安部菜々「とれるネクタイ?」 (56)

デレマス×週刊ストーリーランドの謎の老婆シリーズです。





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菜々(私の名前は安部菜々。ウサミン星出身で17歳の現役JKアイドルです♪)

菜々(…嘘です。本当は2x歳です。)

菜々(小さい頃から憧れていたアイドルになれたのはいいけど、人気は余りありませんでした。)

菜々(あのお婆ちゃんに出会うまでは…)


<とれるネクタイ>

菜々「おはようございまーす!」

ちひろ「菜々さん、おはようございます。」

ちひろ「……おはようございます。シンデレラプロダクションの千川でございます。新人アイドルオーディションの件でお電話させて頂いたのですが…」

P「おはよう、菜々。」

菜々「おはようございます、プロデューサーさん……あれ、何でノーネクタイなんですか?」

P「いや、さっき事務所で朝食にソーセージドッグを食べていたら、ネクタイにケチャップをこぼしちゃったんだよ。」

菜々「ぷっ。意外とおっちょこちょいなんですね。」

P「笑うなよ。Yシャツには運良く付かなかったんだぞ?」

P「ネクタイは洗濯したけど、これから営業も入ってるんだよな……半乾きのままで行くか、それとも新しいのを買うか…でも今月ピンチ…」

菜々「なんだか大変ですね。」

P「菜々が心配することじゃないよ。それよりレッスン、しっかりな。」

菜々「はい!」

P「うん、良い返事だ。でもごめんな、毎日レッスンばかりで。」

菜々「そんな、いいんですよ。プロデューサーさんも営業、頑張ってくださいね。」

菜々(レッスンスタジオまで歩いていると、道端に座るお婆ちゃんを見つけました。)

菜々「お婆ちゃん、こんなところで座ってどうしたんですか?具合、悪いの?」

老婆「いらっしゃいませ。」

菜々「え…?あ、お店を開いていたんですね。『とれる「ネクタイ」売ります』?へえ、素敵なネクタイですね。プロデューサーさんに似合うかも。」

菜々「そうだ、いつもお世話になっているし、良い機会だからプレゼントしようかな。いくらですか?」

老婆「700円でございます。」

菜々「えー、安ーい!ところで、この『とれる』って、どういう意味ですか?」

老婆「はい。『とれる』という意味でございます。」

菜々「何がとれるんですか?ネクタイが取り外し出来るのは当たり前だと思いますけど…」

老婆「それは、お買いになった方だけがわかるのでございます。」

菜々「えー……でも、700円でこんなに素敵なネクタイが買えるなんてお得ですよね。よしっ。これ、買います!」

老婆「お買い上げありがとうございます。」

P「菜々。どうしたんだ戻ってきて。忘れ物か?」

菜々「いえ、お届け物です。あの、このネクタイ、ナナからのプレゼントです!」

P「ネクタイ?いいのか?」

菜々「はい!いつもお世話になっていますから、そのお礼です♪」

P「そうか、気を遣わせて悪かったな……でも本当に助かるよ。ありがとう。」

菜々「喜んでもらえてナナも嬉しいです♪」


菜々(でも、とれるって結局どういう意味なんだろう?分からないまま、3日経った朝のことでした。)

ピピピン♪ピピピン♪ピーピピン♪

菜々「ん…?誰?こんな早い時間に電話なんて……はい、もしもし?」

P「菜々、おはよう!突然だけど、仕事が入った。すぐに支度して事務所に来てくれ!集合は2時間後だ!」

菜々「え!?は、はい!」

菜々(ナナの家から事務所までは電車で1時間。ナナは急いで支度をして事務所に向かいました。)

菜々「おはようございます。」

ちひろ「あ、菜々さんおはようございます!」

菜々(3日ぶりに来る事務所は妙にバタバタしてました。その理由は、すぐにわかりました。)

菜々「……えええ!?」

菜々(3日ぶりに見るみんなの予定を書いた事務所のホワイトボードは、殆ど真っ白の状態から一気に真っ黒になっていたのです。)

菜々「な、何でいきなりこんなにお仕事が?」

ちひろ「実は、プロデューサーさんが急に仕事をたくさん取って来てくれたんですよ。」

ちひろ「スケジュール調整が大変だけど、ここはアシスタントの腕の見せ所ですよね!」

P「菜々、おはよう!事務所の前にタクシー呼んだから、すぐに行くぞ!」

菜々「は、はぁい!」

菜々(タクシーだなんて贅沢だなぁ……と思いながら、ナナはプロデューサーさんと一緒にタクシーに乗りました。)

P「悪いな、いきなり呼び出して。」

菜々「いえいえ、お仕事で呼ばれるならナナは大歓迎です!」

P「そういえば、菜々のくれたネクタイのおかげで仕事が貰えるようになったよ。」

菜々「へ?どうして?」

P「いや、テレビ局のお偉いさんも出版社の編集長も、みんなこのネクタイを褒めるんだ。」

P「そこから何だか妙に話が盛り上がって気に入られて、仕事を沢山回してくれるようになったんだよ。ありがとうな。」

菜々「ど、どういたしまして…」

菜々(プロデューサーさんにあげたのはとれるネクタイ……まさか。)

菜々「……そっかあ。とれるネクタイって、きっと仕事が取れるネクタイって意味だったんだ!」


菜々(それからも、とれるネクタイのおかげで沢山仕事が入って事務所は大忙しになりました。)

菜々(新米アイドルのナナに回ってくる仕事は多くはありません。それでも、段々アイドルらしくなっていったと思います。)

菜々(そんなある日のこと、ナナは毎月恒例の事務所ライブに出演しました。)

菜々「ウサミンパワーでー♪」

観客「ウサミンパワーデー!「メルヘンチェーンジー♪」メルヘンチェーンジ!

菜々(やっぱり1曲通しで踊るのってハードだなあ…あ、いけない。ステージの上では笑顔、えがお…)

出番終了後

P「菜々、ステージお疲れ様。」

菜々「ハァ、ハァ……水、ありがとうございます……ぷはー」

P「今日はソロだけでなくユニット曲もあるんだから、もう少し休んだらスタンバイな。」

菜々「あ、そうでしたね…うう、息が全然整いませんよぉ……」

P「…なあ菜々、厳しいことを言って悪いけれど、上を目指すにはもっと体力をつけないと難しいぞ?」

P「バラエティの収録で体を張った後にライブで歌ったり、その逆もあったり……1曲だけでへばっているようじゃ、この先はちょっとな。」

菜々「わ、わかってますよぉ……ふえぇ。」

>>8修正

菜々「ウサミンパワーでー♪」ウサミンパワーデー!「メルヘンチェーンジー♪」メルヘンチェーンジ!

菜々(やっぱり1曲通しで踊るのってハードだなあ…あ、いけない。ステージの上では笑顔、えがお…)

出番終了後

P「菜々、ステージお疲れ様。」

菜々「ハァ、ハァ……水、ありがとうございます……ぷはー」

P「今日はソロだけでなくユニット曲もあるんだから、もう少し休んだらスタンバイな。」

菜々「あ、そうでしたね…うう、息が全然整いませんよぉ……」

P「…なあ菜々、厳しいことを言って悪いけれど、上を目指すにはもっと体力をつけないと難しいぞ?」

P「バラエティの収録で体を張った後にライブで歌ったり、その逆もあったり……1曲だけでへばっているようじゃ、この先はちょっとな。」

菜々「わ、わかってますよぉ……ふえぇ。」

菜々(その夜から、ナナは体力をつけるためにジョギングを始めることにしました。)

菜々「……は、走り始めて10分も経ってないのにもう疲れてきた…休みたい…」

菜々「こ、こんなことなら……帰宅部じゃなくて、運動部に入っていれば、良かった……きゃあっ!」どんがらがっしゃーん

菜々「いたた……擦りむいちゃった。ああ、ジャージに大きな穴が…高校生の頃から使ってたのに。」

老婆「いらっしゃいませ。」

菜々「…え?」

菜々(声のした方を見ると、そこにはあのお婆ちゃんが座っていました。)

菜々「み、見てたんですか?恥ずかしいなあ。ん?『とれる「ジャージ」売ります』?今度は何がとれるんですか?」

老婆「それはお買いになった方だけが分かるのでございます。」

菜々「またそのセリフなんですね。あ、でもこのジャージ、うさぎさんのプリントがあってすっごく可愛い!」

菜々「こんな穴の空いたジャージで走るのも恥ずかしいし、思い切って新調しようかな。これ、いくらですか?」

老婆「1700円でございます。」

菜々「買います!」

老婆「お買い上げありがとうございます。」

菜々(外で着替えるわけにもいかないので、その日はランニングは諦めて寝ることにしました。)

菜々(そして、次の朝。)

菜々「今日は午前中からダンスレッスンがあったんだ……うう、昨日の疲れがまだ残ってる…」

菜々「でも、行かないと。そうだ、昨日買ったジャージ、持って行こうっと。」


みく「菜々チャン、練習着新しくしたの?うさチャンのワンポイント、可愛いにゃあ♪」

菜々「みくちゃん、ありがとうございます♪」

菜々(このジャージを着ると、不思議と元気になれる気がしました。)

菜々(ナナも女の子だから、可愛い服を着てテンションが上がっているのかな?この時は、そう思っていました。)

ベテラントレーナー「1,2,3,4!1,2,3,4!前川、遅れているぞ!最後、指先をビシッと伸ばして笑顔!はい、ストップ!」

ベテトレ「安部、今日は随分動きにキレがあるな。」

菜々「えへへ、ありがとうございます。」

みく「ぜー、ぜー……ちょ、ちょっと休憩させて欲しいにゃあ……」

ベテトレ「なんだ、前川。安部よりも先にバテるなんてだらしないぞ。……体調でも悪いのか?」

菜々「みくちゃん、大丈夫?」

みく「うー……みくはいつも通りだよ?今日は菜々チャンが妙に凄いにゃ。」

ベテトレ「ん?…ああ、レッスンを始めてからもう2時間も経っていたのか…」

ベテトレ「それなのに息を少しも切らしていないとは……安部、お前いつの間にそんなにスタミナを付けたんだ?」

菜々「え、ナナはまだ何も…」

菜々(確かに、いつもならすぐに疲れちゃうのに、今日は全然平気です。朝起きた時は怠くて仕方なかったのに…)

菜々(ジョギングの成果?いや、昨日少し走っただけだし……)

ベテトレ「……まあいい。今日のレッスンは終わりだ。」

菜々・みく「ありがとうございました!」

菜々「更衣室まで歩けますか?」

みく「う、うん、大丈夫……」

みく「はー……本当に疲れたー。みくは少し休んでから帰るにゃ。」

菜々「それが良いと思いますよ。……あ、あれ?」バタリ

みく「な、菜々チャン、どうしたの!?」

菜々「な、なんか服を脱いだ途端にどっと疲れが…」

みく「ええー!?さっきまであんなに元気そうだったのに……ああ菜々チャン、下着姿で倒れてちゃ駄目にゃ!」

菜々(そう言って、みくちゃんはナナの体にさっきまで着ていたジャージを掛けました。)

菜々「ありがとうございます……あれ?」

みく「どしたの?」

菜々「何だか、元気になってきました。」

みく「はやっ!」

菜々(でも、どうして?ジャージを脱いだ途端に疲れが押し寄せて、着たら元気になって……あ、もしかして。)

菜々「そうか……とれるジャージって、きっと疲れが取れるって意味なんだ!これがあればいくらでもレッスン出来ます!」

みく「な、菜々チャンは何を言ってるのにゃ?」

菜々「ああ、こっちの話です!あはは…」

菜々(そうだ、これを着てステージに立てばいつでも疲れ知らずの全力パフォーマンスが出来るかも…!)

菜々(って、アイドルがジャージでステージに立つわけにはいきませんよね。でも、これを着て鍛えれば体力もつくはず♪)

ストーリーランド懐かしいけど
老婆シリーズってハッピーエンド少ないから不安だな
覚えてる限りで女子大生と最終回しかないから

菜々(こうして、ナナはとれるジャージを着て運動やレッスンを沢山しました。)

菜々(その結果、歌もダンスも上手になって、ジャージを着ていない時でも疲れを余り感じないほど体力もつきました。)

菜々(プロデューサーさんはこれまでナナの体力も考えて仕事を調整していたみたいです。)

菜々(でも、体力がついてより多くの仕事をこなせるようになったので、ナナの存在は少しずつ皆に浸透してきました。)


P「菜々!今度の新曲、ゴールデンタイムの歌番組で初披露することになったぞ!」

菜々「ええ!本当ですか!?」

P「ああ、よく頑張ったな。」

菜々「やったあ!ウサミンの魅力でみんなメロメロにするチャンスですね♪」

P「……あ、電話だ。はい、お疲れ様ですちひろさん。」

P「あ、その仕事は菜々じゃなくて卯月の担当にしました。はい、よろしくお願いします。」

菜々「プロデューサーさん。ナナへのオファー、卯月ちゃんに回しちゃったんですか?ナナ、何だってやりますよぉ!」

P「いや、水着グラビアの仕事なんだよ。」

菜々「う……い、いいじゃないですか、やりましょうよ!」

P「でもなあ……菜々、俺は菜々が永遠の17歳と自称するなら、見た目だけは本当に17歳クラスであって欲しいと思っている。」

P「菜々だって多少17歳に見える自信があったから、そう名乗ってるんだろ?」

菜々「それはまあ確かに……って、名乗るって何ですか!ナナは正真正銘17歳のリアルJKですよ!ぷんぷん!」

P「……で、菜々は童顔だし背も小さいから確かにメイクや服で充分17歳には見えるんだ。」

菜々「あぁんちょっと!スルー!スルーはやめて!」

P「それでも時々実年齢を感じさせる自爆発言をするところがファンにはウケている。」

菜々「プロデューサーさんって本当に容赦ないですよね!」

P「ありがとな。」

菜々「褒めてません!」

P「まあそういうわけで、水着みたいな露出度の高い服を着るとな……」

P「実際、オーディションの時に貰った水着写真を見た時、卯月や美穂とは何と無く雰囲気が違うと思ったよ。」

P「そこを克服しないことには…まあ、今の菜々には水着グラビア以外にも仕事はたくさんあるから…」

菜々「全く、プロデューサーさんったら無茶過ぎですよ!ナナに高校生に戻れって言ってるようなものじゃないですか!」

菜々(でも、プロデューサーさんの言う通り…ナナはもう2x歳。本物の17歳には、どうしても敵いません。)

菜々「うーん、本当の若さを手に入れるにはどうしたら……そうだ、あのお婆ちゃんの商品を使えば、もしかして!」

菜々(今までナナのアイドル活動を助けてくれたお婆ちゃんの商品達。)

菜々(お婆ちゃんならきっと上手くいくものを持っているはず。ナナにはそんな確信がありました。)

菜々(そしてお婆ちゃんのお店を探して1週間経った日のこと、ようやくその姿を見つけることが出来ました。)

菜々「お婆ちゃん、お久しぶりです!お婆ちゃんの商品のおかげでナナ、大人気です!」

老婆「それはようございました。」

菜々「あの、お婆ちゃん。若くなれるような商品ってありませんか?」

菜々「ナナ、テレビでは永遠の17歳って言ってるけど本当は2x歳で……でもナナは、本物の17歳になりたいんです!」

菜々(菜々がそう言うとお婆ちゃんはどこからともなく、鳥かごを取り出しました。その中には小さくて黒いものがぱたぱたと飛んでいます。)

菜々「これは?」

老婆「とれる『コウモリ』でございます。」

菜々「とれるコウモリ…これで若くなれるんですね。いくらですか?」

老婆「77万円でございます。」

菜々「えぇ!?何でいきなりそんなに跳ね上がるの!?」

老婆「高いか安いかはお客様のお考え次第でございます。」

菜々「うぅぅ……。でも、これ以外に17歳になれる方法なんて……」

菜々「わかりましたよ。今お金下ろしてきますから。ナナが戻るまで他の人に売っちゃ駄目ですよ?」

菜々(77万円を払って、ナナはとれるコウモリを家に連れて帰りました。)

菜々「コウモリ飼ってるアイドルなんてきっといませんよねぇ…動物番組のオファーがあったら連れて行こうかな?」

コウモリ「キー、キー」

菜々「え、お腹空いた…?って、ナナ、どうしてコウモリの言葉がわかるの?」

菜々「そういえば、コウモリって何食べるのかな?もしかして血?そうだ、『コウモリ 餌』で検索して……ああっ」

菜々(菜々が携帯で検索をかけている隙に、とれるコウモリは鳥かごを開けてしまいました。そして…)

菜々「あ、ああ~……」

菜々(自分で窓を開けて、そのまま外に飛び立ってしまったのです。)

菜々「な、77万円が、空に…まだ何もしてないのに ……」

菜々「……いや、まだ無駄になったとは限りませんよね。もしかしたら若くなれる食べ物とか持ってきてくれるのかもしれないし…」

菜々(期待せずに窓を開けて待っていると、数分経って1匹のコウモリが家に入ってきました。)

菜々「う、嘘、本当に戻ってきてくれた…!?」

菜々「うわぁ、お腹パンパンですねぇ。どこで何をそんなに食べてきたの?」

菜々(その時、とれるコウモリがよたよたとナナの方に飛んで来て……ナナの唇に噛み付きました。)

菜々「いたっ……ん、んぅっ!?」

菜々(…まさかナナのファーストキスがコウモリだなんて。)

菜々「……ぷはっ。もう、何なんですか?血が……あれっ」

菜々(唇を手で拭うと、ナナはあることに気が付きました。)

菜々「え…?唇もお肌もすべすべ…こんなの久しぶり…」

菜々(慌ててナナは鏡を見ました。)

菜々「顔の作りは変わってないけど何となく雰囲気が変わったような…あ、最近出来た目尻の小皺もなくなってる。」

菜々「もしかしてナナ、本当に若くなっちゃったの!?」

菜々「そっか、とれるコウモリって、きっとナナの老化のもとを取って若くしてくれるコウモリってことなんですね!」

菜々「…でも、自分じゃ本当に17歳になれたのかよく分からないなあ。」

菜々「ここはやっぱり、明日プロデューサーさんに見てもらうのが1番かな?そうだ、そうと決まれば……」

菜々「…あれ?コウモリのお腹が元に戻ってる。なんで?」


菜々(でも次の朝、ナナはとれるコウモリの効果が自分の想像とは真逆だということを知ります。)

菜々「卯月ちゃん、おはようございます♪」

卯月「菜々ちゃん、おはようございます!あ、今日は菜々ちゃんも制服で来たんですか?」

菜々(本当に17歳になったかどうかを確かめてもらうために、ナナは1番17歳らしい服、つまり制服姿を見てもらうことにしました。)

菜々(…流石にウサミン制服で電車に乗るのは恥ずかしいので、事務所の最寄り駅のトイレで着替えてから来ましたけどね。)

卯月「菜々ちゃんの制服って初めて見るけど、凄く可愛いね。菜々ちゃんって、どこの高校に通ってるんですか?」

菜々「えへへ。ウサミン高校の制服は宇宙一可愛いって評判ですから♪」

卯月「そ、そうなんだ。」

菜々(卯月ちゃんの反応はいつも通り…まあ、卯月ちゃんは天然だしナナのこと多分本当に17歳だって思ってるから当然かな。)

卯月「な、菜々ちゃん!頭!何か黒いものが止まってますよ!」

菜々「ああ、このコウモリですか?昨日から飼い始めたナナのペットです♪」

卯月「わあ、コウモリがペットだなんて珍しいね!ヒョウくんやアッキーちゃんにも仲間が増えるね。この子の名前は何ていうんですか?」

菜々「あ、名前はまだ……え、お腹空いた?」

卯月「言葉がわかるの!?」

菜々「困ったなあ、ここには餌なんて……あれ?何で卯月ちゃんの方に飛んで行くの!?」

卯月「わ、私、餌なんて持ってないですよー!」

菜々(とれるコウモリは驚いて後ずさりする卯月ちゃんにあっという間に追い付いて、そして首筋に噛み付きました。)

卯月「きゃあっ!?」

菜々「え、まさかこのコウモリの餌って本当に血…じゃなくて。こらー!卯月ちゃんから離れなさい!」

菜々(ナナが慌ててコウモリを引き離そうとした途端、コウモリは卯月ちゃんの首筋から離れていきました。)

菜々「卯月ちゃん、大丈夫ですか?ごめんなさい…」

卯月「うう……うん、びっくりしたけど、大丈夫ですよ。」

菜々「……あれ、卯月ちゃん。何だか顔、変わってませんか?」

卯月「そう?何かついて……え、何これ!?」

菜々(卯月ちゃんは鏡で見た自分の姿に衝撃を受けています。)

菜々(それもそのはず。コウモリが離れた後の卯月ちゃんはすっかり大人になっていました。)

菜々(コウモリのせい?でも、とれるコウモリって老化のもとを取ってくれるんじゃないの?何で卯月ちゃんは老けちゃったの?)

菜々(疑問に思っていると、コウモリは今度はナナの方に飛んで来て、また唇に噛み付きました。)

菜々「もう、せっかくわかくなったのにこんどはナナをふけさせるの……あれ、まわりがなんかおっきい…」

菜々「な、菜々ちゃん、小さくなってますよ!どうしたんですか!?」

菜々「……ええー!?」

菜々(鏡に映ったナナの姿は、幼稚園児か小学生のようでした。そこでナナはようやく、とれるコウモリの本当の効果がわかりました。)

菜々(それは、他人の若さを「盗れる」ということ。)

菜々(そしてその若さをナナに与えることでナナを若返らせる、ということなのです。)

卯月「ど、どうしましょう…!」

菜々「えーっと……こ、コウモリさん、うづきちゃんからとったわかさを、かえしてあげてください!」

卯月「一時はどうなることかと思いました…菜々ちゃん、凄いコウモリ飼ってるんだね。」

菜々「言ってみるものですね…元に戻れて良かった…」

菜々(ナナの場合は元の2x歳ではなく17歳の体ですけど。)

菜々(今のこの若さも昨日コウモリが誰かから盗ってきたってことなんですよねぇ……誰のなんだろう、いいのかなあ…)

ガチャ

P「卯月。善澤さんが取材の準備が出来たそうだ。お、菜々もいたのか……いや、菜々の妹か?よく似てるな。菜々が高校生の頃はきっとこんな…」

卯月「プロデューサーさん、何言ってるんですか?菜々ちゃん本人ですよ!」

菜々「おはようございます♪」

P「……は、菜々!?嘘だろ、だって…」

卯月「……?あの、私は取材を受けに行ってもいいですか?」

P「あ、ああ、行っておいで。」

菜々(プロデューサーさんがどうして驚いているのか理解できない様子で、卯月ちゃんは別室へと行きました。)

P「驚いたよ。コスプレの制服姿に全然違和感がない……マジで菜々なのか?一体どんな魔法を使ったんだ?」

菜々「えへ。乙女の秘密です♪」

菜々「でも、これで水着もヘソ出し衣装も大丈夫ですよね?そうだ。試しに衣装部屋にあるそういう衣装、着てみましょうか?」

P「そ、そうだな。是非着て見せてくれ!けど、菜々はそんなに水着姿をみんなに見せたかったのか?実は露出するのが好きなのか?」

菜々「そんなわけないでしょ!ナナはただ、トップアイドルになるならどんな衣装でも着られるようになりたいだけです。」

P「まあ確かにな。」


菜々(それから一ヶ月後、週刊誌の水着グラビアにナナが初挑戦するという芸能ニュースが話題になりました。)

菜々(「永遠の17歳、奇跡のボディ初公開!」……ちょっと恥ずかしい見出しです。)

菜々(その後発売された雑誌もニュースの効果もあって、今年一番の売り上げを記録したそうです。)

菜々(ダンス、ボーカル、ビジュアル……全てを手に入れたナナにもう怖いものはありません。)

菜々(ナナのアイドルランクもますます上昇して、そして…)

司会者「それでは発表します。今年度のアイドルアカデミー大賞の受賞者は……シンデレラプロダクション所属、安部菜々さんに決定しました!」

菜々(遂に、トップアイドルの仲間入りを果たしたのです。)

菜々「ええっ!?プロデューサーさん!今!ナナが呼ばれたんですよね?ね!?」

P「ああ、間違いなく菜々の名前だ!」

菜々「…ううっ……ナナ、泣きそうです…」

菜々「おめでとう。でも、泣くのはまだ早いぞ。泣くのは、ファンに最高の笑顔で感謝の気持ちを伝えた後だ。」

菜々「はい!」

菜々(IA大賞に選ばれて人気だけでなく実績も手に入れたナナは、ますます大忙し!)

菜々(アイドルの消費サイクルは早いなんて言われるけど、全てが完璧になったナナの人気は衰えることはなく…)


菜々(あっという間に1年が経過しました。)

P「おめでとう菜々。今日はIA大賞受賞から1年のアニバーサリーだ。じゃんじゃん飲んでくれ。」

菜々「もう、プロデューサーさんも忙しいんだからお祝いなんていいんですよ?」

P「菜々が頑張ったことが最高の形で報われた大事な記念日なんだ。祝わせてくれよ。」

菜々「プロデューサーさんったら……でもナナは17歳だから、お酒はダメゼッタイ、ですよ♪マスターさん、シンデレラ作って頂けますか?」

P「凄いプロ意識だな。菜々…なんというか、成長したな。」

菜々(成長……そういえば、コウモリさんのお陰で若くなってから1年以上経ってることにもなるんですよね。)

菜々(ということは、ナナの見た目は今18歳?17歳じゃなくなってる?どうしよう……誰かから1年分盗る?でも誰から?)

P「どうした?ぼーっとして。疲れてるか?無理に誘っちゃったかな。」

菜々「だ、大丈夫です!ちょっと考え事をしていただけで、疲れてはいないです!全然!」

P「ならいいんだ。ところで明日の予定の変更、まだ話してなかったよな?」

菜々「何か変わるんですか?」

P「ドラマの撮影、開始時間が1時間早くなったんだ。大御所の女優さんも一緒だから、トラブルにならないようにな。」

菜々「あの人ですか…」

菜々(…そういえばこの間共演した時も、自分が大御所だからって威張って、何もしてないのにナナのこといびって、嫌な人だったなあ。)

菜々「……そうだ、あの人なら。」

P「菜々?」

菜々「あ、いえ、何でも!」

菜々(あの人なら、1年分くらい若さをもらっても……52歳が53歳になるくらい、どうってことないですよね。誰も気付かないはず。)


菜々(そして次の日。ナナはこっそりコウモリを連れて撮影現場にやって来ました。)

菜々「コウモリさん、久しぶりに若さをあげるね。1年分だけ、あの人から吸ってください。」

菜々(因みに頑張って躾をしてコウモリさんは普段は自分で虫とかを食べるようになったので、1年間何も食べていないわけではないです。念のため。)

菜々(スタッフさんとマネージャーさんの目が離れた隙にコウモリさんは一瞬で首に吸い付き、そしてすぐに戻ってきました。)

菜々(1年分だけだから、前にナナを17歳にした時ほど時間はかからず、お腹も膨れていません。)

女優「ん…?虫にでも刺されたかしら。ねえマネージャー、首の後ろ見てくれる?」

菜々「……ちゅっ」

菜々(ナナへの若さの補給も一瞬だけ。正直そこまで変わったことは実感しないけど、また17歳に戻れた安心感がありました。)

菜々「来年も忘れないようにしないと。」

菜々(次の年は、横暴な番組ディレクターさん。)

菜々(その次の年は、大ミスをした後任のプロデューサーさん。)

菜々(そのまた次の年は、生意気な新人アイドルの子……ナナは若さを盗み続けてきました。)

菜々(そして……)




この時点で嫌な予感がしてきた菜々Pはブラウザバック推奨。

男子生徒A「よお、お前今週のグラビアマガジン見たか?」

男子生徒B「見たに決まってんだろ。菜々ちゃん、可愛いよなあ。あのスベスベしたお肌ペロペロしたい…」

男子生徒A「きめえww」

男子生徒C「おはよう、何の話してんだ?」

男子生徒B「おお、おはよう。安部菜々ちゃん可愛いって話だよ。」

男子生徒C「お前好きだもんなー。でもその人もうババアじゃん。何十年も前からテレビに出てるんだろ?」

男子生徒B「あれはそういうキャラだろ?不老手術出来るようになったのは最近だし、何十年も前から芸能人やってるババアなら、あんなに若くて可愛いわけねえじゃん。」

男子生徒C「いやでもこの間不思議なことがあってさ……俺のひいばあさん、一ヶ月前に死んだだろ。」

男子生徒B「ああ。それが何か関係あるのか?」

男子生徒C「ひいばあさんずっと認知症で家族の顔も分からないくらいだったんだけど、死ぬ二ヶ月くらい前だったかな。テレビに菜々ちゃんが映った時に泣きながら懐かしそうに『菜々ちゃん…』って名前を呼んだんだよ。」

男子生徒A「ふーん。」

男子生徒C「不思議だろ?他の芸能人のことは全然分からないのに。しかもそれだけじゃないんだ。」

男子生徒C「遺品の整理してたらアルバムがあってさ、今の俺くらいの歳のひいばあさんが菜々ちゃんにそっくりな子と写っていたんだよ!」

男子生徒B「マジで!?そういやお前のばあちゃん昔芸能人だったって前に言ってたよな。まさか…」

男子生徒A「バカ。そんな大昔から見た目が今と同じなんてありえないだろ。」

男子生徒B「それ、何年前の写真なんだ?」

男子生徒C「んー、今の俺らと同じくらいとなると……100年くらい前か。」

男子生徒A「じゃあ名前が同じのそっくりさんとかだな。」

男子生徒B「だよなあ。でもその写真、見たいな。今度見せてくれよ。」

男子生徒C「ああ、それなら明日学校に持って来るよ。」

男子生徒B「サンキュー、島村。」

司会者「……今日は防災の日ということで、かつて日本が経験した大震災の映像を見て頂きました。安部さん、どうですか?」

菜々「そうですね。今はもう耐震化が進んで日本が地震の被害に遭うことはなくなったけれど、あの日の恐怖と、日本人みんなが手を取り合って助け合おうとした優しさは忘れていません。」

菜々「今ある耐震設備が役に立たなくなるほどの大きな地震が、いつか来ないとも限らない。だから大震災を経験した者として、地震の恐ろしさと助け合いの精神をみんなに伝えていきたいって思います。」

菜々「……って、おばあちゃんが言ってたのでナナもそうしようと思います!」

出演者「(苦笑)」

司会者「……重みのあるコメントをありがとうございました。」

菜々「……はあ。」

菜々(とれるコウモリで若さを奪い続けてきて、気付けば100年。)

菜々(最初は1年に1度、1年分だけ若さを貰えば良かったけれど、年が経つにつれてそれだけでは維持出来なくなって。)

菜々(今はもう1週間も放置すれば10年分くらい老け込んで、しかも元に戻すには年頃の人を老衰で死なせる程の若さが必要になっています。)

菜々(何人から若さを吸ってきたかなんて覚えていません。普通の人が今まで食べてきたパンの数を覚えていないように。)

菜々(罪悪感もありません。普通の人が動物のお肉を食べる時に罪悪感なんて持たないように…)

菜々「……でも、もういいかな。」

X代目P「辞めたい、ですか?」

菜々「前から考えていたんですよ。アイドルやるのも生き字引きか化け物みたいに扱われるのも、もう疲れちゃいました。」

菜々「プロデューサーもいくら見た目が若くてもこの年で17歳って言い張ってアイドルやるなんて、内心痛いって思ってるでしょ?」

X代目P「そんなことは……しかし、今辞められるのは……どうしても続けられないのですか?」

菜々「引き止めたって無駄ですよ。違約金がいるならいくらだって払います。」

X代目P「では、引退公演の手配を」

菜々「明日からもう来ませんから。」

X代目P「なっ……いくら何でもそれは困ります!」

菜々「私に逆らうんですか?私の若さの秘密、プロデューサーだけは知ってるでしょ?これ以上止めるなら貴方の若さも貰いますよ?」

菜々(本当はそんな気全然ありませんけど。)

X代目P「………本気なんですね……分かりました。調整はこちらの方で何とかしてみます。本当に長い間、お疲れ様でした。」

菜々「こんな形で大好きだったアイドルを引退することになるなんて、私も変わったなあ……」

菜々「17歳にこだわることをもっともっと早く辞めていたら、こんなことにはならなかったのかな。」

コウモリ「キュイ」

菜々(ずっとずっと一緒だったコウモリさん。若さを吸い続けてきたおかげか、コウモリさんも100年間変わらずに生きたままです。)

菜々「……アイドルを辞めるならもう若くなる必要もないし、この子の仕事も終わりかな。コウモリさん、逃がしてあげ……」

菜々「……いや。逃がして誰かに捕まったら、プロデューサー以外の人にこの子の秘密がバレる可能性があるよね。そうなると私、危ないかも…」

菜々「お婆さんになるまでの猶予はきっと少ししかないけど、犯罪者にはなりたくないな。……よし。可哀想だけど……」

バシッ

菜々(私は、壁に向かって思い切りコウモリを叩きつけました。)

菜々「……ふう。これでよし。もう起きてきませんよね。」

菜々「いくら若くても怪我や病気はするんだから。程度が強ければきっと死ぬはず。昔交通事故に遭った時は本当に………え、な、何これ!?」

菜々(ふと自分の手を見ると、たくさんのシワがありました。)

菜々「なに、私、どうなっちゃったの!?」

菜々(混乱している間にもシワは全身にどんどん増えていって、それにつれて声もしゃがれていきます。)

菜々「あ………やだ、いや、止めて!だ、誰か、助けて!助け……!」

菜々(そんなことを言っても私の体の変化は止まることはなく、体に力が入らなくて、足腰がガクガクして、遂にその場に倒れてしまいました。)

菜々(そしてそのまま、私は2度と目が覚めることはありませんでした。)


菜々(意識を失っても私の体の老化は止まりません。)

菜々(それはまるで、今まで他人から奪った分の若さが全て体から抜けていくかのように――――)






「―――次のニュースです。今日未明、千葉県○○市の路上で女性のミイラが発見されました。このミイラは状態から死後数百年が経過しているものと見られ……」




終わり


面白かった、元ネタはあるのかな?

おつおつ。数百年生きて気付かれなかったのか

>>40
>>1

以上です。
自分も菜々Pですが、菜々Pの方申し訳ございませんでした。

2000年頃にあった週刊ストーリーランドって短編アニメの中のシリーズ
買った購入者の中には永遠に痛めつけられたり骨だけになったりでほとんどバットエンド

自分は使えない傘くらいしかハッピーエンドの記憶はないなぁ……女子大生と最終回ってどんなん?

おつ
老婆シリーズは好きだったなあ

>>44
女子大生のは「ついているハンカチ」
最終回は「きびしい出席簿」
内容はWikipediaの「謎の老婆」の記事に全話掲載されてる。

菜々がコウモリの力で他のアイドルを助けるハッピーエンド展開も考えていたのですが、上手くまとまらず…

乙でした

後思い出したけど
彼氏を救うために医者になった奴と
陶芸家の奴

視聴者的にはバットエンドかもしれないけど本人的にはハッピーエンドの奴もあった

最後のパチンコ球はドストレートにハッピーエンドだったはず
あと本人が納得してるハッピーエンドなら……若返るパラシュートとか?



今だから言えるけど、(ストーリーランドの方で)例の老婆が何らかの方法で購入者から逆襲される展開が欲しかった(無論、成就せねば意味がない)
この捉え方だと、老婆は悪ということになるから受け入れられない人もいるだろうけど

今回のこれの場合は、自業自得臭が強い(世話になったコウモリ殺してるし)

ので、あんまり後味は悪くないなぁ

もどるシリーズとかもなかったっけ?
最後は人間からサルに戻って、大自然で幸せに暮らしましたみたいなハッピー?エンドの話
乙でした

そろそろHTML化依頼を出そうと思います。
初投稿で緊張しましたが読んで下さる方がいて嬉しかったです。ありがとうございました。

やはりこの手の話は好きだなあ

ハッピーだとどう助けてたかって気になるな
スレタイのネクタイあんま関係なかったね

>>41
気付けば100年って言ってるから数百年じゃなくて100年だね
ミイラは老化速度UPしまくったせいで数百年前のミイラみたいになっちゃったんじゃないかな

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