魔王「私の使命は・・・」(28)
--------------魔王城 魔王の間 最後の戦い中-------------
勇者「魔王!覚悟!!!」
魔王「ふははは!流石だな!勇者、しかしまだまだ!(ふふふ、今回の勇者やりおる、気に入った)」
勇者「くっ!手ごわい(だけどなんかすげぇ楽しいな)」
賢者「私たちをお忘れでなくて?勇者!攻撃力増強魔法+速度上昇魔法!」
盗賊「攪乱はおれっちに任せな!」
戦士「魔王の攻撃は全部俺達が何とかする!勇者、お前は攻撃に集中しろ」
魔王「バカどもが!うぬら人間が勇者と魔王の戦いに水を差すな!」
勇者「魔王!僕らはどんな苦労もどんな困難も4人で乗り越えてきた!お前も4人で倒す!」
魔王「よかろう!だが、勇者であるお前はともかく、生身の人間が私の攻撃を受けて無事で済むと思うな!」」
その後、勇者の光の一太刀が魔王を切り裂き、それが決定打となった
勇者「はぁはぁはぁ・・・魔王!往生の時だ、止めだ!」
魔王「ま、待て・・・これ以上の攻撃は待ってくれ」
戦士「何?魔王ともあろうものが命乞いか?」
魔王「違う、勇者の光で切り裂かれた以上、この世界の魔王である私はもう助からない。近いうちに灰燼と化すのは間違いない。お前たちの勝ちだ。だが使命は果たさなければ」
賢者「使命?(この世界の?)」
魔王「そうだ、勇者には魔王を倒すという使命があるように、魔王にも使命がある」
盗賊「けっ!魔王に使命?世界を滅ぼすとでもいいたいのかい?」
勇者「それとも僕を殺すことかな?」
魔王「どれも違う、それをするなら自爆とか、破壊神を召喚すればいいだろうが、それは私の美学に反する。先ほども言ったとおり、勝ったのはお前たちだ」
賢者「言っていることがまったくもって意味不明ね、聞く耳持たなくていいのではないかしら?」
魔王「賢者よ、通常の人間であるお前たち3人はそれでもいいだろうが、勇者には聞いてもらわないとならない」
魔王「長い話になる、これ以上のダメージを受けては全てを語れなくなる。こちらに攻撃の意思はない、疑うのなら戦士、刃を私に向けておくといい」
勇者「皆、聞こう、魔王、話してくれ」
戦士「おいおい、武器おさめるのかよ、勇者もお人よしだな、ま、お前がそうなら俺もそうするわ」
魔王「勇者よ、私を倒して望むのは、平和か?」
勇者「当然だ、そのために旅をしてきた」
魔王「では、その平和な世界でお前はどう立ち振る舞う?」
賢者「・・・・」
勇者「えっ・・・?」
戦士&盗賊「???」
勇者「王様に認めてもらって、結婚して実家に帰るという平凡なのを思い描いてたんだけどなぁ」
魔王「はっきり言おう、それは無理だ。なぜならお前は勇者、魔王を倒した人間だ。姿形は人間をしているが、戦闘能力的には・・・我らと同じ化け物だ」
勇者「戦闘を教える先生になるとか・・・・」
魔王「初めのうちはよい、お前は英雄として凱旋される。国王も認めそういう貴族の教育かかりのような重役につけるかもしれない、だがそれは続かない。
そもそも、それは勇者である必要性が全くない」
勇者「確かに、僕は力では戦士に勝てないし、魔法も賢者には勝てない、スピードも盗賊には・・・ははは、僕って何が誇れるんだろうね」
魔王「そんなもんは私に立ち向かってくる勇気しかないだろう。勇者の武器は勇気であり、魔王を倒せる一撃を放てることだ。さて、話を戻そう」
賢者「つまり、『普通の人間じゃない勇者』を普通の人間の組織で面白く思わない人がいるのではないかということね」
勇者「そ、そんな・・・・」
魔王「流石は賢者か。理解したようだな。その通り、貴族でもない、王族でもない勇者を国王以外の公爵はどう思うか。答えは簡単、目の上のたんこぶだ」
戦士「くっ!そんなことがあってたまるか!俺たちは勇者をそんな扱いはしない!」
魔王「それはお前たち3人が勇者と強い絆で結ばれているからだ、他の人間はそんなことはなく、そうするのが人間だ。誰も自分の横に脅威はおいておきたくないものだろう?」
戦士「・・・くっ、でもそれは俺たちにだって同じ戦闘能力を持ってるじゃないか!そりゃ勇者に比べたら弱いけどよぉ」
賢者「戦士、私たちには当てはまらないわ。私たちは最悪転職してしまえばレベルは1、能力も半減するわ。元が普通の人間だもん」
戦士「そ、そうか・・・、しっかり鍛錬を積んでいるとはいえ、そういう人間ならそれなりにいるもんな。だからさっき魔王は俺たちを普通の人間って言ったわけか」
盗賊「そこらへんはわかったけどよぉ、それは勇者と俺たち普通の人間の問題であって、あんたに関係ないだろう?あんたの使命はどうした?」
魔王「あわてるな、盗賊。こういう話をしたのにも私の使命と関係があるからだ」
盗賊「ま、いいけどね。そもそも、一番最初の質問の意味が分からない。魔王を倒して平和以外を望む必要があるのか?」
賢者「というよりかは、他を望めるように聞こえたわ。そもそも、どういう理屈で平和以外の話が出てくるのかがわからないわ」
魔王「ふむ、正確に言うと魔王を倒して得られるものは平和ではない。倒したものの願いが叶うのだ」
戦士「は?」
勇者「初めて聞いた・・・」
魔王「それはそうだろう、この時代のこの世界で魔王を倒したのはお前が最初。そして最後だ。誰もそのことは知らない」
魔王「魔王というのは魔力の塊。それゆえ魔王が死ぬときには倒したもの中で最も強い者。大体の場合は勇者の願いが叶うのだ。
勇者が平和を望めば平和な世界にはなる。しかし実際には人間たちの考える平和な世界というのは真に望まなくとも
魔王が死んだ世界ではその時点で全ての魔に駆られるものが弱くなる、活動力が落ちることもあって、近い未来に実現するのが普通だ。
逆に、平和になりすぎるというのは争い事がなくなるということであまりよく働かないこともあるだろう」
戦士「俺の頭じゃ言ってる意味が分からねぇ」
賢者「平和すぎると、色々いい意味での競争とかもなくなるってこと。例えば、道具屋が二つあったとして、今は価格として競争してるから安い値段になってるけどけどそれがなくなったら価格が両方とも高くなるとかね」
盗賊「そうそう、おれっちみたいな貿易商も困っちゃうわけよ」
戦士「なるほど・・・ってお前のは盗品だろ!」
勇者「じゃあ、僕は、僕は何のために今まで戦って、努力してきたんだ・・・」
魔王「それは私を倒すためだろう。そこまではあってるんだ」
賢者「つまり、勇者は魔王を倒すまでが使命で、別段平和にするのが使命じゃないといいたいわけね?」
魔王「ふむ、賢者がいると話が早くて助かる。そうだ、先ほども言ったとおり、勇者が平和にするのが理想ではなくこの世界の自浄作用で自然に平和になっていくのが理想なんだ」
盗賊「さっきから聞いてっとさ、お前、本当に悪なの?」
魔王「私に悪も善もない。勇者を善とするなら魔王が悪というのが人間のお得意な理屈だけだ」
勇者「・・・・魔族からしたら僕が悪ってことか」
魔王「要するに、勇者が機能を果たすのは魔王がいるからその意味があり、魔王のいない世界に勇者は必要ない。むしろいささか邪魔なのだ」
勇者「もういい・・・お前が死んだら、俺も世界が平和になっていく様を少し見て自決する。世界のために・・・それでいいんだろう?」
戦士「おい!お前、なんてことぉ!」
賢者「なんで悪くない勇者が死ぬのよ、それはおすすめできないわ。というか意地でもさせない」
魔王「はぁ・・・バカか勇者は。それかよほど自己犠牲の精神が染みついてるんだな。」
勇者「なんだと!?」
勇者「そもそも、お前が自殺などできるわけがない、神の加護があるためよほどバラバラにでもしない限り生き返る。誰かに倒してもらうしかないんだ」
盗賊「それは魔王、あんたにしかできないってか?」
魔王「お前たちがやるならともかく、出来ないだろう、心優しい正義の戦士たちには。自殺ができないことに関しては私も同じだがな」
魔王「勇者と魔王は常に表裏一体、全く別のものに思えるが実は向いている矢印が邪か聖かだけで大差がないというのが事実なんだ」
賢者「言いたくないけど、魔王が勝って聖なるものたちが絶滅したとしても世界は平和に向いていくってことね?」
魔王「ああ、その通り、世界は滅びないんだよ。それはお前たち人間の言う平和ではないが、魔族の意味する平和には近づくはずだ。人間には地獄以外の何物でもないがな」
盗賊「じゃあ、なんで勇者と魔王は戦うんだ?完全に矛盾してるじゃないか。戦わなければ少なくとも平和っぽいじゃないか」
勇者「小さいころから魔王を倒すのが正しいことだと思ってたんだ、そんなことできるか」
魔王「そう、初めから我らは戦うことになっている。もっと言うと戦うことを義務づけられているんだ」
戦士「なんでだよ、そう教育されてきたからなのか?」
賢者「違う・・・・今の言い方だと勇者と魔王の生き方自体を決めつける何かが生まれる前からあるんだわ」
魔王「お前たちの言う神の仕業だ」
勇者「!」
戦士「!」
盗賊「!」
賢者「・・・・」
魔王「賢者よ、あまり驚いていないところを見ると話しの察しがついていたか?」
賢者「そこらへんはなんとなく元が僧侶だから神様の存在は身近だし。あと神様が勇者と魔王を戦わせたい理由もなんとなく」
魔王「ほう、お前の意見を聞こうではないか」
賢者「さっきからの魔王の言い方を総合すると・・・ここ以外にも世界っていうのはあるっていうことね?
さっきから魔王がこの世界だのこの時代だの回りくどいこと言ってるからきになってたんだけど・・・さっきの平和すぎる世界の話で納得したわ」
戦士「け、賢者?な、何言ってる?世界がここ以外にあるって?何言ってんのかさっぱりわからねぇ」
賢者「私たちがいけない、知らない世界がいくつもたくさんあって、それを神様が統治しているって悟りの書にそれらしきことは書いてあったの。賢者になるとき、どうしてもそこだけが理解できなかったんだけど、そう考えると全て説明がつく」
盗賊「それが何で勇者と魔王の戦いの話になるわけ?」
賢者「さっき言ったように、平和すぎる世界はそれはそれで問題があるの。神様が言う世界はここだけじゃなくて全部。そのうち全部が平和よりは、少し戦乱の世があったほうが統治しやすいってところかしら」
魔王「ふむ、さすがの私も驚いた。私が説明をしようとしたのはまさにそれだ」
勇者「要するに、他の世界のために、俺たちは血を流して、必死で努力して・・・」
魔王「付け加えると、選ばれる世界は神のきまぐれだろう」
盗賊「ひでぇ」
戦士「だめだ、全然ついていけん」
賢者「魔王、あなたはこの事実をずっと知って?」
魔王「無論。少なくともこの世界の魔王になってからは。本来は倒された魔王及び、勇者は魂のみ回収されて、別の世界でまた魔王、勇者に転生する」
戦士「転生って?」
勇者「それは生まれ変わりってやつだ。賢者ほどじゃないけど僕にもそこらへんは分かる。勇者は生まれ変わるって聞いたことあるし」
魔王「その転生の過程で記憶もなくなるのが普通で、今話したことも知らないはずなんだ。
しかし、魔王は勇者に比べ長命であるため真実に近づける可能性もあり、
以前の世界で魔王をやっていた私はそれに気づくことができた。前の世界で賢者の知恵を数人分吸収からだな。
たまにお前のように悟りを開いたものでこの世界について真実に気付きかけるような優秀な人間もいるようだ。
そして私はその世界の摂理に反してみることにした」
盗賊「は、話が急に見えなくなった」
魔王「先ほども言ったとおり、魂が神のもとへ帰還するのは負けて戦死した方のみ。要するに、戦死さえさせなければその摂理は止まると考えた」
魔王「当時、3000年ほど昔の世界であったが、勇者にそのことを打ち明けた。もちろん戦う前にだ。だが、やはり聞く耳を持ってくれん。
やむなく戦うことになってしまったのだ。その後、勇者に打ち勝った私はどうしても止めがさせなかった。魂を神に返したくなかったのだ」
賢者「その勇者は驚いたでしょうね」
魔王「ある程度の回復を施したのち、表面は戦っていることにし、どちらも殺さないようにという約束をした。その当時の勇者もしぶしぶ納得をした」
魔王「しかし、世間というか、人間の視線がそれを許さなかった。どうしても勇者は勝つか死んでしまうかを必要としたんだ。だらだらと戦うのはやはり格好の悪いものらしい。
その当時の勇者は王国の支援で旅をしていたこともあって、早く終わらせる必要性が出たらしい」
魔王「そこで私達は考えた。当時の勇者はお世辞にも強くなく、私が負けることはまずありえなかった。」
魔王「私たちの出した結論は、戦いはする。そして片方、この場合は負けた方だが・・・をさっき説明した摂理から解放することだった」
魔王「私たちの魂は共鳴する。よって亡骸から魂を神の手にわたる前に取り込むことができる」
賢者「なるほど・・・確かにそうすることで神様に魂は渡らないかも。やっていいことなのかは別として」
魔王「その後、強力な魂が二つ同じ肉体にあることでとてつもなく強大な技を使えるようになった。が、その世界では形をとどめているのが難しいことがわかり、
自らの意思で神の手を通らずして転生をするはめになった」
魔王「そして、この世界で魔王をやることになった。記憶は残っており・・・というかそのままの姿で移動したというイメージだった。
意識を集中すると勇者の魂が体の中にないことが分かり、弱い方のみが消滅してしまったことがわかった。
形は不本意ではあったが、あの勇者の魂を救えたのではないかと思っていた。が、神は時間をかけまた勇者の魂を作り・・・この星のとある胎児に定着させた。
それが今の勇者、お前だ」
盗賊「すっげぇ重い話」
勇者「そうか、だから僕は、勇者の力使えるのに両親ともに普通の人で戦いも経験がなかったんだ」
魔王「くくく、我ながら浅はかさに笑ってしまう。まさか神がすぐに別の勇者を用意するとは思わなかった。考えてみれば勇者とて寿命は人間。
魂を作るのもそれほど困難であるはずがない」
勇者「それで、僕はどうすれば?魔王、君の使命って?」
魔王「私の使命は、勇者・・・お前を救うことだ」
勇者「え!?」
戦士「あ?」
盗賊「!」
賢者「やっぱり・・・」
勇者「ど、どういうことだ!」
魔王「この悪しき輪廻からお前を開放すると言っているんだ。これをすることで私の魂も消滅という形で救われる」
盗賊「でもまた神様が勇者や魔王を作るんだろ?」
魔王「勇者はこの現勇者が生きている限り、新たには現れない。そして魔王は・・・・」
賢者「・・・人間より寿命が長いからなかなか魂を作るのも難しいってこと?」
魔王「そういうことだ、私の魂が無くなってしまえば、少なくとも数千年の間、魔王という存在はこの世にあらわれることはない」
勇者「なぜだ、なぜそれを戦いが終わってから僕らに教えた!?」
魔王「戦う前に言っても信じないというのが一つ。それから、お前の戦意を削ぎたくなかったのが一つだ」
勇者「僕の?」
魔王「お前は心優しい。信じられなくても、自分が勝つことで消滅させる相手に全力で戦うことが出来ないかもしれないと思った」
勇者「僕のために・・・?」
魔王「私のためでもある。前回の勇者のように出来損ないではなく、力を刻苦して磨き上げた素晴らしい勇者だったよ、お前は」
魔王「今宵の戦いは、わが人生の中で最も死力を尽くすことができ、私も満足をしている」
盗賊「ちっ、やっぱりこの魔王わるくねぇじゃねぇか」
勇者「・・・わかった、魔王、すまない・・・僕はどうなるんだ?」
魔王「選択肢は2つ。一つはこの世界で力をすべて封印し普通の人間に成り下がること。もう一つは全然別の世界で力を持ったまま新たな人生を送ること」
魔王「強いて言うと後の方がおすすめだ、地上に戻ったお前のことを思うとな。仲間とも家族とも別れることにはなるが。そして子供を作り、魂を神に渡さないように普通に過ごせばいい」
魔王「おそらくお前の勇者としての魂は子供に遺伝した時点で神の目から見えなくなるはずだ。そしてお前の子孫が本当に力をいるときにその力を引き出せるようになるはずだ。」
勇者「そんなうまくいくのかな?」
賢者「分からない人ね、勇者。要するに勇者が望めばそうなるようなっている。それが魔王の死の使命ってことでしょ」
魔王「そう、それが勇者に対して神が用意した唯一の褒美なのだ。これは神にも変えられん。ある程度はお前の望むようになる」
勇者「そうではなく、願いが叶うなら魔王の魂を消滅させない手だってあるんじゃないのか?」
魔王「わたしはもういい、魔王でいることに疲れた。そして先ほどの二つの方法は神の手が入らず転生するようなもの。どちらにしろ私たち二人分の魂は必要だ」
戦士「なぁ、一個聞いていいか?魔王が勝った場合はどうなるんだ?なんか魔王には褒美ってあるのか?」
魔王「知らんな。寿命が延びるとかいろいろあるようだが、興味がない。勇者を殺すつもりがないからな。どうせ勝っても20年後くらいにまた別の哀れな勇者と戦うのを繰り返すだけだ」
盗賊「むごいな、俺らの神様。僧侶に言ったら信仰心揺らぐかな」
賢者「あたし以外の僧侶経験者に言ったらシバくわよ」
勇者「具体的にどうすればいい?」
魔王「お前は何もしないでいい。すべて私が私の魔力で行う、さぁ、どうする」
盗賊「・・・」
戦士「・・・」
勇者「このままの今の力をキープしたまま別の世界に行くよ、行く世界は・・・・神のところだ!ついでにできれば4人でだ。できるか?」
賢者「えっ?な、なにを・・・」
戦士「へへへ、お前が行くところならどこでも付き合うぜ」
勇者「幾度となく死んだとしても神のご加護とかで生かされてたけどよ、やっぱりもてあそばれてたんだな、俺。俺は俺でけじめをつける」
魔王「勇者以外は特に誤差のうち、問題はなかろう。だが神に戦いを挑むというのか、無事では済まないぞ」
盗賊「そうこなくちゃな」
勇者「さっき魔王は弱い魂が消滅したといった。だが、僕も魔王も魂は弱くないと思うんだ。拮抗していてたまたま俺がみんなの力も借りて上回っただけだ」
魔王「二人の魂を一つの肉体に入れてそのまま戦うと?」
勇者「出来るか?」
魔王「転生をどうこうする問題はあるがおそらくは・・・だが、私の魂の半分以上は消滅するだろう」
勇者「だったら俺の魂からも削ってその分を減らす。寿命が短くなるかもしれないけど関係ないや。僕の使命が魔王を倒すことではなく神を倒すことになるだけだ」
賢者「あきれた、神様に戦おうって?でも、本当に何も起こらない世界に閉じこもるよりは勇者らしいか・・・やれやれ」
魔王「あまり気は進まんが・・・わかった、失敗しても後悔するなよ・・・ムン さらばだ、強者たちよ」
盗賊「ここは・・・?」
戦士「宮殿みたいだな」
賢者「分からないけど、神様のところっぽくない?いかにも。って勇者!?無事?」
勇者?「ああ、無事だ」
戦士「声がダブってら、魔王の声もするぜ」
勇者?「魂が混在しているからだ、しかし、この能力、凄まじいものがある。みんな無事戻れる保証は全くないけどよかった?」
盗賊「関係ないな。神にケンカを売った人間っていうのも初だろうし」
戦士「ちげぇねぇ、それにお前のいない世界なんかつまらん、まっぴらだ」
賢者「まったく、この子たちはもっと賢くなれなかったのかしら?まぁ今回は私も一緒にバカやっちゃうけど」
-------神の宮殿---------
神「ゆ・勇者、だと?」
勇者?「正確には勇者と魔王の融合体です、神よ、あなたの真意を問いたい」
神「魔王に何を吹き込まれたか知らぬが、どうやってここまで来た?」
勇者?「散々私と魔王をもてあそんでいたということを聞きました、魔王を犠牲にし、それを質すためにここまで来た」
神「自分たちの創造主に手をかけようというのか、それがどういうことかわかっておるのか。それに賢者!君はあんなに敬虔な僧侶だったではないか!」
賢者「神よ、私は確かに僧侶でした。ですが、今はあなたよりも勇者を信じます。僧侶失格ですが」
勇者?「加護は受けられなくなるでしょうね」
神「そうではない、私に刃を向けるということは世界、君たちの住んでいた以外の世界そのものを危険にさらすのだぞ
それだけではなく、天地魔界のバランスが崩れどうなるかわからんのだ」
勇者?「そうなってでもこの悪しき摂理は変える、覚悟!」
神「くっ人間風情が、調子に乗りおって・・・・!よかろう、分不相応なことをしているのをその身で学ぶがいい!」
その後、あっけないほど勇者が圧勝をした。やはり聖+魔の攻撃が同時に繰り出されるのを神ですら止めようがなかったようだ
神「くっ、ばかものどもが・・・大変なことが起こるぞ・・・・ぐふっ・・・」
勇者?「勝った!」
賢者「す、すごい、あたしたち今度こそ役目なかったね」
戦士「ああ、完全にあいつの独壇場だったな」
勇者?(魔王!勝ったぞ!これでお前も浮かばれるよな・・・)
------------同刻 魔界 最深部-----------
魔神a「くくくく」
魔神b「どうやら、事はうまく進んだようですね」
魔神a「ああ、邪魔であった神が死に我らの邪魔をするものはもういない」
魔神b「どうやら私たちの息子であった魔王はきちんと魔王の使命を果たしたようですね」
魔神a「そのようだな!我ら魔族を魔界に押し込め、人間にのみ地上の恵みを与えた神を倒すという使命をな!」
魔神b「我らの魔の力だけではどうやっても勝てなかったですからね。」
魔神a「魔王と勇者の魂の成り立ちなどをでたらめにでっちあげ、、賢者の悟りの書など神々の記述を細工するなど、長い年月をかけてきた甲斐があった」
魔神b「あの魔王の魂はあえてああいうように加工を施したんですよね?」
魔神a「そうだ、勇者の魂と共鳴し、合体した時には凄まじいものになるように、歯車の要領で作った。だがおかげであいつは魔族としてはどうも人間臭いところがあるというか
優しすぎるところもあって失敗作だと思っていたんだが、今となってはどうでもよかろう。上手く勇者をだましてくれた」
魔神b「でも魔王は本当のことだと思ってるんですよね?」
魔神a「当然だ、そういうように魂を組んである。神が勇者の魂をリサイクルするのは事実だしな。あれで正しい行動をしたように思っているのだ。前例もあったしな」
魔神b「あの3000年前の勇者ですか?あの時はまったくもって利用価値のない勇者でしたな、あの時に同じことができていればもっと早くに人間界を滅ぼせたのに」
魔神a「人間界を滅ぼすだけならいつでもできる。だが、神が邪魔だったのだ、神を排除したうえで人間界を滅ぼさなければまた元の木阿弥だ。
それから3000年前のあれは勇者ではない、あれは神の真似をし私が作った偽物だ。魔王の魂の型を実際にはめられるようになったらどうなるかを試したのだ。
結果は上々、融合から転生まで面白いものを見せてくれた」
魔神b「それで今回のことを決意されたのですか。でも魔王は別に神を滅ぼしてくれとは言ってないですよね、
あそこで勇者がもっと腑抜けた選択肢をとることも可能だったと思うんですけど」
魔神a「その可能性は極めて低い。その後がどうなろうが自分のプライドを傷つけられて黙っていられないのが人間なのだ。そして勇者ともなれば自分が気遣ってくれた人とかが不利益をこうむるのを許せない人間なのだよ
そして勇者は勇者ゆえにまず元凶をつぶすことを考える。そういう種族なんだ、人間は、どうだ、愚かだろう?」
魔神b「寿命が短いせいもあるんですかねぇ」
魔神a「おそらくはそこだろう。我らと違ってたったの100年ほどで死んでしまうんだ、長期的に何が正しいかなどわからないもんさ、何はともあれ、これで地上は我らのものだ!」
魔神b「そういえば、あの勇者たちはどうします?天界にいられたら面倒臭くありませんか?」
魔神a「放っておくがよい、どうせ何もできんし何をするにもやり方が分からんだろう。天界から人間界が我ら魔族に駆逐されていく様を存分に見て楽しんでもらおうではないか
それに、あの勇者、あまり長くはないだろう。魂を二つ人間の肉体に入れるなど肉体が持つわけがない、そのうちバラバラになる。
馬鹿な奴だ、そこは魔王がきちんと原型をとどめておけないと説明をしたのにもかかわらずだ。
魔王の魂が主導権を握ってない以上、あいつは自分の体から魂をどうこうすることなどできん。
さらにほかの3人は人間だ。そのうち餓死する。
その後、ありとあらゆる世界で魔族による蹂躙が始まり、人間界はかつてない危機を迎えます
歴代の勇者がかつて魔王から救った世界では、勇者の役目が終わった際にさげすみ、邪魔者扱いしたことに後悔をし
人々は勇者の登場を待ち続け最後まで戦い抜きましたが、結局は滅亡してしまいました。その後、魔族の言う平和な世界が訪れました
幾度となく奇跡を起こした勇者は今回ばかりは現れなかったのです。
それもそのはず、現勇者は天界で消滅、新たな勇者をつくる神は勇者が倒してしまったのですから・・・・
the end
終わりです。長々と駄文散文失礼しました。
実際、世界を平和にした勇者はどうするんだろうなぁと思って一気に書いちゃいました
乙ッス
乙、
全ては魔族の手の平の上か…
神に仕組まれたパターンはよくあるけどこっちパターンは珍しいな
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