貴虎「何? 再びISの世界へだと?」 (288)

鎧武の呉島貴虎とISのクロス
不定期更新

一夏は出ない
ついでに白式も出ない

IS側、呉島主任ともにキャラ崩壊注意
メロニキはオリISに乗るので注意

ISは原作読んでアニメ見てたけど、ぶっちゃけアニメの印象が強い
だから重要シーン以外はごっそりカットするかも知れん

貴虎バッタの一人称は、人前では私
身内には俺


ここまで昔のスレのコピペ
今回はISアニメ2期の話を中心に書いていく

更新はまた少し後に
前スレ
貴虎「何? 世界で唯一ISが使える男?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403151591/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1553598236

『プロローグ』

貴虎(森の脅威が去って早5年……沢芽市も順調に復興してきている)

貴虎(あれから、メガへクスの襲来、供界の企み、雅仁との決着……多くの困難があった)

貴虎(だが、その度に乗り越えてきた。世界を蝕む悪意には二度と屈しない、その誓いを胸に……)

貴虎(アイム……あいつらも、トルキア共和国での自由を掴んでいるだろうか)

貴虎(そういえば……あのときも、お前に助けられたな)

貴虎(葛葉紘汰……お前のおかげで、俺は変わることができた。絶望に屈しない心を、諦めない心を……お前から学んだ)

貴虎(お前のおかげで、俺は『変身』できたんだ)

『貴虎……』

貴虎(こうして、お前のことを思い出すと……今もお前の声が聞こえてくるようだ)

『貴虎……貴虎……!』

貴虎(それにしても、今日はやけにハッキリ聞こえるな。もしかして、私も少し疲れているのか……)

『貴虎っ!』

貴虎(……ん?)

紘汰(神)『貴虎ぁっ!!』

貴虎「うわぁっ!?」

紘汰(神)『何度も呼びかけたのに、無視するなよ……』

貴虎「葛葉紘汰……っ!? お前、どうしてここに……」

紘汰(神)『実は、貴虎に聞きたいことがあってな。急を要するから、こうして直接戻ってきたんだ』

貴虎「何かあったのか……っ! まさか、また何か侵略者が……」

紘汰(神)『違う。というより、そもそもオレのことでも、この地球に関することでもない。貴虎自身に関することなんだ』

貴虎「何? 私自身に……?」

紘汰(神)『こことは別の宇宙、そこに存在する別の地球の話だ』

貴虎「別の……?」

紘汰(神)『その星が異様に歪んでいて……関係ないとはいえ、気になるから調べてみた』

紘汰(神)『そうしたら……見つけたんだ。その星に隠された、いびつな過去が』

貴虎「どういうことだ? まるで要領を得ないぞ」

紘汰(神)『……その地球には存在しないはずの貴虎が、確かに「存在していた」としか思えない痕跡があった』

貴虎「っ……」

紘汰(神)『ある一定の期間だけ、貴虎の存在が捻じ込まれ、そして隠された……そうとしか思えない、時空の歪みを見つけたんだ』

貴虎「まさか、その地球とは……」

紘汰(神)『貴虎……「IS」って言葉に、聞き覚えはあるか?』

貴虎「っ!」

貴虎(IS……あぁ、ISだと……!)

貴虎(篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、織斑千冬……!)

貴虎(忘れるはずがない! あれは……)

貴虎「……あぁ、覚えている。はっきりと」

紘汰(神)『そうか。なら、話が早いな』

貴虎「どうした? まさか、あいつらに何かあったのか!?」

紘汰(神)『誰のことかわからないけど、まずいのは人じゃなくて世界の方なんだ』

貴虎「世界?」

紘汰(神)『貴虎、向こうで何があったのか……話してもらえるか?』

……
…………

貴虎「……というわけだ」

紘汰(神)『サガラ……間違いなくそのせいだな』

貴虎「何かわかったのか?」

紘汰(神)『多分、貴虎は長く居過ぎたんだ。あっちの世界に』

紘汰(神)『そのせいで、貴虎の存在は、あの世界に深く刻み込まれてしまった。それをサガラが、無理矢理いなかった状態に戻そうとして……』

貴虎「……歪みが生じた、のか」

紘汰(神)『地震と同じ、って例えるとわかりやすいか。歪んだプレートが力を溜め込んで、それが一定のラインを超えると……』

貴虎「爆発的なエネルギーを放出する……っ! まさか、あの世界も!?」

紘汰(神)『可能性は捨てきれない』

貴虎「どうすればいい!?」

紘汰(神)『手はある。もう一度、あの世界にいくんだ』

貴虎「だが……そんなことをすれば、さらに歪みが……」

紘汰(神)『そして、今度は修正しない』

貴虎「……何?」

紘汰(神)『貴虎の存在を否定せず、正しいものとして組み込むんだ。そうすれば、歪みにはならない』

貴虎「だが、それは……あの世界そのものを、変えるということではないのか?」

紘汰(神)『そうだ。けど、これ以外に手はない』

貴虎「……」

紘汰(神)『貴虎、決断は委ねるよ』

貴虎「……やろう」

紘汰(神)『……』

貴虎「もう二度と、俺は世界を見捨てない」

紘汰(神)『貴虎……』

貴虎「今度こそ、諦めず……絶望せず、世界を救う!」

紘汰(神)『……わかった。それじゃあ、準備ができたら教えてくれ』

貴虎「準備?」

紘汰(神)『ミッチに挨拶とか、いろいろ済ませておいた方がいいだろ?』

貴虎「……そうだな、礼を言う」

……
…………

貴虎「光実」

光実「どうしたの兄さん、改まって」

貴虎「また……しばらくの間、ここを離れることになった」

光実「また、トルキア共和国に?」

貴虎「いや、もっと遠いところだ……」

光実「……兄さん?」

貴虎「連絡も取れないし、いつ帰れるかもわからない。だが……」

光実「……うん、わかった」

貴虎「光実?」

光実「大丈夫だよ、兄さん。ここには僕だけじゃない、ザックや凰蓮さんたちもいる」

光実「だから……安心して。こっちのことは、僕たちに任せて」

貴虎「そうだな……ありがとう、光実」

光実「頑張ってね、兄さん」

貴虎「あぁ、行ってくる」

光実「いってらっしゃい」

……
…………

紘汰(神)『もういいのか?』

貴虎「あぁ、やってくれ」

紘汰(神)『よし……!』バッ

貴虎(あのときと同じだ……体が、光の粒子に溶けていく……)

紘汰(神)『貴虎。お前の存在を、あっちの世界に刻みつけるために……しばらくの間、向こうの世界にいてもらうことになる』

貴虎「問題ない」

紘汰(神)『歪みが広がらないよう、貴虎が消えた時間の近くに転移させる。こっちとは経過した時間が違うから、注意した方がいい』

貴虎「わかった」

紘汰(神)『あと、何かあっても、オレがサポートするから安心してくれ』

貴虎「心強いな」

紘汰(神)『ただ……ひとつ心配なのは、貴虎が言ってた娘たちの「記憶」だ』

紘汰(神)『貴虎が向こうの世界に現れたとき、彼女たちの記憶が戻るか……それとも、消えたままなのか。それはオレにもわからない』

貴虎「……いいさ。消えたままなら、また1から新たな関係を築けばいい」

紘汰(神)『……あぁ、貴虎ならできるよ』

貴虎「ありがとう……行ってくる」スー……

パッ

紘汰(神)『頼んだぞ、貴虎……』

……
…………

『第一話 再会とアクシデント』


パッ

貴虎(久しぶりの異世界か……随分と広大だな)

貴虎(辺り一面、何もない……まるで空の彼方にいるようだ)

貴虎(それに、やけに下から風を感じる……って!?)

貴虎「……なぜ俺は落ちているんだ!?」

貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」 ヒューン

紘汰(神)『悪い、貴虎! 少し座標がズレたみたいだ』

貴虎「葛葉!? なぜ声が……」

紘汰(神)『声だけそっちに飛ばしてるんだ。大丈夫か、貴虎?』

貴虎「大丈夫なわけがあるか!! このままでは……!」

紘汰(神)『思い出せ、貴虎! そっちの世界なら、お前は自由に飛べるんだろ?』

貴虎「何っ!? ……そうか」

貴虎(ポケットの中に……あった!) カチャ

貴虎(この錠前こそ、この世界での俺の翼……!)

貴虎「斬月!」 ピカーン

ドウッ
ビューン!

貴虎(飛んだ……そうだ、この感覚だ……)

貴虎(懐かしい……この白い機体、金の装飾、黒の和風模様……)

貴虎(そして……戦極ドライバー)

貴虎(サガラによって仕組まれた力だが……これは確かに、この世界における俺の象徴……)

紘汰(神)『貴虎。その機体だが、お前の記憶をもとに、いくつか装備を追加しておいた』

貴虎「装備を?」

紘汰(神)『後で確認しておいてくれ』

貴虎「わかった。感謝する」

紘汰(神)『いいって。それより、まずは座標の修正をしよう。どこへ向かうのがいいか……』

貴虎「なら、IS学園がいいだろう。場所はわかるか?」

紘汰(神)『あぁ、そのまま東にまっすぐだ。細かいところは、そいつのマップを参照してくれ』

紘汰(神)『そうだ、貴虎。それとーー』 ザザッ

貴虎「……どうした? よく聞こえない』

紘汰(神)『たかーー、なにかーーーー』 ザザッ

貴虎「葛葉? おい!」

紘汰(神)『ーーーーーー』 ザザッ

プツッ

貴虎「っ! 切れた……」

貴虎(一体、何がどうなって……)

ピピッ

貴虎「っ、どうした斬月?」

斬月『所属不明のISが急速接近中』

斬月『ロックされています』

???「……」 ゴォォォ……!

貴虎(何だ、あの漆黒のISは……)

???「……」 バシュ!

貴虎(遠距離攻撃か!) サッ

???「……」 バシュ! バシュ!

貴虎(っ! 避け切れない!!)

ドカーン!

貴虎「くっ……!」 ヒューン

貴虎(ダメだ……感覚を取り戻していない今、空中戦は俺に不利……)

貴虎(ならば……!) ピッ

貴虎「斬月、全速力でIS学園のグラウンドを目指せ!」 パッ

ピカーン
ガシッ

斬月『装備展開:無双セイバー』

貴虎(ガンモード……) カシャッ

キュィィン……
バキュン!

???「……」 サッ

貴虎「ついて来い!」 ドウッ

???「……」 ゴォォォ……!

そのころ、IS学園のグラウンド


箒「はっ! はっ!」 ブンッ ブンッ

鈴「あーあ! 夏休み明け初日から実技テストとか、やってらんないわ」

セシリア「全くですわ。このわたくしの実力が、少し休んだくらいで落ちるわけありませんのに」

シャル「ふたりとも、そんなこと言ってないでやろうよ」

ラウラ「その通りだ。それとも、このテストで底が知れてしまうのが怖いのか?」

鈴「はぁ~? 言ってくれるじゃない!」 ジャキッ

セシリア「イギリス代表候補生の実力、とくと味わいたいようですわね?」 ガチャッ

ラウラ「やってみろ。それとも、やはり口だけなのか?」 ヴォン!

シャル「ラウラも、あんまり煽らないで!」

箒「楽しそうだな、みんな……ん?」

シャル「どうしたの、箒?」

箒「なぁ……何だ、あれは?」

ゴォォォ……

鈴「なになに~……って、何アレ!?」

セシリア「もしかして、ISでしょうか……」

ラウラ「……こちらに落ちてきている」

鈴「えっ!? 嘘でしょ!?」

シャル「本当だ……確かに落ちてきてる!」

セシリア「まぁでも、このグラウンドはシールドに守られてますし、心配はいりませんわね」

箒「だといいが……」

箒(なんだ……この胸の高鳴りは……) ドクッドクッ

グラウンド上空


貴虎(そういえば、IS学園のグラウンドにはシールドが張られているのだったか……)

貴虎「面倒な……」 ジャキッ

貴虎(斬月に残ったエネルギーを全て込め……振り下ろす!)

貴虎「はぁっ!!」ブンッ

バリーン!

鈴「うわぁっ!? あいつ、シールド割った!!」

セシリア「そんな!?」

ヒュゥゥ……
ゴォォォ……!

ドンッ
ドカーン!!

シャル「っ! うわぁぁああああ!!」

ラウラ「何という衝撃だ……!」

箒「あれは……っ!」

箒(あぁ、そうだ……間違いない……)

箒(あの白い機体、無茶な行動……間違えるはずがない……)

箒(どうして……どうして、今まで忘れていたんだ……)

箒(あいつは……!)

貴虎「さて……まんまとおびき出されたな」

???「……」 ゴゴゴ……

貴虎「誰に送り込まれたか知らないが、覚悟してもらおう」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『メロン』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

鈴「何あれ……メロン?」

シャル「待って……僕、これ知ってる……!」

ガコン
ギュオォォン……

ラウラ「……いや、きっと……ここにいる、私たち全員が知っている」

セシリア「えぇ……どうして、今まで忘れていたのでしょう……」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……

鈴「あいつは……」

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

セシリア「あの方は……」

ヒューン
ズボッ

シャル「彼は……」

ガシャッ
キュイィィィン……

『メロンアームズ!』

ラウラ「アイツは……」

ガシャン!
テレレン

『天・下・御・免!!』

箒「……貴虎ぁっ!!」

貴虎「……いくぞ」 チャキッ

???「……」 バシュ! バシュ!

貴虎(メロンディフェンダー!) サッ

ガンッ!
ガンッ!

貴虎「悪いが、もうその攻撃は通用しない」

貴虎(無人機なら、手加減はいるまい) ドウッ

???「……」 ブンッ

貴虎「フッ……」ザンッ

ガキィィン……!

貴虎「甘い!」 ズバッ!

???「!」

貴虎「ふんっ!」キンッ!

???「!!」

貴虎「はっ!」ズバァッ!

???「……」

シュゥゥゥ……

貴虎「終わりだ」

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

『メロンスカッシュ!!』

ギュオギュオギュオギュオ……
キィィィン……!

貴虎「はぁっ!!」 ズバァッ!

???「……」

ギギギギギ……
ドガーン!!

貴虎「他愛もない……」 ピカーン

スタッ

貴虎(さてと……ん?)

箒「……」

貴虎「……あっ」

貴虎(いつの間に……まさか、はじめからここにいたのか……)

箒「……たか、とら……」

貴虎「っ! 篠ノ之、お前は……」

箒「貴虎……」

貴虎「お前は、憶えて……」

箒「貴虎ぁ!!」 ダッ

貴虎「っ!」

ギュウーッ

貴虎「ぐぁ!?」

貴虎(急に抱きつかれて、思わず変な声が……!)

貴虎(というか、なぜ急に抱きついて……!?)

箒「貴虎……貴虎っ!」

貴虎「篠ノ之、少し落ち着け……」

箒「今まで……今まで、どこへ行っていたんだ!?」

貴虎「っ、それは……」

箒「急に消えて、また急に現れて!! 私は……私は、どうして今まで……!」

貴虎「篠ノ之……」

箒「……貴虎、お前は……」

貴虎「……心配をかけたな」

箒「……」

貴虎「聞いてくれ。私は……」

鈴「貴虎ぁっ!!」 ギュウッ

貴虎「っ!? 凰!?」

セシリア「貴虎さーん!!」 ギュウッ

貴虎「オルコットもだと!?」

シャル「貴虎ぁ!!」ギュウッ

貴虎「デュノア……ということは」

ラウラ「貴虎っ!!」 ギュウッ

貴虎「やはりボーデヴィッヒも……お前たち、全員いたのか!?」

ギュウーッ

貴虎「というか、さすがに苦しいから離れろ!!」

それから、しばらく経って


千冬「さて……呉島貴虎」

貴虎「……何だ」

千冬「洗いざらい吐いてもらおう」

千冬「今までどこにいたのか。なぜ急に消えたのか。なぜ再び戻ってきたのか。そして……」

千冬「……なぜ、我々は今まで、お前のことを忘れていたのか」

貴虎「……あぁ、全て話そう」

……貴虎、全てを説明する……

貴虎「……というわけだ」

千冬「……」

貴虎「……織斑?」

千冬「……つまり、お前は元々別の世界の人間で……その超存在によって、我々の記憶は今まで書き換えられていたと?」

貴虎「あぁ」

千冬「……貴虎」 ガシッ

貴虎「ん?」

千冬「お前、疲れているのか」

貴虎「……は?」

千冬「確かに、今日はいろいろあった。お前が戻ってきたこともそうだが、正体不明のISの襲撃も……」

千冬「そんな日に問いただした、私が間違っていたのかもしれんな」

貴虎「……織斑、私は一言も嘘などついていない」

千冬「何も言うな。疲れのあまり妄想が口をついて出るのは、別におかしなことじゃない」

貴虎「……」

千冬「部屋に戻って休め。この続きは、また後日……精神が良好なときに話そう」

貴虎「……わかった」

貴虎(全く信じていないな……確かに、我ながら突飛な話だとは思うが)

貴虎(しかし、これ以外には説明のしようもない……一体、どうすればいいと言うのだ……)

貴虎(……いや、それ以上に気になることがある)

貴虎(あのときを境に、葛葉紘汰から連絡はない。向こうで何かあったのか、それとも……こちらから、何らかの原因で遮断されたのか)

貴虎(そして、時を同じくして現れた謎のIS……間違いなく、無関係であるはずがない)

貴虎(どうやら、それらの謎を解き明かすまで、帰ることはできなさそうだな……)

貴虎(まぁ、構わない。初めにこの世界に来たときも、俺は最後まで諦めず、向こうの世界に帰ることができた)

貴虎(今回も同じことだ。こちらの世界の歪みを直し、必ず向こうの世界へ戻ってみせる!)

今回はここまで
次回は『第二話 学園祭』

前作からだいぶ時期が経ってしまった
今回も最後まで付き合ってくれると嬉しい

それじゃ、続き投下していく
覚えていてくれる人がいて、主任の人気の根強さを感じる

小説や舞台を問わず、お兄ちゃんが使ったアームズは積極的に登場させるつもり
ハイパーバトルDVDもね

『第二話 学園祭』


ピピピピ
カチッ

貴虎(久しぶりだな、IS学園の寮で迎える朝は)

貴虎(織斑の話によれば、こちらの世界では、昨日が夏休み明け初日の授業日だった)

貴虎(なるほど、葛葉紘汰の言っていた通り……俺がこの世界を去ってから、2ヶ月ほど経った時期に送られたということか)

貴虎(だが……結局、当の葛葉紘汰との連絡はつかないままだ)

貴虎(やはり、この世界の方に何かあるのかもしれない。少し調べてみるか……)

ピンポーン

貴虎(……誰だ、こんな朝から)

ガチャ

箒「おはよう、貴虎」

貴虎「篠ノ之……?」

箒「起きていたか」

貴虎「あぁ。何か用か?」

箒「朝食でも一緒にどうかと思ってな」

貴虎「構わん」

箒「そう答えると思った」

貴虎「しかし、珍しいな。確か部屋が分かれてからは、あまり一緒に摂ることもなかったような気がするが」

箒「……」

貴虎「……篠ノ之?」

箒「……いこう、貴虎」

テクテク

貴虎「……篠ノ之」

箒「何だ?」

貴虎「……近くないか?」

箒「何がだ?」

貴虎「その……距離が」

箒「わざわざ離れて歩く意味もないだろう」

貴虎「いや、それはそうだが……」

箒「……」

貴虎(何かおかしい……どうしたんだ……?)

食堂


貴虎「……篠ノ之」

箒「何だ?」

貴虎「……なぜ隣で食べる?」

箒「一緒に朝食を摂ることの何がおかしい」

貴虎「テーブル席に、ふたりが横並びというのはおかしいだろう。普通は対面で……」

箒「私はそうは思わない」

貴虎「……一体どうした?」

箒「何がだ?」

貴虎「とぼけるな。今日のお前は、どこかおかしいぞ」

箒「……」

貴虎「……篠ノ之?」

箒「……あのとき、急にお前が消えてから……私は、お前のことを忘れてしまった」

箒「どうして、そんなことになったのか……わからないし、わかりたくないと思っている自分もいる」

貴虎「……」

箒「だが、お前を忘れた後も……私の中に、ずっと何かがこびりついていた」

箒「あのときの、お前からの信頼が……私の中の、お前への想いが……」

貴虎「っ……」

箒「私はそれを、二度と失いたくない……! もう二度と、貴虎のことを忘れたくない!!」

箒「だから……だから、私は……!」

貴虎「……そうか」

箒「……貴虎、私は……」

貴虎「……すまなかった、篠ノ之。知らないうちに、そこまでお前を追い詰めていたとは」

箒「……」

貴虎「そして……感謝する。私のことを、そこまで想ってくれて」

箒「っ!」

貴虎「安心しろ。これから先、お前が再び私を忘れることはない」

箒「……どうして言い切れる?」

貴虎「それは……」

貴虎(なんと答えればいい……馬鹿正直に『俺の存在をこの世界から消さないからだ』などと説明したところで、理解できるはずもない)

貴虎「……根拠はない。だが……だからこそ、私の言葉を信じてほしい」

箒「貴虎……」

貴虎「もう二度と、お前たちが私を忘れることはない。そうならないよう、私は全力を尽くす」

箒「……まったく、お前というやつは……」

貴虎「これでは、納得できないか?」

箒「できるわけがあるか。だが……信じよう。あのときと、同じように」

貴虎「感謝する、篠ノ之。なら、対面に座り直して……」

箒「それとこれとは話が別だ」

貴虎「……」

それから、少し経って


貴虎(昨日から今日にかけて、IS学園では実技テストが行われている。俺がグラウンドに飛来したとき、篠ノ之たちがいたのも、その関係だろう)

貴虎(俺も一応、この学園の生徒だ。となれば、当然このようになる)

鈴「いくわよ、貴虎!」 ピカーン

貴虎(生徒同士の対戦による実技テスト。俺は1組のクラス代表として、2組代表の凰と行うことになった)

鈴「アンタには、聞きたいことが山ほどあるんだから。覚悟しときなさい!」 ジャキッ

貴虎「……変身」 ピカーン

貴虎(そういえば、葛葉紘汰が『装備を追加しておいた』と言っていたな。確認しておくか) ピッ ピッ

貴虎(……ほう、これは。随分と豊富に用意してくれたものだ)

貴虎(だが……ひとつだけ、ロックされている装備がある。まさか、銀の福音[シルバリオ・ゴスペル]のときの『アレ』か……?)

鈴「なーに黙ってんのよ。もしかして、久しぶりの対戦に怖気づいた?」

貴虎「凰」

鈴「……何よ、改まって」

貴虎「お前には悪いが、新しい装備の試用相手になってもらう」

鈴「はぁ?」

貴虎「加減を間違えるかもしれん。注意しておけ」

鈴「加減? ……アンタ、手加減するつもりだったの?」

貴虎「そうでなければ、お前はテストになるまい」

鈴「っ……アッタマきた。その言葉、後悔させてあげる!!」

『それでは両者、試合を開始してください』

鈴「ハァッ!」 ドウッ

貴虎(やはりそうだ。あいつは、俺が近接が得意なことを理解している)

貴虎(だからこそ、開幕直後に空中へ飛び上がり、俺と距離を取る。そうして遠距離から、得意の龍咆で攻撃を仕掛けてくる)

貴虎(そうくると思ったいた。だからこそ……) ピッ

貴虎(この隙に、俺は準備ができる) カチャ

ガチャッ
キュイン

『ブドウ』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

鈴「来たわね……って、アレ? メロンじゃない!?」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……

貴虎(どうやら、あいつも気がついたようだな)

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

鈴「もしかして……それが『新しい装備』ってこと?」

ガシャッ
キュイィィィン……

『ブドウアームズ!』

ガシャン!
カンカンカァン!

『龍ッ砲! ハッハッハッ!!』

貴虎(光実の着けている、ブドウの鎧……以前にも、一度だけ試したことがあった)

貴虎(もっとも、そのときは採用を見送ったが……銃より刀の方が扱いやすいからな)

貴虎(だが、新たな問題が発生している以上、今はあらゆる状況に対応できるよう準備しておかなければならない)

貴虎(そして、俺が埋めるべき穴は……!) ドウッ

鈴「っ、飛んだ!」

貴虎(飛行だ!) カチャ

斬月『装備展開:ブドウ龍砲』

貴虎「……」 バキュン!

鈴「しかも銃撃!?」 サッ

貴虎「ハッ!」 バキュバキュバキュン!

鈴「っ、ハァッ!」 バシュン! バシュン!

ドカーン!

鈴「面白いじゃない……アタシに空中で、それも銃撃戦を仕掛けてくるなんて」

鈴「この甲龍(シェンロン)の装備と特徴、忘れたわけじゃないんでしょ?」

貴虎「……」

鈴「いいわ。だったら、お望みどおり……」

鈴「アタシの龍咆、嫌ってほど味あわせてあげる!!」

ところ変わって


真耶「2学期初の実戦……気合い入ってますね、ふたりとも」

千冬「……あぁ」

真耶「この試合も、いつも通り、呉島くんが優勢ですね」

千冬「いや、どうだろうな」

真耶「え?」

千冬「これまであいつが圧倒的な強さを発揮してきたのは、地上での接近戦。だが今、あいつは空中で銃撃戦を仕掛けている」

真耶「えっと……つまり、実力が発揮できていないということですか?」

千冬「あいつ自身も、その『実力』とやらを知ろうとしているのだろう」

アリーナ


鈴「ハッ!」 バシュン! バシュン!

貴虎「……」 サッ サッ

貴虎「……っ!」 バキュバキュン!

鈴「っ、ハァッ!」 バシュン!

ドガーン!

貴虎(甘い弾は避け、避けきれない弾は龍咆で相殺する。そして、こちらが隙を見せれば、すかさず龍咆の追撃……)

貴虎(やはり俺が勝つには、懐に飛び込む必要がある。そのためには……) ドウッ

貴虎(銃撃を加えつつ、一気に飛んで距離を詰める!) バキュバキュバキュン!

鈴「っ……ふーん、そういうこと……」 バシュン! バシュン!

鈴「けど……甘いわ!」 ピカーン

ガシッ

貴虎(来たか、凰の近接武器……)

鈴「いくわよ!」 ドウッ

貴虎(あの2本の青龍刀を、無双セイバーのみで凌ぐのは難しい。だが、他のアームズに変更する暇もない)

貴虎(ならば……) ピカーン

ガシッ

斬月『装備展開:無双セイバー』

貴虎(凰の『実力』にかけてみるか)

鈴「そんな刀一本じゃ、この双天牙月は防げないわよ!」

貴虎「誰が防ぐと言った」

鈴「えっ?」

貴虎「この距離なら、避けれまい!」 ガチャ

貴虎(ウェポンの撃鉄を引き、エネルギーをチャージ……!)

貴虎(そして……至近距離で、放つ!!)

キィィィ……!

鈴(刀を装備したのは、フェイントってこと!?)

貴虎「ハァッ!!」 バキュゥウウ!!

鈴「っ! 舐めんなぁ!!」 バシュン!

ドガーン!!

鈴「ハァ、ハァ……どうよ、当たらなかったわね!」

「あぁ、期待通りだ」

鈴(っ! 後ろ!?) グルッ

貴虎「……」 チャキッ

『イチ……ジュウ……ヒャク!』

鈴「なんで、いつの間に……!?」

『ブドウ・チャージ!!』

貴虎「ハァッ!!」 ズバァッ!

鈴「きゃぁぁああああ!!」ドーン!

ブーッ

『試合終了。勝者、呉島貴虎』

貴虎「大丈夫か、凰」 ピカーン

鈴「ねぇ……最後のアレ、何?」

貴虎「お前の実力を利用させてもらった。あの一撃は確かに本気だったが、お前なら防いで見せるだろうと信じていた」

鈴「……最初っから、アタシに龍咆で相殺させて、その爆煙と爆風を利用するつもりだったのね。そうやって目隠しして、その隙にアタシの背後へ回り込んだ」

貴虎「その通りだ。銃撃戦では、お前に勝つのは難しい……そう判断せざるを得ないほど、お前は強かった」

鈴「……勝者のアンタに言われても、何か複雑だわ」

貴虎「悔しいのなら、また挑んでこい。いつでも相手になってやる」 スタスタ

それから、アリーナ控え室


貴虎(今回の実戦で分かったが、やはり俺にも隙は多い)

貴虎(遠距離はまだしも、飛行は早急に物にせねば……)

バッ

貴虎(っ、目隠し?)

「だーれだ?」

貴虎(……聞き覚えのない声だ。私と面識のない人間か?)

「はい、時間切れ」 パッ

楯無「ふふふっ」

貴虎「……すまないが、どこかで会ったことがあったか?」

楯無「……」

貴虎「……?」

楯無「それじゃあね」 スタスタ

貴虎(いや、本当に誰だ?)

貴虎(制服ということは、少なくとも、この学園の生徒であることは確かなはず……後で調べておくか)

それから、しばらく経って


貴虎(全校集会か……そういえば、この学園では、あまりしていた覚えがないな)

貴虎(さっきの女も、この中にいるのか……?) キョロキョロ

「それでは、生徒会長から説明をさせていただきます」

楯無「……」 コツコツ

貴虎(あの女、さっきの……まさか)

楯無「さてさて、今年はいろいろと立て込んでいて、ちゃんとした挨拶がまだだったね」

楯無「私の名前は更識楯無、君たち生徒の長よ」

貴虎(っ! あの女、この学園の生徒会長だったのか)

楯無「以後よろしく」 チラッ

貴虎「……?」

楯無「……ふふっ」 パチッ

貴虎(なぜ今ウィンクを……? あの女、よくわからん……)

楯無「では、今月の学園祭だけど……クラスの出し物を、みんなで頑張って決めるように」 バッ

扇子『締切間近』

貴虎(……まさか、わざわざ用意したのか? あの扇子……)

貴虎(一体何なんだ、あの女は……)

それから、教室


貴虎「……それで、このクラスの出し物の案だが……」

『呉島貴虎のホストクラブ』
『呉島貴虎とツイスター』
『呉島貴虎とポッキー遊び』
『呉島貴虎と王様ゲーム』

貴虎「全て却下だ!」

エーッ!

貴虎「内容も内容だが……まず、私ひとりに負担を強いるような出し物では、学園祭の意味がない」

「私はいいと思うけどなー。断言する!」

貴虎「そもそも、良し悪しを判断するレベルですらない」

「女子を悦ばせる義務を全うせよ!」

貴虎「そんな義務はない!」

「呉島貴虎は共有財産である!」

「「そうだそうだー!!」」

貴虎(何を言っているんだ、こいつらは……いかん、久しぶりに腹痛が……)

貴虎「……山田先生、この場を収めるのを手伝ってくれませんか」

真耶「えっ……? えーっと……」

真耶「わ、私は……ポッキーなんか良いと思いますよ……?」

貴虎(こいつに訊いた俺が馬鹿だった……)

貴虎「とにかく、何か別の意見を出せ。本気で学園祭をしたいのならな」

ラウラ「……メイド喫茶はどうだ?」

オォ……
ザワッ

貴虎「……何?」

ラウラ「客受けは良いだろう。それに、飲食店は経費の回収も行える」

シャル「……うん、いいんじゃないかな。貴虎には、執事か厨房を担当してもらえばOKだよね?」

「呉島くん……執事……イイ!」

「メイド服どうする?」

「あたし縫えるよ!」

「では、ご奉仕喫茶に決まりですね!」

「「賛成ー!!」」

貴虎(……まぁ、さっきまでのイカれた案に比べればマシか)

貴虎(……本当に、これでいいのか?)

それから、しばらく経って


貴虎(16時か……そういえば、ボーデヴィッヒが昼休みに『放課後、第4アリーナで待つ』と言っていたな)

貴虎(あいつの執着も懐かしい……それに、俺としても、ISの技術は上げておきたい。久しぶりに一戦交えるか……)

トントン

貴虎「ん?」 クルッ

楯無「やぁ!」

貴虎「……生徒会長か」

楯無「水臭いなぁ、楯無でいいよ」

貴虎「……私に何か用か?」

楯無「当面、君のISコーチをしてあげる」

貴虎「……コーチだと?」

楯無「そう。今日の君の実技テスト、見せてもらった……君、一見強そうだけど、意外と隙が多いよね」

貴虎「……よく見抜いているな」

楯無「そして君は、それを積極的に埋めようとしてる。頑張る男のコって素敵よ」

貴虎「……」

楯無「だから、それがちょっとでもマシになるように、私が鍛えてあげよう……という、お話」

貴虎「……なるほど」

楯無「どう?」

貴虎「確かに、悪い話ではないな」

楯無「でしょ?」

貴虎「だが、遠慮しておく」

楯無「……どうして?」

貴虎「わからないからだ。果たして、本当に私を鍛えられるだけの力量があるのか……」

楯無「IS学園において、生徒会長の肩書きは……あるひとつの事実を証明してるんだよね」

貴虎「……何?」

楯無「生徒会長……即ち、全ての生徒の長たる存在は……」 ビシッ

楯無「『最強』であれ……とね」

貴虎「……つまり、お前がこの学園において最強だと?」

楯無「試してみる?」

貴虎「……いや、やめておく」

楯無「そう? てっきり、勝負でも仕掛けてくると思ったけど」

貴虎「私としても、自分の欠点を克服しなければと考えていたところだ。そこで、最強を自称するほどの実力者がコーチをしてくれるというのなら、断る理由はない」

楯無「なーんか言い方に棘があるけど……まぁ、いいか。それじゃあ、この話に乗ってくれるのね?」

貴虎「あぁ、よろしく頼もう」

貴虎(この女、実力も目的も計り知れない。まずは近づいて、何者なのかを把握すべきか……)

ところ変わって


ラウラ「あいつはどこに行ったんだ……宿敵[とも]失格だぞ」 テクテク

ラウラ「……もしや、避けられているのではないだろうな」 ピタッ

ラウラ「……まさかな」

アハハッ

ラウラ「ん?」 チラッ

「あっ、リコ。後ろにすっごい寝癖ついてるよ」

「えーっ!? どこどこ!? あーっ! 今日寝坊して、髪の毛セットして来れなかったんだよぉ……」

「ダメだよ、身だしなみはキチッとしないと。呉島くんに嫌われちゃうぞー?」

ラウラ「っ、身だしなみ……」

ラウラ(まさか、私も寝癖が……) サワサワ

ピョコッ

ラウラ(っー!) サッ サッ

ラウラ「……よし」

「ほう、お前もそんなことを気にするようになったか」

ラウラ「ひっ!?」 クルッ

千冬「フッ……年頃だな」 ニヤッ

ラウラ「ちっ、違うのです教官! 決して、そういう浮ついた気持ち……うっ!」 パコンッ

千冬「織斑先生と呼べ」

ラウラ「はい……」

千冬「そういえば、呉島だったら、部活棟の保健室の前で見たぞ」

ラウラ「……保健室?」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく
カチドキ斬月のフィギュアーツ、みんなも予約しよう

そのころ、 保健室


楯無「それじゃあ、ここに横になって」 ポンポン

貴虎「……何?」

楯無「ほらほら。お姉さんの膝枕、堪能させてあげるから」

貴虎「……それに何の意味がある?」

楯無「君、私が『最強』だってこと、疑ってるみたいだし……私の実力、知りたいでしょ?」

貴虎「それが、どう実力を知ることに繋がると言うんだ……」

楯無「いいからほら、やってみればわかるって」 グイッ

貴虎「っ!? よせ、やめろ!」

貴虎(というか、見た目以上に力が強いぞ、この女!)

楯無「いいからいいから~」 ギュウーッ

貴虎「よくない!」 ジタバタ

ガーッ

ラウラ「貴虎、ここにいたの……かっ!?」

貴虎「ボーデヴィッヒ……!?」

ラウラ「……貴様、私の宿敵[とも]に何をしている?」

楯無「何って……見ての通り、膝枕」

ラウラ「……目標を撃破する」 ヴォン!

ラウラ「ハァッ!」 ダッ!

楯無「……ふっ」 サッ

ガキン!

ラウラ「何っ!?」

貴虎(防いだ……ISの攻撃を、扇子一本で)

扇子『最強』

貴虎(しかも、文字が変わっている……一体、何本持っているんだ……)

ラウラ「……くっ」 ピカーン

楯無「うん、素直でよろしい。じゃあ貴虎くん、そろそろ始めようか」

貴虎(この女、実力は本物か……掴み所がないのが、逆に恐ろしいな)

貴虎(だが、確かにこれなら……俺の弱点を補強できるかもしれん)

それから、グラウンド


シャル「あれ、貴虎?」

セシリア「今日は第4アリーナで、ラウラさんと決闘と聞いていましたけど……」

楯無「そのことだけど……私がこれから、貴虎くんの専属コーチをするから、よろしくね」

シャル「えっ……生徒会長が、コーチ?」

セシリア「貴虎さん、どういうことですの!?」

貴虎「お前たちと同じだ。自分の欠点を埋めるため、より技術の高い人間に教えを請う」

楯無「まぁまぁ、これも貴虎くんのためと思って」

楯無「そう、みんなにも協力してほしいことがあるの」

シャル「協力……ですか?」

楯無「時間もないし、早速始めましょうか」

楯無「シャルロットちゃん、セシリアちゃん。シューターフローで円状制御飛翔[サークル・ロンド]、やって見せてよ」

セシリア「射撃型のバトルスタンスは、貴虎さんの役に立ちますの?」

貴虎「むしろ、それこそが私の隙だ。そこを補うことで、より強くなれる」

シャル「……これ以上、貴虎が強くなる必要はあるの?」

貴虎「誰にでも、成長は必要だ」

セシリア「……わかりましたわ。貴虎さんが、そこまでおっしゃるなら……」 ピカーン

シャル「……うん、やろう」 ピカーン

シャル「じゃあ、始めます」 フワッ

セシリア「貴虎さん。どうぞ、しっかりとご覧になってくださいな」 フワッ

グルッグルッ……

シャル「いくよ、セシリア!」 チャキッ

セシリア「構わなくてよ!」 ガチャッ

シャル「えいっ!」 ダン! ダン!

セシリア「はっ!」 サッ

セシリア「はぁっ!」 バシュン!

ダン! ダン!
バシュン! バシュン!

貴虎「円状制御飛翔[サークル・ロンド]……複数のISが輪を描いて飛び回り、射撃と機体の制御を学ぶ訓練か」

楯無「射撃と高度なマニュアル機体制御を同時に行っているんだよ。しかも、回避と照準の両方に意識を割きながら」

楯無「だからね……」 サッ

貴虎(っ、なぜ近くに寄って……)

楯無「わ・か・る?」 フゥー

貴虎「っ!? 耳に息を吹きかけるな!」

楯無「弱いの?」

貴虎「そういう問題ではない!」

ギャーギャー

シャル「はぁっ! ……って、貴虎!?」

セシリア「何してますの!?」

シャル「もう! ……ととっ」 グラッ

セシリア「なんてことを……あっ」 グラッ

セシリア「ああっ、きゃあ!」 グイッ

シャル「ちょっと!? うわぁっ!」 グイッ

ヒューン……

セシリア「きゃぁぁああああ!!」 ドーン!

シャル「うわぁぁああああ!!」 ドーン!

貴虎「何をやっているんだ、あいつらは……」

楯無「次は貴虎くんの番よ」

セシリア「まったくもう……参りますわよ」 ピカーン

貴虎「……変身」 ピカーン

セシリア「貴虎さん、その……アレは着けませんの? 何というか、あのメロンのような……」

貴虎「今回は不要だ。始めよう」

セシリア「それでは……」 フワッ

貴虎「……」 フワッ

グルッグルッ……

楯無「よし、じゃあ射撃開始!」

貴虎(無双セイバー、ガンモード……) ピカーン

ガシッ
カチッ

貴虎「……」 バキュン!

セシリア「はっ!」 サッ

バシュン!

貴虎「っ……」 サッ

貴虎(なるほど、これは……はたで見るほど、容易ではないな)

バキュン!
バシュン!

シャル「これって、貴虎が射撃の隙を埋めたいって言ったからですか?」

楯無「うん、そうだね。でも……それだけじゃあないんだな~」

楯無「射撃能力で重要なのは、面制圧力だよね? けれど、貴虎くんの装備……あの刀は、弾数がたった4発しかない上に、威力もそれほど高くない」

楯無「つまり、必要なのは……一撃で突破する力。あるいは、一点に集中して撃ち込む力」

楯無「貴虎くんも筋はいいけど、まだ扱い切れてない点が目立つ。だから、あえて……」

シャル「……近距離で叩き込む」

楯無「鋭いね」 バッ

扇子『見事』

シャル「……貴虎も、もどかしそうですね。実戦なら、あの間合いは近接で取りに行ってるでしょうから」

楯無「そのための訓練だよ」

それから、しばらく経って
貴虎の自室前


テクテク

貴虎(少し疲れたな……だが、良い訓練だった。あの女、コーチとしてはレベルが高い)

貴虎(俺の弱点を正確に見抜き、的確なメニューを与える……なるほど、確かに『最強』を自称するだけの実力はありそうだ)

貴虎(これなら、短期間でも成長が期待できる。明日に疲れを残さないよう、今日は早めに休むか……) ガチャ

楯無「おかえりなさ~い!」

貴虎「……うわぁぁああああ!?」

貴虎(どうやって俺の部屋に……そもそも、なんだその格好は!?)

貴虎(裸にエプロン1枚……!! いや……見えないだけで、下着は着けているはず!)

楯無「ご飯にします? お風呂にします? それとも……」

楯無「わ・た・し?」

貴虎「……部屋を間違えたようだ」 バタン

『1025』

貴虎(……あぁ、わかっていたとも。本当は、間違えてなどいないと……)

ガチャ

楯無「おかえり! 私にします? それとも……」

楯無「わ・た・し?」

貴虎(せめて選択肢をくれ)

貴虎「……ここで何をしている? どうやって入った? まず服を着ろ!」

楯無「えっ……?」 ウルウル

貴虎「……?」

楯無「特別コーチだから……寝食を共にして……波長を合わせていくの……」 シュルッ

貴虎「必要ない。そして脱ごうとするな!」

楯無「……ふふっ、じゃーん! 水着でしたー!」

貴虎「……」

楯無「貴虎くんは反応かわいいねー! もしかして、あんまりこういうの慣れてない?」

貴虎「今すぐ出て行け!」

ところ変わって


箒「……」 テクテク

『感謝する。私のことを、そこまで想ってくれて』

箒「……ふふっ」

箒「っ、いかんいかん」

箒(貴虎はああ言っていたが、いつまた忘れてしまうかもわからない……目を離していると心配だ)

箒(聞くところによると、あいつは今日から特訓を始めたらしい。疲れているだろうし、部屋から出ないかもしれないな)

箒(そうだ。だからこうして、私が夕食の弁当を持っていく。何もおかしいことはない)

箒「……ふふっ」

箒(貴虎……喜んでくれるだろうか)

『1025』

コンコン

貴虎『っ、誰だ?』

箒「わ、私だ。差し入れを持ってきたのだが、入ってもいいか?」

貴虎『篠ノ之……!? 少し待ってくれ!』

箒(……どうかしたのか?)

楯無『もぉー、何するの貴虎くーん?』

箒(っ、女の声?)

楯無『あっ、わかった! 浮気がバレるから必死なんだー!』

貴虎『少し黙っていろ!』

箒「っ……!」 イラッ

バンッ


貴虎「あっ」

楯無「いやんっ」

箒「……何をしているんだ、貴虎?」

貴虎「……見ての通りだ」

箒「私には、そいつの服を無理やり脱がしているようにしか見えないが?」

貴虎「違う、逆だ! 服を着せようとしているんだ」

箒「何がどうなれば、女子の服をお前が着せることになると言うのだ!」

貴虎(もっともすぎて反論できん)

箒「まさか、お前がそんなやつだったとは……女子を連れ込み、あろうことか、ハレンチ極まりない行為をしおって!」 ピカーン

貴虎「誤解だ! 俺はそんなことはしていない!!」

箒「恥を知れぇ!!」 ブンッ

貴虎(っ、無双セイバー!) ピカーン

ガキンッ!

楯無「ひゅー、貴虎くんやるぅ!」

箒「くっ……まだまだ!」 ブンッ

楯無「それと、ごめんね。今、貴虎くんに危害を加えられると……お姉さん、ちょっとだけ困っちゃうなー」 ピカーン

ブンッ
ガキィィ……!

箒「なっ……!?」

箒(刀が……天井に、弾かれた!)

楯無「勝負あり、ね」

貴虎(また面倒事が増えた……この女に近づいたのは失敗だったか?)

翌日、放課後


貴虎「……」 グルッグルッ

貴虎(昨日、絶対に解かなければならない誤解は解いた。だが……)

箒『貴虎……お前、そいつには随分と甘いな?』

貴虎(あいつとの関係にヒビが入ったのは、俺の思い違いではないだろうな……)

楯無「重心の座標、速度も安定……オッケー、基礎は完璧だね。それじゃあ、そこで瞬時加速[イグニッション・ブースト]してみようか」

楯無「シューターフローの円軌道から、直線軌道にシフト。相手の弾幕を一気に突破して、零距離で銃撃!」

貴虎「……」 ドウッ

カチャッ
バキュン!

貴虎「……」 スタッ

楯無「オッケー、中々いいね。貴虎くん、飲み込みが早くて教えやすい」

貴虎(……今は訓練に集中しよう。篠ノ之ことは、また後で考えればいい……)

それから、しばらく経って


貴虎(もうこんな時間か……今日は部屋へ戻る前に、食堂で食べていくとしよう)

鈴「……あっ、貴虎! こっちこっち!」

貴虎「凰? ……あぁ」

貴虎(全員集まっているな……あいつも) チラッ

箒「……」

貴虎「……」

ラウラ「お前も、これから夕食か?」

貴虎「あぁ、まぁな」

シャル「……貴虎、なんか疲れてる?」

貴虎「……そう見えるか?」

鈴「そんなに特訓って厳しいの?」

貴虎「……いや、体はそこまで疲れていない」

貴虎(むしろ、精神的には振り回されてばかりだ……どうも俺は、あの女のようなタイプは苦手かもしれん)

シャル「その……頑張ってる男子って、僕はカッコいいと思うな」 チラッ

貴虎「……そうか」

セシリア「コ、コホン……貴虎さん? もし、あの部屋にいるのが辛いなら……仕方なく、人助けということで、わたくしの部屋にいらしても構いませんわよ?」

鈴「はぁ!? ちょっとセシリア、待ちなさいよ!」

鈴「貴虎、アンタあたしの部屋に来なさいよ。トランプあるわよ」

ラウラ「待て、トランプなら私の部屋にもあるぞ」

セシリア「わたくしの部屋にはタロットカードだってありますわ!」

貴虎「断る。部屋を移動する気は毛頭ない」

貴虎(そもそも、お前たちの部屋の売りはカードゲームしかないのか)

箒「……」 チラッ

貴虎「……ん?」

箒「……花札はどうだ、貴虎?」

貴虎「っ……あぁ、悪くない……」

箒「っ……そうか……」

シャル(……あれ? なんで箒だけ反応が違うんだろう?)

その夜、貴虎の部屋


貴虎(結局、篠ノ之とこいこいに興じてしまった……) シャコシャコ

貴虎(あまり会話はなかったが、少しは打ち解けたか……) ブクブク

ペッ

貴虎「……フッ」

楯無『貴虎くーん』

貴虎(っ、この声は……なぜ俺のベッドルームから……) ガチャ

楯無「ふふっ……って、あれ~? どうして目隠ししてるの、貴虎くん?」

貴虎「どうせ、またおかしな格好をしているのだろう? 何度も同じ手は食わん」

楯無「え? ちゃんと着てるわよ?」

貴虎「……何?」 パッ

貴虎「着てないじゃないか!」 バッ

楯無「着てるじゃない、シャツ」

貴虎「裸にシャツしか羽織らないやつがいるか! しかも、それは私のシャツだ!!」

楯無「ほら、観念して目を開けなさい!」

貴虎「断る!」

楯無「これ以上抵抗するなら、無理にでも開けるわよ?」 グイッ

貴虎「やめろ!」 ググッ

ギャーギャー

そんなこんなで、数日後


貴虎(学園祭か……懐かしいな。昔は実行委員長など務めたものだ)

貴虎(もっとも、執事服を着るのは初めてだが……)

シャル「いらっしゃいませ」

貴虎「こちらへどうぞ、お嬢様」

「うっそ、あの呉島くんの接客が受けられるの?」

「しかも執事の燕尾服!」

「写真も撮ってくれるんだって。ツーショットよ、ツーショット!」

「さすが呉島くんだ!」

貴虎(しかし……なぜ、そんなに俺と写真を撮りたがる? それも、みんな……)

鈴「ちょっと、そこの執事。テーブルに案内しなさいよ」

貴虎「凰か……珍しい格好をしているな」

鈴「2組は中華喫茶やってるのよ」

貴虎「それでチャイナドレスか。なかなか似合っている」

鈴「っ、そ……それは、まぁ……嗜みっていうか……」

鈴「とにかく、案内しなさいよ!」

貴虎「あぁ。それでは、お嬢様……こちらへどうぞ」

鈴「お、お嬢様……」

貴虎「ご注文は、何にいたしましょう?」

鈴「うーん、そうね……んん?」

鈴「この『執事にご褒美セット』って何よ?」

貴虎「……内容がわからないものは、頼まない方がいい」

鈴「いや、だから聞いたんでしょうが」

貴虎「私のオススメは、ケーキセットだ」

鈴「ん……? コラ、なんか誤魔化そうとしてるでしょ?」

貴虎「……まさか、あり得ん」

鈴「……じゃあ、この『執事にご褒美セット』ひとつね」

貴虎「……かしこまりました」

貴虎「……お待たせいたしました、お嬢様」 コトッ

鈴「う、うん……」

貴虎「……」

鈴「……って、なんで一緒に座ってるのよ?」

貴虎「……」

鈴「いや……まぁ、別にいいけど……」

貴虎「……」

鈴「で、これはどういうセットなの?」

貴虎「……食べさせ合う」

鈴「……はい?」

貴虎「……執事と食べさせ合う、セットだ」

鈴「な、何よそのセット!? 客が、執事にお菓子を食べさせるって……」

貴虎「あぁ……企画したやつを見つけ出し、必ず説教してやる」

鈴「い、いや……でも、まぁ折角だし……ついでだし……」 モジモジ

鈴「ご褒美、あげようかしらね」 ヒョイ

鈴「はい、あーんしなさいよ」

貴虎「……」 パクッ

貴虎「はぁ……」 ポリポリ

鈴「それで……食べさせてあげたんだから、あたしも……」

貴虎「……口を開けろ」 ヒョイ

鈴「あーん」 パクッ

鈴「うん……なんか、いいかも……」 ポリポリ

貴虎(……物好きな客というのは、案外多いものだな)

今日はここまで
続きはまた明日

けど、明日は舞台斬月のライブビューイングに行くから、あんまり投下できないかも

それじゃ、投下していく

それから少し経って


貴虎(客足が絶えないのはいいが、休めないのは考え物だな)

トントン

貴虎「ん?」

礼子「ちょっといいですか?」

つ『名刺』

貴虎(巻紙礼子……? スーツということは、外部の人間か)

貴虎「私に何か用か?」

礼子「はい。呉島さんの斬月に、ぜひ我が社の装備を使っていただけないかなぁと思いまして」

貴虎「必要ない。斬月は完成している」

礼子「まぁ、そう言わずに」 ガシッ

礼子「こちらの追加装甲や、補助スラスターなどいかがでしょう? さらに今なら、もうひとつ、脚部ブレードも付いてきます」

貴虎「いらん。私も、まだ仕事が残っている。失礼する」

礼子「……ちっ」

貴虎(さて、次の客は……)

楯無「ジャジャーン!」 バッ

扇子『神出鬼没』

貴虎(……いつか来るだろうとは思っていたが、まさかメイド服とはな……)

楯無「うふふふ……ときに貴虎くん、生徒会の出し物『観客参加型演劇』に協力しなさい!」

貴虎「断る。そんな暇はない」

楯無「とにかく、お姉さんと来る!」 ガシッ

貴虎「断ると言っただろう!」

楯無「はい、決定~!」

貴虎「っ、相変わらずの馬鹿力め!」 ズルズル

それから、更衣室


楯無「じゃあ、これに着替えたらステージに来てね。それと、大事なのは……」 ゴソゴソ

楯無「はい、王冠」 ゴトッ

貴虎「まず内容を説明してくれ」

楯無「大丈夫、大丈夫! 基本アドリブのお芝居だし、必要な指示はこっちからも出すから」

貴虎(何が大丈夫なんだ……)

楯無「それじゃあ、よろしくね。貴虎くん」

貴虎「……」

そして、ステージ


「さぁ、幕開けよ!」

ガー

「むかーしむかし……あるところに、シンデレラという少女がいました」

パッ

貴虎(その説明で、なぜ俺にスポットライトが当たる? 本当に意味がわからん、あの女は……)

「否……それはもはや名前ではない」

貴虎「……何?」

「幾多の武闘会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰塵を纏うことさえ厭わない、地上最強の兵士たち……」

貴虎「……」

「彼女らを呼ぶに相応しい称号……それが灰被姫[シンデレラ]!」

貴虎(……もう、ついていけん)

「王子の冠に隠された軍事機密を狙い、少女たちが舞い踊る!!」

キャー!
バンッ!

貴虎(っ、ステージに灯りが……)

「今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる……」

鈴「ふっ、もらったぁ!」 ブンッ

貴虎(後ろか) サッ

ダンッ

鈴「ちっ、外した……その王冠、よこしなさいよ!」

貴虎(よくわからんが……とにかく、やってくる相手を倒せばいい、ということか)

貴虎(それならば、話が早い)

貴虎「いいだろう、かかってこい」 グッ

鈴「はぁっ!」 ブンッ

貴虎「……」 サッ

ガシッ

鈴「あっ」

貴虎「ハッ!」 グイッ

鈴「きゃっ!」 ドテン

貴虎(まずはひとり……ん?)

ピッ

貴虎(っ、レーザーポインター!?) サッ

パンッ!

貴虎(この射撃精度……オルコットに違いない)

貴虎(上手[かみて]の塔の上か) ダッ

鈴「待ちなさい!」

少し前


楯無「今回、貴虎くんが被っている王冠を獲った人には……」

楯無「貴虎くんと同居する権利をプレゼントしようと思うの」

箒「!」
セシリア「!」
鈴「!」
シャル「!」
ラウラ「!」

シャル「で、でも……そんなことって……」

楯無「大丈夫……生徒会長権限で、可能にするわ」

シャル(そもそも、僕たちが貴虎に勝てるの……?)

戻って、ステージ


セシリア「貴虎さんが、こちらに……一旦、隠れましょう」 サッ

セシリア(今日は何がなんでも、勝たせていただきますわ……!)

貴虎「ここにいたか」

セシリア「っ!? 貴虎さん、どうしてここが!?」

ガシッ

貴虎「ハッ!」 グルッ

セシリア「きゃあっ!」 ドテッ

貴虎(これでふたり……襲撃を待つより、こちらから探しに行くのも手か)

貴虎(さて、どこにいる……)

シャル「貴虎、こっちこっち!」 ササッ

貴虎「デュノア?」

シャル「こっちから抜けて、逃げられるよ」

貴虎「……お前は、敵ではないのか?」

シャル「え? えっと……あはは」

貴虎「……まぁいい、感謝する。また後で会おう」

シャル「あっ……ちょっと待って!」

貴虎「どうした?」

シャル「その……できれば、王冠を置いていってくれると嬉しいな」

貴虎「……それが狙いか」

シャル「え!? いや、そういうわけじゃ……」

貴虎「冒頭のナレーションは『冠を狙い』……そして、凰も『王冠をよこせ』と言っていた」

貴虎「思えば、オルコットもこれに照準を合わせていた……つまりこれは、私の王冠の争奪戦というわけだ」

「ピンポーン! その通り!」

貴虎(あの女……どこから見ている?)

「王子様にとって、国とは全て。その重要機密が隠された王冠を失うと……」

ビリッ!

貴虎「何っ!?」

「自責の念によって、電流が流れます!」

貴虎(あの女……っ!)

「あぁ、なんということでしょう! 王子様の国を想う心は、そうまでも重いのか!」

「しかし、私たちには見守ることしかできません……あぁ、なんということでしょう!!」

貴虎(決めたぞ。このゲームの最終目標は、あの女を倒すことだ)

セシリア「そこまでですわ。神妙になさって!」

鈴「諦めなさいよ!」

貴虎(あいつら……もう少し強めに投げておくべきだったか)

貴虎「いいだろう、3人まとめて相手をしてやる……!」

シャル「えぇ!? ちょっと、僕は……」

貴虎「ハッ!」 グイッ

鈴「ひゃあっ!」 バンッ

貴虎「フッ!」 グルッ

セシリア「きゃあっ!」 ドテッ

貴虎「ハァッ!」 グルン!

シャル「なんで僕までぇ!?」 ドテン!

貴虎(さて、次は誰だ……っ!) ピクッ

貴虎(気配を感じる……今度は下手[しもて]の塔か) ダッ

タタタッ

貴虎「……」 スタッ

ラウラ「待っていたぞ」

貴虎(ボーデヴィッヒか……さっきの3人より手こずりそうだな)

ラウラ「王冠は私がいただく……!」 チャキッ

貴虎「かかってこい」 グッ

ラウラ「ハッ!」 ブンッ

貴虎「……」 サッ

ラウラ「ハァッ!」 ブンッブンッ

貴虎「お前だけ、ナイフを2本も使うのは……」 サッ

ドンッ

ラウラ「何っ!?」

貴虎「ずるいな」 パシッ

貴虎「これで対等な勝負だ」 チャキッ

ラウラ「小癪な……ハァッ!」 ブンッ

貴虎「……」 ブンッ

ガキィィ……!
ガキン!

貴虎「ボーデヴィッヒ」 ガキンッ

ラウラ「なんだ!」 ガキンッ

貴虎「足元が留守だぞ」

ラウラ「っ!?」

貴虎「ハッ!」 ガッ!

ラウラ「足が……!!」

ガシッ
グイッ

貴虎「ハァッ!」 グルッ

ラウラ「ぐぅっ……!」 ダンッ

貴虎「そこでしばらく休んでいろ」

ラウラ「フッ……さすが宿敵[とも]だ……」

貴虎(残るはひとり……どこにいる……)

箒「貴虎!」

貴虎「……お前もデュノアと同じか」

箒「何?」

貴虎「戦わずに、この王冠を手に入れようと、そういう魂胆だろう?」

箒「……」

貴虎「単刀直入に聞きたい。なぜ、お前たちはこの王冠を狙う?」

箒「っ、それは……それはだな……」

箒「あの……その……」

貴虎「……?」

ラウラ「王冠は私がいただく!」 バッ

貴虎(っ! もう復活したか……!)

箒「そうはさせん!」 チャキッ

ガキン!

ラウラ「どういうつもりだ……!」

箒「邪魔をするな、ラウラ!」

ラウラ「こっちのセリフだ!」

ジリッ……

ラウラ「まずはお前から排除してやろう」

箒「やれるものならな……!」

キンッ!
ガキィッ!

貴虎(狙う相手を間違えているぞ……まぁいい、このまま同士討ちをしてくれれば……)

「さぁ! ただいまから、フリーエントリー組の参加です!」

「王子様の王冠を目指して、頑張ってくださーい!!」

貴虎(……あの女ぁっ!)

「呉島くん、大人しくしなさーい!」

「私と幸せになりましょう、王子様!」

「王冠をちょうだい!」

「くれしー、待ってよー」

貴虎「……いいだろう。だが、覚悟しておけ」 スッ

貴虎「今の私は、少々頭にきている……手加減はできんぞ!」 グッ

貴虎「ハァッ!」 ブンッ

「キャー!」 ドテッ

貴虎「はぁ……はぁ……」

「すごーい! 呉島くん、もう100人斬り達成!」

「呉島くん、はやーい!」

「呉島くん、ゼツリーン!」

「さすが呉島くんだ!」

貴虎「誤解を招く言い方をするな!」

「呉島くん、ちょっと疲れてる!」

「今がチャンス!」

「私も投げてー!」

貴虎(多勢に無勢か……というより、生身の女子相手に本気が出せん……!)

貴虎(一旦どこかに隠れて、体力を回復するか……) ダッ

礼子「呉島さん、こっちへ」 サッ

貴虎「お前は……」

礼子「早く!」

貴虎「……」

タタタッ
スタッ

貴虎(ここは……ステージ地下の更衣室か)

礼子「ここなら、見つかりませんよ」

貴虎「……礼を言う前に、ひとつ聞きたい。外部の人間であるお前が、なぜここに入れた?」

礼子「はい。この機会に斬月をいただきたい、と思いまして」

貴虎「……何?」

礼子「いいから、とっとと寄越しやがれよぉ!」 ブンッ

貴虎「っ、お前は何者だ?」 サッ

礼子「私かぁ? 企業の人間になりすました……」 グシャッ

礼子「謎の美女だよぉ!」 ガシン!

礼子「ほら、嬉しいかぁ?」

貴虎「……変身」 ピカーン

礼子「待ってたぜぇ……そいつを使うのをよぉ!」

礼子「喰らえ!!」 バシュン!

貴虎「……」 サッ

ドカーン!

礼子「ほう? やるじゃねぇか」

貴虎(無双セイバー……) ピカーン

貴虎「喋っている暇があるなら、さっさとかかってこい」 チャキッ

礼子「言うじゃねぇか……これ見てビビんなガキがぁ!」 ピカーン

貴虎「それがお前のISか」

礼子「そうさ、アラクネだよ。コイツの毒はキツいぜぇ?」

礼子「そらよ!」 バシュバシュバシュン!

貴虎「……」 ドウッ

ドカーン!

礼子「ハッハッハッハッ!」バシュバシュバシュン!

貴虎「誰だか知らんが、中々やるな」 サッ サッ

礼子「あぁ? 知らねぇのかよ」

礼子「秘密結社『亡国機業[ファントム・タスク]』がひとり、オータム様って言えば……わかるかぁ?」 ブンッ

貴虎「秘密なら、堂々と口にするな」 ガキン!

オータム「何も知らずに死んでくのは可愛そうだからなぁ? 冥土の土産に教えてやるよ!」

貴虎(面倒な……だが、ちょうどいい機会だ) ピッ

貴虎「新しい力を試してやる……」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『イチゴ』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

オータム「あ? なんだぁ?」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『イチゴアームズ!』

ガシャッ
キュイィィィン……

『シュシュッと! スパーク!!』

ガシャン!
キンキン!

オータム「おうおう、随分と可愛らしい姿になったじゃねぇか!」

貴虎(そうだ。私にしては可愛すぎる……そんな理由で、一度は採用を見送ったアームズ)

貴虎(だが……これなら身軽に、こいつの懐に入り込めるかもしれん)

貴虎「いくぞ……!」 チャキッ

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく
それと、名前を思い出したんで今回からつけていく

ところ変わって


真耶「ロッカールームに、未確認のIS反応です!」

千冬「やはり、学園祭を狙ってきたか。しかし、単騎とは……」

千冬「山田先生、敵の増援に警戒。一般生徒には、避難命令を」

真耶「了解しました」

千冬(貴虎……)

ステージ


鈴「ったく、貴虎はどこに行ったのよ……」

箒「引き際を心得ているやつだ」

ラウラ「ふん、貴様たちが私と宿敵[とも]の邪魔をするから……」

セシリア「だいたいシャルロットさん、あなたはどうして戦わないんですの?」

シャル「そんなこと言ったって、貴虎に勝てる気しないし……」

ブーッ ブーッ

シャル「ん?」

真耶『ロッカールームに、未確認のIS出現。斬月と交戦中』

箒「っ!」

真耶『専用機持ちは、ただちにISを展開、状況に備えてください』

ラウラ「了解!」

ピカーン

千冬『オルコットと凰は哨戒につけ!』

鈴「はい!」 ドウッ

オルコット「はっ!」 ドウッ

千冬『篠ノ之、デュノア、ボーデヴィッヒは、呉島の援護。ロッカールームへ向かえ!』

箒「わかりました」

デュノア「よし、行こう!」

そのころ、上空


鈴「右舷前方、クリア」

セシリア「こちらも異常ありません」

真耶『高速で移動中のISを捕捉』

千冬『ふたりとも、油断するな』

セシリア「わかりました」

鈴「食い止めるわよ」

ゴォォォ……!

鈴「っ、IS反応確認! 急行します!」

セシリア「……っ!? そんな、まさか……」

セシリア(あれはBT2号機、サイレント・ゼフィルス……!)

鈴「どうしたの、セシリア!? 撃って!」 バシュン! バシュン!

セシリア「……あっ、はい!」 ダンッ! ダンッ!

???「……」 ガキン! ガキン!

鈴「っ!? 何よ、アイツ!」

セシリア「ならば、こちらも……!」 ドンッ! ドンッ!

???「……」 キィィィ……!

ドガーン!

鈴「そんな……!」

セシリア「今のは、BT兵器のフレキシブル……! そんなこと……」

セシリア「現在の操縦者では、わたくしがBT適正の最高値のはず……それが、どうして……」

???「……」 ガチャン! ガチャン!

鈴「ビットが!」

シュゥゥ……
ゴォォォ……

鈴「セシリア、危ない! 逃げて!!」

セシリア「くぅ……っ!」 ビューン

バキュン! バキュン!

???「……」 ドウッ

そのころ、更衣室


オータム「オラァッ!」 ブンッ

貴虎「……」 サッ

貴虎「ハッ!」 ザンッ

オータム「ちっ……」

貴虎「フッ!」 ザシュッ

オータム「っ!」

貴虎「ハァ!」 ズバッ

オータム「このガキ……っ!」

貴虎「ハァッ!」 ズバァ!

オータム「ぬぁああ!!」 バタッ

オータム(こいつ、こっちの手を全部弾いた上に追撃してきやがる……!)

貴虎「どうした? 秘密結社とやらの実力は、この程度か?」

オータム「っ! 調子に乗るなよガキィ!!」 バシュッ

バッ

貴虎(っ! 蜘蛛の糸が、ネット状に広がって……) ギリッ

貴虎(身動きが……!) ギリッ

オータム「やっぱガキだなぁ……蜘蛛の糸を甘く見るからそうなるんだぜぇ」

オータム「ハッ! 楽勝だぜ、まったくよう!!」

貴虎「……」 ザクッ

オータム「さぁて、斬月をいただくかねぇ。テメェには用がねぇから、殺してやるよ!」

「あら、そういうのは困るわ」

オータム「何っ!?」 バッ

楯無「貴虎くん、私のお気に入りだから」

貴虎「……来たのか」

オータム「……テメェ、どこから入った? 今、ここは全システムをロックしてんだぞ……」

楯無「私はこの学園の生徒会長……故に、そのように振る舞うのよ」

オータム「ハァ? 何言ってんだテメェ……喰らいやがれ!」 ザンッ

グサァ……

オータム「っ!? 手応えがない、だと……?」

楯無?「うふふ……」 ドロォ……

バシャッ

オータム「コイツは……水か……!?」

「ご名答。水で作った偽物よ」

オータム「っ!」 バッ

楯無「はっ!」 ズバッ

オータム「ちっ……」

楯無「あら、浅かったわ。そのIS、なかなかの機動性を持ってるのね」

オータム「何なんだよ、テメェはよぉ!?」

楯無「更識楯無、そしてIS『ミステリアス・レイディ』よ。覚えておいてね」

貴虎(これが、この女のIS……ちょうどいい、性能を見せてもらおう)

オータム「今ここで殺してやらぁ!」 バババババッ!

バシャッ
ポチャッ

楯無「ふふっ、なんていう小物発言かしら」

貴虎(水の盾か。随分と高い防御力だが、どういうカラクリだ?)

オータム「くそっ、ガキが……調子づくな!」 ドウッ

バシャッ

楯無「そんな攻撃じゃあ、この水は破れないわ」

オータム「ただの水じゃない……何なんだ!?」

楯無「あら、鋭い。この水はISのエネルギーを伝達するナノマシンによって制御されてるのよ……すごいでしょ?」

楯無「ところで知ってる? この学園の生徒会長というのは『最強』の称号だということを」

オータム「知るか!」 ガシッ

楯無「……」

オータム「ハハハッ! 最強だと? 笑わせんなよ!」 バババババッ!

ドカーン!

楯無「っ……」

貴虎「……」

楯無「……貴虎くん、ここはお姉さんにお任せ」

オータム「ハッ、余裕ぶるんじゃねぇよ」 ガシッ

楯無「っ……動けなくなっちゃった」

オータム「今度こそ、もらったぜ……!」 キィィィ……!

楯無「……ねぇ? この部屋、暑くない?」

オータム「ハァ?」

楯無「気温じゃなくて、人間の体感温度が」

オータム「何言ってやがる?」

楯無「不快指数っていうのは、湿度に依存するのよ……湿度、高くない?」

オータム「えっ……?」

楯無「霧は隙間から、装甲の中まで入り込む」

オータム「っ!?」

楯無「そう、その顔が見たかったの。己の失策を知った、その顔をね……ふふっ」 パチンッ

ボン! ボン!
ドガーン!

オータム「ぐぁぁああああ!!」

楯無「ミステリアス・レイディ……霧纏の淑女を意味するこの機体は、水を自在に操るのよ。エネルギーを伝達する、ナノマシンによってね」

貴虎(この女……やり方はスマートだが、性格が良いとは言えないな……)

楯無「ところで貴虎くん、そろそろ起きたら? 君、とっくに動けるようになってるでしょ?」

貴虎「……気づいていたのか」

斬月『装備展開:イチゴクナイ』

貴虎(あいつの『アラクネ』という発言から、糸による攻撃は予測できた。このアームズを選んだのは、正解だったな)

貴虎(もっとも、狙った不意打ちは、この女が来たせいで決まらなかったが)

楯無「お姉さんのこと知りたそうだったから、見せてあげたのよ。だから……今度は貴虎くんのいいところ、見せて欲しいな」

貴虎「……いいだろう。そろそろ、新しい装備を試そうと考えていたところだ」 カチャッ

ガチャッ
キュイン

『マンゴー』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

楯無「前から思ってたけど、君の装備って面白いよね」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

楯無「特にそこが」

貴虎「……よく言われる」

ガシャッ
キュイィィィン……

『マンゴーアームズ!』

ガシャン!
ガァン!

『ファイト・オブ・ハンマー!!』

貴虎(以前使ったときは、葛葉紘汰に土をつけられたが……あの戦いから、このアームズのコツは掴んでいる)

斬月『装備展開:マンゴパニッシャー』

オータム「まだ……まだだ!!」

貴虎「その意気だ。ハッ!」 ブンッ

オータム「ぐっ……!」

貴虎「フンッ!」 ガンッ

オータム「がぁっ!」

貴虎「ハァッ!」 ガァン!

オータム「ぐぁああ!!」 バタッ

オータム「チクショウ……!」 ダッ

楯無「貴虎くん、追いかけて!」

貴虎「……」 ダッ

バァン!

貴虎(っ、何者かが天井を……)

???「迎えに来たぞ、オータム」 ニヤッ

オータム「テメェ、私を呼び捨てにするんじゃねぇ!」

貴虎(新手か。なんだ、あのISは……?)

オータム「くそっ……っ!?」 ピタッ

ラウラ「貴様、逃がさん」 サッ

シャル「往生際が悪いよ」 ガチャッ

箒「これまでだな」 チャキッ

バシュン! バシュン!

ラウラ「っ!? ビットか!」

???「……」 ズバッ

パンッ

オータム「くっ……!」

ラウラ「AICを無効化しただと……!?」

???「この程度か、ドイツのアドバンスド」

ラウラ「っ! 貴様、なぜそれを知っている!?」

???「言う必要はない」 ピピッ

???「っ、スコールか……わかった」

???「迎撃態勢が整い過ぎた。帰投するぞ、オータム」 ドウッ

バシュン! バシュン!

ラウラ「くっ……!」

オータム「ちっ……!」 ダッ

ガチャッ
ピッ……ピッ……ピッ……

ダダダダダッ

シャル「っ、ISが自立して!」

箒「まさか、爆弾か!?」

貴虎「っ、離れろ!」 ダッ

シャル「貴虎!?」

貴虎(このアームズの必殺技は、パワーを利用してエネルギーを『投げる』もの。それを応用すれば……)

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

貴虎(一か八かだ……!) ガシッ

『マンゴーオーレ!!』

キンッ!
ゴォォォ……!

貴虎「はぁぁ……ハァッ!!」 ブンッ

ヒュゥゥ……
ピッ、ピッ、ピピピピ……

オータム「はっ……? 嘘だろ……」

ドガーン!!
モクモク……

箒「爆煙でよく見えん……!」

ラウラ「仕留めたか……?」

貴虎「……いや、逃げられた」

シャル「そんな……」

貴虎(亡国機業[ファントム・タスク]……またいつか、相見えるかもしれんな……)

それから、ところ変わって


真耶「ISアラクネは、コアを抜き出して破壊。もう一機は、イギリスで強奪されたブルー・ティアーズ2号機『サイレント・ゼフィルス』のようです」

千冬「亡国機業[ファントム・タスク]という輩か」

真耶「はい。他にも幾つかのISを強奪しているらしく、次のターゲットが斬月だったようです」

千冬「狙う相手を間違えたな」

真耶「そんなこと言って、念のため、更識さんに警護をお願いしてたじゃないですか。先生、心配じゃなかったですか?」

真耶「本当は、ご自分でしたかったとか……」

千冬「馬鹿を言うな。それが更識の役割だ」

それから、貴虎の部屋


楯無「というわけで、お姉さんは貴虎くんの警護のため、近くにいたってわけ」

貴虎「それならそうと最初から言え」

楯無「それじゃ意味ないじゃない」

貴虎「それに、警護というわりには、必要のない行動も多かったように思えるが?」

楯無「んー、例えば?」

貴虎「……言わずともわかるだろう」

楯無「えー? お姉さん、わかんなーい。貴虎くん、教えて?」

貴虎「だから、その……扇情的な格好のことだ!」

楯無「やーん、貴虎くんのエッチ!」

貴虎(この女……っ!)

楯無「ふふっ」

貴虎「……」

楯無「……更識家は昔から、この手の裏工作……暗部に強いのよ」

貴虎「……そうか」

楯無「でも、当面の危機は去ったようだし、私も少しは気が休まるわ……まとわりついて、ごめんね」

貴虎「……やり方はどうあれ、私のための行動だったのだろう? なら、それはもう構わん」

楯無「……私が近くにいなくなると、寂しい?」

貴虎「いや、まったく」

楯無「……」

貴虎「……」

楯無「……ところで、これなーんだ?」

つ『王冠』

貴虎「あぁ、そんなものもあったな……」

楯無「そう! これをゲットした人が、貴虎くんと同じ部屋に暮らせるっていう、素敵アイテム」

貴虎「……何?」

楯無「うふふっ」

貴虎「……そんな話は聞いていない」

貴虎(というか、篠ノ之たちはそんなものを血相変えて取りに来ていたのか?)

楯無「うん。だって女の子にしか言ってないし~」

貴虎「ふざけるな」

楯無「なんにしても、ゲットしたのは……わ・た・し」

貴虎「知らん、そんなものは無効だ」

楯無「これからもよろしくね、貴虎くん」

貴虎「無効だと言っているだろう!」

ギャーギャー

貴虎(まったく、面倒な女と知り合ったものだ)

貴虎(依然、葛葉紘汰との連絡も取れないまま。それに加え、謎の秘密結社まで……考えることが増えていく)

貴虎(だが、俺のやることは変わらない。決して諦めず、自分のすべきことをしていくだけだ)

貴虎(元の世界へ戻る、そのときまで!)

今回はここまで
次回は『第三話 タッグマッチトーナメント』

新年度始まって忙しいから、少し間が空くと思う
あと、アニメの茶番回は飛ばすかも

それはそれとして、貴虎とお似合いのヒロインって誰だろう

それじゃ、続き投下していく
思ったより早く書き上がった

『第三話 タッグマッチトーナメント』


貴虎(いかん。調査に熱中しすぎて、つい遅くなってしまった) テクテク

貴虎(だが結局、亡国機業[ファントム・タスク]に関する情報は一切得られなかった)

貴虎(なるほど、だてに『秘密結社』ではないということか)

貴虎(こう思っては不謹慎だが、また相対する機会が訪れれば、何か情報が……っ!) ピタッ

貴虎「……誰だ?」 クルッ

???「……」 コツコツ

貴虎「……織斑?」

貴虎(あの顔は確かに……いや、よく見ると少し幼いか?)

???「あぁ、確かに私は織斑だ」

貴虎(……本物の織斑が、そんなことを言うものか)

貴虎「……何者だ?」

???「この間は、オータムが世話になったな」

貴虎「オータムだと……!」

貴虎(そうか……こいつは、あのとき乱入してきたISの……)

貴虎(それにしても……まさか本当に、再び向こうからやって来るとはな)

???「私の名前は、織斑マドカだ」

貴虎「……あいつの妹か?」

マドカ「あぁ。確かに、織斑千冬は私の姉だとも」

貴虎(この言い方……信用できん)

貴虎「私に何の用だ?」

マドカ「特に用はない」

貴虎「……何?」

マドカ「ただ……今後、お前の存在が私の邪魔にならないよう……」 スッ

貴虎(っ、銃だと……!)

マドカ「お前の命をもらう」 バンッ!

貴虎(無双セイバー!) ガシッ

ブンッ
ガキン!

マドカ「ほう、本当に刀で弾くとは……だが、いつまで保つかな?」 バンッ! バンッ!

貴虎「試してみろ。弾が切れるまで」 ガキン! ガキン!

貴虎「だが、私も黙っていると思うな……」 ガチャッ

キュィィン……
バキュン!

マドカ「フッ……」 ピカーン

ガチャン
ヒュゥゥ……!

貴虎(っ、ビットか)

バシュン!
ドカーン!

貴虎(さすがに、もう無双セイバーのみで相手をするのは難しいか)

貴虎「いいだろう。お前がその気なら、相手になってやる……変身」 ピカーン

マドカ「……」 ドウッ

貴虎(見たところ、こいつのISはオルコットのものと同じタイプ……)

貴虎(遠隔操作によるビットから砲撃を行い、それを軸に戦う機体か) ピッ

貴虎(ならば、自ずと戦術も決まる……) カチャ

ガチャッ
キュイン

『メロン』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

マドカ「来たか……」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『メロンアームズ!』

ガシャッ
キュイィィィン……

『天・下・御・免!!』

ガシャン!
テレレン

貴虎「いくぞ……!」 ドウッ

マドカ「……」 バシュン! バシュン!

貴虎(メロンディフェンダー!) サッ

ガキン! ガキン!

貴虎(鬱陶しいな……こいつを投げて、すべてのビットを落としてやる) グッ

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ギュオギュオギュオギュオ……
キィィィン……!

『メロンスカッシュ!!』

貴虎「ハァッ!」 ブンッ!

ヒュォォ……!
キンッ!

ボンッ!
ドガーン!

マドカ「何っ!?」

マドカ(6機のビットが、全滅だと……!)

貴虎「これで、お前を守るビットはなくなった」 パシッ

貴虎「覚悟しろ……」 ジャキッ

貴虎「ハァッ……っ!?」 ビクッ

貴虎(なんだ……今、一瞬だが、斬月の動きが止まったような……)

マドカ「面倒だ……!」 ドウッ

貴虎「っ……逃すか!」 バキュン!

マドカ「フッ……」 サッ

バシィン!

貴虎「バリアだと……!?」

マドカ「……」 ゴォォォ……

貴虎「待て!! ……くっ」 ピカーン

貴虎「逃げ足の速いやつだ……!」 スタッ

貴虎(さらなる情報を手に入れる、千載一遇のチャンスだったというのに……)

貴虎(……終わったことを嘆いても仕方ない。今は、新たに手に入った情報を整理しよう)

貴虎(織斑マドカ。あいつが何者かを知るには……やはり、他ならぬ織斑に聞くのが一番か)

貴虎(……さっきの不調は、俺の気のせいか……?)

そのころ、ところ変わって


簪「……」ピッ ピッ

ウィーン ウィーン

簪(各駆動部の反応が悪い……どうして……)

簪(コアの適正値も上がらない……タイプが向いてないの……?)

簪「……はぁ……」 ピッ

簪「帰って、ライダーでも見よ……」 スクッ

スタスタ

楯無「……」 コソッ

楯無(簪ちゃん……)

次の日、教室


貴虎(昨夜の襲撃から、特に斬月に変化はない)

貴虎(だがそれは、俺が斬月を展開していないため、わからないというだけだ)

貴虎(あれは気のせいだったのか……それとも、また何か面倒な問題が発生し始めたのか……)

箒「……貴虎?」

貴虎「っ、篠ノ之か」

箒「どうした、難しい顔をして」

貴虎「……いや、何でもない」

箒「そうか……その、もし何かあれば、なんだ……私に相談してくれても、構わないから……な?」

貴虎「……あぁ、ありがとう」

貴虎(そう簡単に相談できることではないが……まぁ、悩み過ぎるのも良くないか)

貴虎(できれば、杞憂であってくれればいいが……)

ガラッ
タタタッ

薫子「やっほー! 呉島くん、篠ノ之さん」

貴虎(こいつは、確か……)

貴虎(……誰だったか。会ったことがある気はするが)

貴虎(新聞部の腕章をつけているということは、何かの折にインタビューでも受けたか?)

次の日、教室


貴虎(昨夜の襲撃から、特に斬月に変化はない)

貴虎(だがそれは、俺が斬月を展開していないため、わからないというだけだ)

貴虎(あれは気のせいだったのか……それとも、また何か面倒な問題が発生し始めたのか……)

箒「……貴虎?」

貴虎「っ、篠ノ之か」

箒「どうした、難しい顔をして」

貴虎「……いや、何でもない」

箒「そうか……その、もし何かあれば、なんだ……私に相談してくれても、構わないから……な?」

貴虎「……あぁ、ありがとう」

貴虎(そう簡単に相談できることではないが……まぁ、悩み過ぎるのも良くないか)

貴虎(できれば、杞憂であってくれればいいが……)

ガラッ
タタタッ

薫子「やっほー! 呉島くん、篠ノ之さん」

貴虎(こいつは、確か……)

貴虎(……誰だったか。会ったことがある気はするが)

貴虎(新聞部の腕章をつけているということは、何かの折にインタビューでも受けたか?)

ごめん間違えた

箒「あぁ、黛先輩……お久しぶりです」

貴虎(黛? ……あぁ、思い出した。確か、新聞部の部長だったか)

貴虎(そうだ……だいぶ前だが、取材を受けた覚えがある。もう5年も前の……)

貴虎(……いや、この世界では、まだ1年も経っていないのだったな)

箒「どうかされましたか?」

薫子「いやー、ちょっとふたりに頼みがあって」

箒「頼み? 私と貴虎にですか?」

薫子「うん、そう。あのね、私の姉って出版社で働いてるんだけど……」

薫子「専用機持ちとして、ふたりに独占インタビューさせてくれないかな?」 ガサガサ

薫子「あっ、ちなみにこれが雑誌ね」 パサッ

箒「どうも……」 ペラッ

貴虎「篠ノ之。すまないが、私はあまり雑誌を読まなくてな……良し悪しの判別ができない」

貴虎「どういう内容のものか、確認してくれ」

箒「あぁ、これは……んん?」 ペラッ ペラッ

箒「えっと、あの……この雑誌、ISと関係なくないですか?」

貴虎「そうなのか?」

箒「見ろ、こんな感じの……」 ペラッ

貴虎「……ジャンルが異なる、ということか?」

薫子「んん? あれ? もしかして、ふたりはこういう仕事、初めて?」

薫子「えっとね、専用機持ちって、タレント的なこともするのよ。アイドルっていうか、主にモデルだけど」

貴虎「……スポーツ選手が、ファッション誌のグラビアを飾るようなものか?」

薫子「そうそう、それよ」

鈴「なになに、何の話?」 ヒョコッ

箒「いや、雑誌の取材を依頼されてな……」

貴虎「凰、お前は経験あるか?」

鈴「もちろん! モデルなら、あたしの写真、見せてあげるわよ」 ピッ

鈴「ほらこれ!」 バッ

貴虎「……なるほど、なかなかよく撮れている」

鈴「ふふん! そうでしょう、そうでしょう! 」

貴虎(こうして見ると、普段は気にならないが……確かに、凰は可愛らしい顔立ちをしている)

鈴「あっ、こっちのは、去年の夏のイベントのときのやつでね……」 ピッ ピッ

キーンコーンカーンコーン

薫子「あっ……じゃあ、放課後また来るから!」

鈴「でねでね、こっちが……イタッ!」 ガンッ

千冬「とっとと2組に帰れ」

鈴「うぅ、はい……」 スタスタ

千冬「さて……今日は近接格闘戦における効果的な回避方法と、距離の取り方についての理論講習を始める」

貴虎(……まぁ、また後で考えればいい。今は授業に集中しよう……)

そのころ、4組の教室


簪「……」 ピッ ピッ

「ねぇねぇ聞いた? 今度、専用機持ちだけのイベントがあるらしいよ。でね……」 ヒソヒソ

「ウチのクラスの簪さん、出るらしいよ」 ヒソヒソ

簪「……」 ピタッ

「簪さんの専用機、まだ完成してないんじゃない?」 ヒソヒソ

「間に合えばいいけど……」 ヒソヒソ

簪「……」 ピッ ピッ

それから、剣道場


箒「はっ! はっ!」 ブンッ ブンッ

貴虎「ここにいたか」

箒「貴虎……どうかしたか?」

貴虎「あの新聞部の言っていた話だ。まだ答えていないだろう?」

箒「断る。見世物など、私の主義に反する」

貴虎「やはり、お前もそうか」

箒「お前もその口だろう?」

貴虎「あぁ」

タタタッ

薫子「やっほー、お待たせ!」

薫子「それでね、取材の件なんだけど……」

貴虎「そのことだが、悪いが今回は……」

薫子「ジャン!」 ピッ

貴虎「……それは?」

薫子「三ツ星レストランのディナー招待券! これが報酬よ」

薫子「もちろんペアで!」

箒「っ!!」

貴虎「いらん、その程度の報酬……」

箒「受けましょう!」 パシッ

貴虎「篠ノ之!?」

薫子「やったー! ありがとうー!」

貴虎「篠ノ之、お前……」

薫子「じゃあ、決まりね。日曜日に取材だから、よろしく」

貴虎「待て、まだ話は……!」

薫子「そいじゃねー!」 ピューッ

貴虎「……篠ノ之、さっきと言っていることが違うぞ」

箒「……私は、柔軟な物事の考え方をしているのだ」

貴虎(報酬に釣られただけだろう……物は言いようだな)

箒「それより、貴虎。お前、今これを『その程度の報酬』と言わなかったか?」

貴虎「……」

箒「まさか、お前の家は大層な……」

貴虎「お前には関係のないことだ」

箒「……そうだな」

貴虎「……」

箒「……んんっ……あー、コホン。ところで、だな……このディナーだが……」

箒「もちろん、一緒に行くのだろうな……?」

貴虎「……報酬は受け取ってしまった。なら、それを無駄にすることもない」

箒「っ、そうか! そうだな!」 ニコッ

貴虎(……まぁ、篠ノ之がいいなら、別に構わない……かもしれんな)

その夜、簪の部屋


簪「……」 ジー

敵『この女がどうなってもいいのか!?』

ヒロイン『っ……』

主人公『たとえ変身できなくても……俺は刑事で、仮面ライダーだ!』 チャキッ

敵『お前、何しやがる……!?』

主人公『俺を信じろ』

ヒロイン『……もちろんです。バディですから!』

簪「……ふふっ……」

簪(いつか、私のところにも、来てくれるって思って……)

簪(私を見てくれる……私を助けてくれる、ヒーローが……)

簪「……」

後日、インタビュー当日


渚子「どうも。インフィニット・ストライプスの副編集長、黛渚子よ。今日はよろしく!」

貴虎「呉島貴虎だ」

箒「篠ノ之箒です」

渚子「えーっと……それじゃあ、先にインタビューから始めましょうか」 ピッ

渚子「最初の質問いいかしら? 呉島くん、女子校に入学した感想は?」

貴虎(いきなりそこか……まぁ、回りくどくなくていい)

貴虎「特に思うことはない。何処だろうと、私は自分の成すべきことをするだけだ」

渚子「成すべきこと……具体的には?」

貴虎「私自身の成長、また背負うべき責務など……だ」

渚子「……ぷっ、あははっ! 妹の言ってたこと、本当なのね!」

貴虎(一体どういうことを言ったんだ、あいつは……)

渚子「さて、それじゃあ……篠ノ之さんには、お姉さんの話を」

箒「っ……」

渚子「お姉さんから専用機をもらった感想は? どこかの国家代表候補生になる気はないの?」

箒「……紅椿は、感謝しています」

箒「ですが……今のところ、代表候補生に興味はありません。勧誘は多いですが」

渚子「オーケーオーケー! それじゃあ、呉島くんと篠ノ之さんって、どっちが強いのかしら?」

貴虎「私だ」

渚子「そうなの?」

箒「はい。というより、貴虎に勝った人を、私は見たことがありません」

渚子「あら、すごいわね! さすがヒーロー」

貴虎「ヒーローになるつもりはない。私はあくまで、自分の成長の結果として、強くなっただけだ」

渚子「面白い! じゃあそんな呉島くんに、戦場での心得を聞こうかしら」

貴虎「常に相手を見て、基礎に立ち返ることだ。相手の実力も、己の実力も、どちらも見誤ってはならない」

貴虎「あとは、そうだな……重要なのは、決して諦めないことだ」

渚子「あら、意外。なんていうか、もっと現実主義的なのかと思ってた」

貴虎「現実を見ることは大事だ。だが、それと同じように……希望を捨てないことも、また重要だ」

貴虎「この世界には、理由のない悪意などいくらでも転がっている。私もかつて、それに屈したことがあった」

貴虎「戦いに意味など求めても無駄だと……現実を見たつもりで、絶望を受け入れたことがな」

箒「……」

貴虎「だが、ある男に出会い、考えを改めた」

貴虎「どんな悪意にも、諦めずに戦い続ければ……必ず、そこに活路は拓けると」

貴虎「どんな苦難にも、絶望せず立ち向かえ。そうすれば、いつか必ず、そこに希望は生まれる」

貴虎「それが私の、戦場での心得だ」

渚子「イエース! カッコいいわよ!」

箒「貴虎……」

渚子「それじゃ、撮影に移りましょ!」

それから、スタジオ


貴虎「……」

渚子「ワーオ! 呉島くん、スーツめちゃくちゃ似合ってる!」

貴虎「……そうか」

渚子「すごいわ……なんか、すごく着慣れてるって感じ! 自然な雰囲気がステキよ」

貴虎(着慣れている……そうだろうな)

貴虎(はっきり言って、俺としても……IS学園の制服より、こちらの方がスタンダードだ)

「お待たせしましたー。篠ノ之さん、入りまーす」

箒「た、貴虎……待たせた……」

貴虎「ドレスか。よく似合っている」

箒「っ!? そ、そうか……!」

箒(貴虎が褒めてくれた……!!) ニヤニヤ

箒「貴虎も……似合ってるな」

箒「その、なんだ……悪くない、ぞ……」

貴虎「……ありがとう」

箒「いや……悪くない、というか……似合い過ぎる、というか……」

箒(……冷静に見ると、本当にすごいな。まったく違和感がない……)

箒(言わない方がいいが、貴虎は少し老け顔だし……知らない人が見たら、30代だと思われても、不思議ではないな……)

貴虎(……何となく、篠ノ之の考えていることが予想できるぞ……)

パンパンッ

渚子「はーい、それじゃあ撮影始めるわよ!」

貴虎(このソファーに座ればいいのか?) スッ

箒「……」 スッ

渚子「ふたりともー、もっとくっついて」

貴虎「……こうか?」 スッ

渚子「うーん、ダメダメ! もっともっと!」

貴虎「……篠ノ之、少し我慢しろ」 スッ

ピタッ

箒(っ!? 貴虎が、くっついて……!)

貴虎(少し近すぎたか……?)

貴虎(まずいな……パーティーなどに出席したときも、ここまで女とくっついたことはなかった……)

貴虎(そのせいか、適切な距離がわからない……!)

パシャッ

渚子「そうそう、オトナな感じでいくわよ」

渚子「じゃ次! 呉島くん、篠ノ之さんの腰を抱いて!」

貴虎「……何!?」

渚子「だから、腰を抱いて!」

貴虎「……本気で言っているのか?」

渚子「早く!」

貴虎「……」 スクッ

箒「……」 スクッ

貴虎「……篠ノ之?」 チラッ

箒「……」 ソッ

貴虎「っ……」 ギュッ

箒「あっ……」

パシャッ パシャッ

渚子「いいねいいねー!」 パシャッ

渚子「はい次! 篠ノ之さん、呉島くんの首に腕を絡めて!」

貴虎(まだ続くのか……まずい、緊張して汗が……)

渚子「さぁ、やって!」 パチンッ

箒「……」 ギュッ

貴虎(っ……必然的に、篠ノ之と見つめ合う形に……)

箒「貴虎……」

貴虎「っ、篠ノ之……」

貴虎(なぜ、そんな潤んだ瞳をしている……どうして、そんな顔で俺を見る……!?)

パシャッ パシャッ

渚子「んー! いい画が撮れたわ!」

箒「終わった、のか……?」

貴虎「っ!」 バッ

箒「っ、貴虎……」

貴虎「すまない、篠ノ之」

箒「いや……」

箒(そんな、飛び退くように離れなくても……)

渚子「お疲れ様! その服はあげるから」

渚子「本当、今日はありがとね!」

「お疲れ様でーす」

貴虎「……帰るか」

箒「……あぁ、そうだな……」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく

テクテク

貴虎「……」

箒「……」

貴虎(静かだ……いや、確かに俺と篠ノ之は、普段からあまりうるさく会話はしないが……)

貴虎(だが、この沈黙は……明らかに、いつものそれとは違う……)

貴虎「……」

箒「……」

箒(あんなに至近距離で見つめ合って……もし、ふたりきりだったら……)

箒(キ……ス……とか……っ!?)

ガツン!

箒「痛っ!」 グラッ

貴虎「っ、篠ノ之!」 ガシッ

箒「うっ……大丈夫だ」

貴虎「どうした? 足を挫いたか?」

箒「大したことない。つまづいただけだ」

貴虎「……ヒールが取れているぞ」

箒「なーに、ならもう片方のヒールも……」 バッ

貴虎「横着するな」 パシッ

箒「あっ……」

貴虎「タクシーを呼んでやる」

箒「いや、わざわざそんな……必要ない」

貴虎「その足で歩けば、さらに痛めるぞ」

箒「でも……」

貴虎「……仕方ない」 スッ

箒「貴虎……?」

貴虎「おぶってやる。背中にのれ」

箒「……」 スッ

貴虎「……いくぞ」 スクッ

テクテク

箒「貴虎……ありがとう」

貴虎「気にするな。私も、別に気にしていない」

貴虎(そうだ、気にするな……背中の感触とか……)

貴虎(昔、光実にもやってやっただろう……それと何も変わらない……)

貴虎(気にするな……気にするな……!)

その夜、IS学園


貴虎「……」 テクテク

貴虎「……ん?」

千冬「……」 テクテク

貴虎(織斑……そうだ、あの事を聞かねば……)

貴虎「織斑」 ピタッ

千冬「何度言わせる、織斑先生だ」 ピタッ

貴虎「聞きたいことがある。妹はいるか?」

千冬「……それを聞いてどうする?」

貴虎「お前の妹を名乗る者に会った。その真偽を確かめたい」

千冬「……お前は、私のことを昔から知っているだろう」

貴虎「……あぁ」

貴虎(そうか……そういえば、この世界では、俺と織斑は幼馴染だったか)

千冬「その上で、その質問を私に投げかけると言うのだな?」

貴虎「……覚悟の上だ」

貴虎(この反応……何か事情があるのは、間違いない)

貴虎(ならば……ここで引き下がるわけにはいかん)

千冬「そうか……なら、はっきり言っておこう」

千冬「私に家族はいない」

貴虎「……そうか」

貴虎(事情はわからんが、話す気はなさそうだ……まぁ、いい)

貴虎(あの織斑マドカという女は、まともな存在ではない……それが分かれば十分だ)

千冬「……」

次の日、1組の教室


真耶「この度、各専用機持ちのレベルアップを図るために、全学年合同のタッグマッチを行うことになりました」

千冬「各国でISの強奪が相次ぎ、先の文化祭でも、専用機が狙われる事件が発生した」

貴虎「……」

千冬「そこで専用機持ちは、より練度を上げる必要がある。以上」

貴虎(タッグマッチか……技術を上げる良い機会だ。だが……) チラッ

貴虎(あのとき感じた斬月の不調が、また起きないとも限らない……注意を怠らないでおこう)

それから、昼休み


シャル「た、貴虎! お弁当作り過ぎちゃったんだけど……よかったら、どうかな?」

貴虎「弁当を……? ありがたいが、いいのか?」

シャル「うん、もちろんだよ」

貴虎「では、是非いただこう」

シャル「じゃあ、屋上に行こうか」

貴虎「構わん、行こう」

屋上


シャル「はい、貴虎」 パカッ

貴虎「礼を言う……いただきます」 パクッ

貴虎「……ん、なかなかいい。デュノアは料理ができるようだな」

シャル「本当? ありがとう、貴虎」

鈴「いたいた、貴虎!」

シャル「あっ……」

鈴「さぁ、あたしの青椒肉絲も食べなさいよ」

貴虎「いや、今日はデュノアの弁当が……」

鈴「いいじゃない。ほら、美味しそうでしょ?」

貴虎(……まぁ、好意を無下にするのも良くないか)

貴虎「わかった。では、少しもらおう」 パクッ

貴虎「んっ……うまいな」

鈴「でしょー?」

貴虎「いや、正直驚いた……予想以上だ」

鈴「えへへ……」 チラッ

シャル「……」

鈴「……ふん」

バチバチッ

シャル「貴虎、卵焼きも食べてみて!」 ズイッ

鈴「はい、お茶もどうぞ!」 ズイッ

貴虎「……近い。というより、一体どうした? 様子がおかしいぞ」

シャル「そ、それは……その……」

鈴「い、いつものことじゃない……?」

貴虎「そんなわけがあるか」

シャル「……あ、あのさぁ、貴虎」

貴虎「ん?」

シャル「えっと、その……一緒に戦いやすい相手って、どういうタイプなのかな?」

貴虎「一緒に……? あぁ、なるほど」

貴虎「つまり……タッグマッチに向けて、自己分析をしておこうということか」

シャル「う、うん。まぁ、そんな感じかな……」

貴虎「私は近接が得意だ。ならば逆に、パートナーは射撃が得意な者が良いだろう」

鈴「うんうん」

貴虎「凰はどうだ?」

鈴「あ、あたしは……いざってときに、助けてくれるっていうか……」 チラッ

鈴「必死で戦ってくれる、っていうか……」 モジモジ

貴虎「曖昧だな……デュノアは?」

シャル「ぼ、僕もやっぱり……鈴と同じだけど……」 チラッ

シャル「あっ! あと、機転が利くっていうか……」 モジモジ

貴虎「……」

貴虎(いや、さすがの俺でもわかる。凰とデュノアは多分、俺と組みたいのだろう)

貴虎(強い者を味方につけておけば、それだけ勝率が期待できるからな)

貴虎(だが……それでは成長に繋がらない。ここはふたりのためにも、躱させてもらおう……)

それから、しばらく経って
貴虎の自室前


貴虎(あれから少し起動してみたが、斬月に不調は見られない) テクテク

貴虎(やはり、気のせいだったのか……?) ガチャ

貴虎「……ん?」

楯無「貴虎くん……」

貴虎「またお前か……勝手に私の部屋に入るな」

楯無「その……」

貴虎「……どうした? 何の用だ?」

楯無「……妹を、お願いします!」 パンッ

貴虎「……説明してくれ」

……
…………

楯無「えーっと、このコなんだけど……名前は、更識簪」 ピッ

楯無「あのね……ちょっと、その……暗いコなのよ」

貴虎「……それで?」

楯無「でもね、実力はあるのよ? 日本の代表候補生なんだから」

楯無「けど……」

貴虎「……けど、何だ?」

楯無「……専用機がないのよ」

貴虎「何……?」

楯無「それも……貴虎くんのせいで」

貴虎「……どういうことだ?」

楯無「簪ちゃんの専用機は、もうとっくに開発されてるはずだったの。けど……」

楯無「貴虎くんが来てから、斬月に人員を回されちゃったみたいで……」

貴虎「……みたい?」

楯無「さすがの私も、そっちの事情はそれほど詳しくないの。こんな例、聞いたこともないし……」

貴虎(サガラ……あの男、一体どうやって斬月を用意したんだ……)

貴虎「……すまない、それは私の責任だ」

楯無「……で、今度のタッグマッチで、ぜひ簪ちゃんとペアを組んであげてほしいの」

楯無「このとーり!」 パンッ

貴虎「……待て、どうしてそうなる」

貴虎「私のせいで専用機が完成していないなら、そいつの私に対する印象は最悪だろう」

貴虎「というより、完成していないにもかかわらず、タッグマッチには出場が決定しているのか?」

貴虎「そもそも、なぜ私だ? 本人が望んだのか?」

楯無「言いたいことは分かるけど……こっちにも事情があるの」

貴虎「説明できないのか?」

楯無「……」

貴虎「……はぁ……」

貴虎「……いいだろう、わかった」

楯無「え!? それじゃあ、いいの?」

貴虎「私のせいで、そうなったと言うのなら、強くは言えん。それに、一応とはいえ、この間は世話になった」

貴虎「その借りを返そう」

楯無「ありがとう、貴虎くん!」

貴虎「では……私から誘えばいいのか?」

楯無「うん。でも……極力、私の名前は出さないでね」

貴虎「……わかった」

楯無「お願いね」

次の日、1組の教室


貴虎(確か、あいつの妹がいるのは4組だったか。誘うのは、昼休みの方がいいだろう……) ガラッ

ラウラ「待っていたぞ、貴虎」

貴虎「ボーデヴィッヒ……朝からどうした?」

ラウラ「タッグマッチは当然、私と組むのだろうな?」

貴虎「……お前は私と決着をつけたいのではなかったのか?」

ラウラ「当然だ。私にとって、お前は唯一無二の宿敵[とも]……」

ラウラ「つまり、お前こそが私と組むに相応しい!」 ビシッ

貴虎「……」

ラウラ「これが申込書だ。さっさとサインをしろ」 ピラッ

貴虎「断る。悪いが、組む相手はもう決めている」

ラウラ「何!?」

箒「!?」

セシリア「!?」

箒(組む相手は、もう決めている……!)

セシリア(それは、つまり……!)

ラウラ「私の宿敵[とも]でありながら、他のやつと組むだと……!」 ヴォン

貴虎(無双セイバー……) スッ

貴虎「……何!?」

貴虎(現れない……なぜ……!?)

ラウラ「ハァッ!」 ブンッ

貴虎(っ! まずい……!!)

ガシッ

千冬「……」ググッ

ラウラ「なっ!?」

千冬「肉の焦げる匂いは、焼肉屋だけで十分だ!」 ブンッ

クルッ
スタッ

ラウラ「教官……!」

千冬「席につけ。呉島もだ」

貴虎「……」

千冬「……聞こえなかったか、呉島」 ギロッ

貴虎「っ、あぁ……」

貴虎(やはりおかしい……確かに今、念じたはず……)

貴虎(斬月……お前に一体、何が起こっている……!?)

それから、女子更衣室


箒「ふんふんふーん」 ニヤニヤ

箒(貴虎のやつ、タッグマッチの相手は決めていると言ったな)

箒(確かに、あいつの相方が務まるのは、私しかいないだろう!)

箒(まったく、貴虎め……そこまで言うなら、組んでやらないこともないぞ!) ニヤニヤ

セシリア「ふんふんふーん」 ニコニコ

セシリア(貴虎さんったら、既に相手は決めてあるですって)

セシリア(それはつまり、わたくしのことで違いありませんわ!)

セシリア(ついに貴虎さんと……!) ニコニコ

箒「やけにご機嫌だな、セシリア」

セシリア「あら、箒さん」

箒「調子はどうだ?」

セシリア「まぁまぁですわね。箒さんは?」

箒「まずまずかな」

箒(ふっ、セシリアのやつめ……私が貴虎と組むと知ったら、どんな顔をするやら)

セシリア「それは、よろしいですわね」

セシリア(ふふっ、箒さんったら……わたくしが貴虎さんに選ばれるとも知らずに)

箒「ではな、セシリア」

セシリア「えぇ、ご機嫌よう」

箒(勝った!)

セシリア(勝ちましたわ!)

そのころ、4組の教室


貴虎「失礼する」 ガラッ

「あっ、1組の呉島くんだ!」

「4組にご用でしょうか?」

貴虎「更識簪と話がしたい。いるか?」

「えっと……」 チラッ

簪「……」 ピッ ピッ

貴虎(あいつか……) テクテク

貴虎(さて、姉の話が本当なら、あいつはきっと俺を恨んでいるだろう)

貴虎(果たして、どう切り出したものか……)

貴虎「……少しいいか?」

簪「……」 ピッ ピッ

貴虎「……私は呉島貴虎だ」

簪「……知ってる」 ピタッ

簪「用件は?」

貴虎「それは……」

貴虎(まぁ、正面からぶつかるのが、一番早いか)

貴虎「……タッグマッチトーナメントのことで、話がある」

貴虎「単刀直入に言おう。私と組んでほしい」

簪「イヤ」

貴虎(だろうな。だが、引き受けた以上、ここで引き下がるわけにはいかん)

貴虎「……私とお前の間に、何があったかは聞いた。私に言いたいことは、多くあると思う」

簪「……」 ギロッ

貴虎「だが、それを踏まえた上で……私はお前と組みたい」

簪「……私には、あなたを殴る権利がある」

貴虎「……」

簪「けど、疲れるから……やらない」

貴虎(取りつく島もない、とはこのことか……今さらだが、厄介な依頼を引き受けたものだ)

貴虎「……わかった。邪魔をしたな」 スタスタ

貴虎(交渉において重要なのは、誠実な対応と……引き際)

貴虎(そして、相手の心を開くために必要なのは……自分を偽らず、信頼を得ること)

貴虎(更識の心は頑なだ。打ち解けるには、それ相応の時間をかけなければ……)

貴虎「……」 ピタッ

「どうしたの? 呉島くん」

貴虎「……いや、何でもない」

貴虎(待て……『誰かと仲良くなろう』と最後に思ったのは、一体いつだ?)

貴虎(仕事の繋がりで、凌馬や雅仁とは仲を深めたが……今回はそうはいかない)

貴虎(『友人』とは、どうやって作ればいい……?)

貴虎(……まずい、まったくやり方が思い浮かばない。理論はわかっても、具体的な行動が……)

貴虎(……とりあえず、積極的に話しかけてみるか)

それから、整備室


簪「……」ピッ ピッ

簪(まだダメ……まだ、こんなものじゃ……)

簪(姉さんなら、もっと……!)

ピーッ

簪「……っ」

『エラー』

簪「……はぁ……」

簪「……斬月さえなければ、追いつけたのに……!」

簪「っ!」 ハッ

簪「……」 フルフル

簪「はぁ……」 スクッ

簪「……」 スタスタ

ウィン

貴虎「あっ」

簪「っ……」

貴虎「……奇遇だな」

簪「……」 プイッ

貴虎「……タッグマッチの話だが、もう一度、考え直してくれないか?」

簪「……」 スタスタ

貴虎「待ってくれ、更識」 テクテク

簪「話しかけないで」 スタスタ

貴虎「お前の気持ちはわかっているつもりだ。だが、それを押してでも、私に協力してほしい」

簪「……何のつもり?」

貴虎「話している通りだ。私は……」

簪「どういう思惑があって?」

貴虎「……思惑などない。ただ、純粋に……共にタッグマッチに出ようと、誘っているだけだ」

簪「……大体、どうして私と組みたいの?」

貴虎「それは……」

貴虎(なんと答えればいい……姉の名前を出すわけにはいかないが……)

貴虎(……いや、偽る必要はないな。信頼を得るためには、まず俺が素直にならなければ)

貴虎「……友人になりたいからだ」

簪「っ、友人……?」

貴虎「そうだ。私は……」

簪「私は、あなたと友達になんて……」

簪「……友達に、なんて……」

簪「……なりたくない……」

貴虎「……そうか」

貴虎(……地味に傷つくな、今の一言は)

それから、貴虎の自室


楯無「まさか、貴虎くんの方から呼んでくれるなんて」

貴虎「聞きたいことがある。あいつ……更識簪の専用機についてだ」

貴虎「完成していないと言っていたが、間に合いそうなのか?」

楯無「……正直、わからないわ」

貴虎「では……私が協力を申し出ることで、仲を深めることは可能だと思うか?」

楯無「それは……ちょっと難しいんじゃないかしら」

楯無「簪ちゃん……多分、独りで機体を組み上げるつもりなのよ」

楯無「私がそうしてたから、意識しちゃってるのね……気にしなくていいのに……」

貴虎「……確執があるようだな」

楯無「……ごめんね、私たち姉妹の問題に」

貴虎「兄弟姉妹とは、そういうものだ。私も以前、弟とぶつかり合ったことがあった」

楯無「……弟さん、いるんだ」

貴虎「あぁ、自慢の弟だ」

楯無「そっか……ありがとね、貴虎くん」

貴虎「……」

楯無「ところで、どう? 簪ちゃんの様子」

貴虎「難しいな。私と組む気はないと、はっきり言われてしまった」

楯無「あちゃー……ちなみに、どんな風に誘ったの?」

貴虎「友人になりたいと言った」

楯無「うわぁ、思った以上に直球」

貴虎「これに関しては、嘘偽りない私の気持ちを示したつもりだ」

楯無「……貴虎くんって、もしかして友達作るの、あんまり上手じゃない?」

貴虎「……うるさい」

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく

そのころ、簪の部屋


簪「……」

『友人になりたいからだ』

簪(どうして私、答えに詰まっちゃったんだろう……)

簪(あの人と友達なんて……なりたくないに、決まってるのに……)

そして、開催日が迫る


「ねぇねぇ、聞いた?」

「なになに?」

「呉島くんの今度の専用機持ちタッグマッチのパートナー、4組の更識さんに毎日迫ってるらしいよ!」

「えー!? 嘘っ、なんでなんで!?」

……
…………

貴虎「待ってくれ、更識! 少しでいい、話を聞いてくれ!」 タッタッ

簪「ついてこないで……!」 タタタッ

……
…………

セシリア「貴虎さん……わたくしと組まなかったことを、後悔させてあげますわ……!」

セシリア「震えなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる鎮魂歌[レクイエム]で!!」

……
…………

鈴「だーかーらー! 右肩部ユニットを拡散衝撃砲に変更した換装装備[パッケージ]データを今すぐちょうだい!!」

鈴「3日で仕上げてよね!」

「ーーーー」

鈴「ハァッ!? できないじゃないわよ、やるのよ!!」 ピッ

鈴「見てなさいよ、貴虎……絶対に許さないんだから!」

……
…………

シャル「いくよ、リヴァイヴ……!」

シャル「今度の僕は、少し強敵だよ……貴虎!」

……
…………

ラウラ「……フッ」

ラウラ「私が見せてやろう、真の恐怖を……」

ラウラ「その全身に刻みつけてやるぞ、貴虎!」

……
…………

箒「……」 スクッ

箒「貴虎……!」 チャキッ

楯無「箒ちゃん、ゲットだぜぃ!」 ガシッ

箒「うわぁ!?」

楯無「へぇ、真剣で稽古かー」

箒「楯無先輩……えぇ、まぁ……」

楯無「でね、箒ちゃん。ちょっと話があって」

楯無「タッグマッチ、私と組みましょう!」

箒「……はぁ?」

それから、ところ変わって


楯無「まずは、箒ちゃんのフィジカルデータを調べるからね」

箒「……まぁ、それは構いませんが……」

楯無「よし、準備完了。じゃ、いくわよ」 ピッ

ゴォォォ……

楯無「……っ!? これは……」

箒「どうかしましたか?」

楯無「……おっぱい大きいのね。私、もしかしたらちょっと負けてるかも……」

箒「どこ見てるんですか!? 真面目にやってください!」

楯無「あははっ、ごめんごめん!」

楯無(どういうことかしら……この、箒ちゃんのIS適正……)

楯無(こんな短期間で、CからSなんて聞いたことがない)

楯無(鍵はやはり、篠ノ之束……)

そのころ、アリーナ


簪「……」

簪(同じ『更識』であることを、苦痛に感じたのは、いつからだろう……)

簪(顔も見つめられなくなったのは……)

簪「……」

簪(この飛行テストがうまくいけば、姉さんに……!)

簪「……よし」

簪「来て、打鉄弐式……!」 ピカーン

簪「今日こそは、絶対に成功させる……!」 ピッ ピッ

簪「……っ!」 ドウッ

ゴォォォ……!

簪「機体制御は大丈夫。あとは、ハイパーセンサーの接続、連動……」 ピッ ピッ

簪「姿勢保持スラスター、問題なし。展開時のポイントを調整」

簪「PIC干渉領域からズラして、グラビティヘッドを機体前方6センチ調整」

簪「それから、脚部ブースターバランスを、4マイナスで再転換……」

ボンッ!

簪「っ!?」

ビーッ! ビーッ!

簪「反動制御が利かない……どうして……!?」

簪「っ、あぁっ……!!」

ヒュゥゥ……

簪(お姉ちゃん……)

簪(イヤ……イヤだ……!)

簪(まだ……追いつけないの……?)

簪「……私、やっぱりダメだ……」

「それはどうだろうな」

ガシッ

簪「……え?」

貴虎「大丈夫か?」 ゴォォォ……

簪「どうして……?」

貴虎「あぁ……とりあえず、降りてから話そう」

整備室


貴虎(今回、斬月に不調は見られなかった……あそこで、また何か起きていたら、俺も更識も落ちていたな)

貴虎(更識のことだけでなく、こちらも気にかけておかなければ……)

簪「あ、あの……」

貴虎「ん?」

簪「ありがとう……さっき、助けてくれて」

貴虎「あぁ……気にするな」

簪「ところで、どうしてあそこに?」

貴虎「……偶然だ」

簪「偶然?」

貴虎「そうだ、偶然だ」

貴虎(本当は、ずっと話しかけるタイミングをうかがって、最初から見ていたが……)

貴虎(これを言うと、ストーカーだと思われて、ますます距離が開きそうだ)

簪「……まぁ、いいけど」

貴虎「……あぁ、なんだ……少し話がしたい。時間をくれないか?」

貴虎「そうだな……こんな時間だし、食事でもしながら、とか……」

簪「……いいよ」

貴虎「っ、いいのか?」

簪「そっちから誘ってきたんでしょ」

貴虎「いや……まぁ、そうだが……」

貴虎「……なら、行こう」

簪「……うん」

食堂


簪「いただきます」

貴虎「……いただきます」

簪「……」 パクパク

貴虎「……」 モグモグ

貴虎(……打ち解けるために食事に誘ったが、会話が浮かばない……失敗だったか?)

貴虎(だが、この誘いに乗ってきたということは、心を開き始めていると考えていいはず……)

貴虎(……今が攻め時か)

貴虎「更識、話がある」

簪「……」 チラッ

貴虎「もう何度も話したことだが……私とタッグマッチで組んでほしい」

貴虎「お前の事情は知っている。私との因縁も」

貴虎「そのことについて、私はどう詫びればいいかわからない」

簪「……」

貴虎「だが……勝手な話だが、私はお前といがみ合っていたくない」

貴虎「私たちの関係を、先へと進めたい」

貴虎「だから……」

簪「……いいよ」

貴虎「っ、本当か!?」

簪「タッグマッチで、あなたと組んであげる」

貴虎「……礼を言う」

簪「うん……えっと、その……」

簪「……よろしく」 スッ

貴虎「……あぁ、よろしく頼む」 ギュッ

貴虎(ひとまず、目的は達成というところか)

貴虎(ここから当日までに、タッグとして満足のいく形まで持っていければいいが……)

貴虎(……いや、とりあえず今は、俺たちの関係が一歩前に進んだことを喜ぼう)

それから、再び整備室


貴虎「さて……この問題を私が問うのは、私自身としても複雑だが……タッグを組んだ以上、問わざるを得ない」

貴虎「単刀直入に聞こう。専用機について、現在の状況を教えてくれ」

簪「……武装が、まだ未完成。それに稼働データも取れていないから、今のままじゃ実戦は無理」

貴虎「武装?」

簪「マルチロックオンシステムによる、高性能誘導ミサイル。それと、荷電粒子砲」

貴虎「そうか……」

貴虎「……はっきり言おう。私にできることはなさそうだ」

貴虎「私は、ISの扱いには、それなりに慣れているつもりだ」

貴虎「だが……ことシステムの面に関しては、素人もいいところだ」

貴虎「すまない……」

簪「……いいよ。そんな気はしてた」

貴虎「だが、私以外の人間なら……たとえば、整備課の生徒たちなら、何か打開策を見つけ出すかもしれん」

貴虎「見る限り、お前が他人を頼らずに、その専用機を完成させようとしていることは察するが……」

貴虎(本当は姉から聞いた話だが、それを言うわけにはいかん)

貴虎「……だが、タッグマッチまで時間もない。我々以外の人間の力を借りるのも、ひとつの手だと私は思う」

簪「……うん、そうしてみる」

貴虎「……いいのか?」

簪「あなたの言ってることは、正しいから」

貴虎「……ありがとう」

簪「ううん、こちらこそ」

簪(知らなかった。今まで、話そうと思ったこともなかったから)

簪(こんなにも真面目で、まっすぐな人だったんだ)

貴虎「それにしても……打鉄か」

簪「うん、打鉄弐式。打鉄を発展させた後継機で……」

貴虎「やはり良いな、打鉄は」

簪「……え?」

貴虎「このシンプルかつ和風の感触が、他のISに比べて特にいい」

貴虎「この学園には、量産型は打鉄とリヴァイヴの2種が配備されているが……普段の授業でも、私は打鉄ばかり使っている」

簪「そ、そうなんだ……」

簪(でも、ちょっと変わってるよね……)

そのころ、ところ変わって


箒「今日は、特訓に付き合っていただき、ありがとうございました」 ペコッ

楯無「いいのいいの。じゃあ、シャワー行きましょうか」 ニヤニヤ

箒「えっ!? いや……」

楯無「さぁさぁ。よいではないかー、よいではないかー」 グイッ

箒「引っ張らないでください! 自分で歩けますよ!」

箒「……」

箒(昔、こんな風に手を引いてもらっていた……)

箒(私があの人を、傷つけた……)

楯無「……何か考えごと?」

箒「っ! ……えぇ、ちょっと……」

箒「……姉のことを」

楯無「箒ちゃんって、お姉さん……束博士のこと、敬遠してる?」

箒「……嫌いではないです。専用機をくれたことも、感謝しています」

楯無「そう。だったら良かった」

楯無「やっぱり、家族は仲良くしないとね」

楯無(……他人のことは言えないけど)

箒「……でも、わからないんです。姉が何を考えているのか」

楯無「……わからないのは、恐い?」

箒「っ……」

楯無「……そうよね。そんなの、私もそうよ」

箒「えっ……?」

楯無「大丈夫。心配しなくても、きっとお姉さんは、あなたを大切に想ってくれてるから」

箒「……」

次の日、整備室


薫子「はーい!」

本音「えへへー、手伝いに来たよー」

貴虎「……」

本音「あれー? どうしたの、くれしー」

貴虎「私は整備課に協力を依頼したはずだが」

薫子「だから、こうして来たじゃない」

貴虎「……百歩譲って、黛はいい。問題は……」

貴虎「布仏、本当に整備できるのだろうな?」

本音「えー!? くれしー、ひどーい!」

貴虎「すまないが、普段のイメージからは全く想像できん」

薫子「安心して、呉島くん。こう見えて、結構やるんだから」

貴虎「……そうか。では、ありがたく力を借りよう」

簪「今日は、よろしくお願いします。本音も、急にごめんね」

本音「なんで謝るのさー? 今日はかんちゃんのために、いーっぱい頑張るからねー」

簪「ありがとう」

薫子「よーし! じゃあ時間もないし、いっちょやりますか」

貴虎(少し不安だが……俺と更識だけでやるより、こうして整備課の手を借りた方が、素早く確実に終わるだろう)

貴虎(あと必要なのは……あの女から借りた、この機体データか) チラッ

……
…………

薫子「貴虎くーん、こっちに特大レンチと高周波カッター持ってきて!」

貴虎「あぁ、受け取れ」 パシッ

「データスキャナーと、超音波検査装置をー」

貴虎「これだ」 パシッ

「呉島、ジュース飲ませろ」

貴虎「どさくさ紛れに、何を言っている」

本音「くれしー、お菓子とってー」

貴虎「勝手に取れ!」

薫子「購買でシャンプー買っといてー」

貴虎「いい加減にしろ!!」

……
…………

薫子「ふぃー……まぁ、こんなもんかな」

本音「いぇーい」

簪「あ……ありがとうございました」 ペコッ

簪「私ひとりじゃ、できなくて……本当に、ありがとうございました!」

薫子「気にしないでよ。同じ学園の仲間じゃない」

簪「っ……はい!」

貴虎「……」

薫子「さーて……それじゃあ、私たちは先に上がらせてもらおうかしら」

本音「くれしー、片付けよろしくねー」

貴虎「あぁ、任せておけ」

貴虎「……ひとまずは、これで大丈夫だな」

簪「うん、みんなのおかげ」

貴虎「あとは、我々のコンビネーション次第といったところか」

簪「っ、コンビネーション……」

簪(私と、貴虎の……ふたりの相性……)

簪「……貴虎」

貴虎「ん?」

簪「私、頑張るから」

貴虎「……あぁ、期待している」

貴虎(もう、更識との関係を憂える必要はなさそうだ)

貴虎(残る問題は、斬月のみか……)

その夜、貴虎の自室


貴虎(斬月の不調は、起こるときと起こらないときがある。その違いがわかれば、少しはマシだが……) ガチャ

楯無「チャオ」

貴虎「……前にも言ったが、それは私のシャツだ」

貴虎「もう、勝手に入るのは構わん……だから、せめてまともな服を着てくれ……」

楯無「貴虎くーん、マッサージしてー」 ゴロン

貴虎(この女には、何を言っても無駄なのか……)

楯無「……ねぇ、貴虎くんって、兄弟仲いい?」

貴虎「兄弟仲……?」

貴虎「……悪くはない、と思っている」

楯無「この前は、ぶつかり合ったとか言ってなかった?」

貴虎「以前はな。過去に一度、私のせいで、弟と袂を分かつことになってしまった」

楯無「貴虎くん、何かしたの?」

貴虎「……理想を押しつけた」

貴虎「ずっと海外にいた両親に代わって、私が弟の教育を受け持ってきた。弟の手本になりたいと、日頃から努めていた」

貴虎「正しさと、責任と、誇りのある生き方を学んでほしいと」

貴虎「だが……私は、弟を理解してやれなかった」

楯無「……」

貴虎「ノブレス・オブリージュ。優れた者ほど、真っ先に犠牲を払わなければならない」

貴虎「それこそが、本当の名誉だと……私は、弟に理屈ばかり押し付け、私の影を背負わせた」

……無駄なものを切り捨てることで、お前の人生は完成されるんだ……

貴虎「そのために、弟は道を誤った……私が弟を、追い詰めてしまった」

楯無「……辛かったね」

貴虎「……いや、本当に辛かったのは……私ではなく、弟だ」

楯無「……わかるよ、貴虎くんの気持ち」

楯無「大事だから、特別だから、厳しく接してしまう」

楯無「愛してるからこそ、そのコのためを思って『正しさ』を示してしまう」

楯無「そのコにとっての『正しさ』は、もっと別にあるかもしれないのにね……」

貴虎「……お互い、苦労するな」

楯無「……本当に、ね」

そのころ、ところ変わって


簪「……」 テクテク

簪(どうしちゃったんだろう、私……どうして、カップケーキなんて……)

簪(……貴虎、食べてくれるかな)

『1025』

簪(確か、あそこが貴虎の……)

ガチャ

簪(っ、誰か出てくる……!) サッ

貴虎「さっさと出ていけ」

楯無「いいじゃない、マッサージくらいしてくれたって」

貴虎「本当にしてほしいなら、次からはもっとまともな格好をしてこい」

簪(えっ、姉さん……?)

楯無「もう……ところで、どう? 簪ちゃんの機体、何とかなった?」

貴虎「あぁ、おかげで間に合った」

楯無「私の機体データ、役に立ったでしょ?」

簪(っ!? どういう、こと……!?)

簪(今までの……全部、姉さんが……!?)

簪「っ……」 ポロっ

簪「うっ……うぅ……!」 ポロポロ

簪「……」 ダッ

タタタッ

貴虎「……ん?」

楯無「どうかした?」

貴虎「いや……」

貴虎(今、誰かいたような……気のせいか?)

次の日、トーナメント開会式


楯無「どうも、皆さん。今日は、専用機持ちのタッグマッチトーナメントでーす!」

ワーッ!

楯無「出場生徒の皆さんは、日々の訓練の成果を存分に発揮し、全力で挑みましょう」

楯無「専用機を持っていない生徒の皆さんにとっては、試合内容はとても勉強になると思います」

楯無「しっかりと観ていてください」

楯無「それでは、実りのある時間となるよう期待を込めて、開会の挨拶とさせていただきます」

楯無「とまぁ、堅苦しいのはこの辺にして……」

楯無「お待ちかね、対戦表を発表しまーす!」

ピッ

箒「おぉっ!」

箒(1戦目から貴虎と当たるとは……!)

箒(ふっ……覚悟しておけ、貴虎!)

貴虎「……」 キョロキョロ

貴虎(更識がいない……どこへ行った?)

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく

そのころ、整備室


簪「……」

『私の機体データ、役に立ったでしょ?』

『あぁ、おかげで間に合った』

簪(貴虎も、最初から姉さんの指示で……)

簪(……私は、あの人に勝てない。勝てっこない……)

簪(とにかく、行かなきゃ……今日だけは……)

ドーン!!
ビーッ! ビーッ!

簪「っ!? 何、今の衝撃……」

ところ変わって


真耶「織斑先生、襲撃です!」

千冬「こいつは……」

真耶「以前に現れた無人機と同じもの……いえ、発展機だと思われます」

千冬「数は?」

真耶「5機です。各アリーナのピットに出現」

真耶「待機中だった、専用機持ちの生徒が襲われています!」

千冬「くそっ……早すぎる」 ボソッ

真耶「えっ……?」

千冬「教師は生徒の避難を優先。戦闘教員は全員、突入用意!」

真耶「っ、了解!!」

千冬(やってくれるな……だが、甘く見るなよ)

アリーナ


ゴーレムA「……」 バシュン!

鈴「っ!」 サッ

鈴「はっ!」 バシュン!

ドカーン!

ゴーレムA「……」 ドウッ

鈴「っ、確かに当たったのに……」

セシリア「鈴さん、下がって!!」 ドウッ

セシリア「はぁっ!」 バンッ!

ガチャンッ
ヒュゥゥ……!

ゴーレムA「……」 バシュン! バシュン!

ドカーン!

セシリア「っ! ビットが……!!」

鈴「何なのよ、コイツ……!?」

別のアリーナ


ゴーレムB「……」 ブンッ

ラウラ「ハッ!」 ヴォン!

ガキィィ……!

ゴーレムB「……」 ググッ

ラウラ「くっ……!」

ゴーレムB「……!」 ガキン!

ラウラ「何っ!?」

ゴーレムB「……」 キィィ……!

シャル「ラウラ、下がって!」 ドウッ

ゴーレムB「……」 バシュン!

シャル「くぅっ……!」

整備室


簪「一体、何が起きて……」

ヒュゥゥ……
ドーン!!

簪「ひゃっ!」

ゴーレムD「……」

簪「なに……なんなの……!?」

ゴーレムD「……」 ギロッ

ズシン ズシン

簪(イヤ……助けて、誰か……!)

ゴーレムD「……」 グワッ

簪「っ、貴虎!!」

「呼んだか?」

ゴーレムD「!?」 クルッ

貴虎「ハァッ!」 ズバッ

ゴーレムD「……!」 グラッ

簪「あっ……貴虎……!!」

ゴーレムD「……」 ドウッ

貴虎「逃すか」 ドウッ

ゴォォォ……!

貴虎「随分と空高く逃げるな。だが……」

ゴーレムD「……」 クイッ

貴虎「……ん?」

バチッ

貴虎「っ、何!?」

バチッ
バチバチッ

貴虎「斬月……!」

ゴーレムD「……」 ニヤッ

貴虎「っ! お前は、なぜ……!!」

シュゥゥ……

貴虎(斬月が、消えていく……!)

貴虎(ダメだ……落ちる!!)

貴虎「うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

ヒュゥゥ……

貴虎(終わるのか……俺は、ここで……)

貴虎(また、何も守れずに……!)

簪「貴虎!!」 ゴォォォ……!

貴虎「っ、更識!!」

ガシッ

簪「貴虎、大丈夫!?」

貴虎「……あぁ、何とか……」

貴虎「……今度は、お前に助けられたな」

簪「貴虎……私も、一緒に戦う!」

貴虎「あぁ……礼を言う」

貴虎「それと、すまないが、一旦地上に降ろしてくれ」

ゴーレムD「……」 ドウッ

簪「っ、来る!!」

貴虎「ある程度の高さなら、受け身が取れる! ギリギリまで引きつけたら、俺を落とせ!!」

簪「でも……!」

貴虎「心配するな。俺も、お前も……」

貴虎「更識、お前ならできる!!」

簪「っ! ……わかった、やってみる!!」 ドウッ

別のアリーナ


ゴーレムC「……」 ブンッ ブンッ

箒「はっ!」 ガキン! ガキン!

楯無「もらったわ!」 ドウッ

グサァッ!

ゴーレムC「……!」 ググッ

楯無「っ、なんて硬い……!」

楯無「箒ちゃん、背部展開装甲オン! 私を押して!!」

箒「は、はい!」 ドウッ

箒「楯無さん!」 ガシッ

楯無「今よ!!」 ゴォォォ……!

ゴーレムC「!」

楯無「このまま無人機の装甲を突き破るの!」

箒「ですが……!」

楯無「いいから、やりなさい!!」

ゴーレムC「……!!」 ガシッ

楯無「くっ……これでも、喰らいなさい!!」 バババババッ

ゴーレムC「!!」

楯無「まだまだ……お姉さんの奥の手は、これからよ!」 ガチャン

バシャッ!
ゴゴゴゴ……!

箒(っ、装甲が……!)

ゴーレムC「……」 ブンッ

ザクッ

楯無「っ……箒ちゃん、全て防御に回しなさい!」

楯無「巻き込まれるわよ!!」

箒「でも……!」

楯無「大丈夫。お姉さんは、不死身なのよ……!」 ガチャン

楯無「ミステリアス・レイディの最大火力、受けてみなさい!!」 ゴゴゴゴ……!

箒「っ! ダメ!!」

楯無「ミストルテインの槍、発動っ!!」 ブンッ

キン……ッ
ドガーン!!

……
…………

貴虎「っ、今の爆発は……」

ゴーレムD「……」 ブンッ

簪「危ない!」 ガキン!

簪「ここは私が!」

貴虎「……すまない、任せる!」

簪「うん、任せて」 ドウッ

ゴーレムD「……」 ドウッ

簪「貴虎は、傷つけさせない……!」

貴虎「更識……」

貴虎「くっ……来い、斬月!」

シーン……

貴虎(やはり無理か……よりによって、こんなときに……!)

貴虎(何か、他に使える装備は……) ピッ ピッ

貴虎「っ!? 何だと……!!」

貴虎(消えている……一部のロックシードが……)

貴虎(メロン、ブドウ、イチゴ、マンゴー……どれも、この世界に来てから、俺が使ったアームズばかりだ……)

貴虎(一体、何が起きている……!?)

ところ変わって


真耶「敵ISの腕部から、未知のエネルギー放出を確認!」

真耶「シールドバリア展開に障害が……っ、絶対防御が無効化されています!!」

千冬「対IS用IS、というわけか……!」

アリーナ


ゴーレムD「……」 バババババッ

簪「っ……」 サッ

簪(さっきの爆発は……)

簪(望遠システム、作動)ピッ

楯無『……』 グタッ

簪「っ! あっ……!!」

簪(そんな……姉さん……!?)

簪「うそっ……イヤッ!!」

ゴーレムD「……」 バシュン! バシュン!

簪「よくも……よくも!!」 ドウッ

簪「うわぁぁああああ!!」 ブンッ ブンッ

ゴーレムD「……」 ガキン! ガキン!

簪「あぁぁぁああああああ!!!」 ブンッ!

ゴーレムD「……」 スッ

ガキィィ……!
キンッ!

簪(っ! 薙刀が……!!)

簪「まだ!!」 ガシッ

ゴーレムD「!」

簪「荷電粒子砲、展開!」 ガチャン

簪「許さない……許さない!!」 キィィィ……!

バシュン! バシュン!

ゴーレムD「……」

ヒュゥゥ……
ドーン!

ゴーレムD「……」 ギギギギ……

簪「コア! あれを吹き飛ばせば……!」 カチッ

シーン……

簪「っ、どうして!?」

打鉄弐式『ウェポンパワー:0%』

簪「そんな……」

ヒュゥゥ……
ドンッ!

ゴーレムE「……」

貴虎「っ! 更識、後ろだ!!」

簪「っ!?」

ゴーレムE「……」 バシュン!

簪「あぁぁ!!」 バタッ

貴虎「更識!! くっ……!」

ゴーレムD「……」 ギロッ

貴虎「っ、今度は俺か……」

ゴーレムD「……」 ズンズン

貴虎「斬月……!」

シーン……

貴虎「くっ……」

貴虎(やはり、駄目なのか……!?)

貴虎(……いや、ここで折れるわけにはいかない!)

貴虎「斬月、お前が必要だ!!」

貴虎「二度と諦めない! 悪意に屈しない! その誓いを果たすために!!」

貴虎「頼む! 俺の声に……応えてくれ!!」

シーン……
……キラッ

貴虎(っ、この光は……!)

ウィィィン……
カチャン

貴虎(っ! 戦極ドライバー……!!)

貴虎「そうか……これがお前の意地か、斬月」

貴虎「……あぁ、十分だ。これさえあれば……!」

ゴーレムD「……」 ガシッ

貴虎「ぐうっ……!!」

ゴーレムD「……」 ブンッ

貴虎「うわぁぁああああ!!」 バンッ!

簪「貴虎!!」

簪(もうダメ……やっぱり、無理だったんだ……)

簪(私、なんて……)

簪(貴虎……ごめんなさい……)

簪(助けられなくて……役立たずで……)

簪(ごめん、なさい……)

ゴーレムE「……」 ズンッ ズンッ

簪「……」

簪(ヒーローなんて……この世に、いない……)

ゴーレムE「……」 ブンッ

簪「っ!!」 ギュッ

グサァ……

簪「……え?」

楯無「くうっ……」 ボロッ

簪「お姉、ちゃん……!」

楯無「……」 バタッ

簪「っ、お姉ちゃん!!」

簪「お姉ちゃん……お姉ちゃん!!」

楯無「……そう呼ばれるの、何年ぶりかしら……」

簪「どうして、こんな……」

簪「……もう、無理なんだよ……」

楯無「無理じゃないわ……」

簪「無理だよ……この世にヒーローなんか、いないんだよ……!!」

「いや、それは違う!!」

簪「えっ……?」 クルッ

貴虎「俺は知っている! 本当のヒーローを!!」

貴虎「どんな絶望にも屈しず、希望を追い続けた男を!」

貴虎「どんな悪意にも屈しず、全てを救った英雄を!!」

簪「貴虎……」

貴虎「更識、ヒーローはいる」

貴虎「それは力を持つ者ではない。都合のいい神でもない」

貴虎「最後まで諦めず、足掻き続ける者……それがヒーローだ!!」

簪「っ!!」

簪(あぁ、私は……)

簪(自分はダメだって決めつけて……誰かの助けを待ってるばかりで……!)

簪「私は、卑怯者だ……!!」

楯無「……いいじゃない。弱くても、汚くても」

楯無「卑怯でも、みっともなくても……だって、人間なんだもの」

簪「っ、お姉ちゃん……」

楯無「だからね、簪ちゃん……弱さも、小ささも、受け入れなさい」

楯無「受け入れたら、立ち上がれるわ」

簪「弱さを……受け入れる……」

貴虎「そうだ、更識……変身しろ!!」

簪「っ! 変、身……?」

貴虎「俺もかつて弱かった……いや、弱さを受け入れることが、できていなかった」

貴虎「ノブレス・オブリージュ。高貴なる者には、背負うべき義務がある」

貴虎「かつて俺は、自分の弱さのために、その責務を果たせなかった」

貴虎「だが……ある男が、俺に言った」

貴虎「人は変わることができる。それを諦めるなと」

貴虎「どんな過去を背負っていようと、新しい道を探し、先へ進むことができると!」

簪「新しい、道……」

貴虎「更識、今の自分が許せないなら、新しい自分に変われ」

貴虎「変身しろ、更識!!」

簪「っ!! 私は……私は……!」

楯無「……大丈夫よ、簪ちゃん。絶対にできるわ」

楯無「だって……私の自慢の妹だもの」 ニコッ

簪「……うん」

簪「ありがとう……お姉ちゃん、貴虎」

ゴーレムE「……」 ドウッ

簪「っ……いってくるね」 スクッ

楯無「簪ちゃん……これ、お守り……」 スッ

簪「アクアクリスタル……?」

楯無「とっておきのときに、使いなさい」

楯無「頑張れ……1年生!」 ニコッ

簪「……うん!」

貴虎「更識、もう一機は任せろ!」

簪「お願い、貴虎!」 ドウッ

ゴォォォ……!

貴虎「フッ……さて」 チラッ

ゴーレムD「……」

貴虎「待たせたな。これから、思う存分相手をしてやる」

楯無「カッコつけちゃって……見たところ、斬月が不調みたいだけど?」

貴虎「戦う手段は、ひとつだけではない」

貴虎「よく見ておけ。私の、アーマードライダーとしての姿を」

楯無「アーマード、ライダー……?」

貴虎「変身」 カチャ

ガチャッ
キュイン

『スイカ』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

楯無「今度はスイカ? 随分と大きいじゃない」

貴虎「そうでなければ、こいつには対処できまい」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズドン!

楯無「っ!? 貴虎くん!」

貴虎「慌てるな、私はこの中だ」

ガシャッ
ウィィィン……

『スイカアームズ!』

ガチャン!
ガコーン!

『大玉・ビッグバン!!』

楯無「っ、スイカが変形して……ISに?」

貴虎「あぁ、似たようなものだ」

『ヨロイモード!』

貴虎(久しぶりだな……まさか、この世界でアーマードライダーに変身する日が来るとは)

貴虎(本来なら、使ったロックシードが全て消失しているという現状、新たなアームズの使用は控えるべきなのだろう)

貴虎(だが、ISとしての斬月が使えない今、この状況を打破するには……これにかけるしかない!)

貴虎「いくぞ……!」 グッ

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく

ゴーレムD「……」 バシュン!

貴虎(スイカ双刃刀!) ブンッ

ガキン!

ゴーレムD「……」 ブンッ

貴虎「ハッ!」 ブンッ

ガキィィ……!

ゴーレムD「……」 ググッ

貴虎「っ……舐めるな!」 ドンッ

ゴーレムD「ッ……」 グラッ

貴虎「ハァッ!」 ズバッ

ゴーレムD「!」

貴虎「フンッ!」 ザシュッ

ゴーレムD「!!」

貴虎「まだだ!」 ズバァッ!

ゴーレムD「……」 ヨロヨロ

貴虎「……っ!」 ジャキッ

ゴーレムD「……」 ドウッ

貴虎「甘い!」 ピッ

『ジャイロモード!』

ウィィィン……
ガチャン!

貴虎「逃げられると思うな……!」 ドウッ

ゴォォォ……!

ゴーレムD「……」 バシュン! バシュン!

貴虎「……」 サッ サッ

貴虎「その厄介なブースターは、破壊させてもらおう」 カチッ

バババババッ
ドカーン!

ゴーレムD「!」 ヒュゥゥ……

貴虎(このまま、重力に任せて押しつぶす!) ピッ

『大玉モード!』

ウィィィン……
ガチャン!

貴虎「ハァァアアアアッ!!」

ヒュゥゥ……
ズドーン!!

ゴーレムD「……」 ビクッビクッ

貴虎「……」 ピッ

『ヨロイモード!』

ウィィィン……
ガチャン!

貴虎「終わりだ」 スッ

ザシュッ
ジャキン

『ソイヤッ!』

ドンッ!
ヒュンヒュン……!

『スイカスカッシュ!!』

貴虎「……っ!」 ドウッ

貴虎「ハァッ!!」 ズバァッ!

ゴーレムD「……」

ギギギギ……
ドガーン!!

貴虎「ふん……」 カチッ

シュワァァ……

楯無「さすがね、貴虎くん」

貴虎「……まぁ、こんなものだ」

貴虎「それよりも……」 チラッ

貴虎(更識、そっちは大丈夫か……?)

上空


ゴーレムE「……」 バババババッ

簪「くっ……」 サッ

簪「打鉄弐式、マニュアル誘導システム、起動!」 ピッ

簪「『山嵐』の弾道ミサイル数48! 全ての軌道、マニュアル制御開始!」

ガチャン!

簪「力を貸して、打鉄弐式!!」 カチッ

ドドドドド……!
バシュゥゥ……

ゴーレムE「!」

シュゥゥ……!
ボンッ! ボンッ!

ドカーン!!

ゴーレムE「……!」 ドウッ

簪「まだ来るの!?」

ゴーレムE「……」 バシュン! バシュン!

箒「はっ!」 ドウッ

ガキン! ガキン!

箒「っ、紅椿! 見せてみろ、お前の力を!!」 ガチャン

紅椿『装備展開:穿千』

紅椿『穿千:出力可変型ブラスター・ライフル』

箒「ええい、わけのわからない説明はいい!」 バッ

箒「左腕、もらったぞ!!」 バンッ!

ズバァッ!

ゴーレムE「!」

箒「任せた!」

簪「はぁっ!」 カチッ

ドドドドド……!
バシュゥゥ……

簪「アクアクリスタル……お願い!」

ボンッ! ボンッ!
ドカーン!!

ゴーレムE「ッ……」 ギギギギ……

簪「っ!? 効いてないの!?」

ピピッ

楯無『簪ちゃん……』 ザザッ

簪「っ、お姉ちゃん?」

楯無『お守りの出番ね……!』 パチンッ

ボンッ!

ゴーレムE「!!」

簪「っ! アクアクリスタルが……!!」

ボンッ! ボンッ!

ゴーレムE「……」

キィィィ……!
ドガーン!!

簪「あっ……やった……!」

簪「やったよ、お姉ちゃん!!」

楯無『イェーイ……!』 グッ

ヒュゥゥ……
スタッ

貴虎「終わったようだな」

簪「うん……ありがとう、貴虎」

貴虎「あぁ、私も礼を言う。よく戦ってくれた、更識」

簪「っ! うん!」

箒「貴虎、他のアリーナにも敵が!」

貴虎「わかっている。だが……すまないが、助けには行けない」

楯無「大丈夫よ、貴虎くん。他のコたちだって、専用機持ちなんだから」

貴虎「……そうだな。あいつらの実力を信じよう」

そのころ、各アリーナ


鈴「はぁっ!」 ズバッ!

ゴーレムA「……」 バタッ

鈴「ふぅ……セシリア」

セシリア「えぇ、終わりましたわね」

……
…………

シャル「はっ!」 グサッ!

ゴーレムB「……」 バタッ

シャル「やった……!」

ラウラ「あぁ……!」

ガシッ

シャル「みんなも無事かな?」

ラウラ「心配はいるまい」

シャル「……そうだね」

それから、しばらく経って


真耶「やはり、無人機の発展機……コアは未登録、回収できたのはふたつです」

千冬「……政府には、全て破壊したと伝えろ」

真耶「ですが、それでは学園を危険に晒すことになります!」

千冬「おいおい……私を誰だと思っている?」

千冬「学園のひとつやふたつ、守ってやるさ」

千冬(……命をかけて、な)

ところ変わって、保健室


楯無「ん……」 パチッ

簪「あっ、お姉ちゃん!」

楯無「簪ちゃ……っ!」 ムクッ

簪「動いちゃダメ! 傷、浅くないから……」

楯無「うん……」

楯無(こうして、簪ちゃんと話すの、何年ぶりだろう……)

楯無(あのとき、貴虎くんにお願いしたおかげかな……)

楯無(私、どうして彼にお願いしたのかしら……)

楯無「……」

簪「……あのね、お姉ちゃん」

楯無「ん?」

簪「……今まで、ごめんなさい!」

楯無「……」

簪「私、ダメな妹だから……」

楯無「……そんなことないわ」 ナデナデ

簪「っ!」

楯無「あなたは、私の大切な妹。とても強い、私の妹」

簪「っ……お姉ちゃん……!」 ポロッ

簪「お姉ちゃん……お姉ちゃん!!」 ポロポロ

楯無「……」 ナデナデ

そして後日、貴虎の部屋の前


簪「……」

コンコン
ガチャ

貴虎「誰だ……っ、更識か」

簪「あの……貴虎、これ」 スッ

貴虎「これは?」 ガサガサ

貴虎「……ヒーロードラマのDVD?」

貴虎(仮面ライダー……どこかで見たような姿だ)

簪「その……もし、よかったら……一緒に、見ないかなって……」

貴虎「……あぁ、すまん。今は……」

楯無「貴虎くーん、お客さんって誰ー?」 スッ

簪「え?」

楯無「あっ」

貴虎「っ……なぜ出てきた……」

簪「お姉ちゃん!? どうして、貴虎の部屋に……」

楯無「あっ、えっと……違うの、簪ちゃん。これは……」

簪「もしかして、お姉ちゃんと貴虎って……!!」

楯無「違うわ! 誤解よ、簪ちゃん!!」

貴虎(随分と慌てているな……珍しい)

貴虎(まったく、勝手に部屋に入るからだ。こいつには、いい薬だろう)

貴虎「……」

貴虎(先日の襲撃以来、斬月は起動しなくなった)

貴虎(案の定、スイカのロックシードも消えてしまった)

貴虎(俺は、この世界で戦う術を失った)

貴虎(だが……だからといって、絶望したわけではない)

貴虎(依然として、明らかになっていない謎が、数多く残っている)

貴虎(無人機の襲撃、亡国機業[ファントム・タスク]、織斑マドカ……)

貴虎(それらを紐解いていくことで、再び斬月が使えるようになるかもしれない)

貴虎(そうだ、俺は諦めない)

貴虎(全ての謎を解き明かし、必ず向こうの世界へ戻ってみせる!)

今回はここまで
次回は『第四話 ワールド・パージ』

次はOVAの内容だから、見たことない人にはわかりにくいかもしれない
あと、謎を解き明かすとか言ってるけど、このssはISのアニメ2期を下敷きにしてるから、そっちで明かされなかった謎は宙ぶらりんになると思う

それじゃ、続き投下していく
大変長らくお待たせして、本当に申し訳ない

何度も書き直したから、ところどころ描写が雑かったりくどかったりするかもしれない
そういう部分はノリで読んでほしい

『第四話 ワールド・パージ』


束「……」 ピッ ピッ

ピコン

束「おぉっ!」

束「うーん、そっかそっか。あそこにあるのかー」

ピピッ

???『束さま、パンが焼けました』

束「はいはーい!」 ピョンッ

タタタッ

束「お待たせー!」

束「わぁーっ、いい匂いだねー!」 スンスン

???「……」 ニコッ

束「で、クーちゃん。ちょっとお使い頼まれてくれないかなー?」

???「はい、なんなりと」

束「もー、堅いよ! クーちゃんは、束さんのことを『ママ』って呼んでいいんだよ?」

???「……すみません」

束「それで、お使いっていうのは……」 チラッ

束「わぁ! 今日のパンも美味しそう!」 パクッ

???「……」

束「うん、これこれ! うまいぞー!」 モグモグ

束「で、届けものをしてほしいんだよね」 ゴクッ

???「……はい」

ところ変わって、IS学園の食堂


箒「……」 ジーッ

セシリア「……」 ジーッ

鈴「……」 ジーッ

ラウラ「……」 ジーッ

簪「……あ、あの……」

簪(なに、この状況……)

鈴「で?」

シャル「まぁまぁ。鈴、落ち着いて」

シャル「ね? 簪さん、怯えちゃってるし」

ラウラ「やめろ、シャルロット。本当ならば、拷問か自白剤の投与を行いたいのを、私はギリギリ耐えているのだぞ」

簪「えぇっ……!?」

シャル「そういうこと言わないの」

シャル「簪さん。これ、どうぞ」 コトッ

シャル「喉、乾いたでしょ?」

簪「あ……ありがとう」

シャル「ふふっ……」 ニコッ

シャル「……それで、実際どうなのかな?」 ギロッ

簪「ひっ……」 ビクッ

簪「えっと……何が……?」

バンッ

箒「だ、だからだな! 貴虎と……だな!!」 ガタッ

セシリア「つ、付き合ってますの!?」 ガタッ

簪「っ!」 カァッ

簪「わ、私と貴虎は……そういうのじゃ……」

簪「それは、その……希望がないわけじゃ、ないけど……」

簪「……とにかく、そういうのじゃ……」

箒「……そ、そうか」

鈴「はぁ……」

ラウラ「……フッ」

簪「あの、えっと……」

シャル「あははっ。ごめんね、簪さん」

セシリア「どうやら、思い過ごしだったようですわね」

箒「すまなかったな、更識……さん」

簪「あっ……簪で、いい」

鈴「じゃあ、あたしらも呼び捨てでいいから」

簪「っ、うん!」

ラウラ「せっかくの同学年だ。今度、放課後に実戦訓練でもどうだ?」

簪「あっ……うん。ありがとう」 ニコッ

シャル「いいね、それ。けど……」

セシリア「それは、もう少し先になりそうですわね」

箒「この間の無人機の襲撃で、専用機は全部修理に回されてしまったからな」

鈴「パーソナルロックモードで、当分ISが使えないっていうのは、面倒よね……」

シャル「貴虎に至っては、学園の外までメンテナンスに行っちゃったしね」

簪「うん。あのときも……貴虎の斬月は、あまり良くなさそうだった」

ラウラ「待ち遠しいな。やはり貴虎とは、万全の状態で決着をつけなければ……」

バンッ

箒「っ! 何だ!?」

セシリア「照明が……!」

ガタンッ ガタンッ

簪「シャッターまで……!」

ラウラ「……シャルロット」

シャル「うん……緊急用の電源にも切り替わらないし、非常灯もつかない。おかしいよ」

ピピッ

千冬『専用機持ちは全員、地下特別区画へ集合。マップは転送する』

鈴「なんかヤバそうね……」

箒「……行こう、みんな」

貴虎「倉持技研……ここか」

貴虎(あの襲撃事件をきっかけに、俺は斬月の不調を織斑に知られてしまった)

貴虎(それから、学園で複数の検査を受けたが……結局、その原因は明らかにならなかった)

貴虎(そして、その結果を受けて……織斑から、ここで修理を受けるよう命じられた)

貴虎(何でも、斬月の開発元は、一応ここということになっているらしい)

貴虎(もっとも……サガラの用意したこの機体が、まともに修理できるかは疑問だが……)

貴虎(それでも、今のこの状況は、俺にとって非常にまずい。考え得る対応は、全て試してみるべきだろう)

貴虎「……」 テクテク

貴虎(暗いな……人の気配もない)

貴虎「……誰かいないのか?」

パッ

貴虎(っ、照明がついた……) クルッ

???「ヒヒッ!」 バッ

貴虎「っ!」 サッ

???「ヘイヘイ、そこのイケメン。ワタシの部屋でイイコトしようぜぇ?」 スッ

貴虎「……」 ガシッ

???「おっと、さすがに反応が早いなぁ」 パッ

???「アハハッ! 呉島クンだねぇ?」

貴虎「何者だ?」

???「ワタシの名前は篝火ヒカルノ。倉持技研第二研究所の『所長』だよ」

貴虎「……そうか」

ヒカルノ「話は聞いてるよ。なんか不調なんだって?」

貴虎「あぁ。斬月……私の専用機がな」

貴虎「一度、学園でも調査したが、原因を知ることはできなかった」

ヒカルノ「そのデータは、あらかじめもらってるよん。見た目の数値だけなら、万全って感じなんだけどねぇ」

貴虎「だからこそ、こうして専門の機関に依頼したい」

ヒカルノ「オッケーオッケー。IS本体の展開ができないんだよねぇ?」

貴虎「その通りだ。装備の展開は、まだ辛うじてできているが……」

貴虎(ロックシードに関しては、可能な限り情報を伏せておこう。不要な問題を発生させないためにも、な)

ヒカルノ「なぁるほどねぇ。まっ、とにかくコッチで見てみないことには、わからないな」

貴虎「時間がかかりそうだな」

ヒカルノ「そりゃそうだよぉ。キミは釣りでもして来なさい」

貴虎「いや、私はひとまず学園へ戻る」

ヒカルノ「そう? んじゃ、終わったら連絡入れよっか」

貴虎「構わん……あぁ、それと」

ヒカルノ「んー? なーんか気になるコトでもある?」

貴虎「装備に関してだが……既に外して、学園に置いてきている。よって……」

ヒカルノ「おっとぉ……ん、オッケー。じゃ、それは必要になったら、持ってきてもらうよ」

貴虎「あぁ。手間をかけさせるが、よろしく頼む」

貴虎(さて……斬月のことは、一旦ここに任せよう)

貴虎(調べなければならない謎は、未だ数多く残っている。時間を無駄にするわけにはいかない……)

そのころ、IS学園
地下特別区画


シャル「わぁ……」

箒「地下に、こんな場所があったなんて……」

コツコツ

千冬「全員、揃っているな」

鈴「はい!」

千冬「では、状況を説明しておく」

千冬「現在、学園の全てのシステムがダウン、ハッキングを受けているものだと断定する」

ピピッ

真耶『今のところ、生徒に被害は出ていませんが……何としても、学園のコントロールは取り戻さねばなりません』

真耶『そこで、皆さんにはこれから、ISコアネットワーク経由の電脳ダイブをしていただきます』

セシリア「電脳ダイブ……」

鈴「それって、もしかして……」

ラウラ「IS操縦者の保護神経バイパスから、電脳世界へと仮想可視化しての侵入……というやつか」

シャル「理論上可能なのは知ってるけど……」

箒「……」

千冬「各人スタンバイ、作戦を開始する!」

全員「「了解!」」

千冬「更識簪は、ダイブのバックアップを」

簪「はい」

……
…………

ゴォォォ……

箒「これが、電脳ダイブ……」

鈴「これってアレみたいよね。ほら、人間ドックだっけ?」

シャル「CTスキャンのこと?」

ピピッ

千冬『無駄口を叩くな』

ラウラ「……」

簪『それでは、仮想現実の世界に接続します』

簪『皆さんは、システム中枢の再起動に向かってください』

簪『では……始めます』

ピッ

『エントリー』

ピカーン
サァァァ……

箒(っ、光が……)

箒(意識が……遠のく……)

……
…………

簪「電脳ダイブ、成功しました」

千冬「よし……さて」 チラッ

楯無「……」 スッ

千冬「お前には、別の任務を与える」

楯無「何なりと」

千冬「まもなく、何らかの勢力が学園にやって来るだろう」

楯無「……排除、ですね」

千冬「そうだ。今のあいつらは戦えない」

千冬「悪いが、頼らせてもらう」

楯無「はい」

それから、電脳世界


箒「……ん……」 パチッ

セシリア「ここは……」

シャル「……何なんだろう、このドア」

ラウラ「おあつらえ向きに、5つあるな」

鈴「……入れ、ってこと?」

ピピッ

簪『多分、そう』

簪『この先は通信が安定しないから、各自の判断で中枢へ』

箒「了解した」 ピッ

ガチャ
ウィィィン……

鈴「っ、開いた……」

箒「……行こう」 スッ

セシリア「えぇ……皆さん、お気をつけて」 スッ

鈴「そうね。こうなりゃ、一丁やってやりましょ」 スッ

シャル「うん、頑張ろう」 スッ

ラウラ「健闘を祈る」 スッ

シュゥゥ……
ガチャン

……
…………

???『ワールド・パージ、開始』

それから、鈴の電脳世界?


鈴「ん……」 パチッ

鈴「……あれ!?」 ガタッ

鈴「何よ、ここ……学校?」 キョロキョロ

鈴「これ、中学のときのセーラー服……!」 サワサワ

鈴「っ……甲龍が、なくなってる……」

鈴「……こりゃ、罠ね」

ガラッ

鈴「っ!」 バッ

貴虎?「よう、鈴」

鈴「た、貴虎!?」

鈴(『今の』じゃない……あの頃の、中学のときの……)

貴虎?「……どうした?」

鈴「いや、えっと……何?」

鈴「そもそも、なんであたしのこと『鈴』って……」

貴虎?「なぜ、だと……?」

貴虎?「お前が、そう呼べと言ったんだろう?」

鈴「あたしが……?」

貴虎?「あぁ。俺と付き合い始めたときだ……まさか、忘れたのか?」

鈴「つ、付き合う!?」

鈴「付き合うって……あたしと貴虎が!?」

貴虎?「……本当に、どうした? 具合でも悪いのか?」

鈴「べ、別に……大丈夫」

鈴(どういうこと? ここは、そういう電脳世界なの?)

貴虎?「そうか……なら良かった」

貴虎?「実は……今日、鈴の家に行こうと思ってな」

鈴「えっ!?」

貴虎?「いいだろう、鈴?」

鈴「……うん」 コクッ

鈴(明らかに、おかしいのに……でも……)

鈴(なんでだろう……なんだか、気持ち良くて、逆らえない……)

鈴(そうよ……この世界こそ、あたしの……)

……
…………

???『ワールド・パージ、完了』

……
…………

ザーッ

鈴「ハァ……ハァ……」 タタタッ

ガラッ

鈴「ふぅ……」 ビシャビシャ

貴虎?「まさか、いきなり降り出すとはな……」 ビシャビシャ

鈴「本当ねー。あぁ、もうグショグショ……」

パサッ

鈴「あっ、タオル……」

貴虎?「少し動くな。拭いてやる」 フキフキ

鈴「う、うん……ありがと……」

貴虎?「体も拭いてやろう、鈴」

鈴「っ!? 何言ってんのよ、バカ!」 バッ

貴虎?「フッ……可愛いヤツめ」

鈴「もう……!」 タタタッ

ガラッ
ピシャン

鈴「ハァ……」 グデッ

鈴「……とにかく、着替えないと」 スクッ

ガラッ

鈴「ひゃっ!?」

貴虎?「鈴、シャワーを借りたぞ」

鈴「こ、ここ、あたしの部屋……っていうか、なんか着なさいよ!」

鈴(見ちゃった……貴虎の、裸……!!)

貴虎?「……」 ズンズン

鈴「ちょっ……貴虎……!」

貴虎?「……」ギュッ

鈴「あっ……あぁ……!」

貴虎?「鈴……お前が欲しい」

鈴「っ!!」

鈴「……………………うん」 ポソッ

貴虎?「……」 グイッ

ドサッ

鈴(っ、ベッドに……)

貴虎?「鈴……綺麗だ……」 サワサワ

鈴「あっ……たか、とら……」

貴虎?「脱がすぞ」 スッ

鈴「……うん……」

鈴(どうしよう……貴虎に、あたしの全部、見られちゃう……)

鈴(あたし……このまま、貴虎と……!!)

……
…………

そのころ、セシリアの電脳世界?


セシリア「……わかりました。そういうことでしたら、もっと各グループ企業が密に連絡を取り合ってくれないと、困りますわね」

『申し訳ありません。また後日、報告を』

セシリア「では」 ピッ

セシリア「ふぅ……」 スッ

チンッ

セシリア「ふふっ……」

コンコンコン
ガチャッ

貴虎?「お呼びですか、代表」

セシリア「むっ……もう! ふたりきりのときは、わかっているでしょう?」

貴虎?「フッ……そうだな、セシリア」

セシリア「そうですわ、貴虎さん……」

セシリア(呉島家は、代々オルコット家に仕える家柄で、昔からずっと一緒に……)

ザザッ

セシリア(っ……ずっと、一緒に……?)

セシリア(そう……まるで、世界から切り離されているように心地よい……)

セシリア(ずっと、浸っていたい……)

セシリア(ずっと……)

……
…………

バスルーム


セシリア「さて、と……」 パサッ

セシリア(今日は、週に一度の特別な日……)

セシリア「はぁ……」 チャポン

セシリア(そう……貴虎さんが、背中を流してくださる日……!)

コンコンコン

貴虎?『セシリア、入るぞ』

セシリア「っ、えぇ! よろしくってよ」

ガチャ

貴虎?「では、さっそく始めよう」

セシリア「はい……お願いしますわ」

貴虎?「いくぞ……」 サワサワ

セシリア「っ! 貴虎さん……!」 ピクッ

セシリア(恥ずかしいですけど、やっぱり気持ちいい……)

セシリア(わたくし……このまま、貴虎さんと……!!)

……
…………

そのころ、シャルの電脳世界?


シャル「ふんふんふーん」 フキフキ

シャル「ふぅ……よし」

「シャルロット……」 ボソッ

シャル「わぁ!」 ビクッ

シャル「お、驚かせないでください、ご主人さま……」

貴虎?「『ご主人さま』ではない」

貴虎?「一週間後には、もう『夫』だ」

シャル「ま……まだ、その……メイド、ですし……」

シャル(僕は、この呉島家に仕えるメイド)

シャル(妾の子で、いくところのなかった僕を、ご主人さま……貴虎が拾ってくれて……)

シャル(しかも、プロポーズまで……)

シャル(もうすぐ、僕と貴虎は……『ご主人さま』と『メイド』じゃなくて……)

貴虎?「なるほど……『まだ』メイドか。なら……」

貴虎?「俺の命令には、従うのだな?」

シャル「はい!」

貴虎?「フッ……」 グイッ

シャル「きゃっ……!」

貴虎?「俺だけの、愛しいメイド……」 ギュッ

シャル「あっ……貴虎……!」 ドキッ

貴虎?「俺のモノだと分かるよう、印をつけておこう……」

シャル(こ、これって……ついに、そういうことなのかな……)

シャル(僕……このまま、貴虎と……!!)

……
…………

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく

そのころ、ラウラの電脳世界?


貴虎?「……」 トントン

ラウラ「……」 ペラッ

貴虎?「……」 ジュージュー

ラウラ「……」 ズズッ

貴虎?「……」 カチャカチャ

貴虎?「……よし」 ピタッ

貴虎?「ラウラ、夕食ができたぞ」

ラウラ「おぉ、いつもすまんな」

貴虎?「気にするな。夫婦であれば、家事を分担するのは当然のことだ」

ラウラ「っ……そうだな。私たちは、ふ……夫婦、なのだから……」 テレッ

貴虎?「ところで、明日は休みだったな」 スッ

ラウラ「っ、あぁ……そうだ……」 チラッ

貴虎?「つまり……」 テクテク

ギュッ

ラウラ「っ! 貴虎……」

貴虎?「久しぶりに、お前と一緒の床につけるということか」 サワサワ

ラウラ「お、おいっ……まだ食事中だぞ……」

貴虎?「……いや、悪いが我慢できん」 グイッ

ラウラ「あっ……」

ラウラ(感じる……貴虎の、激しい熱を……)

ラウラ(私は……このまま、貴虎と……!!)

そのころ、ところ変わって


楯無「……」

ピッ

『侵入警報』

楯無「……さて、と……」

シュゥゥ……

兵士A「侵入完了」 スタッ

兵士B「こっちだ」 タタタッ

兵士C「配置につけ」 クイッ

兵士D「……なぜ、こんなに霧が……?」 カチャッ

「うふふふふ……」

兵士D「っ!」 クルッ

楯無「随分と短時間で突入してきたわね。常時監視してる、ってことかしら?」 バッ

扇子『迎賓』

兵士A「……」 カチャッ

ダダダダダッ

楯無「……」 スッ

バシャッ

兵士B「何っ!?」

兵士C「銃弾が、止まって……!」

楯無「ふふっ……なんちゃってAICよ」

楯無「ポチッとな」 パチンッ

ボンッ! ボンッ!
ドカーン!

兵士A「ぐぁああ!」 バタッ

兵士B「くっ……!」

楯無「どう? 清き熱情[クリア・パッション]のお味はいかが?」

兵士C「っ……」 スクッ

楯無「こういうのって、だーい好き……」

兵士D「うぉぉおおおお!!」 ブンッ

楯無「おっと……」 さっ

兵士A「くぅ……っ!」 カチャッ

兵士B「クソッ!」 カチャッ

ダダダダダッ

楯無「……」 ピョンッ

楯無「はぁっ!」 ブンッ

兵士C「ぐぁっ!!」 バタッ

楯無「はっ!」 ドカッ

兵士D「っ、うぅ……!!」 バタッ

楯無「ふっ……!」 ザッ

兵士A「っ!!」 バタッ

楯無「はぁああっ!!」 ドンッ

兵士B「ぐぁああっ!!」 バタッ

楯無「ふぅ……こんなもんかしら」 スッ

兵士C「うぅ……」 ガクッ

楯無「まったく、無粋なんだから……」 ピッ

楯無(国籍はアメリカに違いないわね……)

楯無(でも、システムダウンから突入までの時間差……なぜ、同時ではなかったのかしら……)

楯無「……っ! まさか、ハッキングは別の勢力……!?」

兵士D「くぅ……っ!」 カチャッ

バンッ!

楯無「がぁっ!?」 グラッ

楯無(まだ、動けたなんて……!) バタッ

ドクドク……

楯無(このままじゃ……誰か……)

楯無「たか、とら……くん……」

コツコツ……

兵士A「おい、その女を運ぶぞ……」 ヨロヨロ

コツコツ……

兵士B「あぁ……」 スクッ

「いや、それは不可能だ」

兵士C「何っ……!?」 バッ

貴虎「……」 コツコツ

兵士D「っ! あれは……斬月……!!」

貴虎「……生憎だが、今ここに斬月はない」 ピタッ

兵士A「っ……!」 バンッ!

貴虎「フンッ!」 ブンッ

ガキン!

兵士B「銃弾を、刀で……!?」

貴虎「学園へ戻ってみれば、なぜか正門にロックが掛けられ……」 カチャッ

キュィィン……
バキュン!

兵士C「ぐぁああっ!!」 バタッ

貴虎「無理に押し入ってみれば、あらゆるシステムがダウン……」

兵士D「うぉぉおおおおっ!!」 ブンッ

貴虎「ハッ!」 ズバッ

兵士D「がっ……!」 バタッ

貴虎「手がかりを求め歩いてみれば、遠くから銃声が聞こえ……」 ダッ

兵士A「っ!?」

貴虎「フッ!」 ドカッ

兵士A「うっ……」 バタッ

貴虎「何が起きたのか疑問だったが……まさか、こんなことになっていたとはな」 チャキッ

兵士B「ま、待て……!」

貴虎「ハァッ!」 ズバァッ!

兵士B「うわぁぁああああ!!」 バタッ

貴虎「ふん……」

貴虎(まったく……持ち歩くものだな、無双セイバーは)

楯無「……貴虎、くん……」

貴虎「動くな。すぐに手当てして……」

楯無「私は大丈夫……それより、この場所に行って……」 ピッ

楯無「みんなが危ない……だから、早く……!!」

貴虎「……わかった。だが、まずは……」 ガサガサ

貴虎「この水で傷口を洗え。口はつけたが、ある程度は清潔なはずだ」 スッ

貴虎「それから、このシャツを傷口に巻いて、上で結べ。圧迫し続ければ、いずれ血は止まる」 ヌギッ

楯無「ありがとう……」

貴虎「あぁ……では、行ってくる」 ダッ

楯無「……お願い、貴虎くん……」

そのころ、地下特別区画


簪「……」 ピッ ピッ

ビビッ

『WARNING』

簪「えっ……!?」

簪「これって……」 ピッ ピッ

ビビッ ビビッ
ビーッ ビーッ

簪「ダメ……このままだと、みんな戻れなくなる……!!」 ピッ ピッ

ビーッ ビーッ

簪「どうしたら……」

ウィンッ

「私だ! 誰かいるか!?」

簪「っ! 貴虎!?」 クルッ

貴虎「っ、更識!」 タタタッ

貴虎「一体、何があった?」

……
…………

ウィィィン……
ゴォォォ……

貴虎(これが、電脳ダイブのための装置……)

貴虎(更識の話を整理すると……先ほど、IS学園は何者かのハッキングによって無力化された)

貴虎(コントロール奪還のため、篠ノ之たちが電脳世界に侵入したが……同様に何かしらの攻撃を受け、目覚めることができない状態にある)

貴虎「そこで、私の出番というわけか……」

ピピッ

簪『貴虎……電脳ダイブでの、みんなの救出をお願い』

貴虎「あぁ、任せておけ」

貴虎(ミイラ取りがミイラ、という展開にならなければいいが……) チラッ

貴虎(そのために、万が一の保険として、これをつけた) スッ

カチャッ

貴虎(戦極ドライバー……これが、本当に役に立つかはわからない。だが……)

貴虎(この世界に来てから、いついかなるときも……俺は、このドライバーと共に戦ってきた)

貴虎(大丈夫だ。何かあっても、このドライバーなら……)

簪『気をつけて、貴虎……』

ピッ

『エントリー』

ピカーン
サァァァ……

貴虎(っ……似ている。この感覚は……)

貴虎(俺が、この世界に来たときと……)

電脳世界


貴虎(ここが、電脳世界……) キョロキョロ

貴虎(何もないな……この5つの扉以外は)

ピピッ

簪『その扉は、それぞれみんなが囚われてる電脳世界へ通じてる』

貴虎「なるほど……つまり、全員を助けるのなら、どれから行っても同じということか」

簪『うん』

貴虎「では……これにしよう」 スッ

ガチャ
ウィィィン……

簪『それは鈴が入った扉。だから……』

貴虎「この奥に広がるのは、あいつの電脳世界、というわけか」

貴虎(入る前に、ひとつ確認しておこう……) ガサガサ

貴虎(……確かにある。俺が、斬月から持ち出してきた装備が)

貴虎(この電脳世界が、どのようなものかは分からない。だが……これがあるなら、ひとまずは大丈夫だろう)

貴虎「さて……行くか」 スッ

シュゥゥ……
ガチャン

簪『お願い、貴虎……』

ところ変わって、鈴の電脳世界?


貴虎?「可愛いな、鈴……」 サワサワ

鈴「ま、待って……!」

貴虎?「いや、待たない」 グイッ

鈴「あっ……」

貴虎?「いくぞ、鈴」

鈴「たか、とら……」

ガラッ

貴虎「ここは凰の家……かぁっ!?」

鈴「っ! きゃぁぁああああああ!!!」

貴虎?「ん……?」

貴虎「なっ……俺、だと……?」

貴虎「……いや! そもそも何をしている、お前たち!?」

貴虎(なぜ凰は半裸で……俺に至っては全裸なんだ!?)

貴虎(そういうことか!? そういうことなのか!?)

貴虎(というより、なぜ俺と凰がこんなことを!?)

貴虎「何なんだ……この世界は!?」

鈴「た、貴虎……?」

鈴(違う……あれは、IS学園の制服……)

鈴(貴虎は目の前にいて……それが、あたしの理想で……)

鈴(理想……っ、あたしだけの世界……!?)

……
…………

???『ワールド・パージ、異常発生』

???『異物混入、排除開始』

……
…………

貴虎?「まさか、私の偽物がいるとはな……」

貴虎「偽物だと……それは貴様のことだろう!」

貴虎?「フッ……いいだろう。どちらが本物か……」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎?「決着をつけよう」

貴虎(っ! あれは戦極ドライバー……)

貴虎(それに、あのロックシードは……!)

貴虎?「変身」 スッ

ザシュッ

『ブドウアームズ!』

ピカーン

『龍ッ砲! ハッハッハッ!!』

ガシャン!

鈴「っ!? 何よ、その姿……」

貴虎「……アーマードライダー、斬月……!!」

貴虎?「ハッ!」 バキュン!

貴虎「っ……構わん、貴様がその気なら……」 サッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎「変身!」 スッ

ガチャッ
キュイン

『ウォーターメロン』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

鈴「もしかして、向こうの貴虎も……!?」

ガチャッ
キュイーン

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『ウォーターメロンアームズ!』

ガシャッ
キュイィィィン……

『乱れ玉! ババババンッ!!』

ガシャン!
ガコーン!

貴虎?「ほう、まだ他の装備を持っていたのか……」

貴虎(そうだ。これこそ、俺に残された……戦極ドライバーで変身できる、最後のロックシード)

貴虎(一度だけ使用した、あのスイカ鎧のプロトタイプ)

貴虎(あのときは、体への負担が大きく、使いこなすことができなかった……)

貴虎(だが、ここは電脳世界。ならば……体への負担など関係なく、全力を発揮できるはず……!)

貴虎「覚悟しろ。容赦はしない……!!」

貴虎?「フン……」 バキュン! バキュン!

貴虎(ウォーターメロンガトリング!) スッ

ガキン! ガキン!

貴虎?「何っ!?」

貴虎「一撃で仕留めてやる……」 スッ

ザシュッ

『ソイヤッ!』

ギュオギュオギュオギュオ……

『ウォーターメロンスパーキング!!』

キュィィン……!

貴虎(圧倒的な火力で、薙ぎ払う!)

貴虎?「っ……!」 スッ

ザシュッ

『ブドウスパーキング!!』

ドドドド……!

貴虎「無駄だ!!」 カチッ

貴虎?「っ!!」 カチッ

ダダダダダッ!!
バババババッ!!

貴虎「悪いが、パワーが違う……!」

貴虎?「くっ……!」

キィィィ……
ドガーン!!

貴虎?「ぐわぁぁぁぁああああああああ!!!!」 サァァァ……

貴虎「……」 カチッ

シュワァァ……

貴虎「このロックシードは、返してもらうぞ」 パシッ

鈴「あっ……貴虎……」

貴虎「……大丈夫か、凰」

鈴「うん……」

鈴「貴虎……その、あたし……」

貴虎「……帰るぞ」

鈴「……うん」

貴虎「……話なら、全てが終わったあとに聞いてやる」

鈴「……ねぇ、貴虎」

貴虎「ん?」

鈴「その……ありがとう」

貴虎「……あぁ」

鈴「えへへ……」

鈴(そうよね……やっぱり、貴虎はこうでないと……)

鈴(あたしの理想の貴虎なんて……絶対、あたしが好きになった貴虎じゃないんだから)

それから、扉の外の電脳世界


簪『一旦、鈴は帰還を。何らかの攻撃を受けた可能性も、否定できない』

鈴「了解」

簪『貴虎は、他のみんなの救助へ』

貴虎「言われるまでもない」

貴虎(さて……先ほどの戦闘で、わかったことがふたつある)

貴虎(ひとつは、やはりこの電脳世界では、肉体的な負担が存在しないこと)

貴虎(そして、もうひとつは……) チラッ

貴虎(どうやら敵は、俺のロックシードを奪った者と、同一らしいこと) カチャッ

貴虎(どうやって奪ったのか、それは不明だが……)

貴虎(凰の電脳世界に『偽物の俺』がいたのと、その『俺』が奪われたロックシードを使ってきたのは、無関係ではないだろう)

貴虎(もしかすると、この戦いの中で、また新たな手がかりを掴めるかもしれん……)

貴虎「よし……行こう」 スッ

ガチャ
ウィィィン……

簪『そこはセシリアの電脳世界。そこにも、さっきと同じ「偽物の貴虎」がいる』

貴虎「あぁ、そうでなければ困る」 テクテク

シュゥゥ……
ガチャン

それから、セシリアの電脳世界?


貴虎「ここがオルコットの電脳世界……なのか?」 キョロキョロ

貴虎(しかし……ここは、どう見ても脱衣所……)

貴虎(つまり、あのドアの通じる先は……)

貴虎「……まさか、な」

貴虎(まさか、この奥に俺やオルコットがいるなど……あり得ない、はず……) ガチャッ

セシリア「……………………え?」 チャポン

貴虎?「……ん?」 チャポン

貴虎「……うわぁぁぁぁああああああああ!!!!」

セシリア「えぇっ!? きゃぁぁぁあああああああ!!!!」

セシリア「ど、どうして……貴虎さんが、もうひとり……!?」

セシリア(いえ、あの姿は……あちらの、貴虎さんこそ……)

貴虎?「騒がしいな、まったく……」

貴虎「黙れッ!! そもそも貴様、なぜオルコットと風呂に入っている!?」

貴虎?「なぜ、だと……?」

貴虎?「フッ……そんなもの、決まっているだろう」 グイッ

セシリア「きゃっ……」

貴虎?「つまり、こういうことだ」

貴虎「やめろっ!! お、俺の格好で……そんな、破廉恥なことを……!」

貴虎「オルコットから! 今すぐ! その手をどけろっ!!」

貴虎?「そんなに私が気に入らないのなら……」 ザバァッ

貴虎「っ!? うわぁぁぁああああああ!!!」

セシリア「っ! きゃぁぁああああああ!!!」

セシリア(た、たたた、貴虎さんの……あ、あああれ、アレが……!!)

貴虎「貴様っ、せめて隠せ!!」

貴虎?「今、この場で決着をつけよう」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎「ベルトよりもまずタオルを巻けっ!!」

貴虎?「変身……」 スッ

ザシュッ

『イチゴアームズ!』

ピカーン

『シュシュッと! スパーク!!』

ガシャン!

貴虎「貴様……俺をここまで辱めるとは……!」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎「変身!」 ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『ウォーターメロンアームズ!』

キュイィィィン……
ガシャン!

『乱れ玉! ババババンッ!!』

貴虎「貴様だけは、絶対に許さん!!」 ダッ

今日はここまで
続きはまた明日

少し遅れたけど、投下していく

貴虎?「……」 ブンッ

貴虎「甘い!」 ガキン!

貴虎?「っ!」

貴虎「ハァッ!」 ズバッ

貴虎?「くっ……!」

貴虎「逃がさん……」 チャキッ

貴虎?「っ……ならば!」 ガチャッ

『ロックオン』

キュイィィ……

『イチ……ジュウ……ヒャク!』

貴虎「……」 ガチャッ

『ロックオン』

ゴォォォ……!

『イチ……ジュウ……ヒャク!』

貴虎?「フンッ!」 ブンッ

『イチゴチャージ!!』

貴虎「その振りかぶった隙が……!!」 ダッ

『ウォーターメロンチャージ!!』

貴虎?「っ!!」

ズバァッ……!!

貴虎?「……」 バタッ

サァァァ……

貴虎「……貴様の敗因だ」 カチッ

シュワァァ……

貴虎(これで、イチゴのロックシードも奪還できたか……) スッ

セシリア「あの……貴虎さん……」

貴虎「……」

セシリア「その……申し訳ございません。わたくし……その……」

貴虎「……無理に言葉にする必要はない」

貴虎「みなまで言わずとも、私は理解している……つもりだ」

セシリア「っ、はい……!」

セシリア「……貴虎さん、ありがとうございます」

貴虎「あぁ……あと、オルコット」

セシリア「何ですの、貴虎さん?」

貴虎「ここであったこと、見たことを……全て忘れろ。今すぐ、絶対に」

貴虎「私の、その……なんだ、ほら……」

セシリア「あっ……えぇ、わかりましたわ」

貴虎「いいか? 絶対にだ。絶対に、だぞ」

セシリア「ご安心ください、貴虎さん。絶対に忘れますわ」

セシリア(忘れられるわけありませんわ……あんなに刺激的な体験……)

セシリア(こんなに恥ずかしがられるということは、つまり……あの貴虎さんは、きっと本物の貴虎さんと全く同じだったということ……)

セシリア(つまり、貴虎さんの裸は……!!)

貴虎「……オルコット?」

セシリア「っ! な、何ですの、貴虎さん?」

貴虎「本当に、忘れるのだろうな……?」

セシリア「も、もちろんですわ! ご安心くださいませ!!」

貴虎「……」

それから、シャルの電脳世界?


貴虎(本当にオルコットは忘れるだろうか……いや、考えても仕方のないことだ)

貴虎(今はデュノアの救出に専念しよう)

貴虎「この屋敷の何処かに、あいつはいるに違いない……」

貴虎(それも、偽物の俺と共に……)

貴虎(先ほどの世界でも『俺』は、俺から奪ったロックシードを使ってきた)

貴虎(ならば、きっとここでも……)

貴虎「……残るは、この部屋だけか」 スッ

貴虎「……」

貴虎(正直、開けるのが恐い……)

貴虎(凰は俺と……その、情事に至ろうとしていて……オルコットは、あろうことか、俺と入浴していた……)

貴虎(きっと、この世界でも……デュノアと俺が、何かしら破廉恥なことを……)

貴虎「……ええい、ままよ!」 ガチャッ

貴虎?「デュノア……」 ギューッ

シャル「あっ……貴虎……」 モジモジ

貴虎「……」

貴虎(メイド姿のデュノアを……俺が後ろから抱きしめている)

貴虎(ただ、それだけだ)

貴虎(甘い空気が漂ってはいるが、どちらも、ちゃんと服を着ている……)

貴虎「……平和だな、この世界は」

シャル「ん……? 今の声……」 チラッ

シャル「っ!? 貴虎!?」

貴虎「あぁ……私だ、デュノア」

シャル「なんで……!? だって貴虎はここに……」

シャル(……ううん、違う。この貴虎は……)

貴虎?「おっと……邪魔が入ったか」

貴虎「……お前は、今までの俺に比べて、随分と『まとも』だな」

貴虎?「そういうお前は無粋だな。俺とシャルロットの、ふたりきりの時間を邪魔するとは」

シャル「えっと……」

貴虎?「少し待っていてくれ、シャルロット。この邪魔者を、ここから追い出してこよう」 チュッ

シャル「あっ……」

貴虎「……」

貴虎?「……どうした?」

貴虎「いや……どれだけ『まとも』でも、お前が偽物であることに変わりはないと思っただけだ」

貴虎(首筋にキスなど……俺がするわけがない)

貴虎(……あぁ、しないはずだ)

貴虎?「フッ……では、どちらが本物で、どちらが偽物か……」

貴虎?「決闘で明らかにするとしよう」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎?「変身」 スッ

ザシュッ

『マンゴーアームズ!』

ピカーン

『ファイト・オブ・ハンマー!!』

ガシャン!

貴虎「あぁ、受けて立とう」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎「変身」 ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『ウォーターメロンアームズ!』

キュイィィィン……
ガシャン!

『乱れ玉! ババババンッ!!』

貴虎?「フッ!」 ブンッ

貴虎「ハッ!」 ガキン!

貴虎?「ほう、頑丈な盾だ」

貴虎「ハァッ!」 ザンッ!

貴虎?「フンッ!」 ガンッ!

貴虎「くっ……」

貴虎(このマンゴー鎧の装甲は、並大抵の攻撃では傷つけられん……!)

貴虎?「やはり、我々の実力は互角か」

貴虎?「なら……一撃でケリをつけるしかあるまい」 スッ

ザシュッ

『マンゴーオーレ!!』

ゴゴゴゴ……!

貴虎「あぁ……お前の言う通りだ」 スッ

ザシュッ

『ソイヤッ!』

ギュオギュオギュオギュオ……

『ウォーターメロンオーレ!!』

キュィィン……!

貴虎?「ハァァアアアアッ……!」 ブンッブンッ

貴虎(マンゴー鎧の必殺技は、マンゴー型のエネルギーを相手に投げるもの……)

貴虎(それに対抗するには、シールドにエネルギーを纏わせ……)

貴虎?「ハァッ!!」 ブンッ

ゴォォォ……!!

貴虎(……思い切り、弾き返す!!)

貴虎「フンッ!」 ブンッ

ガキィィ……!
バチッバチッ!

貴虎「くっ……ウォォォオオオオオオ!!!」

貴虎?「っ! まさか……!!」

貴虎「ハァァアアアアッ!!」 ガキン!

ゴォォォ……!
ドガーン!!

貴虎?「フッ……さすがは俺だ……」 サァァァ……

貴虎「……」 カチッ

シュワァァ……

貴虎(これで、マンゴーロックシードも取り返したか……) パシッ

シャル「貴虎……」

貴虎「……行こう、デュノア」

シャル「……」

貴虎「……デュノア?」

シャル「……貴虎、ごめん」

貴虎「……」

シャル「僕、やらなきゃいけないことがあったのに……忘れちゃってた」

シャル「この世界が、心地よすぎて……」

貴虎「……気にするな。他の連中も、そう変わらん」

貴虎(むしろ、あいつらの方が激しかった……)

シャル「……多分ね、貴虎……あの貴虎は、僕の『願望』だったんだ」

シャル「貴虎と、もっと一緒にいたい……貴虎に、僕だけを見てほしい……」

シャル「そんな……身勝手で、汚い願望……」

貴虎「……」 ポンッ

シャル「っ……貴虎……?」

貴虎「……誰にでもあるものだ。そのような黒い感情は」 ナデナデ

貴虎「それを受け入れるのは難しい。ときには、呑まれてしまうこともある」 ナデナデ

貴虎「だが……たとえ、そうなったとしても……そのときは、信頼できる仲間が助けてくれる」 ナデナデ

貴虎「今回の、私のように……な」 ナデナデ

シャル「……うん」

貴虎「……」 ナデナデ

シャル「っ……ねぇ、そろそろ……」

貴虎「っ! あぁ、すまない!」

シャル「ううん、全然! その……嬉しかったから……」

貴虎「そうか……」

貴虎(何をしているんだ、俺は……うつむいたデュノアを見ていたら、思わず手が……)

貴虎(どこか、光実に似た部分を感じてしまったのか……庇護欲をそそられてしまった……)

シャル「……貴虎、ありがとう」

貴虎「……あぁ」

シャル「やっぱり、貴虎は優しいね」

シャル(みんなのことも、今みたいに撫でたのかな……それとも……)

シャル(僕だけ……だったり……) チラッ

貴虎「……どうした、デュノア?」

シャル「……なんでもないよ、貴虎」

シャル(もし、そうだったら……すごく嬉しいなぁ……)

それから、ラウラの電脳世界?


貴虎「さて……次はボーデヴィッヒか」

貴虎(あいつの性格上、これまでの世界とは毛色が違うと考えた方がいいだろう)

貴虎(例えば……偽物の俺と、決着がつくまで延々と闘い続けている……とか)

貴虎(いや……さすがに、それはないと思いたいが……とにかく、今までのような甘い感じではないだろう)

貴虎「……行こう」 スッ

ガチャッ

貴虎?「ラウラ……」 チュゥゥ……

ラウラ「あっ……貴虎……」

貴虎「……」

貴虎「…………」

貴虎「……………………は?」

貴虎?「……」 チロチロ

ラウラ「やめ……舌を……入れ、るな……!」

貴虎「……」

貴虎(お前もか……お前もなのか、ボーデヴィッヒ……)

貴虎(お前は……お前だけは、違うと信じていたのに……)

貴虎?「……ん?」 ピタッ

ラウラ「ん……どうした、貴虎?」

貴虎?「なぁに、客が来ただけの話だ」 ニヤッ

ラウラ「客……?」 クルッ

ラウラ「っ!? もうひとりの、貴虎だと……!?」

ラウラ(別の貴虎……いや、本当に『別』なのは……)

貴虎?「安心しろ、ボーデヴィッヒ」 グイッ

ラウラ「っ、貴虎……?」

貴虎?「我々のラブラブ新婚生活を邪魔するような虫は、早々に叩き潰してくれる」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎?「変身……!」 スッ

ザシュッ

『スイカアームズ!』

ピカーン

『大玉! ビッグバン!!』

ガシャン!

『ヨロイモード!』

ズガン!

貴虎「っ、厄介なアームズを……!」 スッ

ウィィィン……
カチャン

貴虎「変身!」 ザシュッ

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『ウォーターメロンアームズ!』

キュイィィィン……
ガシャン!

『乱れ玉! ババババンッ!!』

ラウラ「っ! IS相手に、そんな装備で挑むつもりか!?」

貴虎「舐めるな。大きさでは劣るが……」 グッ

貴虎「出力は同格だ!」 カチッ

ダダダダダッ!

貴虎?「……」 ブンッ ブンッ

ガキン! ガキン!

貴虎(っ……馬鹿正直に撃っても、弾かれるだけか)

貴虎(だが、あの巨大な鎧に、無双セイバーで傷をつけることはできない……)

貴虎(やはり、隙を見てガトリングを撃ち込むしか、勝機はない!)

貴虎?「ハァ……ッ!」 ブンッ

ラウラ「やめろ! 家が壊れる!!」

貴虎「知ったことか! ここは電脳世界だ!!」

貴虎?「いや、ラウラの言う通りだ」 ピッ

ウィィィン……

『ジャイロモード!』

ガチャン!

貴虎?「場所を移そう」 ピッ

ダダダダダッ!
ドカーン!

ラウラ「っ、屋根が……!」

貴虎「……随分とお粗末な偽物だな。それでは本末転倒だろう」

貴虎(そして、詰めが甘い……!) カチッ

ダダダダダッ!

貴虎?「何っ……!?」

貴虎「お前は知らないらしい。スイカの鎧は、確かに飛行することができるが……」

貴虎「その形態では、腹部がガラ空きになることを!」 グッ

ダダダダダッ! ダダダダダッ!

貴虎?「ぐぅ……っ!!」

貴虎「ハァァアアアアッ!!」

ダダダダダッ!
ドガーン!!

貴虎?「グォォォオオオオオオ!!!」 サァァァ……

貴虎「フン……所詮、この程度か」 カチッ

シュワァァ……

ラウラ「……」

貴虎「……ボーデヴィッヒ」

ラウラ「……儚い……夢だったな……」 パタッ

スヤァ……

貴虎「……あぁ。いい加減、目覚めるときだ」

それから、扉の外の電脳世界


貴虎「最後は……篠ノ之か」

ピピッ

簪『気をつけて。多分、箒の世界にいる貴虎が、一番強い』

貴虎「……なぜ、そう思う?」

簪『おそらく、あの貴虎は、みんなの心にある「秘めた願望」が形になったもの』

簪『対象者の精神にアクセスし、心の奥底にあるソレを見せることで、外界と遮断させてしまおうという、敵の攻撃』

貴虎「……」

簪『けど、結局それは、妄想から生まれたものでしかない。そして、みんなの「妄想の貴虎」より「本物の貴虎」の方が、もっと強かった』

簪『だからこそ、これまでの戦いで、貴虎は偽物に勝ってこれた』

簪『けど……それは逆に言えば「本物の貴虎」に近ければ近いほど「妄想の貴虎」も強くなるということ』

簪『そして、きっと……箒は他の誰よりも、貴虎のことを理解してる』

簪『だから……もしかしたら、今度の偽物は、貴虎と同じくらい強いかもしれない』

貴虎「……そうか。ならば、話が早い」

簪『え?』

貴虎「あいつの想像によって、偽物の俺の強さが変わるなら……」 スッ

ガチャ
ウィィィン……

貴虎「その想像を上回るだけの力を、発揮すればいいだけだ」

シュゥゥ……
ガチャン

簪『貴虎……』

今日はここまで
続きはまた明日

それじゃ、投下していく

そのころ、箒の電脳世界?
IS学園、道場


箒「……」 グッ

貴虎?「……」 グッ

箒「……」

貴虎?「……」

箒「……ハァッ!」 ブンッ

貴虎?「……」 ブンッ

バシン!

箒「っ!」

貴虎?「面っ!」 ブンッ

パンッ!

箒「……」 スッ

貴虎?「……」 スッ

箒「ありがとうございました」

貴虎?「ありがとうございました」

箒「やはり強いな、貴虎は」

貴虎?「箒も、中々やるようになった」

箒「ありがとう……少し疲れたな」

貴虎?「では、部屋に戻るか。私たちの部屋に」

箒「そ、そうだな……」

箒(もうすぐ、私たちはここを卒業する。鈴やセシリアは、それぞれ自国の代表として、国に帰るらしい)

箒(そして、私と貴虎は……日本代表として、同じ道を歩む……)

貴虎?「……」 ジーッ

箒「っ、なんだ……どうした、貴虎?」

貴虎?「箒を見ていた」

箒「っ! やめろ、恥ずかしい!」

貴虎?「いい加減、慣れろ。恋人になってから、どれだけ経つと思っている?」

箒「そっ、そういうことを臆面もなく言うな!」

貴虎?「フッ……すまん。箒の可愛らしい反応が見たくて、つい……な?」

箒「まったく、貴虎は……」

貴虎?「……箒」

箒「……なんだ、改まって?」

貴虎?「これからも、ずっと……私と供にいてくれるか?」

箒「何を急に……と、当然だ」

箒「私も、その……貴虎と、ずっと一緒にいたい」

貴虎?「……ありがとう、箒」

箒「あぁ、もう!! 何なのだ、さっきから!」

貴虎?「何、決意を固めただけだ」

箒「決意?」

貴虎?「あぁ……箒。私は、お前が望む限り、お前の側にいる」

箒「っ、貴虎……」

貴虎?「そのために……」 チラッ

貴虎?「この世界を脅かすものは、徹底的に排除する」

箒「……どういう意味だ、貴虎?」

ガラッ

箒「っ、誰だ?」 クルッ

貴虎「……」 スッ

箒「なっ……!?」

貴虎「やはりここにいたか、篠ノ之。そして……」 チラッ

貴虎?「……」

貴虎「……俺も」

箒「なんだ、貴様……なぜ、貴虎と同じ姿を……」

貴虎?「……来たか」

貴虎「……まるで、待っていたかのような言い方だな」

貴虎?「待っていたとも。お前が来なければ、始まらない」

箒「何を言ってるんだ、貴虎……お前、こいつが何者なのか、知ってるのか!?」

貴虎?「下がっていろ、箒。これは、私同士の問題だ」

箒「私、同士……?」

貴虎?「お前を待っていた……ここで、お前を討つために」

貴虎「……」

貴虎?「私はお前を倒す。箒のために」

貴虎「篠ノ之のため……だと?」

貴虎?「そうだ。箒の幸福を守るため……そして、それを与え続ける、この世界を守るため……」 スッ

貴虎?「俺は、お前を倒す」

ウィィィン……
カチャン

貴虎「……そうか。では、私も言おう」

貴虎「私はお前を倒す。篠ノ之のために」

貴虎?「……」

貴虎「篠ノ之を目覚めさせるため……そして、偽りの夢を与え続ける、この世界を壊すため……」 スッ

貴虎「俺は、お前を倒す」

ウィィィン……
カチャン

貴虎?「……変身」 カチャッ

貴虎「変身……!」 カチャッ

ガチャッ
キュイン

『メロン』

『ウォーターメロン』

ジジジジ……
ヒュゥゥ……

『ロックオン』

『ロックオン』

プォォォ……
ザシュッ

『ハッ!』

『ソイヤッ!』

ヒューン
ズボッ

『メロンアームズ!』

『ウォーターメロンアームズ!』

キュイィィィン……
ガシャン!

『天・下・御・免!!』

『乱れ玉! ババババンッ!!』

テレレン
ガコーン!

貴虎?「ハァァ……ッ!」 ブンッ

貴虎「……ハァッ!」 ブンッ

ガキィィ……!
ガキン!

貴虎「ハッ!」 ブンッ

貴虎?「……」 スッ

ガキン!

貴虎?「フッ!」 ドガッ

貴虎「っ……」 ヨロッ

貴虎?「ハァッ!」 ブンッ

貴虎「……」 サッ

貴虎?「っ!」 スカッ

貴虎「ハァッ!」 ズバッ

貴虎?「くっ……!」 ヨロッ

箒「なんだ、この戦いは……」

箒(ふたりの貴虎……どちらの実力も、全く互角……)

箒(一体、どっちが本物なんだ……!?)

ガキン! ガキン!

貴虎?「お前もまた、箒のために戦うと言ったな! 本当にそう思っているのなら……」 チャキッ

貴虎?「なぜ、この世界を否定する!!」 ブンッ

貴虎「なぜ、だと……!」 スッ

ガキィィ……!

貴虎?「この世界は幸福だ。箒の望むものが、望むままに手に入る」 ググッ

貴虎?「箒にとって、これ以上に幸福な世界はない! それを……」

貴虎?「なぜ、貴様は否定する!!」 ブンッ

貴虎「決まっている!!」 ブンッ

ガキン!

貴虎「お前は今、これ以上の幸福はないと言ったな! だが、それは違う!!」

貴虎「この世界は、そもそもが偽り……泡沫の夢に過ぎない!」 グッ

貴虎「そんな都合のいい幻に沈むことが、幸福などであるものか!!」 カチッ

貴虎?「幻で何が悪い!!」 スッ

ダダダダダッ!
ガン! ガン!

貴虎?「現実にあるものは、恐れと不安! そして……理不尽な悪意ばかりだ!!」

貴虎?「貴様とて、それに幾度も曝されてきただろう!?」

貴虎「っ……!」

貴虎?「そのようなものを、二度と箒に味あわせない! 二度と、箒の笑顔を失わせない!!」 ザシュッ

貴虎「ぐっ……!!」 ヨロッ

貴虎?「そのために……この世界で、永遠の幸福を与え続ける。それの……」 チャキッ

貴虎?「一体、何が間違っている!!」 ブンッ

貴虎「っ、ウォォオオオオッ!!」 スッ

ガキィィ……!

貴虎「そうか……それが貴様の考えか」 ググッ

貴虎「ならば教えてやる。恐れや不安のない、永遠の幸福など……死んでいるのと変わらん!!」 ガキン!

貴虎?「何っ……!?」

貴虎「恐れがあるからこそ、人は他者と絆を紡ぐ……不安があるからこそ、人はそれに立ち向かう……!」

貴虎「それこそが……『生きる』ということだ!!」 ブンッ

貴虎?「っ、綺麗事だ!!」 ブンッ

ガキン!

貴虎?「それはただ、理不尽な悪意を……絶望を受け入れているのと変わらん!!」

貴虎「違う! 絶望を受け入れたのは、貴様の方だ!!」

貴虎?「何だと……!」

貴虎「貴様は篠ノ之を、この偽りの世界に閉じ込めた。それは現実との戦いを……絶望との戦いを憂い、諦めたからだ!!」

貴虎?「っ……!!」

ググッ……

貴虎「俺は知っている……絶望を受け入れた先に待つものを……」

貴虎「そして……希望とは、絶望に立ち向かうことでしか、生まれないことを!」

貴虎?「っ、ぐぅ……っ!」

貴虎「貴様が本当に『俺』なら、それを理解しているはずだ!!」

ガキン!!
ズザァァ……!

貴虎?「……だとしても、俺の決意は変わらない……」

貴虎「……」

貴虎?「現実との戦いは、辛く苦しいものだ。終わりも見えず、勝ち目すら見出せない……」

貴虎?「そのような苦しみから、箒を救い出せるのなら……!」

貴虎?「どんな絶望だろうと、俺は受け入れる!!」

貴虎「……そうか。それほどのものなのか、貴様の想いは……」

貴虎?「俺は箒を守る……現実から、絶望から……」

貴虎?「そのために……ここで貴様を討つ!!」 スッ

ジャキン!

『ハッ!』

ギュオギュオギュオギュオ……

『メロンスカッシュ!!』

貴虎「あぁ……よくわかった」

貴虎「決着をつけよう」 スッ

ザシュッ

『ソイヤッ!』

キュィィン……!

『ウォーターメロンスカッシュ!!』

貴虎?「ハァァアアアア……!!」 ダッ

貴虎「……ハァッ!!」 ブンッ

キンッ!
ズバァ……ッ!!

貴虎?「……」

貴虎「……」

貴虎?「……わかっていたとも」

貴虎?「間違っているのは……」 シュワァァ……

貴虎?「俺の方だと……」 バタッ

貴虎「……」 カチッ

シュワァァ……

箒「おい……貴虎?」

貴虎「……」

貴虎?「……」

箒「決着は、ついたのか……? 一体、どっちが『本物』なんだ!?」

貴虎「……俺たちの想いは、どちらも……」

貴虎?「……」

貴虎「……確かに『本物』だった」

ゴゴゴゴゴ……

箒「っ、地震が……!」

貴虎?「行け、箒。この世界は、まもなく消える」

箒「だが……!!」

貴虎?「行け!!」

箒「っ……」 クルッ

タタタッ

貴虎「……」

貴虎?「……箒を頼むぞ」

貴虎「……あぁ、任せておけ」

貴虎?「フッ……感謝する」 サァァァ……

貴虎「……さらばだ、あり得たかもしれない『俺』……」

そのころ、とある電脳空間


???「ここが、システム中枢……」 フワフワ

スタッ

???「これが、束さまの言っていた……織斑千冬専用機『暮桜』のコア……」 スッ

ピカーン
キュイィィン……

そして、箒の電脳世界?


ゴゴゴゴゴ……

貴虎(『俺』の言っていた通り、この電脳世界は崩壊し始めた)

貴虎(だが……俺はまだ、ここを動かないでいる)

貴虎(来る気がするからだ……今回の、黒幕が)

貴虎(なぜかはわからない。だが、確信が……っ!)

貴虎「……やはり、来たか」 クルッ

???「……」

貴虎「……何者だ?」

???「お初にお目にかかります。私の名は、クロエ・クロニクル」

貴虎「なぜ、わざわざ俺の前に現れた?」

クロエ「こちらを、お返しするために」 スッ

貴虎「っ、そいつは……!」

貴虎(白い服を纏った少女……間違いない。あのとき、俺の前に現れた……!)

少女「……」 フラッ

貴虎「斬月!!」 ガシッ

少女「……」 スゥゥゥ……

貴虎(っ、戦極ドライバーの中に……)

クロエ「主の使いは果たしましたので、此度はこれにて、退場いたします」 フワッ

貴虎「っ! 待て!!」

貴虎「貴様の目的は何だ!? なぜ俺から斬月を奪った!? 貴様の『主』とは……」

パッ

貴虎「っ……逃げたか……」

貴虎(クロエ・クロニクル……あの女、一体……)

貴虎(亡国企業[ファントム・タスク]の一員か、それとも……)

貴虎「……」

貴虎(なぜ、この世界の『俺』は、あそこまで篠ノ之に執着した?)

貴虎(篠ノ之の『願望』によって生み出されたから……本当に、それだけか?)

貴虎(あいつは、他の世界の『俺』とは、明らかに異なっていた)

貴虎(他の偽物が、それぞれの願望を強く表していたのに対し……あいつは、何よりも『篠ノ之を守る』ことに固執していた)

貴虎(もしも……それが、あのクロエという女の……ひいては、その『主』の意思を反映しているとしたら……)

……やぁ、初めましてだね。世界で唯一ISが使える男、呉島貴虎くん……

貴虎「……」

それから、現実世界


箒「ん……」 パチッ

シャル「あっ、箒!」

箒「……みんな……」 ムクッ

箒「そうか……私たちは、敵の攻撃のせいで……」

シャル「貴虎のおかげで、僕たちは戻ってこれたけど……」 チラッ

セシリア「肝心の貴虎さんが、まだ目覚めませんの……」

箒「っ、何っ!?」 ガバッ

タタタッ

貴虎「……」

箒「貴虎……」

鈴「目、覚まさないわね……」

セシリア「もしかして、わたくしたちと同じように……!」

簪「それはないと思う。システムはもう、解放されたから」

シャル「じゃあ、なんで……」

ラウラ「……キス、だな」

シャル「……え?」

箒「……はぁっ!?」

鈴「キ、キスってねぇ! アンタ、唐突に何言ってるのよ!?」

ラウラ「知らないのか? 昔から、眠れる者を醒ますのは……キスだ」

シャル「それ、お伽話のお姫様限定でしょ!?」

ラウラ「何を言う。副官がさっき言っていたぞ」

鈴「その副官、クビにしなさいよ!」

セシリア「お待ちになって! 試さずに否定するのは間違ってますわ!」

シャル「いや、これは試す必要ないと思うけど!?」

箒「な、なんだ……人口呼吸的なものだな!」

シャル「箒!?」

簪「なら、私も立候補する」

シャル「簪まで!?」

簪「勘違いしないで。私は決して貴虎とキスしたいのではなく、状況を鑑みて、何やら早急な対応が求められていると判断し、ひとつの打開案として、やや強硬な姿勢を取ってみてはどうかなと思ってみたものの、自分の意思を他人に押し付けるわけにもいかず、道徳的な観点からも……」

シャル「長いよ! しかも、ちょっと理屈っぽいし!」

鈴「本当よ! セシリアの縦ロール並みにグルグルしてんじゃないわよ!!」

セシリア「鈴さん、今なんと?」

簪「だって! 私だけワールド・パージにかかってないわけで……」

簪「本当は私だって、みんなみたいに貴虎と……!!」

箒「かかりたくて、かかったわけではない!」

簪「そのわりには、みんな嬉しそうだった!」

ギャーギャー

それから、しばらく経って
保健室


貴虎「……」 パチッ

貴虎「……今、何時だ?」 ムクッ

ガサガサ

貴虎「ん?」 クルッ

「貴虎くん、起きたの?」

貴虎(カーテンの向こうに人影……声から察するに……)

貴虎「更識か」

楯無「そう、お姉さんよ」

貴虎「……傷が深そうだな。点滴の影が見えている」

楯無「いやん! 貴虎くんのエッチ!」

貴虎「何がだ……」

楯無「簪ちゃんから聞いたのよ? 電脳世界で、好き勝手にいやらしいことしてたんでしょ?」

楯無「私に無許可で! 生徒会に無許可で!」

貴虎「誤解だ。それは私ではなく、敵に作られた偽物で……」

楯無「フンだっ」 プイッ

貴虎「何を拗ねている……」

楯無「……ねぇ、貴虎くん」

貴虎「……何だ?」

楯無「ありがとう、助けに来てくれて」

貴虎「……あぁ」

楯無「嬉しかったよ」

貴虎「……」

楯無「……あのさ、貴虎くん。私の名前……『楯無』っていうのは、更識家の当主の名前だって、言ったかしら?」

貴虎「……いや、初耳だ」

楯無「貴虎くんには……私の本当の名前、教えとくね」

貴虎「……」

楯無「……更識、刀奈」

貴虎「……いい名前だ」

楯無「……ありがとう」

そして、後日
倉持技研


貴虎「世話をかけたな」

ヒカルノ「いいってことよ。結局、動くようにはなったけど、その原因は分からず終いだしねぇ」

貴虎「……そうだな」

貴虎(斬月が動かなくなった原因。それはあの女……クロエ・クロニクルと、その『主』によるものだった)

貴虎(またひとつ、新たに調べなければならないことが増えてしまった……)

貴虎(だが……それらが、全て独立した問題だとは思えない)

貴虎(亡国企業[ファントム・タスク]と織斑マドカ。無人機とクロエ・クロニクル。そして……)

貴虎(真実に近づけば、それらの黒幕との対峙は、避けられないだろう)

貴虎(だが、そこにこそ……俺にとっての『希望』があるに違いない)

貴虎(ならば、絶対に諦めず、それを掴むだけだ)

貴虎(そして必ず、元の世界へ戻ってみせる!)

今回はここまで
次回は『第五話 修学旅行』

内容的にアニメ2期の最終話まで書くけど、このssとしての最終話は別に用意するつもり
今回ほど遅くならないよう努力したい

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom