P「ジオシティの公式イメージガールに?」(85)

 ~3月15日~ 765プロ・社長室

p「うちのアイドルたちが……ですか?」

高木「うむ。正式なオファーだ」

律子「竜宮小町ではなく、765プロ全員でですか」

p「律子もやるのか?」

律子「まさか」

高木「ははは。先方はそれでもいいというだろうがね」

p「えっと、ジオシティ、でしたか」

高木「うむ。音無くん、資料を」

小鳥「はい、ジオシティはz県の富坂市に建設中の巨大地下都市です」

律子「あぁ、第3首都計画……でしたっけ?」

p「超巨大事業じゃないか。そこのイメージガールだなんてまたとない機会だな」

小鳥「公式マスコットキャラクターのジオくんと一緒に、ポスター撮影やpvの撮影など」

高木「さらにこのジオシティの公式テーマソングも任せるという話だ」

律子「なぜこんな話が……、その、うちみたいな」

p「おいおい、飛ぶ鳥落とす勢いの竜宮小町プロデューサーが、そういうこと言うもんじゃない」

小鳥「そうですよ!竜宮小町だけじゃない、美希ちゃんや千早ちゃんもブレイク中だし!!」

p「国内最大のアイドルグループ、aek-971に対抗できるきっかけになるかもしれない」

高木「どうだね?やってみたいとは思わんかね?」

p「もちろんです」

律子「私も賛成です。765プロ全体の底上げに繋がります」

高木「決まりだ。早速返事をするとしよう」

 ~同日~ 事務所内
 
春香「これに私たちがですか!?」

真「やーりぃっ!これでボクたちも売れっ子になっちゃうな!」

真美「特設ステージ見た?すンごいよっ!!」

伊織「まだイメージだけどね」

千早「こんな所で歌えるなんて……」

p「ははは、みんな落ち着け。完成までまだ半年以上かかるみたいだしな」

春香「落ち着いてなんかいられませんよ!こんな凄い所でライブ出来るなんて!!」

やよい「うっうー!夢みたいですー!」

律子「当面の目標は決まったわね。これは竜宮小町も関係なく全力で当たるわよ」

伊織「全員でなんて久々じゃない。ちょっとワクワクしてきたわ」

真「あぁっ!早くここで思いっきり暴れたいなぁっ!ボクちょっと走ってきます!!」

p「あ、おーい、まだ美希たちに……、行っちゃったよ」

伊織「散歩に行く前の犬みたい」

律子「こら」

伊織「あずさには私から伝えておくわ」

真美「亜美にメールしよっと」

小鳥「みんなはしゃいでますねぇ」

p「こんな大仕事、初めてですからね。冗談抜きに社運がかかってますよ」

小鳥「絶対成功させましょうね」

p「はい!」

 ~10月10日~ 富坂市・韮沢区

p「思ってたよりもずっと大きいんだなぁ」

律子「こんな地下都市がもうすぐ完成だなんて……」

広報「第一期工事が、ですけどね。はい、こちらがですね、特設ステージになってまして」

p「ドーム級じゃないか……」

律子「うちの子たち、こんな大きなステージは経験ありませんよ……」

広報「竜宮小町さんでもですか?」

律子「えぇ。さすがにここまで大きいのは」

広報「凄いでしょう?この都市の自慢のひとつでもあるんですよ」

洪水がががが

p「ここで……、うちのアイドルたちが……」

律子「ふふっ。ちょっと、その、身震いしちゃいますね」

p「律子もここで踊るんだぞ?」

律子「まさか!やめてくださいよ」

広報「秋月さんも出演してくださるんですか?この街にもファンは多いですよ」

律子「いや、その」

p「ご安心を。しっかりトレーニングさせてますので」

律子「もう!」

広報「楽しみにしてますよ。さ、次はパーティー会場へご案内いたします」

p「ここでは24日に来賓への挨拶と、えぇっと」

律子「知事との写真撮影ですね。あと」

p「ジオくん」

律子「気に入ってるんですか?」

p「写真撮りたい」

律子「はいはい。2ショットで撮ってあげますよ」

広報「クリスマス当日のメインイベントは、さぞかし盛り上がることでしょうね」

律子「14日に現地入りしてpv撮影、24日に写真撮影と、25日にライブ、26日はオフ、と……」

p「リハで完璧にしないとな。今までとはスケールが違う」

律子「そうですね」

広報「最後に皆さまにご滞在していただくホテルへご案内いたします」

広報「運転手さん、ジオシティ・グランドホテルまで」

柘植「はいよ」

p「もう殆ど完成してるんだなぁ」

律子「あ、でもあそこはまだまだみたいですよ」

広報「工事はハイスピードで進められています。あっという間ですよ」

p「凄い時代になったもんだ」

律子「なんですか、それ」

柘植「お客さん、マスコミかい?」

p「芸能プロダクションです。765プロといいまして」

柘植「ほぉ。タレントさんが来るのかい?」

p「えぇ、うちのアイドルたちが」

柘植「そうかい。そりゃ凄いね」

律子「クリスマスにライブイベントも行います。良かったら」

柘植「おじさんはそんな日でも仕事ですよ」

広報「ラジオでもライブの様子が流れる予定です」

柘植「ほぉ。じゃあそいつを聞くとしましょうか」

律子「これを機に覚えていただければ幸いです」

柘植「はいよ。さ、着きましたよっと」

 ~12月14日~ 富坂市・韮沢区・ジオセクション

春香「着きましたぁっ!ジオシティですよ!ジオシティ!」

千早「写真で見るよりもずっと凄いわ……。それしか言葉が出てこないのだけれど」

雪歩「……」

真「もう地下だからこれ以上掘れないよ、雪歩」

雪歩「そ・そんなこと考えてないよぅ」

亜美「いぇ→い!亜美が一番乗りだ→い!!」

真美「ずる→い!真美も真美も!」

貴音「こうしてみると、この都市全体が巨大な穴の中にあるようなものなのですね」

美希「あふぅ、どうでもいいの。ミキもうちょっと寝てたかったな」

響「うーん、なんか落ち着かないぞ……」

p「おーい、みんなバスに乗れー」

 「「「はーい」」」

律子「修学旅行を引率してる気分だわ」

あずさ「これだけ大きかったら、迷ったら最後になっちゃうかも……」

伊織「ここでも迷うつもりなの?どんだけ迷子になるのが好きなのよ」

あずさ「違うの~。好きで迷子になるわけじゃないのよ~」

伊織「やよい?やよいは?」

小鳥「大丈夫?やよいちゃん」

やよい「うー、ちょっと酔っちゃいましたぁ……」

p「バスの前の方に座るといい。伊織、頼めるか?」

伊織「はいはい、やよいの面倒はしっかり見るわよ」

やよい「ごめんね、伊織ちゃん……」

p「もう少しの辛抱だからな。ホテルに着いたら少し休もうな」

小鳥「社長も来ればよかったのにー」

律子「テレビ中継もされますから、社長にいい所見せてあげましょう」

p「っていうか小鳥さんが来てるのがおかしいんじゃ……」

 ~12月20日~ 屋内特設ステージ

千早「天気が崩れる前に撮影終わってよかったわね」

春香「雨すごいね」

伊織「記録的な豪雨らしいわよ。さっきニュースでやってたわ」

亜美「ここ地下なんでしょ?」

千早「そうだけど?」

亜美「じゃあ上の雨が全部ここに流れてくるってこと?」

p「その心配はないさ」

真美「なんでなんで?」

律子「災害対策くらい練られているでしょ。でなきゃこんな大規模な地下都市が建設されるはずないわ」

p「さ、リハーサルを始めるぞ」

律子「ステージは広いのよ。存分に使いなさい」

p「律子もやるんだよ」

律子「やりませんよ」

千早「音の返し、もっとお願いします」

春香「うまく聞き取れないよー」

p「聞き取れない方が春香はいいんじゃないか」

律子「思っても口にしないでくださいね」

真「ここの振りもっと早くしないと」

響「もう一度最初からー」

雪歩「たん、たん、たん、はい」

やよい「たん、たん、たん、あ、すいません」

律子「もう一度、さんはい」

伊織「形になってきてるじゃない。この調子だといけるわね」

本多「すいませーん」

p「はい?」

本多「週刊報都の本多と申します」

p「あぁ、早かったですね。リハの途中なんで数人ずつの取材になりますが」

本多「いえ、忙しいのに応じてくださってありがとうございます」

p「あずささん、貴音、千早、いったんこっちに来てくれ」

あずさ「はい」

貴音「畏まりました、貴方様」

千早「……。くっ……」

p「律子、お前がついてってくれ」

律子「はい」

千早「くっ……」

本多「あの子どうしたのかしら……」

 ~12月23日~ ジオセクション・地下施設

小鳥「わぁ、立派ですねぇ」

p「いよいよ明日ですね」

亜美「美味しいご飯食べれる?」

p「この会場じゃ食べられないけど、ちゃんとみんなの分も用意されてるぞ」

真美「やったぁ!アイスある?」

p「冬なのにか?まぁ何でもあるさ」

貴音「らぁめんはあるのでしょうか」

p「それはどうだろうな。あ、すいません、ウエイターさん」

篠原「はい、なんでしょうか」

p「明日の料理でラーメンってあるんですかね」

篠原「いえ、イタリアンですから無いと思います」

p「だってさ」

貴音「まこと……ですか……」

亜美「見るからにテンション下がったね」

真美「26日はオフだから、そん時食べにいきゃい→じゃん」

貴音「それはよき考えです」

亜美「見るからにテンション上がったね」

篠原「それでは失礼します。明日のパーティーを楽しみにしておいてください」

p「ありがとうございました」

小鳥「さ、ホテルに戻りましょう」

p「この雨は結局止みそうにないなぁ」

小鳥「少し……、心配になりますね

 ~12月24日~ ジオセクション・地下施設・パーティー会場

春香「あぁー、緊張したぁ」

伊織「明日がメインなのよ?たかが挨拶くらいでなによ」

春香「そんなこと言ったって」

雪歩「あ、知事の挨拶が始まるよ」

真「すごい格好だね。黄色のスーツって」

雪歩「真ちゃん!しーっ」

真「聞こえてないよ」

響「お腹が空いたぞー。戻ってご飯にしようよ」

やよい「ごちそう……、ごちそう……」

響「ほら、やよいの目がもう見たことない感じさー」

真「そうだね、戻ろっか」

響「ちなみにハブを前にしたマングースがあんな感じさー」

春香「千早ちゃんがトイレから戻ってきたら行こっか」

伊織「アイドルはトイレなんか行かないのよ!」

春香「あ、噂をすれば」

真「……なんか慌ててる……?」

ドン!

千早「あ!すいません……」

須藤「気にしないでくれ。そんなに急ぐと危ないよ」

雪歩「杖ついてる人にぶつかってますぅ。千早ちゃんがあんなに慌てるなんて……」

千早「春香!」

藤宮「え?はい、なんでしょうか?」

千早「えっと、あの、違う春香を……」

篠原「藤宮さん」

藤宮「あっ、ごめんなさい……」

春香「なんだったのかな?」

千早「プロデューサーは!?」

春香「どうしたの?そんなに慌てて」

千早「プロデューサーはどこ!?」

真「落ち着きなよ。どうしたってのさ?」

千早「廊下の、パーティションの奥から水が流れてきて、それで」

雪歩「あ、プロデューサーですぅ」

千早「プロデューサー!」

p「……分かってる。みんな控え室に集合してくれ」

律子「……」

 ~同日~ 地下施設・控え室

p「みんな落ち着いて聞いてくれ。ついさっき、地上の羽代川が決壊したらしい」

春香「川が……」

p「従業員の指示に従って地上に避難するぞ。頼むから落ち着いて行動してくれ」

 グラグラグラ……

春香「きゃああっ!」

真「うわっ、地震?」

雪歩「真ちゃん……、怖い……」

p「全員いるな?よし、ここを出るぞ。律子、先導してくれ。俺は後ろから行く」

律子「はい」

小鳥「みんな忘れ物はないわね?コートちゃんと着てるわね?」

亜美「ごちそう食べれなかったなー」

伊織「なにを暢気な!」

p「春香、あずささんと手を繋げ」

春香「は・はい!」

あずさ「あらあら~、大丈夫ですよ~」

p「さぁ行こう」

 ガチャッ ザザザザザザ……

律子「水がもうこんなに……」

p「止まるな、行け!」

小鳥「駐車場にバスを待たせてますから、そこまで行きましょう」

 ~同日~ 地下駐車場

 バチャ バチャ バチャ

律子「バスがありました!急いでください!」

美希「こんなことになるなんて思ってなかったの……」

p「よし、みんな乗ったな?」

 グラグラグラ……

小鳥「大丈夫ね?みんないるわね?」

 グラグラグラ……

雪歩「ひっ……」

真「大丈夫。大丈夫だよ」

響「地震はダメさー。自分も怖いぞ……」

律子「確認しました。全員乗ってます」

p「よし。運転手さん、出してください」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

p「なんだ?」

 ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

千早「水が!?」

p「みんな何かに掴まれ!頭を低くするんだ!!」

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 うわああああああああ きゃあああああああああああ

 いやだあああああああ こわいよおおおおおお

 ああああああああ いやあああああああああ

 うええええええええん いたいいいい いたいよおおお

p「……う」

 いたいよおおおおおお いたいいいいいい

p「……なんだ……?何が起きた……?」

 いたいよおおお にいちゃあああん

p「誰だ…・・・。誰が……泣いてる……?」

 にいちゃあああああん ああああああああ

p「亜美?真美!?」

亜美「いたいいいいいいいい!助けて兄ちゃあああ」

p「亜美!亜美か!!どうした!?」

亜美「いたいいいいい!いたいよおおおおおお!!」

p「亜美!?亜美!くそっ、真っ暗で……バスが横転したのか!?」

真「う……、いったた……」

p「真!?みんな!起きてくれ!おい!!」

真「プロデューサー……?」

p「そうだ!携帯!携帯の明かりで」

p「亜美!待ってろよ亜美!」

p「バスの中に懐中電灯があるはずだ。どこだ……?」

p「あった!運転手さん!?運転手さん?……、っ……!!」

真「雪歩?雪歩、起きて!」

雪歩「う……」

p「真!みんなを起こせ!」

真「は・はい!雪歩!春香!千早!」

p「亜美!今助けてやるぞ!!」

亜美「いたいよお、兄ちゃああん……」

p「座席に挟まれたのか。くそっ!うおおおおお!!」

 ギギ…… ギギギ……

亜美「痛い!痛いよお!!」

律子「なに……?ここ……どこ……?」

あずさ「うう~ん……」

真「律子!みんなを起こして!!」

律子「起こす?なに?ここどこ?」

亜美「痛い痛い痛いいいいい!!」

雪歩「あっ……、あぁぁ……」

響「美希……?美希……?貴音……?」

やよい「痛いですー、おでこぶつけちゃいましたぁ」

真美「あたたたた……、なにこれぇ!?」

p「このっ!外れろおおおおお!!」

亜美「ううううう!痛い痛い!!」

 ギギギ…… バキバキバキッ

p「よしっ!亜美!もう大丈夫だぞ!」

亜美「うええええん!兄ちゃあああん!!」

p「よしよし、痛かったな。頑張ったな。もう大丈夫だからな!」

真美「なに……?亜美どうしたの?亜美!?」

p「真!懐中電灯を貸す!全員起こして無事を確認しろ!」

真「はい!」

春香「痛い……。寒い……」

千早「うっ……。何が起きたの……?」

美希「ふあぁ。どうしたの?あれ?ミキどうしてたんだっけ?」

貴音「ここは……」

真「伊織!伊織!」

伊織「うう……。もう……めちゃくちゃじゃない、これ……」

律子「小鳥さん!起きてください!小鳥さん!」

小鳥「はわわわ、なんですかなんなんですか?何が起きたんですかぁ!?」

p「みんな立てるか?怪我してないか?」

やよい「うぅー、たんこぶ出来ましたぁ」

雪歩「大丈夫……みたいですけど」

響「目ぇよし、手ぇよし。足、……よし」

真美「亜美!亜美!」

p「大丈夫だ。気絶してるだけだ」

律子「ここから……、出ましょう」

春香「はい、いたた……。ほら、千早ちゃん」

千早「ありがとう、春香」

あずさ「頭がズキズキするわ~」

p「あずささん!そっち行っちゃ駄目です!」

あずさ「え?あ、はい……」

p「真ん中のドアから降りてください、って横転してるんだった。台になります。みんな登って」

小鳥「あの……、運転手さんは……?」

p「……」

小鳥「そんな……」

p「真、亜美をおぶってまず最初に行け。その後みんなをサポートするんだ」

真「はい!行きます!」

p「真美」

真美「うん!」

p「よし、やよい」

やよい「はい!」

p「割れたガラスに気をつけろよ。次、伊織」

伊織「暗くてよく見えないわ……」

 韮沢区・ジオセクション

律子「もう18時です……。これからどうしますか?」

小鳥「携帯が通じない……。きっと基地局がやられたんだわ」

p「駅が近くにあったな。駅に向かおう」

小鳥「警察が避難誘導しています。駅に行くのが正しいみたいですね」

p「人がいないな。結構長く気絶してたみたいだけど……」

真「プロデューサー。疲れたら亜美おぶるの交代しますからね」

p「ありがとう。大丈夫だ」

春香「雨がどんどんひどく……」

千早「駅ビルの看板だわ!あれじゃない?」

律子「あぁ……。そんな……」

真美「駅もボロボロじゃん……」

雪歩「寒いですぅ……」

貴音「駅の地下に水が流れ込んだのですね……」

伊織「水がどんどん流れ込んできてるってことじゃない!このままじゃここも……!」

律子「ジオセクション自体が巨大な穴のようなものだから……」

p「駅の北口にバスが来てないか探そう。確かバス停があったはずだ」

小鳥「避難用のバスがいればいいけど……」

千早「北口に向かうと言っても、もうどこも通れそうには……」

響「立ち止まってても仕方ないさ!行動あるのみだよ!」

美希「寒いしお腹空いたし……、もうヘトヘトなの」

p「頑張るんだ。さぁ行くぞ」

やよい「はい……」

 韮沢駅・東口付近

小鳥「あっ!ヘリだ!ヘリですよ!!」

律子「ヘリが待っててくれてます!」

p「そんなに大きいヘリじゃないな。全員は無理か……」

小鳥「すいません!このヘリは避難用ですか!?」

黒服「申し訳ありませんが、このヘリは重症患者のみを乗せるように言われています」

p「この子は足を骨折しています。子供たちだけでも乗せてもらう訳にはいきませんか?」

黒服「我々は藤宮グループの私設救援隊なのです。そういった判断は……」

p「なら確認してみてください!子供がいるんです!この子たちだけでも!!」

黒服「……分かりました。ただし、その子たちだけですが」

p「ありがとうございます!充分です!!」

小鳥「やりましたぁ!」

p「よし、聞いてくれ。亜美、真美、やよい、伊織、お前たちがヘリに乗れ」

伊織「ちょっと待ってよ!私たちだけでだなんて!」

p「聞き分けてくれ、伊織。亜美は重傷だし、真美とやよいだけじゃ不安なんだ」

律子「あなたなら、この3人を任せられるわ」

伊織「そんな……!」

真美「兄ちゃん……。兄ちゃんも一緒に……」

やよい「みんな置いて私たちだけなんて……」

p「甘ったれたこと言うな!」

やよい「ひっ!」

p「ごめんな。ごめんなやよい。言うことを聞いてくれ……」

やよい「う……ううう……」

律子「さ、乗りなさい。大丈夫。明日また会いましょう」

伊織「本当に……、明日会えるの……?」

p「あぁ」

真美「兄ちゃん……」

p「亜美についていてくれ。お姉ちゃんだろ?」

真美「うん……」

伊織「分かったわ。やよい、行くわよ」

やよい「はい……」

p「頼むぞ、伊織!」

黒服「乗ってください。発進します」

p「お願いします」

富坂・高速入口付近

小鳥「これからどうしますか?」

p「高速に上がりましょう。上から目立つでしょうし、流れ込んでくる水の心配もなくなります」

律子「サービスエリアを見つけて、そこで一晩過ごしましょう。もう夜も遅いですし」

p「この天気の中、みんなを歩かせ続ける訳にはいかない」

小鳥「分かりました」

p「みんな聞いてくれ。ひとまず高速道路に上がって、サービスエリアを目指す」

律子「停電はしてないみたいだから、そこで救助を待ちましょう」

美希「ご飯あるかもなの」

p「そうだな。何より濡れたままじゃ心配だ」

春香「もうひと頑張りですね!」

p「その通りだ」

真「パーティーでちょっとでも食べてくりゃよかったな」

雪歩「そうだね」

あずさ「みんな少し安心したのかしら。顔色が戻ったように見えるわ」

小鳥「年少組は救助されたし、明日になればきっと」

貴音「そう信じましょう」

響「うぅっ」

貴音「どうしました?」

響「ちょっとトイレに……」

貴音「身体が冷え切ってしまっているのですね……」

あずさ「きっともう少しでサービスエリアよ。頑張りましょう」

千早「高速の上も結構土砂が流れ込んできてますね……」

p「当てが外れたか?でも下よりはずっとマシなはずだ」

律子「あ、あそこ!あのサービスエリアじゃないですか?」

p「間違いない。みんな頑張れ!もう少しだぞ!!」

 富坂・韮沢sa

美希「着いたぁ!もう疲れたの!ヘトヘトなの!」

響「トイレトイレ……、誰かついてきて欲しいぞ……」

律子「仕方ないわね。私が行くわ」

p「暖を取れるものと、あと食糧を探そう。タオルもだ」

春香「はい!」

千早「タオルはこっちにあったわ」

小鳥「非常時だもん、使わせてもらいましょう」

あずさ「水は……、出ないのね」

美希「電気とガスは大丈夫みたいなの」

小鳥「エアコンもつきますね」

p「ミネラルウォーターがあるはずだ。それを沸かそう」

小鳥「えへへ~、見てくださいこれ!」

美希「レトルトカレーにレトルトのご飯なの!」

春香「カップラーメンもありました!」

貴音「らぁめん!!」

p「よし、いいぞ」

真「段ボール、裏にいっぱいありましたよ」

雪歩「新聞もいっぱいありました」

p「うん。じゃあみんなタオルで身体拭いて、ご飯にしよう」

真「覗かないでくださいよ?」

p「それだけ元気なら大丈夫だな。春香、千早、お湯をいっぱい沸かすんだ」

千早「はい」

春香「これだけ水があれば大丈夫だよね」


響「おー、みんな何やってるんだー?」

律子「段ボール敷いて新聞紙に包まって寝るのかしら?前代未聞のアイドルだわ」

貴音「らぁめん……。あぁらぁめん……」

p「律子も響もタオルで身体を拭くんだ。風邪をひくぞ」

小鳥「まずは熱いコーヒーを、と」

雪歩「プ・プロデューサー、お茶淹れましたけど」

p「助かるよ、雪歩。……あぁー!美味しい!!」

雪歩「えへへ……」

美希「お財布、お財布……、焼きおにぎり買うの……。お財布……」

p「ほら」

美希「ハニー愛してるの!」

p「俺もだよ」

あずさ「ご飯が出来ましたよ~」

小鳥「見事にレトルトと冷凍食品尽くしですねー」

響「でもなんか……ご馳走に見えるぞ!」

千早「本当ね」

真「お腹空いたぁー」

貴音「らぁめん……!!」

春香「みんな食べよう!」

 「「「いただきまーす!」」」

真「うわ、結構あったかい」

雪歩「新聞紙って暖かいんだね」

千早「……」

春香「千早ちゃん、ベッドが届くまで段ボールで寝てたりしてないよね?」

千早「まさか」

春香「ならいいけど」

千早「ちゃんと上は布団だったわ」

春香「なら……いいけど」

律子「さ、みんな少しでも休んでおきなさい。中々寝られないと思うけど」

響「美希もう寝てるぞ」

貴音「あっという間でございました」

律子「もう、服着たままじゃない。響、脱がせてあげなさい」

あずさ「濡れた服着たままじゃ風邪をひいちゃうわ」

小鳥「明日には少しでも乾いているといいんですけどね」

律子「天候も回復してくれれば……」

真「伊織たち……、無事に着いたかなぁ」

雪歩「……」

春香「……」

千早「……」

p「大丈夫だよ」

律子「そうよ。大丈夫よ」

p「ところでですね、律子さん」

律子「なにか?」

p「もう目隠し取ってもいいでしょうか」

律子「いいですよ。みんな新聞紙に包まってますし」

p「やれやれ……」

p「……」

貴音「貴方様」

p「わっ!びっくりしたぁ」

貴音「まだ……お休みになられないのですか?」

p「貴音こそ、もう寝てたものとばかり」

貴音「目が覚めてしまいましたので」

p「そうだよな、そうそう眠れないよな……」

貴音「貴方様は何を……、これは……地図?」

p「あぁ、脱出ルートをな、考えていた」

貴音「ここで救助を待つ算段では?」

p「それがな、見てくれ」

 プツン ザザー

tv「……富坂水害の続報です。富坂市の西部は浸水が激しく、2~3日中にも富坂市全体が水没する恐れが……」

貴音「なんと……」

p「より助かる確率を高めるのなら、北か東に逃げるべきだと思ってな」

貴音「どこを目指すのですか?」

p「東インターを目指す。救助のヘリがそこから出ているらしい」

貴音「結構……離れているのですね」

p「もう休むんだ。明日は歩き通しになるぞ」

貴音「はい、貴方様も……」

p「あぁ。俺ももう寝……、た・貴音っ?」

貴音「みなが貴方様を頼りにしています。ご自愛を」 

p「あ・ありがとうな。ただ抱きしめるなら抱きしめると一言……」

貴音「ふふふ。お休みなさいませ」

 ~12月25日~ 災害2日目・早朝

p「食べながらでいい。聞いてくれ」

春香「なんですか?」

p「東インターチェンジから救助ヘリが出ていることを確認した。今日はそこを目指す」

真「ここに残るんじゃ?」

p「ここは駄目だ。市の西側は水没が激しいらしい。下手をするとここまで及ぶかもしれない」

千早「東インター、東インター……、すごい離れてるわ……」

響「歩き続けて半日……?」

律子「もっとかもね」

小鳥「途中の柿沼サービスエリアで休憩して、場合によってはそこで一晩過ごして」

p「いえ、今日中に東インターに行きます」

小鳥「少し強引じゃないですか?」

貴音「浸水の速度が思っていたよりも速いようです。多少強引でもその方がよろしいかと」

雪歩「でも、そこに着きさえすれば」

美希「救助が来るの!」

p「あぁ。今日は歩き通しになる。準備は万端にして行こう」

あずさ「売店にレインコートがありましたから、みんなそれを着ましょう」

響「食糧は持っていくのか?」

律子「持ち運べるものがないわ。大きなリュックでもあれば別だけど」

美希「でも柿沼にもきっとご飯があるの」

あずさ「そうね。可能性は高いわね」

小鳥「そうと決まれば早速出発ですね」

p「みんなトイレ行っといてくれよ。途中でサービスエリアはないぞ」

 富坂・柿沼sa

響「やーっと半分だぞ」

あずさ「結構早く着いたわ~」

貴音「思っていたよりも水没していますね。道路も崩れかかっています」

雪歩「ここで休憩ですか?」

律子「えぇ。お昼には早いけど食事にして、少し休んだらまた行きましょう」

真「んー?」

雪歩「どうしたの?」

あずさ「ジェットスキー?どうしてこんな所に……」

真「あーぁ、土砂が建物に……」

p「あぁ、こりゃ駄目だな……」

春香「食堂は大丈夫みたいですよ」

千早「女子トイレは駄目みたい。土砂が流れ込んできているわ」

美希「自販機も倒れかかってて危ないの」

春香「靴がぐちゃぐちゃだよー」

p「どこかで全員分の長靴でもあればいいんだが」

小鳥「テレビ、映りますかね」

 プツッ

tv「……西部はほぼ水没しており、また、長雨の影響による河川の増水に伴い、奥富ダムの貯水許容量が……」

律子「時間はなさそうですね」

小鳥「夜が明ければ少しはましになってるかと思ったんですけど……」

p「時間が経てば経つほど、状況は悪くなりそうですね」

律子「雨が止んでさえくれれば……」

p「休憩は中止だ。川が氾濫してこの先の橋がやられたらアウトだ。すぐ出発しよう」

小鳥「はい」

tv「またこの混乱に乗じて、逮捕されていた佐伯優子容疑者が韮沢警察署から逃亡しており……」

 富坂・東ic

小鳥「着いた……、東インター……」

律子「あそこを早く出て正解でしたね」

真「途中で聞こえたあの凄い音、何だったんだろう?」

美希「ヘリは?ヘリはいるの?」

雪歩「それらしいのは……見えないけど……」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

響「うわわっ!また地震だぞ!」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

千早「ここ……、まずくないですか……?」

p「これ地震か?地震というより、なんか……」

 ビシッ ビシッ

春香「わっ!道路にヒビがっ!」

p「まずい!みんな道路から降りろ!下に降りるんだ!」

律子「下にって言ったって……!」

p「こういう所は下に降りられる梯子なりなんなりあるはずだ!探せ!」

あずさ「これ!これじゃないですか?」

真「これだ!プロデューサー!!」

p「よし行け!真!」

真「はい!雪歩こっち!!」

雪歩「うん!」

 ビシッ ビキッ ビシッ

 ゴォン!!

千早「きゃあっ!!」

春香「千早ちゃん!あいたっ」 ズデーン

p「助けにいこうとしてお前まで転ぶな!千早!ほら立て!」

千早「は・はい!」

p「小鳥さん、春香を!」

小鳥「はい!」

律子「急いで!」

 ビシッ ドォン!!

p「おわっ!」

雪歩「道路が……割れる……」

貴音「貴方様!こちらへ!!」

p「千早、行け!降りるんだ!」

千早「はい!」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

律子「あずささん!あそこのカフェまで走ってください!」

あずさ「分かったわ~!」

律子「違う!そっちじゃないですって!!」

p「走れ走れ走れ!!」

 ゴゴゴゴ……

真「……収まった?」

貴音「ですが水の量は増えてきています。急ぎましょう」

小鳥「はぁっ!はぁっ!間一髪……!」

p「道路は崩落しなかったけど……、あそこにいたら危なかったな……」

美希「ヘリを待つどころじゃなくなったの……」

響「これからどうするんだ?プロデューサー」

p「……もうそろそろ夕方になる。どこか休めそうな所を探そう」

 ~12月25日~ 災害2日目・アンジェリーナ周辺

美希「ファミレスみっけなの!」

律子「明かりがついてるわ。誰かいるかもしれないわね」

小鳥「行きましょう」

春香「あずささん、どこ行くんですか。こっちですよ」

あずさ「あらあら~」

響「ほとんど病気だぞあれ……」

貴音「ふぁみれす……。らぁめんはあるのでしょうか……?」

p「あるだろうな。結構置いてるもんだぞ」

真「雪歩、もうちょっとだよ。頑張れ」

雪歩「うん……」

春香「あったかーい!」

千早「暖房も効いてるのね」

春香「あ!バイキングがあるよ!」

律子「やめておきなさい。1日経ってしまってるんだから」

真「1日くらいなら……」

雪歩「でも食べられる感じじゃないよ」

響「カピカピに乾いちゃってるぞ」

千早「誰かいたみたいね」

美希「ほんとなの。料理がテーブルにあるの」

p「誰かがここで食事したんだな。避難する途中で」

律子「誰もいませんね。もう逃げたんでしょうか」

小鳥「料理は一人分しかありませんでしたけど」

美希「もう何でもいいの!ご飯にするの!ヘトヘトでペコペコなの!」

p「そうだな、ご飯にしよう。みんな手分けして探してくれ」

 「「「はーい」」」

あずさ「これからどうするんですか?」

p「向こうにデパートがありましたね。そこに行って休みましょう」

律子「ここでいいじゃないですか」

p「デパートには?」

小鳥「寝具があります!」

千早「いいですね、それ」

美希「あったかお布団でぐっすりなの!」

小鳥「それにみんなの着替えも用意出来ます」

春香「それって泥棒なんじゃ……」

p「泥棒なんてもんじゃない。なんせシャッター壊してドア蹴破って、勝手に侵入した挙句にやらかすんだからな」

雪歩「えぇ~……」

小鳥「非常時ですよ。今は非常時」

律子「その言葉を便利に使われても」

p「責任は俺が取る。心配するな」

あずさ「それに……」

春香「なんですか?」

あずさ「その……下着とかも取り替えたいでしょう?」

真「……そりゃあ」

響「……まぁ」

貴音「背に腹は代えられぬ、ということでしょう」

p「お前たちは何も心配するな。責任は全て俺が取る」

律子「プロデューサー殿と社長がね」

小鳥「765プロ、倒産かもしれないですね」

春香「シャレになってないですよー!」

 「「「あははははは」」」

 デパート・909内

p「じゃあ手分けしていきましょう」

小鳥「私とあずささんとでみんなの着替えを持ってきますね」

律子「私は響と石油ストーブがないか探してきます」

美希「バックヤードに布団を集めるの?」

千早「この規模のデパートなら、スタッフルームとかもそれなりの大きさでしょうし」

春香「暖房さえあれば、みんな一緒に寝られるね」

真「夜のデパートってなんかドキドキするね」

雪歩「あと電池と、懐中電灯とリュックと……」

p「長靴、忘れないでください」

小鳥「任せてください!」

千早「はぁ……、清潔な布団だわ」

春香「2日ぶりなのに、すごく久しぶりに感じるね」

真「あったかいしね」

雪歩「ちょっと怖いけど……」

真「ランタン付けておくから大丈夫だよ」

律子「嘘、ついちゃったわね……」

雪歩「?」

貴音「伊織たちには、今日会えると言ってましたから」

春香「あぁ……」

あずさ「でも明日こそ大丈夫よ~」

響「そうだぞ!ここまで何とかしてきたんだから、これからだって何とかなるぞ!なんくるないさー」

小鳥「そうそう。なんくるないさーですよ。うふふ」

真「明日に……なれば……」 ウト ウト

雪歩「うん……。お休み、真ちゃん……」

ラジオ「……北部、西部はほぼ水没し、富坂市東部もかなりの浸水による……」

p「……」

 コン コン

p「どうぞ」

律子「失礼します」

p「どうした?」

律子「いえ、まだ明かりが見えたので……」

ラジオ「……田辺知事は依然として行方不明のまま……」

p「北部と西部は全滅だ。救難ヘリの増援を要請してるようだけど、避難民の数が多すぎて間に合ってないみたいだな」

律子「リーダーもいないようですし、対策本部も大混乱でしょうね」

p「あぁ。知事自ら現場に出向くのは立派だが、今回はそれが仇になったな」

律子「今後の予定は?」

p「こういった災害時の避難場所に指定されている、富坂市民公園を目指す」

律子「分かりました。明日、みんなに伝えます」

p「頼む」

律子「……」

p「どうした?」

律子「ごめんなさい。なんでも……。すいません……」

p「律子」

律子「こんなっ……、泣くつもりじゃ……」

p「大丈夫だ。みんな助かる」

律子「私……、本当は不安で不安で……、でも……」

p「大丈夫だ。絶対大丈夫だ。必ず助かる。約束する」

律子「あっ……」

p「……その、泣いてる女の子にはこうするべきだと……何かで見た」

律子「……」

p「真が貸してくれた漫画だったかな……。いや、何でもいいや」

律子「……どうしてそんなに……落ち着いていられるんですか……?」

p「いや、内心バクバクです」

律子「……そうではなくて」

p「……経験している。2回ほど……大震災ってやつを」

律子「え?」

p「ひとつめは子供の時。ふたつめは学生だった時」

律子「そんな……」

p「どっちも大勢の人が死んだ。忘れたくても忘れられない、嫌な記憶だ」

律子「……(プロデューサーの履歴書……、確か首都島って……)」

p「大丈夫さ。帰ったらみんなでクリスマスパーティーをしよう。忘年会も兼ねて」

律子「……はい」

p「病院に無理言ってさ、亜美も外出させてもらってさ」

律子「はい」

p「社長と、みんなと、パーティーしよう。な?」

律子「はい」

p「さ、落ち着いたらもう休め。明日も早いぞ」

律子「あの……」

p「なんだ?」

律子「その……、さっきの……」

p「分かってる。誰にも言わないよ。俺と律子の、二人だけの秘密だ」

律子「……はい」

p「お休み」

律子「お休みなさい」

 ~12月26日~ 災害3日目・富坂市民公園付近

響「寒いぞ……、寒い……」

雪歩「はぁ……、はぁ……」

真「こんな時じゃなかったら、雪だって喜べるのに」

響「毎年青森から雪を送ってもらえるんだ。自分も雪は大好きさー。こんな時じゃなかったらだけど」

春香「椿ケアセンターの方角は……、駄目みたいです」

千早「水没してしまっているわ……」

律子「まだ渡れるところがあるはずよ。探しましょう」

p「ここからが駄目となると……、ここからこう行って……」

小鳥「これは?線路でしょうか?」

p「ですね」

律子「線路を渡りませんか?行ける所まで行って、それで」

p「この調子だと市民公園も駄目っぽいしなぁ」

美希「あの高い建物はなに?」

貴音「地図によると、“めでぃあたわー”と書いてありますね」

あずさ「ラジオではなんて言ってるんでしょうか」

ラジオ「……奥富ダムと海岸線の決壊による影響で、市全体の水没の速度は……」

p「ダムが……決壊……」

ラジオ「……富坂駅及び、メディアタワー周辺のみ水没を免れている状態ですが……」

小鳥「じゃあ市民公園はやっぱり駄目ってことですね……」

ラジオ「……こちらも遠からず冠水する見通しとなっており、自衛隊への出動要請が……」

p「メディアタワーに目標を変更しよう。そこから最後の救助が出されているはずだ」

小鳥「そこももし駄目だったら……」

貴音「行きましょう」

小鳥「え?」

律子「最後まで諦めないでください。希望はありますから」

小鳥「はい……」

p「よし、線路に上がるぞ」

 中央区・ジオセクション2

あずさ「急に風が……」

春香「こんな強風に……なるなんてっ……」

真「はぁ……、はぁ……、まともに……歩くことも……」

p「なるべく遮音壁の近くを歩くんだ。多少ましになる」

雪歩「あっ」 ガクッ

p「大丈夫か?ほら」

雪歩「は・はい……」

美希「こ・こんな時じゃなかったら浮気者って怒るところなの……!」

律子「はいはい、早く進みなさい」

響「寒い……、寒い……。ハム蔵連れてこなくて正解だったぞ……」

千早「あなた連れてくるつもりだったの?」

春香「そういえば動物たちはどうしてるの?」

響「社長に任せてあるぞ!」

千早「社長に世話させるアイドルってなによ……」

貴音「看板が……」

小鳥「この風で落ちたんでしょうか……」

春香「あっ!線路が……」

p「途切れちゃってるな……」

律子「下は……、完全に水没してますし……」

真「あ、さっきの看板を使えば」

あずさ「これを橋代わりにするのね~」

美希「えぇぇ……」

p「よい……しょっと」

p「うん、大丈夫、かな」

律子「一人ずつ渡りましょう」

真「わ、結構丈夫なんだなぁ、看板って」

雪歩「駄目……、真ちゃん、駄目……」

真「雪歩?どうしたの?」

雪歩「無理……、無理だよぉ、こんなの……」

真「大丈夫だよ。ボクも一緒に渡るから。ね?ほら、手繋ご?」

雪歩「駄目……、足が……」

美希「ハニー!雪歩が!」

p「待て待て、そこを動くなよ。真、先に渡れ。雪歩は俺がおぶる」

真「は、はい……」

あずさ「大丈夫よ雪歩ちゃん!今そっちに行くから~!」

p「お待たせ、雪歩。さぁ行こう。怖かったら目をつぶってればいい」

雪歩「うっ……、ふぇぇん……。ごめんなさぁい……」

p「謝ることなんてない。そりゃ怖いよな。ごめんな」

 ゴゴゴゴゴゴ……

p「なんだ?」

律子「……なに?」

小鳥「収まり……ましたね」

p「嫌な感じだ。早く渡りきってしまおう」

響「もう大丈夫だぞ!雪……歩」

春香「どうしたの?」

千早「……!あれ……なに……?」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

小鳥「ぴよっ!?またぁ?」

美希「あの黒い壁……、まさか……」

 ズズズズズズズズ……

p「走れぇっ!!」

真「わあああああ!!!」

貴音「なんという……!!」

律子「走って!走りなさい!!あのトンネルまで!!」

あずさ「はぁはぁ……、走ると胸が痛いわ~」

春香「はぁはぁ、ち・千早ちゃーん!!あいたっ」 ゴテーン

千早「こんな時まで命がけで転ばないでっ!!」

小鳥「実は私、筋肉痛でもうつらいんですーーー!!!」

p「いいから走れっ!!」

響「雪歩気絶しちゃってるぞ。ちょっと羨ましいな」

小鳥「ぴーーーーーーーーーーよーーーーーーーーーーーー!!!」

美希「一番速いっておかしいの……」

 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ズズズズズズ……

 中央区・富坂駅付近

p「あれは……、ヘリ……?」

律子「大きいですね。救助用でしょうか……」

春香「メディアタワーはもうすぐですね」

小鳥「あ、駅のクリスマスツリーが……」

真「こんなに立派なツリーだったのに、今じゃ見る影もないね」

 ズズズズズズ……

響「ま・まただぞ……」

p「駅の中を抜けていこう」

あずさ「ここも浸水してますね」

千早「……」

律子「大丈夫。諦めないで」

千早「律子……」

律子「大丈夫。……大丈夫よ」

p「さぁ行こう」

 ズズズズズズ……

美希「ハニー、いつまで雪歩おぶってるの?」

雪歩「……」

p「いや、気を失ったままだし……」

美希「雪歩もう起きてるの。さっきハニーの背中に顔うずめて嬉しそうにしてたの」

雪歩「しっ・してないよぉっ!」

美希「汚いの。さすが雪歩汚いの」

p「そんなことより―」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

貴音「いけません。走りましょう」

あずさ「どっちかしら~?こっちかしら~」

小鳥「あっ!違います!そっちじゃないですよ!!」

p「えぇいもう!連れ戻してる時間がない!!」

律子「どうするんですか!?」

p「ついていく!メディアタワーじゃなく、こっちのビルの屋上に出よう!!」

響「ビルの屋上に出て!?それから!?」

p「祈れ!」

 ドオオオオン!!

真「来た!来たぁ!!」

千早「春香!走るわよ!」

春香「うん!あいたっ」 ズテーン

p「あぁもう!!」 グイッ

春香「あわわっ」

小鳥「あらすごい。二人抱えて走ってるわ」

p「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 ドオオオオオオオオオオオオオオ!!

真「プロデューサー!水が!!水が!!」

律子「喋る前に走りなさい!!」

美希「もう上に行くしかないの!!」

千早「はぁ……はぁ……」

あずさ「あら~?行き止まりだわ~?」

小鳥「こっちこっち!!」

真「屋上のドアが!!」

p「こんちくしょおおおおおおおおおお!!!」 

 ドガン!!

響「開くもんだね……」

千早「はぁ……、はぁ……、下が全部……」

春香「メディアタワーが!!」

 ゴゴゴゴゴ…… ギイイイイイイイ……

貴音「あれに登ろうとしていたのですね……」

真「でも……、ここにいたって……!!」

雪歩「ヘリ……?あのヘリに人が……!」

p「おーい!!」

響「おぉーーーいい!!」

律子「駄目……、行っちゃうわ……」

千早「そんな……」

 ゴオオオオオオオオオ……

あずさ「街が全部水没してしまったわ……」

p「……じたばたしても仕方がない。ここで救助を待とう」

小鳥「あずささんがこっちに来なかったら、私たちあれに登ってたんですね……」

 ズズズズズズズ……

雪歩「ビルが……揺れる……」

真「もしこのビルも倒れたら……」

 バババババババババババババ……

貴音「あれは……?」

律子「さっきの……、いいえ、違うヘリだわ……」

 富坂駅・駅前ビル

伊織「あーっはっはっはっは!!」

p「あれは……伊織!?」

美希「嘘!?でこちゃん!?」

伊織「あんまり遅いもんだから!迎えにきてあげたわよ!感謝なさい!!」

p「伊織ー!こっちだー!!」

真「伊織ー!おいしすぎるぞー!!」

伊織「真の主役!スーパーアイドル伊織ちゃんよ!崇め奉りなさい!!」

あずさ「神棚に飾っちゃうわ~」

小鳥「事務所の神棚に飾ってあげますー!!」

伊織「パイロットさん、あのビルの屋上に降りられる?」

パイロット「ビルの強度が不安です。フェンスも邪魔で着陸することはできませんが、ギリギリまでなら」

伊織「ならギリギリまででいいわ。縄梯子があるはずよね?」

パイロット「はっ。お嬢様、席にお座りください。降下します」

伊織「水瀬家が誇る“うみたか”の力、見せてあげなさい。にひひっ」

律子「伊織!あんたもう……」

伊織「なんて顔してんのよ?さっさと乗りなさい」

p「よし、みんな乗れ!」

響「ヘリは初めてだぞ……。これも怖いぞ」

貴音「こんな事態でなければ、優雅な空の散歩なのでしょうが……」

小鳥「はぁはぁ……、もうさすがに駄目かと思いました!」

千早「こんな時でも転ぶ春香は大したものだわ」

春香「そんな……えへへ」

千早「褒めてないわよ」

p「伊織」

伊織「ふふん。何か言うことは?」

p「お前は最高だ」

伊織「とーぜんでしょ!にひひっ!」

雪歩「助かったんだね。本当にみんな助かったんだね……」

真「うんうん!帰れるんだよ!ボクたち!!」

あずさ「よかったわね~、雪歩ちゃん~」 ギュウッ

雪歩「うぐむむむ……」

伊織「あずさ、雪歩が死ぬわよ」

あずさ「あらあら~」

千早「くっ」

響「はぁ……、どっと疲れが出たぞ。美希がさっきからずっと静かだけど」

貴音「もう眠っています」

響「さすがだなぁ……」

p「……とんでもない事になってしまったなぁ」

律子「でも全員無事に帰れるじゃないですか」

p「それだけが救いだよ」

律子「約束」

p「ん?」

律子「守ってくれたじゃないですか」

p「……あぁ」

律子「……」

小鳥「あらあら」

あずさ「まぁまぁ」

真「あーっ!プロデューサーと律子が手ぇ繋いでる!!」

律子「ちょっ!」

雪歩「えっ!?えっ!?」

美希「どういうことなの!?詳しく聞かせるの!!」

響「寝てたんじゃないのか」

貴音「貴方様、あとで事情はゆっくりと伺いましょう」

p「いや、その」

伊織「……私を無視して……話を進めんじゃないわよ!!」

春香「……いつの間にそんな仲に……」

千早「……くっ」

春香「千早ちゃんさっきからそれしか言ってないよ」

p「はぁ、もう散々だ……」

小鳥「いいじゃないですか、みんな無事だったから……こんな風に騒げるんですから」

p「そうですね……。帰ったらまず亜美の所に行ってやらないとなぁ」

小鳥「そうですね」

p「やること……山積みだなぁ……。ゆっくり……休みたい……」

小鳥「……」

真「今度は小鳥さんの肩にもたれてる……!」

律子「ま、いいですけどね。今だけは」

小鳥「あはは……」

貴音「えぇ。今だけです」

小鳥「あれぇ?なんか空気が……」

春香「ハッピーエンドですよ!ハッピーエンド!!」

千早「そうかしら」

律子「いいんじゃないかしら」

千早「え?」

律子「いい終わり方であることに、違いないもの」

                                    end

以上です
背中を押してくれた方々、乱文、駄文に付き合ってくれた方々、ありがとうございました

言い訳をしますと、ss初投稿な上にアイマス未経験のアニマス未視聴です
口調や性格に違和感があったらごめんなさい

それでは

絶対絶命都市?

まあ、乙。



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