな私をどう思いますか?
そう言いかけた時、穂乃果が口を開きました。



穂乃果「海未ちゃんさぁ…」ボソッ

海未「…?」

穂乃果「…バカなの?」

海未「…はい?」

いきなり、何を言い出すんですか。
穂乃果はまだこちらに顔を見せません。



穂乃果「だって、そうじゃん」

穂乃果「自分の好きな人に告白されて、なんで断っちゃうの?」

海未「だから、私はこの家を…」

穂乃果「電話してきたとき、泣いてたじゃん」

海未「…っ」

穂乃果「そんなことで好きな人を諦められるの?」

海未「…そんなこと?」ピクッ

ことり「ほ、穂乃果ちゃん、海未ちゃん…?」オロオロ

海未「聞き捨てなりませんね。人の家の事情を、そんなことですって?」

穂乃果「そんなことだよ。なんで悩んでるのかも穂乃果には分からないもん」

海未「それはあなたがこの家の人間ではないからです。この家の人間にしかわからない事情もあるんです」

穂乃果「そうかもしれないけど、海未ちゃんが間違ってるっていうことはわかるよ」

海未「ほう…それはぜひ聞きたいものですね」

ことり「ふ、2人とも、ケンカは…」

海未「ことり、すみません。少し黙っていてもらえますか?穂乃果が何を分かっているのか聞いてみたいので」

穂乃果「海未ちゃん、穂乃果のこと馬鹿にしすぎじゃない?」

海未「今までのあなたの行動がそうさせているんです。いつもいつも何も考えず無計画で…」

穂乃果「じゃあ海未ちゃんはちゃんと考えて行動できてるの?」

海未「もちろんです」

穂乃果「考えた結果、花陽ちゃんを振ったの?」

海未「…っ」ギリッ

海未「…ええ、これが花陽のためですから」

穂乃果「………」



穂乃果が黙ってしまいました。
私を貶める言葉でも考えているのですか?
口げんかで私があなたに負けるとは思えませんけどね。



穂乃果「…それ。その理由だよ」

穂乃果「やっぱり海未ちゃん、何も分かってない!!」ガシッ

海未「っ!?」



ようやく見えた穂乃果の顔。
その青い目には涙がたまっていました。

穂乃果「花陽ちゃんは、全部覚悟して海未ちゃんに告白したんだよ!?」

穂乃果「嫌われるかもしれないことも、この先のいろんな苦労も、全部!!」

穂乃果「そんな花陽ちゃんの勇気を、海未ちゃんは踏みにじったんだよ!!」

海未「私は、そんなつもりは」

穂乃果「実際そうだもん!!」

穂乃果「好きなら付き合えばいいじゃん!!いろんな辛いことがあっても乗り越えていけるのが恋人ってやつじゃないの!?」

穂乃果「自分の好きな人と付き合って何が悪いのさ!!海未ちゃんのバカ!!」

海未「…言わせておけばぁっ!!」ガッ

穂乃果「っ!?」

海未「なんなんですか!!あなたに私と花陽の何が分かるっていうんですか!!」

穂乃果「わかるよ!!告白に勇気が必要なことぐらい、穂乃果にだってわかる!!」

穂乃果「海未ちゃんは臆病だから!!不安だから責任を家や花陽ちゃんに押し付けて逃げてるだけだよ!!そんなこともわからないの!?」

海未「押し付けてなどいません!!実際、どうしようもないじゃないですか!!」


ことり「いい加減にしてっ!!」

ほのうみ「!!」

ことり「ケンカは、だめだよ…」

穂乃果「…」

海未「ことり…」

穂乃果「…帰るね」スッ

ことり「穂乃果ちゃん!?」

穂乃果「…」スタスタ

ことり「あうっ、えっと…」オロオロ

海未「…行ってください」

海未「私も、少し1人で頭を冷やします」

ことり「う、うん…。じゃあ、また明日ね。海未ちゃん」

海未「はい、また明日」



私が逃げている?
そんなことぐらい、わかっています。
でもしょうがないじゃないですか。



海未「うっ、うううぅうっ…」

翌朝・海未部屋


海未「…」



朝練に行く支度は済みましたが、正直ほとんど寝れていないのでうまく立ち回れるか不安です。
そもそも最近あまりよく寝れていない気がしますね。
授業中に寝ないように注意しなければ。
…誰かさんのように。





路上


ことり「あっ、海未ちゃん…」

海未「おはようございます、ことり」

ことり「それじゃあ、穂乃果ちゃんを起こしに…」

海未「…すみません、今日は1人で行ってもらえますか?」

ことり「で、でも、仲直りしなきゃだし…」

海未「…すみません」

ことり「…うん、わかった。でも、絶対ちゃんと仲直りしてね?」

海未「…善処します」

部室


海未「…」ガチャッ



いつもは穂乃果を起こす時間を考慮して学校に来ているので、だいぶゆっくり来たつもりですが一番乗りになってしまいましたね。
着替えて、練習のメニューでも考えながら待ちましょうか…。


ガチャッ


凛「あっ、海未ちゃんおはよーっ!」

海未「…っ」

凛「えっ、なんでそんなに嫌そうな顔するの…?」

真姫「朝早くから凛のテンションについていける人なんてそうそういないわよ」

凛「真姫ちゃんひどいにゃー…」



1年生組ですか…。
となると、花陽も…。

海未「…あれ、花陽は一緒ではないのですか?」

凛「うーん、今日は凛も寝坊しちゃって家に行かなかったし、通学路でも会わなかったよ。でもたぶんそのうち来ると思う!」

真姫「凛、あなたいつも花陽を迎えに行ってたの?」

凛「あれ?言ってなかったっけ?凛が行かないとかよちん、ずっと朝ごはん食べてるから迎えに行ってるんだ」

真姫「それはさすがに言い過ぎでしょ…。でも、もしかしたら花陽は凛を待ってるんじゃないかしら」

凛「えー、でもこの前寝坊しちゃった時はかよちんからメール来てたけど今日は来てないし、先に行っちゃったのかなーって思ったんだけど…」

真姫「まあ、花陽なら待ってれば来るかしらね。先に着替えて待ってましょ」

凛「うん!海未ちゃんも着替え…てるにゃ!?」

海未「すみません、先に屋上で待っていますね」ガチャッ


にこ「どわぁっ!」ドッ

海未「!?にこ!?」

にこ「あ、危ないじゃない!急に出てこないでよ!」

真姫「にこちゃんが勝手に入ってきただけじゃない」

にこ「な、なんですってぇ~!!…って、待ちなさい、海未」

海未「はい?なんですか?」

にこ「目の下。隈できてるわよ。ちゃんと寝てるの?」

海未「あっ…実は、最近少し…」

にこ「アイドルなら自分の体調ぐらい自分で管理しなさい。いつも自分で言ってるじゃない」

にこ「ちゃんと休める時は休まないと誰かさんみたいになるわよ。…あら?今日は誰かさんと一緒じゃないの?」

海未「…はい。では、先に屋上に行ってますね」

にこ「えっ、ちょっ、海未!?」



花陽にも穂乃果にも正直会いたくありません。
会ったら何を話すべきかがわからないのです。私が謝ればいいのでしょうか。
花陽は謝って済む問題では無いでしょうし、穂乃果には謝りたくありません。
…まあ、時間の問題ですがね。

数十分後・屋上


ことり「…」ガチャッ

凛「あっ、ことりちゃんだ!」

絵里「ことり、穂乃果は?」

ことり「体調が悪いって…」

希「それはしょうがないなぁ。これであとは花陽ちゃんだけやね」

ことり「えっ、花陽ちゃんも来てないの?」

絵里「もう練習開始時間なのに、珍しいわね…」

ことり「…」チラッ

海未「…」サッ



ことりの目配せに、思わず顔をそらしてしまいました。
恐らくことりには特に意図は無かったでしょう。
でも私にはそれが「私のせいだ」と訴えているように見えたのです。



絵里「2人も欠けてるとさすがに実践練習ができないわね…。とりあえず柔軟から始めましょ」

凛「かよちんも無断で練習を休むことはしないはずだし、きっとそのうち来るにゃ」

希「花陽ちゃんが来たら、穂乃果ちゃん抜きでフォーメーションの確認とかしてみよか」



いつも通り2人1組の柔軟が始まります。
しかしそのまま花陽が来ることはなく、朝練は基礎体力のトレーニングだけで終わりました。
2人が欠けた屋上はやはり何か物足りませんでしたが、同時に安心している自分もいたことは言うまでもありません。

昼・中庭


海未「…仮病、ですよね?」

ことり「えっ?」

海未「穂乃果です」

ことり「…うん」



いつもは真ん中にいるはずの穂乃果がいない違和感。
私たちが2人だけでいるのも珍しいかもしれませんね。



海未「穂乃果は何と?」

ことり「今日1日寝てたい、って…」

海未「…そうですか」

ことり「あのね、昨日のことなんだけど…」

海未「…はい」

ことり「ことりは、どっちも正しいように思えたの」

ことり「海未ちゃんの言ってることはもっともだけd、穂乃果ちゃんの言ってることも間違ってないなあ、って…」

海未「…」

ことり「海未ちゃんも、わかってるよね…?」

海未「…」

ことり「…明日は、ちゃんと仲直りしようね?花陽ちゃんとも…」

海未「…」



何も言う気が起きませんでした。
何も言いたくありませんでした。
考えるだけ無駄だと、分かっているからです。

うみぱなの仮面を被った2年生SSになってきてるなにこれ。
そして待たせた割に10レス程度の投下でごめんなさい。
あと2、3回で終わるはずです。今月中に終わらせたい。…終わるかな。
では。

乙です
海未ちゃんの心の葛藤と2年生組の友情が細かく見られて、かよちんへの返事までしっかりと補完されてていいですね
続き楽しみに待ってます

放課後・屋上


絵里「えっ、花陽帰ったの?」

凛「うん、学校には来たんだけど、やっぱり体調悪いみたいで…」

希「それは心配やなあ…。予選の疲れがたたったんやろか」

絵里「しょうがないから、今日は少しやりずらいけど7人でフォーメーションの確認をしましょうか」

海未「…」

翌朝・路上


ことり「あっ、海未ちゃん…」

海未「おはようございます、ことり」

ことり「…今日は、一緒に行こうね?」

海未「…はい」




穂むら前


穂乃果ママ「あら、ことりちゃん。おはよう」

ことり「おはようございます。穂乃果ちゃん、起こしてきますね」

穂乃果ママ「いえ、それがね…」

海未「どうかしたんですか?」

穂乃果ママ「あの子、珍しく早起きしてもう何十分か前に行っちゃったのよ」

ことり「えっ!?」

穂乃果ママ「もしかして何も連絡来てなかった?」

海未「はい。そのような連絡は、一度も…」

穂乃果ママ「昨日は体調不良で休んだんだからほどほどにしておきなさいって言ったんだけど、大丈夫って言い張って走って行っちゃったのよ」

穂乃果ママ「ごめんね、毎朝来てくれてるのに…」

海未「いえ、決しておばさまのせいでは…」



きっと悪いのは、私。



海未「…」

穂乃果ママ「?」

ことり「と、とりあえず学校に行ってきますね!」

穂乃果ママ「あっ、そうね。行ってらっしゃい。穂乃果が無茶しないか、見ておいてくれる?」

ことり「はいっ!行ってきます!」





屋上前踊り場


ことり「海未ちゃん、もう大丈夫?ドア開けるよ?」

海未「いえ、まだ…」

ことり「もう10分もここにいるよ…?」

海未「…」



このドアの向こうにはきっと穂乃果が、もしかしたら花陽もいる。
そう思うとどうしても怖くて。
…私は、こんなにも弱気な人間だったのですね。
つくづく、穂乃果の言った通りです。



にこ「ん、なんでそこで突っ立ってんのよ2人とも」

ことり「あっ、に、にこちゃん!」

にこ「練習始まるわよー。さっさと行きましょ」ガチャッ

海未「!」

ことり「あっ…」

にこ「…あら?これだけ?」



開かれたドアの向こうには、凛、真姫、絵里、希の4人しか見えません。
なぜ…?

にこ「穂乃果と花陽はまた休みなの?」

凛「かよちん、今日も練習来れないかもって…」

絵里「穂乃果は自主練するって電話が来たわ。いい加減全体練習をしたいからかけ直したんだけど、何回かけても出ないのよ…」

にこ「なによそれ…。自分勝手にもほどがあるわ」

真姫「…あら?ことり、海未、なんでまだそこにいるの?」

ことり「あっ、今行くね。海未ちゃん?」

海未「…はい」

希「ことりちゃんたち、穂乃果ちゃんの家には行ってへんの?」

ことり「行ったんだけど、私たちが着く前に家を出たって…」

にこ「どこで油売ってんのよあいつ…」

絵里「とにかく、練習を始めましょうか。」

海未「…」



2日も2人がいないことで、μ’sに嫌な空気が流れ始めていました。
1人ずつ始まったダンス練習も、誰1人集中できていません。
あの凛ですらいつものようなキレのあるダンスができていなく、私はなにか申し訳なさを感じていました。
…無論私も、集中できていないようでして。



絵里「海未、調子悪いの?動きが硬いし1か所間違ってたわ」

海未「…すみません」

絵里「…みんな、ちょっと集まって聞いて!」パンパン

絵里「今日の朝練はここまでにするわ」

にこ「ちょっ…!?どういうことよ!!」

絵里「私もだけど、皆全く身が入ってない。こんな状況で練習を続けたら怪我しかねないわ」

絵里「放課後はきっちりやりたいから、それまでみんな自分が何をすべきか考えて。正直、今の私たちは見てられないわ」

絵里「みんな、異論は無いかしら?」



異論を唱えるメンバーは1人もいませんでした。
最初声を荒げたにこも、恐らく気づいていたのでしょう。

この不和を解決するために私は何をすべきか…。

練習後・2年生教室


ことり「穂乃果ちゃん、どこに行っちゃったんだろう…」

海未「…」

ことり「何か変なことに巻き込まれてなければいいけど…」

海未「…私のせいでしょうか」

ことり「えっ?」

海未「私が穂乃果とケンカなどしなければ…。いえ、もっと前…」

海未「私が花陽を傷つけなければ、私がもっと強ければ…」

ことり「う、海未ちゃん、落ち着いて?」

海未「このままだとμ’sが、花陽とも、穂乃果とも…」ジワッ


ガララッ


海未「!」バッ



穂乃果「…」



海未「…穂乃果」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「…おはよ」

ことり「穂乃果ちゃん、どこに行ってたの?」

穂乃果「…ずっと、走ってた」

ことり「えっ、もしかして、家を出てから?」

穂乃果「…うん」


穂乃果「…海未ちゃん」

海未「!」ビクッ

穂乃果「放課後、ちょっと話があるんだけど、いいかな…?」

ことり「!」

海未「…はい。構いません」

ことり「!!」

穂乃果「…ありがと」


穂乃果「それとことりちゃん、1つお願いがあるんだけど…」

ことり「えっ?なあに?」

穂乃果「…花陽ちゃんのことなんだけど」

海未「っ!」

穂乃果「花陽ちゃんを励ましてあげてほしいの」

穂乃果「そして、もう1回海未ちゃんと会わせてあげたい」

海未「ま、待ってください!もう1度、花陽と…!?」

ことり「…うんっ!わかった!」

海未「ことり!」

ことり「ふふっ、全部うまくいくといいなぁ♪」


担任「おら席つけー。始めるぞー」ガララッ


穂乃果「…じゃあ、お願いね」

ことり「うん!絵里ちゃんにはことりが連絡しておくね!」

海未「穂乃果と、花陽と…」



確かにこれがうまくいけば、1日で全ての問題が解決するでしょう。

…私次第でしょうか。
ここで弱さを捨てきれるかどうかが私たちのこれからを、ひいてはμ’sのこれからを決めるのでしょう。
全ては放課後、ですね…。

少ないですがここまでです。
来週の土日どっちかで一気に終わらせる予定。予定。
駄文さが増してきてますが、読んでくれてる方はどうかお付き合いください。
では。

来週まで正座待機してます!

放課後・2年生教室


ことり「じゃあ、ことりは花陽ちゃんに会いに行ってくるね!」

穂乃果「うん。ありがとう、ことりちゃん」

ことり「穂乃果ちゃんも、海未ちゃんも頑張ってね!」



そう言うとことりは急いで教室を出て行ってしまいました。
他のクラスメイトたちも部活なり帰宅なり、それぞれ教室を後にしていきました。
今は、穂乃果と2人きり。
少しだけ日が暮れ始めた教室に沈黙が流れます。

最初に口を開いたのは穂乃果でした。



穂乃果「この前は、ほんっとにごめんなさい!!」

穂乃果「海未ちゃんの気持ちなんにも考えないで、怒らせて、傷つけて…」

穂乃果「そのくせに勝手に帰ったり会おうとしなかったり、本当にごめんなさい!!」



頭を目一杯下げ謝罪の言葉を述べる穂乃果。
その姿勢が、言葉が、私にとっては薬であり、ある意味毒でもありました。

海未「…顔を上げてください、穂乃果」

海未「先に謝るべきなのは、私です」

海未「こちらから相談を投げかけたのに半ば八つ当たりのような事をしてしまって」

海未「そのうえ、ここ最近は穂乃果に会うことすら拒否してしまいました」

海未「穂乃果が言った通りでした。全て私の臆病が招いた結果です」

海未「本当に、すみませんでした」

穂乃果「海未ちゃん…」



穂乃果と同じように、頭を下げて。
少しだけ、心が晴れたようでした。

穂乃果「…海未ちゃんも、顔を上げてよ」


穂乃果「もう言いたいことは無い?」

海未「はい」

穂乃果「悪口とか、言っていいんだよ?」

海未「ありませんよ。元はと言えば私が悪いんですし」

穂乃果「そういうこと言わないのっ!」

海未「…はい」

穂乃果「…じゃ、じゃあ、これで仲直りで、いい?」

海未「…はい、もちろんです」


穂乃果「………ぅ海未ちゃぁんっ!!」ダキッ

海未「わっ、ほ、穂乃果?」

穂乃果「よかったぁ…」グス

海未「…」ギュッ

穂乃果「ごめんね…ありがと…」

海未「こちらこそ、ありがとうございます」ポンポン



喧嘩をしても、戻ってきてくれた穂乃果。
私は良い親友を持ちました。
穂乃果と親友でいられることを誇りに思います。

…さて、恋人はそう上手くいくのでしょうか?

穂乃果「それで、花陽ちゃんとは会いたくないの?」

海未「会いたくないというか、会ってもどう接すればいいのかわからないんです…」

穂乃果「うーん…。確かに、1回振っちゃったしねぇ…」

海未「すみません…」

穂乃果「ああっ、違うよ!?海未ちゃんのことを悪く言ったわけじゃなくて!」



2人とも落ち着いてから、今度は花陽のことについての話が始まりました。
そういえば、ことりは上手くやっているのでしょうか…?
やっているとしたら、私が会わないわけにはいけない状況が作られたといっても過言ではないでしょう。
穂乃果も良い作戦を考えたものです。
ですが…。



海未「そもそも、私に花陽と会う資格なんてあるんでしょうか」

穂乃果「え?」

海未「嘘をついて花陽を傷つけて、また花陽と会っても困惑させるだけなのではないでしょうか」

海未「私を嫌いになった可能性もありますし…」

穂乃果「うーん、そこは花陽ちゃんを信じてみるしかないんじゃないかなぁ」

海未「信じる、ですか…」

私は花陽を信じることができていないのでしょうか。
あの夜、花陽が周りからの冷たい目に耐えきれないだろうと思ったのは紛れもなく本心でした。
ですが、実際のところそうではありませんでした。

花陽は強いのです。少なくとも私なんかよりもずっと。
いつもはおどおどしている彼女ですが、いざという時にはしっかりと自分を持つことができる。
それは入部の時であったり、告白の時であったり。

その二面性に、いつしか惹かれていたのかもしれませんね。
そんなに強い花陽を私は見くびり、守ってやらねば、背中を見せていなければと考えていました。

…ああ、そうか。
私が、私がすべきなのは…。



海未「信じること、ですね」

穂乃果「?」

海未「私は、花陽と横に並んで歩いて行きたいのです」

海未「思いつめすぎなのですね、私は」

海未「花陽ならきっと受け入れてくれる、花陽とならきっと苦難も乗り越えていける」

海未「そう信じてこそ、花陽と歩いて行くことができる」

穂乃果「…お家の事とか、凛ちゃんとかはいいの?」

海未「それがどうしたっていうんですか」

海未「自分が好きな人と付き合って何が悪い、でしたっけ?」クスッ

穂乃果「…!」

海未「私も覚悟を決めます」

海未「花陽と付き合えるのなら、家や世間であろうと凛であろうとかかってこいです」

穂乃果「海未ちゃん…!」

海未「ことりからの連絡はまだですか?できるなら今すぐにでも花陽に会いたいのですが」

穂乃果「まだ来てないね…。もうちょっと待ってよっか」

海未「では、最近眠れていないので少し眠っても良いでしょうか…?花陽に眠たそうな顔など晒せませんし」

穂乃果「おお、珍しいね…。じゃあ連絡が来たら起こしてあげる!機嫌悪くなるのは無しだよ?」

海未「当然です。では、お願いしますね…」ガクッ

穂乃果「はやっ!?」

久しぶりに夢を見ました。

私は暗闇の中に居ました。
そこへ凛とお母様が出てきて、私を非難しました。
私はそれを無視して前へ進みました。

ひたすらに前へ進むと、1枚の扉がありました。
その扉の向こうから光が差し込み、扉の前に見覚えのあるシルエットが浮かび、私を呼ぶ声が聞こえました。


『……ちゃん…!…………みちゃん!』




穂乃果「海未ちゃん!」

海未「……穂乃果?」ムクリ



花陽でなかったことが少し残念でした。

海未「連絡が来たのですね…。では、行きましょうか」ガシッ

海未「え?」クルッ


担任「え?じゃねえよ園田…」ゴゴゴゴゴ

海未「せ、先生!?」

担任「お前ら何時だと思ってんだ!!もうとっくに完全下校時刻過ぎてるっつーの!!」

海未「か、完全下校時刻!?」



よく見れば窓の外は真っ暗。
私が眠り始めた時にはまだ日が昇っていたはずですが…。



穂乃果「海未ちゃん、ごめん…」



穂乃果の口の周りによだれの跡のようなものが見えます。
そして頬には、例えばブレザーを押し付けたようなしわと赤み。



海未「穂乃果、あなたまさか…」ワナワナ

穂乃果「穂乃果もあんまり寝てなかったし、朝走り回って疲れてて、その…」

海未「なんで穂乃果まで寝てるんですか!!?」

穂乃果「ご、ごめんなさーいっ!!」

担任「さっさと帰れお前らー!!」

校門


海未「わ、私たち、何時間花陽たちを待たせていますか…?」

穂乃果「え、えっと、海未ちゃんが寝てすぐ穂乃果も寝ちゃって、そのすぐ後にメールが来てたから、だいたい3時間…?」

海未「ありえません!!起こしてくれと頼んだではないですか!!」

穂乃果「ほ、穂乃果も眠かったんだもん!!」

海未「ああ、どうしましょう、絶対怒ってます…」

穂乃果「と、とりあえず連絡するね!」

海未「まだしてないんですか!?」

穂乃果「先生に起こされて、すぐ海未ちゃんを起こしたから…」

海未「ああもう!私が謝ります!携帯を貸してください!」

穂乃果「う、うん…」

海未「とりあえず謝って、今すぐそちらに向かうと…」

海未「あっ…」ピタッ

穂乃果「う、海未ちゃん?」



どうせなら、あの場所がいい。
私の直感がささやいていました。



海未「…」ポチポチ

海未「送信…」ポチッ

穂乃果「なんて送ったの?」

海未「見ればわかりますよ。お返しします」

穂乃果「?えーっと…」ポチポチ


『海未です。連絡が遅くなり本当に申し訳ありません。

花陽と会う心の準備が出来ました。
そちらも上手くいったようでよかったです。

花陽に、「あの公園に来てほしい」と伝えてください。
花陽なら、わかると思いますので』


穂乃果「あの公園…?」

海未「さあ、急ぎますよ」タッ

穂乃果「あっ、ま、待ってよ海未ちゃーん!」タッ

公園入口


穂乃果「ここ…?」

海未「はい。ここにきっと来てくれるはずです」

海未「穂乃果…大変申し訳ないのですが、穂乃果はここで待っていてもらえますか?」

穂乃果「え?」

海未「そして花陽が来たら、ベンチのところにいると伝えてくれませんか?」

海未「花陽と、1対1で話がしたいのです」

海未「私の、思いの丈をぶつけます」

穂乃果「…!」

穂乃果「うん!わかった!海未ちゃん、ファイトだよっ!」

海未「ありがとうございます。行ってきます」

ベンチ


海未「………」



待っている間に、いろいろなことを考えました。

地区予選の居残り練習を目撃したのが始まりでしょうか。
あの日から私と花陽の距離がぐっと近づいた気がします。

突然のお泊り会。
あの夜のことは決して忘れません。
戒めとして、私の心に永遠に留めておくべきでしょう。

地区予選後のデート。
本当に楽しく、幸せでした。
あのような時間をまた過ごすことができるのなら、私はどんな代償でも払えます。


…少し、不安でもあります。
はたして上手くいくだろうか、振られたらどうしようか。



「…海未ちゃん?」

海未「…!」



来て、くれました。
その顔を見ただけで涙がこぼれそうです…が、今はまだ我慢です。
はやる気持ちを抑えて、冷静に…。



花陽「えーっと…こんばんは?」

海未「…こんばんは」

花陽「一日会ってなかっただけなのに、なんだか久しぶりって感じがするよ」

海未「…そうですね」

花陽「………」

海未「………」



花陽が会話をつなごうとしてくれているのは分かるのですが、正直そんな余裕はありません。
先ほどから心臓の鼓動が早くて仕方ないのです。
これまでにないほどの緊張が私を支配しています。



…いえ、駄目です。ここで立ち止まっては。
勇気を出すのです、園田海未。
一歩を踏み出す、勇気を。



うみぱな「…あの」

うみぱな「あっ…」


海未「…ふふっ」

海未「この前と同じ、ですね」クスクス

花陽「…!」

花陽「海未ちゃんが笑った!」

海未「はい?」

花陽「花陽がここに来てから、ずっと真顔で怖かったんだよ?」

海未「おや、そうだったでしょうか…。それは失礼しました」

うみぱな「…ふふふっ」



…ああ。
緊張がほぐれていくようです。
落ち着いて、落ち着いて…。

海未「…今度は、私から言ってもいいですか?」

花陽「うん」

海未「…まず、先日はすみませんでした。自分でも相当酷い事を言ったと思います」

花陽「…ううん、海未ちゃんだって、辛かったんだよね」

海未「…はい?」

花陽「ことりちゃんから聞いたの。あの後のこととか、昨日の海未ちゃんの様子とか」

海未「んなぁっ…!?」

花陽「あっ、ことりちゃんを怒らないでね?花陽が聞いて答えてくれただけなの」

海未「なんとも言い難い気分です…」

花陽「これでおあいこじゃ、ダメかなあ?」

海未「花陽がそれで良いのなら…」

花陽「じゃあ、この話はおしまいっ!」



私的にはおしまいにしたくないのですがね。
後でことりにはいろいろ話をする必要がありそうです…。

海未「…ありがとうございます。では、次にいっていいですか?」

花陽「うん!」



あの時伝えられなかった、私の気持ち。



海未「……あの…そのっ………っ」



言葉に詰まります。
あの時の花陽も、こういった心境だったのでしょうね。
静まってきたと思っていた鼓動がまた激しくなってきて、緊張でどうにかなってしまいそうです。


ですが。
ここで止まるわけにはいきません。
伝えるんです。この感情を。
たとえ玉砕しようとも、私は伝えなければならない。

海未「…せ、先日、花陽の想いを無碍にした私が言うのも変な話ですが…」




鍵はもう手の中にあります。




海未「ずっと前から、花陽のことをお慕いしておりました」




扉を開いて、進むのです。




海未「どうか、私とっ…お、お付き合いしてくださいっ!!」




2人で、この先を歩いて行くために。

数日後


昼休み・2年生教室


穂乃果「お昼だーっ!!パンだーっ!!お腹すいたーっ!!」

ことり「穂乃果ちゃん、今日一番の元気だね」

海未「すみません、私はまた屋上に…」


穂乃果「また花陽ちゃん?」ニヤニヤ

ことり「おアツいねえ~」ニヤニヤ


海未「か、からかわないでくださいっ!//」

穂乃果「だってほんとのことだもん!ねー?」ニヤニヤ

ことり「ねー?」ニヤニヤ

海未「もうっ!行ってきます!//」

ことほの「ごゆっくり~」ニヤニヤ



あの告白から2日後、μ'sの皆に私たちの関係を伝えました。
隠し事などしたくはありませんでしたし、できるとも思えなかったからです。
思いの外みんなは同性愛に寛容で、私たちを祝福してくれました。
凛は驚いた顔をしていましたが、素直に祝ってくれました。どうやら私の見当違いだったようですね。ああ、恥ずかしい。
今ではこうしてたまにからかわれつつも、堂々とお付き合いすることができています。

今度、花陽を私の家に呼んでお母様にも関係を伝えようと思っています。
大丈夫、花陽となら何を言われようと耐えられます。
私の覚悟をお母様に見せるのです。



屋上


花陽「あっ、海未ちゃん!」

海未「すみません、遅くなりました」

花陽「ううん、花陽も今来たとこだから!」

海未「…最近穂乃果達にからかわれているのですが、花陽の方はどうですか?」

花陽「あはは…。凛ちゃんが『まーた海未ちゃん?凛とも遊んで欲しいにゃー!』って…」

海未「そうですか…。会う頻度を減らすべきでしょうか?」

花陽「ううん、凛ちゃんもきっと分かってくれてるから!」

花陽「それに、花陽は海未ちゃんと離れたくないもんっ!」ギュッ

海未「は、花陽!?」

花陽「えへへ//」

海未「…ふふっ、まったくもう」ギュッ

花陽「今日はねっ、おかず作ってきたの!豚の生姜焼き!」

海未「おや、これはもしや…」

花陽「うん!海未ちゃんに食べてほしいなぁって、お母さんに味付けを教わって作ったの!お泊りの時とおんなじの!」

海未「なんと…。ありがとうございます。早速いただいていいですか?」

花陽「もちろん!どうぞっ!」

海未「では、いただきます」パクッ


海未「………」モグモグ


海未「………」ゴクンッ


花陽「ど、どうかな…?」ドキドキ



海未「……」


海未「…これは本当に、花陽のお母様に教わったのですか?」


花陽「え……」



海未「…あの時食べたものより、何倍も美味しいです」ニコッ

花陽「!!」パアァッ

海未「もう1ついただいていいですか?」

花陽「も、もちろんっ!というか、全部食べてね!」



花陽とお昼を食べるようになってから少し経ちます。
おにぎりを一口いただいたりはしましたが、私のために何かを作ってきてくれたのは初めてでした。
本当に、美味しい…。



海未「…花陽」


花陽「? なに?」モグモグ


海未「こうして恋人の手料理を食べて、談笑していられる時が来るとは思っていませんでした」


海未「…幸せ者ですね。私たちは」


花陽「…うんっ!」ニコッ



この笑顔をずっと見ていられるように。
ずっと隣で歩いて行くことを、心に強く誓いました。



おわり

以上で完結になります。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
書いてるうちにどんどん脱線と追加を繰り返して、予想の倍ぐらいの長さになってしまいました。
どっちが本編でしょうね。僕はこっちだと思います。

途中ものすごいだれたのを後悔してます。
最終的には一旦書くのやめて2chのほうで安価スレ建てたりしてました。ごめんなさい。

次書くのはりんぱなになると思います。
またこっちで建てるので、見かけたら読んでやってください。

では。

よかった…
本当によかったです!
新作も楽しみに待ってます!!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月25日 (水) 09:36:53   ID: tePZRdkl

良かったよ

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