眼鏡「つ、付き合ってくれ」金髪「へ?」 (328)

眼鏡「暇ならちょい、放課後に買い物行きたいからさ…」

金髪「……」

眼鏡「き、金髪さんが良ければって! そんな程度の感じで…ハイ…」

金髪「…別にイイケド?」

眼鏡「本当にっ!?」

金髪「勉強会もナシ、予定もナシ、断る理由はひとっつも無いしな」ガタリ

金髪「それに」チラ

眼鏡「な、なに?」

金髪「あんたの頼みだしね。選んで断るなら元の予定の方を断るよ、あたしは」ニヤニヤ

眼鏡「ア、アリガト」カァァ

金髪「くすくす、んで? どこ行くって?」

眼鏡「…ん」ポリポリ





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いいよいいよ。

待ってた

~~~

眼鏡「……」ドキドキ

金髪「ん~、これとかあんた似合いそうじゃん」

眼鏡「い、いや派手すぎない?」

金髪「見た目地味なんだから服から変えねーと、違う?」

眼鏡「んん、そういうのトンと疎いからさ…何が正しくて悪いのかさっぱりで…」

金髪「だろな、くっくっくっ。黒地の中着にデニム、厚手の白いシャツでも羽織れば完璧なんだろ?」

眼鏡「…よくわかってるようで」

金髪「いっぱしのオシャレ気取りたいなら雑誌ぐらい読みなって、価値観変わるよー」

眼鏡「そんなモンかね」

金髪「まーね」クスクス

眼鏡「…こういった黒縁メガネとかは?」カチャ

金髪「ん。貸してみ、どれどれ」

眼鏡「お、ぉぉ」

金髪「んーー、前髪をこう流して。六十四に分ける、軽くてっぺんサイドを乱してっと」グシャグシャ

眼鏡「おぉおぉ…おおぅ…」

金髪「ほれ完成」ぱっ

眼鏡「ど、どおかね?」

金髪「ぶふっ!」サッ

眼鏡「あーハイハイハイ、わかってますって。えーえー分かりますとも…」

金髪「いやね、アレだね、なんつーか着せられてる感というか、鼻から上が別人っていうか」クスクス

眼鏡「むぐぐ…」グシャグシャ

金髪「んなむくれるなって。あんたが自信なさげなのが悪い、雰囲気から変わらないとダメだね」

眼鏡「そんな話なのかよ…」

金髪「その程度のハナシだって、変にオシャレってモンをお高く捉えてるオタク共が悪い、まずは見つけないと」

眼鏡「見つける?」

金髪「例えばデート初日だとする。恥をかきたくないためにオシャレをしよう、あんたはどうする?」ニヤ

眼鏡「…服を買う」

金髪「その時点で駄目だわ。ハイ、失格」

眼鏡「ど、どうしろと…?」

金髪「予め持ってるもので頑張るんだよ眼鏡、持ってる中着、持ってる上着、ズボンはなんだって良い」

金髪「そしてコンビニで並んでるオシャレ雑誌を読め。持ってるモンで似たような服装をチョイスする」

眼鏡「…それで?」

金髪「選んだら頭にたたっこむ。できたら好きを見て写メる」ビッ!

眼鏡「犯罪だろ…」

金髪「じゃあ覚えろ。そして家に帰って鏡の前でファッションショー開始、実際に着てみる」

眼鏡「そ、それが似合わなかったら?」

金髪「認めろ。これであってる大丈夫、と否定したがる自分を押さえつけば良いの」

眼鏡「んな滅茶苦茶な…」

金髪「最初からデートの時点で無茶苦茶だろ」クスクス

眼鏡「夢も希望もないようなこと言うな、マジで」

金髪「んーん、そうでもない。デートって時点で相手の女の子は『相手のセンス』をある程度把握してるモンよ」

眼鏡「そ、そうなの?」

金髪「男どもは、つーかオタク共は変に展開を裏切りたい風に考えるケドさ。フツーで良い訳、全然」

金髪「一番やっちゃダメなのは雰囲気にあってない、お洒落しちゃってますよーという臭い格好」

眼鏡「うぐっ」

金髪「心当たりあんの?」ニヤニヤ

眼鏡「良いから話を続けて!」

オタク=おしゃれに興味ないって風潮どうなの?

金髪「くっくっくっ、つまりは無理せず持ってるモンで最大限のお洒落をする」

金髪「モチロン自分の価値観を信じちゃダメ、ちゃんと雑誌を読んでセンスを真似する」

金髪「…そして憶えるワケよ」チラリ

眼鏡「ん…」コク

金髪「すると段々と違ったオシャレをしたくなる。自信が持てるワケ、自分の持ち味に」

眼鏡「持ち味?」

金髪「自分の雰囲気に合う服装。バッグ。靴。はたまた靴下までこだわり始める」

金髪「次々に色んなモノが欲しくなって、もっともっと自分に対して自信を持てるようになってく」

金髪「するとどーなる? 最初と違って、さっきの格好もぴったし似合う雰囲気となるってー寸法よ」クスクス

眼鏡「んなまさか…」

金髪「あり得るから大学デビューなんて言葉が流行るんだっつの、まぁ失敗も多いけどね」

眼鏡「…」

金髪「一番なのは感想を言ってくれる人が側にいてくれること、もっと言えばその子はオシャレにうるさい子がベスト」

眼鏡「…女の子?」

金髪「男が好むセンスと違って、女が好むセンスに寄せてくれるしな」

眼鏡「へーぇ…」

金髪「髪型も男がすきそーな奴より、女が良いなって思える方がモテる」

眼鏡「そんな極端に変わる?」

金髪「似合ってればね」ニヤニヤ

眼鏡「…結局それだよ」

金髪「そりゃそーだろ、イケメンがモテるしイケメンが何を着ても超センスよく見えるし」

眼鏡「むぅー…」

金髪「世の中そんな風に回ってる、それがとーぜん、それがフツーなこと」

眼鏡「……」

金髪「でも頑張ることは無駄じゃない」スッ

眼鏡「へ?」

金髪「さっきの黒縁、似合ってたよ眼鏡」カチャ

眼鏡「……」ドキ

金髪「なにかとうじうじ燻ってるヤツより、どーせ駄目だと卑屈なヤツより、ダメだダメだと受け身な男よりも」

金髪「──挫けず前へ前へと進もうとする男の方が、あたしは素直にかっこいいと言えるな」

眼鏡「…目指せ雰囲気イケメン?」

金髪「そのとーり」クスクス

眼鏡「そりゃちっとハードルがな…」ハァ

金髪「失敗怖がっちゃ何も始まんねーよ。ま、頑張る所を間違ったら一気に落ちぶれるケド」

眼鏡「末恐ろしいことを言うな…」ゾクゾク

金髪「大学デビュー、イケイケなサークル参加、堂々パシリ化、無事友達ナシ」

眼鏡「うぉぉぉぉ…」

金髪「でも眼鏡は大丈夫っしょ」ニコ

眼鏡「え、なんで?」

金髪「なんでだと思う?」

眼鏡「……、う、うん…」テレ

金髪「くっくっくっ、素直な方が好まれるのは誰だってそーだろ」ニヤニヤ

眼鏡「…からかうなよ」

金髪「ねぇ眼鏡」ボソリ

眼鏡「うん?」

金髪「…大学、合格できたら良いな。一緒に」

眼鏡「……」ドキ

眼鏡「う、うん…そうだな…うん…」ポリポリ

金髪「ん…」テレ

眼鏡(うぉぉぉ、静まれ。我が鼓動、静寂だ。波紋なき水面の如き静けさで…)

金髪「んでさ、眼鏡」

眼鏡「うィッす!?」ビックゥゥウゥ

金髪「なんだその声」じぃー

眼鏡「な、なんでもない、で、何?」ブンブン

金髪「おう。今日はここに何しに来たワケ? フツーに買い物とか?」

眼鏡「………ぇと…」

金髪「ん?」

眼鏡「…色々と買いたいものが、ええ、あると言いますね、ええ…」ボソボソ

金髪「……」

金髪「…買いたいもの?」

眼鏡「う、うん」

金髪「誰に?」

眼鏡「誰に!? ほ、ホワイ!? 何故誰に!?」

金髪「自分用だとは絶対におもわねーからだよ」ジィー

眼鏡「…………プレゼントように」ダラダラダラ

金髪「友達じゃねぇよな」

眼鏡「と、友達にですよ?」

金髪「じゃあ女か」

眼鏡「え、ええ」コクコク

金髪「でも女の友達なんていねーだろ」

眼鏡「居るともさっ!? ぜーんぜん居るね、うん!」

金髪「そりゃ失礼なこと言ったな、じゃ誰だ?」

眼鏡「……」ダラダラ

金髪「名前は?」

眼鏡「……」

眼鏡「…イインチョですね、ハイ」

金髪「……」

眼鏡「う、うん?」

金髪「はぁ~……」グテー

金髪「気分削がれた、やる気なくなった、帰る」くるっ 

眼鏡「ま、待って! ホントに待って!」

金髪「……」ズンズンズン

眼鏡「色々と本気でっ、うん、ここに俺を置いて行かないで下さい…!」

金髪「……。はぁ」

眼鏡「無理無理、こんなおしゃれな所一人で居られないから…っ」

金髪「じゃあ訊くけど」

眼鏡「は、はいッ!」

金髪「なんで委員長にプレゼント?」

眼鏡「…参考書選びを手伝ってもらいました」

金髪「何時?」

眼鏡「一昨日の勉強会が無くなった時です!」

金髪「……。どうしてあたしを連れてきた?」

眼鏡「こ、ここに一人でこれる自信がなかったことと…」

眼鏡「…隠れて女の子のためにプレゼント買うのが、色々と、ダメかなと」ボソリ

金髪「………」じぃー

眼鏡「そ、それが全てです! ええ、本当に! …ハイ…」

金髪「そうか、わかった」コク

眼鏡「ほ、本当に?」

金髪「じゃあ帰るわ」クルッ

眼鏡「ちょー! ちょと、ちょっと待ってくれッ! 俺の話を聞いてくれ!」ガシッ

金髪「……」

眼鏡「だ、騙して連れてきたようで申し訳ない気持ちもあるし…本気で謝りたいと思ってる…っ」

眼鏡「でも! 頼れるのは金髪さんしか居なかったから、俺にとって気軽に喋れるのは金髪さんだけしか…」

金髪「……」

眼鏡「居ないからであって…つまりは、そう…」

眼鏡「──俺は金髪さんじゃないと駄目なんだ」

金髪「……」パッ

眼鏡「あ…」

金髪「眼鏡」

眼鏡「う、うん…」

金髪「あ、あんたね…ほんっと場所ってモンを考えて言いなよ…ッ」ぷるぷる

眼鏡「へっ?」


「クスクス」

「ねぇ聞いた? 今の…」

「凄いね、ドラマみたい」


眼鏡「だッ…がッ…!?」キョロキョロ

金髪「クッサイこと大好きなのは知ってるケドさ~ァ…!」カァァ

眼鏡「ご、ごめん…ナサイ…」カァァ

金髪「あーもうイイ! わかったわかった、とにかくここから出るよっ!」がしっ

眼鏡「お、おう」グイッ

金髪「んっとにさー! なんなんだよ全く…っ」ブツブツ

眼鏡「……ん…」テレ


~~~


金髪「ん。ここまで来れば、大丈夫か」ストン

眼鏡「……」

金髪「なに突っ立ってんの、早く座りなって」

眼鏡「ウ、ウッス」ストン

金髪「はぁ~疲れた…嫌になるよまったくさ…」

眼鏡「ご、ごめんな」

金髪「謝られても困るんですケド」ケッ

眼鏡「…なんでも奢る」

金髪「ハイ、じゃあ許しまーすとかなると思ってんの」

眼鏡「……」

金髪「全然ダメだ、腹の虫が収まらない。何度も言うケドそっこー帰りたい気分」

眼鏡「…どうして」

金髪「あン?」

眼鏡「ど、どうしてそんなに怒るんだ…?」

金髪「……」

眼鏡「……」チ、チラリ


「好きだから」ボソッ


眼鏡「んっ!?」



金髪「それが理由」

眼鏡「え、えと聞き間違いじゃなかったら今、」わたわた

金髪「何度だって言ってあげるよ」

金髪「…好きだから怒る、だからこんな嫌な気分になる」チラ

眼鏡「っ……そ、そうなんですか」カァァ

金髪「そう」フィ

眼鏡「そ、それは申し訳ないこと…したというか…スンマセン…」

金髪「……」

金髪「眼鏡はあたしのこと、好き?」

眼鏡「ふえええっ!?」ビクッ

金髪「好きかって訊いてンの」

眼鏡(い、いきなりそんなこと訊く!? 表情見えないから冗談なのかもわからん…ッ)ドッドッドッ

金髪「どうなの」

眼鏡「ううっ…えっと、その、まぁ…」

金髪「まあ?」

眼鏡「うぐッ!?」

金髪「そっか、それなら仕方ないか」ガタリ

眼鏡「あ…」

金髪「今日は帰る。明日また学校で」スタ

眼鏡「…っ…」


「す、好きだよ! 超大好き!」ガタッ


金髪「…っ…!」ビクッ

眼鏡「これでもかってす、好きだし!? 他の女子とか比べようもないぐらいラブリーだしッ!?」

眼鏡「ここ最近なんて好き過ぎて夢に出てきてヤバイもん! どうしようもなくなってるねまったく!?」カァァァ

眼鏡「だから大好きだ! うん!」

金髪「…眼鏡…」くる

眼鏡「う、うん!」


金髪「オマエ、殺すぞ…?」カァァァア


眼鏡「へェッ!?」

金髪「あのなァ…ほんっとにさァ…」ぷるぷる

クスクス スゴーイ なんかの撮影? ガヤガヤ


金髪「もう帰るっ!」バッ

眼鏡「だァー!? 本当にスミマセンでしたーっ!」

金髪「離せ離せ離せ他人、あんたとは他人だから!」ズンズンズン

眼鏡「本当にごめんなさいッ」

金髪「もうここで買い物なんて出来ないッ! 恥ずかしくて一生できないッ!」ポロポロ

眼鏡「え? 俺と一緒に来れば平気じゃない…?」

金髪「バカかお前はーッ!!」ブン

眼鏡「あぶッ!?」


~~~


眼鏡「…ということがありまして」

委員長「まあ」

眼鏡「ええ、スミマセン、お返しを送るのが遅れそうで…」

委員長「良いんだよ? そんなに気にしないでも、困るのは眼鏡くんでしょ?」

眼鏡「で、でも、結構参考書を選ぶのに手間をかけてくれたみたいだし…」

委員長「んーん、変に重く捉えないで欲しいな。単純に私が欲しかったこともあるし、」

委員長「それが貴方と金髪さん、二人の役に立つことなら別に平気だもの」ニコ

眼鏡(そ、それが大分俺にとって凄いことなんだけど…)ポリポリ

委員長「でも大丈夫? 凄く腫れちゃってるね、頬」ちょんちょん

眼鏡「あ痛っ!?」ズキン

委員長「わ! ご、ごめんなさいっ」

眼鏡「う、うん。大丈夫だから、ちょっとヒリヒリする程度だし」

委員長「にしても綺麗に腫れたね、すごい」

眼鏡「実に良いスナップだったからね…」

委員長「みたいだね」クスクス

眼鏡「………」

委員長「どうかしたの?」

眼鏡「うん、ちょっとね。金髪さんを怒らせちゃったなって、悪いことだと分かってたんだけど」

眼鏡「ああまで怒られるとは予想もつかなくてさ。駄目だな、やっぱり」ポリポリ

委員長「まあね。他の女の子のために買い物、そんなことに誘われたのかって怒られるのも当然だよ」

眼鏡「…ん」

委員長「買いに行くって知ってて止めなかった私も、私だけど」ニコニコ

眼鏡「い、いやいや」ブンブン

委員長「眼鏡くんは優しいね」

眼鏡「…っ…」ビクッ

委員長「うん?」

眼鏡「前に人に言われたことがあるんだけど、優しいだけじゃ駄目らしいよ、色々と」

委員長「うん。勿論そうだよ、だけど優しいのが眼鏡くんの取り柄みたいなものじゃないかな?」

眼鏡「…でも」

委員長「簡単に人の感性や、自己を変えることは難しいよ。高校生となれば安易に変われない」スッ

眼鏡「…っ」ビクッ

委員長「まだ私たちは子供だけど。お酒も飲めない小さな大人のなりかけだけどね、眼鏡くん」

委員長「──君の優しさは私にとって、十分、素敵なコトだって思えてる」ニコ

眼鏡「…それ、委員長がドSだったことを周りに言わなかったこと言ってる…?」

委員長「んふふ」ニマー

眼鏡「…ですよね、あれは単に怖かったからだし、言っても信用されないだろうってことだけで…」

いいねえ。こういうテンション。
あの人も雨の中、仕事頑張ってるだろうか。

眼鏡「それに、委員長は誰にも言わなかったと言うけどさ」チラ

委員長「うん? 言ってないんでしょ?」キョトン

眼鏡「…金髪さんはその事知ってたじゃん、だから優しさでも何でもないって」

委員長「くすくすくす」

眼鏡「な、なに? 何か変なこと言った?」

委員長「いや、言うんだなって思って、金髪さんがどうして知ってたのか…」

委員長「あたしがドSってコトね。最後までうやむやにするつもりなのかなって思ってたのに」クスクス

眼鏡「いや、何時か言おうって思ってたよ、うん」

委員長「強引に聞き出された?」ニマー

眼鏡「ううん、俺が言おうって思った。委員長こえーって、良い話題になるかもってさ」

委員長「こりゃ正直ものだ。私の事言ったとき笑ってたでしょう、金髪さん」

眼鏡「…爆笑だったよ、ごめん」

委員長「ふふ、だろーね。ま、全然いいけどね。多少は見破られてた感あったし、元からさ」カタン

眼鏡「怒ってない?」

委員長「怒るもんですか。バレてしまうようなことする私が悪い、教室でヤる私が悪いの」

眼鏡「…そっか」

委員長「……」じっ

眼鏡「…?」

委員長「やっぱり君は優しいよ、眼鏡くん」

眼鏡「な、なんでさ?」

委員長「素敵だと思う、そういうの高校生で持てるものじゃないよ、きっとね」

眼鏡「…話が見えないんだけど」

委員長「どうして今日は謝ってくれたの?」ニコ

眼鏡「え? だ、だからお礼を買いそびれたから、その事について謝ろうと…」

委員長「そうだね」コク

委員長「でも金髪さんはその事実を知ったら、もっと怒っちゃうよ?」

眼鏡「へっ?」

委員長「わからない? 金髪さんは怒ったんだよ、【私へのプレゼント】だから怒ったんだよ?」

眼鏡「………」

委員長「そこまで鈍感じゃないよね、君は。ちゃんと把握して今、ここに居る筈だ」ニマー

眼鏡「…それは」

委員長「けどそれを私は優しい人だって言ってあげる。怒らないし、貶したりもしない」

眼鏡「……」

委員長「それが眼鏡くんなんだよ、それが正しい眼鏡くんのあり方なんだよね」ガタリ

眼鏡「委員長…」

委員長「今になって悪い事してる気分になっちゃった?」ニマ

眼鏡「うっ…」

委員長「──放課後の教室、誰も居ない静かな場所で二人っきり」スタスタ

眼鏡「い、委員長?」

委員長「謝るには最高のシチュエーション、誰にも聞いてほしくないから選んだ時間帯」ボソ

眼鏡「っ…!?」ビクッ


「どうして怖くないの?」


眼鏡「だ、だってそれは…」

「襲われないと思った?」

眼鏡「い、いやいや! しないでしょ委員長は!」

「どうしてそう言い切れるのかな? 本当の私を知ってる、君なのに…」フゥー

眼鏡「っ~~~!?」ビクビク

「…こんなにも近づいちゃった」

眼鏡「い、委員長ぉ…?」


「あと少しで届いちゃうよ。ほら、もうちょっとで…」スッ


眼鏡「委員長ぉー!?」

委員長「はい、なんですか?」ニコ

眼鏡「ご、ご冗談はほどほどにお願いします…!!」

委員長「ふふっ、なにを?」

眼鏡「色々と…! あ、あんま女の子に耐性が無いもんで冗談の範疇がワカリマセンッ!」ダラダラダラ

委員長「少なくとも女の子は、冗談でここまで近づかないよ?」ニマー

眼鏡「委員長!」

委員長「ふふっ」クスクス

眼鏡「…本当にさぁ…」ガクリ

委員長「怒ってもいいんだよ? 全然構わないし、むしろ怒らせるように動いてるつもりなのに」

眼鏡「…だから言ったじゃんか、怒っていいのか分からないんだって」

委員長「優しいね、だから君はすぐに油断しちゃうんだろうなぁ」

眼鏡「どういう意味…?」

委員長「どんな相手でも信用しようと思ったら、二人っきりでも油断する…かな?」トントン

眼鏡「うっ」

委員長「普通は最初から、そんな展開を作らないよ。そういう雰囲気に持って行かないようにする」

委員長「でも君は信じちゃう。相手がしないと言ったから、そうなるきっかけを残してしまう」ニマー

眼鏡「…最低じゃない、それ?」

委員長「ううん、別に?」キョトン

眼鏡「委員長にとっては、だろ」

委員長「んふふー! なんだ分かってるじゃない、私のこと」ニママ

眼鏡「色々と知ってるからね…」

委員長「でも君は油断する」ぴっ

眼鏡「…う、うっす」コクコク

委員長「ダメだよー? こんな私なんだから、人のモノ奪って盗んで壊して悦ぶ人間なんだから!」

眼鏡「……そうだとしても」

委員長「うん?」

眼鏡「お、俺は委員長を信じるよ。信じたい、って思ってる」ボソリ

委員長「……」

委員長「それは、どうして?」

眼鏡「なんつーか、変な理由だけどさ」ポリポリ

委員長「うん、何?」ニコ

眼鏡「悪い子じゃないなぁ~とか、別に嫌な子じゃないよなっとかさ」

眼鏡「嫌いになることもない、信用出来ないと思ってても信じたいって思える人」

眼鏡「と言った感じは多少あるけど、本当の意味では、」


眼鏡「まぁ、つまりは、懺悔してるっつーかね」


委員長「…懺悔?」

眼鏡「う、うん。委員長は俺にとって恐怖の対象源だった、マジで恐ろしくて死ぬほど怖かった」

眼鏡「でもさ、その怖い理由を知っちゃったら逆に、あぁ申し訳ない態度を取っちまったなと思えてきて…」

委員長「……」

眼鏡「多分、色んな人にも理由があるんだよな。怖い理由が、近づけない雰囲気の理由が」

委員長「かもね」

眼鏡「でも知った後だと単純に怖がれない。だから、委員長相手だとどうしても、強く出れない」

委員長「同情してるの?」

眼鏡「いやいやっ! むしろ尊敬してるんだこれでもっ!」ブンブンブン

眼鏡「──……俺、凄く弱いやつなんだ。だから、強い意志を持ってる人がかっこよく見える」

委員長「……」

眼鏡「怖い理由に相当の覚悟があった」

眼鏡「例え認められないものでも、やり通そうって覚悟がある人は凄いと思える」

委員長「…それは、」

眼鏡「あ、うん? 何?」

委員長「本当の私を知る前。ただのクラスメイトとして好きになったときも、感じた?」

眼鏡「え”ッ!?」

委員長「嫌なら良いんだ、答えなくても」ニコ

眼鏡「……か、感じたよ。だからす、…スキになったと思う」カァァ

委員長「こらこら照れないの。脈あるのかと思っちゃうから、ブ~だよ?」

眼鏡「スンマセン」

委員長「ふぅ。そっか、ありがとう色々と教えてくれて」ニコ

眼鏡「い、いや、俺の方こそ色々と言っちゃって…」

委員長「んーん、大丈夫」

眼鏡「…そっか」

委員長「でもアレだなぁ、やっぱりお返しが欲しくなってきちゃったかも」

眼鏡「へ?」

委員長「だって謝りたいんでしょ? 過去に怖がってしまったことについてさ」ニマー

眼鏡「そ、そうだけど。それとコレは別の感じじゃなかったか、今の会話…」

委員長「ぜーんぜん、私は一緒だと思うけどなぁ」ニマニマ

眼鏡「ええー…」

委員長「だからね、眼鏡くん。待ってるよ私、ちゃんとね」クス

眼鏡「え、何を?」

委員長「君の覚悟を、君が選ぶ最高の選択だよ」ぴっ

眼鏡「ふむぐっ」

委員長「どんなに苦しくても、どんなに大変でも今は悩んで答えを出さなくちゃダメな時」

委員長「眼鏡くんは考え続けなきゃいけない。そして答えを、どんなに醜くて最低な答えだとしてもね」

眼鏡「………」ドキ

委員長「でも、そんな最低でダメで最悪な答えでも──私は信じてあげるよ」スッ

委員長「おめでとう。貴方は無事、此方側の人間に晴れて成れました! ってね」ニマ

眼鏡「…委員長…」

委員長「答えは君次第! もう始まってるんだよ、とっくに【君の奪い合い】はね」

眼鏡「…っ」ビクッ

委員長「だから敢えて君に伝えておこうと思う」


委員長「安易に二人きりになるようにしないで、今度こそ襲っちゃうよ?」


眼鏡「…、もしかして参考書買いに行った時もやばかった感じ…?」

委員長「あそこ書店、ホテル街近いの知ってた?」ニマー

眼鏡「き、肝に銘じます!!」

委員長「はぁーあ、なんら疑いもなく着いて来たから毒気が抜けてね~」

眼鏡「わかりました! ほんっとスンマセンした!」コクコク

委員長「分かればよろしい。では、次なる一手を考えるだけだね、うんうん」

眼鏡「ちゅ、忠告したのにまだ何かするつもりなのか…っ?」

委員長「ふふ、嫌っても良いよ?」

眼鏡「…っ…」ビクッ

委員長「それに金髪さんをちゃんと選んでいい、むしろせーかいだね」

委員長「でもね、正解が何時だって正しい訳じゃないよね?」

眼鏡「…ぇ…」


委員長「【優しい】【優しい】、眼鏡くん?」ニマッ


眼鏡「…………」

委員長「ふふふ」

眼鏡「…俺は、どうしたら良いんだろうな本当に」ギュッ

委員長「そうだね。見つけないとね、一番の答えを」

眼鏡「…ああ、そうだ答えを見つけないと」

委員長「応援してるよ、心から」

眼鏡「……」

委員長「私は何時だって正直な自分で、貴方の前に居てあげる」

委員長「貴方はこれから沢山のことを天秤にかけなくちゃいけない」

委員長「良いことだから、良い。悪いことだから、駄目」

委員長「…そんな価値観がめちゃくちゃになるぐらいに、沢山のモノを」

委員長「けれどその中で私一人、私だけはきっと貴方の【中心】で居てあげる」スッ


委員長「──いっぱいいっぱいモテちゃってる眼鏡くん、私はスキだよ」ボソ


眼鏡「……っ…」

委員長「それじゃあ今日は帰るね、また学校で」スッ

眼鏡「俺は…っ」

委員長「…」ピタ

眼鏡「…俺は最低な奴かな」

委員長「最低だよ」

眼鏡「…だよな」

委員長「最低で優柔不断で、一人の女の子が良いと断言できない人だと思う」

委員長「──貴方の好きって言葉は、本当は軽いかもしれないね」

眼鏡「…ッ…」

委員長「でもお互い様なんだよ」


ガラリ


眼鏡「え…?」

委員長「皆皆、誰だって他人を一番にしない。自分を一番にする、それが当然のこと」

眼鏡「それはどういう…」

委員長「私も、そして金髪さんも。そしてあの子も」

委員長「まだ子供だもん。自由に生きていっぱい恋をして、沢山傷つけ合うんだ」

眼鏡「委員長…?」

委員長「あぁ、ごめんね。変に喋ろうとすると説教臭くなっちゃう、うんうん、単純に言えばよかった」


「……誰もが幸せな、そんなハーレムってあり得ると思う?」


眼鏡「…へ…?」

委員長「またね」フリフリ

ここまで来たらハーレムルートはあんま見たくないな

眼鏡「いいんちょ、」


ガラリ ピシャ


眼鏡「…皆、自分が一番か」

眼鏡(否定なんて出来無い。元から金髪さんを奪うと決めたあの日から、俺は最低な奴だ)

眼鏡「例え相手に認められたものだったとしても…」

眼鏡(諦めるべきだったのか? 彼女の恋を見ないふりして、飛び付いてしまえばよかったか?)

眼鏡「馬鹿か…」

眼鏡(惚れっぽいとしても、長続きしない。そんなの、ごめんだ…俺が好きなのは…ずっとずっと…)




委員長「ふぅ」

委員長「なーんか優しくなりすぎてるなぁ、私」すたすた

委員長「あんな眼鏡とか、あんなオタクとか、あーんなフツメンギリギリな奴に何やってんだろ」

 ゾクゾク

委員長「まぁ、好きだから仕方ないか。本気にもなるよね、うんうん」

委員長「ふふっ、だあい好きだよお~眼鏡くぅん…」ニマニマ


スタスタ スタッ スタッ  ぴょんぴょん!


委員長「ふんふーん♪」ドキドキ


~~~


眼鏡「…なんでお前が居る」

友「友が故にな」こくこく

眼鏡「先に帰ってると思ってたぞ、雨降ってるし」バサッ

友「待ってた」

眼鏡「…俺を?」

友「他にいると?」

眼鏡「居ねぇか」スタ

友「ん」ひょい

眼鏡「ちょ、コラ! お前傘はっ?」

友「今見つけた」チョンチョン

眼鏡「そりゃ俺の傘だろ!」

友「…入る?」テレ

眼鏡「なぜ照れる、つかさ、お前ひさっしぶりに話しかけてきやがったなオイ」

友「気にしててくれたの?」キョトン

眼鏡「き、気にするわッ! あの日、あの食堂で言い放った時からずっと無視してくれやがって…!」

友「話しかけづらかった、と思われ」スッ

眼鏡「なに?」

友「困ると思った。眼鏡ちんに我から話しかけたら、嫌だと思ったから」シュン

眼鏡「いやな、放って置かれる方がかえって困るからな…? あれだけのこと言っておいてさ、うん」

友「これからは大丈夫?」

眼鏡「大丈夫かどうかは、まぁわからん。金髪さんがすっげー嫌そうにしてるけど…」

友「あ。それはモーマンタイ、我超平気」フンスー

眼鏡「お前なぁ…」

友「嫌われる方が慣れてる。好まれたほうが、苦手」

眼鏡「……、悲しいこと言うなよ」

友「それが我よ」フンススゥ

眼鏡「そーかい、嫌われて良いなら話しかけてこい」

友「黙れ小僧ッ! お前に我を守れるかッ!」しゃー!

眼鏡「守らん」ぐいっ

友「えー」

眼鏡「…だが、まぁ、一緒に帰るぐらいは許して貰えるだろ」

友「……」

眼鏡「……なんだ見つめるなよ、どうした」

友「なんでもないよ」ふるふる

眼鏡「そうか、じゃあ入れ」

友「相合傘いやじゃない?」

眼鏡「イヤじゃない。気にするな」

友「そか」

眼鏡「おう」

~~~

友「今日は眼鏡ちんやさしい」コクコク

眼鏡「俺は何時だって優しい男だろ」

友「そうなの?」

眼鏡「巷で有名だな」

友「我のトモダチやべーな」

眼鏡「ああ、やばい」

友「でも今日はもーっとやさしいですな」コクコク

眼鏡「…傘に入れて貰ったことが?」

友「一理ある」

眼鏡「なんだ一理って、じゃあ答えはなんだよ」

友「我のこと嫌いになってないから」

眼鏡「…気にするな」

友「気にする」

眼鏡「忘れろ。俺も忘れるから、それが一番だろ」

友「忘れない、忘れたくない」

眼鏡「駄目だ、忘れろ。委員長にも金髪さんにも一緒に謝ってやるから」

友「……」じっ

眼鏡「…あれは冗談だったって言えば済む話だ」

友「冗談だと思ってる?」

眼鏡「……」

友「じゃあ駄目なことだと思ってる?」

眼鏡「ああ、思ってる」

友「そか」コク

友「なら良い。ありがと」ニヨニヨ

眼鏡「わかってないな、お前は…」

友「わかってるよ?」

眼鏡「いや分かってないね、全然わかってない」

友「眼鏡ちんよりはわかってるつもり」

眼鏡「ッ……お前は一体何がしたいんだよッ!!」ばっ!

ヒラリ カタン ザァアアアア…


友「眼鏡ちん?」

眼鏡「はぁッ…はぁッ…俺はちゃんと考えてた、なのにお前が滅茶苦茶に…ッ」

友「……」

眼鏡「はぁ…はぁー…すまん、ごめん、マジですまない」スッ

友「ん」

眼鏡「何を言ってるんだ俺は、違う、気にするな」ふるふる

友「ごめんなさい」ペコ

眼鏡「…良いってば」

友「土下座でも何でもする、ごめんなさい本当に」

眼鏡「おい、やめろって、しなくていいから!」グイッ


ザァァァァ…


友「しなくていいの?」キョトン

眼鏡「意外そうな顔するなよ、つか、土下座はやめてくれ…」

友「ん」コクリ

眼鏡「…わかってくれたか」

友「わかってるし、最初から知ってた」スタスタ

眼鏡「…え?」

友「眼鏡ちんがこうなるって」ヒョイ

眼鏡「ど、どういう意味だ?」

友「……」スッ

眼鏡「友…?」

友「つらい? たいへん? もうこんなのいやだ?」

眼鏡「…っ…」

友「こうなるならモテないほうが良かった?」

眼鏡「…かもな」

友「眼鏡ちんは超優しいって知ってる」コクコク

友「…知ってたからトモダチなれたんだもん」

眼鏡「ん…」

友「でもオトコなら一度は体験したいコト」ニヨニヨ

眼鏡「バカ言え。例え二次元で羨ましいと思えても、リアルじゃ笑えてくるぐらい大変だ…」

友「我わからんよ?」

眼鏡「そーいうモンなの!」

友「了解した」ビシッ

眼鏡「んで、何が言いたいんだお前は…」

友「暗い話はしたくない、そーいうのいいんちょ向きだから」コクコク

眼鏡「ま、まさかお前…聞いてたのか…?」

友「ザ・気配消し!」ムフー

眼鏡(とことん覗き見、聞き耳に縁のある人だな委員長…)

友「とりま、我が言いたいのはひとつだけ」

眼鏡「な、なんだよ」

友「いっつはーれむ」フンスー!

眼鏡「走って逃げて帰るぞ、お前をここに置いて」

友「全力で追いかけるよ?」

眼鏡「…じゃ逃げない、耳塞ぐ」パシン

友「じゃ傘を放す」ぱっ


ザァァァァ…


眼鏡「……」

友「二人このまま風邪を引く」コクコク

眼鏡「わかった、降参ッ! ハイハイ降参しました、話だけ聞きますともッ!」ヒョイ

友「うむ!」

眼鏡「…なんだよ友、あんまり馬鹿げた話はしないでくれ」

友「夢物語にするのか現実にするのか眼鏡ちん、貴方次第ですわよ」

眼鏡「……」

友「我、出来ると思う。ハーレム、皆幸せ超らぶはっぴー」

眼鏡「出来無い」

友「なぜ?」

眼鏡「みんな自分が一番だからだ。自分一人幸せになりたい、そう望んでる」

友「へー」

眼鏡「お、お前もそうだろーが」

友「うん」コク

眼鏡「…だろうが」

友「でも嫌じゃないから多分、やっちゃ駄目だと思う」

眼鏡「はい?」

友「一人だけ幸せ。超欲しいけどそれは駄目なことじゃない」

眼鏡「お前ね、いやに自信たっぷりに言うけどさ…」

友「好き」

眼鏡「…へ?」

友「眼鏡ちん好きよ? 大好き、らぶゆーちゅっちゅっ」

眼鏡「おまっ」

友「それに巨乳のお姉様付いてくるよ?」

眼鏡「い、いらないですぅー! アホか! ばーかばーか!」

友「ヘタレ…」

眼鏡「常識的に言ってんだよッ! こっちは!」

友「最初から無い。我を選ぶなら全て非常識」コクコク

眼鏡「だから…!」

友「怖いなら逃げればいい」

眼鏡「…ぇ…」

友「嫌なら来ればいい。我のもとに、我とお姉様の元に」

友「辛くなったら許しを請いに、静寂を欲しに、酒池肉林を求めに」


友「全てを忘れて、捨て去って、それでも姉弟は待ってる」


眼鏡「……、お前」

友「ほら迷った」フススゥ

眼鏡「うぐゥ!」

友「我が選ばれる未来もあり得る。超嬉しい、でも嬉しいから選んじゃダメ」

眼鏡「なんだよそれ…」

友「微妙に辛くて嫌なこと。大変故に返ってくる幸せも大変美味、そんな展開がある」

眼鏡「はぁ、それがハーレムって…?」

友「一番ダメ、だからイイ」

眼鏡「お前はさ、本当に凄いと思うよ。なにがどうなってるんだ頭のなかは」

友「眼鏡ちんのことが沢山つまってる?」

眼鏡「ど、堂々言える神経がどーなってるか知りたいんだっての!」

友「何も難しい話してない」コクコク

眼鏡「十分伝わってるけど…あのな、無理なモンは無理なんだよ」

友「ん」

眼鏡「ハーレムなんて三次元じゃ無理。みんな素直に割り切れない、許されないことだ」

眼鏡「…大人になったらもしかしたら、んな関係もあったりするやもしれん」

友「漫画の読みすぎ」

眼鏡「お前が言うかね!? た、確かにその通り、リアルじゃあり得ない、やっちゃいけない」

友「……」

眼鏡「例え大人になってもだ! だから、お前は良いと捉えても……皆が駄目だ、許さないって」

友「眼鏡ちんも? ハーレムはやっちゃだめって思う?」

眼鏡「…お、男だ。そりゃ経験してみたいなぁとは、思う」ボソボソ

友「うむうむ」

眼鏡「でもリアルじゃ只のアホだろ。我儘過ぎる、何時か殺されても仕方ない」

友「我の好物知ってる?」

眼鏡「…なんだ突然」

友「言ってみ」

眼鏡「…唐揚げ? 鶏関係?」

友「イグザクトリー」

友「我、チキン超好き。愛してやまない」フンスゥ

眼鏡「そ、それが?」

友「眼鏡ちん超チキン」びしっ

眼鏡「やまかしいわ!」

友「だから超すき…」テレテレ

眼鏡「はぁッ!? なんだそりゃ、いやまて、なんか一番その発言が腹が立つかも知れん…!」ピクピクッ

友「チキン具合がハーレム作るのに向いてる、超ベリーグット」ぐっ

眼鏡「あのなぁ…ッ」

友「眼鏡ちんは金髪つぁんが大好き」ニコ

眼鏡「──……なんだよ、急に」

友「我も知ってるしいいんちょも知ってる」コクコク

友「一番すき、今も金髪つぁんがトップだと思われ」

眼鏡「…それが?」

友「本当に一番すき? 聞いてみたかった、眼鏡ちんに」

眼鏡「……」

眼鏡「…好き、だよ」ポリポリ

友「そか」ニコ

眼鏡「ん…」

友「じゃあ訊ける?」

眼鏡「え?」


友「───金髪つぁんに、自分が一番すきか訊ける?」

眼鏡「…………」

友「教えてみ」ホレホレ

眼鏡「……ぁ…」ビクッ

友「くす」


「ほらチキンだ」ボソ


眼鏡「っ…!」

友「我は好きよ、眼鏡ちんのこと」

眼鏡「…言うなって」

友「んーん、言う」

友「一番すき。誰に訊かれてもそう答える、それにいいんちょも」コクコク

眼鏡「……」

友「でも金髪つぁんはわかんね」

眼鏡「……」

友「だからハーレム。怒らせたくないなら、逆に怒らせる。眼鏡ちんに興味をもっともっと引き付ける」

眼鏡「…ぇ…あ…それで、ハーレム?」

友「という建前」コク

眼鏡「………」ズーン

友「でもハッキリ出来るよ、眼鏡ちん」

眼鏡「なにがだよ…」

友「好きか嫌いか、駄目か良いか、すべてひっくるめてバッチリ幸せ」

眼鏡「極論だな、相変わらず」

友「それが我! 眼鏡ちんのトモダチ!」

眼鏡「…は、馬鹿だろお前」

友「でも幸せ! なにが駄目?」


友「むしろ駄目だから超イイコト! ばっちしオーケー!」


眼鏡「……」

友「てのが我の提案、うん、断っていいよ?」

眼鏡「言い切った後にそれかよ、いやまぁ、お前らしいけどさ」

友「選ぶのは眼鏡ちん」

眼鏡「…ちゃんと選ぶって」

友「どんな答えでも我、ずっとトモダチ……」

眼鏡「うん?」

友「……でありたい、です」

眼鏡「……」

友「こ、断っていいよ」

眼鏡「そう怯えるなってば。うん、俺は別に気にしない」

眼鏡「確かにハッキリ訊けないよ、金髪さんに俺が一番好きかって」


(だってそれは俺の頑張りだから、好きな彼女の為だから)


眼鏡「…今はそれが良い、訊かないほうが十分なんだって」

友「……」

眼鏡「優柔不断だよな。こんな──気持ちなら訊けばすっきりするのに、でも駄目だ」

眼鏡「怖い。本当にチキンだ、最初から知ってるのに言葉にして知るのが…凄く怖い」

友「…好きだから?」

眼鏡「好きだから。俺が好きになった彼女は、違う人のために頑張る姿だった」

眼鏡「…でも届きそうだと思った、その瞬間、彼女の何もかもが欲しくなってしまった」ズキン

友「ん」

眼鏡「馬鹿だな、ガキすぎる。金髪さんに言い切ったあの時の俺に、謝りたい」ギュッ

友「……」

眼鏡「すると周りの人達がやけに俺に優しくしてくれる。弱みを見せてくれたり、仲良くなったり」

眼鏡「かっこいいなと思ったりした。あーこれじゃ好きになっちゃうな、とかさ」

友「我も?」

眼鏡「…お前もだ、はっきりと俺に対する気持ちを言ってくれた。それはカッコ良かったよ」

友「ん…」テレテレ

眼鏡「あ~……」

眼鏡「なんだろうな、ははっ、意味が分からん。俺、こんなにも馬鹿だったっけ?」

眼鏡「面目ねぇー……俺、ちょっと情けなさに泣きそうだわ、なにやってんだろ、だぁー……」

友「………」

眼鏡「好きになるって、こんなにも面倒だったっけか……」スタスタ


ザァァァァ…


眼鏡「…今の俺じゃ、友に対してなんの約束も出来ねえよ、守れる自信がない」

友「そか」

眼鏡「だから言えない。気にすることも出来ない、滅茶苦茶だ」

友「うん」

眼鏡「…ハーレムか」

友「……」

眼鏡「友。お前の言うハーレムになれば、こんな気持もスッキリ出来んの?」

友「出来る」コク

眼鏡「誰もが悩まずに? 誰ひとりとして辛くならずに?」

友「それは無理」

友「…けど皆でそれを乗り越える」

眼鏡「ははっ、そりゃけったいな事で…」

眼鏡(まるで夢物語だ…誰もが他人を信じて、大丈夫だって自分に言い聞かせる…)

眼鏡「みんな辛けりゃ、辛くないってか」

友「少なくとも我はそう出来る」

眼鏡「…凄いな、お前」

友「凄くない」

友「…そう信じさせてくれた眼鏡ちんが凄い」

眼鏡「神かよ、俺って」

友「ひとりぼっちだった我を救ってくれた。なら神で良い」コクコク

眼鏡「そりゃどーも…」スタスタ

友「ど、どこ行くの?」わたわた

眼鏡「帰る」スタスタ

友「か、傘はっ?」

眼鏡「使っていい。明日帰してくれ、濡れて帰りたい」

友「……」

眼鏡「またな、友」フリ

友「…ん…」フリフリ

眼鏡「……」ニコ


ザァァァァ…


友「眼鏡ちん…」


友(くっさいセリフ吐いて帰った、超かっこええ……)キラキラキラキラ



~~~


金髪「んで何、それが理由?」

友「ん」コク

金髪「あいつバカなんだな…」

友「あの背中は忘れられない、超クールだった」フンスゥ

金髪「あんたも馬鹿だな、ゲイだし」

友「違うのよ? 男好きノン、眼鏡ちん好きラブ!」

金髪「あぁ? それがキモいって何度言えば分かるワケ?」

友「イイヨーゾクゾクするよー」ニヨニヨ

金髪「ああッ!?」

委員長「ハイハイハイ、喧嘩はそれまで」パンパン

金髪「コイツ絶対にあたしのこと馬鹿にしてンだろ…ッ」

友「嫌いよ? でも好きー!」

委員長「良いから大人しく、事情を知ってるの友くんだけなんだから」

金髪「…んでどーすんの」

委員長「お見舞い行かないの? 彼、風を引いちゃったんでしょ?」

友「眼鏡ちんの家を知ってるの、我だけ?」

金髪「あたしは知んない」

委員長「んー、知らないなぁ」

友「じゃあ行こう、みんなでゴーですな」フンスゥ

金髪「住所だけ教えろ、二人だけで行く」

友「…いつからそんな仲良くなったいいんちょ?」キョトン

委員長「どーだろ?」ニマー

金髪「チッ」

友「皆で行ったほうがよろしくないですかな?」

金髪「…自分一人だけで行くって、そう思わなかったワケ?」

友「それじゃ意味がないですよね?」

金髪「……………」プルプル

委員長「はいはーい! わかりました、じゃあ今日は三人で行っちゃおー!」

友「おぉー!」

金髪「…ちょっと」

委員長「ん?」

金髪「それでイイのか委員長は、アイツ絶対に良からぬこと考えてんぞ…!?」ボソボソ

友「?」

委員長「良いも悪いも、友くんが教えてくれなきゃ見舞いにも行けなかったんだよ?」

金髪「うっ…」

委員長「行きたくないのかなー? 眼鏡くんの家、どんな感じなのか知りたくないのかなー?」ニマニマ

金髪「…あんたさァ」

委員長「そんなに怖い? 眼鏡くんを取られるかもってさ」

金髪「何?」

委員長「彼を嫌うのは、そういうことでしょ? 貴女は趣味や価値観で人は嫌わない、そう私は思ってるけれど?」

金髪「……」

委員長「【私】の意見だから真に受けないていいよ」クスクス

金髪「…大した度胸だよ、ほんっとに」くるっ

金髪「おい友」

友「友ちんで結構よ」

金髪「やっぱ嫌いだわコイツ!」バッ

委員長「ま、まーまー落ち着いてー」

金髪「うぬぐぐ、はぁ~…わかったから眼鏡の家に行くよ、三人でさ」ガックシ

友「いえすっ!」

委員長「それじゃあ、途中で買い物してからレッツゴーだね!」

~~~

どう転がる

友「ここよ」コクコク

委員長「普通のお宅だね」ガサリ

金髪「どーでも良いけど、あんたそれ全部お見舞い品なワケ?」

委員長「え? こういうのは沢山あったほうが喜ぶかなって…」

金髪「恩着せがましく感じる」

委員長「ウッソ!」

友「こんちわー」ピンポーン ピンポーン

委員長「ま、待って友くん! 私ちょっと色々と不安になってきてる…!!」

金髪「今からごちゃごちゃ考えても仕方ないっしょ、諦めろ」

委員長「うぅ~っ」

友「……」ピンポーン

友「んー…」ガサガサ

金髪「なに勝手に人んちのポスト漁くってんだ…」

友「キー発見」ピカリン

金髪「おまっ!?」

委員長「わーすごい」パチパチ

金髪「何が凄いんだよ…立派な不法侵入だろ…」

友「おじゃましまーす」ガチャ

金髪「だぁーッ!? ほんっとお前は勝手だよな!? オイって!」

委員長「ま、待ってみんな…! 荷物が意外と重いから! 早く歩けないよ!」


~~~


友「居ない。部屋かも」

金髪「二階?」

友「うむ。兄様の隣の部屋」コクコク

金髪「へぇー兄貴居るんだ、知らなかったわ」トントントン

友「……」じぃー

金髪「な、なんだよ。あんたも早く上がって来いって」

友「ごちゃごちゃ言うには慣れるの早い、不法侵入なのに」じぃー

金髪「うっせ! 良いから早く会いに行くぞ、会っちまえば不法侵入にならん」ズンズン

友「アイヨーアルヨー」トントントン

金髪「えーっと、ここ?」

友「そこ」コク

委員長「だ、だからみんな早いってば…はぁ…はぁ…」

金髪「おーい、眼鏡ぇーみんなでお見舞い来てやったぞー」コンコンコン

友「…」

金髪「出ないな、寝てる?」

委員長「ふぃー…もう開けちゃえば?」

金髪「ばっか、もし盛ってたらどうするんだよ」

友「ありえる」コクコク

金髪「だろ? ヘッドホンしてパソコンを前に、こう、こう、だよな?」シュッシュッ

友「眼鏡ちん左利き派」コクコク

金髪「ひだりききは?」キョトン

友「右より左が嫁」

委員長「色々と言い合う割に仲いいよねあなた達…」

金髪「アッハッハッハ! やべッ、ツボった! なにそれ、んなのあるわけ…っ!?」プルプル

友「冗談よ?」

金髪「そーだったとしてもだ、くっくっくっ、やべぇ想像したら笑けてくるわ…!」

委員長「もういいよ、私が勝手に開けちゃうからね」コンコン

委員長「──眼鏡くん? 委員長だけど、ドアを開けるね」ガチャ


キィ…


委員長「おじゃましまーす…」ソロリ

金髪「オナってる姿見る気マンマンな開け方だ」ニヤニヤ

委員長「ち、違うよ! 寝てるかもしれないからだよ!」カー

友「ビッチ見せかけてムッツリ?」

委員長「どういうこと友くん!?」

金髪「おっ? なんだ普通にベッドで寝てんじゃん、ほら」

友「眼鏡ちーん」トテトテ

委員長「…あれ? なんか膨らみがおかしくないかな?」

金髪「え?」

友「……」

委員長「あ」



眼鏡「う、うーんッ」ダクダクダク

友姉「すやすや…」



金髪「この人…だ、誰ですか…?」フルフル…

委員長「誰だろう? もしや眼鏡君の彼女だったり?」

金髪「ふぇっ!?」ビクッ

友「我の姉」

金髪「…姉貴? え、なんでじゃあ寝てんの? 一緒に?」

委員長「お姉さんなの?」

友「……」ズシャッ

友「ふらいんぐぷれーすっ」トン! 

友姉「すや──ふがぁごォッ!?」ドスンッッ

友姉「なにっ!? えっ!? なにが起こっちゃったの!?」

友「なにをしてる」

友姉「…あー……」

友「しかもそれ我のカツラ、我のコスプレ、我の格好!」ゴゴゴゴゴゴゴ

友姉「いやねっ? 違うのよ、色々と説明しなきゃ行けないことあってね?」チラリ


金髪「わ、マジで姉貴さんだわ」

委員長「………」じぃー


友姉「あー…あ! も、もしかしてみんなこれから乱」

友「フン!!」ドスッ

友姉「あ痛っ!? やめて弟よ、脇腹は弱いのひぃんッ!?」ビクン

~~~~

友姉「スミマセンデシタ」

金髪「リアルで土下座する人はじめて見た…」

友「ここでなにしてた」フンスー

友姉「お見舞いを頼まれましてね、ええ、ハイ」

委員長「誰にですか?」

友姉「眼鏡君の兄貴ね、一緒の大学なのよ」タハー

金髪「うそくせぇ…」

友姉「いやマジでマジで! 嘘言ってないよ? 冗談じゃなく引くぐらい弟ラブな兄貴なの!」

委員長「ほんと?」チラリ

友「ほんと」コク

友姉「よ、用事がある兄貴の為に私が頼まれたってことなのさ! 確認とっても良いよ!」


金髪「じゃあ何でコスプレしてんスか…?」

委員長「それと何で一緒に寝てたんですか?」

友「我のコスプレどうやって見つけた? 隠してたのに!」


友姉「ほぁー! だめ、駄目よ! 一気に聞いちゃお姉さん頭悪いんだから! 1つずつにして!」

友「もう一生お姉様なんて呼んであげない」ムッスリ

金髪「…普段お姉様とか呼ばせてるんスか…?」ドンビキ

委員長「えぇ…」

友姉「君たちさ、初めて会った時と変わって全く容赦無いよね! 理由はわかるけどさ!」


眼鏡「うっ…ううん…」


友「……。なんでコスプレ?」

友姉「ほ、ほら眼鏡君お姉ちゃんのこと苦手だからさ、パッと見気づかれないような格好したの」

友「なんで一緒寝てた」

友姉「…ノリで?」

友「フン!」ズン

友姉「ひぅっ!」

金髪「はぁ~~~~………」

金髪「もういい、なんか色々と疲れた、帰るわ」くる

委員長「え、帰っちゃうのっ?」

金髪「これ渡しておいて、別にあたしの名前を出さなくてもいいから」グイッ

委員長「で、でも」チラリ

友「帰ってもいい? 後悔ない?」

金髪「なんの? あたしは単にお見舞いをしに来ただけだしな」

友「でも眼鏡ちん寝てる」

金髪「……」

金髪「一つ言っとくケド、あたしはやらないからね」

友「?」

金髪「あんたが望んでる、眼鏡の取り合いみたいなコトだよ」チラ

友「……」

金髪「数週間前に、あんたが食堂で言ったことは冗談だと笑って済ませてやる」

友「英語で分かってなかったのに?」

金髪「そ、そうだったとしてもだよ!」

友「む」

金髪「面倒くせえ風にゴチャゴチャにすんな。眼鏡は眼鏡で、ちゃんと考えてる」

委員長「……」

金髪「つまりはそう、ハーレムだが何だか知らねーけど、あたしを巻き込むんじゃないって話」スッ

友「………」

金髪「あと委員長、あんたもそれでいいワケ?」

委員長「……」ピクッ

金髪「今の状況が望んでた【不正解】だって言うなら文句もねえよ」

金髪「でも一つ言わせてもらうなら、あたしは違うと思う」キィ


パタン


友「……」

委員長「……」


友姉「若いねー」ポヤポヤ

友「黙ってて、お姉様」

友姉「いや若いよ、素晴らしいね。見ててきゅんきゅん来るよ、青臭さにさぁ」

委員長「…じゃあ何が正解だと言うんですか」

友姉「んー?」

委員長「…いえ、すみません」

友姉「元から正解じゃないんだから、結局終わりも正解じゃないんじゃないの?」ニコ

委員長「……」

友姉「ま、君みたいな娘は端から知ってて動いてそうな感じするけどね」

友姉「実にオタサーの姫向きだ。場の中心、空気の掌握、雰囲気操作、どれもバッチ来いじゃない?」

委員長「…わかりますか?」

友姉「私は年上だもん。君より経験がある、沢山ね」

委員長「じゃあ聞かせて下さい。経験豊富なお高く止まってるお姉さんならわかると思われますが」

友姉「おうよ、どんと来い」

委員長「……」

委員長「この状況で一番最低なのは誰ですか?」

友姉「えー? そんなの分かりきってることじゃん、誰だってわかるさ」

友姉「──全部全部、はっきりとさせない【今出て行った】……」


眼鏡「う、うーん…? ほぁ!? あれ!? なんで皆居るんだッ!?」ビクーン

友「あ、起きた」

眼鏡「お前……お前だな! 絶対にポストから鍵を拾っただろ!?」

友「いつも通り」コクコク

眼鏡「何がいつも通りだよ……はぅあッ!? い、委員長まで!?」

委員長「おはよー」フリフリ

眼鏡「その荷物もしかしてお見舞いに…?」

委員長「うんっ」ニコ

眼鏡「そ、そうなんだ…ありがと…」テレ

眼鏡「あと、どうしてお姉さん居るんですか?」スッ

友姉「綺麗に表情使い分けるねーお姉さん泣いちゃうぞー?」ニコニコ

眼鏡「あ、待って。記憶が曖昧だけど確か、家に上がらせた人が居た気が…」

友姉「それ、コスプレしたお姉ちゃんだよ?」

眼鏡「あんた何やってんだ!?」

委員長「それよりも眼鏡くん、ちょっと良いかな」スッ

眼鏡「え、なにっ? ふぃっ!?」ビクッ

委員長「んー」ピト

眼鏡「っ~~~~…!」プシュー

委員長「熱は下がってるかな、顔は赤いけど」ニマー

友姉(あざといね、同姓に嫌われるタイプだ)ヒソヒソ

友(それがいいんちょの持ち味)ヒソヒソ

委員長「聞こえてますよー?」

眼鏡「…も、もう一度訊くけど…本当にお見舞いに来てくれた感じ…?」

委員長「風邪を引いたって聞いちゃったからね」ニコ

眼鏡「そ、そっか」テレテレ

委員長「こーいうのは眼鏡くん的に高ポイントな感じかな?」ニコニコ

眼鏡「うーんッ? ど、どーだろなァー?」

委員長「顔に出てるよね、相変わらず」にまにま

眼鏡「うぅっ…からかわないでくれ…ッ」

友「眼鏡ちん果物いる?」

眼鏡「わ、お前も買ってきてくれたのか…?」

友「こっちが眼鏡ちんバナナで、これが我のバナナ」

眼鏡「…ド下ネタに言葉が出ないんだが…」

友「想像力豊ね、眼鏡ちん」ニヨニヨ

眼鏡「俺のバナナとか言う方が悪いだろ!」

友姉「……。ま、元気になったみたいでよかったよかったー」タハー

眼鏡「え、ええ、何かと面倒見てくれたようで…」

友姉「そりゃ友達の弟だもんね、大事な愛しい弟の友達でもあるから頑張るよ」

眼鏡「そ、そっすか。ありがとうございます、マジで」ペコリ

友姉「……」

友姉「…優しいね」ボソリ

眼鏡「…っ」ピクッ

友姉「ん~~~~ッ!! じゃあお姉さんは帰りますか、弟よいっしょ帰る?」

友「勝手に独りで帰っていいよ?」

友姉「ま! この子ったら冷たいんだから!」ヒェー

友「でも帰る。いいんちょも帰る?」

委員長「私も帰るよ、それじゃあまたね、眼鏡くん」フリ

眼鏡「あ、う、うん」

委員長「あとコレね」スッ

眼鏡「ん?」

委員長「金髪さんからだよ、お見舞い品」ニコ

眼鏡「…そっか、ありがと」

委員長「お礼は元気になって直接言うこと、わかった?」ピッ

眼鏡「お、おう」コクコク

友「我帰る、盟友を去らば」

眼鏡「ありがとな、色々と助かったよ」フリ

友姉「んじゃまたねー!」


パタン


眼鏡「……」ガサリ

眼鏡(マスクに風邪薬、果物と目薬? 色々とあるなぁ…)

眼鏡「………」じーん

眼鏡(ハァゥ!? い、いかん不覚にも感動と嬉しさに! ぐッ、止まれッ!)ギュッ

眼鏡「ッハァーーー……」ガクリ

眼鏡「うん、止まった」ずびび

眼鏡「………」



『…優しいね』



眼鏡「…例え正解じゃなくても、俺にはそれしかないしな…」ボソ

眼鏡(優しくて、最低で、チキン。でもちゃんと好きな娘の為には真っ直ぐ向いて居たい)


(彼女の頑張りを応援するのが俺の強さ。そして最後に奪う、そう決めたんだ)

(だから彼女がどういった選択をしようが、今の俺も先の俺も納得するだけの決心を持つべきだと思う)

(最後に選んだのが俺じゃなくても、そんな答えが待っていても俺は信じなくちゃいけない)


眼鏡「…金髪さんを好きで居て、応援する自分を、最後までずっと」

眼鏡「覚悟を…持たないとな…」


『この状況で一番最低なのは誰ですか』

『──なの分かりきってることじゃん、誰だってわかる──』


『全部全部、はっきりとさせない【今出て』



眼鏡「違うんだ。全然、悪いのは彼女じゃない…」

眼鏡「訊かない俺が悪いんだよ…ちゃんとしないチキンな俺が悪いんだ…」


ポタ ポタポタ…


眼鏡「……」



『つまりはそう、ハーレムだが何だか知らねーけど、あたしを巻き込むんじゃないって話』



眼鏡「あぁ……」スッ

眼鏡(悪いこだって分かってても望んじゃ駄目だったかな)



   言って欲しかった、
                        『この中で眼鏡を、一番好きなのは□□□だ』



            そのコトバを。




眼鏡「はぁー……」ポロポロ

眼鏡「ばかだな、うん、凄く馬鹿…」グシグシ

眼鏡「…ぁ…」ガサッ

眼鏡「…せんべいが、入ってる…」



「………」

「…ぱり」

「しょっぱ」

前編おわり

このスレで後編つづきます


ではではノシ

おっつん

おつー

乙でございます

カタカタカタ コトコト…


眼鏡「寒…」ズビビ

眼鏡(今日は兄貴も居なけりゃ両親も仕事、まさに自由な時間)

眼鏡「俺に無関心過ぎるだろ、この家族…」


ピィーーーー!


眼鏡「まぁ、独りの方が楽で良いか」コポコポ

眼鏡「こくこく、ふぃ~……」

眼鏡「………」コト

眼鏡(…独り、誰も居ない、自由の時間、何をしてもバレない…)


眼鏡「うむ。やるか、やるしかないよな! こりゃな!」

眼鏡「…早速準備に取り掛かろう」ガタリ


~~~

眼鏡「えーと、確かこの辺に隠して…」ガサゴソ

眼鏡「んお? よしよし、あったな」パサリ

眼鏡(秘蔵同人誌、その一本。ネタは『真面目系男子とギャル娘ちゃん』)

眼鏡「……っ…」カァァァ

眼鏡「な、なんかなァ! 色々とやっちゃいかん気がするなこりゃ!」ガシガシガシ

眼鏡(他のにしよっと! うん! えっとコレはどうだ、『秘密を握った委員長を脅してアレヤコレ!』って…)

眼鏡「だぁーーーーー!!! もっとダメ!! 凄く色んな意味でアウトッ!!」

眼鏡(よ、よくよく考えるとネタが偏りがちじゃないか…? い、いかん深く考えるな。冷静になれ…)


パサリ


眼鏡「あれ? 俺こんなの持ってたっけ、」ヒョイ


『親友を冗談で女装させたら、ハマってハメてしまった』


眼鏡「……ナニコレ?」

眼鏡「ッ!?」くるっ


『お兄ちゃんとしてはもっと色んなジャンル読んで欲しいデス☆ by兄』


眼鏡「余計なお世話だッ!」バッシーン

眼鏡(……つかバレてたんだ、隠し場所を、兄貴に……)ずーん

眼鏡「……ッ…」チ、チラリ


『真面目系男子とギャル娘ちゃん』
『秘密を握った委員長を脅してアレヤコレ!』
『親友を冗談で女装させたら、ハマってハメてしまった』


眼鏡「アウトだな、うん」ガックシ

眼鏡(もう無くなっちゃったよ、ヤル気とか全部さ、うん)ガサゴソ

眼鏡「片付けよう…」


ぴんぽーん


眼鏡「ん?」

~~~

眼鏡「は、はい。どなたですかー…」ガチャ

委員長「おはよう、眼鏡くん」ニコニコ

眼鏡「へっ? な、なんで委員長が…?」

委員長「今日は学校お休みだよ? だからお見舞いに来た感じかな?」

眼鏡「………」

委員長「えっと、その、ダメだったかな…?」オズオズ

眼鏡「い、いやっ! 別に駄目とかじゃないけど、えっ? うそっ?」

委員長「嘘じゃないよ、ちゃーんとここに私は居るもの」スタ

ぎゅっ

委員長「ね?」ニマー

眼鏡「…手、冷たいっすね…」

委員長「あれ? 案外リアクション低め?」キョトン

眼鏡「まぁ、からかってるの分かるしね…」

委員長「ちぇーっ、楽しくないの」ニギニギ

眼鏡「そ、それでっ?」パッ

委員長「うん?」ニマニマ

眼鏡「…今日は何も持ってきてないみたいだけど、その、」

委員長「そうそう、質問なんだけど、昨日持ってきたのはまだ残ってる?」

眼鏡「え? ま、まあ食べきれない量だったし…」

委員長「うん。それを実は今日、調理してあげよっかなぁーとか思っちゃってたりして」

眼鏡「……」

眼鏡「い、家に上がるの?」

委員長「だめかな?」

眼鏡「いやいやいや! まぁーその! 今日は俺一人しか居ないっつーか! ねっ?」

委員長「知ってる」ニコニコ

眼鏡「……」ダラダラダラ

委員長「玄関に見える靴の量で、君しか居ないのは知ってるよ?」ニマー

眼鏡「委員長、あのさ…俺…」ポリポリ

委員長「大丈夫だよ」

眼鏡「…何が?」

委員長「君が心配してるようなコトは起こらないし、やらないつもりだから」

眼鏡「……」

委員長「単純にお見舞い、そして君が心配だったから」

眼鏡「友達、として?」

委員長「そのとぉーり! 気が利く賢い委員長さんは、いちクラスメイトを放って置けないのですっ」ぴっ

委員長「くすくすくす──…信じる?」

眼鏡「……」ポリ

眼鏡「あ、ああ…信じる…」コク

委員長「そっか、なら上がっても?」

眼鏡「ど、どうぞ」

委員長「ありがとう、眼鏡くん」ニコ

~~~

委員長「あれ珈琲の匂い…」ヒクヒク

眼鏡「委員長も飲む?」カタ

委員長「あ、それじゃあお願いしちゃおっかなぁ」

眼鏡「…外冷えてたっしょ」コポコポ

委員長「うん、まあね」

眼鏡「ごめんな。わざわざ来てもらって、色々と助かる」コトリ

委員長「気にしないでいいよ、別に辛くなかったしね」クスクス

眼鏡「そ、そうなの?」

委員長「そーともですよ、ありがと珈琲」

眼鏡「砂糖は?」

委員長「ブラックが好きなんだ、ふーふー」

眼鏡「……」

委員長「あ、君ってば今の顔は他の女の子のこと考えてたでしょ?」ニマニマ

眼鏡「ヘェッ!?」ビクッ

委員長「んー予想するに金髪さんかな?」

眼鏡「何故…わかるんだ…っ?」ダラダラダラ

委員長「大体の人の表情は読める自信あるんだ、それに極めて君は表に出やすい」

眼鏡「そこまでか…すげーな俺の顔、モロバレすぎる…」

委員長「くすくす、私はそれが眼鏡くんの良いところだと思うよ?」

眼鏡「好意的に受け取っておく」ポリポリ

委員長「うんうん」

眼鏡「あっと、それで? 昨日のやつで何か作りたいんだっけ?」

委員長「とと、忘れちゃうとこでした。そうなの、眼鏡くんは何が食べたい?」

眼鏡「そっから!?」

委員長「苦手なものあるなら選ばないとね、アレルギーも恐いしさ」

眼鏡「苦手な物は一応、甘いのとか」

委員長「へー! 甘いの苦手なんだ? 私と一緒だね、くすくす」

眼鏡「そ、そうなんだ」

委員長「無理して食べると吐いちゃうの、おえって」オェー

眼鏡「あぁ、そこまで一緒かよ…」クス

委員長「眼鏡くんも? えーっ? うそ! 私だけだと思ってた!」

眼鏡「こうギューって肺が縮んで、胃が絞り上げられる感じというかさ」

委員長「内蔵全部がぐるりんって、ひっくり返る?」ワクワク

眼鏡「そうそれ!」ビシッ

委員長「やっぱり!」

眼鏡「それが堪ったもんじゃ無くてさ、ありゃもう体質的に駄目なんだろな」ウンウン

委員長「特に甘いの、ていうか大雑把なくくりが我ながら頭に来るよね」ウンウン

眼鏡「だよな。チョコが駄目、抹茶無理、なら軽く同意を得られるんだけど…」

委員長「甘いの全般無理。とか他人に言ったら『なにそれキャラ作り?』なんて言われるんだよっ!?」

眼鏡「あ~あるある、中学の時に言われてショックだったなぁ」

委員長「こっちは必死なのにさ! 出来るなら食べて吐いちゃう苦しみわからせてやりたい!」

眼鏡「……」ジッ

委員長「そーいうの女子とか困るんだよねぇ、うん? どうしたの?」

眼鏡「うん? なんか委員長がノリノリで喋るの、初めて見たなって」

委員長「………」キョトン

委員長「……ぁ…えと、変な感じだった…?」カァァ

眼鏡「いやいや、良いと思う。結構喋りやすかったし、むしろ好印象だった」

委員長「う、うん、そか…」

眼鏡「あ、あれ? なんか変なコト言った?」

委員長「変じゃないよ」フルフル

眼鏡「そう?」

委員長「ただちょっと、私が気を抜いちゃっただけ」ペロ

眼鏡「?」

委員長「んー、よし! じゃあ甘いの苦手情報を得られましたので、それ以外のを作ります!」ガタリ

眼鏡「お、おお、つか本当に良いの?」

このまま委員長ルートが一番幸せな気がしてきた……

委員長「お任せあれ、見事に君の要望に沿った品を進呈して参ぜよう」

眼鏡「そりゃ楽しみだ」

委員長「ちょっと時間かかるかもだから、寝て待ってて良いよ」

眼鏡「ん、じゃあ居間のソファーで寝てるか」ガタリ

委員長「え? 自分の部屋で寝てていいのに…」

眼鏡「こう見えて一度寝たら、中々起きられないタチでさ。ここで寝たほうが起きやすい」ゴロリ

委員長「……」じぃー

眼鏡「どした?」

委員長「毛布は何処にあるのかな?」ニコ

眼鏡「え、あ、うん。そこの引き戸の奥にあるけど」

委員長「ん。了解しました」スタスタ

ガラリ ひょい

委員長「これで良い?」

眼鏡「お客さん用ね、それでいいと思う」

委員長「よし」スタスタ

眼鏡「…?」

委員長「えーい!」スッ

ファサァ パサリ

委員長「ちゃんと羽織らないと治るものも治らないよ」ポンポン

眼鏡「お、おう」

委員長「ちゃんと寝れそう?」クスクス

眼鏡「…ん、多分」

委員長「それは良かった。じゃ、作ってくるね」フリフリ

眼鏡「ありがと…」

委員長「どーいたしまして」

眼鏡「……」ドキ

眼鏡(ばっか、俺、なに今の流れで何高鳴っとる)モゾモゾ

眼鏡「…寝ろ、寝るんだ俺」ギュッ

委員長「……」チラ

眼鏡「…すや…」

委員長「ふぅ、冷静に。うん、冷静に」コツン


    ───ドクン ドクン


委員長「…冷静に」キュッ


~~~


眼鏡「──……んぉ…?」パチ

眼鏡(あれ良い匂い、つか居間でどうして寝てるんだ…?)ボー


委員長「……」じぃー


眼鏡「…ふぇ?」

眼鏡「あれッ? はぇっ!? ちょ、委員長、あっ! そっか!」ビクッ

委員長「くす。やっと起きた」クスクス

眼鏡「ご、ごめんマジで爆睡してた…!」ゴシゴシ

委員長「ぐっすり眠ってたね、何度か起こしたけど中々起きなかったもん」ニコ

眼鏡「あ、ああうん、本当にゴメン!」

委員長「んーん、君の寝顔見てて楽しかったし平気」

眼鏡「…平気って…」

委員長「凄かったよ? んぉー! んがぁー!? みたいな? コロコロ変わってた、なんの夢見てたの?」クス

眼鏡「…あんま憶えてない…」

委員長「ありゃ、楽しみにしてたのに忘れちゃってたか」

眼鏡「…その話は変わるけど、この匂いは?」

委員長「よいしょっと、うん? スープだよ、野菜たっぷりのね」

眼鏡「おぉ…」

委員長「消化が良い物がベストかなって、もしかしてスープは苦手?」

眼鏡「まさか、全然いけます、ええ」コクコク

委員長「じゃあ待ってて、持ってくるから」

眼鏡「え…」

委員長「良いんだよ、病人は大人しくしなくちゃ」ニコ

眼鏡「…ウッス」コク


~~~


眼鏡「美味い…」

委員長「良かったー! ホントにっ?」パァァ

眼鏡「ほんと、マジで美味い。お世辞じゃなくて」コクコク

委員長「……」ジッ

眼鏡「こはぁ~…やっぱ汁物は良いよなぁ~…」ほっこり

委員長「実は初めてなんだ、人に料理を作るのって」

眼鏡「うぇ? マジで?」

委員長「マジで」コクコク

眼鏡「そ、それは何だかアレだ…うん、ありがたいと思う」

委員長「お? どうしてかね?」

眼鏡「委員長の……」

委員長「委員長の?」キョトン

眼鏡「……なんでもない、やっぱ忘れていい」

委員長「あ~!」ピカリン

委員長「──私の料理初体験が自分でありがたい?」ニマァー

眼鏡「うぐッ、やっぱそれ超セクハラ発言っぽくない!?」

委員長「言いかけた事のほうが悪いと思うけど?」クスクス

眼鏡「で、ですよね…スンマセン…」

委員長「んーん、本当のことだし大丈夫だよ。君が最初の実験体ってことはね」クス

眼鏡「…モノは言いようだな、本当に」クス

委員長「確かにね」クスクス

眼鏡「で、でもさ、美味しいよ。本当に美味しい、これからは誇っていいと思う」コクコク

委員長「…ん」

眼鏡「ずずっ」

委員長「…ぁ…のね、君が良いって言ってくれれば…」ボソリ

眼鏡「ん?」

委員長「……」ピタリ

眼鏡「どうした?」

委員長「ん…」フリフリ

眼鏡「何か言いかけた感じだったけど…」

委員長「いやいや、何でもない。何でもないんだよ」ニコ

眼鏡「……」コトリ

委員長「……」ビクッ

眼鏡「…委員長?」

委員長「あ…え、何? あはは、なんか変な雰囲気出しちゃった…?」

眼鏡「い、いやさ、あの、別に俺としては普通に会話してたつもりで…」

委員長「お、おー! そうだよね! 確かにそのとぉーり!」

眼鏡「………」

委員長「…うん」シュン

眼鏡「委員長、俺はやっぱりハッキリと君に───」


ピンポーーーン


委員長&眼鏡「ッッ!!?」ビックーン

委員長「だ、誰かな? 親御さん? お兄さんとかっ?」

眼鏡「それなはないと、思う。チャイムなんて鳴らさないし…!」


ピンポンピンポン!


眼鏡「…これは」

委員長「わ、私もう帰るね! お邪魔だろうし…!」ガタタ

眼鏡「あ、待って!」

委員長「……」ビクッ

眼鏡「あ…その…、えっと」

委員長「……」

眼鏡「ちゃ、ちゃんと伝えておかなくちゃ駄目なことがあるんだ…!」

委員長「ん…」

眼鏡「俺的には大事な話だと思ってる、だから、その待ってて欲しい、ちゃんと聞いて…欲しいと思ってる」

委員長「…うん」コク

眼鏡「い、良いかな?」

委員長「良いよ。待ってる、ちゃんと聞く」

眼鏡「…ありがとう」

委員長「大丈夫」

眼鏡「じゃあちょっと行ってくる、すぐに戻ってくるから」

委員長「…」コク

眼鏡「…ん」スタスタ


どうなるか

~~~

眼鏡「はい、何方ですか」ガチャ

友「我ですよ」

眼鏡(やっぱりか、チャイム音がそれぽかったし)

眼鏡「おはよう。つか、なんで女装してんの?」

友「趣味?」キョトン

眼鏡「そりゃ知ってる。そうじゃなく女装している意味を言ってくれ…」

友「今日は一人故にイケるかと」コクコク

眼鏡「…何がだよ」

友「知りたい?」

眼鏡「言わんで良い」

友「今日の眼鏡ちん超冷たい…」シュン

眼鏡「……」

眼鏡「…何しに来たんだ、今日もお見舞いか?」

友「それもある」コクコク

眼鏡「他にはなんだよ」

友「……今眼鏡ちん、ひとり?」チラ

眼鏡「えっ!? いや、まぁ、一人っちゃあ一人だな、うん」ポリポリ

友「ほんとっ?」

眼鏡「…上がる気なのか?」

友「外寒い」ブルブルブル

眼鏡「スカートなんて履くからだろ…」

友「……」じぃー

眼鏡「な、なに?」

友「ほんと、ひとり?」じぃー

眼鏡(何やら疑われているらしい…)ドキドキ

友「実は金髪つぁんが来てる可能性アリ?」キラリン

眼鏡「な、なんで来るんだよ」

友「そーいうのやるタイプ、抜け駆けタイプ」フンスス

眼鏡「どういうこっちゃ…やらねえよそんなこと、だって昨日…」ハッ

友「昨日?」キョトン

眼鏡「うっ…な、なんでもない…っ」

眼鏡(昨日に去り際、あんな事言ってたのに来るわけがない。とは言えんよな)

友「眼鏡ちん、起きてた?」

眼鏡「ヘェッ!?」ビクン

友「まあ知ってたけど」スタスタ

眼鏡「なにっ!? どういう事だ、つか何上がってんの!?」

友「あの場に居た人は気づいてた」ヌギヌギ

友「──眼鏡ちん起きてたの、多分、金髪つぁん以外」

眼鏡「…マジデ…?」

友「マジ出島」コクコク

眼鏡「……っ…」

友「分かってて何も言わなかった、でも、それでいい」スタン

眼鏡「な、なにがだ?」

友「眼鏡ちん好きって想いどーせ変わらない」コクコク

眼鏡「…意味が分からんぞ」

友「我といいんちょ、あとオマケでお姉様」

友「どーせまだ好きよ? ハッキリと眼鏡ちん選んでも、オシマイじゃない」コク

眼鏡「は、はい?」

友「未だハーレム続行中」フンススー!

眼鏡「……」

友「今日、我以外を家に上がらせた?」

眼鏡「え、なんでそんなこと訊く…?」

友「あぶないから」

友「多分、そろそろ決着させようとしてる。我はハーレム望んでるけど…」

友「…いいんちょや、金髪つぁんは【自分だけのモノ】にしたい望んでるから」

眼鏡「な、なんだそりゃ! はは、意味分からんこと言うなよ…!」アタフタ

友「信じちゃダメよ? 言葉巧みに眼鏡ちんを安心させようとする」コクコク

友「我は皆幸せが良い。だから出し抜こうとか考えない、それ本当」

友「…眼鏡ちんは皆で幸せになるべき、いいんちょも、金髪つぁんも」

眼鏡「…それは、お前もか…?」

友「我も!」フンスゥ

眼鏡「……」

友「我はオトコ、ハーレム超大好き。だから望むの」コクコク

友「だけど二人はオンナノコ。きっと難しい、心の整理できない」


友「──特にいいんちょは危ない、今、きっと揺れてるから」


眼鏡「あぶ、ないって…」

友「おじゃましまーす」トテトテ

眼鏡「あっ!! オイ、待て友…!!」


~~~


友「良い匂い…?」くんくん

眼鏡(あ、あれ? 委員長が居ない、もしかして隠れたのか…?)キョロキョロ

友「料理作った? 風邪引いてるのに?」

眼鏡「おうッ!? お、おぉ…か、風邪なんてそろそ平気になってるからな…!?」

友「おいしそう」ぐぅー

眼鏡「た、食べるか?」

友「たべます!」フンスス

眼鏡「わかった…用意するからキッチンで待っててくれ」スタスタ

友「4649」ぴっ

眼鏡(ど、どうしよう。気になること沢山言いやがるから、露骨に帰れとは言い難い)

眼鏡(決着させようとしてる? 出し抜く? どうせまだ好きってなんだよ…)

眼鏡(…それに委員長が一番危ないって、どういう事だ)

友「気になる?」

眼鏡「だぁー!?」ビックン

友「我の言ったこと眼鏡ちん気になってる?」フンスス

眼鏡「あっため中だっつのッ! 危ないだろ!」

友「答えて」

眼鏡「な、なんだよ…そりゃ気になるに決まってる、だろ」

友「……」じぃー

眼鏡「…?」

友「いいんちょは多分、最初は楽しんでた」コクコク

眼鏡「た、楽しんでた?」

友「奪うとか奪われるとか、その楽しみがスキって想いより強め?」

眼鏡「…お前は何処まで委員長のことを知ってるんだよ」

友「我観察得意!」

眼鏡「……」

友「初めからいいんちょ、ダメなことを好んでやるタイプ見破ってた!」フンススゥ

眼鏡「…それで?」

友「金髪つぁん好きな眼鏡ちん、そういう所惚れたと思う」コクコク

眼鏡「さり気なく俺の頑張り、つかやってることも知ってるよなお前…」

友「盟友よ?」

眼鏡「はいよ、あんがとな。それで委員長が何だって?」

友「…今のいいんちょは、単純に眼鏡ちんことスキなってる」コク

眼鏡「…それも人間観察ってか?」

友「信じてない?」

眼鏡「信じない」

友「良いと思う、それが眼鏡ちんの良さ」コクコク

眼鏡「……」ピク

友「眼鏡ちんの優しいところ」

眼鏡「…優しい、ね」

友「良いところよ? 実にハーレム主人公向き、特に両親共働きとか超狙ってる」コクコク

眼鏡「お前は俺の両親に謝れ、大人達に謝れ」

友「だから独りぼっちの時に来るオンナノコ、絶対に狙ってる、その展開を」

眼鏡「…展開を?」

友「えっちなこと?」

眼鏡「ぶぅっ!?」

友「当たり前。我とかちょい期待してる、けど…んんっ…恥ずかしい…」テレテレ

眼鏡「て、照れるな照れるな! 何言ってるんだお前は!?」

友「まーそれは、置いといて」スッ トン

眼鏡(置いておくのかよ…)ポリポリ

友「我思うに、いいんちょ絶対来てると思ってた」

眼鏡「そ、その展開を知ってて来たってことか?」

友「いえす、えろ欲しに来てる。むしろ覚悟を決めにきた?」

眼鏡「ばかだろ、あり得るわけがない…」

友「そう思う眼鏡ちんの隙を突っ込む、そして眼鏡ちん突っ込む」ズポズポ

眼鏡「…そのジェスチャーやめろ」カァァ

友「ほんと来てない? いいんちょ、後悔してるから来ると思ってた」

眼鏡「へ? …後悔?」

友「うん」


友「──後悔、最初からスキだと思えば【今の状況にならなくて済む】ハズだった思ってる」


眼鏡「え…」


ガタタタ! ガタン!

眼鏡「……」

友「今の音、二階から?」キョトン

眼鏡(あれ? そっか委員長二階に居るのか、えっと、んッ!?)

眼鏡「…マサカ…」サァー

友「兄様いる?」

眼鏡「ほぁああああああああーーーーーーーー!!!???」

友「なにっ!?」ビクッ

眼鏡「あぁあぁあぁぁああぁあああああッッ!!!」ダダッ

友「眼鏡ちん!? どこいくっ!?」



だだだだだだだだ ダンダンダンダンダンッ!!!



眼鏡「委員長ぉー!?」バン!

委員長「あ…」カァァァ

眼鏡「……………」

委員長「あ、その、これはっ」アタフタ


『真面目系男子とギャル娘ちゃん』
『秘密を握った委員長を脅してアレヤコレ!』
『親友を冗談で女装させたら、ハマってハメてしまった』


眼鏡「」

委員長「んん~っ…ち、ちがっ…たまたま! 見ちゃったというか、そのっ」

眼鏡「ヨンダノ?」

委員長「っ」ビクン

委員長「…ちょっと、だけ?」ポソリ

眼鏡「うばああああああああああああ!!」ガサガサゴソゴソ

委員長「わぁー!?」

眼鏡「これは違うんだよ!? ちが、違うっていうか兄貴がね!? 俺の兄貴が置いてったやつでね!?」ガサガサ

委員長「う、うんうん」コクコク

眼鏡「俺の私物じゃないつーかッ!? 趣味じゃない、ぜーんぜん違うってなッ!? アハハハ!!」

委員長「そ、そうなんだ」ニ、ニコ

眼鏡「そうなんだよ!!」


委員長「…っ…っ………」

眼鏡「っ……っ……っ…」ドッドッドッドッドッ


眼鏡(どう、しよう。目が合ってから全然、離せない。見つめ合ったまま、どうするのこれ!?)

委員長「…えっと」

眼鏡「ハイィィイッ!?」ビクン

委員長「お、男の子だし、わかるよ? そういうの読むって、全然わかるし」コクコク

眼鏡「…ハイ…」

委員長「だからねっ!? えっとー……その、あの、」

委員長「…脅してアレヤコレしたかったの?」チラリ

眼鏡「…………」ピタッ

スッ

眼鏡「スミマセン、マジでズンません」ドゲザー

委員長「ええっ?」ビクン

眼鏡「例えそう思ってないと発言しても、信じてもらえないかも知れないが不快にさせたのは事実です」

委員長「そ、その眼鏡くん?」

眼鏡「本当にごめんなさい、許してください、こんなモノを持っていてごめんなさいでしたーッ!」ペコー

委員長「え、えっと…」ポリポリ

眼鏡「ッ…ッ…!」グリッ

委員長「わ、私とは? 意外とキミはあれなんだなーとか、結構エグめの趣味持ってるんだなぁとか…」

眼鏡「うッ」ビクン

委員長「真面目そうに見えて、…私の事そう見てたんだ、とか、思ってたりします、はい」

眼鏡「…マジデスンマセン…」

委員長「で、でも! 私だって以前に脅して身体求めたりしないのかと、聞いちゃってたりしてるわけで…」テレ

委員長「おあいこじゃないかなっ? うん、こういうのはさっ?」

眼鏡「…全然違うと思うんですけど…ッ」

委員長「うーーーん……やっぱり?」

眼鏡「…はい」

委員長「……ぁ…」ピク

委員長「じゃ、じゃあね? こういうのはどうかな、許して欲しいと思ってるなら…」スッ

眼鏡「えっ?」

委員長「それに私は気にしてないと、知ってほしい為にも十分に効果的な方法なんだけど」


委員長「…私と一緒に、読んで欲しいなって…」ボソ


眼鏡「へっ!?」

委員長「どう、かな?」チラ

眼鏡「っ……っ……っ……」パクパクパク

眼鏡「…え読むの? 俺と? 委員長で?」

委員長「う、うん」カァァァ

眼鏡「コレを? ど、同人誌を?」

委員長「ダメだと思う…?」

眼鏡「色々とマズくねッ!? マズイよねッ!?」

委員長「私は気にしないよっ? そーいったことを伝えられるし、君だってそれで許してもらえるならオッケーじゃないっ?」

眼鏡「オッケーじゃないって…」ボーゼン

委員長「…眼鏡くん」

眼鏡「な、なに?」

委員長「あえて訊かないよ、私はこの他の本は」

眼鏡「…あ…」

委員長「私としてはね、君が心配するショックの部分で言うと…」チラリ

委員長「…他の二本の本の方が、結構ショックだったりしてる」

眼鏡「……」

委員長「色々と事情はあると思うけど、この三本の本がどういった意味なのかは訊かない」コク

眼鏡「…それは」

委員長「許して欲しい?」

眼鏡「…っ…」

委員長「でも、この、ひ……ひ『秘密を握った委員長を脅してアレヤコレ!』…をねっ…?」カァァァ

委員長「い、一緒に読んでくれたら許してあげる…読んでくれたら、だよ」

眼鏡「…ぉ、ぉ…」

委員長「……」ドキドキ

眼鏡「そ、それは…とも、ダチ…として…?」

委員長「!」ビクン

委員長「……トモダチとして…だよ」カァァァ

眼鏡「友達ッ! ならっ? 別に普通ってコトッ?」

委員長「わ、私は友達とかあんまり居ないしっ? そーいったことが普通とか言えないけど…」

眼鏡「い、言えないけど…?」

委員長「私は…眼鏡くん、信じてるから…」チラリ

眼鏡「…っ…」ゴクリ

委員長「…襲ってこないって、信じてる」ボソボソ

眼鏡「ッ~~~~!!」ポッヒュー

委員長「ん…」テレテレ

眼鏡(友達だ、そりゃ友達だよ! 委員長はそういった関係! だから許してもらいたい!)ダラダラダラ

眼鏡(読んでくれたら許してくれる、でもアカン! それはダメ、だけど、一緒に読めるのは友達という証明にもなるわけで…!!)

眼鏡(友とだってエロい同人誌感想言い合うし!? フツーじゃねっ!? あれ、案外いけないことだと思えなくなってきた!)

委員長「……っ」

眼鏡(委員長、顔真っ赤だ。そうだ恥ずかしいこと言わせてる、俺って最低だ、けど許して貰えるんだ…)

眼鏡「読めば…一緒に読めば…許して、くれる…?」

委員長「…うん」コク

眼鏡「あがッ! でっとッ、そのッ! ぐぅぅううううう……ッ」ポトッ


パサリ パカーッ


眼鏡「あ」

委員長「…あ」


『や、約束したじゃない! もうこん、んっ! あっ! やだっ!』

『信じるほうが悪いだろ。よくもまぁ、信じれたモンだぜ』

『嘘つき! 嘘つき! あっ…やだ…やだやだ…っ』


眼鏡「ばぁーーーーーー!!!」ガサガガサ

委員長「……っ」ボッ

眼鏡(駄目だ駄目だ絶対駄目だ! こんなの許されないッ! 友達以前に男女でムリだッ!)

委員長「……」モジモジ

眼鏡「やっぱ、ごめんっ! また違った形で───」



友「じぃーーーーーーーーーー」ヒョコ



眼鏡「…………」

委員長「…………ぁ…」

眼鏡「ッッッ!!?」ビックーーーーン

委員長「と、友くんっ!? 何時からそこにっ!?」ババッ

友「『ヨンダノ』って辺り居ました」ジトー

眼鏡「ほぼ…最初じゃん…ッ」

友「『…私と一緒に、読んで欲しいなって…』も聞いとりました」ジトー

委員長「きゃーーーーー!!!」

友「やっぱりいいんちょ居た。うそつき、眼鏡ちんうそつき」ムッスリ

眼鏡「い、いやだってね!? あんな事言われてたら居るって言えねーじゃん!?」

友「眼鏡ちんちょい黙ってて」チラリ

委員長「う…」

友「いいんちょ、ヤリ気で来た?」

委員長「え、えっとー? 何のことかな?」ニマ

友「財布の中身見せて」チョイチョイ

委員長「え”っ」

友「絶対にお金以外入ってる」

委員長「…ナンノコトカナ…?」

友「そんなこと」コクコク

委員長「……」ササッ

友「ありがとう、それでわかりました」ペコリ

委員長「むぐっ」カァァァ

友「眼鏡ちん危機一髪、貞操守られた」

眼鏡「お、お前なァ…?」

友「いいんちょ一番危険って言ったのわかった?」

眼鏡「そ、そんなこと…っ」

友「一緒エロ同人誌読んでたらアウトだったよ?」

眼鏡「ぐ…」

友「いいんちょ」

委員長「と、友くん…あのね、私…っ」アタフタ

友「もう好きになる覚悟決まった?」

委員長「っ!」ビクン

友「奪うとか奪われるとか、そんなの抜きにして」

友「…ちゃんとスキって思えるよう決めた?」

委員長「…友くん…」

友「別に恨んでない、いいんちょやりたいことやっただけ」コクコク

友「眼鏡ちん諦められなかった発端いいんちょの助言でも、良い」

眼鏡「…っ…」

友「そうやって眼鏡ちんの人間関係ぐちゃぐちゃにする狙いだったのも許す」コクコク

委員長「………」

友「我、知ってる。我といいんちょそっくりだって、駄目なことスキだって」

友「面倒な展開にして、その中で自分だけは眼鏡ちんの隙を付いてモノにする作戦見事だった」コクコク

委員長「…ん」コク

友「でも後悔してるの知ってる、いいんちょ普通にスキなった」


友「普通にスキになったから後悔してる、もっと上手くやれたんじゃないかって」

友「金髪つぁんも怒らせずに、我も巻き込まずに、眼鏡ちんも困らせずに」


友「ちゃーんと眼鏡ちんと付き合えるって、そう後悔したと思う」コク


委員長「……」

友「そして今日も迷ってた。惑わすけど、もう辞めようとも思ってる?」

委員長「…そうだね」

友「そっか。それもアリだと思う、辛くなるならすっぱり諦めるのも手」コクコク

委員長「でも、まぁ身体を求められたらやっちゃおうかなーとは思ってたかな?」

眼鏡「へッ!?」

委員長「油断し過ぎだよ、眼鏡くん」ニコ

委員長「──言ったよね、二人きりにしたら襲っちゃうよって」

眼鏡「……」

友「眼鏡ちん甘々優しいチキンだからすぐ、信じるし友達なんだと思う」

委員長「だね。あと昨日のことで好きな相手を心に決めたのも、スキの原因かな?」

友「好きな人居るから手を出さない、超臭い理由」コクコク

委員長「こりゃ甘すぎだ。凄いね、でもそれが男の子なのかなぁ」

友「それがオトコよ」コクコク

委員長「実は知ってる。そうやって色んなカップル潰してきた」ニマァ

友「おもしろい」ニヨニヨ

委員長「気になるなら今度、訊かせてあげよっか?」ニマニマ

眼鏡「ちょっ、ちょっと待ってくれッ!!」ガバッ

委員長「どーしたの?」

眼鏡「いやいやいや…勝手に話が進んでるが、なに、これはどういったことなんだよ…!?」

委員長「…好きだよ、眼鏡くん」ニコ

眼鏡「っ…」

委員長「最初は金髪さんを想う、その歪な強さに惹かれて…逆に君を奪ってやりたいと思った」

委員長「だから友達として、君と金髪さんの間に入り込める立場を作ったんだ」

委員長「その内に友くんというさ、とっても素晴らしい起爆剤を見つけた」ニマニマ

友「……」

委員長「彼を焚きつかせれば、もっとぐちゃぐちゃに、もっと面倒な展開になる……」

委員長「……でもやり遂げてから思っちゃった、あれ、なんかオカシイなって」



「なんでこんな苦しいんだろ。奪うも奪われるも、成功も失敗も、慣れてるはずなのに」



委員長「気づいちゃったんだよ、これ本気なんだって。どーせ金髪さんが勝っても別にいっかとか思ってたのに…」

委員長「今じゃ駄目、本当に君が好き」ニコ

眼鏡「…委員長…」

委員長「君の強さなんて関係ない。今はもう理由なんて見つからない、好き、好きだから好きなんだ」

スッ

眼鏡「…っ…」ビクッ

委員長「こんな我儘、最低だよね。やりたいことやって、最後は理由もないのに続けようとしてる」

委員長「──この中で一番最低なのは、私なんだよ」ボソリ

眼鏡「……」

委員長「でも好きだって想いは止まらない、止まらないんだよ眼鏡くん…」ポロ

委員長「一言、ただ一言だけで良いんだ……友くんのお姉さんは言ってくれなかった言葉を…」ポロポロ

委員長「そして君がさっき言ってくれようとしてくれたコト、それでも良いの」


パタパタ パタ


委員長「お願い、言ってくれないかな…? 私は最低なやつだって、それだけで良いから…」ニコ

眼鏡「……」ブルッ

委員長「大丈夫、きっとそれで全部オシマイ」


委員長「──あとは眼鏡君がちゃんとすればいい、惑わしてごめんね、本当にごめんね」

眼鏡「お、俺は…」

委員長「うん?」ポロポロ

眼鏡「…っ…」ガクガク

眼鏡(足が震えて、なんだコレ、意味がわからんっ)ブルルッ

委員長「…言って下さい、お願いします」ペコリ

眼鏡「ぁ…えっと…──そう、言わなくちゃ、駄目なんだよな」


ああ、俺は、


眼鏡「やっぱり、ずっと想って…」


なぜ震えるとか、言葉に詰まってるとか、


眼鏡「…居たい人が、いて」


こんなにもハッキリ物が言えないのか。その理由が、自分では、わからなくて、


ただ、ただ、震えてしまう。足も脳も、そして心臓も──心が何度も震えて、訴える。

   

        ズキン、ズキン───針のようなものが、痛みと振動を、俺の身体に。


理由を教えてくれ。      
                      誰か助けてくれ、もう分からない。



     俺が好きな人って、誰なんだ?





               友「ハーレム」


眼鏡「ッ…!?」ビクッ

友「誰もが最低で、誰もが幸せになれない」

友「だから求めるのよ、だから皆で信じ合うのよ」


友「みんな最低なら、最低じゃない」

委員長「…友くん?」

友「いいんちょ、自分一番最低言ってるけど我は違うと想う」コクコク

友「我も最低思ってる。食堂で言ったコト、これで皆をぐちゃぐちゃにした」

委員長「でも、それはっ」


友「決めたのはボクだよ?」


委員長「っ…!?」ビクッ

友「そう望んだ、そうなったらいいと言ったのはボクの責任だ」

友「いいんちょうじゃない。いいんちょは違う、ボクがやってしまったのが原因」

友「…どうして最低だと思って、眼鏡ちんを諦める?」

委員長「……」

友「眼鏡ちんは超チキン!」

眼鏡「…お前…」

友「眼鏡ちんも最低思ってる! いいんちょも最低思ってる!」

友「そしてボクもだよ! 最低だと思ってる、こんなの間違ってる! 超不正解!」フンスゥー!

友「だから、もう不正解で良い」コクリ

委員長「…私は不正解で良いの?」

友「いえす、眼鏡ちんもいいんちょのこと好きなった」コクコク

委員長「ほんと?」

眼鏡「えっ!?」カァァ

委員長「ま、ホントだ…」

友「顔見れば一発よ!」

眼鏡「ばっ! 違うッ!」

友「眼鏡ちん、苦しいと思うのはちゃんとしようと思ってるからよ?」

眼鏡「っ…」

友「でも最初からちゃんとしてない。眼鏡ちん、金髪つぁんに一番か聞けてない」

友「でもチキン故に聞けないのよ、大変どーしようもない」

眼鏡「す、好き勝手言いやがって…! 俺の意見は無視かよ…!」

友「言うよ、眼鏡ちん。この話は誰が一番好きかよりも、だれが一番最低かを決めるモノ」

友「…そろそろ最低になってもよろしいのよ、眼鏡ちん?」ニヨニヨ

眼鏡「なん、だそれッ!?」

委員長「あー…」トントン

眼鏡「な、なに委員長…?」

委員長「なるほどなぁって思ってた。そっか、眼鏡くんは最低と思ってても…」


委員長「…未だに最低なことヤッてないんだよね、今まで」ニマー


眼鏡「へっ?」

委員長「真面目で優しくて、人をすぐに信じちゃう。そして一回も酷いことをやってない」

眼鏡「…そ、それが最低なことじゃないのか? ハッキリとさせない、この俺が…」

委員長「それは正しい時の対処法だね」ニマ

眼鏡「はいっ?」

委員長「正しい恋で、正しい恋愛、正しい恋の始め方をしてれば当たってるよ」

委員長「そっか、そっかそっか。何を迷ってたんだろ、普通に考えればよかったんだ…」

委員長「…うん、信じよう。最低な私を、最初から最後まで」コクコク

眼鏡「どういう…」

委員長「正解なんて元からない。もう不正解だけなんだ、だけど私は答えを知りたいんだよ」

委員長「だから逃げちゃ駄目なんだ。それじゃ答えは見つからない、最低だからって見失っちゃ駄目…」


  ゾクゾクゥ ゾク


委員長「…ハーレムね、実に最低じゃない。そして失敗で、その中にはきっと求めてた不正解がある…」ゾクゾク

眼鏡「い、委員長…!?」

委員長「これはね眼鏡君、いち早く【罪悪感】を失くした人が答えを見つけられると思うんだ」

眼鏡「ざい、あく感…?」

友「うむ」コクコク

委員長「最初からそうだったんだ。間違ってる、なのに苦しい。それは何故?」

委員長「──だから罪悪感だよ、私にも会ったんだね。そんな殊勝な想いが、綺麗な心がさ」ニマー

眼鏡「っ…っ…っ…何を言ってるの?」ダラダラダラ

委員長「ハーレムってそういうことでしょ? 友くん?」

友「そのとーり、正解なんてない。だから罪悪感失くした人から、ハーレム入り決定」コクコク

友「その感情一番早く理解するのいいんちょだと思ってた」フンスス

委員長「そっか…これが男の子が望んでる欲って奴かぁ…最低だなぁ…後先の事考えてないね…」クスクスクス

友「でもうれしい?」

委員長「今が良ければそれで良しって感じ?」

友「イグザクトリー」びしっ

委員長「うわっ! 凄く最低だよ、くすくす」

眼鏡「本当に待ってくれ! お前らなマジでなに言ってんのッ!?」

委員長「お願い、さっきのコト忘れて☆」ペロ

眼鏡「なんでッ!?」

委員長「皆に悪いなぁ滅茶苦茶にしてーとか、思ってたけど、どーせ皆最低なんでしょ?」クスクス

委員長「こんな私が認められる関係が出来るのなら、うん、邪険にする必要あるかな?」

眼鏡「あるよねッ!?」

委員長「わ! 良い子ぶってる~、こんな同人誌持ってるクセに~」プラプラ

眼鏡「わーッ!?」

委員長「好きだって想いは止まらない。最低やら罪悪感で止まっちゃうほど、安くはないよ」ニコニコ

眼鏡「…だ、だけど止めようと思うのが普通だろ…っ?」

委員長「もうそんな規準なんてないよ、私たちにはね」

眼鏡「い、委員長は決めないと駄目だって言ったじゃん…!!」

委員長「うん。だから決めようよ、みんなが好きだって」

眼鏡「……」ポカーン


委員長「そんな最低な人間にさ、思ってるだけじゃなく行動に移そうよ」ンニィマァー


眼鏡(こ、ここ最近で最高な笑顔を…)ゾクゾクゾクゾクゾク

友「はい、終わり」ぱんぱん

眼鏡「…………」ボーゼン

友「トントン拍子で進みましたな、眼鏡ちん」

眼鏡「俺は…もう何も考えられない……これが現実なのか……ありえんだろ…」

友「そうよね」コクコク

友「でも好きだし良いんじゃね?」

委員長「良いと思うケド?」

眼鏡「め、滅茶苦茶だろアンタ達…?」

委員長「最初から頭のネジぶっ飛んでると、我ながら思ってたけど知らなかった?」

友「我とか眼鏡ちん好きなのにフツー求められても…」キョトン

眼鏡「あぁ、わかった…」

眼鏡「…これお前らがヤバイんだな、そして…」チラリ

委員長「うんうん」ニマニマ

友「そんな我らに好かれたほうが、悪い?」ニヨニヨ

眼鏡「……」


そして、それがなんとも悪いと思えてない、俺が一番最低だと思う。


眼鏡「…はぁ…これがハーレムってやつか…?」

友「みんな最低じゃなきゃムリ」コクコク

眼鏡「辛くないってか…」

委員長「どーだろうね、もっと辛くなるかもよ?」

眼鏡「……最低だな」

ピンポーン


眼鏡「──……」

委員長「うん、最低だね」スッ

友「そして後一人、最低な人」コクコク

眼鏡「…どうすりゃ良いってか、俺にさ」

友「最低になるだけよ?」

委員長「今はもう現実味なんてこれっぽっちもないから、むしろ理想に突っ走ってみたら?」クスクス

眼鏡「もし仮に、こんな状況に置かれたどうすればいい? みたいな?」

委員長「あり得ないだろうけどね」ニマ

友「でも眼鏡ちんそうなっちゃってる」ニヨ

眼鏡「……」


ピンポーン


眼鏡「…行ってくる」ガタ

今日はここまで ノシ


おつ

俺の委員長ルートが…

>>141
奇遇だな、俺も委員長ルートを待ってた……

おぉ…乙でございます

登場人物びくつきすぎじゃね?

~~~~

金髪「よっ」

眼鏡「お、おう」

金髪「んーなんだ、案外ノーリアクション気味?」

眼鏡「いや、色々と聴きたいことはあるけど…」

金髪「ま。せっかくお見舞いに来てやったんだ、少しぐらい嬉しそうにしろよ」

眼鏡「…ん、嬉しいよ結構」

金髪「あっはっはっ、そりゃ来たかいがあったもんだね」

眼鏡「……」

眼鏡「上がる?」

金髪「とーぜん、眼鏡には女を外で待たせるなんて百年早い」ニヤニヤ

眼鏡「へいへい、さいですか」

金髪「うむ」


~~~

金髪「…?」クンクン

眼鏡「そこのソファーに座っていいよ、楽にしていいから」コポコポ

金髪「なぁ眼鏡ぇ、この家に誰か他に居た?」

眼鏡「……」カチャンッ

眼鏡「どうして?」

金髪「良い匂いがする。こりゃスープっしょ?」クンクン

眼鏡「あ、うん、まぁ」

金髪「眼鏡が作ったの?」

眼鏡「いや、違うよ」スタスタ

金髪「じゃ誰よ」

眼鏡「…委員長が作った」コトリ

金髪「……。ふーーん…」

眼鏡「う、うん、あとこれ珈琲ね。飲んでいいよ、うん」コクコク

金髪「どーも」

眼鏡「…うん」

金髪「ずずっ…ぐぇぇ…超にがいんデスけど…」ダバー

眼鏡「えっ? あ、ごめんごめん、そういや苦いの飲めなかったなっ」ガタリ

金髪「……。いや良い、コレで良い」ズズッ

眼鏡「へ? 良いの?」

金髪「良いの」

眼鏡「そ、そうか」

金髪「……委員長は」ボソリ

眼鏡「あ、うん? だいぶ前に帰ったよ、長居したら悪いからって」

金髪「そうなんだ、じゃあきっとアイツも来たんだろ」

眼鏡「友のこと? そうだな、委員長の後に来たよ」コク

金髪「……」コトリ

金髪「今、部屋に居たりする?」

眼鏡「玄関の靴の量を見ただろ? 居ないよ、友も今さっき帰ったから」

金髪「…そっか」

眼鏡「おう。あとありがとな、風邪程度でお見舞いになんて来てくれて…」

金髪「ん、別に」

眼鏡「素直に嬉しいよ、すっげー嬉しい」コクコク

金髪「いや眼鏡、そんな有り難みなんてねーだろ。あたし以外にも来てたんだからさ」ジッ

眼鏡「なんで?」

金髪「…いや、だから」

眼鏡「俺は金髪さんが来てくれたほうが、嬉しいと思ってるけど」

金髪「ばっ…!」カァァ

眼鏡「う、うん」テレ

金髪「い、今のは許してやるよ。そのクッセぇセリフ、分かってて言ったみたいだしな…っ」

眼鏡「ど、どうも」ポリポリ

金髪「ん…そ、そんでさ! あんたは気にならないワケ? なんで家の場所知ってんのか、とかさ」

眼鏡「それは聞いたよ、昨日も皆と一緒に来てくれてたんだって?」

金髪「…む…」

眼鏡「俺としては連日で来てくれたのが正直、びっくりでさ。申し訳ないって気持ちが強めでもある」コクコク

金髪「ま、まあな。こっちとしちゃ放っておけないし、色々と…頑張ってもらってるし」

眼鏡「そっか、気を使わせたようで申し訳ない」

金髪「別にいいっつーの…」フィ

眼鏡「……」ジッ

金髪「…なンだよ?」チラ

眼鏡「なぁ金髪さん」

眼鏡「…ハーレムのことなんだけど、少しだけ良いかな」

金髪「聞きたくない」

眼鏡「うん。わかってる、けど色々と真剣に考えないと駄目な感じしない?」

金髪「もしかして真に受けてるわけ? あのゲイが言ってること?」

眼鏡「ゲイって…」ポリポリ

眼鏡「まぁでも、沢山の人が関係してくる事態になってるのは否定出来ないじゃん」

金髪「そりゃ馬鹿が勝手に周りをゴチャゴチャにしてるだけだろ、放っとけよ」

眼鏡「…無理だと思うんだ」

金髪「…なんでよ」

眼鏡「無理なんだって、もう色々と手遅れというか、無視できる状況じゃない…と言うしかない」

金髪「あんた…本気でハーレムとか、考えてんの…?」

眼鏡「ん? まぁ俺としては御免被りたいな、正直な所ね、うん」コク

金髪「だったら無視するのが一番だっつの、無理でも無視しとけ、じゃないとつけあがるだけだ」

眼鏡「……」ぎゅっ

金髪「あんたは、あんたできちんと答えを決めればいいンだよ」

金髪「…あたしが言うのも何だけどさ、ハーレムとか意味分かんねぇことに頭使ってる暇あんの?」

眼鏡「うん、だよな」

金髪「大学、頑張らないとだろ」

眼鏡「……」

金髪「…だろ?」チラ

眼鏡「……ッ」ギュッ

眼鏡「金髪さん、俺さ」


眼鏡「──今から、凄く最低なコトを言っても良いかな」


~~~~

委員長「結局さ、眼鏡くんはハーレムなんて認められないんだよね」

友「……」

委員長「彼にとっての【最低なコト】は【期待を裏切る】ということだから」

友「…ん」コク

委員長「眼鏡くんの頑張りは応援、金髪さんの恋を陰ながら支えて…」

委員長「前へ前へと進む彼女に付き添い、成就させ、そして最後に金髪さんを奪う…」

友「実に間違ってる、色々と」

委員長「うん。でも本気でやろうと彼は覚悟した、凄いよね、そりゃ私が惚れちゃうわけだよ」クス

友「我は元から惚れてた」コクコク

委員長「友くんは長い付き合いだしね。だから、眼鏡くんが揺れちゃうことも最初にわかったんでしょ?」

友「うん」

委員長「自慢じゃないけど、私もすぐ見破れた。あ、彼は…応援することに不安を覚え始めてるって」

委員長「好きだけど、金髪さんの想いが自分に向いてるのか不安で不安でしょうがない…」

友「訊けば済む話」

委員長「くすくす、そうだね。自分が一番好きなのか訊けばいい、でもそれは期待を裏切ることになる」

友「…お互い本気で好きになっていいのは、奪う瞬間だけ」ボソッ

委員長「そうそう、認め合ってしまえば金髪さんの頑張りはオシマイ、それは裏切りだと彼は思ってしまうわけだ」

委員長「自分の今までの努力と、彼女に対してのウラギリってね」

友「…真面目過ぎ」

委員長「それが眼鏡くんの良いところでしょ?」ニマニマ

友「うむ」

委員長「だから一番好きか、という質問を訊く【最低な自分】には為りたくない」

委員長「昨日、寝たふりをして友くんのお姉さんの言葉を止めた時───彼は覚悟したんだろうね」


『もうこんな気持ちになるのなら、今は捨て去って綺麗なまま、本気で、彼女を最後まで応援しよう』


委員長「…でもそれは今となっては無理」

友「我々が居る」フンスス

委員長「そう、最低な私達が居る。もう行動に移さないと、彼の心は私達に盗られてしまうぐらいに…揺れている」

委員長「不安や動揺なんかがゴチャゴチャになって、彼はもう答えを手に入れないとダメな状態になった」

委員長「だから自分が一番か金髪さんに訊かなちゃいけない。そんな最低な自分に、ならないと」クスクス

友「……言うと思う?」

委員長「眼鏡くんは言うだろうね、一番かどうかを。ただ、金髪さんが分からないかな?」

友「我もそう思う」コク

委員長「彼女は彼女で最低だしね、ハッキリとさせないし」

友「……」

委員長「先輩か眼鏡くんか。でも面倒なことにしたのは二人じゃない、自業自得だよ」

友「じゃあ一番、眼鏡ちん一番って金髪つぁん言ったら?」

委員長「……」チラ

友「?」

委員長「【君の作戦勝ち】じゃない? 眼鏡くんが無事最低になって、金髪さんも最低を認める」ウンウン


委員長「晴れて二人は本当の正しい恋の始め方、を開始するわけなんだし」ニマニマ


友「…見破ってたか」フィ

委員長「君は結局の所、間違ってる二人を正したかっただけなんでしょ?」

友「そうともいう」

委員長「見事に操ってたと思ってたら、思うように私が使われてたみたいだし」

友「…いいんちょ、絶対に最低になれって眼鏡ちんに言うと思った」

友「分からせてあげること出来ると踏んでた。だから、いいんちょ応援したし慰めた」コクコク

委員長「どーしてそんなこと、自分が悪役みたいな、なんの特もないことをしたのかな?」

委員長「金髪さんも怒らせて、きっと眼鏡くんにも怒られたよね? でもやり通すことが出来たの?」

友「ん?」


友「眼鏡ちん大スキだからよ?」キョトン


委員長「…素敵だね」ゾク

友「好きだから恋を応援する。眼鏡ちんもした、今日はいいんちょもやってくれた」

友「後は整えるだけ、面倒くさいことは全部解決よ」コクコク

委員長「…ん、君はやっぱり眼鏡くんの友達なんだ。やっと今になって分かった気がする」

友「盟友よ」コクコク

委員長「そっか、ねえ友くん」

委員長「…そんな君に惚れちゃったとか、言ったらどう思うかな?」

友「……」ジッ

委員長「…ん、ごめんごめん冗談だよ、冗談」ニコ

友「いいと思う」コク

委員長「えっ!?」

友「けど我より不細工は無理…」

委員長「ん~ッ? それはどういう意味かなァ~?」ピクピク

友「我も冗談」

委員長「す、好き勝手言ってくれるね…普段の眼鏡くんの苦労が分かる気がするよ…っ」

友「我、眼鏡ちんスキだから」

友「…きっと無理、ずっとこのまま」コクコク

委員長「ん、そっか」

友「ともあれ、これでオシマイ」

委員長「きっと【この下の一階で】眼鏡くんは聞いちゃうんだろうね」

友「チキン抜け出せるよう散々、煽ってきた」コクコク

委員長「うーーん、私も晴れて素直に好きって思えて、変に禍根が残らず失恋できそうだしぃ~~~」ノビー

委員長「ま、二人が無事に綺麗な恋を始めてくれるのなら。うんうん、諦められるな、うん」

友「うむ」

委員長「…………」

友「…………」ピクッ






委員長「なんて、言うと思った?」ニマァアアアアアアア

友「へっ?」




~~~


金髪「な、なんだよ? 最低なコトって…!?」

眼鏡「ちゃんと言わなくちゃ駄目なんだ、ちゃんと訊かないと…俺が無理なんだ」

眼鏡「──金髪さんにとって、好きなのはっ……一番、好きなのは……俺なのかなって…ッ」グググ

金髪「ぇ…そ、そりゃあ眼鏡…!」アタフタ

眼鏡「そ、それはっ?」

金髪「………」ギュッ

金髪「だ、だって! …い、良いのそれ…それ聞いて、聞いちゃってもいいかのよ…」ボソボソ

眼鏡「わ、わかってる! わかってるって! それが駄目なことぐらいっ」

金髪「だ、だろうが」モジモジ

眼鏡「でも、聞いておかなくちゃ俺は…!!」ガタ

金髪「…俺は?」チ、チラリ

眼鏡「っ~~~……もう、頑張れないかも知れん…」

金髪「は、はぁっ!? だっからどーいう意味なんだよ!?」ガタッ

眼鏡「うッ」

金髪「ハッキリと言えハッキリと! うにゃむにゃ口ごもってメンドクセェ!」カァァ

眼鏡「だ、だってさ!」

金髪「だってもくそもないんだっつの! 言っちまえよ、なにがなんだってッ!?」

眼鏡「あーッ! もうッ! わかったよ、言いますよ言えばいいんだろッ!」ガタッ

金髪「…っ…」ビクッ

眼鏡「っ…っ…っ…」じぃー

金髪「……う、うん…」コクコク

眼鏡「い、言うからな? もう何を言っても後悔するなよ、絶対だぞ!?」びしっ

金髪「お、おうよ!」びしっ

眼鏡「…っ…俺はな! もう好きなのアンタのことが!」

金髪「う…」ボッ

眼鏡「実はとっくに金髪さんのこと好きで好きになって…ッ!」

眼鏡「奪うとか、勉強頑張るとか、そんなの関係なしにもう金髪さんのこと大好きになってて!」

眼鏡「──頑張れとか言っておきながら、ずっとずっと嫉妬してて、イケメンこの野郎とか思ってて…っ」


ポロポロ ポロ…


眼鏡「ひっぐ…駄目になっちまってて、ずっと金髪さんの一番になりたいって…思っちゃってて…っ」グスッ

金髪「な、泣くなよ…」

眼鏡「泣くわ馬鹿! こんな惨めなこと言ってるんだ、泣くに決まってんだろ!? 応援するとか言ってたくせに、俺は…っ」ボロボロ

金髪「うん…まぁ…うん…」ポリ

眼鏡「はぁーっ! もうなんだよコレ、最低だ。最低すぎる、けど言わないと後悔するから言うッ!」ぐいっ

金髪「お、おうっ!?」

眼鏡「もう勉強とか関係なしに、奪うとかそんなのナシにしてッ!」

眼鏡「き、金髪さんと付き合いたいんだよ! それで一緒の大学に合格したい! ずっと幸せにラブラブしてたいんだよ!!」

眼鏡「あああごめんなさいねッ! かっこいいこと言ってたくせにまぁああ駄目でしたよっ!? 嫉妬しちゃってましたよ!?」

眼鏡「だから訊きたい、聞かせて下さいッ! 俺って金髪さんの中で───」


眼鏡「──一番好きかどうか、ただそれだけを教えてほしいのッ!」


金髪「…欲しいの、ってあんた…」

眼鏡「はぁ…はぁ…もう俺にはこうするしかない、こうしか決着方法がわからない…ッ」

眼鏡「ハーレムだとか、俺のこと皆で取り合ってるとか、…とっくに俺の許容範囲超えちゃってるんだよ…!」

眼鏡「例え好きだって言われて嬉しかったとしても! 自分の想いが迷いに迷っちまっても、それは…っ」

眼鏡「……俺が優しくても、無理なものは無理なんだよ…」ボソッ

金髪「あ、あー、つまりアレか。委員長やら友とかに好き言われて…あぁ…それでか…」ハァ

眼鏡「…もうこんな俺じゃ答えは出せない、だから教えてほしいんだ…」

金髪「…」

眼鏡「俺はここまでしか出来なかった、金髪さんに一番かどうか訊くぐらいしか…」ギュッ

金髪「そっか」

眼鏡「……」

金髪「まぁなんだ、色々と追いつめられてたんだな、眼鏡も」

金髪「てっきりあたしは、あたしに言ってくれる好きってコトバも上っ面だけのモンだと思ってたりもしてた」

眼鏡「…なんだよそれ、俺が軽い気持ちで好きなんて言えると思ってんのか…?」

金髪「思ってない」

金髪「…ただ今の眼鏡はモテてるじゃん。そーいうの、男は大好きだろ?」

眼鏡「嫌い、だとは言わん…」

金髪「それに面倒な奴とか嫌うじゃんか。あたしの立場とか他に比べりゃ超面倒でしょ?」

眼鏡「…面倒にしたのは俺じゃないか」

金髪「だとしてもだよ、フツーは優しいやつや素直に好きだって言ってくれる人に気持ちは向くもんなの」

金髪「けど、アンタは向きたくないから訊いたわけだ。約束を破ってでも、ちゃんとあたしを…好きだって想いたいから、だろ?」テレ

眼鏡「…う、うん」コクコク

金髪「子供みたいに頷くなよ…以前と真逆だな、これじゃあ」ポリポリ

眼鏡「えっ…?」

金髪「あんたが約束してくれた、あの公園の時だよ」

眼鏡「あ、ああ…確か金髪さんぼろぼろ泣いてたな…」

金髪「今じゃあんたが超泣いてる。ハーレムだとか意味分かんないことで追いつめられて、くっくっ、いやね」

金髪「…本当に眼鏡はばかだね、ホントにさ」

眼鏡「な、なんだよっ? こっちは大真面目に…!」

金髪「言ってやるよ、ばか」


金髪「一番だ、眼鏡。あんたがあたしにとって、一番好きなやつだよ」


眼鏡「…………」

眼鏡「……本当に?」キョトン

金髪「あー何度だって言ってやるさ、お前が一番。超大好き、先輩なんて目じゃない」フリ

金髪「だから認めていいし、誇っていいよ。このあたしを、あんたは好きにさせた…それも一番だ」ニヤ

眼鏡「ウソジャナイ?」

金髪「声ちっさ! …嘘じゃないってば、好きだよ眼鏡」ニコ

眼鏡「わっ! わぁあ~……っ」パシン

金髪「なに、さっきからあんた…何でちょいちょい乙女みたいなリアクション取るの…?」

眼鏡「……」ポロポロ

金髪「しかも泣いてるし…」

眼鏡「本当に…? 好き? 俺のこと?」

金髪「ああ、好きだってば」ポリ

眼鏡「…一番?」

金髪「そ、そうだって言ってんじゃん…」テレ

眼鏡「……」コクコクコクコク

金髪「それじゃーあ?」チ、チラリ

眼鏡「っ?」

金髪「あ、あんたは? 好き、なの? あたしのこと…」

眼鏡「え、好きに決まってるじゃん!」

金髪「ばっ! 眼鏡はんっとフツーに言うよなっ!」

眼鏡「言っちゃうだろ…! 好きだって言われてるんだから、普通に言うだろ…!」

金髪「ぐににっ」モニョミニョ

眼鏡「あ、あぁ…」ストン

眼鏡(なんか超スッキリした。面倒なこと全部ふっとんだ、もう見つけた、俺幸せだわ)パァァァ

眼鏡(この気持があれば、俺、ちゃんと言えるわ。二人に対して曖昧な態度を取り続けたこと、謝れるわ)

眼鏡「…俺、ちゃんと言えたんだ」

金髪「おいって」ツンツン

眼鏡「お、おうっ!?」

金髪「さっきからボーっとしてどうした、ホレ、なんか他にすることはないの眼鏡は?」

眼鏡「…他にすること?」キョトン

金髪「……。いやまさか、言葉だけで…信用するつもりなの…?」

眼鏡「え…答えてくれればそれで俺としては満足だけど…?」

金髪「マジかよ…」ポリポリ

金髪「──こりゃあたしからやんなきゃダメか、はぁ~」

眼鏡「…?」

金髪「立ちな、眼鏡」

眼鏡「う、うお、うん」スッ

金髪「ちゃんと真っ直ぐ立て」

眼鏡「うっす!」シャン

金髪「……高いな、背」じぃー

眼鏡「そ、そう? 平均ぐらいだと思うけど…」

金髪「………」

眼鏡「な、なにさ?」

金髪「…あたしの背伸びが良いか、あんたが屈む方が良いか選べ」じぃー

眼鏡「へっ?」

金髪「じゃなきゃ出来ないだろ」

眼鏡「…なにをっ?」

金髪「言わせるなよ」

眼鏡「っ~~…!」カァァ

金髪「どっち?」

眼鏡「えっ、うそっ、あれっ?! そんな流れ…なっちゃう、の?」

金髪「んな流れになっちゃうんだよ、好きなんだから」テレ

眼鏡「え、えー…うそ…」

金髪「相変わらずゴチャゴチャ言うな眼鏡は…」

眼鏡「うっ」

金髪「…したくないの?」じっ

眼鏡「…し、したい」コクコク

金髪「じゃあ、眼鏡からな」パチ

金髪「……ん」スッ

眼鏡「あ…うっ…」

金髪「んーーー」

眼鏡「あう…わっ…いっ…」ドッドッドッドッドッ

眼鏡(や、やるっきゃない! 俺はちゃんと言ったんだ、そのご褒美的な感じで…!!)ギュッ






ピリリリリリリリリ ピリリリリリリ

金髪「……」ピクッ

眼鏡「ぁ、えっと、その」

金髪「無視しとけ」

眼鏡「…電話なんですけどっ?」

金髪「今は出なくていい」

眼鏡「…っ…っ……っ…」ブルブルブル

金髪「…もしかして、ビビった?」パチ

眼鏡「ちょ、ちょいと少し…」

金髪「たかがキスぐらいで…?」

眼鏡「ハイ」

金髪「はぁ~~~~……はいはい、いいよ、眼鏡はそうだもんな、うん」ションボリ

眼鏡「ゴメンナサイ…」

金髪「キス一発ぐらいで心折れるなよ…それでも男か? ん?」

眼鏡「…と、とにかく電話に出ますんで、ハイ」ガタッ ガタタッ

金髪「はいよ、こっちはちゃんと待ってるから好きにしな」フリフリ

眼鏡「ん、ん…」テレ

眼鏡(あれ? 電話だと思ったらラインだ、着信音がいつの間にか変わってた…?)カチカチ

眼鏡(…ぁ…委員長、からのライン……)

眼鏡(……だ……)ピタリ



金髪(ガム噛んできて良かった…)チラリ

眼鏡「……」

金髪「んお? どったの眼鏡、さっきから固まって…誰からの電話?」

眼鏡「…ぁ、うん…」

金髪「? どした?」

眼鏡「………」

眼鏡「……一つだけ、訊きたいことがあるんだ」ボソリ

金髪「まだ訊きたいことあるかよ、もういい。全部ゲロっちまえ、聞いてやるよ」

眼鏡「この前の勉強会、憶えてる?」

金髪「勉強会? あぁ、そうな、憶えてるよ」

眼鏡「…確か金髪さん、用事あるからって勉強会無くなったよね」

金髪「うん、そうだけど?」

眼鏡「俺さ、その日、委員長と参考書を買いに行ったんだ」

金髪「…言ってたな、それが?」

眼鏡「………」

眼鏡「…あの日、何の用事だった?」

金髪「何って、別に報告するほどのモンじゃない程度の用事で…」

眼鏡「…勉強会の日なのにか」

金髪「さっきから何いってんの? 眼鏡、携帯で何を見たって───」ビクッ

金髪「──ちょっと見せろ、その携帯」

眼鏡「まだ最後まで質問してない」スッ

金髪「い、良いから見せろって…! あんた、何を見たんだよ!? ちょっと…!」グググ

眼鏡「…俺は信じてるから聞きたいんだ、本当の事を言ってくれよ」

金髪「…っ」

眼鏡「教えて欲しい」


眼鏡「あの日、なんの用事で、誰と会ってたんだ?」



~~~~


「私はね、元から最低な人間なんだよ」

「どう関係が壊れるか、絶妙なタイミングでジョーカーをぶち当てる天才だって言ってもいいね」

「そして私は本当に最低になることを決めた。友くん、君のお陰だよ」


友「…いいんちょ…」ゾク


「ハーレム、そうハーレムだよ。皆最低で、みんなイイ」

「あっ、あっ、すごい、コレ凄くキテる。もう我慢しなくてもいいよね、やっちゃってもいいよね?」ニマァ

委員長「──ダメだよ、横取りは。一人勝ちは許せない、だって好きはそういうことでしょ?」

友「……」

委員長「けど安心してね☆」

委員長「私も一人勝ちなんて望んじゃいないよ? 皆幸せに為らなくちゃダメ、友くん君も幸せに為らないと」ニコ

友「…でも」

委員長「もっとだよ、もっと皆、どん底までに落ちないと罪悪感なんて消えないんだ…」

委員長「ハーレムはそうじゃなきゃ作れない。友くん、私、そして金髪さんも」


委員長「そして一番、罪悪感を失くして強くならなきゃいけない───眼鏡くん」


友「いいんちょ、ハーレムなんて……夢の話よ?」

委員長「あれおかしな事言うね? 友くん、ハーレムの一番の良い部分を忘れちゃったのカナ?」

友「え…」

委員長「【今が良ければそれでいい】、友くん。君はオトコだけど、この関係に埋もれていたくないの?」

委員長「どんなに非生産的な行為であっても、罪深きものであっても、ハーレム空間は許してくれるんじゃなくて?」ニィィィマァァア

友「…っ…」ブルッ

委員長「好きだよ友くん、だから君となら一緒にえっちしても全然苦しくない」ニコ

委員長「…眼鏡くんとー友くんとー私、実にハーレム」


そして、彼女も。


委員長「あー本当に【ホテル街の近くの書店選んで、今となっては正解】だったなぁ」カチカチ

委員長「──まさか先輩さんとね、イチャイチャしてるところ撮れるなんてさ」ニマニマ

友「…わ、我は…」

委員長「君が望んだハーレムだよ」

友「っ」びくっ

委員長「…溺れようよ、一緒に」ニコ


~~~~

眼鏡「…言えないの?」

金髪「…っ…そ、それは」

今日はここまでノシ

委員長ーーーーーーー
俺が好きになった委員長はもういないのか……
それともすべてが演技だったのか……

>>173
同志よ
意外といいんちょ好き多いのね

>>173-174
委員長以外考えられない

眼鏡「この写メは委員長から送られてきた」

金髪「…っ…」

眼鏡「だから出処が偽造とか、偽物じゃないとは思ってる」カチ

金髪「…ああ、そうだよ」

眼鏡「…………」ピク

眼鏡「──じゃあ、ホントか」スッ

金髪「ん、確かにその日はあんたとの勉強会をやめて、会いに行ってた」

眼鏡「先輩に?」

金髪「詳しく言えば先輩とその友達とだな。カラオケに行ってた、そりゃ盛り上がったよ」

眼鏡「…」コク

金髪「で、そこの店長さんがあたしら学校のOBらしくてさ、無礼講だっつって酒も出てた」

眼鏡「飲んだの?」

金髪「飲んだよ、つか家でもフツーに婆ちゃん勧めてくるし、別に苦でもなかったしな」

眼鏡「…未成年で飲んじゃダメだろ」

金髪「固いな眼鏡、だからあんたには言いたくなかった…なんて今だったら言えるかもな」

眼鏡「それで? そっからどうした?」

金髪「……」ジッ

眼鏡「教えてくれ」

金髪「知って、それを知って眼鏡はどうすンの?」

眼鏡「知りたいから教えてほしい。それの何が駄目なんだ?」

金髪「どう言ったって眼鏡はあたしの言葉を信じることしか出来ないじゃん」

眼鏡「まあね、先輩さんに問いただすことなんて出来ないよ、俺はチキンだから」

眼鏡「──でも金髪さんから聞きたい、それからどうなったかを、そして俺はそれを信じたい」

金髪「……」

眼鏡「…言ってくれ」


(無理だよ、信じられない。彼女が誤魔化しても例え事実を言ったとしても、君はとうに溢れ始めてる)クスクス


眼鏡「聞きたいんだよ、訊かなくちゃダメだ。じゃないと俺は、色々とダメだ」

金髪「…二時間ぐらい飲んで歌って、それから皆カラオケで別れた」


(溢れ、溢れ、止めどなく溢れ出る。【嫉妬】の感情に対して君は抗うことは出来ないんだ)

(彼女は自分を一番だと言った。でも数日前に、彼女は他の男とホテル街を歩いていたんだから)


眼鏡「でも金髪さんは、先輩さんと一緒に出た?」

金髪「その写メの通り、あたしは先輩と遊びに出かけた」コク


(事実はなんだ? 一番とはなんだ? ぐるぐると君の中で、善悪の秤が悲鳴を上げる)

(絶えず感情を押し込めて、彼女を好きだ好きだと思い続けた君だからこそ)


眼鏡「…ホテル街を歩いたってコトか」

金髪「……」

眼鏡「それは、あれか、やっぱり」

金髪「酔ってた、ただそれしか言えない」

眼鏡「……」 ヂリッ



(──【ここで】【君の感情】【は】【壊れる】)クスクスクス



眼鏡「………」

金髪「それしか言わない、どう言ってもあたしが言うことは嘘っぽくなる」

眼鏡「…嘘でもいい」

金髪「本気で言ってる?」

眼鏡「じゃあ事実ってなんだ」

金髪「どっちを言っても眼鏡は満足しないだろ。ただ、その写メだけが事実だって」

眼鏡「……」ギュッ

金髪「それをどう眼鏡が思うか、ただ、それだけ…だってば」


(どうする? どうするどうするどうする? ね、ね、眼鏡くん? 君ならどうするの?)

(最低だと罵る? 出来ないよね、彼女は彼女で揺れていたことを君だって知っている!)

(一番だと【今】では言ってくれたから! でも彼女の過去を、数日前の事実を知ってしまた君なら何を望む?)

眼鏡「……」ブルルッ

                ゾクゾク


(あああぁ…それだよ眼鏡くん、今こそが奪うときなんだ。彼女の想いを全てかっさらう時なんだ…)

(嫉妬に任せて、感情に押し出されて、若気の至りという名目で──彼女を手に入れるとき)

(もう君の想いは正当化されない、君がここで更に最低に為らないと全て台無しになってしまう)


(──無理やりにでも押し倒して、全てを奪うんだよ!)ニマァァ


眼鏡「……」スッ

金髪「……っ?」ビクッ


(めちゃくちゃにしちゃうんだ、彼女の価値を全部自分のモノにする、残ってる手段はそれしかない)

(止まらないよ、良い、それは素晴らしいコト、君に刺さった針を抜く時だ。抜いた時、きっとそれは溢れだす)

(本当の恋を見つけたい。私が刺した針は、今ここで、今! ここで今! 抜け落ちたら罪悪感は消える!)

(君の努力は崩壊を迎え! 君の価値観はひっくりかえり! 君はここで本当の意味で最低な人間になる!)ゾクゾクゾクゾク

眼鏡「……」

金髪「…め、がね…?」ドクン


(優しい君はここでオシマイ)

(ようこそ此方側へ、歓迎するよ眼鏡くん。初心者の君に熟練者の私から手助けを送ろう)スッ


委員長(君が選びとった時、私も彼女の手足を抑えてあげる。暴れる彼女を責めて上げるよ)

委員長(善悪が平等じゃない君にとって私の手助けは、何よりも重要なファクターになる)

委員長(耳元で、たまらなく優しく呟いてあげちゃうから──『さあ早く、彼女の服を脱がしてあげて』とね)


クスクスクス クスクスクス


委員長「さあ、早く」ジリジリ

委員長「来て、此方側に」

委員長(一緒に最低なまま溺れ続けようよ、みんな君のことが大好きなんだよ)

委員長(大丈夫。楽しいよ、きっとみんなで身体を求め合うのは、悪いことじゃないんだよ)

委員長(【綺麗な恋の始め方なんて、絶対にさせてあげないんだから】)

委員長(──行くんだよ、行くんだって、今、ここで行く! ヤれば幸せ! 超興奮するよ、ヤバイヤバイヤバイ)


ゾクゾクゾクゾクゾク


委員長(今!)




眼鏡「ん、そっか」ポンポン

金髪「へっ?」キョトン



眼鏡「わかった。そりゃ聞いちゃ悪いわな、金髪さんだって悩んでたの知ってるし」ナデナデ

金髪「……」ポカーン

眼鏡「ち、ちっと嫉妬とかするけど。複雑な気分だったりするけど…」ぽんぽん


眼鏡「好きだから、平気だ」コク

眼鏡かっけーーーーーーーーーー!!


……のか?笑



委員長「─────………」

委員長「やっぱ、そっか」ニコ


友「…いいんちょ?」

委員長「うん。だめだったみたい、最後の最後まで頑張ってみようかなって思ったけれど…」

委員長「彼の想いは強かったみたいだね。本当に凄いや、ここまでやっても彼は優しかったんだね」

友「いいんちょ…」

委員長「うん、うん、そうだね。だからこうまで頑張ったんだよね」ポタ


ポロポロ…


委員長「──そんな彼の優しいところが好きになったんだもんね…っ」ポロポロ

友「……」ブルッ

委員長「あーあ、羨ましいなぁ…あんなに人に好きだって言ってもらいたいなぁ…」ストン

友「いいんちょ、いいんちょ」

委員長「大丈夫、大丈夫だから、声を殺して泣く、から」グスッ

友「うん、うん」

委員長「…ごめんね、本当に自分ってば諦め悪くて、なんだろうね、本当に」ギュッ

友「我もあきらめ悪い」

委員長「だね、みんな諦めが悪いんだ。ばかみたいに必死で、恋だなんて何度だって出来るのにね」

委員長「でも、好きになるのは何時だって一回きり…始まりはどんな時も大切だから…」グシグシ

友「ん…」

委員長「こんなこと最低な私が言うセリフじゃないか、くすくす、ぐすっ、ね?」ニコ

友「…そうでもない」コクコク

委員長「やさしいね、友くんは」ぐすっ

友「……」

委員長「ハーレムでもいいから、なんて、思い切ったのに…最低な私はやっぱり最低な終わり方だったなぁ…」

委員長「…でも、これで良いんだよね、きっとさ」

友「……」スッ

委員長「友くん…?」

友「静かに」

委員長「ぇ、ぐすっ、ど、どうしたの?」

友「…揉めてる」コソリ

委員長「ふぇ?」



「──は、はは、お前、なに言ってんの?」


金髪「好き、だから別に良いって気にしないって、お前」ボーゼン

眼鏡「気しないって」

金髪「なんでっ?」ビクッ

金髪「だってホラ! あたしってば数日前、たった数日前にだよ!? 他の男とヤッてたんだぞ…!?」

眼鏡「お、おう…やっぱそうなんだ…」

金髪「そーしか見えないだろ!? なのに眼鏡は、なにそれ、お前はそこまで…っ」

眼鏡「今は一番だって言ってくれた、ならそれで良いと思うけど」

金髪「…………………………」

眼鏡「金髪さんが好きだと言ってくれれば満足できる。超複雑、でも俺は平気だって言ってやるさ」

金髪「………んだよ、それ…」ブルッ

眼鏡「信じたいから、信じて一緒に付き合って行きたいから正直に生きたいんだ」

眼鏡「理由として好きだからじゃ、ダメかな?」

金髪「っ……!!!」バッ

眼鏡「わっ!?」

金髪「眼鏡はっ! 何でッ!? なんでそこまでこんな、あたしを好きだって言えるんだよ…!?」ブルブル

眼鏡「……」

眼鏡「そりゃ好きな人の為に頑張る、そんな貴女が好きになったからじゃん」

金髪「───……っ」ぎゅっ


金髪「…違うっ、それはっ」


眼鏡「…え?」

金髪「あたしは何も…強くない、ずっと揺れてた…あんたを誤魔化してた…」ブルブル

眼鏡「き、金髪さん?」

金髪「ずっとずっと甘えてたのに…ハーレムだとか、そんな仲に入れられる事自体…っ」


金髪「自分にそんな資格が無いだろって、ずっと思ってた…ッ」ギュッ


眼鏡「どういう…?」

金髪「あたしは、あたしは! 眼鏡にそこまで惚れられる理由がわからないッ!」バッ

眼鏡「で、でも…俺はそう思ってるし…」

金髪「他にもいっぱいるだろ…っ? こんな最低なあたしより、もっともっと良い奴が…っ!」

眼鏡「いや、他に居ないって、金髪さん以外とかあり得ないって」

金髪「……ぁ……ぅっ……」ポロポロ

眼鏡「ええっ!? な、何で泣くのっ?」

金髪「だ、だってあたし…」フルフル



金髪「……【まだ】…迷ってる、のに……」フルフル

眼鏡「…え、まだって、な───」


バタン!!!


眼鏡「ひぅっ!?」ビクゥン

金髪「ぇ…」


「それは言うな」

「…そこまで言ったら本当に、金髪さん怒るよ」


金髪「あ、あんたら…」

友「絶対に言うな」ズンズンズン

金髪「うっ!?」

委員長「良い、眼鏡くん? 今の金髪さんのセリフは、きっと『魔だ』という霊感的な意味でね?」

眼鏡「え、はいっ? つか、ちょっとちょっと!? 二人共!?」

友「大丈夫、我がさっき祓った。どーまんせーまん」

眼鏡「いやいやいや! 知ってたけど、居たの知ってたけど乗り込んでくるかフツー!?」

委員長「眼鏡くん」

眼鏡「い、委員長…?」

委員長「さっきのラインのこと謝りたいけど、今はゴメン、後にして」

眼鏡「へっ?」

友「それよりも金髪つぁん先」コクコク

金髪「……っ」ビクッ

委員長「金髪さん。わかってるんだよね、わかってて言いかけたんだよね?」

金髪「い、いきなりなんだよあんたらは…っ」

友「お節介を超えた怒髪天モード」

金髪「意味がわかんねぇよ…!」

委員長「意味がわからないのはそっちだよ、ふざけないで」

委員長「──貴女は今、ほんっとに一番最低なコトを言いかけたんだよッ!?」

金髪「…っ」びくっ

友「洒落にならんよ、ほんと」

委員長「全部だ、今の言葉で全員の全部の努力がなかったことになるのにッ!」

金髪「ッ…あんたが何を知ってるんだって言うんだよ!? 委員長だって好き放題やっただろ!?」

委員長「ええそうですとも、でもあたしは皆で幸せなるように願ってた!」

委員長「でも貴女は違った、自分だけ逃げるために理由を吐こうとしたじゃないっ!?」

金髪「うるせーよッ! テメーよりよっぽどマシだ、こっちは真面目に考えてるからそうなるんだろうが!!」

委員長「…私が真面目に考えてないと思ってるの…?」スッ

金髪「あーそうだよ何度だって言ってやる! 最低な奴になりきれねぇ半端モンがしゃしゃり出てくんじゃねぇ!」

委員長「そう、そんなコト言うんだ、へぇ~~え~~~」ニコ


委員長「じゃあ言っちゃおっか、眼鏡くん。金髪さん、まだ先輩のこと大好きだよ?」ニコニコ


眼鏡「…ぇ…」

友「いいんちょ!?」

委員長「これで良いんでしょう? 金髪さん、貴女やっと誰よりも最低になれたね。最後まで真面目に考えてて良かったね」ニコニコ

金髪「…っ…」キッ

委員長「なんて顔してるの? 私が変わりに言ってあげただけ、晴れて立派なサイテイな人間なれたんじゃない!」

金髪「このアマ…ッ!」

友「ダメよ金髪つぁん!」ガシッ

委員長「どーせ自分で言いたかったとか、言うんでしょう? 自分で解決したかったとか言いたいんでしょう?」

委員長「言ってあげる、腐ってるね根性。本当に一番最低だったのは、一番弱虫でチキンだったのは貴女だったんだね」

友「いいんちょ! もういい! もうイイからやめて…!」

金髪「…離せ、殺してやるから」

友「だめよ! 金髪つぁんもいいいんちょも落ち着いて!」

委員長「だめだよ、最後まで言うから。ねぇ金髪さん、貴女は何時だってハーレムに否定的だったけどさ?」

委員長「──結局はそれ、ホントに眼鏡くんのこと好きだと言えなかったからじゃない?」

金髪「…っ…」

委員長「そうとも取れることを、さっき言ってたよね? 聞いてたよ、凄いね、尊敬するよ、カッコイイね」

委員長「いつも一歩引いて経ってる自分に惚れ惚れしてたんでしょ? そんな自分をずっと凄いと思ってたんでしょ?」

金髪「」ブツンッ

金髪「ふん!」ブゥン

友「おわーっ!?」ゴロン

金髪「一つ教えてやる、あたしが一番嫌いなタイプは…分かったようなセリフを吐く奴だ、殺す」

委員長「一人の男の子の告白を受け取れられない人が出来るの?」

金髪「わかった、動くな。この椅子で頭かち割ってやるから」

委員長「やってみなよ」

金髪「殺るよ」ググッ


バッシャーーーーンッ!


金髪「…!?」

委員長「と、友くん?」

友「はぁ…はぁ…二人共落ち着く! だめ喧嘩!」

金髪「そういやお前も分かったようなこと言ってたな、あたしのこと」

友「だ、だから言い争ってる場合違う! こんなこと違う!」


ガタン! ゴトッ!


友「っ!?」ビクッ

委員長「ごめんね友くん、今は黙ってて。じゃないと君まで嫌いになりそう」ニコ

友「い、いいんちょ…」

金髪「メンドクセェこと言ってないで、とっとと二人して来いよ」


委員長「……」

金髪「……」

友「……」


ばったんどっかん! ガシャーン! きゃー!? 痛い痛い痛いーぃ!?



眼鏡「……………………………」ボーゼン

眼鏡「ちょ…」


委員長「だらぁあああああッ!!」ギリギリギリ

金髪「痛たたたたッ!?」


眼鏡「あの…」


友「とりゃっ!」トン ブォン!

委員長「きゃーっ!?」バタン


眼鏡「…っ~~…」


金髪「おるァッ!」ブォン

友「ひっ」ゾク


眼鏡「………」

眼鏡(な、なんですかコレ……え、何がどうして皆こんな……え、えー…?)ダラダラダラダラダラ

眼鏡さんこんな状況になってもぶれない

眼鏡「………」ストン


ドッタンバッタン! ガッシャアアアアアアンッ!!


眼鏡「もう…俺には、よく分からんよ…」ポテン

眼鏡(頭の処理が追いつかない、怒ってる理由も、皆が必死な理由も)

眼鏡(…ただ、それでも。きっとそれは、そう…)

眼鏡(──まだ、という意味は理解できるんだ)


ぐるぐる ぐるぐるぐる


眼鏡(あー目が回る、気持ち悪い、吐きそう)

眼鏡(俺って風邪を引いてたんだよな、なのにいっぱい人と喋って寝てる暇も無くて、)

眼鏡「色んな人が…俺のことを心配しててくれて……」

スッ

眼鏡(…もういい、閉じてしまおう、色々ともう【面倒くさい】)パチ

今日はここまでノシ

次で終わらせます

どこで歪んでしまったのか
乙です


金髪が全面的にアレだったのは既に最初の眼鏡をキープしておきたい的な発言から分かってたことだしなぁ…

おぅふ……
いろいろとあれですな

おおぅ…乙でございます

このスレが終わりなだけで次スレもあるよな?

んーよくからん
金髪は生理的に無理だ

委員長のが無理だろ…

委員長≫≫≫友≫金髪
だな

全員無理

>>207同意

金髪はない

~~~

「例えば、そう喩え話で良いんだけどさ」

「眼鏡くんが結局のところ、誰も選ばなかった場合、この状況はどうなると思う?」


眼鏡「…何も変わらないんじゃね?」



「変わるよ眼鏡ちん」

「【選ばない】は既に優しさじゃないから、やっちゃダメ、もう仲良くなんて出来ない」


眼鏡「そんなワケないだろ、やってみなくちゃ」


「やれンのか?」

「もし仮に誰も選ばない。なんてコト、眼鏡に出来るのかよ」


眼鏡「……」

眼鏡「今みたいな面倒くさい状況が続くのなら、俺としてはそれはアリだと思う」

「そっか、そっかそっか」

「眼鏡ちん」

「そりゃちっと都合が良すぎるっしょ」


眼鏡「は?」

眼鏡「なにがっ? 都合が良すぎるのはそっちだろっ!?」

眼鏡「一人の女の子が好きだ好きだと言ってるのに好き放題言いまくったアンタ等が言うかっ!?」

眼鏡「だから頑張って最低になってでも告白したのに! ちゃんと答えを貰えれば断れると思ってたのに!」

眼鏡「それがなんだよ、今更になってまだ迷ってるとか言い出した!」

眼鏡「俺はどーしたらいいんだよッ!? 何が正解で、何が間違いなんだ…っ!?」

眼鏡「俺は…っ…俺は…っ……」ギュッ

眼鏡「………」

眼鏡「…面倒臭い…」

眼鏡「あぁーーーーーーーーーーッ!! 超メンドクセェ!! 嫌だ嫌だハーレムとか超嫌だッ!! もう懲り懲りだっつのッ!」

眼鏡「確かに俺が迷ってたりチキンだったりしたのが悪かったよ!?」

眼鏡「だからこんな面倒臭い状況になったッ! わかってる、わかってんだよ!」

眼鏡「でもさ!? 迷うのも当たり前だろ!? こんなにも好きだって言われるのは初めてなんだよ!」

眼鏡「す、好きになるのは慣れてるけど…っ…好きになってもらうのは、全然慣れてないんだよ…ッ!?」

眼鏡「それで、それなのにそんな俺が最後までずっとずっと想い続けてたッ!」

眼鏡「…なのに、報われない…っ」


眼鏡「……わかってる、わかってるんだ」

眼鏡「ごめん…、ちゃんとしなかった自分が一番悪いよな…本当ごめん…」

眼鏡「俺が…悪いんだよ…本当にさ…」



~~~


眼鏡「───……」パチ

眼鏡(あ、あれ、俺の部屋だ。ベッドに寝てる…? つか今さっきのは夢か…)

眼鏡(嫌な夢だった、最悪だ)ぐいっ


ぐいぐいっ ぐいっ


眼鏡「? なんだ、右手が動か…」チラリ

金髪「……」じぃー

眼鏡「ないん、だけど…」

金髪「よぉ」

眼鏡「……」

眼鏡「何してんの?」ダラダラ

眼鏡「えっ!? な、なんで一緒のベッドの中に───」バッ


グググ


眼鏡「あ、あれ? 左手もすっごくお、もい……」ピタ

委員長「やっほ」ニコニコ

眼鏡「…委員長さん?」

委員長「そうだよ」

眼鏡「それで…」チ、チラリ

金髪「ンだよ」

眼鏡「……友は?」


「我ここに居る」モゾリ


眼鏡「ひゃいっ!?」ビクゥ

友「眼鏡ちんのおなかの上いました、特等席」フンスゥ

眼鏡「…………………」

金髪「ほらどうすンだ、眼鏡困ってんぞ」

委員長「くんくん、うん? それも込みで良い物じゃない?」

友「みんな静かになってる、これでよし」

眼鏡「すんません、ごめんなさい、どういった状況なんですかコレ?」ダラダラダラ

金髪「色々とあったけど、ぶっちゃければアレだな」

委員長「そうだね。友くんが本気でブチ切れて、包丁なんか振り回し始めちゃってさ」

眼鏡「えっ!?」

友「……」

委員長「『眼鏡ちん倒れたのに何やってるの? ねぇ? 放っておくの?』ってね」

金髪「…マジで殺されるかと思ったわ」

委員長「それ程に鬼気迫った表情だったし、私も軽くトラウマになりそう…」

眼鏡「友…」

友「とりま、三人で部屋まで運んだ、それから金髪つぁん帰るとか言い出したから」

委員長「うんうん。また喧嘩がぶり返そうになって」

金髪「コイツが眼鏡から離れたら、眼鏡殺すとか言い出したんだぞ…」

眼鏡「そ、そんなこと軽く言うんじゃないよお前は…」

友「冗談で言うと思う?」

眼鏡「…まぁそれ程本気で止めたかった、と勝手に思っておく」コクコク

金髪「マジかよ…許しやがったよ…」

委員長「相変わらずだね、本当に」クスクス

友「それこそ眼鏡ちん」

眼鏡「い、いやいや、確かに気にせずには居られないけどさ、今はそれよりもっ」

委員長「確かに眼鏡くんにはきちんと説明しないとね」

友「一人ずつ思惑言っていく?」

金髪「…ああ、そうしなきゃダメだよな」ギュッ

眼鏡「よ、よく分からんが話をするなら…まずこの状況をやめたりしない…?」

委員長「ダメ☆」

友「ダメよ」

眼鏡「……、」チラリ

金髪「…」フルフル

眼鏡(金髪さんまでかよ…みんな風邪が移っても良いのか…いや、気にする所はそこじゃないだろうけど)

眼鏡「わ、わかった! じゃあ聞くから、一人ずつどうぞ…?」

~~~

眼鏡「えっと、つまりは…」

友「我がハーレム言い出したのは、ちゃんと二人が付き合って欲しかったから!」フンスス

眼鏡「う、うん。そして委員長は…」

委員長「友くんの作戦の流れに乗ってたけど、我慢できなくて諦め悪くて、写メを送りました」コク

眼鏡「な、なるほどね」

眼鏡「……。素直に感想を言うよ、友と委員長、凄すぎない?」

友「でへへ」

委員長「てへへ」

眼鏡「一応褒めてるから照れてもいいけどさ…いやなに、どうしてそこまでやったのかという疑問が…」

友「眼鏡ちん好きだからよ?」

委員長「私もだよ?」

眼鏡「……、いや本当に凄いわ」

眼鏡(ここまでバッサリ言われると、戸惑う前に呆れる。感心するんだな、人って)

金髪「そりゃそーだろ、あんたの応援だってあたしはそう感じた」ボソリ

眼鏡「うぃッ!? ひ、人の心を読まないでね金髪さん…っ?」

金髪「……」ジィー

眼鏡「えっと、うん、後は金髪さんの話を聞くだけなんだけど…」

金髪「……」

友「言わなきゃダメ」

委員長「言わなきゃ終わらないよ、この流れは」

金髪「だぁー…なんだよ、もう…」ガシガシ

金髪「はぁ──あたしは、まだ迷ってる。眼鏡の好きって言葉を素直に受け取れられない」

眼鏡「ん…」

金髪「ちゃんと言えば、その、眼鏡のことが……すごく恐く感じてしまった、だと思う…」

眼鏡「こ、恐い?」

金髪「なんでもかんでも信じちゃうつーか、す、好きだって思えれば軽く許す眼鏡は…」

金髪「なんかもう、あたしみたいな人間とくっ付いちゃダメだろ。とか、思った…わけです」

眼鏡「…純粋過ぎるって言いたいのか?」

金髪「……」

眼鏡「えっと…」

友「どっちかと言うと優しすぎると我は思う」

委員長「だから恐いんだよね?」

金髪「…なんかアンタ等の立ち位置滅茶苦茶だな、なにがしたいンだよホンット…」

友「今は金髪つぁんが正直に最低なコト言うところ」コクコク

委員長「邪魔しないよ。むしろ素直に言ってくれたほうがまだ、スッキリ出来るし」

金髪「んだよそれ…」ギュッ

眼鏡「俺は聞きたい。ちゃんと聞いておきたいよ、金髪さん」

金髪「…っ…」ビクッ

眼鏡「だから最初から最後までちゃんと受け止める。どんなコトを言っても俺は…」

眼鏡「…貴女のことが好きだから」

金髪「っ~~~…本当に恐い、なんだよそれ、なんなんだよ眼鏡は…っ」

眼鏡「……」

金髪「だ、だからさ、あたしはまだ…好きなわけ、先輩が」ボソボソ

金髪「でも! …今日に眼鏡のお見舞い来て、眼鏡が一番か聞いた時…あたしはその時、素直にこう感じた」


「──もう迷うのは辞めよう、ここで、ちゃんと眼鏡のコトを見よう」


金髪「…だから一番って言ったの、それは眼鏡の為にじゃなくて、むしろあたしの為に言ったワケ…」

金髪「最後にキスなんてしちゃえば、もう心変わりなんてしない。なんて全部全部、自分のためにやったこと」

金髪「けど、その後にあの写メを眼鏡に見られた」

委員長「……」

金髪「数日前の先輩と一緒に遊んでる、しかもホテル街で連れ添ってる写メ」

金髪「──やっちまったと思った」

金髪「ここで来るかって、そりゃフラフラしてたあたしが悪い。ここぞと言う時に来るのが…天罰ってやつだろ」

金髪「もう駄目だと思った。もう何をしても許されない、優柔不断なあたしはここで終わるんだって」

金髪「…だから眼鏡がキレて、押し倒されたって抵抗しなかったと思う。飽きられて見捨てられるのも、覚悟してた」

眼鏡「ん」コク

金髪「でも、あんたは許した」スッ

金髪「──こんな、ばかであほで、優柔不断で、最後の最後まで一人を選べなかった…こんな醜いあたしを…」

金髪「すき、だからって…たったそれだけの理由で…っ…なんでだろ、すごく怖かった……もう嫌だな、逃げたいって…」ブルブル

金髪「これ以上優しくされたら、もう、どうしようも無くなるだろ…!」

眼鏡「……」

金髪「──最悪、最低、こんなあたしは本当に終わってる」

眼鏡「それが、金髪さんの全部?」

金髪「…」コク

眼鏡「そっか…それが全部か…」

友「眼鏡ちん」

眼鏡「おう。そうだな、うん、そういうことだったんだな」

委員長「みんなの言うこと、眼鏡くんは信じる?」

眼鏡「三人が言ってくれたこと? そりゃ信じるよ、そういった人たちなんだって俺は知ってるからね」

金髪「…なンで?」

眼鏡「なんでって…」

委員長「どうして?」

眼鏡「……」

友「なにゆえ?」

眼鏡「…そりゃだって、当たり前だろ」


(好きになってたんだから、そんな強い覚悟を持ってる人たちだって分かるんだ)


眼鏡「……」テレ

委員長「くすくす」

友「流石眼鏡ちん」

眼鏡「ま、まだ何も言ってないけど!?」

金髪「…あたしは全然強いやつじゃないけど…」ズーン

眼鏡「ちょっとちょっと! あのさ、待ってよ皆? 今回は色々とキチンとするべきことだよね!?」

委員長「もちろん、眼鏡くんの言うとおり『何かを決めなくちゃダメ』な時だ」ニコニコ

友「もう全部が台無しなった。みんなの努力はバッサリなかったことになった」コクコク

金髪「…あたしは眼鏡の覚悟を裏切った、全部、あたしのせいだ」

眼鏡「う、うーーーん…」グムム

委員長「どうする? みんながみんな、とっくに最低なやつだって知れ渡っちゃったけど」

友「好きに選べばいい」

金髪「…他のやつ選べよ、絶対にまだあたしが好きだとか言うなよ」

眼鏡「いや、その、えっと」

眼鏡(なんだよこの状況は…だけど、た、確かに決めなくちゃダメな時だってわかるんだが…)ダラダラ

眼鏡「お、俺としては! 頭では理解できているけど、心というか、心理的にぐちゃぐちゃなわけで…」

委員長「お? これは皆フラれる感じかな?」

友「それもアリよ」

金髪「……」ジッ

眼鏡「……。そりゃ無いよ、ちゃんと選ぶから…うん」

眼鏡(誰もが最低だって言うが、そんな状況を作った俺が一番最低だ…)ギュッ

眼鏡「俺はちゃんと答えるつもりでいる、誰が…その、」チラリ


委員長「…」ニコ

金髪「……」ギュッ

友「~♪」ピュー


眼鏡「──……」ドキ

眼鏡「ちゃ、ちゃんと俺は……っ」



「ただいまー! 愛しのお兄ちゃんが帰ってきたぞー!!」ガチャ



眼鏡「っ!?」ビクッ

委員長「ぇ」

友「あ、やば」

金髪「この声って…あ! ちょっとこれヤバくない!?」ガバァ

委員長「あ、暴れて放置しっぱなしだよね…?」サー

友「あわわあわわわ」



「良い匂いがするぞ? もしや弟ちゃんってば、オレの為にお昼ごはん……」

「なんじゃこりゃあああああああああああああ!?」



金髪「ど、どうするんだよ!? 謝りに行くかっ!?」

委員長「土下座!? 土下座する!?」

友「おちちちつおちけつお尻!」


眼鏡「……」ホッ

眼鏡「! い、良いよ、後は俺がなんとするからさ? みんなはとりあえず帰ってくれたら…!」

金髪「な、なんとかするって眼鏡…」

委員長「さ、流石に説明ぐらいはしておかないと…」

友「に、兄様の女関係のしわざするっ?」アタフタ

眼鏡「あ、うん、それもアリだな。けど今日は帰ってくれたら嬉しい、と俺は思ってる」

金髪「……」

委員長「…それは」

友「眼鏡ちん、実はホッとしてる?」

眼鏡「ば、バカ言え! そんなわけ無いわ! …ごめん、実は凄くしてます」ガックリ

委員長「まぁ急に決めろと言ってもあれだよね…」

金髪「…あたしはすぐに決めて欲しい、眼鏡の答えが欲しい」

眼鏡「金髪さん…」

金髪「あたしは弱虫だ。それに自分で答えを決められない、そんな最低な女だから…」

金髪「…眼鏡の言葉を信じたい、最後の最後まで、本当に最低だけど…」

眼鏡「いや、違うよ。俺だって金髪さんの答えで決めようと思った、おあいこだって」

金髪「そんなこと…っ」

眼鏡「金髪さん」

眼鏡「…あんまり弱々しい言葉を言わないでくれ、それこそ嫌いになってしまいそうになる」

委員長(お…?)

金髪「あ…ご、ごめん…なんだろあたし、本当に参ってるな…」ガックリ

友「眼鏡ちん?」

眼鏡「さあみんな、後は俺に任せて」

眼鏡「……」

眼鏡「…答えは月曜日、学校で言うから」

委員長「そ、そんなに早くていいの?」

金髪「……」

友「すごい」フンスス

眼鏡「金髪さんじゃないけど、俺もすぐに答えを出したい、と思ってる」

眼鏡「だから待ってて、ください」ペコリ


~~~


眼鏡(結局のところ、今とキッチンの惨状は両親にバレた)

眼鏡(しかし両親は完全に兄貴の女関係だと端から疑い、それを兄貴は意外にも否定しなかった)

兄カッコよすぎるだろ
惚れた



『流石オレの弟! 壊れたモンは全部、オレが弁償してやる!』


眼鏡「と、言ってたが兄貴。それは認められんよ、うん」

兄「え、なんで?」ヘラヘラ

眼鏡「…だからこの皿も俺の財布から払う」

兄「ばっか! ダメダメ、兄ちゃんは払いたい気分なんだ。払わせろ、絶対に払わせろ」

眼鏡「……」

兄「いやー真面目で頑固な弟がなーまっさか女の子三人はべらかせて、自宅で喧嘩させるとはなー」ヘラヘラ

眼鏡「なんで嬉しそうなんだよ…」

兄「流石、オレの弟だと感心してる。血筋って重要なんだな、今更になってそう思うんだ」ウンウン

眼鏡「意味が分からん…あとこれ、ロングテーブルと椅子も」

兄「あいよ。あ! でも女の子三人じゃないよな、友くんちゃん居たし」

眼鏡「……」

兄「流石だわーオレの弟ってば男の娘まで手籠めにするのかーすごいわー」

眼鏡「あのな、兄貴…」ピクピク

兄「んー?」

眼鏡「俺は兄貴と違って、いっつも違う女性と取っ替え引っ替えしてるんじゃなく…ッ」

兄「おうおう」コクコク

眼鏡「……、なんで笑ってんだ」

兄「いや、笑うだろ」クス

兄「今、オレは弟と恋話をしてるんだ。笑わないでどうする」

眼鏡「もういいっ」プイッ

兄「まー待て待て、うんうん。なんだオレにアドバイスが欲しいのか? ん?」ヘラヘラ

眼鏡「いらん」

兄「んな邪険にするなよぉ、可愛い弟の為に兄ちゃんが頑張りたいんだよぉ」

眼鏡「絶対にろくな事言わないから聞きたくない」ツーン

兄「む。幾らか恋次に揉まれたと思えば、未だ頑固さは健在か」

眼鏡「……」

兄「困ってるんだろ? なら意味が無いと思ってても、聞いてみることは間違いじゃない」ニッ

眼鏡「…自分で意味が無いとか、言うか」チラリ

兄「そりゃ嫌われ者の兄だしな」ヘラヘラ

眼鏡「あーそうだよ、俺は兄貴の事大っ嫌いだ」

兄「だろうな。つか何時も言われてるし、もう慣れた」ウンウン

眼鏡「いっつもいっつも女性といて、しかも違う人だったりする」スタスタ

兄「男の理想だろ?」

眼鏡「わ、わかるけど! リアルや、三次元じゃ俺は醜いとしか思えない」

兄「アニメもリアルがなきゃ生まれんよ」

眼鏡「やっていいことと悪いことがあるだろ」

兄「そう区別をつけることが、一般人にとって制約を生むんじゃないか?」

兄「リアルやらアニメやら、露骨に意識するヤツの方がオレは頭を疑うな、一緒に考えるなって」ニヤニヤ

眼鏡「…どういう意味だよ」

兄「つまりは、今お前が置かれてる状況はリアルだ」

眼鏡「……」

兄「アニメ規準で考えるな。漫画や二次元の例題を上げるな、それは女の子に対して失礼だぞ」

眼鏡「ッ…エロ同人誌が殆どハーレムモノの癖してよく言うなアンタ…!!」

兄「あっはっはっ! ありゃ夢が詰まってて楽しいんだよ、こっちは悲惨だからな」

眼鏡「悲惨? はっ、毎日楽しそうにしてるクセして…」

兄「うん?」

兄「うんにゃ、一度も楽しいとか思ったことないけど?」

眼鏡「…どうして?」

兄「だって大変だぞ、付き合ってる女の子が居ます。次の日は違う女と会います」ピッ

兄「またその次の日は違う娘で、いつの間にダブルブッキングしちゃって修羅場が起きる」

眼鏡「何股…?」

兄「んー五股?」

眼鏡「死ねクズ」

兄「そういうなよ、お前が」ニコニコ

眼鏡「…俺はちゃんと答えを出そうとしてる」

兄「修羅場を作り出した時点で片足どころか、両足突っ込んでるよ。お前はオレの弟だ」ヘラヘラ

眼鏡「…違う」

眼鏡「俺は一人を好きになったら、絶対に好きだって想い続ける」

兄「……」

眼鏡「それが普通だ、それが恋ってやつだろ。兄貴は間違ってる、兄貴は最低だ」

兄「…くっく、まーな」

眼鏡「なんだよ」

兄「いや、色々と思い出してた。初めてお前に兄貴嫌いだ、って言われた時とかさ」

兄「当時は死ぬほどショックだった。可愛いかわいい弟に、死ねくされクズと言われた時は…」シミジミ

眼鏡「今でも思ってますケド」

兄「良い、それが正しい。オレは間違ってるし、お前の言い分は至極まっとうだ」

兄「だからショックだった。そうか、オレもここまで来たか…ってさ」

眼鏡「はい?」

兄「もし仮に【最初はオレもお前のような考え方だった】と言ったら信じるか?」

眼鏡「信じるわけないだろ」

兄「だろーな! そういうオレを見せたこと無いし、絶対に誰一人と見せなかったつもりだしな」

眼鏡「なに? 今から良い訳タイム?」

兄「良い訳タイム」コクコク

兄「…お前は本当に優しい弟だ、だから好きだし溺愛してる」

眼鏡「な、なんだよ…」

兄「だから浮気なんて許せないし、何股だとか、ハーレム作れって要求も絶対に飲まないんだろうな」

眼鏡「…そうだよ」

兄「例え好きだと思ってしまっても、一番最初に本気で好きになった相手を想い続けたい」

兄「…その気持が凄く強い。だって優しいから、頑張りたいから、裏切りたくないから想い続ける」

眼鏡「……」

兄「似てるよ、オレとお前は」ヘラヘラ

眼鏡「…何が言いたい」

兄「でも無理だ、諦めろ」

眼鏡「は?」

兄「そうは想っても【周りがそれを変えてくる】。人は一人で完結できない、何時だって誰かの影響下のもとで生きてる」

兄「お前の理想は何時だって素晴らしいだろう。人類皆正義正当、これぞより良き人の世だと」

兄「だが人は馬鹿だ。とくに男はみーんな馬鹿、寄ってくる女子いたら頭下げて降参しちゃうね」

眼鏡「はぁっ!?」

兄「それが人間だ。アニメじゃなくて漫画でもない、人ってのはそうできてる」

眼鏡「なに、言ってんだアンタは…」

兄「事実だよ。そしてお前が迎える未来は、きっと【オレ】だ」

兄「…その優しさは絶対に、裏切れない。きっと皆を受け入れるために、お前は自分を追い詰める」


兄「みんな幸せ。それをお前は、最後に望むよ」


眼鏡「そうかい、だったら俺はアンタを反面教師に見立ててそうならないよう頑張るよッ」

兄「ああ、それがいい」ヘラヘラ

眼鏡「滅茶苦茶だよ、本当に今日で兄貴のこと嫌いになりそうだ…ッ」

兄「ああ嫌っていい。もっとお前が好きになる」

兄「…当時の自分を思い出せる、どんどん嫌いになってくれ。それがオレを応援し続ける」スタスタ

眼鏡「…?」

兄「言ったよな、ハーレムなんて同人誌と比べりゃ悲惨だってよ」チラ

兄「本当に辛いぞ。楽しくない、何時だって女の子のコトを考え続けて、今を維持しようと頑張り続ける」

兄「自由なんてこれっぽっちもない。個人の時間は全て、女の子の為に使うことになる」カチャ

兄「…このグラスはあの子が気に入りそうだな、それともこの子かなってさ」

眼鏡「じゃ、じゃあ…辛いならやめればいいだろ、最初から悪いことなんだ、だったら…」

兄「やめれるか?」

兄「みんな好きなのにやめていいのか? 始めたのは自分だ、今から捨てちゃって良いと思うか?」

眼鏡「……」

兄「いや、もうそんな考えも湧かないね。これが正しい、そう思わなきゃとっくに死んでる」コトリ

眼鏡「…どうして、続ける?」

兄「オレだから」

兄「こんな性格で、優しいから、…こんな人間だから今がある」クルッ

兄「最低でも、最悪でも、馬鹿でもクズでも、わかってたとしても【こうなる運命しかなかった】」

眼鏡「なん、だよそれ…」

兄「他に理由がないから仕方ない」フー

眼鏡「…意味がわからない」

兄「オレも意味がわからないよ。もしかしたら、神様が思惑通りこんな未来を作ったのかもな」クックッ

兄「だったら覚悟を決めるしか無い。例え間違ってると分かってても、周りがそうなっていくからな」

眼鏡「…それでも」

兄「おう」

眼鏡「始めたきっかけは、あるだろ兄貴…」

兄「覚悟の瞬間か。そりゃあれだ、もういっかと思って取り敢えずハーレム初めてみた」

眼鏡「…聞いた俺が馬鹿だった…」

兄「おいおい、始めなきゃ何も起こらないだろ。失敗だって成功だってわからないんだ」

兄「──取り敢えず全てを受け取って、そこから考える。ダメだったら諦めろ、成功したら頑張り続けろ」

眼鏡「…そうしなきゃ何も解決しない?」

兄「オレはそうしたな」

眼鏡「…だった俺は一人を選んで頑張るよ…」

兄「それもアリだ。でも、きっと周りは許さないと思うが」

眼鏡「…許してくれるよ、みんな覚悟がある人間だから」

兄「そうか、いい子たちなんだな」

兄「…まぁ、ちゃんと一人を選べたらの話だけど」

眼鏡「え、選べるよ…!」

兄「んー、オレは選べなかったけど?」

眼鏡「俺は兄貴と違う!」

兄「お前は勘違いしてる。選ぶのはとっくに、お前の意思だけの問題じゃないんだぞ?」

眼鏡「…っ…」

兄「どんな状況か知らんが、それでもお前の都合を相手に押し付けることは無理だ」

兄「…いや優しい真面目なお前だから、やれないでいる。違うか?」

眼鏡「だ、だからちゃんとするんだろ!? 俺は真面目で、ちゃんとやるから凄いんだろ…!?」

兄「おいおい、もっと自分に甘くなれよ…そんなんじゃ年取ってから大変だぞ、色々」

眼鏡「うっさい!」

兄「可能性を一つと絞り込むな。今更真面目になっても無理なものは無理、ダメ元で始めないといつか痛い目を見る」

眼鏡「ぐっ…」

兄「良いか、俺と違ってお前はもう始まってる。始まってから悩み始めてる、すでに手遅れだ」

眼鏡「て、手遅れ…?」

兄「ああ、手遅れ。だから選択しろ、【一人を選ぶということで今の状況から逃げよう】と思うな」

眼鏡「…っ」

兄「思ってた以上に複雑に悩んでたな、当時の俺以上に厄介だな」ポリポリ

眼鏡「…じゃあ教えろよ…ッ」

兄「ん?」

眼鏡「一人を選んで痛い目を見るって、どういうことだよ!? 知ってるなら教えてみろよ!」

兄「…ん、そうだな」


兄「──本当に一番好きな人と、絶対に付き合えない」


眼鏡「……え…」

兄「お前がもしあの三人から一人選んでも、絶対に断るぞ三人ともな」

兄「罪悪感がある。誰もが最低だと諦める、でもだからこそ目の前にある幸せを取る自信が湧かない」

兄「お前の選択で皆不幸せになる。それがハーレムだ、それがお前のやろうとしてることだ」

眼鏡「ま、まさか…んなことないだろ…」

兄「ある。オレも経験ある、だから絶対そうなる」

眼鏡「……本命、選んだのか?」

兄「ああ、選んだともさ。でも断られた、ばっさりぐっさりとどめを刺された」クス

眼鏡「…なんて言われた?」

兄「くっく、酷いことを訊くもんだよ」

眼鏡「あ、ごめん…」

兄「いいや、良い。こう言われたよ──」


『アンタは良いヤツだよ。そして偉いと思う、でもそれは正解じゃないな』

『時に人の優しさは物事を覆して、ごちゃごちゃにして、周囲へと迷惑を掛けることもあるんだよね』

『あたしには無理だ。みんなを裏切れない、あんたの優しさを受け取れられない』


兄「…よく憶えてる、忘れられんなやっぱ」

眼鏡「それ…は…」

兄「時には酷いことをしなくちゃ駄目なんだとよ、応援されたよ。酷い男であり続けろとさ」

兄「…みんな好きから始まってしまえば、もう、オレだけの想いじゃどうにもならない」

眼鏡「……」

兄「良いか、弟よ。優しくて頑固で、可愛い可愛い弟よ」スッ

兄「もっと自由に考えろ。じゃないと自分で自分の首を締める、動き出すことが大事だ」

眼鏡「…俺は」

兄「良い、それでもオレを信じるな。ずっとキライなままで居てくれ、お前はお前の道を進めばいい」

兄「だがオレは何時だってお前の幸せを望んでる。ただ、それだけは勘違いしないでくれよ…?」

眼鏡「………」

兄「長くなっちまったが、おう、それだけだ」ポンポン

眼鏡「…兄貴」

兄「ん」


俺は何時だって真面目で、きっと何時だってチキンなんだ。


眼鏡「少し頼みがある、聞いてくれるか」

兄「おうよ」ニッ


だから、何が正解で間違いか分からない。だからすぐに人の言葉に左右される。

そうやってすぐに人を好きになる。見た目が恐い同級生でも、恐い光景を見た好きだった人でも、恐いほど豹変した一人の友人でも、

俺は情けないほどに惚れてしまう人間だ。


眼鏡「…金を貸してくれ、色々と買いたい」

兄「いいぞ。何に使うか教えてくれたらな」


そんな俺の言葉で全て、失ってしまうのであれば。


眼鏡「…動くために、選ぶためにだ」ギュッ


ああ、今は本当に最低な人間にだって成ってやろう。



月曜日 学校


「えー、今日は三人が風邪で休みだ」

眼鏡「……」ガックリ

眼鏡(いやほんっと、あれですよね。笑うわ、まはやタイミングの悪さに笑いしか出てこないわ…)

眼鏡(見事に三人とも風邪移っちゃってるじゃんか…)ズーン

ごめんなさい仕事で遅れたので無理そうです

明日こそ終わらせます ではではノシ

おつ!

乙でございます

乙!
眼鏡振り回されてんな、答えはシンプルな気もするが

とりあえず委員長ルート書いてくれ

キーンコーンカーンコーン


眼鏡「本当に締まらないつーか、なんというか」

眼鏡(いや、こういったコトは一人ずつのほうが良いのかもしれない)ガタリ

眼鏡「先生、あの委員長のことなんですけど。少し時間よろしいですか」


~~


眼鏡(プリント渡すという名目で住所ゲット、後は…)

眼鏡「んんッ! ちょ、ちょっと良いかな?」


「あーん? お? どしたの?」

「眼鏡じゃん、どったの」


眼鏡(案外フレンドリー…ええい、ままよっ)ギュッ

眼鏡「あ、あのさ! 今日、風邪で休んでるから…その、住所を…!」


~~~

眼鏡「めちゃくちゃ笑われた…」ズーン

眼鏡(あの感じ、色々と察してるんだろうな)

眼鏡(まぁ三人に言い寄られてるとまでは知らないだろうけど…)スタスタ

眼鏡「よし、行くか」


ガサリ


眼鏡「……、ちゃんと買いたいものは買った」コク

眼鏡(あとは行動、そして選択。俺はやらなくちゃいけないんだ、ちゃんと)ギュッ


~~~


委員長「……」パァァァァァ

眼鏡「う、うっす。お見舞いに来ました…」

委員長「本当にっ? うそ、来てくれたんだ!」ニコニコ

眼鏡「お、おう。俺がうつしたようなモンだしね、見事に三人ともだしさ」

委員長「気にしないでも良かったのに。でも、嬉しいよ」ニコ

眼鏡「ん、後コレが授業のプリント」ガサ

委員長「なるほどー、そうやって私の家の住所を手に入れたわけだ。やるねぇ」ニマニマ

眼鏡「あはは…」

委員長「実に眼鏡くんらしくないなぁ、うんうん」

眼鏡「そ、そう思う?」

委員長「思うよ。それに色々と変わったなぁって思っちゃったりもする」チラ

眼鏡「あー、やっぱ気になるか」

委員長「びっくりしちゃったよ、いきなり黒縁メガネになってるから」クスクス

眼鏡「に、似合ってると良いんだけどさ…自分じゃよくわからなくて…」ポリポリ

委員長「うん。驚いたけど眼鏡くんの雰囲気にあってるよ」

委員長「…言い方を変えれば【今の雰囲気】の眼鏡くんに、だね」ニコ

眼鏡「ん。そう言ってもらえると、やっぱ有り難い」

委員長「…それで」

眼鏡「うん」

委員長「家まで来たってことは、選んだんだよね」

委員長「──誰を選ぶか、眼鏡くんはちゃんと決めたわけだ」

眼鏡「……」

委員長「でも、なんとなく分かったりするよ」

眼鏡「えっ?」

委員長「お見舞いに来た順番は、私が最初なのかな? そして次に友くん?」クス

委員長「そして最後に金髪さんと見たね。君はロマンチックだから、その順番だと思うけれど」

眼鏡「いやいや、最初に金髪さんのところに行ったけど…?」

委員長「へ? あ、あー…そっちかぁ、決めてから来ちゃったパターンか…」テレ

眼鏡「っ? 良くわからないけど、取り敢えず金髪さんには会えなかったんだ」

委員長「会えなかった?」

眼鏡「多分、親御さんだと思うけど『具合が悪いから会いたくない』って言われた、門前払いってやつ」ポリ

委員長「……」

眼鏡「まぁでも、俺的には順番はどうだって良いと思ってる」

委員長「…ぇ…」

眼鏡「なぁ、委員長。今から凄く最低なことを言ってもいいかな」

委員長「…眼鏡くん…?」

眼鏡「ん…」

委員長「え、あれ? うそ、もしかして、えっ?」アタフタ

眼鏡「大丈夫、ちゃんと選んだ。選んだけど、一応言っておきたい」スッ


眼鏡「俺、委員長がやっぱり好きだ」


委員長「──……」

眼鏡「付き合って欲しいと思う。これは、ちゃんとした俺の選択であって、嘘でも何でもない」

委員長「……」

眼鏡「どう、かな」チラ

委員長「…嬉しい」

眼鏡「え、本当にっ?」

委員長「うん。凄く嬉しい、ありがとう。こんな私を選んでくれて、今にも泣きそうだよ」

眼鏡「お、おう」テレ

委員長「でも、だめ。付き合えないよ、眼鏡君とは多分、付き合い続けられない」

眼鏡「……」ピタ

眼鏡「…どうして?」

委員長「ごめんね。今まで沢山の酷いところや、最低なところ、それに醜い所を見せてきたけれど」

委員長「…私にとって一番幸せになってほしいのは、友くんだと思ってる」ニコ

眼鏡「友が?」

委員長「正直に言って、金髪さんが選ばれたら腹が立ってたよ。逆に私が選ばれた時は、笑って自慢したと思う」クス

委員長「でも友くんに対してはダメ。あの子は、どんな時だって君のことを真剣に、純粋に想ってた」

委員長「オトコだから諦めもせず、誰からも恨まれる立ち位置でありながら、それでも君を応援し続けた」

眼鏡「……」

委員長「少なくともこの三人の中で『本当の恋』をしてた子なんだよ、きっとね」

眼鏡「…そっか」

委員長「だから、気持ちは凄く嬉しい。飛び跳ねてみんなに自慢してまわりたい、そんな風に思うけれど…」ギュッ

委員長「友くんも、好きだから。彼を応援したい、素直に私はそう感じてる」スッ

委員長「それが理由だよ。うん、ごめんなさい、貴方の告白、断らさせて下さい」ペコリ

眼鏡「………」

眼鏡「そう、なんだ。委員長は凄いな、最後まで人のことを思って行動してる。かっこいいと思う」

委員長「んーん、最低だよ。金髪さんの言うとおり、最後の最後まで…最低なフリしか出来なかった」

委員長「結局は弱気になってる。これじゃ、君に好きだって言われても納得出来ない」ニコ

眼鏡「……」

委員長「だから挫けないで、次を選んで」ピッ

眼鏡「次…?」

委員長「大丈夫、嫌ったり貶したりしない。私がダメだったら、次の好きな子を選ればいいんだよ」ニマ

委員長「──行くんだ、後二人のお見舞いにさ。そして好きだって言ってあげて、そして選んであげて」


委員長「君がどんな答えを選びとっても、誰も、怒ったりしないよ」


眼鏡「………」

眼鏡「…そうかな、俺は本当に怒られるべきことをしようと思ってるのに」

眼鏡「委員長。俺はまだ、貴女に本当の酷いことを言ってないんだ」

委員長「……」

委員長「え、どういうこと…?」キョトン

眼鏡「つまりは、この答えが俺にとって悔いのないもので…」

眼鏡「…俺自身が納得できる、選択だと思ってる」


眼鏡「聞いてくれ、委員長」

委員長「………」


~~~


委員長「それが、君が選んだ答え…?」

眼鏡「ああ」コク

委員長「ぷっ」

眼鏡「本当にどうしようもないと思う、けど考えた結果…うん?」

委員長「あはははっ! なにそれ! 眼鏡君それ本気で言ってるの…!?」ケタケタ

眼鏡「わ、笑うかそこで!? こっちは相当酷いことを言ってるつもりで…!」

委員長「いや笑っちゃうよ、あの眼鏡くんがぷひゅひゅアハハッ! ゲホッ! ゴホゴホゴホゲハァッ!?」カクン

眼鏡「委員長ぉ!? 笑いすぎだ、死んじゃう死んじゃう!」さすさす

委員長「ご、ごめん、自分が風邪引いてるの忘れてた…っ」ズビビ

眼鏡「しっかりしてくれ…こっちは真面目に言ってるんだから…」

委員長「でも、クスクス、なるほどね」ケホコホ


委員長「──確かにそれを選ぶのなら、私は君と付き合えるよ」ニコ


眼鏡「ほ、本当に?」

委員長「もちろん出来たら、だからね。君にその覚悟があるのか、私は無理だと思うけどなぁ」

眼鏡「わ、わからんさ。やってみなきゃ分からないことも、あると思うから」

委員長「……。君がどうして急にそんなコトを思ったのか、誰かに入れ知恵されでもしたのか」スッ

委員長「敢えて私は訊かないでおくよ」

眼鏡「どうして?」

委員長「表情を見てれば分かるから。きっとその助言を来れた人、眼鏡くんキライでしょ?」クスクス

眼鏡「…超能力者なの?」

委員長「そーなのです! 女の子は恋をすると、何時だって超能力を使えちゃうんだよ?」

眼鏡「そりゃあ凄い…」

委員長「もう一つ言えば、眼鏡くんは助言を敢えて逆に従ってる気がするかな?」トントン

眼鏡「へっ?」

委員長「もらったアドバイスとは逆のことをやってる気がする、だからこそ、そんなに自信があるように見える」チラ

眼鏡「……」

委員長「その覚悟。私はどうにも気になる、けれど訊かない」ニコ

委員長「君が最後の最後まで突き通して、そして得られた答えを…知って、私は納得する」コク

眼鏡「…ありがと、実は言いづらかったんだよ、どうしてそんなこと思い始めたのかって」

委員長「うんうん。私としてもまだ気になることがあるけれど…」

眼鏡「う、うん?」

委員長「それはきっと、友くんが訊いちゃうと思うからおあずけ」ニマ

眼鏡「本当に委員長は気になることを言ってごまかすな…」

委員長「そんな私キライ?」

眼鏡「…いや、好きだ」コ、コクコク

委員長「そんな優しい眼鏡君が、私も好きだよ」ニコニコ

眼鏡「…ぅぉぉ…」ドキドキ

委員長「んんー?」ニマニマ

眼鏡「か、勘弁して下さい…ええ…」ブンブン

委員長「ねぇ眼鏡くん」

眼鏡「は、はい! なんですかっ?」

委員長「君は何時だって優しい。そして自分の気持ちに素直に生きてると思う」スッ

委員長「その選択が迷いなく、今までの自分を裏切ることなく、満足行く答えになると信じてる?」ピト

眼鏡「……」

眼鏡「信じるよ、俺は【それを出来た皆を好きになったから】、【俺もやると言い切れる】んだ」ガサゴソ

委員長「?」

眼鏡「委員長、これ受け取ってくれ」スッ

委員長「これは…?」

眼鏡「この前の参考書のお返し、遅れたけど渡しておこうと思って」テレ

委員長「……開けても、いい?」

眼鏡「いいよ」コク

委員長「……」ガサガサ

ガサリ

委員長「…ぁ…」

眼鏡「あ、あのさ、俺ってば所持金が殆ど無くってさ」ポリポリ

委員長「………」

眼鏡「そんなモンしか買えなかったんだ。ごめん、今度はバイトでもしてマシなのかってくからさっ?」

委員長「…何時から?」

眼鏡「な、なにが?」

委員長「何時から、私が、その…コンタクトしてるって気づいてたの…?」

眼鏡「え?」

委員長「だってホラ…! これ、洗浄液! くれるってことはコンタクトだって知ってたんでしょっ?」

眼鏡「え、まぁ、うん。だって、最初から気づいてたけど?」

委員長「さ、最初から?」

眼鏡「は、初めて委員長が好きになった時からだと思う、かな」テレ

眼鏡「一年の頃、目を真っ赤にして廊下を歩いてる委員長を見たんだ」

眼鏡「俺も眼鏡してるから、コンタクトの辛さは分かる。だから勝手にいつまで続けられるかずっと見てたんだ…」ポリ

委員長「……」

眼鏡「でも委員長は諦めなかった。何か覚悟があんのかな、とか色々と考えてたらさ…」

眼鏡「…いつの間にか好きになってました、ええ、意味がわからないよねほんっと」

委員長「…中学の時、眼鏡をネタに苛められたから…」

眼鏡「あっ!? そんな理由だったの!? ごめん…変なことを思い出させた…」アタフタ

委員長「ううん、良いんだ。そんなのとっくに乗り越えてる」フルフル

眼鏡「そ、そう? あと委員長ってやけに触れてくるじゃん」

眼鏡「あれってコンタクトしてない時に距離を測るためじゃないかなぁとかさ、勝手に推測してたりしてた」コクコク

委員長「う、うわー…そっかぁ…普通にバレてたんだぁ…」

眼鏡「そりゃこっちもメガネ愛用者だから、わかるわかる」クス

委員長「……」グス

眼鏡「い、委員長? どうした?」

委員長「ん、ごめん、なんかちょっと感動したというか、やっぱ好きだわ眼鏡くん…」ゴシゴシ

眼鏡「そ、そおかね…?」テレ

委員長「うん、好き。全部すき、ダメな所もチキンな所も、大好き」ポロ

眼鏡「…むぅぅ…」モジモジ

委員長「だから頑張って、お願い」

眼鏡「ん」コク

委員長「君の告白を受け取られない、こんな我儘で馬鹿な私を…好きなってくれてありがとう」

眼鏡「おうよ、頑張りますとも」コクコク

委員長「ん、じゃあ切り替えて、コホンっ」

眼鏡「ん?」

委員長「…勝算は?」

眼鏡「もちろん! …ごめん二割もないかも…」シュン


~~~~


眼鏡「こんにちわ」ペコ

姉友「ややー元気になって良かった良かった、我が弟が見事に吸収したみたいで~」クスクス

眼鏡「先日はありがとした、感謝します」

姉友「良いの良いの、気にしない気しない。んで、弟に会ってく感じ?」

眼鏡「その為に来ましたからね」

姉友「あれだね、懐かしいねこの会話、まんまじゃん」クス

眼鏡「そうですね、まんまっすね」

姉友「んーーー? なんか眼鏡君、雰囲気変わったかね?」じぃー

眼鏡「そりゃメガネ変わったんだから、そうでしょうが」

姉友「勿論それもだけど、色々と覚悟してここまで来ちゃった?」ニヤニヤ

眼鏡「ええ、まあ」スッ

眼鏡「…部屋に居ますか?」

姉友「居るよ、今回はノックせずに乗り込んでオッケー」グッ

眼鏡「しますよノックぐらいは…」スタスタ

姉友「がんばれ~! 青春少年~!」フリフリ

眼鏡「…ええ、頑張ります」

~~~

『なんできた』モゾリ

眼鏡「また毛布で塊作ってるのか、治るものも治らんぞ」ストン

『薬のんだから平気』

眼鏡「身体が安静じゃなきゃ意味ないだろ」

友「…なんできた?」モゾリ

眼鏡「色々と言いに来た。待ってただろ、お前も」

友「来るところ間違ってる。我じゃなく、いいんちょか金髪つぁん所いくべき」コクコク

眼鏡「どっちも行ってきたよ…」

友「………」ビクッ

友「そ、そうなんか」しゅん

眼鏡「ちなみに金髪さんは多分居留守、そして委員長には告ったらフラれましたー」

友「へっ!?」

眼鏡「それで今は友の家に来た。どうだ、最高に意味がわからないだろ?」

友「…なんでそうなった?」

眼鏡「俺が知りたい。けどまぁ、覚悟はしてた。助言も貰ったし、そうなるだろうなと予測はしてたよ」

友「…なんでいいんちょに告った?」

眼鏡「や、やっぱり気になるか、まぁそうだよな…うん…」

友「我、絶対に金髪つぁん選ぶと思ってた…」

眼鏡「ん、なんか委員長もそれっぽいこと始め言ってたなぁ」

友「それでいい? 眼鏡ちん満足できる答えがそれ?」

眼鏡「満足行くも何も、フラれたからね? どうしようもないだろ、色々と」

眼鏡「でもまぁ告白した理由は単純に好きだから。他にも理由はある、けど今は良い」フリ

友「……」

眼鏡「今はお前と会話するために時間を使いたい」コク

友「まさか恐くなって、とうとう我の所逃げ込んできた?」

眼鏡「馬鹿か」

友「馬鹿じゃない、それも正しいと我は思う」

眼鏡「正しくない。俺はもう一人を選んでこの状況から逃げようとは思ってない」

友「…兄様言いそうなセリフ…」

眼鏡「あぁそうだよ、兄貴からもらったアドバイスだよ」ムスッ

友「…そんなんで良いの?」

眼鏡「良くない。俺が納得出来ない、兄貴は嫌いだ。だから反抗してる、俺は俺のやり方でやるつもりだ」

友「眼鏡ちんのやり方?」

眼鏡「ああ、俺のやり方で解決させる。良いぞやれと言ったことをやらん、駄目だやめろと言ったことをやる」フンス

眼鏡「実に良い反面教師だ、はっはー」

友「やけくそ気味?」

眼鏡「…言ってくれるなよ、俺だって必死なんだから」コホン

眼鏡「それで本題だ、友」スッ

友「う、うん」

眼鏡「実は委員長に振られた理由として、こう言われた」

『金髪さんはどうでもいいけど、友くんを置いて幸せにはなりたくない』

友「正直いっていい?」

眼鏡「いいぞ」

友「超面倒臭い、いいんちょ嫌いになりそう」コクコク

眼鏡「んんー…う、うん」

友「あと金髪つぁんもだいっきらい、なにそれ、告られたら認めろ思う」

友「我々はひとつの恋に必死すぎ。こわい、ひどい、しっぽまいてにげていいよ?」

眼鏡「バッサリ言うな、まぁ、わからんでもないが…」

友「みんなこわい」

眼鏡「でも、キライな奴をお前は好きになるだろ? そういった所、どうなんだよ」

友「…みんな凄いと思う」コクコク

眼鏡「お前も立派な変人だよ、知ってたけどさ」クス

眼鏡「だからこそ、そんなお前に訊いておきたい。この答えを、俺の選択をだ」

友「何?」

眼鏡「なぁ、酷いことを言うけど怒らないでくれな?」


眼鏡「──俺、委員長と付き合いたいから。友、俺と付き合ってくれ」


友「………」

眼鏡「………」

友「いいよ?」

眼鏡「待て。よく考えろ、俺は今すっごいことを言ったんだ、軽く答えるな、むしろ怒れ」

友「別に構わんよ? 眼鏡ちん、本当に我と付き合えるならね?」

眼鏡「…む」

友「我はいいんちょすき、それに眼鏡ちん超だいすきラブユーちゅっちゅ」

友「その関係実におもしろい。笑えるからすき」コクコク

眼鏡「笑えるって…」

友「ダメだから笑える」ニヨニヨ

友「でも眼鏡ちん、どーせ我とは付き合えない」

眼鏡「気持ちとか、そういうのか。委員長と付き合いからという不純な想いだからか」

友「我にとって想いは関係ない」


友「付き合えるという状況なら、例え眼鏡ちん我のこと好きじゃなくて、とってもステキ」


眼鏡「…なんで素敵?」

友「こっちが幸せだから」コクコク

眼鏡「両思いじゃないのに?」

友「だって求めて、返してくれる。それ超嬉しい、我の思い伝わらなくても付き合えるなら全然イイ」

眼鏡「一つ訊く、どうしてそこまで悲しいことを言えるんだ?」

友「そりゃオトコ同士だからよ?」キョトン

眼鏡「…ん」

友「眼鏡ちん忘れてる? 我オトコよ? チンコついてるよ? 見る?」

眼鏡「見せんでいい、知ってる知ってる」ブンブン

友「だから付き合えない。眼鏡ちん我とは付き合えない、だってオトコだから」コクコク

眼鏡「…だから付き合える状況だけで、嬉しいってか」

友「そう。我にとって想い関係ない、けど眼鏡ちんきっと本当に好きになってから付き合いたい想うはず」

眼鏡「わからんぞ。今だけは何とでも言って、お前を籠絡させるやも知れん」

友「しない。眼鏡ちんは絶対に、我との関係が納得しなきゃ付き合わない」


友「だから無理。いいんちょとも付き合えません、我とも付き合えません」


眼鏡「…大人しく一人を選んでおけってか」

友「アドバイスを受け入れるべき」コクコク

眼鏡「はぁ~…」

眼鏡「じゃあ言っとく。うん、わからんよ。お前のこと嫌いじゃないけど、付き合えるかどうかは正直…微妙だ」

友「…」テレテレ

眼鏡「なんで喜んだ?」

友「…微妙という少しの可能性に…」ニヨニヨ

眼鏡「ま、まあな…」ポリポリ

友「でも無理、眼鏡ちん馬鹿なこと言ってないでさっさと金髪つぁん所行く」

眼鏡「……」

友「兄様の助言裏切る違う? 今の眼鏡ちん、まんま兄様イイそうなことやってる」

眼鏡「…ちゃんと委員長に告白したぞ、選んだぞ俺は」

友「でも今は違う、迷ってる。迷って最初から意味が無いことを、意味がなく悩んでる」

眼鏡「…意味がなく?」

友「意味がなく」コク

眼鏡「へぇ~、俺が意味もなくすると思ってんのか? お? 俺が適当に兄貴みたいに考えてると思ってんのか? おっ?」

友「そっくりだから色々と」コクコク

眼鏡「そーかい! あぁーーーーーそうかいそうかい! へぇー! 言っちゃう、そんなコト言っちゃうんだへぇえええええ!」ガサゴソ

友「な、なに?」

眼鏡「あーそうだよ分からんさ! お前は男ッ! 俺も男だッ! 付き合えるかどうかなんてワッカリマセーン!」ガサリ

友「…、…?」ビクビク

眼鏡「だったら試してやる」

友「た、試す?」

眼鏡「本当に俺がお前と付き合えないか。好きだと素直に思えないか、良いか? 俺はちゃんと準備したぞ、兄貴とは違ってなッ!」

友「気にしすぎちゃいまっか…」

眼鏡「うるさい! 良いからコレをみろ!」バッ

友「──……」



『親友を冗談で女装させたら、ハマってハメてしまった』



友「ナニコレ?」

眼鏡「エロ同人誌、しかも男の娘ネタ」

友「え、なに、え、なに?」

眼鏡「よ、読むぞ! それも一緒にだ!」ビシッ

友「……へ?」

眼鏡「一字一句、お互いにキャラのセリフを全部言っていく。良いか、全部だ」

友「…………」

眼鏡「それにお前も女装する。似たような格好をしろ、俺もするっ」コクコク

友「そ、それで?」

眼鏡「そ、それで…」チラリ

友「……」ドキドキ

眼鏡「だ、だから…それで色々と…アレだよ…」ドキドキ

友「は、反応…したら…ってコト…?」

眼鏡「う、うんうん! しかもコレ俺の持ち物違うッ、ハッキリ言って趣味じゃない!」カァァ

友「し、知ってる知ってる、眼鏡ちんノーマル知ってる」コクコクコク

眼鏡「だ、だからね!? うん、わかるわけじゃんか? 色々と?」

友「……」

眼鏡「…ど、どうだ?」チ、チラリ

友「ど、どうしてそこまでする…?」カァァ

眼鏡「あ、兄貴がな! 現実と二次元を一緒にするな、と言った…っ」

眼鏡「確かに納得できる言い分だった、けどな、お前は男だ! 男と女の子は違うね! そうだろっ!?」ビッシィイイイ

友「い、いえす」コクコク

眼鏡「だったら俺らは俺らのやり方で、答えを見つける!! 馬鹿みたいに最低なことでなッ!!」

友「…本気?」

眼鏡「あ、ああ、本気だ…俺は何時だって真面目に生きてる…だからこうなった…!」グッ

友「……」

友「わかった。やる」

眼鏡「本当にっ!?」

友「でも我は失敗すると思う、そっちの方に賭ける」モゾリ

眼鏡「お、俺が不全とでもイイたいのか…?」

友「ちゃうよ、眼鏡ちんはきっと優しいから」


友「──きっと男の娘なんかに負けないんだから! と、我は思います」コクコク

~~~

男『なぁ…良いだろ、もう一回やってくれよ』

友『あ、あれはもうヤんないって言っただろ』

男『なんで? いいじゃん、普通に可愛かったんだ。誇ればいいだろ』

友『そ、そうやって僕をからかいたいだけだろ…!』

男『あっはっは。本当に、お前って俺と一緒に居る時だけ、声を荒げるよな』

友『むぐ…』

男『別にいいじゃん。俺だけが見るものだし、誰かに見せびらかすつもりもない』

友『…ホントに?』

~~~

男『はぁ…はぁ…』

友『だ、だめだってば…』

男『ごめん、ごめんな』

友『あ、やっ! だめ、あ…うっ…』ブルッ



男「ハイ! ストップーーーーーーーー!!」バッ

友「はぇ…?」ハァハァ

男「うんッ! ここまでッ! う、うん…」ヌギヌギ

眼鏡「ふぅ、お前もカツラ取りなさい! 俺も取りましたから!」

友「…なんでここまで…?」トロン

眼鏡「ちょい待ち! 憶えてるかい? これは実験、色々と知るためにやってたこと!」

友「……」

友「…っ~~~…」カァァ

眼鏡「んんっ、まぁ乗りやすいお前らしいって言えばお前らしいが…」ポリポリ

友「こ、こほん」

友「そ、それで眼鏡ちん!?」

眼鏡「おうっ!?」ビクッ

友「……その、」テレ

眼鏡「オウ…」

友「…どうだったん、かなって」チラ

眼鏡「……」ビクッ

友「…っ」びくっ

友「め、眼鏡ちん?」ドキドキ

眼鏡「ええ、そうですね」スッ



眼鏡「タチマシ…タ…」ボソリ



友「………」キョトン

友「っっ~~~~~!!??」

友「ぁ……ぅ…ぇ…っ……?」ボッ

友「あ…その…」カァァ


友「……ヘンタイ…」ボソッ


眼鏡「だぁーーーーー!! そうですねそうなっちゃいますよね!? なんだかなぁーッって!!」ガリガリガリ

友「っ…っ……っ…」

眼鏡「はぁー……今は抑えろ、うん、俺は超冷静、水面の如き静けさを…ッ」ギュウウウウ

友「……」

眼鏡「ん、よし! うん、よし、よしよし、これで分かったか友っ!?」ビシッ

友「ん…」コク

眼鏡「俺はお前の女装でもイケちゃうんだぜ!? 言ってやる、俺は超変態だ!」

友「眼鏡ちんはヘンタイ、わかった、憶えた」コクコク

眼鏡「う、うん…」

友「我ちょっと怖く思ってる」

眼鏡「へっ?」

友「多分、あの時の金髪つぁんもこんな気持だったと思うと可哀想思えてくる」

友「眼鏡ちん優しすぎ。こんな我のために、身体はりすぎ」

眼鏡「……」

友「どうしてここまでしてくれた? いいんちょと付き合いたいから?」

眼鏡「…本当に悲しいことを言うな、違う、最初から俺はお前を好きになる準備をしてた」ガサリ

眼鏡「この同人誌は委員長の話を聞く前から、一緒に読むつもりだったよ。今回はたまたま、総意しただけ」

友「じゃあどうして我を好きになる準備した?」

眼鏡「それこそ優柔不断と言いたいのか? 違うな、俺はお前を好きになってから考えたかった」

眼鏡「まだお前のことを素直に好きだと思えてない、なのに、今の状況で選ばないのは許せない」

友「……」ポカーン

眼鏡「流れがそうだったから。なんて良い訳なんてしたくないんだよ、俺は」ギュッ

眼鏡「三人が俺を好きだといった。それとなく混ざってるお前に、言ってやりたかったんだ」


眼鏡「俺はお前のことが好きだ。付き合って欲しい、と言えるぐらいに」


友「……」ポロ

眼鏡「うっ…」ビクッ

友「すごい、かっこいい、ばか、ヘンタイ、なんなの、こわいよ」ポロポロ

眼鏡「つ、つまりはだな、俺は委員長と付き合いたいから、この場合は友も付き合ってくれないと困るわけで…」

友「意味わかんない…」グスッ

眼鏡「ぐっ…たしかにな…ッ…結局は兄貴と変わらんかも…っ」グググ

友「んーん、ちがう、兄様と眼鏡ちんは違う、だってそれでも好きなはず」ゴシゴシ

眼鏡「…っ」ピクッ

友「眼鏡ちんは諦めてない。ここまで皆を好きだって言いながら、それでもまだ…」

眼鏡「……」

友「でしょ? だって眼鏡ちんは、いつだって優しくてダメでチキンだけど…」


友「──自分の頑張りを裏切ったりしない、ボクは知ってるんだよ。眼鏡ちん」ニコ


眼鏡「ああ、そうだな」スッ ぽんぽん

友「うん…っ」

眼鏡「俺はちゃんとするよ。誤魔化さない、自分はこうでありたいと想い続けてる」


「好きな人のために、一番と思ってほしい人を最後まで応援しようと」


眼鏡「その気持は裏切らない。ずっといつまでも、好きであり続けるよ」

眼鏡「…だったら最低なことは何だってする、それが俺の、俺だけのやり方だ」

友「……好きだよ」

友「すき、がんばって眼鏡ちん、だいすき、付き合っていいよ、ちょーボクだいすきっ」ニッ

眼鏡「…ん」テレ

友「でも自分信じきれなくなったら、もういいんちょとボクのところ逃げてきていいよ?」

眼鏡「…既にハーレムだな、これ」

友「あれ? 金髪つぁんいらね?」キョトン

眼鏡「おい馬鹿、んなこと言うなよ。一番俺にとって重要なんだぞ、じゃなきゃここまでやらなかった」

友「知ってる、だから頑張って」ニコ

眼鏡「…おう、頑張る」


~~~


眼鏡「お邪魔しました」ペコ

姉友「お邪魔されましたー、ふふっ、くふふっ」ニヤニヤ

眼鏡「…なんですか?」

姉友「やっぱ兄弟だねーとか思ってた、すごいね、やること一緒だ」

眼鏡「……」

姉友「でも怒ったりしないよ? 全然ね、それも一つの答えだと信じ合えば正解なんだし」ニシシ

眼鏡「…そうですか」

姉友「そうそう。君はこれから大変だろうけど、辛くなったらお姉さんに甘えていいんだよ~?」

眼鏡「……」

姉友「眼鏡君のこと嫌いじゃないし、むしろ好きだし。幾らだって悩み相談乗ってあげるよん」ニヨニヨ

姉友「お姉さんそういうの慣れてるからね。だってさ、何度も言っちゃうけど君ってば本当に───」

眼鏡「……」じっ

姉友「──ぁ…えと、何…?」

眼鏡「俺は、兄貴とは違いますよ」

姉友「……っ」ビクッ

眼鏡「顔が似てても、雰囲気が似てても、俺と兄貴は別人です」

姉友「あ、あれ? なんだろ、もしかして怒らせちゃった感じ、だったり?」

眼鏡「別に怒ってないです。だって端から見れば、兄貴も俺もやってることは一緒だから」スッ


眼鏡「──でも、優しすぎるからって、そんな理由で一番の人にフラれるヘマは絶対にしない」


姉友「……ッ…!」

眼鏡「俺は兄貴のように流されて、ああいった状況に陥るなんて真っ平ごめんなんですよ」

眼鏡「俺は俺としての理由で解決する。結果は同じでも、得られるものはちゃんと得ると覚悟しました」

眼鏡「…兄貴は選ばなかった。フラれて、それでも追いかけて、追いかけて、好きになる努力をするべきだったのに」


眼鏡「ハーレムなんて最低なものに逃げ込んだ、関係を壊すことを怖がった」


姉友「……」ギュッ

眼鏡「俺は追いかけます。壊れていい覚悟で前へ進み続けます、そうなるよう今も動いてます」

眼鏡「兄貴は曖昧だ、そして俺もそう見えるでしょう」

眼鏡「でも、俺は絶対に諦めない。それが俺の覚悟で、今まで信じてきた自分だから」ガチャ

姉友「あ…」

眼鏡「お姉さんも、どうぞ本当に諦めたくなったら逃げてきて下さいよ」チラリ


眼鏡「──俺はちゃんと、貴女のことを考えてあげますから」ニコ


姉友「…うっ…」

パタン

すんませんすんません今日も仕事です

明日こそ、明日こそ終わらせます

ごめんなさい…

佳境か

無理に終わらせなくても
ずっと続けててええんやで

姉友「……」

姉友「…本当に、諦めたくなったらか」ボソ

姉友「そうだね。その時になったら、うん……是非、甘えさせてもらうよ」クス

姉友「私達姉弟、宜しくお願いします」ペコリ

姉友「ふふっ」

~~~

眼鏡「……」フラリ トン

眼鏡(俺、すっごいこと言っちまったァー…何上から目線で説教とか、うわぁー!)ガシガシガシ

眼鏡「こ、これも全部ハッキリさせない兄貴が悪い…ッ」グググ

眼鏡(でも、言ったことには後悔なんて無いんだ。ちゃんと思ってたことを言えたつもりだ)

眼鏡「ハァ、よし!」パァン

眼鏡(金髪さんだ。あの人に全てを伝える、俺の選択を)スタ

眼鏡(最低で、最悪の、自分勝手で、優柔不断な答えを)

眼鏡「…でも、俺はそれを納得するんだ」ギュッ

眼鏡(よし、行くぞ)ダダッ

~~~

眼鏡(コンビニでポカリでも買うか、二回目だし手土産あったほうがいいよな)


ウィーン


眼鏡「さて…」スタ

先輩「ん?」スタ


眼鏡「……………」ボーゼン

先輩「?」キョトン


眼鏡(うわっ、うわぁーーー!!! せ、先輩じゃん! 金髪さんのも、元恋人の!!)ダラダラ

先輩「……。おっと俺の方が邪魔か」スッ

眼鏡「い、いえっいえっ」ギクシャク

スタスタスタ

眼鏡(うわぁー! ここでエンカウントするか普通!? あり得ん、これから金髪さん会おうって時に…!!)ズンズンズン

眼鏡「神様が見てらっしゃるのだなっ…くわばらくわばら…」ボソボソ


先輩「……」チラ

~~~

眼鏡(ハァー心臓が痛い、今日は色々とあったけど一番驚いたな…)ウィーン

眼鏡「後は金髪さんの、家に…」チラ

先輩「やあ」ニコ

眼鏡「……へ?」

先輩「急に話しかけてごめん。今、大丈夫? 忙しかったりする?」

眼鏡「え、えと、いや、別に、そんなこと無いっすけど…」

先輩「お? 良かった良かった」ニコニコ

眼鏡「…あの」

先輩「おっとすまない、実は勝手ながら君の顔を知っててさ」

先輩「──何時か会話してみたいと思ってたんだ、時間取れたり出来る?」


~~~


先輩「あっはっはっはっ!」ニコヤカー

先輩「いやいや、凄いなぁ。君の友人はとても面白い、いいなぁ」

眼鏡「そ、そっすかね」テレテレ

先輩「俺の友達じゃそこまで振り切ってるのは居ない、正直羨ましいよ」

眼鏡「う、うっす」

眼鏡(あ、あれ? 意外と話が盛り上がってしまった、俺はてっきり色々と複雑な気分になると…)チ、チラリ

先輩「うん? どうした?」

眼鏡「あ、いやっ、別に…」

眼鏡(この人は、知らないのかな。俺と金髪さんとの関係とか、いや知るわけ無いか)


スタスタスタ スタスタスタ


眼鏡「そ、そういえば先輩…」

先輩「ん?」

眼鏡「何気なく一緒の方向に歩いてきてますけど、こっちで大丈夫なんですか?」

先輩「おっと、先にそっちを訊かれたか」

眼鏡「へっ?」

先輩「大丈夫、俺はこの先に用があるから。此方としては何で顔を知ってたか、と最初に訊かれるとさ」

眼鏡「あっ!? え、スンマセン…気が利かなくて…」

先輩「いやいや、俺の勝手な都合に付き合わせてるからね」フリフリ

眼鏡「じゃ、じゃあ訊きますけど…どういった経緯で…?」

先輩「あーうん、実は友達にどうにもウワサ話が好きな連中が居てね」


先輩「君が金髪ちゃんと何かしてる、と耳にしたんだ」


眼鏡「…っ…」ビクッ

先輩「気にはしないつもりだった、けれど耳に入ってしまえば人として気になるのは普通だろ?」

眼鏡「え、ええ…まぁ…わからんでもないです…」

先輩「理解してくれて有り難い。つまりは、そういった経緯で君を知っていた」

眼鏡「……」

先輩「あれこれ訊くつもりはない。ただ、あの金髪ちゃんが仲良くする男はどんな奴だろう、とね」

眼鏡「…気になったと?」チラ

先輩「勿論、【元カレ】としてね」

眼鏡(ぐぉぉぉ…こりゃ胃がぐっちゃぐちゃになるーッ!)ダラダラ

先輩「おいおい? どうした?」

眼鏡「…な、なんでもないっす」

先輩「えらく顔色が悪く見える」

眼鏡「…見えるなら、そうかもしれませんね…」ダラダラダラ

先輩「……。何をそこまで怯えてるんだ?」

眼鏡「……」

先輩「まあいいけど、取り敢えず気になってたから会話をしてみたかった。それが理由だ」

眼鏡「は、はあ。それでどうだってんですかね…?」

先輩「印象として?」

眼鏡「…ええ」

先輩「俺って結構、バッサリ言うタイプなんだ」

眼鏡「…結構っす、慣れてますから」

先輩「そっか、なら正直に言うけど【どうしてこんな奴に金髪ちゃんが好きなのか分からない】」

眼鏡「……。バッサリ言い切りますね、色々と」

先輩「最初に言ったはずだけど、それでも傷つけてしまったのなら謝る」

眼鏡(バレてたか。まぁ大胆に図書室占領してたしな、放課後に)ポリ

先輩「でも、他人の惚れた腫れたを理解するのは難しいからな」

眼鏡「……」

先輩「彼女が納得する理由があるんだろう。俺には分からないが、きっとあるに違いない」

眼鏡「先輩」

先輩「どうした?」

眼鏡「先輩が言うとおり、ええ、俺は金髪さんが好きです」

先輩「ん」

眼鏡「…それに金髪さんからも好きだって言ってもらえました」

先輩「そっか、それは嬉しかっただろうね」ウンウン

眼鏡「それの、何が悪いんですか?」

先輩「悪いとは言ってないけど?」キョトン

眼鏡「…いや、雰囲気が」

先輩「俺は出してるつもりはない。もしかしすると、君の方にやましい問題があるんじゃないか?」

眼鏡「……」ピクン

先輩「心当たりがあるなら悪いと感じる。そういうことだと俺は思うけどな」ジィー

眼鏡(…知ってるの、か?)

先輩「君は顔に正直に出るね、嘘をつけないタイプだ」

眼鏡「うぐっ…」

先輩「迷うのは君の勝手だし、俺がいちいち介入するのもお門違いだろう」

先輩「でも、しかしながら俺としても訊きたくなる。君の本音を、どう思ってるかを」

眼鏡「っ…な、なにがっすか…?」

先輩「本当に彼女が好きなのか? 始まりはそうかもしれない、だが今の君はどうだろうか?」


先輩「今の君は彼女を傷つけようとしている、だけじゃないだろうか?」


眼鏡「……っ」ゴクン

先輩「そう思ってしまう。何を知ってるのかと否定されれば、それだけだろうけどね」スタスタ

眼鏡「……」

先輩「そう思う理由としては幾つかある。けど、敢えて言わない」スタ

先輩「色々と君自身が解決しきれないものだとしたら、失礼だからね」

眼鏡「…それは、」

先輩「一つだけ、君に言葉を送りたいと思う」

眼鏡「え?」

先輩「俺はそうした。君も悩んで悩んで辛いのなら、こうすればいい」スッ


先輩「ちゃんとフッてあげるんだ。彼女が好きなら、彼女を想うなら、きちんと断ってやるべきだ」


眼鏡「…っ…」ビクッ

先輩「それは悪いことじゃない。むしろ相手のことを想ってやれる、そんな強さから生まれる答えだからね」

眼鏡「…答えっすか…」

先輩「ああ、そして俺は言ってあげた。彼女に伝えたよ、だって好きだからさ」

眼鏡「……」

先輩「互いに先の関係に不安を憶えていた。頑張りたいと想う気持ちはあるけれど、それでも不安は残ってしまう」

先輩「好きだと言う想いは、時にそんな優しさで断ち切らなくちゃいけない。それが正しくて、人を成長させる為の行動だ」

先輩「正直に言うよ。俺は未だ彼女が好きだ、そして勝手ながら彼女も…俺のことが好きだろうと思う」

眼鏡「……」ぎゅっ

先輩「この気持ちは大切なモノだと感じてる。俺はそれを信じて、だから彼女をフッたんだ」スッ

先輩「迷う自分が、最後まで醜く足掻く自分を見たくはない。そんな姿を彼女に見せたくないという気持ちもあったしな」

先輩「…この想いが変わる前に、ちゃんと伝えるべきだと思った」

眼鏡「…凄い、と思います。先輩は、本当に…」

先輩「ん、ありがとう」

眼鏡「で、でもっすよ! 人はそんなに清く行きられないっすよね…?」

先輩「どういう意味だ?」

眼鏡「だ、だってホラ…! 俺知ってますよ、先輩は、…やめろ、違うッ」

眼鏡(何を言うつもりだ、あの写メのことを言うつもりなのか!? 馬鹿か、落ち着け)ギュッ

先輩「……」

先輩「…何か知ってるようだけど、そうか」

先輩「この前のカラオケのことを言ってる?」

眼鏡「うっ…!?」

先輩「本当に顔に出るな。あぁ、そっか知ってるのか」フゥ

先輩「そうだな。さっきも言ったが彼女のことがまだ、好きなんだ。だからこそ気になる、彼女の現状が」

眼鏡「何か、聞いたんスか…?」

先輩「……」ジッ

眼鏡「っ?」

先輩「いや、俺は察しただけで訊いたワケじゃない。ただ、それでも救ってやりたいとは思った」

先輩「だからこそ君に話しかけたんだ。彼女は答えを出せれないから、君に頼むしか無いんだよ」

眼鏡「俺に…?」

先輩「好きなら振ってやるんだ。本当に傷つける前に、本当の想いが君にあるのなら」

眼鏡「そ、そりゃ先輩に負けないぐらい、俺にはちゃんと彼女を好きだと…!」

先輩「なら俺と一緒に諦めよう」

眼鏡「えっ…」

先輩「迷ってしまう原因が三人、俺と君と彼女だと言うのなら、俺たち二人で身を引く」


先輩「──好きだという強さが俺と一緒なんだと君が胸を張って言えるなら、出来るはずだ」


眼鏡「…ぅ…」

先輩「先に進め、それに君はそれでも進んでくれる人がいるんじゃないか? 頼るべきだ、その人達を。彼女ではなくね」

眼鏡(この人、やっぱ凄いわ。大人だ、金髪さんが惚れた理由もすんなり…納得できる…)ギュッ

先輩「俺は誓うよ。今後一切、彼女には近づかない。信用出来ないなら、俺の連絡先も教える」

眼鏡「え…あ、うっ…」

先輩「何時だって近況報告をすると誓う」

先輩「だから誓ってくれ、彼女をこれ以上困らせたくないなら、傷つけたくないと思うのなら」


「もう彼女には近づくな」


眼鏡「──……」

眼鏡(あぁ、神様。アンタは本当にここぞという時に試練を与える、金髪さん、貴女が言ってたとおりだ)


あれほど固く覚悟を決めた自分が、たった数分で揺れに揺れてしまった。

死にたい。馬鹿な考えを持っていた自分を殴り殺したい、そう思えてしまうほどに。


眼鏡(…ああ【最低】だ)

だから、この人に俺は【心から感謝したい】。【ありがとう】【浮かれずに最後まで最低だと思って彼女に会える】と。

眼鏡(兄貴も、俺にこう感じてたのかな)


それでも俺は否定する。兄貴は曖昧だ、そして先輩も甘いんだ。

みんなみんな大人のふりして頑張ってるだけ、俺達は子供だ。

でも、それでも、俺は真面目でチキンで、そして優しいと言ってくれる人たちの中で───



眼鏡「先輩さん」



──最低になると、決めたんだ。



眼鏡「俺は、それでも金髪さんと一緒に居たい」

眼鏡「例え彼女を傷つけるかもしれない、そんな可能性に不安になっても…」

眼鏡「…それがまるで優柔不断な答だったとしても、」


眼鏡「俺は誓えない。彼女とずっとずっと離れていたくない、絶対だっ!」

先輩「何故?」

眼鏡「そりゃ好きだから…っ…金髪さんが、好きになったから諦めたくない…!」

先輩「それが彼女にとって辛いことなのに?」

眼鏡「なぜそう言い切る…ッ! だったら一緒に居続けて、納得するまで互いに話し合うッ!」

先輩「その行為が互いを傷つけ合うんだ、何故わからない」

眼鏡「あーそうだろうなッ! あ、アンタにはわからないだろう、だってアンタは逃げたから!!」

先輩「…何?」

眼鏡「アンタは優しさだとか想いの強さだと理由に言うが、結局は努力することを怖がっただけだ…!」

眼鏡「──最後まで金髪さんを好きで居続ける自信がなかっただけなんだろ!?」

先輩「ふん、人の揚げ足を取っていい気分か。人は【それが当たり前】だ、恐いことに怯えて何が悪い?」

先輩「そこまで人は強くなれない。だから好きだという想いで、その怖さを打ち切る」

眼鏡「それが逃げてるって言ってんだろ…!」

先輩「逃げじゃない、成長だ。俺には君の方が無様で滑稽な逃走に見えるが?」

眼鏡「俺は違う、ちゃんと考えて彼女との関係を悩み続ける、それが俺の選択で答えで…ッ」

先輩「君はどうやら自分を、神様か高尚な存在に勘違いしているようだ。言ってやる、君は最低で人としてクズの部類に入る」

先輩「もう一度言おう。君は最低だ、やっぱり俺の感想は当たってたよ。君は彼女の側に居てはダメだ」

先輩「その考えは人を堕落させる。一番厄介なのは、それを信じてる君と…彼女だ」

眼鏡「…ッ…」

先輩「わかってくれ、君は最低なコトを言った。その否定を俺だから出来る、…同じ人を好きになったんだ」

先輩「君は彼女を好きになった。その部分だけは共感できる、だから、優しくなってくれ」


先輩「人を振るという優しさを、知ってくれ」


眼鏡「……それでも…ッ」


   言え、言うんだ、


眼鏡「貴方が言うことが正しい、としても…!」


サヨナラを告げろ。過去の自分に、そんなチキンな自分に。


眼鏡「俺は彼女に好きだって思ってて欲しい…っ…どんなに醜い俺でも、最後の最後まで…」

眼鏡「──一緒に、頑張り続けたい…信じて、努力して、【応援】しあって行きたい…!」

先輩「……、」

眼鏡「あぁ…俺は最低でアンタみたいに大人じゃない、でも信じたいんだよ…っ」

眼鏡「好きだって想いをッ! 馬鹿みたいに正直に、信じあってちょっとづつ進みたいと思ってる!」

先輩「…馬鹿か」

眼鏡「あぁ馬鹿だって言ってんだろ!? こっちはもう、納得するだけに散々なコトを言いまくったよ!?」

眼鏡「だけど、それでも! 好きで好きで好きで、強く強く強く、あほみたいに現実をみてないぐらいに!」


眼鏡「グダグダ恋愛上等じゃないか…ッ! だったら、俺はそれだって純愛にするよう死ぬ気に頑張るよッ!!」


先輩「…それは停滞だ」

眼鏡「知ってる」グス

先輩「それは最低だ」

眼鏡「知ってるッ」

先輩「先に進め。諦めろ、その答えは君には出来無い」

眼鏡「出来るッ! あんたは先に行ってろ、俺はこっちで死ぬ気でぐちゃぐちゃしたるわ!」

眼鏡「要らんお節介どーもありがとでしたッ! 優しいアドバイスありがとでしたッ! だけど俺は彼女を傷つけてガンバリマスッ!」

先輩「なぜ、そこまで」

眼鏡「あぁッ!?」

先輩「そこまで自信が持てる? 教えてくれ、俺には分からないんだ」

眼鏡「それは…ッ」

先輩「どうしてそこまで君という人間を最低にさせる?」

眼鏡「…そんなの当たり前だろっ」


眼鏡「それが好きだって言ってもらえたからだよ! この優しさがなッ!!」ビシッ


先輩「………」キョトン

先輩「あぁ、そうか。好きと言われたのか……」

先輩「……それは、一度でも疑われたりした?」

眼鏡「さ、されてない! むしろ優しすぎて、恐い言われたわっ!」

先輩「へぇ…そうか…そうかい…」

先輩「…なんとも納得し難い、理由だ…あの彼女が一度も疑わない、か…」

先輩「…厄介だ、実に厄介……そうか、俺はとうに厄介者か…」クス

眼鏡「…っ…?」

先輩「なんだか腑に落ちない。けれど、君は死ぬ気なんだろう」

先輩「君が抱えている問題は、きっと君自身だけが選んではいけない物なんだろう」

先輩「…なのに一人抱えるのか、信じあって、壊れかけたら、みんなで慰めあって」

眼鏡「……」ゴシゴシ

先輩「夢物語だな…」

眼鏡「…違う、現実だ」

先輩「…君が一番理解してるみたいだな、言ってることは最低なのにな」

眼鏡「ああ、知ってる。けどちゃんと答えにして、俺は先に進む」

先輩「……」

先輩「どうやらここでお別れのようだ」スッ

眼鏡「…へ?」チラ

眼鏡(あれ!? いつの間にかき、金髪さん家の前だ…!)ビクッ

先輩「俺は、この【先】に用事がある。ここで立ち止まるわけにはいかないんだ、先に進まないと」ニコ

先輩「それが俺の優しさだから。大人として、先輩としてな」

眼鏡「…俺は【ここで立ち止まる】。勝手に先に進むわけにはいかない、頑張らないと」ギュッ

眼鏡「それが俺の優しさだ、最低で、最悪だけど」ぐすっ


先輩「……」

眼鏡「……」ボロボロ


先輩「…後悔すんなよ、元カレとしてのアドバイスだ」

眼鏡「アンタこそ、後悔するなよ。フッてしまったことにな…っ」

先輩「ああ、胸を張って生きるさ。君は怯えながら生きろ」

眼鏡「何時か追いついて、鼻高々に笑ってやる」

先輩「応援してるよ」

眼鏡「…しなくていい」

先輩「ああ、さよな──ちがうな、これは」

先輩「またな、眼鏡くん」

眼鏡「ああ、またに。先輩さん」

くるっ

眼鏡「……はぁー……」クタリ ドス

眼鏡(言っちまった、努力してそんな気持ちを整えようとしたけど)

眼鏡(好きだって想いが強いから、なんて本当に最低な理由で…)

眼鏡(…馬鹿だ、兄貴と変わらん)グリッ


眼鏡「…くそ…」

金髪「なにがくそだ、この近所迷惑」


眼鏡「だぁーーー!!!?」ビックゥウウウ

金髪「今更かよ…ずっと玄関に居たぞ、あたし」ポリポリ

眼鏡「えっ? えっ? うそ、マジで!?」

金髪「居た居た。しっかも先輩さん途中から気づいてたし、気づいてたあんた煽ってたし」フリフリ

眼鏡「…エー…」カァァ

金髪「ほんっとばかだよ、あんたは」

眼鏡「ううっ…なんというか、ほんとすんません…っ」

金髪「ん、別にいい」

眼鏡「…許してくれる?」

金髪「これからの展開次第だけど?」

眼鏡「え、えっと、その…」

金髪「いちいち人の顔色伺うなって、決めたんだろ。答えを」

眼鏡「う、うん」コクコク

金髪「あたしも覚悟を決めた。もうウジウジしない、ちゃんと聞くし嫌だったら否定もする」

眼鏡「…そのほうが俺も有り難い、うん」

金髪「んで?」

金髪「先輩さんはハーレムのこと知らなかったぽいけど、眼鏡が言ったそこは底を含めてだよな?」

眼鏡「あ、ああ…そう、だって言う」コク

金髪「だったら勝手にやってろ、他の二人を誘えばイケる」

眼鏡「だめだ、金髪さんも居て欲しい」

金髪「…言ってやる、あたしは馬鹿で最低だから、そんな関係でも……ハーレムとやらでも、嬉し言っちゃ嬉しい」

眼鏡「ぉぉぉ…」

金髪「もう色々と四人で馬鹿ばっかやったからな、もういい、そこは認めてやる」ハァ

金髪「でも眼鏡、それを許せんの?」

眼鏡「……」

金髪「あんたの頑張り、それをあたしが裏切らせたし悩ませた」

金髪「一番好きだって言葉も、今じゃあんたと頑張りのためになったりしない」

眼鏡「…うん」コク

金髪「それは一途じゃなくても良いってことだ、認める。あたしを今からやっぱ好きじゃないと言っても良い」

眼鏡「言わないよ、絶対に」フルフル

金髪「そりゃ嬉しいね。けど、あたしは最後の最後まで揺れて揺れて、眼鏡を呆れさせた女だってば」

金髪「もういい。その恐いくらいの優しさは、他のやつに使ってやれよ。あんたは楽になっていい、それだけだ」クル

眼鏡「……」

金髪「ハーレムが許せないのは、あたしが居るからなんだろ。無理して、理由作って認めようとすんな」

金髪「あたしは最低で良い。だから諦めろ、勝手に三人で幸せになってれば、それでいいじゃん」

眼鏡「…逃げるなよ」

金髪「逃げてない」

眼鏡「また逃げてる。あの公園の時と一緒だ、金髪さんはまた逃げようとしてる」

金髪「…状況が違うだろ」

眼鏡「一緒だよ。だって好きになる努力をまた、捨てようとしてる」

金髪「……」

金髪「へ?」クル

眼鏡「俺を好きになる努力を、だ」

金髪「あん、た…」

眼鏡「う、うん?」ダラダラダラ

金髪「とんでもなく思い上がったセリフ吐いたな、マジで…」

眼鏡「わ、わかってるよ! あの時は先輩さんだったけど、あぁ、そうさっ!? 今は俺のために頑張れと言ってる…!」

金髪「ばかじゃないの…?」

眼鏡「ああ馬鹿だってば……もう、俺は馬鹿なんだ。こんなことでしか、自分の行動を正当化出来なかった…」

眼鏡「最低になってもいいと、理由をつけられなかった」ギュッ

金髪「ンだよ、言ってみ」

眼鏡「ああ、金髪さん。今からなによりも誰よりも、一番最低なことをいうよ──」



眼鏡「──お願いだ、俺を好きになる努力をしてくれ。それを応援するから、どうか諦めないでくれ」

金髪「いやだ」

眼鏡「ん、ダメだ。否定出来ないよう、ちゃんと周りを固めたから」

金髪「…、まさかっ」

眼鏡「金髪さんが【嫉妬】出来るように、努力を諦めないように、二人に告白したよ」

金髪「…っ」

眼鏡「告白した理由は一人が好きで、一人が好きになったから」コク

眼鏡「そして金髪さん。貴女が好きだから、またもう一度言うんだ」


眼鏡「付き合って欲しい。どうか俺を好きになってほしい」


金髪「…最低だな、眼鏡」ボソリ

眼鏡「ああ最低だ。結局は全部、貴女の為にやったことだから」

眼鏡「金髪さんに今までの俺と、同じ立場にしてあげるよ。不安がらせて、最後には俺と同じように…」

金髪「…一番か、訊かせるってか」

眼鏡「その通り、それが俺が選んだ答えだ」

金髪「もう一度言う、あんたは最低だ。女ったらしでよくもまぁ考えついたと、逆に褒めたくなる」

眼鏡「…うん」

金髪「そんな優しさを許してくれんのは、あぁ、あいつらぐらいだろうな」

眼鏡「だと思う」コク

金髪「何時か殺されるぞ。少しでも間違えれば、あんたは確実に殺される」

眼鏡「…ちゃんと説得する、決めたんだ。だったら押し通すよ」

金髪「それも、全部あたしの為か?」

眼鏡「ああ、何も変わらない。最初から最後まで、俺はずっと金髪さんが好きなんだ」ニコ


眼鏡「だったら最低にでも最悪にもなる。だって、すきだから!」


金髪「…」

眼鏡「これで全部だよ。納得できなくても、金髪さんは俺のこと好きだと知ってるからね」

眼鏡「今ここで返事をもらえなくても、俺は絶対に諦めない」

眼鏡「どんな手を使ってでも、一番の人を、一番好きになって貰いたい人を手放したくない」

金髪「…眼鏡」

眼鏡「見せてくれよ、貴女の頑張りを。俺が好きになった、貴女の強い好きだって想いを!」

金髪「……」

眼鏡「…う、うん」テレ

金髪「ばかだよ、眼鏡、そんなのもう優しさじゃない、自分勝手だ」

眼鏡「し、知ってるってば」

金髪「なぁ教えてよ、これって何が悪かったんだ? どこであたしら間違えたんだ?」

眼鏡「へ?」

金髪「もっと簡単な答えがあったと思うわけ。なのに、こんなめちゃくちゃ誰が望んだの?」

眼鏡「そりゃ…まぁ…」

金髪「あたしらだろうね。あたしと眼鏡のせいだと思う、けどきっかけって何だ?」

眼鏡「……」

金髪「教えてみ、知ってンだろセンセぇならさ」ホレホレ

眼鏡「結局、あれじゃないの?」



「好きになったのが、悪い」



~~~~

眼鏡(超寝不足だ…)ズーン

眼鏡(寝れなかった、寝れるわけがない。どんだけのコトやったんだ、死ぬほど疲れたのにな…)トボトボ


委員長「おはよう、眼鏡くん」ニマニマ

眼鏡「うっひぃっ!?」

委員長「うひい?」キョトン

眼鏡「あ、委員長! おはよう!」

委員長「うん、おはよう」ニコ

眼鏡(そりゃ会うよな、うん、何時も通学路一緒だし…)ポリポリ

友「ボクも居るよ?」

眼鏡「ひぁ!?」

友「しかも女装しとります」ニヨニヨ

眼鏡「い、いきなり知らん女子に話しかけられたかと…!」ドキドキ

友「……興奮する?」チラ

眼鏡「うっ、知らん知らん! こんなヤツやっぱり知らん!」プイッ

友「はおーいいんちょー」

委員長「おはよう友くん」ニコ

友「あ、それと眼鏡ちんと付き合うから、付き合っていいよ?」

委員長「ま! それなら眼鏡くん! 私オッケーだよ!」フンスフンス

眼鏡「……いやいやいやいや…!」ブンブンブン

友「そんな約束よ?」

委員長「えーせっかく素直に認めたのにぃー」ショボン

眼鏡「いや待って、本当に二人凄いよね? なに、原因俺なのに置いてけぼりってなんなの!?」

委員長「そんなの、みんな好きだからだよねー?」コテン

友「好きだからよねー?」コテン

眼鏡(この二人は本当に…)ダラダラダラダラ

委員長「この話は良しとして、本題と行きますか」

眼鏡(横に置くんじゃないんだ、もう決まったんだ)

友「金髪つぁんどなった?」

眼鏡「え、あ、うん、まぁ…」

委員長「ぶっちゃけるとチョロかったでしょ?」ニマニマ

友「眼鏡ちんがどんな理由でもスッキ言うたら堕ちる」ニヨニヨ

眼鏡「あのさ、色々と言いたいけど金髪さんに対して容赦無いね、君ら」

委員長「最初から最後までめちゃくちゃにしたのは、あの人でしょ?」

眼鏡「みんなだよ! みんな勝手だからそうなったんだよ!」

友「それな」

眼鏡「…お前がハーレム言ってから凄いことになったんだぞ」



「結局、そいつの言うとおりになったな眼鏡」



眼鏡「!」クルッ

友「あ、来た。ちょろ金髪」

委員長「ちょろ金髪…ふふっ、ぷふっ…」ブルブル

金髪「早速来るな…わかってたけど、ああ、ハイハイハイ、どーせあたしはちょろいですよ、えーえー」ズンズン




委員長「……」

金髪「……」

友「……」


眼鏡「あ、あの三人とも?」

委員長「ねえやっぱり、初めに訊いておこうか」

友「いいと思う」コクコク

金髪「まぁな。知ってたほうが互いに良いっしょ、今後のために」

眼鏡「う、うん?」

金髪「なぁ眼鏡、この三人の中で【一番好きなの誰】か言ってみ」

眼鏡「ヘェッッ!?」

友「言わないと今度の喧嘩は凄いことになる」コク

委員長「あははー今度こそ刺されちゃうかもなー」

金髪「脅すな脅すなって、眼鏡答えにくくなるじゃん…」

委員長「む? なにかなそのヨユーの態度は?」ムス

友「どーせ自分一番とか思ってる…」ボソリ

金髪「はっは! そりゃそーだろ! 結局は最後までこいつ、あたしのこと───」

眼鏡「あーうん、委員長かな」ボソリ

金髪「──へ…?」キョトン

眼鏡「だから、委員長かなって思う。うん、一番好きなのは…今のところ…」ボソボソ

委員長「眼鏡くん!」パァァァァァアァァァァ

委員長「今日ね、今日ね、実は家に誰も居ないんだっ! そのね、だから遊びに来ても全然いいよ…?」

友「ボクも行っていい?」

委員長「もちろんだよ!」ペカー

眼鏡「ちょ、ちょっとまって二人共…っ」チラリ


金髪「っ…っ…」ぷくぅー


眼鏡「う、うーん…」

金髪「言ったのに…好きゆったのに…っ…一番離したくない、いったくせに…っ」ぷるぷるぷる

眼鏡「そ、そう簡単に認めたら…頑張りやめない?」

金髪「あぁーッ! そうかいッ! だったら一番言わせたるよッ! ほれ、ちゅーしろちゅー!」グイグイ

眼鏡「おわぁー!?」

友「ていっ」ドス

金髪「ぎゃんッ」

友「成敗、そして眼鏡ちん二番目は?」

眼鏡「それ訊いちゃう…?」

友「思うにボクだと言ってみる」

眼鏡「…あたり」ポリ

友「うむ」コックリ

金髪「はぁッッ!? うそだろ、あんたマジで!?」バッ

眼鏡「ええ、まあ、ハイ」

金髪「…あたし、三番目?」

委員長「やーい三番目ー」

友「オトコに負けた三番目ー」

金髪「…シニタイ…」ガックリ

眼鏡「あーうーん…」

眼鏡「で、でも好きだよ? 金髪さんのこと、一番そばにいて欲しいと思ってる、から」

金髪「…でもスキでは三番目なんだろ…」じぃー

眼鏡「だから、応援してる。ヤキモチ焼いてくれ、俺はちゃんと受け止めるから」

金髪「…最低だわ、ほんっと」

委員長「すけこましだね」クスクス

友「でもみんな好きよ? そゆとこね!」

眼鏡「…みんな最低なんじゃないの、これ」

金髪「はぁー、ほんっとなんだこれ。やっていけんのかよ」

委員長「私は良いと思うけどなぁ、幸せならそれで」

友「ボクもボクも!」フンスス

眼鏡「……」


先には進まない。答えを見つけずに、置いていくことは出来ないから。



眼鏡(だからと言って、答えから逃げてハーレムなんてやらない)


曖昧にしない。俺の頑張りは最初から最後まで、彼女の為だった。


眼鏡「…一途な俺は、ちゃんと居る」


時に人は好きだと言う思いで相手を振らないとダメだというのなら。

俺は人を好きだという想いで相手を受け入れるべきだと心から思う。


眼鏡「最低で、最悪だ」コク

眼鏡(でもそれを優しいと言ってくれた人たちが、ここにいる)

眼鏡(おかしくて変人で、馬鹿で最低、だから見つけられるはず)


友「眼鏡ちん。明日とらのあないくから付き合ってちょんまげ!」

委員長「今日の放課後忘れないでね。あと帰り道に薬局屋に付き合ってもらってもいいかな…?」

金髪「おいおい眼鏡、勉強会やンだろ。付き合ってくンない、かな?」


眼鏡「へっ? いや、ちょっとみんな落ち着いて…う、うん…」

探そう、一番の答えを。


眼鏡(…付き合ってくれ、皆)


俺のチキンさに、優しさに、最低さに。


眼鏡「…好きだよ」


金髪「ん? ンなの、みんな知ってるよ」クス

眼鏡「ああ、そっか」クス

金髪「後悔させてやる。絶対に、あたしを純粋に選ばなかったことを」

眼鏡「させてくれよ。そして俺は貴女に一番好きかって、訊かせてやるから」

金髪「…あたしは、」

眼鏡「うん?」

金髪「もう心が決まってる、眼鏡が一番好き」

眼鏡「ありがと、金髪さん」


俺たちはまだ、この場所で留まり続ける。

おわり

長くなってごめんなさい
なんスレか続きましたが一応最後です

付き合ってくれた人ありがとうでした


ではではノシ

おつ

おつ


付き合ったから次は突き合ってくれですね?

乙でございます

委員長かわいい

おつ

おつ

おつ。面白かった
ホテル街の事件は金髪は先輩とヤったという認識でいいのかな?

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