一夏「更識姉妹の誕生日事情」 (34)

更識姉妹は不仲とあったんで、原作より拗れてる感じの設定で書きます。
一応原作で和解した後という態です


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更識簪

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira084722.jpg
更識楯無


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ーー生徒会室ーー


楯無「…….…」カリカリ


プルル、プルル


楯無「……….ん、電話か」


ピッ


楯無「はい、楯無です。はい。えっと今年は……….」


楯無「……………」


楯無「いえ、何でもありません。例年通り、そちらに向かいます。ええ。大丈夫です。自分の意思でやっている事なので。はい。失礼します」


ピッ


楯無「………」


楯無「……例年通り……か。………………ダメなお姉ちゃんだな、私は……」


楯無「はぁ………」

ーー翌日・食堂ーー


簪「…………」


一夏「おーい、簪?」


簪「…………」


一夏「……簪!」


簪「……っわ! ど、どうしたの一夏?」


一夏「いや、ボーっとしてどうしたのかなってさ。早く食べないと、うどん伸びちまうぜ?」ズルズル


簪「そ、そうだよね。ごめん」


一夏「い、いや。別にいいんだけどさ」


簪「うん…………」ボー


一夏(…………どうしたんだろ、簪?)

ーー四組ーー


一夏「失礼します」


モブ子1「あ、織斑くん!」


モブ子2「どうしたの?珍しいね」


一夏「ちょっと届け物で。更識さんいるかな?」


モブ子1「いるよー、更識さーん」


簪「…………」ボー


モブ子1「ありゃ?おーい、更識さんってば」


簪「えっ!?な、何……」ビクッ


一夏「よう、簪」


簪「あ…….一夏。ど、どうしたの」トコトコ


一夏「ほら、これ。先生から頼まれたやつ…」


簪「あ、ありがとう……。……あ、電話…ごめん一夏、また後で…」タッタッタ


一夏「おう、またな」


一夏(んー……)


モブ子2「……ねぇ、織斑くん。最近更識さん、ちょっと変なんだけど何か理由知っているかな?」


モブ子1「なんかずっと考え事をしているというか…。私たちも心配だから声かけたんだけど、分からなくてさ……」


一夏「うーん、ごめん。俺もちょっと分からないんだ」


一夏(クラスでもそうなのか……何かあったのかなぁ?あ、そうだ!楯無さんなら何か知っているかも)

ーー生徒会室前ーー


一夏「――はい、分かりました。お忙しい所、すいません。ありがとうございました。失礼します」パタン


一夏( ふぅ……。楯無さんは仕事で留守か。代表生は大変だな…)


一夏(うーむ。さて、どうした事やら……)


???「きゃあ!」ドンッバサー


一夏「うわっ!す、すいません。大丈夫ですか………か、簪?」


簪「あ……一夏」


一夏「わ、悪い余所見していた。怪我は無いか?」


簪「う、うん。大丈夫。私も余所見していた…ごめんなさい」


一夏「あ、本が……。ごめん今拾うから」


簪「あ……」


一夏「……ん?これは……誕生日ギフトのカタログ?簪、誰かにプレゼントをするのか?」


簪「………….」


一夏「簪?どうしたんだ?」


簪「…………お、お姉ちゃんの…誕生日で……」

一夏「楯無さんの誕生日?!……い、いつなんだ?」


簪「えっと………明日」


一夏(……成る程。それで最近考え事をしていたんだな)


一夏「何をあげるが決めたのか?」


簪「あ……そ、その…………………」


一夏「?」


簪「….うっ……ううっ……….」グスッ


一夏「か、簪?ど、ど、どうしたんだ?」


簪「……分からないの……。考えても考えても…….ぐすっ…何をあげたら良いのか……分からないの…」グスッ


一夏「簪……」


簪「私、お姉ちゃんの妹なのに………うっ….ううっ…」グスッ


一夏(そうか……昔に仲違いした時から今までずっと渡せてなかったんだろうな。……仲直りしたとはいえ、時間による溝は簡単に埋まるもんじゃないか……)

簪「うっ……ぐすっ…うっ……」


一夏(うーん……………よし!)


一夏「あーえっと…簪。一つお願いしたい事があるんだが」


簪「………?」


一夏「実は千冬姉にちょっと贈り物をしようと考えていてさ……だけど俺も中々決まらなくて」


簪「….……」


一夏「それで明日、街に探しに行こうと思うんだけど……良かったら簪も一緒に来て手伝ってくれないか?もちろん簪のプレゼント選びも手伝うからさ」


簪「……!」


一夏「ど、どうかな?」


簪「………うん。い、一緒に行きたい」///


一夏「よし!決まりだな!」


簪「よろしく…….お願いします」///


簪(ありがとう……一夏)

ーー翌日・朝ーー


簪「………」ソワソワ


簪「………」キョロキョロ


簪(これって良く考えたらデートみたい……///)ドキドキ


簪「………」ソワソワ


一夏「お。簪、おはよう。早いな…待たしたか?」


簪「えっ?!あ……い、一夏!?え、えと……ほ、本日はお日柄も良く…」


一夏「へ?」


簪「あうう、ち、違う………。えっと…ま、待った?」


一夏「うん?」


簪「あ、え、ええと……」アセアセ


一夏「お、落ち着け簪。深呼吸だ」


簪「は、はい。すーっ、はぁー、すーっ、はぁー…………ふぅ」


一夏「よし……改めて、おはよう簪」ニコッ


簪「……おはよう一夏///」

ーーーー
ーー

一夏「じゃあ、まず楯無さんのプレゼントを選びに行こうか」


簪「え……いいの?」


一夏「ああ、俺のは日にちが決まっているわけじゃないからな」


一夏(んー、そういえば…楯無さんは何が好きなんだろう?)


一夏「簪….…楯無さんは何が好きなんだ?」


簪「ん…….お姉ちゃんは扇子が好き…」


一夏「あー、確かにいつも持っているな」


簪「でも、お姉ちゃんのアレは特別性で普通の扇子じゃない……特別合金で出来ていて、表面に特殊な文字投影装置が付いている……凄く高い」


一夏「えっ…あれ、そんなやつなのか…」


簪「うん…」


一夏「うーんそうか…あんまり高いのはな…」

一夏「他に何かあるか?」


簪「ん……………あっ…」


一夏「お、何だ」


簪「……あ、や、やっぱりなんでもない」


一夏「ん?……気になるから言ってくれよ。別に当たってなくても良いからさ」


簪「……………け」


一夏「け?」


簪「けん玉………お姉ちゃんはけん玉が好き」


一夏「へー、楯無さんが…意外だなぁ」


簪「けん玉…初段の段位を持ってる」


一夏「段位?!そ、そりゃ凄いな」


簪「お姉ちゃんのけん玉は…ISみたいに飛ぶんだ」


一夏「あ、IS?よくわかんないけど凄そうだ…。あ、じゃあ新しいけん玉とか良いんじゃないか?」


簪「……………ごめん。でも、けん玉は…ダメ…」


一夏「うん?そうなのか?」


簪「うん………もう、けん玉はやって無いんだ。だから…渡せない。….ごめん…」


一夏「い、いや。まあ簪がそう言うなら」


一夏(渡せない?何か事情があるのかな?)


一夏「うーん、よし!じゃあとりあえず百貨店に行ってみるか」


簪「う、うん」

ーーーー
ーー


一夏「んー、中々ピンとこないもんだなぁ」


簪「うん…難しい……」


一夏(確かに楯無さんは飄々としているから、何にすれば良いか分かりにくいな)


一夏「まあ、まだ時間はある。とりあえず………あ」グゥゥゥ


簪「一夏、お腹空い…….…あっ///」グゥゥゥ


一夏「ははっ……そろそろ飯にするか」


簪「………///」コクリ


一夏「よし、そうだな…天気も良いし、公園で食べないか?」


簪「うん、いいよ」


ーー公園ーー


一夏「うーん、たまには外で食べるのも良いなぁ」


簪「うん、気持ちが良い…」


一夏「お、このサンドイッチ中々おいしいな……簪、一口食べてみるか?」


簪「え!?あ……う、うん。ありがとう///」パク


簪「じ、じゃあ私も……一夏に上げる……///」


一夏「お、ありがとう」パク


簪(なんか….…体がムズムズする///)

見てるよ

ウエーンウエーン


一夏「ん?なんだ、子供の泣声?」


簪「そこの、橋の下から聞こえる……」


一夏「行ってみよう!」


簪「うん」


ウエーンウエーン


一夏「おい、こんな場所でどうしたんだ?何かあったのか?」


幼女「うっ…….ぐすっ…….うう。が、川のながに…….おどじぢゃったの…」


簪「川の……中に?」


幼女「おねえぢゃんの……大事な…ネックレス……おどじぢゃっの……うっうっ…」


簪「お姉ちゃんの…」


一夏「ネックレス……か……。うーん……よしっ!もう泣くなっ!お兄さんが見つけてあげるからな!」


幼女「えっ….…ほ、ほんどに?」


一夏「ああ、任しとけ!……簪、ごめんっ。ちょっとだけ時間をくれないか」ヌギヌギ


簪「大丈夫….私も手伝う」ヌギヌギ


一夏「え!?ほ、ほんとか?めちゃくちゃ冷たいぞ?」


簪「うん、でも手伝わせて。…お姉ちゃんの大事な物、なくしちゃったら大変だから…」


一夏「簪…わかった。でも無理はするなよ」


簪「うん、分かってる」


>>12サンクス

ーー三十分後ーー


一夏「……」ザブザブ


簪「………」ザブザブ


幼女「…….」ガタガタ


一夏(中々見つからないな……)


一夏(あの子も簪も良く探してくれたけど……これは、見つけるのは難しそうだ。って……簪、寒さで手足が真っ白じゃないか?!)


一夏「簪!俺が探すから、少し休んでろ!」


簪「まだ、大丈夫…」ザブザブ


一夏「だけど、手足が」


簪「大丈夫…。絶対に見つける。絶対に……」ザブザブ


一夏「簪….」


簪「…….…あっ」ザブザブ


簪「あ、あった…」ジャラ


幼女「そ、それ!」


一夏「ほ、ほんとか!良かった…」


ーーーー
ーー


幼女「おねえちゃん、おにいちゃん。ほんとうにありがとう……」グスグス


簪「うん…見つかって、良かった」


一夏「そうだな。あっ、ペンダント…少し欠けてないか?」


幼女「あ…だいじょうぶ。これは、おとすまえに…わたしがやっちゃったやつだから」


簪「そう…なの?」

スマン寝る
書き溜めあるから起きたら全部投下しなす

幼女「…….おねえちゃんのだいじなネックレス。わたしがきずつけちゃったから….知られるのがこわくなって、もってにげてきちゃったんだ……」


簪「……」


幼女「そしたら、ころんじゃって…川におとしちゃったの…」


一夏「…そうか」


幼女「かえったら……ごめんなさいする。いっぱいおこられて、もしかしたらゆるしてくれないかも、しれないけど….ごめんなさい、する」


簪「うん、がんばって」


一夏「一人で帰れるか?」


幼女「うん、ありがとうございます。バイバイ、おねえちゃんおにいちゃん!」タッタッタ


簪「バイバイ」


一夏「帰り道は気をつけるんだぞー」


ーーーー
ーー


一夏「ふぅ……だけどビショビショになっちゃったな。大丈夫か簪?」


簪「うん、大丈夫」


一夏「そうか、なら良いけど俺より簪の方が…….なんつーか頑張って探していたから、心配でさ」


簪「………」


一夏「……もしかしてあんなに一生懸命探したのは、けん玉の事が関係あるのか?」


簪「!!」

一夏「やっぱりそうか…。それって楯無さんの誕生日の事と関係しているのか?」


簪「………」


一夏「……楯無さんと簪の関係は分かってる。俺なんかが立ち入って良い話じゃないかもしれないし、そもそも力になれないかもしれない」


一夏「…….でも放っておけないんだ」


簪「…….….」


簪「……お姉ちゃん、今IS学園にいないの知ってる?」


一夏「あ、ああ。代表生の仕事関係でいないって聞いたけど」


簪「お姉ちゃん、誕生日の時期になると必ずどこに行っちゃうんだ…」


一夏「何処かに行く?じゃあ去年もいなかったのか?」


簪「うん……小学三年生の時からね。それで自分の誕生日パーティは絶対にしないの」


一夏「え……な、なんで?」


一夏(楯無さん俺の誕生日の時はあんなに、はしゃいでたのに?)

簪「わたしの….…せいなんだ」


一夏「簪のせい?」


簪「うん……。…………まだ、仲良かった頃……小学二年生の時の誕生日パーティでけん玉をプレゼントしたの」


一夏「プレゼント…」


簪「うん、それでね…お姉ちゃんは凄い喜んでくれた。もう…私が恥ずかしくなるくらいに」


一夏(ああ、ハイテンションで喜ぶ楯無さんの姿が目に浮かぶな…)


簪「でも…….それから直ぐだった……私がお姉ちゃんを怖く感じるようになったのは….」


一夏「……」


簪「どこにいても、何をしていてもずっと……お姉ちゃんの名前と影が私を追っかけてきたの。更識に生まれたから…それは仕方ない事だったけど……私には耐えられなかった」


簪「お姉ちゃんはおかしくなる私を心配してくれた……でも、それは私にとって苦痛だったの…」


簪「そして….お姉ちゃんの三年生の誕生日の時。私とお姉ちゃんは誕生日パーティで大ゲンカをして…………」


一夏「?」


簪「………壊したの。私があげた、お姉ちゃんのけん玉を。宝物にしていたけん玉を粉々に壊したの…」

一夏「えっ……」


簪「お姉ちゃんは…とっても悲しい顔をしていた……あんな顔は見た事がなかったわ」


簪「ああ、取り返しをつかない事をしてしまったんだな……って後悔した。けれど….もうどうにもならなかったの」


簪「壊れたけん玉は捨てられて….それ以来お姉ちゃんは二度と自分の誕生日を祝う事は無くなった……」


簪「でも、今思うの…。あの時、ちゃんと。けん玉を持って…….お姉ちゃんに壊してごめんなさいって、謝っていれば….少しは違ったんだろうって……」


一夏「簪….….」


簪「お姉ちゃんとは仲直りしたつもりだけど….この事だけは…もうどうしようもないんだ…」


簪「……だからね、さっきの女の子にはちゃんとネックレスを持って行って、お姉ちゃんに謝ってほしかったんだ….。取り返しのつかない事に….ならないように…」


一夏「………」


一夏「…簪。今年はけん玉をプレゼントしようよ」


簪「え………」


一夏「取り返しがつかない……いや、そんな事はない!謝ってないなら、今謝れば良いんだよ!またあの時のけん玉を持って楯無さんに」


簪「え、そ、そんなの無理だよ!お姉ちゃんだってきっともう……」


一夏「いや、楯無さんは待っている筈だよ…。でも楯無さんも怖いんだ。また簪に嫌われてしまうかもって」


簪「お、お姉ちゃんが……」


一夏「仲直りは出来たんだ。きっとこの事だって大丈夫だ!それに…楯無さんにプレゼントを渡したいって事は、元々どうにかしなくちゃって感じでいたんだろ!」


簪「う……うん」


一夏「心配しなくても平気だよ……今の簪なら大丈夫」


簪「今の……私」


簪「…………分かった。やってみる….」


一夏「よし!となると、渡すけん玉だな…その昔に渡した物と同じが良いけど…….」


簪「昔のはもう残ってないし…それに確か….特注品だったから…」


一夏「うーん、楯無さんは多分捨てて無いんじゃないかな….。んー、そうだ。簪、布仏さんに聞いてみて良いか?」


簪「あ…うん。本音もこの事…知ってるから…」


一夏「そうか….じゃあ、電話してみるよ。ちょっと待っててくれ」プルルル


ピッ


のほほんさん《もしもし〜おりむー》


一夏「あ、のほほんさん。突然ごめんな。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今大丈夫かな?」


のほほんさん《大丈夫だよー。なになに〜もしかして、おりむーからの告白?》


一夏「あはは……。えっとな、楯無さんのけん玉の事についてなんだけど…」


のほほんさん《……おりむー。今そこに、かんちゃんいるでしょ》


一夏「簪か?……ああ、いる」


のほほんさん《悪いんだけど、一回かんちゃんと話させてほしいな》


一夏「…分かった」

一夏「簪、布仏さんが話がしたいって」


簪「え、本音が…….分かった」


ーーーー
ーー


簪「 ――――うん。――――分かった」


簪「一夏、はい….ありがとう」


一夏「ん….もう良いのか?」


簪「うん、大丈夫」


一夏「もしもし….のほほんさん?」


のほほんさん《お待たせーおりむー。ありがとうねー》


一夏「いや、大丈夫。それで、楯無さんのけん玉は…」


のほほんさん《うん。おりむーの言うとおり、おじょうさまは捨ててないんだよ》


一夏「…!やっぱりそうか。それで何処にあるかわかるかな。出来れば製造元とか知りたいんだけど」


のほほんさん《ほんとうは内緒なんだけどねー。かんちゃんの為だから言っちゃうよ。実はこの学園に来てからずっと生徒会長室の机にしまってあるんだ》


一夏「机に…?」


のほほんさん《うん、今学校にいるから画像を送るね》

ーーーー
ーー


のほほんさん《はいっ、これがおじょうさまのけん玉だよ》


一夏「こ、これがそうなのか…」


一夏(確かに球も砕けていて、けんも折れているな)


のほほんさん《えっとねー、横に鉄丸工房2号って書いてある。ほら、みえるー?》


一夏「ああ、かすれてるけど確かに書いてあるな……ありがとう、のほほんさん」


のほほんさん《いいって、いいって。かんちゃんとおじょうさまの為だもん。……それぐらいしかできないからね》


一夏「のほほんさん….」


一夏(のほほんさんもずっと、悩んでいたのかな….)


のほほんさん《おりむー、かんちゃんの事は頼んだよー!》


一夏「….分かった!任しといてくれ!」


ピッ


一夏「簪、けん玉の製造元が分かった」


簪「ほ、本当に?」

一夏「ああ、鉄丸工房ってとこらしい。今調べてみる…………あ、あった!こっから結構近いぞ!」


簪「鉄丸工房….」


一夏「電話番号は無しか……よし、今から直接行こう!」


簪「う、うん」


ーー鉄丸工房ーー


一夏「こ、ここか?」


簪「何だか….凄い……年季がある…」


一夏「と、とにかく入ってみよう。すいません。ごめん下さい……うわっ…」


簪「失礼します….す、凄い。けん玉が…いっぱい」


職人「………ん?何だ?客か?」


一夏「あ、こんにちは!始めまして。IS学園の織斑と申します」


簪「さ、更識です」


職人「おう。で、何の用だ?ま、ここに来るって事はけん玉が欲しいんだろうがな」


一夏「はい、《鉄丸工房2号》っていうけん玉を探しているんですが….」


職人「鉄丸工房2号?!…あるっちゃあるがな…….ほら、そこ」


簪「あ、こ、これお姉ちゃんの……」


一夏「ほ、本当だ……」

一夏「あの、これを買いたいんですが……」


職人「………それは、駄目だ」


一夏「え…」


簪「え、な、何で….」


職人「それはな….死んだ先代が最後に作った奴。形見なんだ……だから悪いが金で売れるもんじゃないんだよ」


簪「そ、そんな」


一夏「…………」


一夏「…お願いします!」ドゲザ


職人「….….!?」


簪「い、一夏!?」


一夏「それが無いと、大切な人が悲しむんです!俺に出来ることなら後で何でもします。だから……どうかお願いします!!」


職人「………」


簪「一夏…….わ、私からもお願いします!どうかそのけん玉を…」ドゲザ

一夏「か、簪…」


職人「…?!」

職人「…………」


職人「……あー、もう分かったよ。土下座なんてやめてくれ…。ほら、これで顔を拭いてくれ…」


一夏「え……本当に、本当ですか!」


職人「ああ、いいよ。たくっ………けん玉一つに躊躇なく土下座するやつなんざ、見たことねえよ….」


一夏「す、すいません」


簪「あ、あの。本当にありがとうございます…」


職人「嬢ちゃんは土下座なんか二度とすんなよ!顔に傷なんかつけたら先代に殺されちまうよ。ほらっ、もってけ!」


一夏「あの……お代は?」


職人「要らねえ要らねえ!言ったろ。金で売れるもんじゃないって」


一夏「あ……ありがとうございます!!」


職人「いいよ別に。じゃあなっ!大切な人を悲しませるなよ」


一夏「はいっ!」


簪「は、はい」


ーーーー
ーー


一夏「よ、良かった….」


簪「うん….あ、一夏」


一夏「うん?」


簪「ありがとう……あんなことまでして…わたし、なんて言ったら良いか…」


一夏「ああ…いいんだ。二人の為だからな」


簪「え…….う、うん///」


一夏「よし、学園に戻ろう!」

ーーIS学園ーー


一夏「ふぅ……着いた、着いた」


簪「………一夏。今日は本当に色々とありがとう」


一夏「ああ、それより簪….…楯無さんはいつ帰ってくるんだ?」


簪「あ……明日の夜に」


一夏「….一人で渡せるか。なんなら俺も……」


簪「…….ううん。大丈夫。こっからは….自分でやる。ありがとう、一夏」


一夏「分かった….頑張れよ。簪….…」


簪「うん、大丈夫。私、やるよ」

ーー翌日夜・IS学園ーー


楯無「んー、疲れたぁ…。帰って来たよぅ。久々の我が母校」


楯無「んー、メッセ……うわっ…凄い件数…」


楯無「たはっー、人気者は辛いねぇ。おねーさん、嬉しくって震えちゃうよっ」センスペシッ


楯無「本当に嬉しいよ…….うん……」


楯無「…………はぁ」


楯無( 仲直り、したんだよね….…)


楯無(なのに、いつまで逃げるのかな。楯無ちゃんは…)


楯無(ううん…怖いんだよね。簪ちゃんと誕生日に会うのが……全く。臆病者は私の方だ……ね…)


楯無「はぁ…………帰って寝よ」


??「あの…….」


楯無「え?!誰だ………え??」


簪「おかえりなさい……お姉ちゃん」


楯無「え、ええ?!か、簪ちゃん?!何でこんな時間に……」


簪「ご、ごめんね突然。でも渡したい物があるんだ……はい」


楯無「え……….これは、私に?た、誕生日プレゼント?」


簪「………」コクッ

楯無「…………今、開けてもいい?」


簪「うん……」


楯無「…………え?!あ、こ……これ」ガサガサ


楯無「…てつ……ま……る…にご………う….」


楯無「…………」


楯無「か、簪ちゃ――」


簪「――ごめんなさい」


楯無「え……」


簪「私……ずっと謝って無かった」


簪「お姉ちゃんの大事なけん玉を壊して」


簪「本当は…….本当はたくさん謝らなければいけないのに…私、お姉ちゃんから逃げてたっ!」


簪「謝っても…謝りきれないけど……。でも、もう一度。お姉ちゃんに大好きなけん玉をやってもらいたいからっ….」グスッ


簪「あ、あれ…….ご、ごめんね、泣かないって…決めた….…のに。お、お姉ちゃん…ごめんなさいっ!」グスッ

楯無(………ああ。逃げていたのは私だけだったんだね…)


楯無(簪ちゃんは…キチンと過去と向き合って来たんだね……)


楯無(馬鹿だなぁ……私は。そんな事にも気づかなかったなんて…)


簪「……うっ…….ごめっ……ごめんなさ……!?」


楯無「………」ギュッ


簪「お、お姉ちゃん…」

楯無「許すよ…」


簪「えっ……」


楯無「たった一人の可愛い妹だもん。許すに決まっているじゃない…」


楯無「それに…謝るのは私もだよ」


楯無「私も簪ちゃんからずっと逃げてた。本当は…この前仲直りした時に私が言わなくちゃいけなかったんだ」


簪「お姉ちゃん…」


楯無「こんな臆病でダメなお姉ちゃんを…許してくれる?」


簪「う……うん……許す…許すよ。許すよぅっ!」


楯無「じゃあ、私も簪ちゃんを許します」


簪「うっ……うああ。うわぁぁぁぁん….」ギュッ


楯無「よしよし、泣かない泣かない……」ツー


楯無(あれ……涙。私も泣いているのか)ツー


楯無(泣いたのは……いつぶりかなぁ。あはは……)グスッ

ーーーー
ーー

ーー自室ーー


簪「…………」


プルルッ


簪「はい、もしもし……あ、一夏」


一夏「簪、渡せたか」


簪「…うん、大丈夫だよ。ちゃんと渡せたよ」


一夏「そうか!………頑張ったな」


簪「うん、でも…私だけじゃなかった。怖がってたのは」


一夏「……そうか。あ、それで明日の事で相談があるんだが」


簪「明日?」


一夏「ああ、明日――」

ーー翌日ーー


楯無「学園に帰って、来てそうそう勝負の申し込みね…。まあ、これも生徒会長の務めかぁ…」


楯無「えっと……ここかな。今日は打ち合わせだけかな?」


楯無「よし….…待たせたね――――」ガラッ


「「「「「Happy Birthday!!会長!!
誕生日おめでとうございます!!
「」」」」」」


楯無「ほぇ?……え、え、え、ええええーー?!な、何?!」


簪「お誕生日おめでとう!お姉ちゃん!」


楯無「か、簪ちゃん…ど、どうしたの」


一夏「おめでとうございます、楯無さん!まぁ…俺のサプライズパーティーのお返しという事で」


楯無「い、一夏くん……でもこれ勝手に大丈夫な…」


千冬「まぁ、お前は学園の功労者だからな….たまには良いんじゃないか」


山田「そうですよぅ。更識さんは働き者ですから」


楯無「せ、先生….」


簪「ほらっ、お姉ちゃん。主役なんだから……こっち」


楯無「あ….….….うっ…うっうう……」グスッ


簪「お、お姉ちゃん」


一夏「楯無さん….」


楯無「も、もう。帰って来たら泣かされてばっかだよっ。馬鹿だもう……みんな馬鹿っ!」グスッ


楯無(ありがとう….みんな)


ーー完ーー

とりあえず、おしり。
会長の誕生日が実際いつなのかは分からんちん

名作だった
次はもっと楯無さんにフォーカスして欲しいな

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