『ジョジョ』達の居なくなった世界……そこでならキミは『主人公』だ……一番『主人公』に相応しい……。
まずは舞台を決めよう。物語の舞台は↓1
国名でも地域名でもいい。架空の名前でも構わない
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インド
『インド』、世界第二位の人口。最近は経済大国とも言われるようになった。
「バクシーシ」
『インド』、世界第二位の人口。最近は経済大国とも言われるようになった。
「バクシーシ」なんて言う奴も昔よりかは少なくなったんじゃあないかなぁ。
それじゃあ、そんな国に居る、またはやって来た『主人公』を教えてくれ。
この『テンプレ』に従ってくれよ。
【名前】漢字なら読み仮名を書くと良い
【性別】
【年齢】ぼかしても構わない
【国籍】架空の国名地域名でも構わない
【職業】何でもいい
【身長・体重】テキトーでも良い
【見た目】
【性格】
【その他】何を書いても良い。過去や家族構成、好きな映画の名前や趣味、将来の夢。好きな人の名前。文字数制限に収まるなら何でもアリ。なぜ『インド』に居るのか書いてくれると助かる。
ここでヤメて欲しいことは『投稿した後の付け足し』だ。書きたいことは一レスに収めてくれよな。
安価を外れたキミ。そこのキミだ。
がっかりしないでくれよな。出来るだけ再利用するようにガンバるから……さ。
↓1
【名前】光明院 三郎(こうみょういん さぶろう)
【性別】 男
【年齢】見た目十代後半か二十代前半
【国籍】日本
【職業】放浪者
【身長・体重】高め・普通
【見た目】 ゴーグル・黒髪・スカーフ
【性格】 不良っぽいが別に悪人というわけではない
【その他】兄貴が二人いる。銃の扱いが得意
【名前】ジェニファー・ジョーデル
【性別】女性
【年齢】19
【国籍】イギリス
【職業】大学生
【身長・体重】162cm 50kg
【見た目】金髪青眼のおしとやかそうな女性
【性格】優しくておだやかだが、正念場ではジョースター家らしく凄まじい爆発力を見せる。好奇心旺盛。
【その他】趣味は料理。世界各国の料理を覚えようとして、長期休暇ごとに各地を旅している。将来の夢は料理人。インド料理を覚えるためインドに来ている。
じゃ……始めようか。スタンドはまだだよ。
【名前】ギルバート・O
【性別】男
【年齢】30代前半
【国籍】アイルランド
【職業】画家
【身長・体重】185cm/75kg
【見た目】癖っ毛の短髪、彫りの深い顔立ち、左の二の腕に目立つ火傷の痕がある
【性格】大人数でいるより一人でいることを好む、恩義ある相手に対して義理堅い
【その他】子供の頃シングルマザーの母に虐待を受けていたことがあり、腕の火傷はそのときできたもの。
画業については有名になりたいとはあまり思っておらず、食える程度に稼げればいいと考えている。
尊敬する画家はゴッホ。インドの風景を描こうと思い立ち、インドを訪れた。
【名前】ケイン・ロギンス
【性別】男性
【年齢】25
【国籍】アメリカ
【職業】冒険家
【身長・体重】187cm 95kg
【見た目】黒髪、浅黒い肌でガッチリとした体付き
【性格】危険なことが大好きで、危険な場面、場所に身を起きたい傾向がある。
【その他】危険なことが好きで冒険家になるほど。でも他人を巻き込もうとはしない。
ジェニファー・ジョーデルはその日、インドに降り立った。
彼女は大学生。趣味は料理。
こうして長期休暇の度に、各国の料理の味を覚える為に旅行をしている。
聞いてはいたが、この国は暑い。たまらず道路も溶け出す程。
「予想以上ね……」
うねるアスファルトを観てジョーデルは溜め息を一つ。汗で張り付く半袖を捲り、「やっぱりノースリーブを着てくれば良かった」と後悔。更に溜め息を一つついた。
日差しは強い。日暮れまでまだ10時間ある。
空港を出て、通りを左に抜けたところに予約していたホテルがある。そこがひとまずの目的地だ。
少し高めの宿泊費にお得なサービス。そして美味しいご飯が三食付き。こんな贅沢は久しぶり。
(春休みにレポートを投げ捨てて毎日バイトしたかいがあるわァ~~ッ)
と、本来は喜ぶべきだが。この照り返しを皮膚にビリビリと感じれば、そんなことを考える余裕はない。
彼女はキャリーバッグをガリガリと引きずり、やっと見つけた木陰へと避難した。妙に発展したこの街で木陰を探すのも一苦労である。
(チクショ~失敗したわッ! タクシー台をケチって歩いてホテルまで行こうとするからこんな風になるのよ!)
(エアポートのタクシー乗り場まで戻ろうかしら)
そう思いつつ、腕時計を見ていると――
「そこのッ! そこのキレイなお嬢さ~ん!」
「はい?」
ジョーデルが振り返ると、声の方向には露天商が居た。声の主はそこの店主の男。歯がボロボロであることを見せつけるように笑顔をこちらに向けている。
「わたし?」
「そうだよォ~~他に誰がいるってんだいキレイなお嬢さんさァァ~~。チョイと見て行きなよォ~~イイものあるよォ~~」
「そ、そう? じゃあ……フフ、少し、ほんの少しだけ……」
自分のことかと聞き返すとしつこく頭をブンブンと縦に振りながら肯定した。
「キレイ」と言われて嬉しい女はいない。年頃の娘なら尚更だ。それが社交辞令だとしてもここまで言われたなら少し見に行ってやろうという気持ちになる。
「へぇ、調理器具とか売ってるんだ」
軽くひかれた布の上には幾つかフライパンや鍋が並んでいた。
「そうなんだよお嬢さん。お目が高いねェ~~! このフライパンはねェ、インドの採石場で採れた特殊な石を使ったヤツなんだよォ~~」
一つのフライパンを指差し店主は紹介する。ジョーデルもそれを手に取り眺めてみた。
裏に彫られた「MADE IN INDEA」の文字。見た目からは全く特別な物には見えないが、店主がそう言っているのだからそうなのだろう。
興味深げに見る彼女に店主は声をかけた。
「気になるかい~~?」
「えぇ……、……インドのフライパンってイギリスで使っているのとあまり変わらないのね。驚いたわ……」
「そうさァ~~! まだまだあるよォ~~、鍋に茶碗に鍋! 安くしとくからさァ~~」
「そう? じゃあ――」
「おいくらかしら?」と言いかけたところで、突然彼女の持つフライパンがヒョイと奪われた。
「えッ!?」
フライパンを奪ったのは東洋人らしい顔つきの大柄な男だった。
「なにするのよ!」と怒鳴るジョーデルの声も、先程まで彼女に見せていた余裕な表情とは変わって「や、やめろ~~!」と慌ててすがりつく店主も無視し、男はフライパンを、もっと詳しく言うのなら『フライパンの裏側』をジッと見つめる。
そして少し考えた後、その部分をおもむろに指で擦り始めたのだ。
ゴシゴシ…
「MADE IN INDEA」
ゴシゴシ……
「MADE IN CHINA」
「MADE IN~」と書かれた場所を擦るとある文字が削れ落ち、「INDEA」の下から「CHINA」の文字が現れた。ジョーデルは「あぁっ!」と叫び店主を睨み付ける。店主は落ち着き無く彼女と東洋人とを交互に見た。もう言い逃れさえできない。
東洋人の男は呆れたように
「スペルが間違ってるぜ店主さんよォ。『INDEA』じゃあない『INDIA』だ」
とフライパンを返した。
「警察だけはご勘弁をォ~~ッ!」と泣きながら懇願する店主を尻目に東洋人はジョーデルに対し尋ねる。
「どうする? 警察に突き出すか?」
「……いいわ。まだ何も取られてはいないし」
「……だってよ。そこの娘さんが優しくて良かったな、『店主さん』。もしこれが俺だったら……スッ飛ばしていたな、2、30mくらい、うん」
「ァヒィイ~~!! 許してください~~店のもの全部持って行っていいですからァア~~ン」
「わたしは結構よ、そこの……そう、『東洋人さん』は?」
「オレは詐欺師が売ってるものなんか貰うのなんてイヤだね」
「同感」
その後、ジョーデルは東洋人を「何かお礼がしたい」と半ば強引にホテルへと引っ張り込んだ。
とは言うもののそれは建て前。本当は騙されたばかりでなんだか少し一人でいるのが不安だったからだ。たまには初めて会う人と話すのも良いだろう。 それに彼が少しジョーデルのタイプだったから……でもある。
「――オレは日本生まれ。日本って知ってる? そう、スシの……違う、それはカッパ巻きだ、それも違う、それはチャーハン」
話していくうちに分かったことは、彼が日本人だということ。
「――ああ、インドもこれで二回目だ」
彼が放浪者だということ。
そして――
「えッ! あなたわたしの隣の部屋なのォー!?」
同じホテルに宿泊してるということ。最後に……
「そう言えばわたし、あなたの名前聞いてなかった。『東洋人さん』じゃあ失礼よね。あなたの名前は?」
「オレ名前は……『光明院 三郎(こうみょういん さぶろう)』だ」
「……サブロー……サブローねッ」
彼の名は「光明院 三郎」だということ。
To be continued =>
乙
漂うW主人公感
「光明院三郎」のスタンドを決めようじゃあないか。この「テンプレ」に従ってくれ。
【名前】名前が被らないように
【見た目】
【能力】
【破壊力: /スピード: /射程距離: /持続力: /精密動作性: /成長性: 】
A(超スゴイ)、B(スゴイ)、C(人間と同じ) 、D(ニガテ)、E(超ニガテ)
1IDに付き送れる安価は1つだ。守ってくれよ。安価に外れたキミにもチャンスはあるからね。
↓1
【スタンド名】スタンプ・オン・ザ・グラウンド
【見た目】戦隊ヒーローのような覆面の人型。白の生地に赤のライン。体に赤い輪の模様が所々ある。拳は大きめで、ロボットのように角張っている。
【能力】パーで受けた衝撃(複数可)を固定化しグーで殴った箇所に貼り付けられる。この時ダメージは発生しない。貼り付けた衝撃は好きなタイミングで元の衝撃へと戻せる。衝撃を重ね貼りする事でダメージの蓄積が可能。
破壊力-B スピード-B 射程距離-C 持続力-B 精密動作性-B 成長性-B
【名前】バリアー・フォールズ
【見た目】オーロラのような色をした人型
流線型の近代的なデザイン
【能力】手で撫でた物・空間にバリアーを張れる
空間に張ったバリアーは足場にできる
また自分のスタンドに限り、バリアーを殴って飛び道具にできる
【破壊力:B/スピード:A/射程距離:C/持続力:A/精密動作性:A/成長性:C】
【名前】スターライトパレード
【見た目】 ピエロの様な見た目の人型
【能力】 触れた対象を触れた秒数分宙に浮かす事が出来る(最長1分間、高さは最大1mほど)
【破壊力:C /スピード:C /射程距離:A /持続力:D /精密動作性:B /成長性:E 】
【名前】スイート・ライク・チョコレート
【見た目】メカメカしい4脚の下半身に、女性風のなめらかな質感の上半身が乗っかっている。
【能力】スタンドで触れたものの性質(融点や粘度、固さなど)をチョコレートと同じにする。再度触れることで、溶けたり混ざったり変型したものは修復されずそのまま元の性質に戻る。
【破壊力:C /スピード:C /射程距離:E(能力射程:B) /持続力:B /精密動作性:A /成長性:A 】
期待
期待
【名前】ケイヴ・トゥ・ワンダーランド
【見た目】本体の背中から伸びる、長く大きな六本の腕。中世の鎧のような見た目。
【能力】硬さ、厚さ、その他諸々を無視して『壁』に穴を開ける。
『壁』は破壊される訳ではなく『腕で押しのけられている』だけ。
腕を離せば穴は即座に元に戻る。
【破壊力:B /スピード:D /射程距離:E /持続力:B /精密動作性:C /成長性:A 】
【名前】サマー オブ 69
【見た目】 クリーム色の曲線的な鎧を着た紫色の人型
【能力】 最大69秒間、5メートル範囲において行為の結果を先送りにする
例えば紙を火に近づけても燃えず、互いに殴ってもダメージは発生しない。行為だけが蓄積される
能力終了後全ての結果が一斉に発生する。それから逃れる事は出来ない
【破壊力:B/スピード:B/射程距離:E /持続力:E /精密動作性: C/成長性:E 】
「うっ、うぅっ、うっ、うぅゥ~~」
暗い部屋に情け無い泣き声が響く。いつかの『露天商の店主』の泣き声だ。
「うェええン~~、ダレルさァん~~うぇええええぇ~~」
暗がりでよく見えないが大男にすがりついている。屈強な大男だ。
タンクトップから更に屈強な腕を覗かせるその男は、逞しいそれで泣く店主を赤子を宥めるようにポンポンと背中を叩いた。
「まぁ……そう泣くなよ。全財産が失われたワケじゃあねぇんだ。世界には貧困に苦しむ子供なんてゴマンといるんだぜ? たかが観光客にピンハネしていたのがバレたくらいで大の男が泣いちゃあ『メンツ』が立たねーってもんよ」
「でも……でもさァ~~~~」
「あぁ、あぁ、そうだな。分かってる。分かっているさ。悔しいんだよな、悲しいんだよなァァ……分かるよ、分かる」
「うん! うん~~~~! グスッ、ヒック」
「俺だって……悔しいよ。だってよォ……俺のシマで俺の舎弟がこんなひでェ目に会ったんだからさァ……悔しくて涙が出てくるぜ……」
「だからダレルさァん、ダレルさんの『トゥナク』で何とかしてくださいよォ~~~~、グスン」
「分かってるよ……分かってる。だからお前の為に『ホテルまでとって』こんなことしてるんだろ?」
期待
「はい~~! ありがとうございますゥダレルさん~~、俺なんかのためにィ~~、グスグス。さっすがダレルさんだァ~~!」
「……名前は分かってるんだろ?」
「はい~~、『ジェニファー・ジョーデル』と『光明院三郎』です、はい~~」
「そうか……直に他の舎弟がホテルに来る。そん時は……お前も手伝ってくれるな?」
「はい~~!」
涙を拭う大男――『ダレル』は、この辺りの露天商の悪名高い元締めである。なんと露天商の男はジョーデルらに偽物を売っていたことをバラした報復に、彼を呼んだのだ。
義理堅い彼は頼めばすぐに協力してくれる。そして、どんなことでも必ずやり遂げる。それが例え殺しでも。
「アイツらも正義感でやっちまったんだよなァ、分かる。しかしよ、しかしだ。それで俺の舎弟をここまで追い詰めるのはいただけないよなァ……いただけない」
「こういうのは少し痛い目見てもらわなきゃあ分かんないんだよ……分かるか?」
「はいっ分かりますッ~~」
彼らの足下で簀巻きにされたホテルのボーイが何かを叫んだが、口元にガムテープを貼られているので何を言っているのかは分からなかった。
…
ジョーデルは一人、ホテルの自室で地図を広げ、付近の料理店を探していた。暑いので余り長距離移動はしたくない。
インドの夕食は午後8時を過ぎてから食べる人が多いと聞く。ならば日が暮れてから行動するのも悪くないだろう。
「ふあぁ……」
大きな欠伸が漏れた。長時間フライトの疲れがやっと今出始めたところか。光明院も自分の部屋に戻ったことで話し相手もいなくなってしまった。
(少し……退屈だわ)
(露天商であったみたいな面白いこともないし……)
(あぁ、面白いことと言えばさっきホテルのボーイさんから電話が来たわね……「お名前を再度確認したくて」なんて言ってた……)
(暇だからちょっと世間話しちゃったわ……おしゃべりな子は嫌われちゃうかしら……)
(8時まであと5時間……)
ジョーデルはベッドに寝転がり少し、目を瞑った。
…
『助けてサブロー! 変な奴らが来て……ここは……四階の201、早く来て! いやッ、やめ――』
と、光明院の自室の内線電話に連絡が来たのは二分前。そして今――
「ここが……四階の201……だな」
光明院はドアの前で呟いた。電話を受けて何も考えられず、部屋を飛び出してしまった。何故そうしたか理由は分からない。旅先で遭っただけの相手にそれ程入れ込めるタイプではないと思っていたのだが。自分は思っていたより直情的な人間なのかもしれない。
ドアノブに手を回す。予想通り鍵はかかっており、ドアは簡単には開かない。人間の力で壊すことはほぼ不可能。そんなことができるのはごく限られた特殊な人間だけだ。
しかし、突如ドアは吹っ飛んだ。光明院は一ミリたりと動いてはいない。ただそのドアを腕を組み睨みつけただけだ。
ドアを殴り破った張本人。それは彼の背後にいた。覆面を被った人型、白いボディに血管の張ったような赤いラインが光る。拳は大きく妙に角張っていた。それに……僅かに浮いている。
これが『スタンド』。光明院三郎のスタンド『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』だ。
「よォ……遅かったじゃあないか。しかし……驚いたな……お前も『スタンド使い』だったとは……」
「って、ことは……オッサンも『そう』なのか……」
部屋の奥、ダレルは光明院を待っていた。彼が必ず来ることを初から知っていたかのように。お互い『スタンド使い』なら話は早い。光明院は『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』は出したまま、聞く。「いつでもお前を殴れるぞ」という意思表明だ。
「おいオッサン……ジョーデルを知らないか? 『ジェニファー・ジョーデル』だ、金髪で目が青い……」
「口の聞き方がなってないようだな、『光明院』。まぁ俺も若い頃はロクな口の聞き方も知らなかったから、分かる、分かるよ」
「! オレの名前を……知っているのか?」
「うちのかわいい舎弟達がな……調べてくれたんだ。かわいい舎弟達がな、分かるか? ……ちなみに……お前がフライパンの生産元をバラした露天商の店主も……俺の舎弟だ」
「なにッ!」
「人間『いつ』、『どこで』、『誰に』恨まれるか分からないもんだよなァ、分かるだろ?」
「余計なマネをしてくれたおかげでアイツの心はズタボロだ。こういうのは『いただけない』。舎弟を傷付けられるのは『いただけない』んだ。お前も家族や友だち、恋人が傷付けられるのは嫌だろう、分かるか?」
「こういうことをすればそれなりの落とし前ってのを付けなきゃあいけなくなる、因果応報ってやつだ、分かるだろ? だからお前のようなガキには……これから――」
黙り続ける光明院を見て、ダリルはやれやれと首を振った。
「分かった、分かったよ。お前の仲間を助けたい気持ちはよーく分かった。場所を教えよう」
「……早くしろ。ジョーデルの無事を確認してからてめーをスッ飛ばす」
「分かった分かった。そこだ。窓を抜けて、ベランダの柵を越えたところ……そこにジョーデルはいる。行って見てみろ」
ダリルの肩には小さな像のようなものが座っていた。天使だろうか。いや、天使と言いきるには少し不気味だ。パッチワークが貼られ継ぎ接ぎの身体からは所々綿が飛び出す。
彼の耳元でひそひそと話すその像こそ、『トゥナク・トゥナク・トゥン』である。
(オレは……何をしているんだ? オレは奴の指示通り……)
ホテル四階から真っ逆様に落ちていく。指示通り行動したのに。よくよく考えて見れば、いや、よくよく考えてみなくてもおかしな話である。
(この指示は……おかしい!)
窓の向こう、ベランダにある柵を越えればそこには何もない。ましてやジョーデルが待っているなんてこともない。数十メートル下に地面があるだけだ。
(おかしい……なぜだ。オレはあんな少し考えれば分かる答えにたどり着けなかったんだ……?)
(『考える前に身体が動いてしまったから』だ。相手の言葉を聞いて疑うことなくッ! 自分の身体がそれに従うことを許してしまったからだッ!)
そういえばこの感覚。前にも感じたことがある。
(そうだッ、ジョーデルから内線電話をもらった時! あの時オレは後先考えず201号室へと飛んでいった!)
(奴の言葉には奇妙な『重み』があった……奴が言うことは絶対で最優先すべき内容……ッ、それを絶対に優先させなければいけないと考えた!)
(奴の……奴の能力は……――)
To be continued =>
乙
『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』
略してスタグラ
更新待ってるよ
「さっすがダレルさんだ!」
「ダレルさんはすげェーッ!」
ダレルの応援要請に従ってホテルに到着した舎弟達が、彼の背後で手を叩く。それに応えるようにダレルは下品な笑みを浮かべた。
この高さから落ちればタダでは済まない。骨折や内臓破裂は当然。首の骨が折れるか、頭蓋骨の中の脳が潰れるかして死ぬかもしれない。
だが、それは「事故」だ。光名院が自分から進んでベランダから飛び降りた。それだけである。
ダレルの後ろに立つ十数人の舎弟達も同じだ。自分から進んでダレルに着いてきてくれて、命令を聞く。
「……信じたお前が……バカなのさ」
ダレルの口からジョーデルの声が漏れた。
「――俺の『トゥナク・トゥナク・トゥン』は囁く天使のスタンド……『一度聞いた音を真似る』スタンド……そして俺の声または音を聞いた者は『信じている限り、その音と言葉を信用し、疑いなく行動させる』……」
「おい、お前らッ! 光名院が死んでいるかどうか確認して来いッ! 今すぐにだッ!」
「へ、へいっ!」
そんなダレルだが死体を見ることは極端に嫌う。なんだか汚くて臭そうだからだ。
更新待ってた!
「な、なんだァーこいつはァァァァァ~~!」
下から聞こえる舎弟達の悲鳴に、ダレルは今まで行こうともしなかったベランダ付近に足を運び下を見る。
「うるせーぞ、お前らーッ! 死体くらいにガタガタ言ってねーで早く処理を……」
「処理を……」
「……なんだ……お前……」
「なぜ……なぜ『立っている』!? しかも『無傷』でェェェェーーッ!」
光名院は立っている。無傷で、ダレルを睨みながら。激突したはずの地面には血一滴たりと付いていない。舎弟らは恐ろしい『オーラ』のようなものを感じ一歩も動けず、『ボス』の指示をただ待った。
「……答える必要はねーな。俺を騙した奴にはよ……それとよ……」
光名院の静かな怒りはダレルへ向けられた。さらに彼はベランダを指差し言う。
「『嘘吐きはドロボーの始まり』ってママに教わらなかったお前には……少し『教育的指導』が必要だな。そこで待ってろ、今すぐ行くからさ……」
「なっ、ぬぁぁにぃをォー!? ガキのクセにナメた口を聞きやがって! 調子に乗るんじゃあねーッ! お前ら! 撃てっ! 持ってるんだろ銃ッ!」
ダレルの指示に、既に怖じ気づいていた舎弟達は従うことができない。舎弟の一人が声を震わせながら彼に意見した。
「ダレルさん……さ、さすがの俺っちにもそんな……『人を殺せ』なんて命令はァ……酷ってもんですよ……それに……このコーミョーインって奴――」
「……大丈夫だ」
「え?」
「……大丈夫だ、俺が着いている。後は俺がどうにかするから今はまず……俺に従ってくれ」
「ダレルさん……! 分かったぜ! 俺はやる……アイツを……撃ち殺してやるんだッ! オラアァーッ!」
命令の内容と言葉の重みは比例する。信頼されている前提でトゥナクを使っているとは言え、「奪え」「殺せ」などの命令は良心の呵責が壁となりうまく聞いてもらえない。
こんな時は「信頼」を「上乗せ」すれば良い。「お前を信用している」「最後は俺に任せればいい」などと嘯けば、舎弟らは簡単に従う。
「うらァァァーッ!」
「ドタマぶち抜いたァァァァーッ!!」
彼らはそれぞれ気合いの雄叫びを上げながら、隠していた銃を取り出し光名院目掛けて引き金を引いた。
「痛いな……何するんだよ」
弾丸は光名院の頬と肩口を掠めたもの以外は全て『止まった』。「スタンプ・オン・ザ・グラウンド」が『止めた』のだ。
ベランダから様子を見るダレルはスタンド使い、能力の内容は分からないまでも何が起こったのかは分かる。しかし、スタンド使いでも何でもない舎弟達にとってこれほど奇妙なことはない。
弾丸が突然標的の目前で止まった。さっきの四階から落ちて無傷のことといい、これは「異常」だと舎弟の頭の中では非常警報が鳴りっぱなしだ。とうとう彼らは「許してくれよォ、俺はッ 俺は関係ないんだ!」と命乞いしながら何処ぞへ逃げ出してしまった。
恐怖は命令に勝る。「待て! 戻ってこい!」と叫ぶダレルの声も彼らの耳にはもう届かない。能力の射程圏外ならそれはもうただの声。「重み」もない「ただの声」だ。
光名院は逃げる舎弟を追い掛けもせず、ホテルの中へと戻って行く。「今すぐ行く」は嘘ではない。彼は必ずあの四階の201号室へと現れ、ダレルに『教育的指導』をする。
逃げられない、逃げ場のない状況にダレルは焦った。
(クソ……クソッタレの舎弟共がッ! 逃げ出しやがってこの臆病者ッ!)
(あんなガキにこのダレルが負けるなんて……ありえない。神様は俺を見捨てたのかッ!?)
(何かないのかッ!?)
(……)
(いや……まだだ)
「使えるもの」がまだ「あった」。部屋のベッドで暑いというのにシーツを被りブルブル震える、あそこに隠れているのは「露天商の店主」。
(神様は俺を見捨てやしなかったッ! 俺には分かるぜ、「こいつ」を使って光名院のクソッタレをブチ殺せば良いんだねッ!)
シーツを引き剥がし、店主を引きずり出した。尚も震える店主をダレルは一発殴り怒鳴りつける。
「おいッ! 怖じ気づきやがってこの『ウッルー・カ・バッチャー(豚の子供 ※ヒンディー語の悪口)』が!」
「ヒィ~~ッ! ダレルさん、俺、怖くて、怖くてよォ~~」
「何言ってやがる! てめーの為にこのダレルがッ 舎弟共を集めて来たんじゃあないかッ!」
「ぎゃびッ! 殴らないでくださァい~~」
「直に光名院の野郎がここまで来ちまう。そうすれば俺達ャ二人ともたこ殴り……いや、たこ殴られだッ! ただじゃあ済まない」
「お、俺は……どうすれば……」
「お前にも反撃のチャンスはある。いいか……俺の話をよく聞け……」
……
…
面白い
『ジリリリリリリリリリリ』
ホテル中に警報機の音が鳴り響いた。次にホテルのボーイの声が聞こえてくる。
『これは訓練ではありません! 火事です! 速やかにホテルから避難してください!』
この声と音、共に正体は「トゥナク・トゥナク・トゥン」。ダレルはトゥナクを、『声や音の模倣はこいつ(トゥナク)の本文じゃあねーんだ』と語る。このスタンドを発動させるには「人の信頼を得る」必要がある。模写された音は人々に「信憑性」を与え、行動に移させるのだ。
「火事だってよ、火事」
「早く逃げましょ」
「どいてくれよ! 炭になっちまうぜ!」
光名院が居る二階ロビーは上の階から避難する客らがどやどやと押し寄せ始めていた。
待ってたぜ!
我先にホテルから出ようと一階へと急ぐ客達。四階に行きたい光名院との力の向きは逆。ホテルに宿泊する人は千人超。この辛さは、川を登る鮭や鮎を想像すれば分かるだろう。本来歩けば一分とかからない距離が遠く感じる。
「退けろ! オレは上の階へ行くんだ!」
半ば操られている状態の人々にこの言葉は聞こえない。「自分の行う行動に疑い持たないこと」、そこにさらに「集団心理」が働くことでトゥナクの力は極限まで引き出された。今の光名院の言葉は蚊の羽音ほどの価値もない。
(クソ……あの野郎、今度はホテルの客を操りやがったのか……)
(自分を今の位置に留めておくことで精一杯だ……奴が客に紛れて逃げないところを見ると、まだホテルの中に居ることが分かる)
(客が全員避難しきればこの「波」は消える……そこまで5分くらい踏ん張れば……)
(踏ん張れば……)
(……? これは……?)
じわり。腹の辺りに感じる違和感。視線を下に向けると、そこにはいつかの露天商の店主がいかにも「してやったぜッ!」と言う顔で引っ付いていた。
「……ぐぶッ! て、てめェッ!」
ただ引っ付いてきたのではない。店主の手に握られたナイフは確かに光名院の腹に突き刺さっていたのだ。
数分前、四階201号室。ダレルは店主にナイフを一本渡し、こう言った。
「なぁ、ブーペンよォ。俺にはあの光名院の『弱点』が分かったんだ? 聞きたいか? いや、聞きたくなくても話すぜ。お前にスタンドが見えないのは知っているが話すッ!」
「あいつのスタンドは恐らく『衝撃を止める』スタンドだ。銃弾がスタンドの掌に触れた途端にピタリと止まったところから予想した」
「四階から落とされても平気だったのもこれの力だろう」
「だが……ここで俺は分かったんだ」
「光名院が衝撃を止める時! 奴はスタンドを事前に用意させていた! まるでPKの時のゴールキーパーのようになッ!」
「衝撃を止める為には『衝撃が来ますよ』と分かった状態、或いはそう予想できる状態でスタンドを『待機』させなきゃあいかんと言うことだ、分かるだろ?」
「……奴はスタンドを出していない注意が散漫になった時が狙い目だ」
「俺はこれからトゥナクで『環境』を作る……お前は人ごみに紛れてそのナイフで光名院を刺せ。刺すだけで良い」
「スタンドを構えないなら攻撃は容易いからなッ」
「出来るだけ急所に近い場所を一発で……(お前が光名院を殺したところで、その罪がこの俺に来ることはないからな)」
そして、今。ダレルの目論見は当たり、店主は四階へ向かう為に人をかき分けるので夢中な光名院に気付かれぬまま、ナイフをその身体に突き立てることに成功した。
急所は外れたがこうして人に押される度に刺さったナイフは動き傷は抉れ、ダメージは大きくなっていく。
「え、えへ、えへへ~~ッ! ダレルさァ~~ン、これから俺は次にどうすればいいんですかァ~~い?」
「……」
(内臓……には刺さっていないみたいだな……)
「成し遂げた喜び」に狂ったように笑う店主とは違い、光名院は冷静に自分の怪我の状況を確認した。ナイフを動かされると気を失いそうな痛みが襲うが、彼にとっては「まだ平気」なクラスだ。
「死ねよォ~~ほんとにさァ~~アンタが悪ぃんだぜ~~?」
(……)
「なあ……いつぞやの店主さんよォ」
「へ、へへへひひひひひ、なんだよ~~、こ、こここの俺様に命乞いをすす、するのかァ~~?」
「……オレはよ……言ったはずだぜ……『オレを騙した奴は2、30mはスッ飛ばす』って……」
「へ、ほはへひょひひひひひ……できるもんかよ~~ッ! ダレルさんがお前のす、スタンドは『衝撃を奪う』スタンドだって言ってたぜ~~」
「! なるほど……オッサンはそう言っていたのか……良い線は行ってる」
「だが……それじゃあストで100点はとれない」
「えェ~~ッ!?」
「『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』ッ!」
光名院の掛け声と共に現れたスタンプ・オン・ザ・グラウンドは露天商の店主を殴り「何か」を貼り付けた。
誤 「だが……それじゃあストで100点はとれない」
正 「だが……それじゃあテストで100点はとれない」
続きまだー
店主にはスタンドに殴られた感触さえないので分からないだろうが、その身体には「ドグシャアァッ」という漫画の効果音のようなものが刻まれていた。
「えっ? えっ?」
「状況が飲み込めていないようだから説明するが……オレの『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』の能力は『衝撃を吸収』する能力なんかじゃあない……『衝撃を固定化させる』能力だ……事象を完全に消滅させることなんてできない」
「さらにもう一つ。オレの能力はそれだけで終わらない。『固定化した衝撃を自由に貼り付けることができる』ッ!」
「なんですってェ~~!?」
「ちなみに今、お前には『四階から叩き落ちる』衝撃を与えた。安心しろよ、うまく着地したし全身の骨が複雑骨折する程度で済むんだろうから……それに向きも調整した。横にスッ飛ぶから床を突き破ってさらにケガを負うこともない。壁を突き破って吹き飛んだ時のことは考えてないがな」
「えっ、えへっ、えへへっ、えへ~ッ!? そ、そんなッ俺がッ何を~~ッ」
「アンタはオレを騙した……有罪(ギルティ)だ」
「そんなッ、いや、いやだ、だ、だだだだダレルさんッ指示をくれッ俺に指示をくれよォ~~」
「オレを殺したいんなら人の指示なんか待たずに自分で考えて行動しろよな」
「指示ィィィッ~~~~~~~~がべぼぶッ!」
衝撃は解放された。店主は人間の波をかき分けながら四階へ繋がる階段までスッ飛んで行った。
「『道』は……できたぜ」
目の前に出来たのは店主がスッ飛んだ軌跡からできた『道』。『十戒』のモーセが割った海のように光名院は『道』を進む。
「よ~~やく辿り着いたぜ、ダレルさんよォ……」
「……(仕留めそこなったのかッ!?)」
律儀にもダレルは四階201号室に一人留まり、光名院が死んだという報告を待っていたところであった。が、命じた通り彼の腹にナイフは刺さっていても、ここまで辿り着く体力があるのなら致命傷は与えられなかったのだろう。
「これからオレの質問に答えてもらうぜ。まず……ジョーデルはどこにいる?」
「お、教えてくれたら助けてくれるのか――アッギャアアアアッ!?」
ダレルが口を開いた途端、脹ら脛が突然破裂したような痛みに襲われた。
痛い、痛すぎる。血も出ている。そう、これはまるで――
「撃ったのかッ!? お前っ、今俺のふくらはぎをッ撃ったのかァッ!?」
実際に銃で撃った訳ではない。これは数分前、光名院を狙った銃弾を止めた時に奪った衝撃。それを素早くダレルに貼り付け解放したのだ。『グラウンド』には、衝撃を貼り付けた瞬間に解放する芸当も可能である。
「無駄口を叩くからこうなる。質問に質問で返すなッ! 答えろ、ジョーデルは何処にいる? 無事か?」
「……ま、まだ何もしてない! お前をブチのめしてからじっくり『いただく』つもりだったん――フガァッ!?」
答えきる前に今度は『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』に顔面を殴られた。
「う、嘘は行ってないぞッ! 殴るなんて酷いッ!」
「その情報が正しいかどうかはオレが決める。それに……今のアンタはオレにどうこう言える立場なのか?」
「ぐ、ぐぎぎぎぎぎ……」
(ち、チクショーッ! ちょーっと俺の舎弟達を蹴散らしたくらいで調子に乗りやがってェ~~……)
鼻血を拭い、腫れた頬をさすりながらダレルは考える。彼の脳裏には過去の栄光がよぎった。
(やられっぱなしの俺じゃあない。そうだ、今は……逃げよう、逃げるんだッ、トゥナクを使って!)
(そしてまた舎弟を集めて……また必ず奴を……!)
「何を考えている?」
その思考も光名院の声により遮られた。背後にはスタンドが腕を組みダレルが逃げないか監視の目(ゴーグルだが)を光らせる。
「トゥナク・トゥナク・トゥン」は生憎「近距離パワー型」ではない為、「スタンプ・オン・ザ・グラウンド」と渡り合える戦闘力は持ち合わせていない。使うとするならトゥナクの能力の部分。
(や、やるぞ! 俺は舎弟なんか居なくても『やる時はやる』男なんだぜッ!)
「な、なぁ――」
「ん……?」
勝負の時、ダレルは意を決して光名院に話しかけた。
不定期更新みたいだけど期待
「……悪かった、悪かったよ光名院。舎弟らが勝手にやったこととは言え、これはやり過ぎだよな。怒るのも無理はない、分かる、分かるよ、ホント……」
「……」
光名院は黙って聞いていた。何も言わず、目を瞑り、ただ黙って聞いた。
「黙っているならトゥナクが『効いている』証拠」と思いダレルの口数も徐々に増えていく。
「これもさ……全て一人の舎弟のせいなんだよ、分かるだろ? 露天商のヤツだ。アイツが俺に泣きついて来たんだ。最初は俺も悩んだ、復讐に手を貸すのはどうか、ってさァ」
「……」
「アイツの……ブーペンって言うんだけどな。アイツの決心も固かった、『絶対に復讐したいんだ!』ってな。だから、さ……俺もアイツの兄貴分だ、助けてやりたくなるじゃあないか。分かるだろ?」
「……」
(効いているッ! 効いているぞッ、多分ッ、いやかなりッ! このままブーペンに光名院の怒りを『移動』させて逃げきるんだッ!)
「だからさァ……分かるだろ? この怒りを俺にぶつけたってどうしようもないんだぜ? ここはお互いに……な? 頭を冷やして――俺を解放してやってくれよ」
ダレルの(トゥナクを使った)必死の説得に光名院も「むむ……」と唸り考え始めた。
(手応え『アリ』! アイツは俺のトゥナクに『誘導』された! これでアイツは簡単に俺を解放してくれるッ)
「そうだな……分かった。ダレル、アンタには負けたよ。すまなかった、解放するよ――」
「そうか……ありがとう(や、やったッ! やったぞッこのマヌケめッ! ダレル様を解放をしたことを後々後悔するといいッ!)」
「――とでも言って欲しかったのか?」
「なッ!」
「マヌケはアンタの方だぜ?」
「な、なぜだァー! なぜ俺の『トゥナク・トゥナク・トゥン』が効かないーッ!? や、やめッ、ダアァァァーッ!! なぜ殴るんダアァァァーッ! せめて答えてくれダアァァァーッ!?」
「やかましい。大人しく殴られてないと舌を噛むぜッ!」
完璧だと思っていた能力の発動。それなのに何故、光名院はその術中に嵌まること無く、今ダレルを殴り続けられているのか。
「殴られながら聞けよ。ここで補習授業だ。アンタの『トゥナク・トゥナク・トゥン』はなぜオレに効かなかったのか……それは『オレがアンタ(ダレル)の言葉をハナから信用しなかった』からだ」
「……アンタがオレの能力を推測したように、オレも気づいたんだ」
「アンタのトゥナクの弱点、それが『アンタ(ダレル)を信用しない人間には能力を適用できない』ってこと」
「最初、オレが四階から飛び降りた時アンタは言ったよな? 『(ジョーデルのいる)場所を教えよう』と……オレはこの言葉を信用してしまった。まさかここまでやられるとは思わなかったからな。だから飛び降りた」
「舎弟の連中は『イエスマン』だ。アンタに忠誠を誓っていたし、どんなことだってしていた。オレに銃口だって向けた。これもアンタが操っていたんだろ?」
「だが! オレが『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』を使って銃弾を止めた時、アイツらは急に怖くなった『もしかしたらこのまま殺されちまうんじゃあないか』とか『超能力使ってやがるコエー』とか考えたんだろう。で、逃げ出した」
「そこでアンタが『戻れ』とか叫んだが、帰ってこない。人を殺すことに躊躇していた奴らを二言くらいで、殺人マシーンになるよう誘導できたアンタでもできないことがあったんだ」
「『戻れ』と言われた舎弟はこう考えるとオレは予想した。『ここで逃げたところで殺されちまうよォォォン! 今ボスの言うことを信用したらこっちが死んじまう!』」
「信用の関係は崩れて、能力は解除されて舎弟らは消えちまった」
「ここまでは仮説に過ぎない。最後にこの弱点の存在を証明する為にオレは、アンタがトゥナクを使う瞬間を待った」
すごいな
「アンタの説得。役者顔負けだったぜ? その演技力、アカデミー賞級」
「だがオレは信じなかった。本当のことを言ったとしても、とりあえず殴る。信用すれば信用するだけ術中に嵌まっていくはずだからな」
「――予想は当たったようだな。そもそも信用しなければ操られない。簡単なようで難しい……これがオレなりの攻略法だ。どう?」
「正解ですッ! 正解ですからもう殴らないでェェ~~ッ!」
ダレルは殴られ過ぎて二度気を失いながら、光名院の『質問』、否、『拷問』に答えた。そして、最後の授業が始まる。
「いや、ダメだ……『教育的指導』はまだ終わっちゃあいない。オレを騙した借りはキッチリ返してもらうぜ。『スタンプ・オン・ザ・グラウンド』!」
「オォ……ラララララララララララララララララララララララララララララララァッ!!」
光名院が拳に力を溜めて連続の突きを放つ。ただの突きではない。『銃弾の衝撃』を『貰った分だけ全て』貼り付けているのだ。
「――ラァッ!!」
「ダァダァダァァァァァァァァァァァァァーーーーーーッ!」
ダレルはその衝撃を全身に受け吹き飛ぶ。ベランダを突き破り、落下。燃えていないホテルを不思議そうに見つめる避難者達の中へと消えていった。
「……安心しな。オレは銃の扱いには慣れている。『急所だけ』外した。下には救急車もいるだろうし……暫くそこで頭を冷やしな」
かっこいい
ちゃんとスタンドバトルっぽくなってるな
ドアをノックする音で起こされたジョーデルは目をこすりながらドアアイを覗き込む。そこにいたのは見知った顔。光名院だ。
「ふわぁ……どうしたのサブロー? 顔色悪いわよ。時差ボケ?」
「部屋に……誰か来たのか?」
「えっ? わたしの部屋? いやぁ~実はサブローが部屋を出た後、わたしったらすっかり寝ちゃってて……今のドアノックの音でやっと起きたわけ。だから~、わたしの部屋には誰も来てないと思うけど……あはは」
「ああ、そうかい……良かった。なら、いい。少し……疲れた……ぜ――」
「え、どゆこと? って、キャアアアアーッ! 何で倒れてんのよ! それに血が出てるじゃないのよォーッ! 誰かーッ、誰か来てーッ! サブロ~~ッ!」
「トゥナク・トゥナク・トゥン」
本体名――ダレル
二十発は軽く撃たれたが急所をうまいこと外されたので痛いのに死ねなくて再起不能。四階から落ちて腰の骨も折れた。
ダレルの舎弟達――再起不能。光名院が怖くて家から出られなくなった。
「スタンプ・オン・ザ・グラウンド」
本体名――光名院三郎
疲労と腹部に負ったナイフの傷のせいで気を失った。ジョーデルに病院に連れて行かれたので無事。一日寝たら元気になった。カレーも食べている。
ジェニファー・ジョーデル――この混乱の中でずっと寝てた神経のズ太い女。光名院から事情を聞かされてはいないが、なんだか悪いことをしてしまった気がしている。
To be continued =>
プロローグ完だね。乙!
【名前】トゥナク・トゥナク・トゥン(元ネタ:TunakTunakTun/DALER MEHNDI)
【見た目】薄汚れたぬいぐるみのような継ぎ接ぎの天使の姿。
【能力】相手が少しでもダレルを信じている時(「話を聞いてやろう」という姿勢も信用している内に入る)、疑問一つ考えさせずその命令に従わせることができる。一度聞いた音や声をマネして『説得力』を増すことも可能。
【破壊力:E /スピード:A /射程距離:声の届く範囲まで /持続力:ダレルを少しでも信じている限り∞ /精密動作性:B /成長性:E】
ピーキーなスタンドだなあ
良い絵を描くためには良い題材が必要である。美しい風景を描くには美しい風景が必要だし、美しい人物画を描くには美しいモデルが必要となる。少なくとも「ギルバート・O」はそう考えていた。
ムンバイ、インド門。観光客の集団から少し離れた場所でキャンバスを広げ、彼は絵を描く。
彫りの深い顔立ちはミーハーな女達が彼に集まりワーキャーと囃したてるが、それに応えるつもりはない。ただ、今描きたい物を描く。
この綺麗な風景を早く絵の中に収めたい。この思いが無ければ大勢より一人を好む彼がこんな喧しい場所には来るわけがない。
しかし、彼の絵には『何か』が足りなかった。インド門、第一次世界大戦の死者を弔う慰霊碑、それを興味深げに見る観光客、通り過ぎる市民――そんな絵に『何か』が足りない。『何か』は何なのかは分からないが、確かに何かが足りない。
「雨が降りそうだ……キャンバスを濡らしたくはない。だがもう少しだけ……」
そんな不満と不快感を抱えながらギルバートは今にも来そうなスコールに備え、『8本の筆』でキャンバスに色を塗り始めた。
ゾクゾクする始まり方
それっぽいね
今回も期待
傘を差しながら、滞在中のホテルへ戻る途中。ギルバートは二人の男女とすれ違う。
男の顔は覚えていない。確か、昔の戦闘機パイロットが付けていたようなゴーグルを額にかけていたような気がする。問題は女の方だ。
「なんで着いてくるんだァ? お互い一人旅なら一人で行動しろよなーっ」
「えへへ、いいじゃないのよサブローッ! アナタといると何だか面白いことが起きそうなのよねー」
「巻き込まれるオレは面白くねーんだよ! 帰れ帰れ」
「えーダメー? ご飯おごるからさァ~」
「ならいい」
他愛のない会話をする彼女にギルバートは目を奪われた。金髪碧眼、異国の空気に一人違うオーラを持った存在。
『何か』が何なのか、やっと分かった。パズルの最後のピースがやっと見つかった時のように、ギルバートの中で何か『喜び以上の感覚』が湧き上がって来るのが分かった。
「見つけた……見つけたぞ……彼女だ、僕の絵に足りなかったのは……彼女なんだ。どんな手を使ってでも僕の絵に彼女を入れたいっ!」
思い立った彼は、本来帰るべき場所の方向とは逆の――ジョーデルらの行く方向を静かに追った。
「うゥ~んッ! このチキン美味しいわァ~~ッ! 秘伝のスパイスに漬けたチキン、皮はパリッ、肉はもっちりッ! 噛めば噛むほど肉汁が溢れるゥ~~ン! このチャトゥニーにもよく合うしィ」
「アンタ一人で食べてる時もそんなこと言ってるのか?」
「へ?」
レストランに入る二人を監視するギルバート。何度見てもやはり自分の見立ては正しく、絵を完成させるには『彼女』が必要だと考える。
こうして水さえ飲まず何も頼まずジッとジョーデルを見つめ続けて数分。ストーカー紛いのこの行為、見られている本人は気付かなくても、『光名院三郎』はあの奇妙な視線に既に気がついていた。
「ジョーデル、飯食べたら早くホテルへ戻ろうぜ。雨が強くなってる」
「ええ、そうね。でもこの『サブジ』って言うのー? すンごくおいしいッ! もう一個食べちゃおうかしら?」
「……」
光名院の薦めで今日は早めにホテルへ戻ることにしたジョーデル。廊下で彼と別れ、自分の部屋へと入った。
「はぁァ~おいしかったわ! もう二日分は食べたって感じ……でも不思議よねーっ、こんなに食べても夜にはお腹がペッコペコになっちゃうんだから」
ゴロリとベッドに横になり天井を見上げる。
(天井のシミの数ってたまに数えちゃう時ない? 50辺りでどこをどれだけ数えたかうやむやになっちゃうの)
「1……2……3……4……5……」
「……こ、こんなシミ……あったかしら」
「これシミじゃあないじゃないッ! な、なんで……なんで男の人が天井にぶら下がってるのよーーーーッ!?」
そこにはちょうど忍者が天井に張り付いて場をやり過ごすような姿勢でギルバートはいた。不気味に薄ら笑いを浮かべながら黙って、慌てるジョーデルを見つめている。
「あ、アナタ誰ッ!? 『いつ』からここに隠れていたのッ!」
「ふ、ふふ、僕の名前は『ギルバート・O』。ついさっき君が部屋に入るちょっと前から『待たさしてもらっている』」
そのままぬるりと壁から降りると、そのままベッドの上のジョーデルににじり寄った。彼女は「こういうのは大事な人にあげたいのよーっ」と悲鳴を上げる。
が、ギルバートは何故こんなにも拒否されるかが分からない。あまり社交的ではない彼にとって、コミュニケーションの手段は限られている。
モデルを雇いたい時、どうするか。後ろからこっそり着いていき、こうやって待ち伏せる。この手に限る。
何故かあまりうまく事が運ぶことは少ないのだが、これは彼なりの誠意、『やる気』の見せ方なのである。
そうとも知らずジョーデルは泣き叫ぶのを止めない。
「乱暴する気でしょうッ!? わたしをォォーッ! サブロー助けてェ~ッ貞操の危機ってのはこういうことなのォーッ!」
「……んン? いや、待て待て待て待て待て待て待て待て待て、ちょっと待ちたまえよ君。君……僕のことを何だと思ってるんだい?」
「グスッ、そりゃあ……暴漢、でしょ? 女の子の部屋でこっそり待ち伏せて詰め寄るようなヤツァー暴漢しかいないわよーッ!」
ギルバートは頭に目覚まし時計をぶつけられたが怯まず答えた。
「……いや、いやいやいやいや、違う、違う違う、全然違うよ。まさかこの僕が暴漢に間違われるなんて……かなりショック。僕の職業は……『画家』。君に僕の絵のモデルになってもらいたくて来たんだ」
「え、えぇ……?」
ジョーデルは困惑した表情でギルバートを見た。一方の彼はというと既に「はい、いいですよ」と言われるのは当然と言われるつもりで答えを待っている。
「どうかな? 答えは……出た?」
「あの……ギル……バート……さん?」
「『ギルバート』でいい。画家のモデルの関係に『さん』はいらない」
「じゃあ『ギルバート』……言うわ……答え……」
「ああ」
「『ムリ』よ。言いにくいけど……言ったわっ! もう一度言うわね、『ムリ』よ、『ムリ』」
「何だってッ!? む、『ムリ』だと? そうだ、言い忘れていたが報酬は出すよ、言い値で構わない。僕はあまり絵で金儲けをしようと思ったことは無いが貯金ならあるからッ! 『脱げ』とも言わない! ただ、インド門辺りで二時間ほど座ってもらって僕はそれをモデルに絵を描くってだけで――」
予想外の言葉にうろたえるギルバート。そんな彼にジョーデルは申し訳なさそうに告げた。
その言葉には不審者に対する嫌悪感を露わにするような言い方を通り越し、一種の憐れみに近いものが含まれていた。
「違う。そういうことじゃあないの……ギルバート。あのね、『ムリ』っていうのは『ムリ』ってことなの。アナタがどんな条件を出してもできないものはできない、そういうことよ……アナタに何が足りなかったとかじゃあない。わたしが『ムリ』なの」
待ってる
ちょいちょい更新を楽しみにさせてもらってますよ~
「そうか……」
「あっ、あんまりがっかりしちゃあダメよっ! わたし以外にだってもっといいモデルなんかいっぱいいるんだから! ねっ、ねっ?」
がっくりと肩を落とすギルバートを励ました。あまりにがっかりしているので、彼女の方も彼の誠意に応えてあげられなかった罪悪感さえ感じてくる。
だが、ここで頭に乗らせてしまえば付け込まれてしまうかもしれない。言葉選びには慎重を期す。
(この男ホントーに『ヤバい』わ……何がヤバいかって聞かれるとその『ヤバい』部分が多すぎて教えられないくらい『ヤバい』)
(ここまで言ってるんだから早く出て行ってよね……面と向かって言えないけど。じゃなきゃあ警察を呼ぶわっ!)
この時の彼女は油断していた。相手は話せば分かるタイプの人間だと思っていたし、このまま帰ってくれるものだとも考えていた。
背中に感じる熱の感覚。その次、身体全体が痺れるような感覚。電流のような、いや、「ような」ではなく「そう」だ!
「うッ!? ギルバート、アナタ、わたしに何をした……の」
「スタンガンだ。断るなんて……ひどいよ。これは最終手段のつもりだったんだが」
「でも確信した。君はやはり美しい。モデルになってもらいたい。君をモデルにした絵は国宝なんて目がない程の価値を持つことになるだろう」
「だからさらうことに決めた」
極めて冷静な判断であった。
待ってました
まだかなー
待ってるよ
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