Project Krone のお話
タイトルとは直接関係なし、Pが複数出るので嫌いな人は注意
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『宮本ォ!走れえええ!!』
『橘!!rest(休憩)は3分と言っているだろうが!!』
『ケツを使え!ケツだ!!』
怒号が飛ぶ。怒号の主はマスタートレーナー。
―――
塩見「はぁはぁ……あ゙~~えらい」
モバP「偉い?」
塩見「しんどいって意味や……」
モバP「サボりとは感心しないな」
塩見「異議ありー!レッスンは、完了したよ」
モバP「冗談だよーお疲れ様。ドーナツを冷やしてあるよ」
塩見「気が効くね、モバPさん。ああ…愛しのドーナツ、君は何故…そんなにも美味しいんだい?」
モバP「炭水化物と脂質のおかげではないかな」
塩見「夢のないことは、言わんといて……さて!いただきます」
塩見周子はドーナツにかぶりついた。塩見周子は運動後の体に、甘い物が沁み渡り
心が貴い何かで満たされるのを感じた。
塩見「チョコレート・スプリンクル…美味しい!!」
モバP「それは良かった」
塩見「いやー疲れたときは、甘い物に限るね~」
モバP「無脂肪Greek Yogurt、低脂肪カテージチーズもあるので、一緒に食べてね」
塩見「はいはーい、そっちも食べますよ」
宮本「ハーイ」
ドアを開けた主は、宮本フレデリカ。彼女は、マスタートレーナーのレッスンを終えたばかりであった。
宮本「パリは燃えているか?ハードな運動して、アタシの体は燃えている」
塩見「パリに行ったことないやんか」
モバP「お疲れサマンサタバサ。宇治金時のアイスを用意してあるよ」
宮本「Samantha Thavasa?宇治抹茶を口にすれば~~パリジェンヌも大和撫子」
塩見「あの会社、外資かと思ったら日本の……って、和菓子を食べたら大和撫子かい」
モバP「和菓子屋の娘は皆、大和撫子」
塩見「タコス屋の娘なら、メキシカン?洋菓子屋の娘ならヨーロッパ人?」
宮本「ん~っ、美味しい。チョコレートもいいけど、小豆もベリーグッド☆」
モバP「グッドラック」
塩見「フランスじゃあなくてアメリカンかい!」
宮本「それよりさーアタシの横のコレ、フレデリカに変えてくれる?」
塩見「はぁ?横?」
宮本「そうそう!左の、コレね。この表記だと、ただの宮本でしょー?それじゃ面白くないもんね」
モバP「あ、はい。チェーンジ」
フレデリカ「よし、おっけー☆」
塩見「何が違うんや。一緒やないかい」
フレデリカ「何が違うかって?アタシもわかんなーいアハハハ」
モバP「ハハハハ」
フレデリカ「アハハハ☆あ、ボイルしたロブスター美味しい♪常務さんも食べるー?」
閉まっていたドアが開く。そこに現れたのは、346プロの常務。
この346の城主といっても、過言ではない存在である。
常務「私は遠慮する。貴女が食べなさい」
モバP「常務……!」
フレデリカ「あ、常務は役職だから敬称『さん』はいらないんだっけ?」
塩見「そういうところは日本人かい」
ありす「やれやれ、高強度トレーニング後なのに……元気ですね」
橘ありすは、常務に軽く挨拶をすませると、彼女はモバPに詰め寄った。
モバP「お疲れ様。ありすちゃん」
ありす「橘です。横のコレ、訂正してください」
モバP「失礼、橘氏」
ありすちゃん「結構です。さぁ、苺大福を下さい」
フレデリカ「ストロべリー☆ ベリー美味しい~ラズベリー!ストロベリーマルガリ~タ美味しいよね?飲んだことないけど」
常務「………」
ありすちゃん「甘酸っぱい苺と和菓子のコンビを!さぁ、早く早く早く、早急にお願いします!!」
塩見「苺大好き橘さーん、ラーメン大好き小池さ~ん♪」
ありすちゃん「もぐもぐ……小池さん?」
モバP「気にせず、食べなよ。古い話だからさ」
――――
常務「彼女達は、万事あのような感じか」
モバP「はい。大槻唯と鷺沢文香、速水奏、以外の者は、大体があのような感じです」
常務「Project Krone は上手くいくのだろうな」
モバP「彼女らは個性が強く、自由奔放。しかし、メンバー全員がさらなる飛躍を望んでおります。Krone は上手くいくでしょう」
モバPはProject Krone を肯定するしか選択肢はなかった。
常務「ならばいい。ところで、君は帰宅が早いそうだな。仕事は嫌いかね?」
モバP「アイドルに気を配っておりますので……。仕事は早く切り上げる、コレにつきます」
常務「クライアントにも気を配れ、もうよろしい。下がれ」
―――――
17時を知らせる鐘がなると、モバPは手早くデスクの書類を片づけ、部屋を出た。
事務所内の廊下では、すれ違う者に帰りの挨拶を言うが、それに答える者もなく
また、とくにモバPに眼をとめる者も、居なかった。
モバPの帰りが早いことは、皆にとってはいつものことであった。
事務所を出ると、モバPは一定した足の運びで駐輪場に向かい、ママチャリに跨り、移動した。
モバPは、その足でトレーニングジムに向かい、慣れた様子でダイナミックストレッチを行い
関節を温めトレーニングをはじめる。トレーニングジム内では、誰かの視線を感じたが無視した。
―――――
モバP「……ふぅ。帰ろう」
水分補給をすませ、帰宅する。トレーニングジムを出て、男が自転車に跨ると
『今、貴方の後ろにいるの…』
背後で声がした。
モバP「マスコミの関係者……?」
『いいえ』
声の主は、モバPが担当しているアイドルだった。
モバP「奏ちゃん…何故、ここに」
速水「モバPさんを驚かそうと思って」
モバP「冗談はよしてくれよ、早く帰りたいんで……。火急の用事?」
速水「あなたが帰宅後、常務に声をかけられてね。お仕事のソレについて相談よ」
モバP「……ああ、Project Croissant……」
速水「違うわ。しっかりして、CroissantではなくKrone よ」
モバP「クロワ……」
モバPは、自分で口にした「Croissant」の言葉に、内臓が反応するのを感じた。
食べ物の名を耳にすると、本能が「空腹」を訴えるのがわかった。
モバP「ハ……速水」
速水「 ?」
モバ「速水、空腹…だ。俺は空腹なんだ。明日にして……明日だ」
速水「……じ、じゃあ、ファミレスにでも……」
モバP「ダメだ。絶対にダメだ、拒否する!!」
速水「え」
モバP「迅速に帰宅し、自宅でチキン500gとジャガイモ500g」
速水「えっ!?一体、何事…?」
モバP「食べねば、ならない。絶対にな、食べるぜ、食べるんだよォッマグロぉおおおお……さぁ退け」
モバP「もちもちな大福、プロテインサプリメントッ!!アイスクリームをななァNANANAAAAAAA」
速水「た…食べ過ぎじゃないかしら」
モバP「話なら、自宅でするってドケ除けぇ!退ケェ!!ドDOKeeeよおぉぉお」
速水「それは、まずくないかしら……」
モバPの眼の焦点は定まらず、あっていない。空腹のあまり殺気立っている。
速水奏は、彼の精神状態は平常ではないと判断した。
モバP「急がない用事なら、明日だァァアアAAAAAAAAAAAアアアアアアアアッt!!」
速水「ヒッ!」
モバP「どけぇっ!!俺は空腹なんだよォオ……俺を飢えさせるつもりかァッ!?」
食欲は三大欲求の一つである。食欲を妨げる者は、排除される。空腹で殺気立ったモバPは、速水奏の腕を食いちぎらんとばかりだ。
仮に、速水奏の腕をモバPが食べたところで「赤身が少ない。タンパク質が足りない、もっとだ」と言い
「もっとだ、腹が減った。脚もよこせ、速ヤミぃぃいいいいいいいい」と叫ぶに違いなかった。
速水「ううっ…わかった、わかったから落ちついて……」
モバP「………」
―――――
速水「本当に、鶏肉500g食べてるのね」
もぐもぐ もぐもぐ
モバPの食事にはマナーも礼節もなかった。それは食事というよりは、栄養補給という行為であった。
速水「まるで、ありとあらゆる物を、一切合切を飲み込んでしまうブラックホールのようね」
モバP「はふっはふ……むしゃむしゃ……速水…むぐむぐっ……運動後にな」
速水「はい。よく噛んで食べて頂戴」
モバP「むしゃむしゃ……むぐむぐっ……ばりばり」
速水「キャベツなどの野菜も、しっかり食べていて、感心ね」
もぐもぐ もごもごっ
モバP「ばりばり…むぐむぐっ……運動した日は、1日に必要な栄養素をなァ……ばりばり」
速水「もう、1時間も食べっぱなし……」
がつがつ がつがつ
速水「凄い食欲ね。全て食べる心算ね」
モバP「むしゃむしゃ…運動後にナぁ…はぐはぐ……1日に必要な栄養素の…多くを食べるスタイルなんだ」
速水「……」
モバP「あア…悪いなァ、もぐもぐ」
速水「………」
―――――
モバP「ふぅ……ごちそうさま」
速水「かれこれ、2時間も食べっぱなし」
モバP「……あ、あれ?何で…奏ちゃんがこの家に?」
速水「え?」
モバP「どこから湧いてきたんだい?何故、ここに…!」
速水「 」
モバP「以前、君は『今……あなたのすぐ後ろに居るの…振り返って』と」
モバP「脅かしてきたけど……本物のゴースト?小梅ちゃんに悪魔払いを…」
―――――
モバP「ああ、仕事の話だったんだねー、思い出したよハハハ」
速水「思い出してくれたかしら……ハァ」
モバP「常務なら悪いようにしないと思う。Project Krone 素晴らしい 」
モバP「君の方向性と、常務の方向性は、相性イイ感じがするしさー」
速水「そういうものかしら。やることを縛られるのは不自由ではなくて?」
モバP「Project Krone は、豪華な甲冑と壮健な馬のようなもの」
速水「馬ですって?」
モバP「そうとも。美しい城の”城主”である常務が、甲冑と馬を用意してくれる」
速水「甲冑と馬…ね」
モバP「他の者は歩兵……君は立派な騎馬だよ、一体何人のアイドルが”騎乗”できる立場だろう」
速水「……それほど、多くはないわね」
アイドルの中には、副業をしながらアイドルをやっている者も少なくない。
親類から仕送りや援助を貰う者もいる。
モバP「城主の考えは何であれ、用意してくれたソレを、君は好きなだけ使えばいい」
速水「常務から与えられた機会を、利用しろと言うのね」
モバP「甲冑を纏い騎乗し、歩兵を蹂躙すればいい。その後は、騎乗したまま凱旋パレートだね」
速水奏の脳裏に浮かぶのは、豪華絢爛なステージと喧騒と熱気に飲み込まれるファン達。
圧倒的な観客動員数、売上、成功すればアイドルの域ではなく、間違いなくアーティストの域であった。
モバP「城主がくれた Project Krone ……豪華な甲冑と壮健な馬を、使えるだけ使って」
モバP「君自身の名声を高める道具にすればいい。城主すらも踏み台にして、さらに飛躍してもいい」
速水「踏み…台、ね」
モバP「いずれは城主になることも、夢ではない」
十代の若い者は、功名心と野心に満ち溢れていた。
速水「フフッ……おもしろい話ね」
モバP「まぁ、バラエティの仕事がやりたいってなら……そういう仕事もあるよ」
モバP「奏ちゃんは、映画好きってことで『ポップコーン2時間耐久大食い選手権』とか」
速水「考えただけで、口内の水分を全て奪われる企画ね」
モバP「他には、『シャンデリア・ガールズ・プロジェクト!60分ぶら下がれますか?』…とかあるけど」
モバP「君は、常務の仕事よりそっちがいい?」
速水「遠慮しておくわ。腕が千切れそうだもの」
モバP「そう言うと思った。だから、この企画は武内君に譲っておいた」
速水「はぁ……有能なんだか無能なんだか…」
モバP「ハハハ!……あ、そうだ」
速水「?」
モバP「そろそろ帰って。お腹一杯だし、眠たいんだーおやすみ」
おわり
ありがとうございました
お疲れサマンサタバサって言いたかった
お疲れサマンサタバサ
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