十時愛梨「十時の魔法」 (25)
『あのね、愛梨ちゃん。私、プロデューサーさんと恋人同士になったの……!』
それを初めて聞いた時、私はただただ友達の恋が叶ったことが嬉しくて、一緒になって喜んだ。
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何かありそうな高いブルースカイ
愛梨『え、ええ!?ほんとうっ?!すご~いっ!』
『えへへ……うん♪ありがとう』
はにかみながら笑う彼女の顔は今まで見たどんな瞬間よりもかわいくて、世界にはこんなに幸せなことで満ちているのかなんて思った。
愛梨『会いたいから焼いちゃおうアップルッパイ♪』
『君となら~♪』
ユニットを組む彼女とは普段から仲が良かった。
趣味も合って、休日には一緒にお菓子を作ったりもした。
その日も、休日も働いているあの人に差し入れをしようと、お互いの歌を口ずさんだりしながらケーキ作りをしていて、
いつもよりもどこか嬉しそうだった彼女に、何かあったの?なんて聞いてみたら、彼女も嬉しすぎて話したくて仕方ないといった風で、普段よりも饒舌に馴れ初めやら語ってくれた。
『―でね?そういうところも―♪』
愛梨『あはは♪―ああっ!お砂糖入れすぎちゃうとこでした~』
改めて言うまでもない彼のいいところとか、夢中になって話すものだからうっかり分量を間違えそうにもなったりして……。
愛梨『お祝いだから、もうちょっとっ♪』
でもせっかくだから、お手本よりたくさんいちごはのせちゃった。
事務所に着いたらお茶会でもしようか。そんなことを話しながら二人で歩いていた。
愛梨(なんて言ってお祝いしようかな~)
ふと辺りを見渡せばウィンドウに並ぶマネキンが目に入った。
愛梨(あのネクタイ似合いそうだな……。コート……去年は着てなかったっけ……?)
プレゼントはなかなか決まらず、そんなうちに目的地に着いてしまった。
事務所―
愛梨「プロデューサーさん、お疲れ様ですっ♪」
モバP(以下Pと表記)「愛梨?今日は休みだったはずなんだが―」
「お、お疲れ様ですっ……」
P「んんっ……お疲れ様。2人とも休日だろ?どうしたんだ?」
愛梨「大丈夫ですよっ。私は知ってますから♪」ボソッ
P「あ、ああそっか。愛梨には先に話すって決めたんだっけ?」
「は、はいっ……!」
愛梨「ふふっ、二人とも初々しくて可愛いですっ♪」
P「あんまりからかわないでくれ……」
P「その……いずれ公表するから、それまで内緒な?」
愛梨「は~い♪」
「ケーキ、二人で作ったからもってきたんです。お茶にしませんか?」
P「おっ、いいな。ちょうど休憩しようかと思ってたんだ」
「ふふっ、お茶入れてきますね♪」パタパタパタ……
愛梨「今は何のお仕事してたんですか?」
P「え?ああ~……本当は明日にしようかと思ってたんだけどもう言っちゃってもいいかな?」
愛梨「え?」
「お茶持ってきました~……?」
P「んんっ……、発表します」
P「……おめでとう、愛梨。初代シンデレラガールはお前だ」
愛梨「え、ええ!?」
P「そしてアニバーサリープリンセスの仕事が決まった!シンデレラガールになって最初の大仕事だぞ!」
「うわ~!すごいよ愛梨ちゃん!おめでとう!」
「あ、写真!記念写真撮りましょう!Pさん!」
P「いいな!ちょうどデジカメあるからそれで」
愛梨「私が、シンデレラになれるなんて……!」
P「頑張ってきたからな……。よくやったよ本当に」
愛梨「嬉しいです……あのっ、感動で……えっと……グスッ……えっと……なんでしたっけ……?」
「愛梨ちゃん、落ち着いて……グスッ……」
愛梨「うん。あの……すっごく嬉しいですっ!感動で……あっ、胸がいっぱいですっ!」
P「ははは、二人して泣くなよ。お祝い事だぞ?ほら、記念写真撮ろうぜ」
「じゃあ私が取りますからPさんも一緒に!」
P「え、俺も?」
愛梨「お願いしますっ。Pさんが、プロデュースしてくれたおかげですからっ!」
「それじゃ、撮りますよ~?」
愛梨「ほらPさんっ。もうちょっと寄ってくださいっ!」ムギューッ
「あ……」
愛梨「え?」
愛梨(……あ、そうか……)
P「ちょっ……!あ、愛梨……!ま、胸が―」
愛梨「や、やっぱりここじゃなくて向こうの方で撮りましょうっ!」パタパタパタ……
P「愛梨?」
愛梨「Pさんも隣でポーズ!」キリッ
P「ええ……こ、こうか?」キリッ
愛梨(もうPさんはあの子の恋人なんだから―)
愛梨「そうですっ!じゃあお願いっ♪」
「あ……う、うん!いくよ?はい、チーズ♪」
カシャッ
「はい!OKで~す♪」
愛梨「見せて見せて~♪」
愛梨(くっついたりとか、しちゃだめだよね……)
愛梨「ほらっ!かっこいいですよっ!Pさんっ♪」
P「変じゃなかったかな……あのポーズ」
「二人の顔をアップで撮ったから平気ですよ♪」
P「ポーズ意味ねぇっ!」
愛梨「あははっ♪」
P「はは……って、愛梨。また泣いてるぞ?」
愛梨「え……?」ポタッ…… ポタッ……
愛梨「へ、変だな……」ポタッ…… ポタッ……
愛梨「グスッ……ま、まだ気持ちが高ぶってるみたいです……。ちょっと顔、洗ってきますね……!」
P「おう、まあ我慢するようなことでもないか」
バタンッ
愛梨「……グスッ」
あの人の腕を抱きしめた時
その時のあの子の一瞬の表情で、ようやく気づいた。
もう今までのようなことは出来ないんだ。
彼はあの子の恋人になったのだから。
愛梨「ふ……グスッ……ああ……あああ……!」
少し距離を置かなくてはならない。
当然のことだ。
友達の恋人なんだからしょうがない。
そのことが、なんだかとても悲しくて……。
なんでもっと早く気付けなかったんだろう。
愛梨「うああ……!やだ……やだよっ……!」
私もあの人のことが好きだったんだ。
・・・
事務所―
P「改めて今日の収録お疲れ様。すごくよかったぞ愛梨」
愛梨「そうですか?えへへっ」
P「ああ!表現の幅が広がったというかさっ。前はせつない気持ちとかよく分からないって言ってたろ?」
愛梨「ふふーん。私だって成長してるんですっ!」
愛梨(…前は知らなかったけど、かなしい気持ちとか……そういうの、分かったから)
P「ははは、それ幸子か?全然似てないぞ。あいつはもっとこう、フフーン!って感じで」
愛梨「プロデューサーさんそっくりです~!」
愛梨(……楽しいな)
P「おっと、もう暗くなり始めるのも早いな。送るから準備していてくれ」
愛梨「はーいっ♪」
P「えーっと……車の鍵、鍵はー……」
愛梨「キーボードの横ですよー……あっ!」
P「おお、あった。それで、どうかしたか?」
愛梨「雪ですよプロデューサーさんっ!雪!うわぁ~♪」
P「本当だ。もう雪なんて、早いな」
愛梨「ねぇプロデューサーさんっ。今日は歩いて帰りませんかっ?」
P「え、まあそんなに遠くはないけど……」
愛梨「ほらほら~♪」グイグイ
P「ちょ、行くから待てって」
愛梨「Pさん、寒くないですかっ?」
P「ん?ああ、まだ大丈夫かな。愛梨こそ」
愛梨「私も全然寒くないですよっ!……くしゅんっ! あうっ、ちょっと寒かったみたいですっ。えへへ」
P「おいおい、帰ったらちゃんと温まるんだぞ?」
愛梨「は~い」
P「そうだ。忘れないうちに、これ」
愛梨「封筒……お手紙ですか?」
P「写真撮ったろ?現像したんだ」
愛梨「ああ……ありがとうございますっ」
P「……もう1年か。忙しかっただろ」
愛梨「そうですね~……」
愛梨「プロデューサーさんのかけてくれた魔法のおかげでこんなところまで来れちゃいましたっ♪」
P「……そっか」クスッ・・・
愛梨「……私のプロデュースで忙しくなかったですか?プロデューサーさん」
P「う~ん……まあ、そうだな」
P「充実してたよ。愛梨のおかげで」
愛梨「そうですか……♪」
P「でも、シンデレラガールだってトップアイドルへの通過点だからな」
P「これからも一緒に」
愛梨「はいっ!頑張りましょう♪」
P「ははっ」
愛梨「えへへっ♪」
愛梨「……」
愛梨(…………これがデートだったなら……)
P「……もうコートとか売ってるんだなぁ」
愛梨(寒い季節の所為だって……)
愛梨「……寒いわけですねぇ」
愛梨(飛び込んで―)
P「あ……あれ、あいつに似合いそうかな……」クスッ
愛梨(―ああ……できないや……)
・・・
愛梨「ただいま……」
愛梨(つらいなぁ……)
愛梨(好きになったのが……あの人じゃなかったら……)
愛梨(あの子とじゃ、なかったら……)
愛梨(いっそ全部、無くせたら……あ―)
ドサッ… パサ……
愛梨(―写真……)
愛梨(あの人と築き上げたこれまで……これから……)
愛梨(これを……無くす……?)
それも、やだなぁ……
・・・
愛梨「おっはようございまーすっ!」
P「おはよう。今日も元気だな」
愛梨「はいっ。…って、通過点だって言ったのはプロデューサーさんですよ~?」
P「そうだったな」クスッ
愛梨「はいっ!そーですっ♪」ニコッ
愛梨「……プロデューサーさん」
P「ん?」
愛梨「いつまでも、ずーっと!愛梨をプロデュースしてくださいねっ♪」
12時でも、解けない魔法
貴方とならそう、私はプリンセス―
お・わ・り
恐れ多くもかの曲をイメージして
・・・なかなか上達せんのう
お読みいただきありがとうございました
乙乙
個人的にはとときんは純愛が一番似合う娘だからこういうのは切ないな
乙
おっつおっつ
乙
かな子かあ・・・
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