この残酷な異世界で僕は…… (8)

僕には両親はいない。
父は十数年前から続く隣国との大戦に駆り出された。
母は流行り病にかかり父が戦地に行ったちょうど1年後に他界した。
母が死んでしばらくすると大戦は終戦に向かっていった。それから1年と少し経ったが父が家に帰って来ることは無く、おそらく戦死したのだろう。
異世界暦427年。命芽吹く春。
僕は14歳にして、所謂天涯孤独ってやつになってしまったのだ。

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母が死んで1年と少しした頃、一人で生きるにはこの異世界は過酷すぎる。そう思った僕は近所の家に置いて貰うことにした。だが、馬鹿みたいに戦争を繰り返す我らが王国に生まれてきたのが運の尽きだったのだろう。
僕の村の男連中はうちだけに限らず、戦争から帰って来ることは無かったので、そうなれば必然的に働く者は女子供になり、村の生産力は落ちていくばかりだ。高い税金も相まって、村は食うことにすら困り始めていた。
さらには、太古から存在する魔物の襲撃により村の数少ない男手も徐々に削られていった。
だから、それは起こるべくして起きたのだろう。
異世界暦428年。
夏も終わりという時期。夜中に魔物の群れが村を襲い村人達は、僕を除いて一人残らず殺された。
生き残った僕は、黒煙が上がる村を後にする。

村を出てしばらく。
街道を歩いていた僕は夜営中の商人、その商人に雇われている4人の傭兵達と出会った。
その商人は王とに帰る途中だそうで、僕は事情を説明して同行してもいいかたずねた。
正直ダメもとではあったが、その商人は僕の同行を快く引き受けてくる、温かいスープと米粉で出来たパンをご馳走してくれた。食事中は傭兵達が僕を励ましてくれた。
「もう大丈夫」とか「死んだ人の分まで頑張るんだ」とか。
商人も傭兵達もこのご時世には珍しい善人のようで僕は安心しきっていた。あまつさえ、運が回ってきた、とも思った、が。とんでもない。僕は忘れていた。
この異世界に生まれてきたのが運の尽きだということを。この異世界で回っているのは幸運ではなく不運だということを。
だが不覚にも、その時の僕は温かいスープにほだされてそんな事にまで頭が回っていなかった。
その代わり商人の頭が回った。ゴキンッ、と。

突然の事態に傭兵達が叫びながら剣を抜く。僕はと言えばただ見ているだけだった。
商人の首が廻り、捻れて、千切れるのを。
傭兵達の罵声が耳に煩い。
何が商人の首をもぎ取ったのか。
答えは簡単だ。
僕の村を襲った一体が、だ。
ソイツは村で僕がお世話になった一家を殺害した。僕の目の前で。
だから、僕はソイツの事を覚えていた。
人と狼を混ぜこぜにしたようなソイツの額には、一際目立つ立派な角が生えている。
多分、コイツを見た奴は口を揃えてこう言うだろう。
悪魔、と。

それからはあっという間だった。
夜営地には4つの人だったモノが転がり残るは僕と傭兵一人。
彼は僕を庇いながら魔物と戦った。だが相手の動きが速すぎる。
今、彼だったモノは僕の足元にある。
という事は、だ。猿にでもわかることだが、次は僕ということになる。
悪魔がこちらに近付いてくる。
僕は逃げない。
勿論、戦うためではなく、別に怖くて動けない訳でもない。僕は心のどこかで安堵しているんだ。[ピーーー]る、やっと[ピーーー]るんだ、と。
だから僕は逃げない。
悪魔はもう目と鼻の先。
「……あっ」
あることに気付いて声を上げたと同時に悪魔の腕が僕の胸を貫いた。
悪魔が腕を抜く。
足に力が入らず僕は倒れた。
悪魔によって作られた僕の胸の空洞には、父と母の墓を建てれていなかったことに対する後悔が溢れていた。
異世界暦428年。名も無い少年はこの異世界を去った。

それからはあっという間だった。・
夜営地には4つの人だったモノが転がり残るは僕と傭兵一人。・
彼は僕を庇いながら魔物と戦った。だが相手の動きが速すぎる。・
今、彼だったモノは僕の足元にある。・
という事は、だ。猿にでもわかることだが、次は僕ということになる。・
悪魔がこちらに近付いてくる。・
僕は逃げない。・
勿論、戦うためではなく、別に怖くて動けない訳でもない。僕は心のどこかで安堵しているんだ。[ピーーー]る、やっと[ピーーー]るんだ、と。・
だから僕は逃げない。・
悪魔はもう目と鼻の先。・
「……あっ」・
あることに気付いて声を上げたと同時に悪魔の腕が僕の胸を貫いた。・
悪魔が腕を抜く。・
足に力が入らず僕は倒れた。・
悪魔によって作られた僕の胸の空洞には、父と母の墓を建てれていなかったことに対する後悔が溢れていた。・
異世界暦428年。名も無い少年はこの異世界を去った。

この世界に、魔王はいても勇者はいない……

To be continue……

一応これで終い。
こんな短い駄文に付き合っていただき有り難う御座いました

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