女生徒A「… … …」
女生徒B「… … …」
A「ちょっと」
B「… … …」
A「ねえ、ちょっと」
B「… … …」
A「ねえ!わざと無視してるフリしてるでしょ!?アンタよアンタ!」
B「… … …?」
A「そのわっざとらしい『私ですか?』みたいな首の傾げ方やめなさいよ!アンタだって言ってるでしょ!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1433673964
B「なにか用?」
A「あのねえ、用も何も…私の状況見ればわかるでしょ!?」
B「… … …?」
A「だから首を傾げるな! 今の私!!どうなってる!?」
B「埋まってる」
A「どこに!」
B「地面に。コンクリートの」
A「そう!分かってるじゃない! それなら貴方はどうするべきなの!?」
B「… … …」
A「しゃがみこんで手を合わせるなーーーッ!!」
A「普通この状況みたら助けようとかどうしようとか思うでしょ!?なんで素通りしようとしてたわけ!?」
B「めんどくさいから」
A「なにが!?」
B「こうやって絡まれるのが」
A「キーーーーッ!!」
B「… … …」
A「…人通りさえ多ければアンタみたいな人でなしに声なんかかけないわよ。この道、この時間だとほとんど人がいないんだから…」
B「… … …」
A「黙ってないで助け呼ぶなりレスキュー呼ぶなりなんでもしなさいよ!!人としての常識でしょ!?」
B「… … …」
A「… なによ。その物言いたげな顔は」
B「『お願いします』は?」
A「どういう性格してるのよアンタは」
A「アンタ… 私と同じ制服よね?何年生?」
B「2年」
A「私3年よ」
B「おー」
A「なんだその感情のない感激の仕方!?」
B「3年生」
A「そうよ!アンタの先輩!」
B「うん」
A「… … …」
B「… … …」
A「うんうん頷いて納得しながら後ずさりするな!!帰ろうとするなーーーッ!!」
A「あのねえ。人がコンクリートの地面に下半身が埋まって身動きが取れないのよ?しかも同じ学校の先輩」
B「うん」
A「…普通さ。人としてまず助けようって気が起きないわけ?」
B「起きる」
A「起きてるの!?意外!だったら実行してよ!」
B「わかった」
A「… … …」
B「… … …」
A「… なによ、その沈黙は」
B「『お願いします』は?」
A「… ほんっと性格悪いわね、アンタ」
A「お願いします、助けてください…。 …これでいい?」
B「うん」
A「…。 それじゃ、まず試しに引っ張ってくれる?」
B「そもそも自分で抜けない?」
A「さっきから踏ん張ってるんだけど… っっ…! だめ、ぴくりとも動かない」
B「もっと力入れてみて」
A「くーーーっ …!!んんんんっ …!!」
B「もっともっと」
A「ふぬうううううっ…!!ひぃいいいいいっ!!」
B「がんばれがんばれ」
A「ぐがあああああああ…!!! …っぷはぁ! だ、ダメ…ホントに抜けないの…」
B「なんだか生まれたての仔馬を応援してる気分。素敵」
A「あんたの心境はどうでもいいから助けろ」
B「とりあえず引っ張ってみる」
A「そうね、お願い」
B「うんとこしょ」
A「… … …」
B「どっこいしょ」
A「… … …」
B「うんとこしょ」
A「… … …」
B「しょうがない、おばあさんを呼んで来よう」
A「私の人生のピンチをカブのお話調にしないでもらえるかしら」
A「駄目…アンタ一人の力じゃびくともしないわ…」
B「どないしまひょかあねさん」
A「誰が姉さんだ。 …ねえ、今何時?」
B「…4時10分。夕方の」
A「…!!嘘でしょ…!さっきは余裕だと思ってたのに…!!ねえ、ちょっと、ホントに急いで誰か呼んできて!!力のありそうな人!」
B「レスキュー呼ぶとかは?」
A「時間がないの!そんな事したら間に合わなくなる!!」
B「なにに?」
A「塾!4時半からなの!遅れたら大変なんだから…!とにかく急いで!」
B「今日は休めば」
A「駄目駄目!!そんな事できない!!いいから早く!」
B「… … …」
10分後
B「… だめ。人のいる気配がない」
A「あああ、もう、これだから田舎は…!!あと10分しかないじゃない…!!」
B「さっきも言ったけど、休んだほうがいいんじゃ」
A「仮に休んだとしてもすぐに家に帰ってピアノのレッスンがあるの…。それに、ママになんて言えば…」
B「それも休めば」
A「無理!ママに怒られる!」
B「…なんで?」
A「習い事サボるのよ?怒られないわけないじゃない…」
B「サボるわけじゃないんじゃ」
A「地面に埋まって出られなくなったなんて話、情けなくて出来るワケないよ…。下手に言い訳したら余計サボったと思われるし…あああ、ホントにどうしよう…!!」
B「ぷぷ、なんだか他人のピンチって蜜の味だね」
A「アンタ本当に性格悪いなーーッ!!いいからどうにかしてよーーッ!!」
B「お母さんに怒られるくらいどうってことないんじゃ」
A「… 駄目」
B「なんでそんなに怒られるのが嫌なの」
A「… ちゃんとしないと…私の事、捨てちゃう」
B「え」
A「… … …」
A「昔から…習い事休んだり、テストで悪い点とると…ママに怒られてた。そのたび、『そんな子はいらない』って、家の外に追い出されてた」
B「ひどいね」
A「もう私も中3だし…こんなにママの事びびってるなんて、自分でも情けないと思う。…でも、ダメなの。ママの怒った顔考えただけで…ぞっとしちゃって」
B「… … …」
A「… … …お願いだから助けてよ… 塾に行かないと…また怒られる…。お願い…」
B「… … …」
・
・
・
B「119番、呼んできた。もうちょっとで来ると思う」
A「…ありがと。…でも、塾はもう間に合わないね…。はは…どうしよ…」
B「… … …」
A「…?本当にありがとう。もう行っていいよ。あとはレスキューの人に任せるからさ」
B「ねえ」
A「なに?」
B「塾、楽しい?」
A「… … …」
B「ピアノは?習い事、楽しい?行きたいと思う?」
A「… … …」
A「思うワケ、ないじゃん」
A「3歳の頃から習い事始めてさ。今じゃ塾とピアノに英会話にスイミング…今度はフィギュアスケートも始めさせるつもりなんだってさ、ママ」
B「すごい」
A「学校の皆は街に出て買い物したりゲーセン行ったりカラオケ行ったり…家に帰ってくつろいでる子だっているのに。私は…そんな事、した事ない」
A「ママとパパは遅くまで帰ってこない。私には習い事が保育所みたいなもの。預けておけばママは安心なの、近くに大人がいるからね」
A「小さい頃から…ずっとそうだった。友達と遊んだ事なんて…ない」
B「… … …」
A「この道だって…いつも通りたくなかった。その曲り角を右に曲がれば、また塾が始まる。大っ嫌いな、退屈な、夜までの時間が始まる」
A「折角学校が終わったのに、夜、寝るまでずっと…退屈で窮屈で息苦しい時間が、ずっと続いてく」
B「辛いね」
A「…絶対に、行きたくないのに。…はは、でもなんで私、こんなに塾に行きたがってるんだろ。おかしいよね」
B「… … …」
A「アンタ、急いでたんじゃないの?ホントに、もういいよ。レスキューに任せれば」
B「… … …」
A「はは、流石に人間としての情が湧いたって?」
B「人間が大根みたいに地面から抜けるとこ、見てみたいから」
A「… 地面から抜け出したら一発ブン殴るわ、アンタ」
B「やさしめにおねがいします」
A「ははは…考えとくわ。 … 今、何時?」
B「4時45分」
A「もう授業始まってる、かぁ…。 あー…久しぶりに塾休んだなぁ… この調子だとピアノも間に合わないかも」
B「嫌な気分?」
A「… … …」
A「んーん。なんかアンタに話したらすっきりしちゃった。諦めると気が楽になるもんだね。あはは、気持ちいいかも」
B「ママに怒られるのに?」
A「…それ言わないでよ、折角忘れてたのに」
B「… … …」
B「ピアノ、何時から?」
A「6時半。…それがどうしたの?」
B「早めに抜けれたら、その角、左に曲がろう」
A「… … … え?」
B「いつも、右に曲がって塾なんでしょ?だから、左」
A「… … …」
B「せっかく大嫌いな塾休むんだから。反対の左に行って、思い切り好きな事しよう」
A「… … …」
B「左はいいぞー。ちょっと歩けば駄菓子屋がある。懐かしのメタルスラッグも置いてあるんだ」
A「だがし、や…?」
B「30円のジュース買って、ポテトフライ買って、つまみながらメタスラやるのが通のやり方なのだ。私がやり方を教えよう」
A「… … …」
B「なんなら隣のぷよぷよで対戦してもいい。好きな方を選ぶがよい」
A「… なん、で…」
B「私が正しい放課後の過ごし方を教えよう。 だから、嫌な事なんて忘れろ。一緒に、左に曲がろうじゃないか」
A「… … … !」
B「な?」
A「… … …」
A「…っく…!ひぐっ…! ありがと…!っ、ほん、とに…ありがとう…っ!!」
B「なぜ泣く。そんなにアーケードでぷよぷよがやれるのが嬉しいか」
A「うわあああーーーんっ!!」
B「落ち着いたか」
A「…うん」
B「それじゃ、一緒に行くか。駄菓子屋」
A「… … …」
A「無事に抜けたら…行こうかな」
B「かな、じゃない。誓え、一緒に行くと」
A「あははは…わかった。行く。…行きたい。一緒にお菓子買って、ゲームして…あと雑貨屋さんとかも見たいな。可愛い小物とか、みてみたい」
B「いいだろう。付き合おう」
A「ホント!?絶対だよ! …それなら、ピアノもサボっちゃおうかな!!あははは!!」
B「お、いい心がけだぞ」
A「その代わり、付き合ってね、夜まで」
B「ああ。それじゃ、指切りだ」
A「… うん! … … …」
A「… … … え?」
A(私が指切りに差し出した腕の手首を、彼女はそっと引っ張った)
A(たったそれだけなのに、私の身体はいとも簡単に地面から抜け出してしまった)
B「身体は従っても、心が従わない時がある。 そういうときはずっと縛り付けられたままになってしまう」
B「大事なのは、心も従わせる事。 簡単な事なのに、なかなかこれが出来ないヤツが多い」
B「… 死んでるヤツは、特に」
A(… え …)
B「もう誰も見えないのに。誰も気にしないのに。 それに気づかないまま、何かに怯えて、動けなくなっちゃうヤツ」
B「…ずっと苦しむのは、辛いことだ」
B「面倒だから、私はあまり助けない、普段は」
A(… え、え …)
B「2日前、聞いた。この道を走ってたトラックから落ちた鉄骨が運悪く、ウチの女生徒の上に落ちて、その子が死んだって」
A(… じゃあ、私 … )
B「… 塾とピアノ、とっくに終わってたんだ。レスキューも、呼んでない。…嘘をついて、すまん」
A(… … …)
・
・
・
A(私と彼女は、近くの河原に場所を変えていた。 夕日が沈む頃。私と彼女は、ずっとそれを見ていた)
B「さすがにもう泣き疲れたか」
A「あはは… 一生分泣いたって感じ。 …一生、って、もう死んでるけどさ」
B「上手い。座布団一枚」
A「… … …。 なんか、すっきりした。…もうママに会えないのは寂しいけど…でも、すっきりしてる」
B「良かったな」
A「…でも、いざ自由になるとなにしていいか分からないもんだね。大体、死んでるんだし」
B「… … …」
A「ね、これから私、どうなるの?天国とか地獄とかこの後行くとか?あ、連れてかれる感じ?天使とかに」
B「さあ。私はそういう事は全く分からない」
B「ただ、見えるってだけ。こんなふうに会話をする事は少ないから、そういう事は分からない」
A「…そう。 なんかアンタも、色々苦労してそうだね」
B「… … …」
A「… ねえ」
B「…?」
A「お迎えがくるかどうか分からないけどさ… くるまで、アンタの傍、いていい?」
B「… … …」
A「誰からも見えないし、誰からも気付かれないなんて…辛すぎるよ。 …お願い」
B「… … …」
A「ちょっとの間だけでいいから… この世界のコト、わかるまで…。 … …」
B「… … …」
B「よし。まずは約束通り駄菓子屋から攻める。おばちゃんに頼めばまだ開けてくれるだろう」
A「…!!! い、いいの…?」
B「安心しろ。ポテトフライはお供えしておいてやろう」
A「… … … っく…ありがと…!ありがとう…っ…!!」
B「おいおい、そんなにポテトフライが嬉しいか」
A「…っ、違うわよ、バカ…っ…!」
A(それが、私とBの生活の始まりだった)
A(死んだ私、Aと、死んだ人が見える、B)
A(奇妙な2人の、新しい生活)
A(死んだ世界の後に、なにが起こるかは分からない。でも)
A(とりあえず私は、死んだまま… 今でもこの世界に暮らせている)
A(どうなるかは、まだ分からない。お迎えの天使は、いまだに私のところにはやってこない)
A(でも…)
A(自由になって、吸い込んだ息は… いつもとは違う匂いがした)
はじめまして。◆l3y7Z.NoQUというものです。
なんとなく書いたオリジナルのSSをこれから投稿させていただきます。
不慣れな面も多いのですがどうぞよろしくお願いします。
予定としては3話、一先ず構想がありますので何日か後にまた投稿させていただきます。
見て頂ける方がいてくださるととっても幸いです。
どうかよろしくお願いします。
乙
頑張れ
割と期待してる
面白い
乙乙
期待
おぉそうきたか…シュール系と思ったが
面白い
頑張れ
期待
乙、期待
期待
面白い
乙
これで完じゃないのか…
面白い!
期待
おつかれさまです、◆l3y7Z.NoQUです。
感想、ありがとうございます。上手く纏まってるかとか面白いかとか自分でも不安でいっぱいで、期待してるなど感想をいただけると涙が出そうになるくらい嬉しいです。
二話が出来ましたので投稿させていただきます。
前後編に分けようと思ってたのですがいっそ全部投稿しようと思います。
長いですがお付き合いくださいませ。
それでは。
B「うーん」
店員「… … …」
B「うーん」
店員「… … …」
B「うーん」
店員「… … … あのー、そろそろ…」
B「よし決めた。のり弁2つで」
店員「…。(30分悩んでそれかよ…)」
B「あ、お箸二つでお願いします」
店員「はい、かしこまりましたー…」
・
・
・
B「ただいま」
A「うがーーーっ」
B「… … …」
A「ああああーーーーっ」
B「… … …」
A「あああ… くそぉ、死んだ…。 …あ、おかえり、B。いたの?」
B「随分賑やかだな」
A「まあね。やっと6までいったからね、バイオ。まさか一週間で1から6まで出来ると思わなかったわ。暇ってすごいわね」
B「ゲーム史に残る快挙かもしれないぞ」
A「しかし今のゲームってすごいわね。こんなに楽しいと思わなかったわ…」
A「でもQTEウザすぎ」
B「わかる」
B「弁当、買って来たぞ」
A「あ、ありがと。置いといて。もうちょっとやったら食べるから」
B「相変わらず食べるんだな、弁当」
A「お腹は減らないんだけどね。味は分かるから。それだけで満足なの」
B「ふーん」
A「う、またイベント… あああ。QTEホントにやめてよ…!」
B「… … …」
A「ふぬうう…!」
B「… … …あ」
A「あああああ、また死んだあああっ!もうやだああああっ!!」
B「お疲れ。ついでにピアーズ最後に死ぬぞ」
A「なんでこのタイミングでネタバレすんのよアンタはああああーーーーっ!!!」
・
・
・
B「ムシャムシャ」
A「ムシャムシャ」
A「…しっかしアレね。アンタの部屋便利ね。幽霊の私でも物に触れるんだもん。おかげで退屈しないで済むわ」
B「なんでだろうな。私に霊感があるからか」
A「あはは、見えない人から見るとどう見えるんだろうね」
B「テレビが勝手についてゲームが勝手に動いてクリスが勝手にQTEミスってる」
A「ポルターガイストってやつだね」
B「随分ゲーム下手なポルタ―ガイストだけどな」
A「あははは」
A「ムシャムシャ」
B「… … …」
A「ガツガツ」
B「… … …」
A「… … … なによ」
B「働かないで食うメシは美味いか?」
A「しょうがないでしょ、幽霊なんだから。どう働けってのよ」
B「仕方ないな」
A「ちゃんと感謝してるわよ。ありがとね」
B「… … …」
B「… … …」
A「… ごちそうさまでした」
B「… … …」
A「なによ、まだ何か言いたいの?」
B「私、こんな感情初めてかもしれない」
A「え」
B「家族、いなかったから。ずっと。 だから、なんだかうれしい」
A「な、なによ、いきなり…!照れるじゃない…!」
B「きっと、こういう感じなんだろうな」
A「… … … 家族が?」
B「ううん、ペットの犬にご飯あげる感じって」
A「うがああああああああ」
A「… そもそも、アンタ、家族いないの?」
B「いる」
A「どこに」
B「別居中」
A「なんでよ。一緒に住めばいいじゃない」
B「あっちが拒否してる。仕送りは貰ってるし、住む理由がない」
A「拒否?なんで… アンタ、娘なんでしょ?」
B「うん」
A「だったらなんで別居なんて…」
B「気味悪がってる。 見えるって知ってるから」
A「… … …」
A「ごめん」
B「気にするな」
B「のり弁、あんまり美味くなかったな。今度はいつも通り唐揚げ弁当にしよう」
A「料理とかしないの?」
B「しない」
A「… アンタ、普段何食べてるのよ」
B「唐揚げ弁当」
A「それだけ!?そのうち絶対に身体壊すわよ!?」
B「とりあえず今の所大丈夫だし、ヘーキヘーキ」
A「今は平気でも絶対後でどうかするわよ…。よく今まで大丈夫だったわね」
B「身体は丈夫にできている。いいだろ、幽霊」
A「…どういう精神構造してんのよアンタは…」
A「… … …」
A「よし決めた。明日から私が料理作るわ」
B「え」
A「そうと決まれば買い出し行くわよ。まだスーパー開いてるでしょ。明日の朝食から三食、しっかり栄養あるものとってもらうわ」
B「マジか」
A「さ、行くわよ。何買うか私が言ってあげるから、一緒にスーパー行くわよ」
B「… … …」
A「… なによ、その人を疑うような目は」
B「トカゲのスープとかカエルの丸焼きとかじゃないだろうな」
A「アンタはどういう目でアタシを見てるのよ!! これでも生きてる頃は週一で料理教室行ってたんだからね」
B「それはそれは。美味そうなトカゲのスープが飲めそうだ」
A「… 絶対見返してやる絶対見返してやる絶対見返してやる…!」
・
・
・
店員「ありがとうございましたーっ」
B「しかしまた、えらい量買ったな」
A「しょうがないでしょ。アンタの家の冷蔵庫、ジュースと甘い物以外何も入ってなかったんだから、買う物も増えるわよ」
B「重い」
A「がんばりなさい。アタシは持てないんだからね」
B「ふええ」
A「… … …」スタスタ
B「… … …」スタスタ
A「こうして外歩いててもさ、なかなかいないもんね」
B「ん?」
A「幽霊。 アタシと同じような人、さ」
B「そりゃあそうだ」
A「なんでよ。死んでる人なんて一日に何人もいるでしょ」
B「そいつらが全員幽霊になってたら今頃は日本全土が幽霊の満員電車だ」
A「… それもそうか」
B「たぶん、幽霊になるヤツは限られてる」
B「この世に強い未練があって」
B「それを残した形で死んでるヤツ」
B「だから、Aも幽霊になった」
A「… … …」
B「それでも、大体は勝手に消えていくものなんだ」
A「え、そうなの?」
B「気付くんだろうな、途中で。自分が死んでるって」
B「そしてそれに気づいた段階で、大抵の未練なんてものは消えてしまうんだろう」
A「… … …」
A「それもそうか」
B「それでもこの世に残るヤツは、ヤバいヤツだ」
A「ヤバい?」
B「悪霊とか怨霊とか呼ばれるヤツになっちゃうから。そういうヤツを見かけたら、近づかない方がいい」
B「見えると分かった瞬間、人間だろうが幽霊だろうが、関係なくなるからな」
A「… … …」
A「あったの?危ない事」
B「多少」
B「まあそんなわけで、野良猫みたいに幽霊がその辺で昼寝してる事なんて滅多にない事だ」
B「ましてAみたいに地面に埋まったまま自分が幽霊と気付かない呑気なヤツなんて初めて見たわけで」
B「正直、感動したよ」
A「えらく小馬鹿にした感動の仕方だね」
B「こんな風に幽霊と雑談しながら買い物来る日がくるなんて思わなかったし」
B「さらにその幽霊を養うハメになるなんて、泣けるぜ」
A「うるさいわねーっ!!アタシだって好きで居るワケじゃないわよ!!」
B「じゃあ、なんで居るんだ」
A「… … … う」
B「いつでも出て行っていいんだぞ」
A「うううううう」
A「バイオの続きやりたい…」
B「理由それだけかよ」
A「… … …」
A「… … … あ」
B「どした」
A「さっき、言ってたわよね。幽霊なんてそこらへんにゴロゴロいるわけじゃない、って」
B「ああ」
A「…あれって、幽霊よね」
B「… … …」
B「ああ、間違いないな」
B「あんな風に電信柱に全身が埋まっているオッサンはまず、この世にはいないだろうな」
オッサン「… あ?」
オッサン「なんだ、このガキ…。 …んん?なんじゃこら。 …おお?なんだこれ、動けねーぞ」
A「しかも今気付いたみたい」
オッサン「くそ、なんだ…電信柱かこりゃ…。 おい!そこのガキ!なんだかわからねーがすぐ助けろ!おい、こら!」
A「… どうする?助けてあげる?」
B「帰るぞ」
A「え」
B「見えないフリをすればあっちも諦める。とっとと行くぞ」
オッサン「おいコラ!無視すんな!おーい!!」
A「でも、かわいそうだよ」
B「… … …」
B「基本的には無視しろ。さっきも言ったが、そうすれば自然に消えるものだ」
A「でも」
オッサン「くぬうう…!!くそぉ、どうやっても出られねぇぇ…!! おい、ホントに…!!助けてくれよ!なあ!」
B「… … …」
B「野良猫より少ないとは言ったが、それでも居るところには居るものだ」
B「そいつら全員にいちいち対処していたらキリがない事くらいわかるだろう」
A「… … …」
B「行くぞ」
オッサン「くそ…!なんでこんな事に…! 俺、一体どうしちまったんだよ…!!」
A「… … …」
B「置いていくぞ」
A「… … …」
A「ほっとけないよ、やっぱり」
A「オジサン!大丈夫!?今助けてあげるからね!」
オッサン「おお、なんだ嬢ちゃん。助けてくれるのか」
B「… … …」
B「はあ…」
B「案ずるなオッサン」
オッサン「誰がオッサンだこらぁ!!」
A「B、ありがと」
B「うるせーやい」
オッサン「なあ、俺今どうなってるんだよ。まるで身動きできねぇ」
B「電信柱に埋まってて動けなくなってるからな」
オッサン「アホか!どうなったらコンクリートの柱に全身が埋まるんだ!!んなわけあるか!!」
B「実際にそうなってるのが分からんか」
A「ねえB。これ、どうやったら出れるの?」
オッサン「いいから110番でも119番でも電話して、助け呼んできてくれ!お前らじゃどうにもならんだろ!」
A「少なくともそれよりは私達の方が助けになるかもよ」
オッサン「ああ?」
B「基本的にこうなってるのは、Aの時と同じだ」
A「私と同じ?」
B「何らかの理由で死んで魂はそこに残る。死ぬ間際の目的や行動に矛盾が生じている場合、そこから動けなくなる事が多い」
A「矛盾?」
B「行きたくない場所に行く時。やりたくない事をやろうとする時。身体は従っていても、心が従っていない場合だ」
B「身体を失って心だけの状態になるんだから、当然心が優先される。だからその場から動けなくなってそこに留まる事になってしまう」
B「このエレクトリックファンキーアンクルのようにな」
オッサン「勝手にあだ名つけんじゃねえ!!」
オッサン「大体さっきから何の話してるんだ!!死んだだの魂だの…俺が死んだとでも言いてぇのか!!」
A「正直に言う?」
B「そうだな」
A「…だってさ。オジサン、死んでるのよ」
オッサン「ふざけるんじゃねえええ!!!」
オッサン「テレビの観過ぎだドアホ!俺が死んだだとぉ!?んな馬鹿な事起きてたまるか!」
A「実際に電柱に埋まってるんだから、その馬鹿な事が起きてるんだよねぇ」
オッサン「電柱に埋まってたら俺が死んだ事になるのか!」
B「死んでなきゃ身体がそんな事にならんしな」
A「かわいそうだけど、まずは受け入れないとね」
オッサン「くそ…お前らじゃ話にならん!とにかくここから出せ!!」
A「とは言ってもね…。ねえ、B、どうやったらここから出せるの?」
B「Aの時と同じ。この場所に留まっている理由を見つけて解いてやる感じ」
A「…うーん」
オッサン「ごちゃごちゃ言ってねェで早くだせえええええッ!!!」
A「難しいねこりゃ」
B「だな」
B「ほっといて帰れば自然に消えてるもんだ。行くぞ」
A「でも…」
オッサン「あ、なんだお前!?俺をほっといて帰るつもりか!?ならせめて助け呼んでこい!」
A「だから、呼んでも無駄なんだってば。オジサンの心の問題なの。分かってよ」
B「おい、帰るぞA」
A「ね、オジサン、話だけでも聞かせてよ。そしたらすぐに助け呼んできてあげるからさ」
A「レスキューとか呼ぶにしても、現場の詳しい状況が分からないとダメでしょ?」
B「おい」
A「お願い、オジサン。私、助けたいよ」
オッサン「… … …」
オッサン「分かったよ。ただ、どう話せってんだよ」
A「良かった!ねぇ、B。聞いてあげてよ」
B「… はぁ」
B「オッサンがこうなる以前の行動をよーく思い出してみて。何かなかったか?」
オッサン「何か、ってなんだよ」
B「変わったこととか、気になることとか。とにかく覚えてる限り言ってみて」
オッサン「変わった事も何も…仕事終わりにいつもみたいに呑み屋ハシゴしてただけだ」
オッサン「ありゃあ…4件目に行く途中までは覚えてるんだけどな。確かこの辺りを次の呑み屋に行くので歩いてたんだ」
A「4件目、って…いつもそんなにお酒飲んでるの!?」
オッサン「んだよ。別にいいだろ」
A「仕事終わりでしょ。家族とかいないの?普通家に帰らない?」
オッサン「… … … なんでそんなこと」
A「いいから!」
オッサン「… … … いるよ。娘も一人。丁度お前らくらいの歳だ」
A「だったら何でお酒飲み歩いてるのよ」
オッサン「… … …」
オッサン「帰りたくねぇんだよ」
A「なんで」
オッサン「… … …」
オッサン「人があくせく働いて家に帰りゃ、女房はおかえりの一言も言わねぇでテレビ観てるばっかりだ」
オッサン「冷たいだけのメシ食らってよ。食ってる途中も何も喋らねぇで、いつの間にか自分の部屋で寝てやがる」
B「… … …」
オッサン「娘は娘で、汚いだの臭いだの、俺の事を毛嫌いして近づきもきやしねえ」
オッサン「こんな時期に外周りの営業してりゃ、汗臭くなるのも仕方ねぇだろうが」
オッサン「ちょっと前まではパパ、パパって俺に抱きついてきてくれたのによ。まるで違う子ども育ててるみてぇだ」
A「… … …」
A「家帰るの、辛かったんだね」
オッサン「感謝もされねぇ。むしろ近づくななんて言われる始末だ。帰りたくなるほうがおかしいだろうが」
オッサン「…俺はなんのために働いて、なんのために頑張ってるんだよってな。一生懸命になればなるほど、あいつらとの距離が遠くなっちまう」
オッサン「…昔は、あいつらを守るために働いてたのにな」
A「…かわいそう…」
オッサン「最近は、女房にも娘にも顔合わせるのが辛かったんだ。だから…あいつらが寝た頃に帰るのが日常になってた」
オッサン「その方があいつらにも…俺にも、幸せだったんだろうしな」
A「そんなこと…!」
オッサン「あるんだよ。世の中にはそういう事も。例え家族だったとしてもな」
オッサン「… … …」
オッサン「はっ、こんな子どもに何語ってんだろうな俺」
B「… … …」
B「それで、話を戻して… 呑み屋に向かってたんだよな」
オッサン「ああ、確かこの通りを通って… ああ、えーと…だんだん思い出してきたぞ」
オッサン「このあたりは街灯が少なくて、俺は酔っぱらってフラフラ歩いてたんだ。それで… 向こうの方から灯りが近づいてきたんだ」
オッサン「それで、気付いたら…俺の目の前に、車が…」
オッサン「… … … !!」
オッサン「その車に俺は…」
オッサン「轢かれた、のか…」
A「… … …」
B「それで、吹っ飛んだ身体がこの電柱にぶつかって、ってわけだな」
オッサン「じゃ、じゃあ、俺は…」
A「… 多分、その衝撃で…」
オッサン「お、お、俺は… 死んだ、ってのか…」
A「… かわいそうだけど…」
オッサン「… … …」
B「しかし妙だな。電柱自体は壊れてるどころか傷一つないし、周りにそんな事故があった感じもしない」
A「どういう事?」
B「… … …」
B「多分、事故自体は随分前…。数か月か、半年くらい前にあったんだと思う」
オッサン「なんだと…!?」
B「死んだヤツは時間の感覚がなくなって彷徨う事が多い。自分が死んだ事に気付けないなら、なおさら」
B「数か月、一年…あるいは、何十年もその場にいる事もある」
A「そんなに…」
B「死んだ事にも、自分がどうなっているのかも分からず…多分、ずっと同じ事を思いながら、その場に居続けてしまう」
B「Aはたまたま、二日くらいだったがな。あのままいけば何か月かは知らず知らずのままあそこにいただろう」
A「怖っ…」
オッサン「じゃ、じゃあ俺は… 俺の、家族は…」
B「… … …」
B「葬式も、たぶん終わってるだろう。…今頃、オッサンの身体は…墓の中だ」
オッサン「… … …」
オッサン「ふざけんなよ…」
オッサン「死んだだなんだって人を呼んでおいて、今度は半年前だぁ…?馬鹿にするのも大概に…」
B「気付いてるんだろ、本当は」
オッサン「… … …」
B「自分の置かれている状況には気付いているけど、それを理解しようとしない。いや…できない、か」
B「当然だろう。理解すれば、オッサンの人生の観念は180°変わってしまうのだろうからな」
B「生から、死へ」
オッサン「… … …」
B「少しずつでもいい。自分の事を知っていけば、自ずとその場から離れられるはずだ」
B「だから、がんばれ」
オッサン「がんばれ、ったって… 俺ぁ… どうすりゃあ…」
B「受け入れろ。それしか、助かる道はない」
A「… … …」
A「ねぇ、オジサン。オジサンの家って… ここから、近いの?」
オッサン「… … … ?」
B「おい、まさか」
A「行ってみようよ。それで、聞いてみよう。オジサンの、お墓」
オッサン「!!」
B「… そこまでする必要が私達に」
A「あるよ」
オッサン「… え…」
A「こうして出会って、オジサンの人生を知って、今こうして助けを求められてる。だから、私達はそれをする必要がある。絶対」
A「損得とか、面倒くさいとか、他人だからとか…そんなのもう、関係ないじゃん。もうちょっとで助けられるかもしれないんだよ?助けようよ」
A「私の事を、Bが助けてくれたみたいにさ」
B「… 別に、あれは助けたわけじゃ…」
オッサン「… … …」
A「ねえ、オジサン。きっとオジサンの家、そう遠くないんでしょ?もしかしたらお墓も…」
オッサン「… … …」
オッサン「歩いて10分ってとこだ。…俺の墓もな」
A「え?」
オッサン「はは… 俺の家の裏が、先祖代々の家の墓場だ。…俺が埋まってるとすりゃ、そこしかねえ」
A「決まりだね。B、そこに行って、家族の人に話聞いてみよう」
B「聞くって…何を」
A「オジサンの話。色々」
B「… … …」
B「何にもならないかもしれないだろ。第一、もっと状況が悪くなる可能性も…」
A「それでも、何もしないよりは絶対マシ。…私は人と話せないんだから、Bにお願いするしかないの。 …お願い」
B「… … …」
オッサン「… … …」
A「オジサン。オジサンだって…奥さんや、娘さんの顔、もう一度見たいでしょ」
オッサン「そんな事あるか…!なんで俺の事を嫌ってた奴らの顔なんざ…」
A「じゃあ、オジサンはなんでここから動けないの」
オッサン「あ…?」
A「自分の事を忌み嫌ってる人達の事なんて忘れられれば、きっとすぐ成仏できるはずなんだよ。それでもオジサンがここに留まってる理由は」
A「それでも、家族の事が気になって、気になって仕方ないからじゃないの」
オッサン「… … …」
A「2人とも、お願い。手を貸して」
B「… … …」
オッサン「… … …」
B「分かったよ。…それじゃオッサン、家の場所教えてくれ」
A「!! B!…ありがとう!!」
B「あとで美味いトカゲのスープ食わせろよ」
A「作らないって言ってるでしょ!!」
B「…さぁ、オッサン。どう行けばいいんだ?私と幽霊一匹がオッサンの人生を聞いてきてやろう」
A「人をペットみたいに言うな!!」
オッサン「… … …」
オッサン「必要ねぇ」
A・B「… え?」
オッサン「案内する。 …俺の家族だ。俺が会いにいかなきゃあな」
A「!!電柱から…」
B「離れ、られた…」
~10分後~
B「ここか」
オッサン「… … … ああ」
A「感じる?自分の… その、身体があるって」
オッサン「うっすらな。気のせいかもしれねぇが…。 … そこが、家の墓だ」
A「どう?オジサンの名前…ある?」
B「戒名じゃ分からないかもしれんがな。… … … ん?」
A「?どしたの?B」
B「誰か来たぞ」
オッサン「… !!」
A「あれって、まさか…」
オッサン「… … …」
オッサン「妻と、娘だ」
妻「… あら?」
B「…どうも」
娘「お父さんのお知り合いの人ですか?」
B「まあ、そんなところです」
妻「わざわざお墓参りに?…ありがとうございます。丁度昨日が一周忌だったんですけど…いらっしゃいました?」
オッサン「… 一周…」
B「いえ。えーと、父の仕事の付き合いというか…遠い知り合いですので。 たまたま、ここがお墓だという事をお聞きしたので立ち寄っただけで」
娘「…ありがとうございます。…その制服、近くの中学のですね」
B「はい、2年です」
娘「… そっか」
娘「私が中学の時、お父さん死んじゃったから… なんか、思い出しちゃうな」
オッサン「… … …」
娘「思春期、っていうのかな。たった一年前の事なのに…なんかあの頃のあたしが、どうしようもなく憎たらしくって」
B「そうなんですか」
娘「どうしてなんだろうね。周りの皆が、お父さんなんて汚いものだのなんだのって言うから…なんか、あたしまでそんな風に思ってきちゃって」
娘「臭いだの、近寄らないでだの…自分の父親の事を毛嫌いするのが、なんか、かっこよく思ってたのかも」
娘「… … …」
娘「もう…お父さんの匂いも、嗅げないのに…っ…。 お父さんに、近寄れも、しないのにっ… っ…!!」
B「… … …」
A「… … …」
オッサン「… … …」
オッサン「…そんなに、自分を責めるなよ…! 愛華…。もう、いいんだ…」
オッサン「もう、俺は… その言葉を聞けただけで…」
妻「家族の為に一生懸命に、主人は働いてくれていました。朝は早くに出て、夜は終電近くに帰ってきて…」
妻「だから、私も娘も…なんとなく主人と疎遠になってしまって」
妻「きっと、主人もそれで家に帰ってきてくれなくなっていたんだと思います。…仕事が落ち着いても、外で呑んでいて…私達が寝静まるまで帰ってきてはくれませんでした」
妻「…当然ですよね。私が、帰り辛い家庭を作っていたんですから」
オッサン「… … …」
妻「当時はまるで、主人を他人のように思ってしまっていて…。会話しづらくて、疎ましくて…。食卓も一緒に囲まないで、遅くに帰ってくる主人と会いたくないから、先に寝室に…」
妻「本当は、もっと話したかったのに…顔を、見たかったのに…。私は、正反対の事ばかり…」
オッサン「違うんだ…真由子…。その家を作ったのは…俺なんだ…」
オッサン「家に帰らなかったのも、会話をしたがらなかったのも…全部、俺が悪いんだ…!」
妻「今更悔やんでも…もう遅いのに。…毎日、もっと主人と話せばよかったって…後悔しながら…」
妻「…ごめんなさい。貴方に言ってもしょうがない事なのに…」
B「… いえ」
妻「…不思議な感覚ね」
妻「なんだか、貴方に話していると…主人に、伝わるような気もするわ。…どうしてかしら」
B「… … …」
B「よく言われます」
オッサン「…ごめんな… 愛華…真由子…」
オッサン「俺がもっと、しっかりしていれば…。 もっと、お前たちとしっかり向き合えていれば…!」
娘「…きっと、お父さん、私達を恨みながら死んだと思う…」
オッサン「違う!!そんな事はない!!」
妻「一年… こうやって毎日、この時間にお墓に来て、手を合わせますの」
妻「…でも…なんだか都合のいい話よね。なんだか許しを乞うているみたいで… 自分が、情けないわ」
オッサン「許しも何もあるか!!お前達は俺の事なんか忘れて生きてくれりゃあいいんだ!!」
オッサン「もう、分かったから…!!お前達の事は、全部…!! だから、後悔なんかするな!!」
A「… 伝わらないって…辛いね。こんなに叫んでるのに…聞こえないなんて…」
B「… そうだな」
A「ねえ、B。…どうすればいいんだろう。これじゃ、みんな、可哀そうすぎるよ」
B「… … …」
妻「…本当にごめんなさい。見ず知らずの貴方に、色々言ってしまって」
娘「お父さんの知り合いだったんだよね?…お父さん、きっと喜んでるよ。私達が来るより、ずっと…」
B「… … …」
オッサン「もうやめろ… やめてくれ…!後悔なんてしないでくれ…!!」
妻「そろそろ暗くなりますから…どうかお気をつけて。…本当に、ありがとうございました」
娘「ありがとう」
オッサン「愛華…!真由子…!!」
B「… … …」
B「生きていた頃の親父さんは、家族の話はしたがらなかった」
妻「…!」
娘「え…?」
オッサン「…!?」
B「酒臭くて、口が悪くて。何かにつけて文句を言ってたな」
B「ようやく家族の話をしてくれた時も、やっぱり奥さんと娘さんの文句しか言っていなかった」
妻「…そうでしたか…」
娘「… … …」
A「ちょっと、B…!」
B「それでも」
B「それでも親父さんは、文句を止めなかった。親父さんは家族の文句を言う程、悲しくて、辛そうだった」
B「きっとそれは」
B「それでも、戻りたかったからだと思う」
娘「…戻りたい…?」
B「家に。家庭に。…自分が作ってきた、自分の場所に。壊れていても、帰りたかった」
B「人間、文句を言う時ほど、それに対して憧れや執念があるものだ」
B「だから親父さんはずっと文句を言っていたんだと思う。…奥さんや娘さんの笑顔に早く会いたかっただろうからな」
B「そして、親父さん自身もきっと…自分が笑顔で家に戻れる時を、待っていたんだろう」
オッサン「…お前…」
妻「… っ…!」
娘「ひぐっ…!!ぅ…!!」
B「後悔しても、罪滅ぼしをしても、何も変わらない。それはきっと死んだ親父さんも同じ」
B「でもそれは、多分どんな人間でも同じ事だ」
オッサン「…!!」
B「文句を言って、後悔して、懺悔して…。 きっと誰でも、そうしながら生きている」
B「生きているうちに分かち合える人達なんて…きっと、ほんの僅かだ」
B「だから、今分かち合えた貴方達の家族は、良かったんじゃないかな」
妻「… … … そう、なんでしょうか」
B「ああ」
B「死んでもなお親父さんの気持ちに気付けないなんて、親父さんも貴方達も、不幸すぎるだろう」
B「親父さんは頑張って家族のために尽くしてくれていた。…それが分かったと言ってくれただけで…親父さんは、きっと幸せだ」
オッサン「… ああ…!!」
オッサン「そうだとも…!!そうだ!!もう、俺は…十分…っ!!」
オッサン「十分、幸せだ…!!」
娘「…お父さん…っ…」
妻「あなた…。 …本当に、今まで、ありがとう。… … …」
B「… … …」
A(娘さん、奥さん、そしてBは… お墓に向けて、手を合わせた)
妻「それじゃあ…本当に、ありがとうございました。あの、良ければ家でお茶でも…」
B「… … … いえ。本当に、遠い知り合いでしたから」
娘「じゃ、せめて名前を…」
B「… … … 失礼します」
A「…あ。待ってよ、B…!!」
妻「… … …」
妻「本当に、ありがとうございました」
娘「ありがとう」
オッサン「… … …」
オッサン「ありがとうな」
A「…あ…。B…」
B「…ん? … … …」
A(私達が振り返ると、そこには私達に頭を下げる奥さんと娘さん。そして…オジサンの姿があった)
A(その三人の姿は…まさしく、本当の『家族』だった)
A(そして、私が瞬きをした一瞬)
A(オジサンの姿は、どこかに消えてしまっていた)
B「… いったか」
A「…良かった。 …でも、どこに?」
B「さあ?でも、良かったんじゃないかな」
A「… … …」
A「うん、そうだね!」
B「分かち合えないっていうのは、罪なものだな。それだけで憎みあって、傷つけあってしまう」
A「…そうだね…」
B「オッサンの幸せなところは、分かち合えた事だな。何より、奥さんも娘さんも、オッサンも、素直だった事」
A「いい家族だったのかもね。私達が思っていたのより、ずっと」
B「危なかったかもしれないぞ。あれが拗れていたら、オッサンも悪霊になりかねない」
A「あはは、Bが上手にオジサンの気持ちを喋ってくれたからだよ」
A「… … …」
A「本当にありがとうね、B。…私の我儘に付き合ってくれて」
B「もうごめんだぞ。あんまりこういう事はやりたくないんだからな」
B「罰として明日からバイオ禁止な」
A「えええー…それだけは勘弁を…」
A「… … …」
A「でも、嬉しそうじゃん、B」
B「うるへー」
A(帰り道。すっかり暗くなった景色を見ながら、私は思った)
A(きっとBは、私が思うよりずっと…辛い経験をしてきたんだろう)
A(幽霊が見える。幽霊と話せる。その才能のせいで…きっと人より、深い傷を負っている)
A(…幽霊の私に出来る事じゃないかもしれないけど)
A(私が、少しでもBの助けになれるのなら…)
A(それが私の『生甲斐』なんだろう)
A(…いや、『死甲斐』かな?)
A(そんな事を思いながら、私はBの横顔を見て少し笑った)
B「気持ち悪いぞ」
A「うるさいっ」
二話終了です。本当に長くなっていました…すいません。
短編集ですので次回で一旦終わりにしたいとは思っていますが…どうなんでしょう、自分でもよくわかりませんw
また数日後に投稿したいと思いますので、よろしければお付き合いいただけると幸いです。
それでは、失礼します。
乙
頑張れ
いいね
乙
乙
よかったよ
ジーンとした
台詞展開サクサクなのに味がある
言葉が胸に染みるな
ありふれた話のような、マンネリな展開のような、でも目が離せない不思議な魅力がある
乙乙
ええな
乙!
これはいい話だ惚れちゃう。
オッサンに
A(『それ』とは唐突に出会ってしまった)
A(Bにあれだけ注意されたのに。目を合わせるなと言われていたのに)
A(私は、目を合わせてしまった)
A(じっと私を見つめる、その視線と)
A(私の後ろでは、踏切の閉まる音が聞こえる)
A(その音が突然止まったような衝撃)
A(私は、持っていたメモを、つい落としてしまった)
A(おじいさんが私を見る目が… 恐ろしいほどに、私に向け、真っ直ぐだったから)
おじいさん「… … …」
――― 一時間前。
B「んじゃ、学校行ってくるから留守番頼むぞ番犬」
A「誰が番犬だ誰が。あ、そうそう、夕飯何がいい?」
B「ん?夕飯?」
A「うん、私じゃ買えないけど、何か材料見繕っておいて後でBに買ってきてもらおうかな、なんて」
B「… … …」
A「なによ、その不審な目は。この間のビーフシチュー美味しかったでしょ?」
B「なんか、死人とはいえ中学生とは思えないほど老け込んだな、A。オカンみたいになってるぞ」
A「るっさいわね!!私だって何か役に立ちたいと思ってるんだから素直に気持ちを受け取りなさいよ!!」
B「見繕うってなにを」
A「たとえばハンバーグ食べたいなら近所のスーパー行って旬のものとか見てくるのよ」
A「あとは今安いものとかね。Bの仕送りのお金にも限度があるでしょ?それでどんなハンバーグ作るか決めるから」
A「私がスーパー行って買うものメモしておくから。それでBが買ってきてくれれば作れるし」
B「… … …」
A「何ちょっと引いた顔してんのよアンタは」
B「私…まだ一応結婚願望とかないわけじゃないし…一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし…」
A「誰がアンタの嫁になると言った!?毎度毎度言ってるけど料理作るの得意なんだからちょっとは任せろ!!」
B「… … …」
B「でもまあ、Aだけで出かけるのはちょっとやめておいたほうがいい」
A「なんでよ?」
B「死んでるから。しかもそれにまだ慣れてない。だから、目を合わせないほうがいいヤツとも目が合う」
A「ああ、前言ってた悪霊とか怨霊の話?」
B「… 基本的に、死んでるヤツと目が合うのはやばいんだ。自分を見えると気づいた瞬間、襲い掛かってくるヤツだっている」
B「自分の立場になって考えてみろ。誰からも無視される。誰からも気付かれない。そんな状況で自分を見つめている人がいる… どう思う?」
A「… … …そりゃ、助け、求めるよね」
B「助け求めるどころじゃない。あっちの世界に引きずりこもうとする輩もいるわけだ。腕を掴まれたら最期、ジリジリ苦しんで…ここじゃない世界へ連れて行かれる」
A「… … …」
B「私は慣れているが、Aはまだそういうの見たことないだろ。だから目の上手い逸らし方とかも分からないから」
B「Aは死んでいて肉体がない分、あっちの世界に連れて行くのが容易だ。目が合ったらアウトだと思え」
B「だから、もう少し慣れるまで一人で出かけるのはやめておけ」
A「… … … でも」
B「でももだってもない」
A「むー」
B「安心しろ。寛大な私はお前が死んでいてタダ飯喰らいで働きもしないでゲーム三昧のナマケモノのような幽霊でも家の中に匿っておいてやるから」
A「そんな暴言に暴言を重ねたセリフに安心できるものか」
B「ここに戻ってこれなくてもいいなら別に行っても構わないぞ」
A「… … …」
B「… … …」
A「… … …」
B「… … … はぁ」
B「マンション出て、踏切超えたところのスーパー。そこまでならいいぞ。今までそういうヤツがいた事はないからな」
A「!!! あ、ありがとうB!!」
B「ええい、引っ付くな。この犬め」
B「まあとにかく、『そういうヤツ』がいたら目を合わせない。見えないフリをしてそっと通り過ぎる」
B「基本的にあっちは思考能力が鈍ってて、Aが生きてるか死んでるかは多分分からないだろう」
B「100mも離れてないスーパーだから居る事はまずないだろうが… それだけは肝に銘じておいたほうがいい」
B「まあすでにお前の肝動いてないけどな。HAHAHA」
A「なんでアイツはこう一言一言に皮肉を挟まないと気が済まないのかなぁ…!」
A「… さ、気を取り直して。えーと」
A「自動ドアが開くの待たないで入れるのは楽だよね」
A「リクエストは醤油ラーメン… Bらしいというかなんというか…もうちょっとお袋の味的なものできてよって感じだよね…」
A「えーとモヤシと…どうせ普段ろくに野菜食べてないだろうからいっぱい入れてやろ」
A「ほうれん草、ニンジン…へー、カット野菜なんて売ってるんだ。こりゃ便利だけどやっぱりちゃんと調理したほうがいいんだろうなー」
A「チャーシューはハムでいいよね。麺は生麺で… なにこのなんとか正麺って。なんかえらい量積んでるわね。美味しいのかな」
A「… … …」
A「うん、予算内。おさえるとこおさえればしっかり節約できるもんよ」
A「… はぁ。このまま買って帰れれば楽なんだけどなー」
A「しっかりメモしとこ」
カンカンカンカン
A「よし、今日のお仕事終了。メモもとったし。さあて、帰って何するかなー」
A「いっそ違うのに手出してみるかな。ドラゴンクエスト1から全部やってみるか」
A「しっかしBの家ってゲームしかないんじゃないかってくらいゲームだらけなのよね。おかげで全く退屈しなくていいけど」
A「ファミコンからゲームの進化の過程を感じられるのも、今までゲームができなかった私にしか味わえない感覚よ、うんうん、幸せ」
カンカンカンカン
A「… … …」
A「って、踏切が開くの待つ必要ないんじゃん、私。あははは」
A「… … … ん?」
A「なんだろ、あそこにいるおじいさん。具合でも悪いのかな」
A「ずーっと線路の方見てるけど…」
A「… … …」
おじいさん「… … …」
A「… … …」
おじいさん「… … …」
A(その時。 視線とは反対側から来た私の方に… おじいさんの目が、急に向いた)
A「!!!!!!」
おじいさん「… … …」
A(目が、合って、しまった…)
・
・
・
A「はぁっ、はぁっ、は――」
おじいさん「… … …」
A「つ、ついてきてる…!?」
A「と、とにかくどこかに逃げなくちゃ…!」
A「家に帰って… …。 ダメ!それじゃアレに家の場所が知られちゃう…!」
A「とにかく今はどこかに隠れて…!」
おじいさん「… … …」
A「な、なんで…。なんであんなにゆっくり歩いてるだけなのに追いつけるのよ…!!」
A「誰か、助けて…!!B…!!」
A「… … …」
おじいさん「… … …」
A「…ッ! まだ、いる…!私の事探してるんだ…!」
A(公園の茂みに私は身を隠した。一応は見つかっていないみたいだけれど…まだ、おじいさんは私の事を探すように辺りをうろついている)
A(完全に、目をつけられた…)
B『Aは死んでいて肉体がない分、あっちの世界に連れて行くのが容易だ。目が合ったらアウトだと思え』
A(いやだよ… いやだよ…!)
A(私まだ… ここに… この世界に、いたいよ…!)
A(膝を抱えて震えながら、どれくらい時間が経っただろう)
A(気づいたら、辺りは夕暮れのオレンジに染まっていた。もうすぐ日が暮れるだろう)
A(私はもう一度…茂みから少しだけ、顔を出してみた)
A「… … …」
A「いな、い…?」
A「諦めてくれたのかな…。 … よ、よかったぁぁぁ… 」
A「と、とにかく今のうちに家に帰らないと…」
A「早くBのところへ…!」
――― ―― ― …
A「… え …?」
おじいさん「 みつ、けタ… 」
A「!!!!」
A「きゃああああ――――ッ!!!」
おじいさん「… … …」
A(やだやだやだやだやだやだ…! 早く早く…ッ!!早く家に帰りたい…!!)
おじいさん「… … …」
A(B… Bッ…! 助けて――― !!)
・
・
・
A「はぁっ、はぁ…!」
A(け、結局、帰ってきちゃった…。マンションまで…)
A(あ、あのおじいさんは…? … … …)
A「いない…?」
A「と、とにかく見つからないうちに、部屋に…!」
A(私は勢いよく部屋に入り、鍵を閉めてドアチェーンをかけた)
A(部屋の隅まで移動して…膝を抱えて…。 一人で、情けないくらい震えていた)
A(B… まだ帰ってきてないの…?)
A「… … …」
ピ――ンポ―――ン
A「!!!!」
A「だ、誰…?B…?」
ピ――ンポ―――ン
A「ねえ… Bなら、返事してよ…」
… ピ――ンポ―――ン
A「お願いだから… ねえ… 誰か、教えて…」
… … ピ――ンポ―――ン
A「… … …っ…」
ガチャガチャガチャガチャ!!
A(ドアノブを激しく動かす音…)
ドンドンドンドン!!
A(ドアを激しく叩く音…!!)
A(嫌だよ… 怖いよ…B…!)
… … …
カチャッ。
A「… え… … …」
A(ドアの鍵が、開いた…?)
A(そんな、どうして…)
A(幽霊だから… 悪霊だから…?)
A(入って、きちゃう… ッ!?)
ギィィィィ…。
B「おい、ふざけんなA。なんでドアチェーンまでかけてるんだ」
A「うわあああああああああああんッ!!」
B「ちょっ、おま。いきなり抱きつくな。なんだなんだ」
A「怖かったよ、怖かったよおぉぉぉっ…」
B「他人から見ればどう考えても幽霊に抱擁されてる私のが怖いだろ。とにかくドアチェーン外して入れろ。人間の私じゃ通れん」
A「ご、ごめん。今開ける」
B「なにがあった」
A「目が、目が合っちゃったの…!」
B「え」
A「それで、追いかけられて…! 私、必死で逃げて…!!」
A「うぇええん…っ!!ホントに怖かったよぉぉ…っ!!
B「分かった分かった。とにかく抱きつくな。ひんやりして寒い」
B「目が合った、か」
A「うん…おじいさんの、幽霊。私の事、見えてた。あれがBのいう悪霊なんでしょ…?」
A「この辺りにはいない、って言ってたのに… どうして…?」
B「… … … なるほどな」
B「A。ちょっと外でかけるぞ」
A「え!?だ、ダメだよ!あの怨霊、まだうろついてるかもしれないよ!?見つかったりしたら、ここの場所が…」
B「いいから。ちょっとマンションの外まで行くだけだ」
A「… … … キョロキョロ」
B「そうびびるな」
A「だって…!まだきっと、近くに…」
B「いるぞ」
A「… … … え …?」
B「お前の後ろに」
A「… !?」
おじいさん「 みつ、けタ… 」
A「きゃあああ―――――――ッ!!」
A「あ、あ、あ…っ…!!」
おじいさん「… … …」
A「どうしてっ… どうしてぇぇえ…っ!?」
おじいさん「… … …」
A「やだよ… 私、まだ…ここにいたいよ…!いきたくないよぉ…っ!!」
おじいさん「… … …」
A「私…まだ…!! Bのそばにいたいよおおおおおッ!!!」
おじいさん「… … … (スッ)」
A「… … …」
A「… え?」
おじいさん「落し、物だ」
A(差し出されたおじいさんの手の中には)
A(私が書いて、落とした… スーパーの食材のメモがあった)
A「え… あ… え…?」
B「マンションの前にこのじーさんがいるから、妙だと思った。話を聞いたらそういう事らしくてな」
A「そういう、事って…」
B「落し物だよ。メモ。渡そうとしたら逃げられて、困ってたらしいぞ」
A「え… … …」
おじいさん「… … …」
A「あ、ありがとう… ございます…」
A(そう言って私は、おじいさんから差し出されたメモを受け取った)
おじいさん「… うむ」
A「あ、待って… おじいさん、どこ行くの?」
おじいさん「… 元の場所へ、帰るだけだ」
A(私とBは、おじいさんの後をついていった)
A(ついていったと言っても、ほんの何分か。…あの踏切の前までくると、おじいさんは私とあった時みたいに、ベンチに腰かけて視線を踏切の方へ移した)
A(きっとそこが、生前おじいさんの特等席だったのだろう)
A「おじいさん… いつも、ここで踏切見てるの?」
おじいさん「… ああ」
A「どうして?」
おじいさん「… 人が、見えるからな」
B「人?」
おじいさん「… 人。… 笑顔で踏切を渡る買い物帰りの母と子。… 疲れていても凛とした顔で家を目指す部活帰りの学生。… 疲れ、悲しげな顔をした会社員」
おじいさん「皆、それぞれ、何かを思いながらこの踏切を渡っていく」
おじいさん「…思い。感情。そういうものを感じられるからこそ、儂も人でいられる」
A「…ずっと、見ていたのね。生きている時も… 今も」
おじいさん「… ああ」
B「もうじーさんも随分ここにいる。普通なら満足して成仏するか、それこそ悪霊になるか…。 でも、ずっと変わらないな、じーさんは」
おじいさん「はっはっは。… まだ儂は満足しておらんよ」
おじいさん「…もっと。…いや、もう少しでも構わん。儂は見ていたいのだ。この時代を生きて、暮らす人々がどんな表情をしているのかを」
おじいさん「世の中不景気だ、暗くなった… なんて、もう何十年も言われている。それこそ、儂が生きていた時代も。…そして今、死んでいる時代も、ずっと」
おじいさん「それでも、人はまだ笑って暮らせている。暗い顔をしているヤツも、次にここを通る時は笑っていたりもする」
おじいさん「この国が、今どんな風なのか。どう変わっているのか。 …踏切を通る奴らを見れば、何となく分かるものさ」
B「そんなもんかねぇ」
おじいさん「若いうちは分からんものだ」
A「…でも、素敵だね。人の笑顔を見れるのがおじいさんの幸せでもある、なんて」
A「…ごめんね。おじいちゃん。悪霊なんかと勘違いしちゃって」
おじいさん「構わんさ。悪霊みたいなものだからな、はっはっは」
B「踏切に死んでもなお居続ける幽霊がいるなんて、それだけ聞けばここは立派な心霊スポットになっちまうからな」
A「あははは。確かに」
A(その後。私とBは踏切を渡ったスーパーで買い物をして、また踏切を通って帰路についた)
A(踏切を超えたところにある、小さなベンチ。 …誰も座る事のない、そのベンチ。 おじいさんはそこで、私達に小さく手を振った)
A「じゃあね、おじいさん。…メモ、届けてくれて本当にありがとう」
おじいさん「なに、どうせ暇なんだ。礼には及ばないよ」
A「…おじいさん。…また会いにきていい?」
おじいさん「ああ。いつでもおいで。 こんな年寄りでも、幽霊同士、暇潰しになるのならな」
A「あはは。幽霊の先輩だもん、色々教えてね、おじいちゃん」
おじいさん「うむ。…それじゃあな」
A(帰り道、Bが夜空を見上げて、呟いた)
B「…もう少ししたら、あのじーさんもいなくなるかもな」
A「え?」
B「…幸せそうに笑う幽霊は、旅立つ。もっと幸せになれるであろう場所に」
A「… … …」
A「そっか」
A(そういうBの表情は、いつもより少し寂しそうだった)
A「ただいまー!あー、今日は疲れたー… …ねえ、今日はBが作ってよ。醤油ラーメン。私くたくた」
B「作れるわけないだろ。そもそもお前が作れると言うから材料買ってきたんだろうが」
A「えー…」
B「ほら、キリキリ働け家政婦」
A「あ、良かった。犬じゃなくなったんだ」
B「ランクアップしてやる。家政婦犬に。だからメシ、作れ」
A「しょうがないなー。…はぁ、頑張って作りますかー」
B「何故嬉しそうなんだ」
A(少しして… 出来上がった醤油ラーメンを2人で啜りながら、私は思った事をBに言った)
A「…ねえ、B」
B「ずるずる。 …ん?」
A「私も… 幸せになっちゃったら、いなくなっちゃうのかな。…此処から」
B「… … …」
B「さあな。私は『見える』だけだ。それ以上の事は分からん」
A「…そっか。 … なんか、怖いな。明日になったら私、急に消えちゃったり…するのかな」
B「… … …」
A「… … …」
B「この醤油ラーメン、美味いけどちょっと味薄いぞ」
A「… え?」
B「次作る時はもっと濃く作れ。あとハムもケチらないでちゃんとチャーシューにしろ。…分かったな」
A「…!! うん、分かった!!次も私、がんばって作るからね!!!」
B「ええいひっつくな駄犬」
A(幽霊は、いつか消えちゃう。何処かへ旅立つために。…そこは、今のような幸せがある場所なのだろうか?)
A(それでも…私は、今、この自由を噛みしめていたい)
A(もう少しでもいいから… 人と幽霊が暮らす、この世界で、『生きて』いたかった)
お付き合いいただきありがとうございました。
これで書き溜めていた分は全て終了になります。
明確なラストではなく、AとBの短編集のような感じで作っていたのでこのような形になりました。
他に書きたい話も色々あるのですが、いつになるかわからないのでこれにてhtml化の依頼を出させていただきたいと思います。
お読みいただいた方、本当にありがとうございました!
【追伸(質問?)】
続きの需要がもしあるようであれば是非書きたいのですが新しいスレッドを立てるような形でいいのでしょうか…?
なんにせよ続きがいつになるかわからないもので… どなたか教えていただけると幸いです。
慣れておらずすいません(汗)
乙乙、続きがあるなら期待してる
作者の最終書き込み後2ヶ月でスレ落ちするから、どのくらい期間が空くかで決めれば良いと思う
そうね
1ヶ月そこそこで次が書けそうなら残しておいていい気がするけどそれ以上かかりそうとか完全未定とかなら依頼でいいんじゃない
乙
良い雰囲気
続きが出たらまた読ませてもらうよ
乙
ラストはAの母ちゃんに会いに行く展開かと思ってたらこれはこれで悪くない
乙!
素晴らしかった。
続きが読みたいよ。
必要なら保守するからこのスレで書いてほしいな
おつおつ
ここに続きでも良いと思うし、スレ残しとくのがプレッシャーだったら次スレでも
その際は見つけやすいスレタイで頼む
ご意見・ご感想ありがとうございます…!
なるべく早く続きをあげられるようにがんばります。
これも質問で申し訳ないのですが、次回更新、もしくは新スレを立ち上げる場合に際して、こちらに自分のツイッターのアドレスなどを貼るのはマナー違反でしょうか…?更新時期などお知らせできれば非常に有難く思います。問題があれば止めておきます(汗
いいんじゃない
気づきやすいし
いいかもしれないが、ここは不特定多数の人間が見るもんだ。何があるか分からないからそういう垢を出すのはマナーと言うより、自衛のためにやめておいた方がいいとも思う
プロフィールに時限付きで検索ワード載っけといて、検索誘導させるとか
別に業務連絡程度にしか使わないなら問題ないんじゃない?
色々とご意見、本当にありがとうございました。
念のため自己防衛のため、本垢とは別の更新報告用のアカウントを作りましたので、そちらを貼らせていただきます。
https://twitter.com/rordySS
こちらで現在の進行率や具体的な投稿日時を毎回お知らせしますのでよろしければご確認くださいませ。
仕事との折り合いをつけて全力で書いていきたいと思いますので、一先ずスレはこのままにしたいと思います。
それでは、もしお読みいただけるのであれば次回までお待ちくださいませ…!よろしくお願いします。
楽しみにしてます
A「… … … えーと、君も、私と、同じ?」
A(幽霊になってからどれくらいの月日が経っただろう)
A(時間の感覚が鈍くなる、とBは言っていたが、それは人間の時も同じだった気がする)
A(楽しい時はあっという間に過ぎると言うが、生まれて初めて自由を手に入れた私にはほんとうにあっという間だった)
A(カレンダーを見ると、一か月が経った事が分かった)
A(一か月… ようやく私は)
A(B以外の【者】と会話をしている)
C「はい、先輩と同じ幽霊っス!」
A(Bが学校に行って、少しして私はいつものスーパーに今日の夕飯を決めるために出かけていた)
A(私が食材を見繕って、Bがそれを買ってきて、私が作る。それがいつの間にか我が家の日課になっていた)
A(… 我が家。 なんだか嬉しい響きだった)
A(一か月が過ぎても私はこの新生活に毎日ワクワクしていた)
A(何のしがらみもない、自由な生活。私が待ち焦がれた生活)
A(… 時々、母の顔を思い出すけど、そのたびに私は頭を振り払って必死に忘れようとした)
A(… 今は、まだ、それを思い出したくない)
A(久しぶりに家の事を思い出してしまって、陰鬱な気分を胸に抱いたままの帰路)
A(Bのマンションの前に、Cちゃんはいた)
A「…?」
C「… … …」キョロキョロ
A(小学生…?あんまり私と背変わらないし、6年生くらいかな)
A(女の子…みたいだね。髪短いから男の子っぽいけど、なんにしても元気ハツラツって感じの子だなぁ。スポーツ少女ってやつか)
A(一人でなんかキョロキョロしてるけど…迷子かな)
A(ま、見えないし話せない私がどう足掻いても助けられるわけないし)
C「… … …」キョロキョロ
A(強く生きろ、少女よ。死んでいる私にはどうにもできんのだ)
C「… … …!」
C「あのっ!すいません!!」
A「… … …」
A「へ?」
A「… … …」
A「… … …」キョロキョロ
A(周り、誰もいないよね。誰に話しかけてるんだあの子)
A(なんかこっち向いてるけど)
C「お姉さん!すいません!ひょっとして、ボクの事見えたりしてませんか!?」
A「… … … え」
A「… … …ひょっとして、私?」
C「はい!お姉さんっス!ボクの事見えてるんスか!?」
A「… そりゃ、こっちのセリフ、なんだけど… … …」
C「!!」
A「… 会話、できてる…よね。…えーと、つまり…?」
A(Bと同じ、【見える人】…?いや、違うな。こりゃ… だって…」
A(軽く、足が地面から離れてるし、この子)
A(つまりは…)
A「… … … えーと、君も、私と、同じ?」
C「はい、先輩と同じ幽霊っス!」
A「先輩て」
C「ボク、幽霊なりたてだと思うんです!だから、お姉さんは先輩っス!」
A「なりたて…」
A「… … …」
A「えーと、まず…」
A「幽霊なんだよね?」
C「はい、そりゃあもう!バリバリの新人幽霊だと思うっス」
A「なんでそう思うの?」
C「だって!ボクが話しかけようとしても誰も気付かないし!誰も見向きもしないし!完全無視ですし!」
A「すごい明るいトーンで暗いコト話すんだね…」
C「だから、お姉さんがボクと目が合った第一号だったんです。だからつい、声かけちゃって」
C「よかったー。やっぱり幽霊同士は話せるんですね。ボク、孤独で死ぬかと思ったっス!」
A「…まあ、もう、死んでるんだけどね」
A(…最初から幽霊だって自覚があるタイプもいるんだ。しかも、まだ小学生っぽいのに…)
A(…なんにしても)
A(痛い。口調と一人称が…)
C「ボク、Cっていいます!改めてよろしくお願いするっス!」
A(小学生だから許されるのか、この眩しいくらいの形容しがたい元気さは)
A「… えーと」
A「私はA。このマンションに住んでるの、よろしく」
C「幽霊なのにマンション暮らしなんスか!すごいです!先輩!」
A「まあ、色々とワケありでね。まあ…えーと、そんなわけで」
A「それじゃあ、失礼しま…」
ガッ!!
A(掴まれた。肩を思い切り)
A「… … … やっぱり、何か用事?」
C「…ボク、実は困ってるんです」
A「まあ、さっきからずっとキョロキョロしてたからね」
C「… … …」
A「…んーと」
A「じゃあまあとりあえず、上がってください」
C「!!! わーい!やったあ!!」
――― 数時間後
B「… … …」ガチャ
B「帰ったぞ、A。今日は煮込みハンバーグがい… … …」
C「よっしゃああーー!!!ついにA先輩を超えたっスううーー!!!」
A「あー、ついにやられたかー。ドリフト覚えられるとやっぱ違うねー、マリオカート」
C「先輩のアドバイスのおかげです!コースのショートカットも覚えられました!」
A「うんうん、いい上達だよ。それじゃあスーファミ版を覚えたところで今度は64の練習をしようか」
C「えー、せっかくスーファミのコントローラー慣れたのにー」
A「ふっふっふ、名コントローラーだよ、64は」
B「…おい、A」
A「ん?… あ、おかえり、B」
B「貴様は私の家を幽霊の集会所にするつもりか」
C「! …あれ…この人、生きてるのに…?」
A「さっき話したこの部屋の持ち主のBだよ」
C「あ!そうなんスか! はじめまして、ボクCっていいます!よろしくお願いするっス!」
B「… … …」
B「長年幽霊を見てきた私でもこんな若さと痛さを前面に出してくるタイプは初めてだぞ、A」
A「あはは…Bもそう思う?」
B「というかだな」
B「なんで私の許可なくボクっ娘が私の部屋でマリオカートに興じているのかご説明願おうか」
C「すげー!やっぱり生きてるのにボクのコト見えてるし話も聞こえるんスね!!霊能力者!?かっこいいっス!!」
B「… … … ぐうう」
A(Bが押されている… すごい)
B「おい、保護者。まずはお前から説明しろ」
A「保護者て。 …まあ、その…成行きで…。マンションの前にこの子がいてさ」
B「野良猫拾ってくるなら家主の許可を得てからだろうがこんちくしょう」
A「あはは… まあ、通常だと私もそう思うんだけどさ。 …お願いされちゃってさ」
B「…あ?」
A「…落し物、拾うの手伝って、って」
B「…落し物だと?」
C「… … …はい」
B「そんなもの勝手に拾ってくるなりなんなりすればいいだろ」
A「あはは…私もそう言ったんだけどさ」
C「… … …」
B「…落し物というからには、お前の所有物だったものなんだろ。それなら何の問題もなく触れるし、拾えるはずだぞ。とっとと行ってこい」
C「それは…そう、なんですけど…」
B「… … …何か事情があるのか」
C「あの…その…」
B「元々協力する気はないが、事情を話さないのならさらにその気がなくなるぞ」
A(…どっちにしてもないんじゃん)
C「えと…」
C「怖いんです。取りに行くのが」
B「… … … ああ?」
B「怖いって、お前幽霊だろうが」
A「まあまあ、話聞いてあげてよ」
C「ボクの大事な物… 路地裏に落としてきちゃったんです」
C「ずっと、取りに行きたかったんですけど… その…」
C「変な人がずっといて、近付けないんです。…怖くて」
B「変な人?」
A「… 私もCちゃんから話聞いたんだけどね。…多分、Bが前に言ってたヤツだと思うの。…怨霊とか、悪霊とか、そういう類の」
B「…路地裏」
B「まさか… ○○病院の裏の薄暗いトコじゃないだろうな」
C「! …はい… そこです」
B「… … …」
A「え… B、知ってるの?」
B「… … …」
B「で、なんだ。Cって言ったか」
B「あそこに大事な物落としたから私とAと一緒にそれを取りに行って欲しいってか」
C「そ…そうっス…。お願いしたいっス…」
A「簡単でしょ?それくらい手伝ってあげ」
B「駄目だ」
A「… … … え?」
B「あそこはヤバい。元から嫌なものが漂ってて私も子どもの頃に通って以来、二度と近寄ってない」
B「見えるヤツや幽霊が近づくには危険すぎる」
C「… … …」
A「危険って…そんな危ない怨霊でもいるの?」
B「ヤバい怨霊がいるんじゃない。怨霊や悪霊が集まりやすい場所なんだ」
A「…どゆこと?」
B「…元々、病院には近付きたくない。いやでも【そういうヤツ】がいっぱい見えるからな」
B「○○病院の裏の住宅街の一角。やたら細くて狭い…薄暗い道がある。理由は知らんが、あそこは嫌な気配がずっとしている」
B「瘴気とでも言おうか。呪われた場所とでも言おうか。…住宅街のくせにあの一角だけ廃屋だらけで、人の気配が無い。妙に薄暗くて、霊感がないヤツでも寒気がする」
B「おそらくは過去に何かがあったんだろうが… 普通の場所とは何かが違う。あそこには、自意識を失った幽霊のたまり場になっている」
A「… 心霊スポットってやつ?」
B「…。普通のヤツでも夕暮れや夜に立ち寄ったらヤバい場所だ。そんなところに私やAが行ってみろ。怨霊の恰好の餌食だぞ」
B「C。勿論お前もな」
C「… … …」
B「大体、なんであんなところで落し物なんかしたんだ。いくら幽霊になりたてでもヤバい場所だって分かるはずだろ」
C「それは… その…」
B「… … … 何にしてもだ。あそこに行くのはダメだ。全員が危険すぎる。どんなに大事な物でも諦めろ」
C「… うう…」
A「いや、そこをなんとか…さ。Bだってそういうの百戦錬磨なわけでしょ?何か方法知ってるかなと思ってさ」
B「…方法?」
A「こう、怨霊やっつける方法とかさ。手を合わせて波動的なもので、ぶわーっとやっつけたり…」
B「お前… 私をバトル漫画のキャラかなにかと勘違いしてるだろ」
A「…あはは、できないかなぁ…と…」
B「霊丸も霊剣も鬼の手も髪の毛針もリモコン下駄も出ないぞ」
A「…全部言われた…」
B「とにかくダメだ。協力できん」
A「そこをなんとか」
B「しつこい。前から野良幽霊に構うなと言ってるだろ。キリがない」
B「ただでさえそいつを許可なく部屋にあげたコトに私は腹を立ててるぞ」
A「う… ごめん…」
C「… … …」
B「まだ小学生だろ。…いや、【だった】か。…とにかく、お前にも帰る場所があるだろ。いくら大事な落し物でもしっかり諦めて、自分の心のモヤを晴らせ」
B「そうすれば、自然に成仏できるはずだ」
C「… … …」
B「… 小さいうちに亡くなったのは気の毒だとは思うし、まだ成仏するには未練が残ってるとは思うがな。悪いが、協力するにはリスクがでかい」
A「…でも…」
B「でももだってもない」
A「… … …」
C「すいませんでしたっス!!」
A「…え?」
B「… … …」
C「ボク、甘えてたっス!自分の落し物なんだから、自分で責任とるのは当たり前っス」
C「見ず知らずのお姉さんの家にあがりこんでそんなお願いをするなんて… 自分勝手にも程があったっス!」
C「ホントに、すいませんでした…Aさん、Bさん」
A「Cちゃん…」
B「… … …」
C「いつになるかわからないけど… ボク、がんばります!がんばって、心のもやもやを晴らしていきます」
C「そうすれば、じょーぶつできるんスよね?…寂しい気持ちも、悔しい気持ちもなくなる場所に…いけるんスよね?」
B「… どういう場所かは知らんがな」
C「がんばるっス!…ボクも、一人前の幽霊になって…いつかじょーぶつできるように…がんばるっス!」
C「その方法が分かっただけで、ここにきて良かったです!本当にありがとう…ございました!」
B「… … …」
C「それじゃあ、その… 本当にすいませんでした!これで失礼しま…」
A「待って」
C「…へ?」
A「やっぱり私、行くよ。Cちゃんの落し物取りに」
C「…え?」
B「… 言うと思った」
A「やっぱりほっとけない。こんなちっちゃい子に、そんな無理して言葉を作って行ってほしくない」
A「ここでCちゃんを見過ごしたら…絶対、私、後悔する。そんな事をしてまで生きていたくない!」
B「死んどるがな」
A「う」
C「Aさん…」
A「とにかく、私、Cちゃんの落し物、取りに行くよ。怨霊なんて怖くない!ダッシュで取ってダッシュで逃げればへっちゃらだよ、Cちゃん!」
C「でも…」
A「ええい、わかいもんが遠慮するな!先輩にどーんと任せておけい!」
C「…う…」
C「うううう…」
C「うわあああん…っ!!!ひ、っく…ありがとうっスぅぅ…っ!!」
A「あはは、泣くな泣くな」
B「… … …」
A「…B。止めないでね、私、行ってくるから!」
A「もう帰ってこないかもしれないけど…私、がんばってくる!」
A「その…もし帰ってこれなかったら…私の家にお線香たてにきてくれれば、きっと大丈夫だから。だから、止めないで!」
B「止めないから行って来い」
A「…え」
B「行くって決めたんだろ。行って来い」
A「いやあの…。その… ちょっとは止めてくれたほうがドラマチックになると思うんだけどなー、私」
B「止めない」
A「… … …」
B「… … …」
B「明日の昼だ」
A&C「…え?」
B「明日の昼に行くぞ。昼間ならあの薄暗い路地裏もちょっとは明るくなってるだろ。…土曜で学校も休みだしな」
A&C「!!!」
A&C「うわああああん!!!ありがとおおおおお!!!」
B「ひっつくなバカ犬ども」
・
・
・
――― 翌日。
A「さて、それじゃあ魔境探検に出発しますかー!」
C「えいえいおーっス!」
A「気を付けるんだよーCちゃん。発泡スチロールの岩とか丸太とかが転がってきてもしっかり避けるか受け止めるかするんだよー!」
C「了解っス、藤○たいちょー!」
B「お前らもう帰ってこれないかもしれないのに元気だな」
B「それともあれか。行くのが怖いから無理やりにでも元気出して怖さを吹き飛ばそうとしてるのか」
A「う」
C「う」
B「… … …」
B「とにかく、昨日言っていた通りだ」
B「誰とも目を合わさず、さっさと行って、さっさと帰る。これだけ」
B「分かったか」
A&C「了解っス!○岡たいちょー!」
B「やかましい」
・
・
・
テクテクテク
A「それで…Cちゃんは何を落としたのか、そろそろ聞いてもいい?」
C「えと…その…」
B「先に知っておいたほうが楽だろ。…怒らないから言ってみろ」
C「あの…」
C「… ヘアゴム。クマちゃんがついてる… 髪留めの、ゴムっス…」
A「… … …」
B「… … …」
B「おい、100均いくぞ。絶対売ってるから」
C「うわーん!アレじゃないと嫌なんスよー!」
A「あ、じゃあそこのデパートの幼児服売り場とかに多分売ってると思うんだけど…」
C「うわあああん!Aさんまでーー!!」
B「…はあ」
B「とにかく、そのベアクローをあの幽霊通りで落としたと」
C「クマちゃんのヘアゴムっス…」
A「でもなんでそんな場所で?」
C「えと… ボク、幽霊になって… 気づいたらあそこにいたんです」
C「そしたら、後ろから誰かにぎゅっ、て髪の毛掴まれて… その時に、つけてたクマちゃんヘアゴムが落ちちゃったんです」
C「振り返ったら… 長い、ボサボサの髪のお兄さんが、ボクのコト見て… にやぁぁって、笑って」
C「… … … うう。地面にヘアゴムが落ちてるのは見えたんスけど… ボク、怖くて逃げてきちゃったんです…」
A「それで逃げてきて… その後に私と逢ったってわけね」
C「はい…。…どうしても取りにいきたかったんスけど、一人じゃどうにも…。誰か、助けてくれる人がいないか探してたんスけど…誰にもボクが見えないみたいで」
C「そこで、A先輩に出会ったんス!!もう神のおぼしめしとしか思えないっス!女神っス!」
A「… あははは」
B「おめでとう。Aは家政婦犬から女神犬にランクアップした」
A「犬は取り外してくれないかなあ」
B「とにかくそのヘアゴムが地面に落ちてて、拾って帰れば問題ないわけだな」
C「はい!本当にありがとうございます、B先輩!」
B「ただ… そのヘアゴム、お前の髪の毛掴んだロリコン幽霊が持ってるかもしれないんだぞ」
C「…う…」
A「ロリコンて」
B「もしその辺りに落ちてなかったら今回は素直に諦めろ。探索する余裕なんてないからな」
B「それだけ約束しろ。じゃないと、私達全員が危険だ」
C「… はい。分かりました。約束します」
B「うむ」
A「… … … そろそろ、○○病院の近くだね」
・
・
・
A「… … … うわ…」
A「なんでココ、昼間なのにこんなに暗くて誰もいないの…」
B「言っただろ。嫌な気配のたまり場だって。…C、案内しろ」
C「… はいっス」
B「何とも目を合わせるなよ。極力、地面の方を向いて前に進め」
A「言われなくてもそうしてるよ…。…うう、怖くて周り見れない…」
C「…ここを真っ直ぐいったところにあるお家の、塀の前っス」
B「行くぞ」
A「…ね、ねぇ…。…まだ?その場所って」
B「まだも何もない。さっきの所から10mくらいしか進んでないぞ」
A「うう… もう何キロも歩いた気分だよ…」
A「… なんか、あちこちから視線を感じる…。すごい私達、見られてるような…」
B「あちこちにいるからな」
A「…え…」
B「昼間だから、大体は廃屋の中か塀の中だ。だがしっかりこっちを見てるんだろう」
A「なんでわかるの…!?」
B「慣れてるから」
A「… … … やっぱり鬼の手」
B「出ない」
C「… … …!! あった!!」
A「…!ホント!?どこ!?」
C「あそこ!あのお家の前っス!」
B「… あれか」
A「よかったね、Cちゃん!無事に見つかって!」
C「ありがとうっス!ボク、ちょっと取ってきます!」ダッ
B「…!?待て、一人で行くな!!」
A「ちょっ、Cちゃん!?」
C「… ! あ、 あ、 あ…」
A(地面に落ちたヘアゴムに手を伸ばしたCちゃんの手を… 塀の影から伸ばした青白い手が、掴んだ)
A「Cちゃん!!」
暗い青年「… … … やっぱり、きてくれた」
C「あ、あ…っ…」
暗い青年「… 待ってた。… きっとコレ、大事なモノ、だから… 取りに、くるって… …待ってた…」
B「…くそ、罠はってたのか」
C「は、離して… 離して、ください…!」
暗い青年「… 寂しかった。 ずっと、一人で…。 誰かが来るのを… ずっと… …待ってた…」
A「Cちゃん!」ダッ
暗い青年「はははははははははあはっはははははははははははははははははははは!!!!!!」
A「きゃああああッ!?」
A(何かに吹き飛ばされた…!? 何かに衝突するような感覚。Cちゃんに近づいた筈なのに、私は後ろに吹き飛ばされてしまう)
B「… ちっ。紛れもない怨霊か…! …まだ会話は出来るみたいだけど… まずいぞ」
B「おい、ロリコン!さっさとその子から手を離せ。話くらい聞いてやるぞ」
暗い青年「… … … お前も、俺の事、見えるのか…? … はははは、変わってるなぁ … はははははははははは!!!!」
B「お前ほど変わってねーよ」
A「…!(B…手が…震えてる…?)」
C「痛い… っ!離して…!」
暗い青年「… ずっと、この家に、一人だった。 …寂しかった… …暗かった… …辛かった… 分かるか?俺の…気持ち…」
暗い青年「生きてるときも… 死んでるときも… ずっと、ずっとずっと、一人…」
暗い青年「… ようやく、見つけたんだ… 俺の事、見えるヤツ…」
B「… それで、Cに目をつけたのか…」
暗い青年「はははははははははは!! 誰にも、怒られない!誰にも、叱られない! こいつを連れ去っても、もう俺は許されるんだあああっっあああああ!!!」
C「… … …!」
A「やめてッ!!Cちゃんを離して!!」ダッ
暗い青年「近づくんじゃねえええええええええっええっえぇっ!!!!!!」
A「…!! あぐ、ッ!!!!」
暗い青年「もう俺は… コイツと暮らしていくんだ。 此処で、ずっと、ずっとずっと、ずっと…!! もうはなさねぇぞぉ…!!」
B「…!」
A「…く、っ…。あの人…どんどん、身体が黒くなってきてる…!?」
B「まずい… あのロリコン、本格的に悪霊になってきてる…」
A「え…!?」
B「そうなったら会話もできなくなるし…交渉もできなくなる。しかもCを引き連れて、だ…。C自身もどうなるか分からない…!」
A「そんな…!? B、どうにかならないの…!?」
B「… うまく、あいつの心を鎮められれば…。だが、もうダメかもしれないぞ…!」
A「… … …!!」
暗い青年「はははははいあはひあはははははははは!!!俺はもう一人じゃないんだあぁあぁあぁぁ!!!」
C「… … …」
B「うまく糸口を見つけるしかない」
A「… … …うん…!」
B「… お前、この家に一人で住んでたのか?にしちゃあ随分立派な一軒家だったんだな」
暗い青年「! … … …」
B「お前もまだ若そうだ。 …父親と母親はどうした?見たところ、もう誰も住んでいないみたいだが」
暗い青年「!! … … …」
A「…!あの人、表情が少し変わった…」
B「答えてみろ。聞いてやるから」
暗い青年「… … …」
暗い青年「うるせええええぇぇえぇええええええええ!!!」
B「くっ…!」
暗い青年「父親だぁあ…? さんざん母さんを虐めて… 他の女と出ていっちまったよ…!!」
C「… … …!」
暗い青年「アイツのせいで母さんがどれだけ苦しんだ… 悲しんだ…! それでも母さんは必死に俺を育ててくれたんだ…」
暗い青年「必死に働いて… 働いて… それで、ついに身体を壊して…」
暗い青年「ようやく俺が働ける歳になったと思って… 俺が仕事から帰ったら…」
暗い青年「ああああああああああああああああああ!!!!」
暗い青年「倒れてたんだよぉぉおお… 居間で、誰にも気づかれずなぁああ…!」
A「…!」
暗い青年「もう死んでたよ… 世界でたった一人、俺の事を分かってくれた人が… あっさりと、死んじまってたんだよおおおお!!!」
暗い青年「俺は… ずっとずっと、ずっとずっとずっとずっと…!!この家に、一人きりで… それでも必死になって働いてたのによぉ…!!」
暗い青年「仕事にいきゃあ上司から虐められ、後輩からは無視され、無茶な残業をやらされ…!休みもなく!!働き蟻みてぇに働かされた!! あははあはははははあ!!!」
暗い青年「気づけば俺も母親と同じさあ!! 身体壊して… 死んでやがった!!ははははははははははは!!!」
B「… … …」
A「そんな…」
B「… 気の毒だったな…」
B「だが、お前のその境遇とその子は何の関係もないはずだ。その子をさらったところで何の解決にもならない事くらいわかるだろ」
暗い青年「… … …」
C「先輩…」
B「だから、とにかくその子を離せ。じゃないとお前がどんどん悪霊に…」
暗い青年「うるせえんだよおおおおおっっおおおおおおおお!!!」
B「!!」
暗い青年「もう俺は働かなくていい!!自由だ!!何もかも自由だ!!だが… 俺が死んでも、母さんは何処にも… 何処にもいねぇんだよ…おっ!!」
暗い青年「生きても死んでも… またこの家に一人ぼっちだ!!そんなのは嫌だ!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!」
B「くそ… 既に理性がほとんどないじゃないか…」
A「… かわいそうだけど…」
A「でも!でもだからって、Cちゃんをさらっていいなんてコト、ないよ!!」
暗い青年「はははははははは!!! 幽霊が幽霊さらって何が悪ぃんだよおおおおっ!!! 誰にも俺は止められねぇんだぞおおおおおおお!!!」
B「くそっ、どうにもならないか…!」
A「どうするの…?B…」
B「… … …」
A「え、まさか…」
B「… 悪霊の除霊の方法なんて、私は知らない」
A「じゃあ、もう…?」
B「… … …」
A「… … …!Cちゃん…!!」
B「… くそ…」
暗い青年「ははははははあはははははあは!!もう怖くない!!怖くないぞおおおお!!! 俺はコイツと一緒だ!!ずっと!!ずっとこの手は離さないぞおおお!!!」
C「ごめんなさい」
暗い青年「… … …」
暗い青年「… え?」
C「ボク、あなたのコト、よく分かってなかったっス。ただ、ボクは… 怖い人だ、近づきたくないって… そう思ってたっス」
暗い青年「… … …」
C「でも、ボクどうしても… そのヘアゴムのコト、忘れられなくて…。 お母さんに貰った、大事なものだったから…!」
暗い青年「お、母、さん…?」
C「… … …」
C「ボク、死んじゃったから… お母さんにも、見えないっス。もう話もできないし、目も合わないし…っ…。 …っ、頭も、撫でてもらえない、し…!!」
A「Cちゃん…!」
C「だからボク… 諦めたかったんです。 お母さんと、お別れして…っ… 一人で、暮らしていくって…!! 諦めたかった、だけで…!!」
暗い青年「あき、らめる…?」
C「… せめて、お母さんに貰った、ヘアゴムだけ…っ…!! これだけつけてれば、お母さんとずっといられるって思って…!! だから…どうしても取りに戻ってきたんです…」
暗い青年「… … …」
C「お母さんはまだ、お家にいるっス。…ボクが死んでも、まだお家で暮らしてくれている… そう信じてるっス」
C「住んでいるのは違う世界でも… お母さんは、ちゃんと生きていて、ボクもちゃんと生きてるっス。 だから…ボクは寂しくない…。そう思う事にしたっス」
暗い青年「… … …」
C「… お兄さんは、大事なお母さんがどこにいるか… それもわからなくなって… だからボクよりずっと辛くて、寂しいはずです…!」
C「一人になりたくない。怖くて、辛くて…どうにもできなくなりそう…。 …ボクも、死んだばかりの時はそう思ったっス」
C「… でも、ボクのコトを見てくれた人がいて。 …ボクのコトを助けてくれようとしてくれる人たちがいて…!」
A「… … …」
B「… … …」
C「だからボクは、お母さんのコトを… 大好きなお母さんのコト、諦めようとできるっス!元気でいよう、って思えるっス!」
暗い青年「… … …」
C「お兄さんは… このお家でずっと一人きりで… ボクより、ずっと辛くて、寂しかったから… だから… 」
C「ボクがいて、お兄さんの助けになれるなら、それで…!!」
B「もういいだろ」
C「… え?」
B「もう手、離してやれ。お前にも十分に分かっただろ」
暗い青年「… … …」
B「お前より小さくて幼い子どもが、決意しようとしてるんだ。母親のコトを忘れて、自分だけで強く【生きて】いこうとしてる」
B「大人は、それを後押しするもんなんじゃないのか。がんばれって応援してやるもんじゃないのか」
暗い青年「… … … 俺は…」
B「お前の気持ちは十分分かった。…今まで、ずっと辛かっただろう。苦しかったし、悲しかっただろう」
B「…それと同じ思いを、これからその子はしていこうとしているんだ。孤独や不安を抱えながら、それでもこの世界で【生きて】いこうとしている」
B「今度は、その子の思いもお前が分かってやれ」
暗い青年「俺は… 俺は… 俺はぁあああ…」
C「… お兄さん…」
暗い青年「あああああああーーーーっ!!」
暗い青年「… … …」
A「…!手を、離してくれた…」
C「あ…」
暗い青年「… … …」
暗い青年「…ありがとう。 俺の話、聞いてくれて…」
C「…はなし…?」
暗い青年「俺はただ… ずっと一人で、寂しかった… それだけだったんだ。誰かが俺の事を見てくれればいい、誰かが話しかけてくれれば… 優しくしてくれれば。それだけで良かったんだ」
暗い青年「… 生きている時も、ずっとそれだけ考えてた」
A「… 本当に、辛い思いしてきたんだね」
暗い青年「… 死んじまったら、なんかそれがどんどんおかしくなっていって… 誰かと一緒にいたい、誰かを巻き込みたいって… どんどんそれが、強くなっちまって…」
暗い青年「… ごめんな。… 謝って済むのか、わからねぇけど…」
暗い青年「… 俺… とんでもねぇ事してた… やっと気づいた」
C「… … …」
C「… … …」スッ
暗い青年「… え?」
C「握手っス。友情の固い絆っス」
暗い青年「… … …」
C「ボクもお兄さんも… 同じっス。辛くて、寂しいっス。…だから、これからはボク達、仲間っス!これで寂しくないっス!」
C「だから、握手っス!!」
暗い青年「…!!!」
暗い青年「ありがとう… ありがとう…っっ…!!」
A「… あ…」
A(Cちゃんと握手をしたお兄さんの手が… いや、身体全体が、消えていく。景色に同化するように、ゆっくりと…)
暗い青年「… ああ…。 …これで俺も、いけるのかな… 母さんのところへ…」
暗い青年「…なんだか、久しぶりだ… こんな幸せな気分は…」
C「… … …」
C「先にいって、待っててください。ボクも… いつかお兄さんと同じ場所へいくかもしれないから…」
C「その時は、先輩としてよろしくお願いするっス!!」
暗い青年「… … … ああ」
暗い青年「待ってるよ」
C「しばしの別れっ、ス…」
暗い青年「… … …」
A(… そして、お兄さんの身体は、完全に消えた)
A(Cちゃんは、握手をしていた手を、しばらくそのままにしていて… 溜まっていた涙を拭って)
A(それから、地面に落ちた、可愛らしいクマの顔がついたヘアゴムを、そっと手にとった)
C「… … …」
B「… 終わったか」
A「… … … お母さん、か…」
B「少しは寂しくなったか?」
A「… … … あはは、わかんない」
A(… 私も、いずれ…思い出さなきゃなのかな)
A(お母さんのコト…)
B「良かったな、ヘアゴム取り返せて」
C「… でも、お兄さんが…」
A「…きっと、天国にいけてるよ。…それで… 逢えているよ、お母さんに」
C「… … …」
C「うん!良かったっス!」
B「JSのクセにメンタル強すぎだお前は」
A「… Cちゃんも、寂しくない?大丈夫?」
C「… まだ、寂しいっス。諦めきれないっス」
C「でも、ボク強くなるっス。… … … 強くなって、お母さんにもう一回褒めてもらうっス」
C「がんばったねって… えらかったね、って…」
C「いつか…」
A(ヘアゴムで短い髪を縛ったCちゃんは… なんだかとっても生き生きとしていて、可愛らしい女の子になっていた)
B「さて、長居はできない。さっさと家に戻るぞ」
C「… … …」
A「… 行こう、Cちゃん」
C「… あの…」
A「うん?なに?」
C「本当にありがとうございました。おかげで大事な物も、拾えました」
A「あはは、いいっていいって。どうせ暇なんだし」
B「お前はな。ちょっとはこっちの都合も考えろニート幽霊」
A「う。…あはは…」
C「… … …」
A(Cちゃんは俯いたまま黙り込み… そして、こちらを見た)
A(そして次に出たCちゃんの言葉に、私とBは呆然とするのだった)
C「… ボク、殺されたんです」
A「… … … え …?」
B「なに…?」
C「ボク、殺されたんです。 …ここで。 …誰かに、殺されたんです」
A(Cちゃんは… 闇を抱えていた)
A(それは私達が想像するよりずっと深くて暗い… 底なしの、深い闇)
A(私達は、その闇に触れたのだった。…それは、いつか必ず訪れる…必然だったのかも、しれない)
四話投稿完了しました。お待たせいたしました。
今回の終わり方で殺人鬼編に突入… という事はせず、あくまで短編の中の一つの設定として組み込むだけです。
AとBの日常生活が基本ですので、その中で謎の解明も少しずつやっていきたいなあ、と思います。
次回は明るい話がいいなあ… とか。
お読みいただいている方、更新が不定期で本当にご迷惑おかけします。
引き続き https://twitter.com/rordySS にて更新の目途などを報告していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
それでは、失礼します。
乙乙
乙!
乙
Cちゃん可愛いね
乙!
やった
続編だ!
待ってたよ
ええな
すばらしい
間隔開いたが応援レス
A「… … …」
A「ほー、なるほどなるほど…」
A「すごい時代になってたもんだなー、生鮮食品もパソコンで買える時代になったかー」
A「世間知らずもいいとこだったわ…パソコンなんて授業以外じゃ触ったコトなかったし」
A「あ、すごい。レトロゲー、中古だとこんなに安いんじゃん」
A「… ドキドキ」 ポチッ
A「… … … ふう」
A「なんなのかな、この購入確定ボタンを押した後の妙な背徳感と達成感は…」
A「なんだか… クセになっちゃいそ」スパァァァァンッ!!
B「なにをやっとるんだお前は」
A(… 思いっきりスリッパで頭を叩かれた)
A「お、おかえり… 早かったね、学校。えと、その…」
B「… … …」
A「き、今日生徒手帳忘れてたよ… あはは、まったく、おっちょこちょいだなぁ」
B「… もう一度聞くぞ。何をやっとるんだお前は」
A「え、えーと」
A「ぱ、パソコン使わせてもらってた…かな…」
B「違う」
A「えっ」
B「クーラーの効いた部屋で缶ジュース片手に人のパソコンで人のカード情報勝手に使ってネットショッピングしてた、だろ」
A「… あ、あははははははははははは」
B「何を買った」
A「… … …」
A「な、内緒」スパァァァァンッ!!
A(… また思いっきり頭叩かれた)
A「すいませんでした」
B「生身の人間なら通報して御縄についてもらってるところだぞ」
A「… … … でもさでもさ、今ってすごいんだねー!生鮮食品とか乳製品とかネットで買えるんだね!」
A「まあでも、やっぱりそういうのって実物見た方がいいんだろうから結局いつものスーパーで買うのが一番なんだろうけどさ」
A「いやー、すごい時代になったものだね。ちょっと珍しいものとか買う時は使っちゃうかもなー」
B「スーパー行って買うのも私なら、金払うのも私だし、その品物を家まで運ぶのも私なんだがなぁ」
A「う」
B「ちょっとは自重というものを知れ家政婦幽霊」
A「… … … はい」
B「まあ、ご飯が美味しければ許してやろう。今日の夕飯はなんじゃ」
A「豚の生姜焼きにございます」
B「うむ、期待しておるぞ」
B「… … … むぐむぐ」
A「…どう?おいしい?」
B「お前は同棲してる彼女か。顔を近づけて首を傾げるな」
A「だって気になるんだもん」
B「うまい」
A「お、やった」
B「でも下味のつき方が雑。計量しないで目分量でやっただろ。醤油使いすぎてちょっと塩辛い」
A「うっ」
B「生姜ももう少し入れていいぞ。この状態だと単なる醤油焼きになって風味が弱くなっているな」
A「… むぐ。 … う、ホントだ」
B「精進せい」
A「… なんで毎日唐揚げ弁当生活だったのにそんなに味にうるさいのよぉ…」
B「色々身につくのだ、1人暮らしは」
・
・
・
A「… ふー。食後の紅茶はやっぱりいいねー、落ち着くわー」
B「おおよそ幽霊っぽくなり台詞だな。腹は減らないし喉も乾かないはずなのに」
A「雰囲気よ雰囲気。味は分かるんだし、こうしてないと…なんか、人間っぽくない気がしてさ」
A「毎日、同じ時間にしっかりご飯を食べる。これ以上人が人足り得る基準があるであろうか」
B「じゃあ大人しくメシだけ作って人のカードで買い物するんじゃないぞ」
A「あはは…すいませんでしたってば…」
A「…ね、でもさ、私もちょっとは役に立ってるでしょ?」
A「掃除もしてるし、ごはんも作ってるし、洗濯もしてるし…これもう、時給とか発生してもいい頃合いじゃない?」
B「… … …」
A「ね、ね、ちょっとだけでいいからさ」
B「一時間五十円」
A「この家の中だけ日本円の価値が違うみたいね」
B「大体、金なんか与えたところで何に使うんだよ。使えもしないのに」
A「だ、だからさ… 今日、ついネットで買い物しちゃったからさ。ルールっていうか、私もちょっとは欲しいものがあって… なーんて…」
B「家で一日ゴロゴロしながら我が家のレトロゲー漁ってて、これ以上欲しいものがあるのか」
A「… … … ちょっとだけ」
B「… … …」
B「一時間五十円」
A「それは変わらないのね…」
B「私が学校行ってる間の留守番代。それでも一日四百円くらい。週五なら二千円。月なら八千円になるんだぞ」
A「!!! すごい!!!」
B「小学生の小遣いよりは多いだろ。その分だけ通販許す」
A「うわーい!!ありがとう、B!!」
B「喜び方は小学生だな」
B「しかし、いつの間にパソコンの操作なんか覚えた」
A「あはは… ちょっと調べたいコトがあってさ…。そのついでに」
B「ネットショッピングのやり方も覚えたというわけだ」
A「… … … ハイ」
B「… … …」
B「Cの事件の事か。パソコンいじるきっかけは」
A「! Bも?」
B「…ま、何となく気になってはいたから。…それで、何か分かったか?」
A「うーん、煮え切らないというか、なんというか…」
A「まず、Cちゃんの死因としては…殺人に間違いないみたい。これはちゃんとニュースになってた」
B「… 殺人事件だからな。…記事ページの日付は、二か月前か。Cも大分時間の感覚がぼやけてたみたいだな」
A「結構全国的なニュースになってたみたい。そりゃ、学童の殺人事件だもんね。二か月経って大分流れてはいるけど…未だに犯人が捕まってないから話題にはあがってるね」
A「でも… Aちゃんの、その… 死体。あの裏路地じゃない全然違う山の中にあったらしいね」
B「まあ、当然だろうな」
B「どんな犯人であるにしろ、殺人をしてそこですぐに逃げるというケースは少ないだろう。…何の目的だったのかは知らないが、あの裏路地でCを殺し、死体が見つからないように山中に移動して遺棄したんだろうな」
A「… … … 酷い」
B「他に分かった事は」
A「うーん… 分からない事が分かった、ってかんじかな」
B「… … …」
A「警察も犯人の足取りが全然掴めてないみたい。この辺りで通り魔の出没なんて全然なかったし、まして殺人なんて…。手がかりになるようなものも見つかってないらしいし」
B「突発的な犯罪とは考えづらいかもな」
A「計画的、かぁ。どうなんだろ。なんにしても目的がさっぱり分からないしね。通り魔なのか、Cちゃんに因縁のある相手なのか…それも分からないし」
A「…ひょっとしたら、母親による犯行なんじゃ、なんてネットでは言われてたけど…」
B「… … …」
A「でも私、Cちゃんがあんなに慕っていたお母さんが犯人だなんて…信じたくないよ」
B「疑うヤツの勝手だ。憶測が憶測を呼んでいるだけで確証はないだろ。母親が犯人だなんていくら騒いでるヤツがいても、そいつらが母親を逮捕できるわけじゃないんだ。それは警察の仕事。勝手に言わせておけばいい」
A「…そうだね」
B「だいいち、それを言えばAも同じだぞ」
A「え?」
B「興味本位なのかなんなのか分からんが、首を突っ込み過ぎるのも良くない。私達には関係のない事だろ」
A「…でも、Cちゃんがかわいそうだよ、このままじゃ」
B「犯人が見つかればCが幸せになれるのか?」
A「… … … それは」
B「いくら調べようとそれはお前の自由だし勝手だがな。酷な言い方だが、未解決だとしても事件自体はもう【終わって】るんだ。暴いたところでCが生き返るわけじゃない。いくらかわいそうだと思っててもな」
A「… … …」
B「Cのために何かしようと思うのなら、あいつが成仏できる要因を探してやるべきだ。それが犯人捜しだというのなら別だが」
B「Cは、自分を殺した犯人を捜して欲しいと言ったのか?」
A「… … … それは、言ってない、けど…」
B「… … …」
A「… … …」
B「Cはまだ街をうろついてるのか」
A「… うん。この家に住めば、って声かけたんだけど… しばらくは一人でいたい、って」
B「家主の許可を得ずに人に同居を勧めるな」
A「あははは…ごめん」
A「でも、無理矢理にでも誘えばよかったかな… 下手に外歩いて悪霊とかに会ってたら…」
C『心配ゴムヨーっス!せっかく幽体になったんだし、色々子どものときに見れなかった大人のセカイってヤツを見物してくるっス』
C『それに、ここまでしてもらったAさんとBさんにこれ以上お世話になるなんて…世間が許してもボクがゆるせねーっス』
C『… 本当に、ありがとうございました』
C『悪霊?大丈夫っス!これでも学校じゃ足速いほうで、100mを5秒フラットで走れたっス!嘘っスけど!』
C『… でも、寂しくなったら時々またお邪魔するっス。 その時は… ちょっとだけ、またお世話になってもいいですか?』
C『… ありがとうございます! それじゃ、またあう日まで!』
A「…誘う暇もなかったからなあ。Cちゃん、どこいってるんだろ」
B「そのうち顔出したらまたゲームでも付き合ってやれ」
A「…うん、そうだね」
B「まぁ、Cに関するコトもほどほどにしておけ。気になるならまた会ったときに本人に聞けばいい」
B「だいいち、お前自身が成仏できてないコトがそもそも問題なんだぞ。いい加減天国に逝け」
A「この家のゲームを全て制覇するまで逝く気はない!」
B「堂々と宣言するな」
A「… 私も、もやもやしてる事あるけど… 今は、Cちゃんのコトがどうしてもひっかかっちゃって。…お願い、もう少しだけ…居させてください」
B「… … …」
B「風呂は沸いておるか」
A「はい!ご主人様」
B「うむ、くるしゅうない」
A「… … …」
A「あれ、私一年先輩じゃなかったっけ」
――― 数日後
A「いってらっしゃい」
B「おー」
A「あ、夕飯なにがいい?この前のお詫びと言っちゃなんだけど、今日はなんでも作るよ」
B「… … …」
B「カレー」
A「え、カレーでいいの?」
B「なんでだ。カレーは御馳走だろ」
A「へー。家庭の環境の違いってやつかな。 …えーと、それじゃあ、野菜はこの間の残りがまだあったはずだから…玉ねぎと、カレールーとお肉だけ買ってきて。お肉は好きなのでいいよ」
B「カレーの王子さまでいいか」
A「レトルトじゃなくてルーの買ってきてね」
・
・
・
A「ふう、行った行った」
A「さて、と…あとはアレがくるのを待って…ふふふ。 … でもカレーかぁ、合うかなぁ」
A「… … …」かきかき
A「あとは印鑑置いておけばオッケーよね」
・
・
・
ピンポーン
A「きたっ」
宅急便の人「ちわー、イノシシ宅急便でーす。お届け物にあがり… あれ、ドア開いてる」
宅急便の人「こんちわー、あのー!お届け物でーす!」
宅急便の人「… … …」
宅急便の人「…ん?置手紙…?」
宅急便の人「『お手数ですが荷物置いて印鑑押してってください。会社が許さずとも私が許します 家主より』」
宅急便の人「… … …」
宅急便の人「また来るのめんどくせぇしな」
宅急便の人「置いてくか。…印鑑押して、っと」
宅急便の人「それじゃあどうもー。 って、誰もいないか」
A「… よっし、オッケー!」
A「適当で有名な宅急便会社選んで正解だったわ。うんうん」
A「よーし、やっちゃうぞー!」
A「… ふむ、注文したものもあるし… 買い忘れも無し。オールオッケー」
A「ふっふっふ、やっちゃるぞ、やっちゃるぞー」
A「えーと、まずは…」
A「… … …」
A「… … …」
A「… よーし、いいぞいいぞー。 …ふふふ、B、驚かしちゃうもんねー」
・
・
・
B「… … …」
B「つかれた」
B「ただいま。A、買って来たぞ。カレーの王子さまのルーもちゃんと… … … あ?」
B「なんだこれ、部屋暗いぞ」
B「出かけてるのか。にしても鍵開けときやがって」
B「… … …」
B「ん?…ろうそくか、あの火」
B「… … …」
A「わっ!!」
B「… … …」
A「… … …」
A「びっくりした?」
B「しない」
A「なんでよー。お化け屋敷より贅沢だよ。本物が脅かしてるんだから」
B「私を脅かそうとは、でかくなったな小僧」
A「おみそれしました師匠」
B「… それで、なんの真似だ?部屋、暗いぞ」
A「へっへっへー。 … 電気、つけてみてよ」
B「… ??」
カチッ
B「… … …」
B「ケーキ?」
A「誕生日おめでとーーーっ!!!」
B「… … …」
B「私?」
A「忘れてるの!?そうだよ!」
B「… … … ああ」
B「そういや、記憶の彼方にそんな事があったような気がしないでもないけど…」
A「えらくぼやけてるんだね、誕生日…」
B「私でも忘れてたのにどうして」
A「この前、生徒手帳忘れてったでしょ?そこにばっちり誕生日書いてあったのよ!」
A「いやー、どう、どう!?このサプライズ!流石にちょっとはびっくりしたでしょ!?」
B「… … …」
B「ちょっとはな」
A「いよっしゃあああ」
B「…この前通販してたのは材料買ってたってわけか」
A「それならBにもバレないでケーキの材料買えるからねー!思い切ってスポンジからクリームから全部手作りのにしてみたよ!こわいよ!私の才能が怖い!」
B「時間だけはあるからな」
A「ぐっ。 …と、とにかく…がんばって作ったんだ!食べてみてよ!」
B「これからカレー作って食べるのにか」
A「…ぐ、ぐぐっ。 …ひ、一口だけ、一口だけでいいから…」
B「… … …」
B「… ぱくっ」
A「どう?どう?おいしい?おいしい?」
B「… … … スポンジがパサつ… … …」
B「… … …」
B「美味い」
A「… え」
B「美味いよ」
A「… … … !!!」
A「… うう、ぐすっ… ひぐっ…」
B「何故泣く」
A「だってぇ… 初めて小言言われなくて美味しいって言ってくれたんだもぉん… ふええええ…」
B「泣くコトまであるか、ばかもの」
ピンポーン
B「… 誰だ、こんな時間に」
A「… … …」
A「あ、ひょっとして!」
A「入って入って!丁度いいとこにきたっ!」
C「お、お邪魔するっス~…」
B「… … … あ?C?」
C「うおっ!?この甘い香りと気配は… ケーキっスね!?すげー!」
A「気配で分かるんだ」
A「良かったー!戻ってきてくれたんだね!…やっぱりおじいさんに声かけられたの?」
C「あ、あはは… はい。何日か前におじいちゃんに会って…」
B「じーさんって… 踏切の幽霊のか」
A「あの辺りうろつけば必ずあのおじいさんに行き会うとおもってさ。おじいさんに伝言、頼んでおいたんだ」
A「『小学生くらいの短い髪の女の子見かけたら、一度でいいからBとAの家に来てって伝えてくれる?』ってさ」
C「… 伝言頼まれてお邪魔しないのも失礼かと思って… あはは、お恥ずかしながら…」
A「いいよいいよ!っていうか来てくれてありがとう!しかもこのタイミングに!」
C「このタイミング… このケーキとなにか関係が…?」
C「… … …」
C「ケーキ記念日…?」
B「あるかボケ」
C「えー!Bさんの誕生日―!? ボク、いていいんですか!?」
A「いいよー。むしろなんていいタイミングできてくれたんだ、君はっ」
B「… … … まぁ、流石に二人でホールケーキはきついだろうし」
C「うひょー! …ううう、まさか幽霊になって夢のホール三分の一ケーキが食べられるとは… ぐすっ、ぐすっ」
B「何故泣くんだお前らは」
A「さてと、それじゃBリクエストのカレー作るから、CちゃんはBと遊んでてね」
B「おい、言い方が逆だろソレ」
C「了解っスー!ゲームっスよね!?なにやります!?スーファミ!?プレステ!?」
B「間をとってメガドラ。ぷよぷよやるぞ」
C「すげー!未知のゲーム機ー!」
A(カレールーを鍋に溶かし込みながら、私は楽しそうにゲームをする2人を見て笑っていた)
A(私も、Cちゃんも… Bも。それぞれ、家族を失っている)
A(だから私達は… それを求めるように、この家に集まってるんじゃないのかな、って。そんな思いを感じていた)
A(Bは… 迷惑そうにしてるけど。でも心のどこかで、私達に【家族】を感じてくれているのなら)
A(きっとそれが、私の使命だったんじゃないのか。ふとそんな事を考えた)
A(Cちゃんも、Bも… そして私も。それぞれがお互いを思い合い、それぞれが心を汲み取り、助け合える…)
A(… それはきっと、とても幸せな事なのだろう)
B「おいA。次マリオパーティやるぞ」
C「お腹減ったっスー!そんな気がするっス! カレー、楽しみっス!」
A「… … …」
A「よっしゃあ!カレー食べたら、今日はパーティゲーム三昧だー!」
五話、投稿完了です。ありがとうございました。
今回はつなぎの話で短め&明るめです。少し毛色の違う感じですが違和感がありましたらすいません…。
おかげさまでどうにか一週間ペースくらいで書けています。毎回ご感想など本当にありがとうございます!
ちょっと仕事が忙しい週で次回は一週間より少し伸びるかもしれませんが…二週間はかからないようにがんばりたいと思います。
それでは、失礼します。
乙ん
乙!毎回楽しみにしてる!
すいません… 誤字を発見しましたので訂正します。
>>185
誤 A「でも… Aちゃんの、その… 死体。あの裏路地じゃない全然違う山の中にあったらしいね」
正 A「でも… Cちゃんの、その… 死体。あの裏路地じゃない全然違う山の中にあったらしいね」
です、すいませんでした!
乙!次回作も楽しみ!
乙乙!
なんか毎回ジーンとくるな
好きだわ
乙!
お姉さん「… … …」
お姉さん「ねえ、お嬢ちゃん?」
お姉さん「お嬢ちゃんは…どうして、お姉さんのコト、じっと見てるのかな」
お姉さん「… … …」
お姉さん「ひょっとして、私のコト、見えるの?…声、聞こえるの?」
B「… … …」
B「うん」
お姉さん「… … …」
お姉さん「お嬢ちゃんは、何歳かな?」
B「4さい」
――― …
B「… … … ッ」
B「… なんだ、テレビ見ながらウトウトしてたのか」
B「Aは…」
A「… すぅ、すぅ…」
A「えへへぇ、そんないっぱいゲームばっかできないってばぁ…」
B「… 漫画か」
B「時折、本当にコイツが幽霊なのか分からなくなってくるな」
B「… 夢… いや、夢じゃないな」
B(…記憶の片隅…。私が小さかった頃の、記憶)
B(何故、今思い出したんだろう。今まで思い出すコトなど無かったのに)
B(… 初めて、『友達』になった、幽霊のコトなど)
――― …
お姉さん「… Bちゃん、っていうんだ。よろしくね」
B「おねえさんの名前は?」
お姉さん「あはは、『お姉さん』でいいよ。…どうせ、もう名前なんて意味ないしね」
お姉さん「…呼んでくれる人も、話してくれる人も… 誰もいなくなっちゃったから」
お姉さん「… Bちゃん以外はね」
B「… … … ?」
お姉さん「ねえ、Bちゃんは私のコト、どう見えるの?普通の、その辺り歩いてる人と同じに見えるの?」
B「ううん、ちがう」
お姉さん「… へえ、やっぱり違って見えるんだ。ねえ、どんなとこが違うの?」
B「ふともも」
お姉さん「え?」
B「ふともも。他のおねえさんより、ちょっとだけ太い」
お姉さん「… … …」
お姉さん「いや、あの、そういうコトじゃなくて… いや、確かにそりゃ生前ダイエットさぼってた節はあったけどね。私が求めてるのはそういう答えじゃないというか」
B「?」
お姉さん「ううう…純粋な皮肉が余計に心に痛い…」
お姉さん「えーと、ほら。普通の人と同じなら、お姉さんのコト、じーっと見たりしないでしょ?なんでかなー、と思ってさ」
B「ういてるから」
お姉さん「… え?」
B「足。ちょっとだけ、ういてる。すごい」
お姉さん「… … … あ、ホントだ。今まで全然気づかなかった。いかにも幽霊って感じだね」
B「それにちょっとだけ足太い」
お姉さん「それはもういいってば」
お姉さん「… でも、すごいね。子どもって幽霊見える子がいるって聞いたことあるけど、ホントだったんだ」
お姉さん「… … …」
お姉さん「あはは、なんか嬉しい。…本当に久しぶりに、人と話せた…。 こんなおちびちゃんでも、うれしいよ」
B「ないてるの?」
お姉さん「… うん。 私のコト見てくれて、ありがとね」
B「… … … ?」
お姉さん「ねえ、Bちゃん。お母さんとかお父さんと一緒じゃないの?」
B「うん」
お姉さん「どこにいるの?」
B「おねえさんのうしろのとこ。5階がおうち」
お姉さん「… … … ああ、ここ、団地かぁ」
お姉さん「… そっか、私、ここで…」
お姉さん「… … …」
B「…?」
お姉さん「…あ、ごめんね。なんでもないの」
お姉さん「この団地の中の公園なんだね、ここ。…Bちゃん1人で遊んでたの?」
B「ううん」
お姉さん「え?誰かと一緒?」
B「おねえさんと」
お姉さん「… ははは、こやつめ。嬉しいコトも言ってくれるなあ」
お姉さん「それじゃあ… お姉さんがいなかったら、Bちゃんは1人で遊んでたの?」
B「うん」
お姉さん「いつも1人?」
B「うん」
お姉さん「… お母さんとかお父さんは、一緒に遊んでくれないの?」
B「うん。前は、よくあそんでくれた」
お姉さん「…今は?」
B「あんまり」
お姉さん「どうしてかな」
B「うそつきっておこるから」
お姉さん「嘘つき?Bちゃん、嘘ついて怒られたの?」
B「ううん。嘘ついてない」
お姉さん「… どんなこと、嘘って言われちゃったの?」
B「おねえさんみたいな人、おかあさんは見えないから。だから、うそつきっておこる」
お姉さん「… ああ、なるほどねぇ…」
お姉さん(時計は… もう夕方の六時半じゃん…。お母さん、お迎えにもこないんだ。こりゃひどいなぁ…)
お姉さん「Bちゃん。そろそろお夕飯の時間だけど、帰らなくていいの?」
B「うん、だいじょうぶ」
お姉さん「…でも、お母さん、心配してるんじゃないの?」
B「… … …」
B「だいじょうぶ」
お姉さん「でも、そろそろ帰ったほうがいいってば。お夕飯は食べるんでしょ?」
B「… … …うん」
お姉さん「… 帰りたくないの?」
B「うん」
お姉さん「どうして?」
B「おねえさん」
お姉さん「え?」
B「おねえさんとまだ遊びたい」
お姉さん「… … …」
お姉さん「あー、もう、かわいいなーこいつは」
お姉さん「じゃあ、こうしよう」
お姉さん「明日はBちゃんはご用事があるのかな?」
B「ほいくえん」
お姉さん「そっか。それじゃあ、保育園が終わってお外で遊ぶときはここにきなよ。お姉さん、ここで待ってるから」
B「…! ほんと?」
お姉さん「うん、約束約束。だから、今日は帰ってお夕飯食べてしっかり寝なさい」
お姉さん「そしたら、明日ここで一緒に遊ぼう。ね?」
B「うん、わかった」
お姉さん「素直だなーホント。えらいえらい」
お姉さん「それじゃ、また明日ね」
B「うん」
お姉さん、B「ゆーびきーりげんまん、うーそついたら… … …」
――― …
――― …
A「B、Bってば!」
B「… … … ん」
A「食パン持ったまま固まってないでよ、怖いから。なんか考え事?」
B「… ああ、ちょっと」
A「珍しいね。悩み事なら先輩であるこの私がどーんと相談にのってあげるよ?」
B「… いや、いい」
A「つれないなー。言えないコト?」
B「… 今は、な」
A「… それじゃ、話せるようになったら言ってよ。それまでは待ってるからさ」
B「… … … ああ」
B「すまないな、A」
A「! すごい!Bに謝られた!感動!」
B「うっせ」
・
・
・
先生「…ですから、ここの文法としてはこうであるのが正しいのであって――― …」
B(… … …)
B(なんで、今更子どもの時の記憶なんか)
B(しかも今まで忘れてたのにな。おかしな話だ)
B(… … …)
B(いや、忘れてたんじゃないのか。『忘れようとしていた』のか、私は)
B(…両親の事。孤独だった事。幽霊が見えてしまっていた事。 …今では当たり前の事が、子どもの時はどうしようもなく『嫌な事』だったから)
B(だから私は… 子どもの時の記憶自体を、忘れようとしていたんだろうか)
B(… … …)
B(思い出してみるか、もう少しだけ…)
――― …
B「おねえさん」
お姉さん「… ん? …あ、Bちゃんか。…そっか、もう一日経ったんだね」
B「あそびにきた」
お姉さん「あはは、ありがと。約束、ちゃんと覚えててくれたんだね」
お姉さん「…私もね、Bちゃんが来てくれるの、ずっと待ってたんだよ。…すごく、寂しかった」
B「一日しかたってないよ?」
お姉さん「… そうだね。… でも、私にとっては…まるでずっとずっと、1人ぼっちだったみたいに思っちゃうの」
お姉さん「誰からも見えなくて、誰からも感じられなくて、誰からも… …。 …そんな中、やっと私…Bちゃんに出会えたから」
お姉さん「だから、嬉しくってさ。…あはは、ごめん」
B「またないてる」
お姉さん「大人だって泣いたりするんだよ」
B「へんなの」
お姉さん「… へー」
お姉さん「お砂場でお絵かき、か。なんだか懐かしい感じだなぁ」
B「おねえさんは、絵描くの、じょうず?」
お姉さん「あはは、忘れちゃったよ。… … … 描けないし、ね」
お姉さん「… Bちゃんは、なに描いてるの?」
B「おねえさんと、わたし」
お姉さん「へー。…っておい、なんで絵の私は泣いてるんだい」
B「なきむしだから。おねえちゃん」
お姉さん「泣き虫キャラになっちゃったよ、私。 あはは、じゃあ私の絵のBちゃんは思いっきり笑顔にしちゃおうかな」
B「なんで?」
お姉さん「一度くらい、Bちゃんの笑顔、見ておきたいからさ。私の願いってコトで」
お姉さん「…絵が、描けたらだけどね」
B「… … …」
お姉さん「保育園にお友達とかいないの?」
B「いる」
お姉さん「へえ、仲良し?」
B「わかんない」
お姉さん「んー…そっか」
お姉さん「… … … それじゃ、お母さんのコトは、好き?」
B「… … …」
B「わかんない」
お姉さん「… … …」
B「おねえさんのことは、好き」
お姉さん「あははは…ありがと」
お姉さん「…ごめんね、私がどうにか出来ればいいんだけどB…。…私じゃ、どうにもできないかもしれない」
お姉さん「こうして、Bちゃんと遊ぶコトしか…」
B「なんであやまるの?」
お姉さん「…私が、Bちゃんのお母さんと話せればよかったのに、って。Bちゃんのコト、もっとかわいがってあげなさい!って」
B「いいよ。私、おねえさんとあそぶのが好き」
お姉さん「…否定したいんだけど、私も…Bちゃんと遊ぶコトしかできないんだよね。… … …」
B「… … …」
B「おねえさんは、たのしい?」
お姉さん「… … …」
お姉さん「すごく楽しいよ。すごく嬉しいよ。…Bちゃんのコト、大好きだからさ。…だから、Bちゃんのコト、守ってあげたいの」
B「いい」
お姉さん「…え?」
B「私は、おねえさんとあそべれば、それでいい」
お姉さん「… … …」
お姉さん「いくらでも遊んであげるよ。私なんかでよければね」
お姉さん「…できるかぎり」
――― …
先生「おい、B。B」
B「… … … え?」
先生「もう放課後だぞ。1人でぼーっとして何やってるんだ?」
B「… … … あ、すいません」
先生「大丈夫か?風邪でも引いたんじゃないか?保健室まで行けるか」
B「… 大丈夫です。家まで帰れますから」
先生「ご両親は… そうか、お前、御両親と離れてるんだっけな。でも具合悪いなら連絡を…」
B「いえ、本当に大丈夫です。ありがとうございます」
先生「… そうか。気を付けて帰れよ。何かあったら先生に電話してこい」
B「はい」
――― …
B「おねえさん」
お姉さん「… うん?なあに?」
B「いつも私とあそんでくれるけど」
B「私、おねえさんのこと、ぜんぜんしらない」
お姉さん「… 私のコト?」
B「うん。いつもおはなしするの、私のことばっかり」
B「おねえさんの事もききたい」
お姉さん「… 私のコト、かぁ」
お姉さん「… 忘れちゃった、かな」
B「うそつき」
お姉さん「あははは。でもまんざら、ホントに嘘ってわけでもないのよ」
お姉さん「…もう、どれくらい経つんだっけ、私とBちゃん知り合ってから」
B「… … … いっしゅうかん、くらい?」
お姉さん「… そっか、もうそんなに…。 あはは、そんなに一緒に毎日遊んでたんだね」
お姉さん「なんだか、あっという間なんだね、時間って」
お姉さん「生きてた頃の私… もうなんだか、ずっと前みたいに感じちゃってたの。だから…忘れてたっていうのもホントなんだってば」
B「… … …」
お姉さん「う、そんな真っ直ぐな目線で見られると困る。…うー、待ってね、今思い出すから」
B「まってる」
お姉さん「… … …」
お姉さん「大学生だったの、私。田舎から出てきて、ここで1人暮らしはじめて。…あ、とは言っても、住んでるのはここのちょっと先だったんだ。ここは大学への近道」
お姉さん「家族とも、友達ともお別れして、故郷から離れて…都会で1人暮らし。…本当に楽しみだったけど、すっごい不安だったなあ」
お姉さん「住んでみると楽しみより不安がどんどん強くなってきちゃってね。…寂しくて寂しくて、死にそうだった」
お姉さん「大学でもうまく友達できなくって、1人で授業受けて、1人で帰って… あはは」
お姉さん「ここにきてから…私、ずっと幽霊だったのかもね。誰とも話さないで、ずっと1人ぼっちで…」
B「… … …」
B「なんで」
お姉さん「ん?」
B「なんでおねえさんは、しんじゃったの?」
お姉さん「… … …」
B「おぼえてない?」
お姉さん「… 覚えてるよ。それだけは、すぐ思い出せた。嫌ってほどにね」
お姉さん「でも、Bちゃんには… いや。Bちゃんだから、話しておくべきなのかな」
B「?」
お姉さん「… … …」
お姉さん「さ、私の話はおしまい。今日は何して遊ぶ?」
お姉さん「私のコトは… いつか、教えてあげるよ。 …ひょっとしたら、明日にでも教えるかもしれないけど」
お姉さん「もう少しだけ、考えさせてね」
B「… わかった」
お姉さん「何して遊ぼうか」
B「お砂場でおままごと」
お姉さん「砂場好きだなぁ」
――― …
B「… … …」
B(その日以降だったか)
B(お姉さんが、段々と『見えづらく』なってきた。… いや、違うな。お姉さん自体が、『消えて』きていたのか)
B(理由は、当時の私には分からなかったな。今でははっきり分かるけど)
B(それでも… とにかく、お姉さんと一緒に遊べるのはもう少しだけだって、子どもの私にも理解できていた)
B(さみしい、つらいとは言わなかった。お姉さんは私が好きだと言ってくれたし、私もお姉さんの事が大好きだったから)
B(… お互い、胸を張って『親友』といえる間柄になっていたからか)
B(年齢が違っても、出会った期間が短くても。私とお姉さんは、お互いを求めていた。…求めなくては、心が耐えきれなかった)
B(だから… 一緒に遊べる時間を、せめて、お姉さんが寂しがらないようにするために)
B(私も、寂しいとは言わないようにしていたのかな)
B「… … …」
B「ただいま」
A「おかえりー!やったよ、B!サイレントヒル4クリアした!辛かった!」
B「… 相変わらずマイウェイをひたすらいってるんだな、お前は」
B(… そして、最後の日がやってきた)
B(その日…お姉さんは、私が目を細めてどうにか見えるくらいまで…『見えづらかった』。声も、とても小さくて。…でも私は、必死にその泣き声を聞こうとしていた)
B(いつもの公園の砂場で、1人で体育座りして… 泣いてたんだっけ)
――― …
B「… … …」
B「おねえさん」
お姉さん「… … …」
お姉さん「… … … Bちゃん。 …ごめんね、もっとBちゃんと一緒に遊んでたかったんだけど… あはは」
お姉さん「私… 嬉しすぎたみたい。…楽しすぎたみたい。…だから、もう、いられなくなっちゃった」
B「… … …」
お姉さん「… 本当に、ごめんね。でも、私じゃ、どうにもできなくて」
お姉さん「Bちゃんのコト、助けたかった。Bちゃんと、もっと遊びたかった。 … でも、もうどうにもできない…」
B「… … …」
お姉さん「… … …」
お姉さん「最後に、私の話、させて」
B「… … …」
B「うん」
お姉さん「… 私、ずっと1人ぼっちで、辛くって。 その日も、1人でこの道を通って、お家に帰ってたの。…誰もいない、真っ暗な、私のアパート」
お姉さん「…自分で自分の家の灯りをつけるのが、本当に嫌だった。怖くて、辛くて、寂しかった。だから… 帰りたくなかったの」
お姉さん「それでも帰ってたら… 男の人が、私に声、かけてきたの」
B「… おとこの、ひと?」
お姉さん「冷たい目をした、男の人。 …その人は、ニコニコ笑いながら、私に近づいてきて…」
お姉さん「… 私の目の前まで来たと思ったら… 私のお腹が、急に熱くなって」
お姉さん「気づいたら、私、立てなくなってて」
お姉さん「… 最期に見たのは、男の人がニコニコしながら、私の目に… 包丁を振り下ろしてた時だった」
B「… … …」
お姉さん「誰かは知らない。私の知ってる人じゃなかった。…なんで殺されたのかも、私は分からない」
お姉さん「…でも、私は殺された。その男の人に」
B「… … …」
お姉さん「Bちゃん、いつもここで1人で遊んでたでしょ。だから私、怖くて」
お姉さん「私と遊んでくれるのは嬉しいけど… いつ、その男の人が来るか分からなかったから… ずっと、周りを気にしてたの」
お姉さん「… だから、私がいなくなっても、気を付けてね」
B「… … …」
お姉さん「知らない男の人に会ったら、すぐ逃げるんだぞ」
お姉さん「その他… えっと、横断歩道は手を上げて、右左右。先生の言う事はよく聞いて、知らない人にはついていかない」
B「うん」
お姉さん「あと… 大事なお願い」
B「… … …」
お姉さん「私みたいに… 独りぼっちで、寂しそうにしてる幽霊を見つけたら…助けてくれると、嬉しいかな」
お姉さん「危なくないくらいでいいから。Bちゃんの気が向いたら… そっと、声かけてあげて欲しいの」
お姉さん「きっと、そういう人って… とっても寂しい思いしてると思うから…」
B「… … …」
B「わかった」
お姉さん「… あははは、ありがと。ホントにBちゃんはいい子だなぁ」
B「やくそく」
お姉さん「… … … ん?ああ、そっか」
お姉さん「…それじゃ、約束事、増やそうかな」
お姉さん「私とBちゃん。…ずっと、友達でいるってお約束も増やしとこうね」
B「…うん!」
お姉さん、B「ゆーびきーりげんまん、うーそついたら… … …」
お姉さん「… … …」
B「… … …」
お姉さん「Bちゃん」
B「… … …」
お姉さん「こっち、きてくれるかな」
B「… … … うん」
お姉さん「… 初めて知った」
お姉さん「Bちゃん、幽霊に触れるんだね」
B「… … … うん」
お姉さん「… … … じゃ、もうちょっとこっちきてくれるかな」
お姉さん「… 抱きしめたいの。…いいかな?」
B「… … … うん…」
お姉さん「… … … あはは、あったかいなぁ」
お姉さん「こんなにあったかいの… 久しぶりだなぁ」
お姉さん「…幸せだなぁ」
B「… … … っく」
B「ひぐっ… っぅぅ…! うぇぇっ…!」
お姉さん「あはは… ありがと、泣いてくれて…」
お姉さん「… でも、私… Bちゃんの笑った顔… みたかったな」
お姉さん「… 嘘でもいいから… 最期だけ…」
お姉さん「笑って、欲しいかな…」
B「っ…うぅっ…! …ぐすっ、ぐすっ…!」
お姉さん「あはは… ごめん、無理、だよね…」
B「むりじゃないもん…! わらえるもん…!」
B「おねえさんのこと、ぜったい… ぜったい、わすれない」
B「だから、わたし… 泣かないもん…!」
お姉さん「あははは… 十分、泣いてるってば… っ…!」
B「泣かないんだもん… だから、わらって、バイバイする」
お姉さん「… … …」
B「おねえさんのコト、だいすきだから。だから、またあえるから…」
B「だから…」
B「… … …」
B「バイバイ」
お姉さん「… … …」
お姉さん「笑った顔… とっても可愛いよ、Bちゃん」
お姉さん「… 幸せになってね。お友達とも… お母さんとも… みんなと、仲よくしてね。その笑顔があれば、きっと大丈夫だから…」
お姉さん「… 元気でね、Bちゃん…」
B「… … …」
B(あんなにしっかり抱きしめていてくれたのに)
B(気づいたら、お姉さんは消えてしまっていて。 抱きしめてくれていた温もりも、まるでなかったように消えてしまっていた)
B(… 気づけば、私は砂場に一人ぼっちで)
B「… … … あ」
B(絵は描けないっていっていたのに)
B(そこには、へたくそな絵が描いてあった)
B(私と同じ髪型をした女の子が、にっこり笑っている絵が)
B「… … …」
B(私は涙を拭いて… 母親がいる5階の家へと、帰って行った)
――― …
A「おーい」
A「おーいってば、Bー」
B「… … … ん」
A「まーたぼーっとしてる。ホントに大丈夫?最近」
B「… … … 大丈夫」
B「もう、思い出し終わったから」
A「… ? なんかよく分からないけど… そうなの?」
B「…ああ」
B「夕飯の買い出し、行くぞ」
A「…う、うん」
お姉さん『私みたいに… 独りぼっちで、寂しそうにしてる幽霊を見つけたら…助けてくれると、嬉しいかな』
B(… それも、忘れていたのか。指切りまでした約束なのにな)
B(… それとも、忘れないでいられたのか、私は)
B(Aを… 助けられたのかな、私は。約束を守れたのかな)
B(正直… これからもその約束を守れるとは、胸を張って言えないけど…)
B(… … …)
B(… 助ける、か)
A「もー、またぼーっとしてる。ホントに大丈夫なの?それとも荷物重かった?」
B「重くても助けられないだろ、お前は」
A「う、そうだけどさぁ」
B「大丈夫だよ。心配するな」
B(… お姉さんは、殺されたと言っていた)
B(Cも、殺されたと言っていた)
B(… … … まさかな)
B(… … … でも)
B「A、近々Cを呼んでまたゲームでもするか」
A「え、珍しいね。Bからそういう事言うなんて。幽霊屋敷になるみたいで嫌なんじゃなかったっけ」
B「うるさい。家主が許可するから連れてこい」
A「… … …」
A「うんうん、大人になったねー、B。先輩としてうれしいぞー」
B「だから、先輩風急に吹かせるんじゃねー」
B(子どもの頃から、面倒な事に首を突っ込むのは避けていった)
B(それくらい、私は色々な幽霊を見てきたから)
B(それら全部を救えない事が、分かってしまったから)
B(… でも、私はもう一度、お姉さんとの約束を守りたいと思っている)
B(… 困っている幽霊を、助ける)
B(お姉さんの死んだ原因を。Cが死んだ原因を)
B(それくらい調べるのは、悪いことではないだろう)
B(… 例え)
B(例えそれが、危険な事であったとしても。それが幽霊を助ける事には繋がらないとしても)
B(私は…)
B(私は、知りたい)
B(この街に起きている、異変を)
六話終了です。ありがとうございました。
更新が普段より延びてしまいました、すいません。
がんばっているつもりなのですがなにぶん筆が遅くて…。
https://twitter.com/rordySS のほうで更新の報告等させていただきます。
それでは、失礼します。
乙
ゆっくりでいいから完結させてくれよな
乙!次回作も期待!!
ええな
乙!
すごい更新が楽しみ。
今回もよかったよ!
隅っこ感が良い
重くなりがちなテーマだけど、登場人物もみんなかわいい
A「… … …」
A「なるほどなるほど、こういうパターンもあるわけかぁ…」
A「いろんな幽霊がいるもんだねぇ、ホント」
A(きっかけは、私の気まぐれな散歩。家に籠りっきりで暇を持て余していた平日の午後)
A(鈍っていた身体を背伸びで伸ばし、本当に気まぐれで、家の周りでも散歩しようかと思って外に出た矢先だった)
A(私自身、生きているものと死んでいるものの見分けは、それなりにできるようになってきているとは思っていたが)
A(まさか、ここまでできるようになっているとは)
A「犬の… 幽霊」
犬「ワン!」
A「幽霊だよね、キミ…。っていうか、普通、リードもない犬がこんなところでうろついてたらまず周りの人が見るはずだし…」
A「だいいち…」
A「こんな大きい犬、見過ごすわけないもんね、みんな」
犬「ワン!」
A「私よりでかいんじゃないのキミ… セントバーナードだっけ、この犬種。ホントにこんな大きいんだ」
犬「… … …」
A「あはは、でも優しい目してるなぁ。こんだけ大きいのに全然怖くないもんね」
犬「… … … (すりすり)」
A「あははは、擦りつくな擦りつくな」
A「… 誰にも見てもらえなくて、辛かったんだね」
犬「クゥン…」
A「Bの言葉を借りると…」
A「幽霊っていうのは満たされていない魂が浮遊している状態であって、満たされさえすれば成仏できる…」
A「だっけ」
A「んー、キミは何が心残りなのかなぁ」
犬「… … …」
A「セントバーナードの野良犬なんているわけないし…飼い主が絶対いたはずだね」
A「それ絡みなのかなぁ、やっぱ」
犬「ワン!」
A「んー、言葉が通じないというのは辛いものだなぁ」
A(Bなら…自分以外の幽霊に構っていてもキリがないっていうから放っておけ、ってどうせ言うんだろうけど)
A(ま、どうせ私も暇なんだし。犬の幽霊の成仏なんて、Bに見つかったら即座に面倒くさがられるしね)
A「よし、今日はトコトン、キミに付き合ってあげるとしようじゃないか」
犬「ワン!ワン!」
A「うんうん、お礼はあとでいいよ。とにかく、キミの住んでいたところに行こうじゃないか」
犬「ワン! … … …」
A「おっ、どっかに歩き出した。 … え、今、言葉通じてたのかな」
犬「… … …」
A「ちょ、待ってよ。私も行くから」
A「… … …」
A(ホントに賢い犬だなぁ。リードもないのにちゃんと後ろからついてくる私と距離保ってるし。ホントに案内してくれてるみたい)
犬「… … …」
A「あれっ、ここ曲がるの?そうするとさっきの場所の方に戻っちゃうけど…」
犬「… … …」
A「… 結構歩いたけどなぁ。そんなに離れてるのかな、住んでた家」
A「… あれ?」
A「ねえ、ここ、さっきキミと出会ったトコだよ?やっぱり戻ってきちゃったけど…」
犬「… … …」
A「… あ、今度は違う方向に歩き出した」
A「道… 間違えたの?犬なのに?」
犬「… … …」
A(今度はさっきと全然違う道だ…。 間違えるにしてもえらい間違えようだね)
A(ま、この辺、住宅街で十字路の似たような景色多いからなぁ。犬でも迷っちゃうのかな)
犬「… … …」
A「この住宅街のなかにキミの家があるのは間違いないんだろうけど… 迷子犬なんて情けない犬だなぁ、あはは」
犬「くぅん」
A「… … …」
A「… あれ?あれ?」
A「ここ…」
A「またスタート地点に戻ってるじゃん…」
犬「… … …」
A「… … … 参ったなぁ。本格的に迷子なの?キミ」
犬「… … …」
A「というか、救助犬なわけだよね、セントバーナードって…。道迷うって結構致命的なんじゃ…」
犬「くぅん」
A「…んー… どうしようかなぁ… 私にもさっぱりだ…」
犬「… … …」
A「…え?」
A「また歩き出した…。 しかも、また違う方向行ってるし…」
犬「… … …」
A「おーい!ちょっと待ってよー!」
A「また全然違うコース…?ホントにどこ向かってるのよこの子…」
犬「… … …」
A(…でも… 迷子にしては辺りをキョロキョロしないし、足取りもしっかりしてるんだよねぇ…)
A(何か引っかかるんだけど… でも、やっぱりさっきとは全然違う道だ…)
A(… ってことは…)
A「… やっぱりスタート地点に戻るのね…」
犬「くぅん」
A「もー、どういう事なのか全然わからないよ… どうすればいいのよ…」
A(…Bがいてくれたら、ヒントでもくれたのかな)
A(案外こういうところで優しいからなぁ…。 …でも、たまには私だけで解決してみたいっていう気もするし…)
???「ふっふっふ… お困りのようっスね、お嬢さん…」
A「だっ、誰!? …口調でなんとなく誰かわかるけど!」
C「じゃじゃーん! お久しぶりっス、Aさん」
A「Cちゃん!またえらい唐突だけど、どうしたの!?」
C「ははは、相変わらずボク、この辺りウロウロしていまして」
A「放浪してるんだね…」
C「なんだか大きいワンちゃんを見つけたと思ったら、その後ろにAさんを見つけてびっくりしまして」
A「え、まさか」
C「しばらく、後をつけさせてもらったっス」
A「… … …」
A「なんていうか、すごい暇なんだね、Cちゃん」
C「先輩には負けるっス!」
犬「ワン!」
A「… … … うぐう」
C「今日はBさんは一緒じゃないんスね」
A「うん、今学校行ってるとこ。…私は、単に気まぐれで散歩しようかと思ったんだけどさ。この犬の幽霊に出会っちゃって」
C「え!?幽霊なんスか!?このワンちゃん!」
犬「ワン!」
A「気づいてなかったの!?そうだよ!」
A「… だからさ、Bの真似事じゃないんだけど…私も、ちょっとは…この子の成仏の協力ができたらなぁ、って」
C「… はー… なるほどなるほど。 そっかぁ、犬の幽霊なんてのもいるんスねぇ。よしよし」
犬「クゥン」
C「ははは、すごい人懐っこいっスね、このワンちゃん」
A「うん。… きっと、生きてる頃にとっても可愛がられてたんだろうね」
C「そうっスね。全然警戒してないっス」
A「… でも、迷子みたいなんだ、この子。歩きはするんだけど、どこに向かってるのかさっぱり…」
C「へっへーん。ボク、後からつけている間にわかっちゃったっスよ」
A「え!?」
A「わかった、って… この子のお家が?」
C「おおよそ、っスけどね。あと、ボクの予想っスけど」
A「いいよいいよ!話してみて!」
犬「… … …」
C「たぶん、このワンちゃんが歩いてた道って、単にウロウロしてる道じゃないと思うんです」
A「… そうだね。迷ってるにしては、行先がしっかりしてる感じだったし…」
C「ボクの予想なんスけど… 生きているうちの、この子の散歩のコースだったんじゃないっスかね」
A「… あ」
C「たぶん、散歩のコースが幾つかあって、それを辿って歩いてるんじゃないんかと」
A「じゃあこの子自身がお家を忘れちゃってて、思い出そうとして生きていた頃の散歩のコースを歩いていた、とか?」
C「そうっスねー…。 理由はよく分からないけれど、少なくともワンちゃんのお家がこの住宅街のどこか、っていうのは間違いないと思います」
犬「クゥン」
A「あはは、不安そうになるなよー。 … えーと、それで… それじゃあさっきから歩いていたのは散歩のコースのバリエーションだったってコトね」
C「そうだと仮定すると… 一見バラバラに見えたさっきの道筋も、なんとなく関連付けられるっス」
C「ボクが後をつけながら書いてみたこの辺りの地図を見てほしいっス」
A「… … …」
A「Cちゃん、すごい才能持ってるんだね…」
C「伊達に放浪幽霊してないっスから」
C「十字路が多い住宅街なんスけど… さっきワンちゃんとAさんが辿った道を線にしてみると…」
A「… へぇ。こうしてみると、なんだか迷路みたいな地形なんだね、ココ…」
A「… … … あ」
C「気づいたっスか?」
A「そっか… ルートはバラバラだけど、周回して必ずココに戻ってくる、っていうのは…」
A「つまり、私とこの子が出会ったこの場所が、『散歩で必ず通る道』だったんだ」
C「そういうわけっス。これだけバラバラの散歩コースで必ず通るというコトは、つまりこのワンちゃんのお家は… すぐ近く」
A「必ず通るっていう事はつまり、必ず通らなくちゃいけない道だとすれば…」
A「… 私たちの、すぐ後ろにある家?」
C「… だと思うっス」
犬「… … …」
A「え、え… そこに見える家? …だとしたらこの子、自分の帰る家、分かってるはずじゃないの…?」
C「そこが不思議なところっス。帰るべき家が分かってるのに、なんでこの子は家に帰ろうとしないのか…」
犬「… … … クゥン」
A「帰りたくない理由があるのかな…」
C「でも、こんなに人懐っこいんスよ。すぐにでも飼い主さんに会いたいと思いますけど…」
A「… … …」
A「ね、行ってみようよ。キミの家。あそこなんでしょ?」
犬「… … …」
A「… やっぱり、帰りたくないのかな。全然動かない」
C「うーん… なんでなんスかね…」
A「… とにかく」
A「私達だけでも覗いてみようよ、あの家。なにかわかるかもしれないし」
C「そうっスね。行ってみましょう」
C「… … … しかし」
C「幽霊二人に覗かれる家、ってなんか不気味っスよね。物件の価値とか下がらないといいっスけど…」
A「いらん心配はしなくていいの!もうちょっと小学生らしいコトを考えなさい!」
C「… このお家っスね」
A「そうね。… 私達だけで、何かあの子のコトが分かればいいけど…」
A「… … …」
A「あ…」
A(私は、塀からその家の中を見ただけで… あの子が、帰れない理由が分かってしまった)
父「そら、とってこい!ジロー!」
ジロー「わん!わん!」
娘「あはは!すごーい!ジロー!もうフリスビー、三回もキャッチできたよ!」
父「すごいなぁ、お前は。今度、大会でも出てみようか」
娘「わー、ジロー!がんばってね!」
ジロー「わん!」
A「… … …」
C「… … …」
A「… そっか」
A「もう、ここは… あの子の帰る家じゃ、なくなってたんだ…」
A(私とCちゃんは…しばらく、幸せそうに戯れる父と娘と、小型犬の姿を見ていた)
・
・
・
父「… タローが死んで、もう三年か…」
ジロー「わん!」
父「覚えてるか?お前、泣きすぎて何日か学校休んでたんだぞ」
娘「… 忘れるわけないよ。私が生まれてすぐ、タロー飼いはじめたんだよね。…だから、ずっと一緒だったんだよ、私」
娘「忘れるわけ… ない」
父「… そうか。そうだよな。ごめんな」
娘「ジローと散歩してると、いつも思い出すんだ。ここでよく休憩して一緒に座ってたなぁ、とか…この道散歩してて、タローによく引っ張られて転んだなぁ、とか…」
娘「… 三年も経つのに。まだ、泣いちゃう事だってあるんだよ」
父「…あはは、タローに心配されるぞ、それじゃあ」
A「… … … 心配、されてたんだ…。あの子…。 …だから…」
娘「パパと同じくらい、私の事、面倒みてくれてたから…。 …一度ね、散歩しててアタシ、野良犬に出くわしちゃったの。…無理に撫でようとして近づいたら、噛みつかれそうになって…」
娘「そしたらね。タロー、私の事助けようとして… その野良犬に体当たりして、助けてくれたんだよ。…信じられる?あの優しくて大人しいタローがだよ?」
父「… … … そんな事があったのか。知らなかったよ」
娘「…怒られると思って、言えなかったんだ。ごめん」
父「いいさ」
娘「…本当に、私の事、守ってくれてたんだ。…だから、タローが死んだときは、お父さんが死んだみたいに寂しくて、辛くて…」
父「… そうだな」
娘「…ジローの引き取り手の話聞いた時もね?…新しい犬飼いはじめるのに、すごく悩んだんだ。…タローの事、裏切るみたいで」
C「… … …」
娘「でも…なんとなく、思ったんだ。タローに面倒みてもらって、私が育ったのなら…今度は、私が他の犬を育てても、いいんじゃないかな、って…」
ジロー「わん!わん!」
娘「… ジロー、ちっちゃくて、よく吠えるけど… なんだか、ちょっとだけタローに似てきた気がするんだ。…優しい目とかさ」
父「あはは、そうか。… そうかもしれないな」
娘「…命を繋ぐなんて大それた事じゃないけど… なんとなく、それが私の使命なのかなぁ… なんて、ね」
父「… … …」
父「立派に育ったんだな、お前も。…タローに育てられたおかげ、かな?俺が形無しだ」
娘「あはは…そんなことないよ。… これからもよろしくね、ジロー」
ジロー「わん!」
A「… … …」
A「… 行こう、タローのところに」
C「… … … はい。 … あ」
A「… … … タロー?」
A(私達が振り返ると… そこには、二人と一匹を見つめる、タローと呼ばれていた犬の幽霊の姿があった)
A(光を帯び、薄くなっていくその身体でも… 視線は凛と真っ直ぐ、家族の方を向けて、動かさなかった)
犬「… … …」
A「… タロー…」
A「諦めようとしてたんだね。だから…」
C「…諦める?」
A「もう、ここは私のいるべき家じゃないって分かってたんだよ、きっと。…でも、それでも諦められないから…成仏もできなくて。…家の中の様子を見る事すら…ずっとできなかったんじゃないかな」
犬「… … …」
C「…辛い思いしてたんスね、ずっと」
A「あの娘さんが独り立ちできるように、ずっと帰らなかったんだよ。…幽霊だから見えないけど、もし見えたら…余計あの子が悲しがっちゃうと思って、さ」
A「せめて、家の周りをグルグル回って…家の事、守ろうとしてたんじゃないかな」
C「… 賢いんスね、タロー」
犬「… … …」
A「立派に育ってるじゃん、娘さん。…だからもう、心配しなくて、いいんじゃないかな」
A「タローも、行くべき場所に行って…もう休んでいいんだよ」
犬「… … … クゥン」
C「… 立派だったっスよ、タロー。…お疲れ様」
A「…生まれ変わっても、素敵な飼い主のところにいけるよ、きっと」
A(…タローの姿は、どんどん風景の中に消えていく。それでも、視線は逸らさずじっと、家族の方へ向けて…)
A(そして… 消えゆく最後の時)
犬「ワン!」
A(一つだけ、タローは家族に向けて鳴き声をあげ… 消えていった)
娘「… … … タロー?」
ジロー「…! わん!わん!」
父「どうした?」
娘「… タローの声が今… 聞こえた、ような…」
父「… … … そっか」
父「久しぶりにタローの話したからな。…きっと、心配するなって言ったんじゃないかな」
娘「… … …」
娘「そうだね、きっとタローなら、そう言うね!」
A「…良かった。あの子が無事にいけて…」
C「でも、タローが家に帰れたのもAさんのおかげっスよ。すごいっス!」
A「あはは…そんな…」
C「心配してたのもあるけど…きっと、勇気がなかったんスよ。自分がいなくなった家族の姿なんて…本当は、見たくないものかもしれませんし」
A「… … …」
C「Aさんがいてくれたからあの子も勇気を出して家に戻れたんでしょうし。…大手柄っス!先輩!」
A「大袈裟だなぁ…あははは、でも嬉しいかも」
C「ボクが見込んだだけあるっスね!うんうん」
A「いつから私はCちゃんの弟子ポジションになったの」
C「それじゃ、ボクはそろそろ流浪の旅に戻るっス。またお会いする日まで!」
A「師匠キャラに加えて風来坊キャラ目指してるの?」
C「なんかかっこいいじゃないっスか!ピンチになったらボクを呼んでほしいっス!」
A「考えておくよ」
A(… あれ、なんか私忘れてるような…)
A(… … …)
C「それじゃあまた!失礼するっス!」
A「… … …」
A「ちがったあああああ!!Cちゃん!!家来て欲しいんだったあああ!!」
C「ぎゃあああ!?いきなり追いかけてきたあああ!?」
A「あぶねええええ!!Bに呼び出されてたんだよ、Cちゃん!!忘れてBに怒られるとこだったああああ!!!」
C「ひいいいい!?Aさん!?必死すぎて怖いっスううう!!!」
A(犬の幽霊と、家族。出会ったのは本当に単なる偶然だったけれど)
A(でも私は、確かに感じた)
A(決して他人事じゃない。…家に帰る勇気が出ず、迷っているのは…)
A(私も、同じなんだ)
A(タローが勇気を出して家に戻れたように…私も)
A(家に帰るべきなんだ、きっと)
A(例え… この世界から消える事になっても)
A(それが正しいのなら、私は帰ろう)
A(お母さんのところへ)
本当に久しぶりになってしまい申し訳ありません…!七話終了です。
仕事やらパソコンを買い替えたりやら色々しててすっかり遅くなってしまいました。
次回は一週間以内に…投稿できるように頑張ります(汗
お読みいただきありがとうございました!それでは、失礼します!
乙です
乙
久しぶりだけど、相変わらず良かったなぁ
わんちゃんの幽霊ならいくらでも見てみたい
乙!次回作も期待!!
ええな
乙!
大好きな作品だ。
長く続けて欲しい
だんだんCちゃんのキャラにハマってきたぜ…乙
A「B、私、決めたよ」
B「なにを」
A「私ね、家に帰る事にした」
B「そうか」
A「私は…いるべきところに帰るんだ、って…そう思ったの」
B「そうだな」
A「今まで、ありがとうね。…ひょっとしたら、これが最後になるかもしれない」
B「せやな」
A「ちょっとは止めろよおおおおおおおおおおおお!!!!」
A「はい!まずその読んでる漫画置いて!こっち向いて話聞く!」
B「えー、今から悟飯がセル倒すとこなのにー」
A「無事倒せるから安心してよ!今は私に集中してよ!」
B「へーへー」
C「Bさーん!犯人わかったんスけど、どうしてもサバイバル編にいっちゃうんスー!どうすればいいんスかー!」
B「とにかく最速の方向で犯人を明かすように選択しておけば大丈夫だ」
C「オッケーっス!犯人は真理っスよね!」
A「このタイミングでCちゃんも横槍入れない!!あと犯人違ってるからソレ!!」
C「ええええええ」
A「人がたまにシリアスに話そうとするとお前らはー…」
C「面目ないっス…」
B「私がドラゴンボールを止めなければいけないほど重要な話なのかそれは」
A「重要じゃない空気してた!?さっきの私のトーン!」
B「うーん、思い返せば確かに」
A「つい1分前の事だから思い返すまでもないでしょ!とにかく聞きなさい!」
B「家に帰るそうだな」
A「ちゃんと聞いてるじゃん…」
B「いい事じゃないか。雛がついに社会という荒波に飛び立つ瞬間に立ち会えてお母さん嬉しい」
A「いやだから… あの」
A「普通、もうちょっと止めない?」
B「止めない」
B「居候がわが家から出ていくのに止める家主がどこにいる」
A「う」
B「まして私はこれまでお前に付き合って会いたくもない幽霊や悪霊と絡まされていい迷惑だったというに」
A「ううう」
B「私が学校行っている間に使っているエアコンやらパソコンやらゲームやらの電気代がいくらかかっているか知っているのか貴様」
A「ううううう」
B「それに」
B「ずっと帰るつもりじゃないだろ、お前」
A「… … … え」
B「多分、自宅の前まで行ってチラッと中の様子見てまた帰ってこよう、くらいの気持ちだろ」
A「え、え、え…」
B「図星だな」
A「… … … どうしてそれを」
B「顔見ればなんとなくわかる」
C「わー、なんだかお二人もアレっスね。顔見れば分かるなんて、いよいよ本格的に夫婦って感じっスね」
B「ペットと飼い主と呼ぼうか」
C「了解っス!」
A「そこは了解しないで!それに夫婦でもペットでもないから!」
B「… … …」
B「この前、犬の幽霊に会ったと言っていたな。それが理由か?」
A「… … … うん」
A「なんか、あの犬見てたらさ。私も勇気出してお母さんの様子くらい見るべきなのかなー、って思って…」
C「立派でしたねー、タローちゃん」
B「というか、様子くらいいつでも見に行けるだろう。何を怖がってるんだ。お前は私以外や幽霊以外には見えないんだぞ。躊躇う事もないだろ」
A「… … …」
A「怖いのよ。お母さんが」
B「どう怖い」
A「… … …」
B「トラウマか?」
A「… … … そう、なんだと思う」
B「習い事を随分やらされていたらしいが、まあ、大体は想像つくな」
C「へー、A先輩ってお嬢様だったとか?」
A「そういうわけじゃないと思うんだけど…」
B「… … … まあとにかく、母親の顔を見るのも怖いから今まで勇気が出なくて自宅に帰れなかったと」
A「… … … はい」
B「それで今回、私にそれを打ち明けて」
B「あわよくば一緒に自宅まで来てほしいと。そういうわけだな」
A「… … …」
A「ふえええええええん!Bいいいいい!!」
B「ええい、毎度毎度ひっついてくるな」
C「…なんか、ドラえもんとのび太くんの関係に似てるっスね、お二人」
C「でも、Aさん… そもそも、なんで家に帰ろうとしてるんスか?ずっとここにいればいいのに」
B「勝手な事を言うな」
C「でもでも、Aさんって家に帰るのが嫌だったんスよね?だったら別にこのままここに居てもいいのに」
B「お前なー…」
C「だって…あえて嫌だった事をするなんて、なにか理由があるんスよね?Aさん」
A「… … …」
A「お母さん、一人なんだ」
C「え?」
B「… … …」
A「私、お父さんの顔知らないんだ。私が生まれた頃にはもうお母さんと別れてて… 顔も見たことないの」
A「思い出の中では… 保育園にいた頃からしか、覚えてないかな。24時間やってるところで… いつも私が寝たらお母さんが迎えに来てた」
A「朝起きたらすぐ保育園に通って… 一日を過ごして、寝て… ずっとその繰り返しだった」
C「… … …」
B「… … …」
A「休みの日もあったんだろうけど… あはは、あんまり覚えてないなぁ。その頃には塾とピアノ習わされてたし… 歳上がるごとにどんどん習い事増やされて」
A「… まともにお母さんの顔見て…おしゃべりしたり、遊びに行ったり… 多分、なかったと思う」
C「… 辛かったんスね、Aさん」
A「んー… わかんない。私はそれが普通だったから。 …でも、その『普通』に、どんどん嫌気がさしてきちゃって」
A「…正直、死にたいっていう願望がなかったわけじゃないの。… … … だから、かな。私が死んじゃったのって」
B「なら、それで終い、でいいじゃないか」
A「… … …」
C「そうっスよ!…死んじゃったのが良い事なんて言えないっスけど… お家と離れられたのは、良かったんじゃないんですか?」
B「だからって家に居候していいという事にはならんぞ」
C「ええー…」
A「… … …」
A「でもさ。…私がいなくなったら、お母さん、一人なんだ」
B「… … …」
C「それは… そうっ、スけど…」
A「私がいなくなって、お母さんがどうしているのか。どう暮らしてるのか…。 家と決別しようとは思っていても、心のどこかではずっとモヤモヤ思っていて」
A「それを忘れようとしても… ずっと、頭の片隅に残ってるんだ。お母さんは今、何をしているのか、って」
A「仮にも… 私の、親だから、さ」
A「でも… 怖いんだ。具体的に何が怖い、とかはわからないけど…」
A「私の事をどう思っているのか、とか…。私が死んじゃった後どんな気持ちなんだろう、とか…」
A「… なにが怖いのか、本当によくわからないんだよ…」
B「… … …」
B「それに私が手を貸せば、お前は満足なのか?」
A「… … …」
B「それを乗り越えるのも、お前の役目なんじゃないのか?」
A「それは…」
B「怖ければやらなければいい。逃げ出せばいい。 それでも、あえて家に戻りたいというのなら… 一人で戻るべきなんじゃないのか」
A「… … … そう、だね」
B「多分、お前の性格だからだろう。家に帰らなくちゃ、とか、私は娘なんだから母親の様子くらい見ておくべきなんじゃないか、とか」
B「居もしない誰かに強制されてるんだろう。だからずっと息苦しくて、心苦しいままでいる」
A「… … …」
B「お前はもう、この世にはいない。…いついなくなるかもわからない」
B「父も母もない。お前はお前なんだ」
B「一度くらい、好き勝手にやってみろ」
A「B… … …」
C「そうっスよ!家に戻る事なんかないっス!AさんはAさんのまま、気ままに生きていくのがいいんスよ」
A「Cちゃん… … …」
A「… … …」
A「う、っ… ふえええ…っ… ありがと… ホントに、ありがと…!」
・
・
・
B「落ち着いたか」
A「… ありがとう。なんか、スッキリした」
B「どっちが後輩なんだかわかりゃしないな」
A「あはは、今は私が後輩でいいよ」
C「うむうむ、美しい友情っス」
B「それで、どうするんだ」
A「… … …」
A「家に戻る!!」
C「… … … え」
C「えええええええええ」
B「… 言うと思った」
A「今の二人の言葉聞いて踏ん切りついたよ!私は、私なんだ!お母さんには私も見えないし感じられないのなら…」
A「いっそぶん殴るくらいの気持ちでいった方がいいのよね!殴れないけど!」
C「は、はー… そういう結論になっちゃうんスね…」
A「今まで習い事やらなんやらで全く母親こなしてなかった奴なんだから…復讐よ!」
A「呪ってやる!憑りついてやる!恨み倒してやるううう!!」
A「だから… 家に戻って、あいつの顔、思いっきり睨んでくる!」
B「そのくらいの気負いがあれば大丈夫だろう。遠慮なく行って来い」
A「… … …」
A「でも… もし、これが私の『未練』だったのなら… 私… いなくなっちゃうんだよね」
B「… … … そうだろうな」
C「え…」
B「それでも、一度行かないと、お前の気が済まないんだろう?」
A「… … …」
B「いいじゃないか。お前の『未練』が晴れるのなら、それがお前のすべき事だ」
C「Bさん…」
B「行って来い。しっかり自分に打ち勝ってこい。… 帰ってこなかったら、線香くらい立てにいってやる」
A「… … …」
A「ありがとう…B!私… 行ってくる!」
B「… 気をつけてな」
A「… 今まで、ありがとう!!」
C「Aさん… 行っちゃった…」
C「Bさん… ホントに、いいんスか?ホントにこのままAさんがいなくなっても…」
B「C」
C「え?」
B「お前の死んだ事について話があったからここに呼んだんだが… 予定が変わった。行くぞ」
C「… … …!」
B「娘が母親と決別する瞬間。親友として、しっかり見届けてやろうじゃないか」
C「Bさん…!!」
B「出かけるぞ。かまいたち、セーブしてこい」
C「ういっス!しおり、挟んでくるっス!」
A(お母さん、私、決めたよ)
A(もう私、一人で生きていく。何処に行こうと… 私がどうなろうと)
A(だから最後に… 最後に、一度だけ)
A(さよなら。 言いに行くよ)
C「でも… Aさんが家の中入ったら、生身のBさんは入れないんじゃ…?野次馬できないっスよ?どうするんスか?」
B「… … … そうだな」
B「それなら家の中に玄関からお邪魔して、Aの代わりに母親の鼻っ柱でも殴ってやるか」
C「ひゅー!かっけーっス!」
申し訳ありません…
長くなりそう&投下分がまだここまでしか仕上がっておらず、都合により前、後篇です。
近いうちに後篇も投下します!本当にすいません。
仕事もだいぶ落ち着きまして投下ペースも速められると思います。
ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いします…!
乙
自分のペースで
乙
Bはほんと男前だな
おつお
何年でも待つよー
乙!
続きを楽しみにしてるよ
B「… … …」
C「… … …」
A「ああああ…」
A「ううううう… うー…」ウロウロ
A「はあああああ…」
B「何やっとるんだあいつは」
C「なんか…かれこれ一時間くらいあの辺りウロウロしてるっスね」
C「という事は…あそこがAさんのお家だった、って事でしょうか?」
B「そうだろうな」
C「え… でも、だって…」
C「ホントに普通のアパートっスよ…?あそこ」
B「そうだな」
C「Aさんって、すごいいっぱい習い事習わされてたんスよね?保育園やら塾やらに預けられっぱなしで、お母さんとほとんど顔合わせてなかったって」
C「だからボク、すごい教育ママっぽいイメージだったんスけど…。だから、お家もすげー大豪邸、みたいな感じで…」
B「私もそう思ってた」
C「… ホントにあそこなんスかね、Aさんのお家。めっちゃ周りウロウロしてますけど」
B「むしろ普通のアパートよりボロいくらいだな。この辺りじゃかなり古い方だろうし… 周りに雑草も生えまくってるぞ」
C「こりゃ、家賃相当安いとみたっス!… ってコトは、Aさんってあんまり裕福なご家庭ではなかった…?」
B「それじゃ習い事通わせる金も無いだろ」
C「そう、っスよねぇ…。 うーん… わかんないっス…」
B「… … …」
A「あうううう…」
A「ふひぃぃぃぃん…」ウロウロ」
C「しかし…いつまでああしてるんスかね…」
B「前回あいつ、すごい意気込んで出ていかなかったか。『一発ぶん殴る!』とか『復讐してやる!』とかなんとか」
C「ボクも聞いてたっス」
B「いい加減観察するのも飽きてきたな」
A「あああ… どうしよどうしよ…」
A「お母さん、中にいるのかな… 入っていいのかな… 不法侵入…いや、そもそも私娘だし、幽霊だし…」
A「あああ、でも死んでるって人権がそもそもないんじゃないのかなぁ… 私なんかが家に入っちゃいけないんじゃ…」ウロウロ
スパァァァァァァンッ!!
A「… … … いたい」
B「なにをグズグズ言ってる。さっさと入れ」
A「B…Cちゃん…」
C「先輩!根性っス!ガッツ出すっス!」
A「… … … B」
A「そのスリッパ、いつも持ち歩いてるの?」
B「こういう事態に備えてな」
A「ううう… そりゃ、あんだけ格好つけて出ていった手前、部屋にも入りたいけどさぁ…」
A「いざ、こう、ここまで来るとダメなんだよぉぉ…。勇気が出てこないんだよぉぉ…」
C「A先輩とは思えないほど弱気になってるっスね…」
B「いいからさっさと行って来い。様子見てくるだけでもいいから」
A「それが怖いんだってばぁぁ…。ママいたら私どんな顔すればいいかわからないし…」
A「あああ、そもそも家の中に私の遺影とか飾ってあるわけでしょ…?そんなの見た日にゃあたしゃショック死しちまうだよぉぉ…」
B「キャラがブレまくってるぞ。正気を保て」
C「そもそもA先輩死んでるっス」
A「あううう…。死んでるけど心臓が痛いよぉぉ…」
B「だいいち、そもそもお前の母親はいるのか?お前の家、どの部屋だ」
A「… … … 二階の一番端っこ」
B「だったら多分、今誰もいないぞ」
A「え」
B「さっきから様子見たり裏回ったりしたが、人のいる気配がしない。カーテンも揺れないし、テレビの音とかもしないしな。そんなに広い部屋じゃなさそうだから人がいればすぐ分かる」
A「ほ、ホント…?」
B「多分な。だからとにかく入ってこい」
A「ちょ、ちょっと行ってくる…!!」
C「… ようやく入ったっスね。あ、ドアすり抜けた」
B「面倒くさい奴」
A「誰も… いない…」
A「… … …」
A「懐かしい… この匂い、この明るさ… この雰囲気…」
A「私の… 家だ」
A「この奥が…」
A「私の… 部屋…」
A「… あはは。全然片付いてない…。 …塾のテキストしかないや…」
A「… … …」
C「あ、出てきた」
A「おーい!誰もいなかった!!良かった!!」
B「良くはないだろ。何しに戻ってきたんだ」
A「あ、あははは…。 …とにかく、なんかスッキリした!! 今日はママいないし、とにかく一旦戻ろう!」
B「… … … はあ」
C「お母さんいなくて良かったのか悪かったのか…」
B「なんにしても、一度家に戻ろう」
C「そうっスね。それじゃ、Aさん!戻りましょう」
A「うん!今そっちに… … …」
C「…?Aさん…?」
B「… … …!」
A「あ、あ… … …」
A母「なに、アンタ。家になんか用?」
A「マ、マ… … …」
・
・
・
A母「… ふーん」
A母「今更線香立てにくる人がいるなんて珍しいね。もう何か月たったんだっけ?」
B「一か月くらいかと」
A母「あー…。 もうちょっとで、四十九日とかいうやつだっけ?… はぁ…。あ、缶コーヒーしかないけどいい?」
B「お構いなく」
A「… … …」
C「… … …」
C「なんスかね、この構図」
C「Aさんのお母さんと、Aさんと…あとBさんとボクがテーブルについてるけど… Aさんのお母さんだけ、みんな見えない、と…」
C「うーん、ややこしい。ねえ?先輩」
A「… … …」
C「… … … 先輩。落ち着いてほしいっス」
C「Bさんが、きっとAさんの気持ち、代弁してくれるっス」
B「… そもそも、私が介入する話じゃなかったと思うんだが…」
C「あはは、成行きってやつっスね。ね、Aさん」
A「… … …」
C「… … … だめだ、カチコチに固まってるっス」
A母「…?なんか言った?はい、コーヒー」
B「いえ、独り言です。…どうも」
C「缶のままっスか…」
C「… しかし、すごい家っスね…」
C「五畳くらいのリビングに四畳半の和室が二つ…。リビングはお母さんの服で埋め尽くされてるっス…」
C「何着…いや、何百くらいあるっスね。しかも全部まあ、キラキラと…」
C「… Aさんのお母さんって…」
A「… … … 水商売」
B「… … … だろうな」
A母「あんた、あの子の友達?」
B「先輩です」
A母「ふーん?部活やってなかったのにね。 …そっか。線香立てにくる人もいたんだね、あの子」
A「… … …」
B「いないんですか?私の他に」
A母「そりゃ告別式とかにはクラス全員で来たりとかしたけどさ。個人的に、っていうのはあんたが初めてかもね」
A母「友達、いたんだ」
B「… … … まあ」
C「先輩… 習い事ばっかで遊べなかったから… それも、お母さんのせいなのに…」
A「… いいよ、Cちゃん。私の事で怒らなくても…」
C「でも…」
A母「ははは、友達なんか作る暇なんかあったらもっと勉強がんばれっつー話だよね」
B「いろいろやってたんですよね、A先輩」
A母「そうだね。塾は週4くらいで行ってたし…スイミングにピアノ… ああ、料理教室なんかも行かせてたっけ」
A母「まぁ、結局全部無駄になっちゃったけどね」
C「… … … ボクが殴りたいくらいっス」
A「… … … ありがと。でも、いいの」
C「Bさんだって… きっと同じ気持ちっス」
B「… … …」
A母「私も仕事柄忙しいからさ。殆どあの子に会えなかったし。その分そういう事にお金かけてやらないと、あの子が将来食べていけないでしょ」
A母「ちゃんと大学くらい行かせてやるつもりだったしね。ま、いろいろやってたおかげで一人で暮らせるくらいにはなってたんじゃない?」
A母「ま、ホントに無駄だったけどさ。アタシなりの愛情ってやつ?」
B「お母さんは… なんの仕事を?」
A母「ま、そこの服みりゃわかると思うけどね。お水系よ。 結構売れててねー。休みがほとんどないのよ。仕事場、離れてるから近くで寝てこの家帰ってこないってのもザラだし」
A母「アタシも仕事が生きがいだからさ。売れてるうちに稼いどかないと。休んでなんかいられないから」
B「… じゃあ、先輩ともほとんど会ってなかった…」
A母「まあね。その分しっかりお金はかけてやってたつもりだよ?」
A母「たまに会ってテストの点とか見ると、あんだけ塾行かせてたのに結構悪いんだよねー。アタシに似たのかな、はは」
A母「そういう時は怒鳴りつけてやったなー、よく。まぁ、曲りなりにも母親だしね」
B「… … … そうですか」
C「…先輩のお母さんは… ホントに、自分のやっていた事を正しいと思ってるんスか?」
C「心の底から… それが、愛情だと、それが母親の責務だと、思ってたんスか…?」
A「… … …」
A「わかんないよ… 私には…」
B「… A先輩の部屋は… その和室ですか?」
A母「ああ、そうだよ。忙しくてまだ片づけてないけど、見てく?」
B「… 失礼します」
B「… … …」
A母「あの子も他に趣味がなくてねー。可愛げないだろ?学校の物と塾のテキストくらいしかないじゃん。ははは」
C「…誰が、そうさせたと…!」
A母「久しぶりに入ったなー。部屋。 …ま、もういないんだし… 友達もあんたくらいしかいないんだろうし。好きなだけ漁っていいよ」
B「… … … いえ」
A母「あたしはリビング戻ってるからさ」
B「… … …」
・
・
・
A母「…お、もういいの?なんかあった?」
B「… … …」
B「失礼を承知で聞きます」
B「お母さんは… Aが… 先輩が死んだとき、悲しかったですか?」
A「… !」
A母「… … … なにそれ」
B「辛かったですか?心が痛みましたか?身体がバラバラに張り裂けるような悲しみを感じましたか? …実の娘を亡くして」
A母「… … …」
A母「はは、ホント失礼だよそれ」
A母「… 辛かったに決まってるじゃん。娘だよ?たった一人の」
A母「あの子が生まれる前に旦那と別れてさ。ま、性格の不一致ってやつだけど。アタシが一人でずっと育ててきた子供だよ」
A母「ムカつく事もいっぱいあったけどさ。アタシも母親になるなんて柄じゃないし? でも暴力も振るわなかったし、育児放棄もしなかったよ」
A母「その娘が死んで悲しくないわけないじゃん」
A「… … …」
B「… 暴力も振るわず、育児放棄もしなかった」
B「それじゃあ、Aの顔をマジマジと見てあげた事は… ありましたか?」
A母「… … …」
A母「あ?」
A「…!」
B「母親として… 良い事をしたら褒めてあげましたか?悪いことをしたときはきちんと目線を合わせて、正面から叱ってあげられましたか?」
B「… 愛していると、抱きしめてあげた事はありますか?」
A母「… … …」
A母「あんた、なに?学生のくせに説教しにきたの?」
B「聞いているだけです。お心を悪くしたならすいません」
A母「悪くならないわけないでしょ」
A母「さっきから言ってるじゃん。仕事が忙しくてロクに会えなかったって」
A母「会える時間なんか限られてるんだからさ。そんなちゃんとした母親みたいな事、できなかったわけ」
A母「その分しっかり保育園にも入れたし?学童保育に、塾に、大人のいるところでしっかり育ててあげたわけ。それ以上アタシにはできなかったの」
B「違います」
A母「… 何よ」
B「仕事が忙しくて会えない、じゃないです。 仕事に感けて娘の面倒を見てやらなかった、です」
B「言葉だけ綺麗にして言い訳しないでください」
A母「… … …」
A母「っさいわね…。 あんた、何しにきたのよ。いいから帰りなさい」
B「望んでもいなかった子どもが生まれてしまって。どうにか母親になろうとしてした行動が、娘をなるべく自分から離れた場所に置いて娘の存在を見ないようにしていた」
B「母親になりたくない。自分という存在を守りたいから。 違いますか?」
A母「っせーな!!黙れよ!!」
C「Bさん…」
A「… … …」
B「お金を積めば子どもは幸せを感じると…本気で思っていますか?それが母親の責任… そんな事はないことくらい、分かるでしょう」
B「恵まれた環境にいれば… 大人が周囲にいて、安全が確保できれば… それで子どもは幸せだと…」
B「そんな事より… たとえ少しでも、目を見て…声を聴いて… 抱きしめてあげる事を、あなたの子どもがどれだけ望んでいたのかを…!」
A母「… … …」
A母「あんたに… 何が分かるのよ…」
A母「あの子が不幸せだったって!?アタシを恨みながら死んでいったとでも言うの!?今でもアタシを恨んでいるって!?」
A母「もう… もう、あの子はこの世にいないんだから…!」
B「… … …」
A「… … …」
A母「じゃあアタシにどうしろって!?あの子の墓の前に行って土下座でもしろっていうの!?…そんな事で済むならいくらでもするわよ!」
A母「… 何をすればよかったのよ…。 …アタシだって、アタシだって、子どもなんて欲しかったわけじゃない…! できちゃったものは仕方ないじゃない…!」
A母「アタシは仕事が好きなのよ!金だっていいし、男からチヤホヤされるのだって、大好き!トップにずっと立っていたかった…!…それなのに…」
A母「… 母親になっちゃったら、おしまいじゃない…」
B「… … …」
A母「それでも…あの子を養わなきゃいけないアタシの気持ちを分かるのかよ!!育てなきゃいけなかったアタシの気持ちが…!!」
A母「あんたみたいな社会にも出ていないガキに!!何が分かるっていうの!?」
B「… … …」
B「わかります」
A母「はあ!?」
B「Aの気持ちが、分かります」
A母「何、言って…」
B「母親と目も合わせた事がなくて。育ての親が誰かすら分からなくて。 ずっと、ずっと生き方を彷徨っていたAの気持ちが、分かるんです」
A「B… … …」
B「私と同じなんです。 親から疎まれて、蔑まれて… 自分を敬遠している事を、子どもは手に取るように、感じてしまう」
B「だから母親に近づけない。愛された事がないから、どう接すればいいのかを… 親も、子どもも忘れてしまう。それがどんどん悪化していく日常を過ごしていく苦痛が… 分かる」
A母「… … …」
A「B… もう、いいよ… もう、やめてよ…!」
B「母親に近づく事すら罪のように感じてしまう。…一人で生きていくしかない…。 それを悟った時の子どもの悲しみが…」
B「 お前に… お前に分かるか… !?」
A母「… … … う …」
C「Bさん… 怒ってる…?」
B「Aは… とんでもなくお節介で… 自分以外の誰かが困っていれば、すぐに手を差し伸べてしまう。 …なぜだかようやく分かった」
B「自分が得られなかったものを、他人に与えたいんだ。愛情を、優しさを… 自分が持っていないから、誰かに与えてやりたくて、たまらないんだ」
B「だからあいつは…!」
A母「… … … う、うっ…」
B「あんたが抱きしめてやれば…!自分の子どもに愛していると一言でも言ってやれば…!あいつは、どれだけ幸せに死んでいけたか…!」
A母「やめて… やめてよ…!!」
B「今でもあいつは…苦しんでいるんだ。…苦しんでいたんだ。平気な顔をして笑っていても… 心の中ではずっと、寂しさを抱えて…」
B「必死に自分の家を、母親を忘れようとして… 他人に手を差し伸べていたあいつの優しさと辛さを… あんたは分かってやれてたのかよ…!!」
A「B… やめて…! お母さんを…もう…!」
A母「う、うっ… やめてってば…!ううう、ッ…!」
B「あんたが… 母親として…!! 母になれてさえいればッ…!!」
A「Bッ!!!!!」
B「… … …!!」
C「… あ …」
C(お母さんに詰め寄るBさんの身体を… 後ろから抱きしめるように、Aさんが止めていた)
A「… … … ありがとう… 私のために、泣いてくれて…。 …怒ってくれて…」
B「… … …」
A「でも… 私の、たった一人の… ママだから。 …これ以上は、やめてあげて…」
B「… … …」
A母「うっ、うううッ… !!」
A「私の言いたい事… 全部、Bが言ってくれたよ…。 …本当に、ありがとう…」
A「Bにも… 辛い思いさせちゃって… ごめん。私のために…」
B「… … …」
A「だから… 私に、話、させて…。 …もう大丈夫だから」
C「… あ…。 …え?」
C(ボクは… 幻を見たんだろうか。 Bさんを抱きしめていたAさんの身体が… まるでBさんに溶け込んでいくように、消えて)
C(Bさんが… Aさんの身体になって)
C(うずくまっていたお母さんの頭を、ゆっくり撫でた)
A母「… … …」
A母「…え?」
A「…泣かないでいいよ、ママ」
A「私は… 私として、この世界に産んでもらえて、とっても嬉しい」
A「ママの事… もっと知りたかったけど。…もっと、おしゃべりしたかったけど…。 …できなくなっちゃった…」
A母「あ、あ、あ…」
A「… ごめんね。… 死んじゃって…」
A母「あ…」
A母「A、Aっ…!」
A「… … … やっと、名前で呼んでくれた」
A「やっと… 抱きしめてくれた…」
A「それだけで… 私、嬉しいよ」
A母「ごめんね… ごめんね…! アタシ、アタシ…ッ!!」
A「… … … いいの」
A「ちょっと早かったけど… 娘として、独り立ちできた。… ママが、いろいろやってくれたおかげで」
A母「でもアタシ…! Aに、何もできなくて…っ! どうすればいいか、分からなくて… っ …!!」
A「… … …」
A「今…。 最後に、ママのあったかさが分かったから。 …もう、十分だよ」
A「ありがとね… ママ」
A「… さよなら…」
A母「嫌… 行かないで、A…!!」
A母「やっと… やっと、アタシ… !!」
A母「あああああああっ…!!!」
A「…大好きだよ」
A「私の、ママ」
・
・
・
C「… なんだったんスかね、あれ…」
B「… 分からん。私の意識はしっかりあったし、なにを喋っているのかも分かっていたが…」
B「口から出てくるのはあいつの言葉だったな」
C「… … …」
C「良かったっスね。Aさん」
B「… … …」
B「ああ」
C「もっと早く分かり合えれば、苦労なんてしないんスけどね…」
B「それができれば世の中はもっと良くなっているんだろうさ、きっと」
B「多分、Aの母親は… 子どものまま、大人にさせられちまったんだろう」
B「まだまだ自分でいたい。自分をもっと楽しみたいのに… 自分の子どもができてしまう」
B「だから… どうやって愛せばいいのか、きっと分からなかったんだろう。今まで、ずっと」
B「怖くて…辛くて…。 それを、他に預ける事で自分が面倒を見ていると思い込んでいた」
B「そうしないと自分が守れなかったからな」
C「… 自分がそうなったら… 本当に親になれるのか、ちょっと怖いっス…」
B「… すべては責任だ。そうなったのは自分のせいだし、しっかり受け入れなければいけない」
B「… ただ、それでどこにも甘えられなくなっちまうのは、少し可哀想なのかもしれないな」
C「でももっと可哀想なのはAさんっス」
B「だから、良かったじゃないか」
B「最後の最後に… 『母親』に甘えられて」
C「… … …」
C「そうっスね!… ホントに、良かったっス!」
C「Aさん… ボクたちの事、忘れてないっスかね」
B「… さあな。どっちにしろ、もうあいつの顔は見れないんだ」
C「… 寂しいっス」
B「泣くな。そんな顔してたらあいつがもっと悲しむぞ」
C「… うっ… うううっ…」
B「さあ、笑って帰ろうじゃないか」
B「… A…」
B「見ているか。私達は」
スパアアアアアアンッ!!!
A「人を勝手に成仏した扱いするなああああああッ!!!」
B「あれ」
C「あれ?」
A「おまえらなあああ… 何勝手に帰ってるのよおおお …!」
B「え?普通成仏する流れだよなあ」
C「ねえ?」
A「わざとやってるでしょあんた達…!」
A「私はまだいなくなるわけにはいかないの!Cちゃんの死んだ理由を明らかにするまで未練なんて絶対消えないんだから!消させないんだから!」
B「お前…」
B「ホントに、どうしようもないくらいアホで惨めなお節介だな」
A「ちょっと貶しすぎじゃないソレ!?」
C「うわあーーん!ありがとうっスせんぱーい!」
A「私はまだ死なない!死んでたまるか!」
B「幽霊ジョーク?」
B「… はあ。とにかく疲れた。 帰るぞ。メシ買ってく」
C「やったー!何にするっスか!?あ、いっそ外食してくとか!?回らないお寿司ー!」
B「私一人で腹を満たして帰る羽目になるぞ」
C「うわーん」
A「… … …」
A「B」
B「… ん?」
A「… ホントにありがと。… その …」
A「… 嬉しかった。私… Bと一緒に暮らせて… ホントに、良かった…」
B「… … …」
C「… … …」
C「あれ?ボクいない方がいい感じ?」
B「いてくれないと変な方向に進みそうで怖い。むしろ助けてくれ、C」
A「どういう意味よおおおお!!素直にお礼言ってるんだから受け取れよおおおお!!死ぬほど恥ずかしいんだからこっちは!!」
C「あはははは!!」
B「… … …」
B「フッ」
A「何その見下した笑い!?」
B(… あの時…)
B(Aと… まるで一体になったようになった… あの感覚)
B(私にも、初めての体験だった。…何故あんな風になったのかは分からないが… とにかく不思議な感覚だった)
B(『憑依』とでもいうのか)
B(私もAも、その事に関しては話はそれ以上しなかった。… 興味本位でして、どうなるか分からないのが怖かったのか…)
B(…ただ…)
B(私は… なんのために幽霊が見えるのだろう。なんのために… 幽霊と一体になれたのだろう)
B(それを少し考えようと思ったが…)
B(帰路につくバカ二人と一緒に笑っていたら、それはどうでもよくなった)
B(今はまだ… それについて、深く考えたくなかったから)
9話… と言っていいんでしょうか。8話を分けただけなのですが、とりあえず9話終了です!ありがとうございました!
皆様のおかげでここまで書いてこれました。いつもお待ちいただいて感想をいただけて本当に光栄です。
次回から最終章に向けて進めていきたいと思います。
何話になるかわかりませんが、思い描いているラストに向けて書いていきたいと思います。
小出しに書いていきたいと思いますので早めの投稿に… … … なるようにがんばります!!
それでは、失礼します!
乙乙
母は確かにクズなんだけど
ただそうとだけ吐き捨てて終わるもんでもないんだろうな
乙
乙
乙!ゆっくりでいいし何話になってもいいので、はしょらず最後まで書いてくださいね!!
ええな
おつ!
今回もよかった
あったかいね
母娘共に環境に恵まれていなかったのかもね
身を挺して教えてくれる人が居ないと、中々悟れないもんだろうな
B「… … …」カタカタ
A「っしゃあああッー!!ボンビー擦り付けられたー!!」
C「ぎゃあああー!!やめてほしいっス!お返しするっスー!」
A「よーし、ここで徳政令使って借金チャラにして… さあ、逆転するぞー!!」
B「… … …」カタカタ
C「あああああ、一気にボクが赤字に… … …」
A「よしよしーっ!!一気に新幹線使って目的地まで…!!」
C「ひいいいいいーっ!!」
B「… … …」
スパアアアアアアンッ!!!
スパアアアアアアンッ!!!
A「… 痛い」
C「… 痛いっス」
B「外で遊んでこい。作業の邪魔だ」
A「えー、外暑いんだもーん」
C「セミの声が余計暑さを加速させる感じがするんスよねー」
A「ねー」
B「やかましいこの現代幽霊ども。大体暑さ感じるのかお前ら。…ならせめて静かにしろ」
A「そもそもさっきからパソコンでなにカタカタやってるの?B」
B「… … …」
A「うわ、なにこれ。『不審死まとめ』…?嫌なサイトだねぇ」
C「ここ最近の犯人が捕まっていない事件やら、自殺かどうか疑わしい事件の…まとめサイトっス」
C「… ボクを殺した犯人、調べてくれてたんスか?」
B「… … …」
B「べつにCちゃんのためなんかじゃないんだからねかんちがいしないでよ」
C「ツンデレ演じるならもうちょっと感情こめるべきっス」
A「ふーん… 珍しいね。Bがここまでやる気になってるなんてさ」
B「… … …」
B「ま、興味が少しあってな」
C「ううう… ありがたいっス。なにからなにまで先輩たちにはお世話になりっぱなしで…」ボリボリ
B「家の菓子をつまみ食いしながら言うセリフじゃないぞ」
A「で、何か分かったの?」
B「… … …」
B「特には」
A「…だろうねぇ。だからイライラしてるんだろうし」
B「うるさい」
A「Cちゃんの事件… そもそも警察はCちゃんがどこで死んだのかも特定できてないんだよね」
B「… ニュースを見る限りだと、そうだろうな。死体があったのはここから離れた山中らしいし」
A「死体はえぐかったらしいねー。包丁で滅多刺しにされて見るも無惨な…」
C「… あのー。本人のいる前でそういう話をされるのはちょっとどうかと…」
A「あ、あははは。ごめんごめん」
A「… 実際にCちゃんが殺されたのは… 病院の裏手の住宅街。この事実を知るのは私達以外にはいない、ってコトだね」
B「人間一人と幽霊二人だな」
A「訂正しないでよ」
A「… 警察に言ったとして証拠が何もないわけだし…。信じてもらえるわけない、かぁ」
B「だろうな」
C「… … …」
C「… あの…」
A「ん?」
C「ボク… 別に、ボクを殺した人を探していたわけじゃないんです。だから… 調べてもらったりは…」
A「… … … そっか。そうだよね…」
C「ボク…今のままで十分幸せっス。ふらふらお散歩したり、こうやって先輩たちに遊んでもらえたり…。毎日、ホント幸せっス」
C「… このまま先輩たちに調べてもらわうと… なんだか、先輩たちが危ない目にあいそうで…。それが、怖くて…」
B「違うな」
C「… … … え?」
B「まず、私がこの事件を調べている理由に関してはお前のためだけじゃない。勘違いするな」
C「う。…す、ストレートにツンデレされるとそれはそれでキツいっス…」
B「それに…。 仮に、この犯人の犯行が通り魔的なもので、それによって未練たらたらの幽霊が増えてみろ。私がこの街を歩きづらくなる」
B「そうなる前にその元凶にくたばってもらわないとな」
A「… なんてたくましい」
B「あとは」
B「人は、死んだあとに現世にいるべきじゃない」
C「… … …」
B「C。今が幸せだと言ったが… 本当に幸せを享受してるんであれば、お前は成仏しているはずだ」
C「… はい」
B「幽霊にとっての本当の幸せは… すべてから解放され、『あの世』に逝く事なんだろう」
B「お前は、お前を殺した犯人の事が気になる。自分が死んだ後の家の事が気になる。母親の事も、父親の事も気になる」
B「そういった心のモヤモヤをずっと抱えながら生きていく事が、どんなに辛くて悲しいことか、今の自分が一番よく知っているだろう」
C「… … …」
B「今はいいかもしれない。だが時間が経てば経つほど、嫌な事というのは増幅していくものだ」
B「だから… お前は、知る必要がある」
B「自分自身のために。自分を殺した犯人の事を。そして… そのあとに、自分の両親にも会いにいけ」
B「安心して旅立つ事」
B「それが、幽霊の仕事だ」
C「… … …」
C「… 本当に、ありがとうございます、Bさん」
B「気にするな」
B(… 私のためでも、あるんだからな)
B(… 『おねえさん』を殺した犯人…。 絶対に、Cを殺した犯人と…同一人物)
B(勘ではない。…私の、確信)
A「… そもそも、Cちゃん殺した犯人って、他にもこういう事件起こしてる可能性があるのかな」
B「… … …」
B「だろうな。通り魔の犯行だと考えれば、Cの事件が初犯だとは考えづらい」
B「人の通らない場所で殺し、その痕跡を残さずに、遺体を全く別の場所へ移して遺棄。警察でさえその足取りが掴めていない」
B「初めての殺人でここまでの事はまずできないだろう」
A「… そっか、そうだよね」
A「そうなると… この犯人が起こした別の事件を探してみるのが真相への近道なのかな」
C「… でも…その方法が」
B「ある」
A「え」
B「可能性の話だがな。この事件だ」
A「… … …なになに?『女子大生、謎の不審死』…。え、これ8年も前の事件…?」
B「… … … ああ」
・
・
・
A「… … … なるほど」
A「小さい頃のBは、この女子大生に会った事があるわけなんだ」
B「ああ」
C「… でも、この事件の犯人がボクを殺した犯人と一緒だっていう根拠は…」
B「勘」
A「… だろーね」
B「しかも8年も前の話だからな。余計同じ犯人とは考えづらい」
C「じゃあ… なんで…」
B「勘」
C「言ってるセリフと自信たっぷりな表情が全く一致してないっス…」
B「ただ、Cの事件と類似している点が多いところが気になっている」
A「類似?」
B「C、お前、犯人の顔… 知っている人間だったか?」
C「… … … いえ。全然知らない男の人だったっス」
B「つまり『知り合いではない』『男性』。あとは… Cの死因については?」
A「包丁で滅多刺し…」
B「凶器は『包丁』。『滅多刺し』。…Cの遺体はどこにあった?」
A「ここから離れた山の中… … …。…そっか…この事件も…」
B「…女子大生の事件に関しては、遺体は海から上がったそうだ。…死因は溺死でなく包丁の滅多刺しだが…」
B「『死体は遠い場所へ遺棄』。しかし、実際の殺害場所は」
C「…!」
A「女子大生も、Cちゃんも…」
A「この街の中で…!」
B「そうだ。『実際の殺害現場はここからほど近い場所』」
B「類似点が多いのは確かだろう」
A「じゃ、じゃあ仮に同一人物の犯行だとすれば…」
B「… 犯人は」
B「この街の住人…あるいはこの近くに住んでいる奴の可能性が十分にある」
B「実際の殺害現場に関しては、警察やマスコミは把握できていない。報道されているのは遺体があった場所だけだからな」
B「犯人の手掛かりの要… 男性である事すら、世間は確信を持ってはいない」
B「そして… その事を知っているのは、私達以外、誰もいない」
B「幽霊と、そいつらの証言を聞ける、私しか」
A「… … …」
C「… … …」
A「つまりは… その犯人を見つけられるのは、私達しかないって事ね…」
A「俄然燃えてきたわ…!!なんか漫画の主人公みたいじゃん…!!」
C「… … … あの」
C「それなら、その事に関して警察に話してあとはお任せするとか… その方がBさんも危なくないし…」
B「… … …」
A「…でもさ… Bが仮に警察にその事を話したとして、どう説明するの?」
A「死人の声を聞いたって言ったって… 帰されるのがオチだと思うし…」
C「… … … そう、ですよね…」
B「心配するな」
C「… え?」
B「ある程度、この事件に関して調べて、犯行の確信を得たら、その事を警察に話せばいい」
B「あっちだって何の証拠も掴んでないわけじゃないだろう。こっちが出した資料と合致する事が多ければきっと犯人逮捕に繋がる」
B「調べものをするだけだ。…それなら、お前も安心だろう?」
C「… … …」
C「本当に… ありがとうございます、先輩」
C「ボクも…知りたいっス!」
C「ボクを殺した犯人の事…!絶対、調べ上げて…神妙にお縄についてほしいっス!」
C「だから… 協力してください!Aさん、Bさん!」
A「おうよ!任しとけってんだい!」
B「時代劇か」
A「さ、そうとわかれば捜査開始!なにをしましょう、ボス!」
B「お前はCと話しておけ」
A「え?なんで?なにを?」
B「そもそも、Cが殺された状況について知らない事が多すぎる。この事件に関して一番肝心なところだろ」
A「… あ。そういえばそうか。Cちゃん、犯人の顔、見てるんだもんね」
C「はい!… よく思い出せるか、自信ないっスけど」
B「死人に口ナシとは言うが… 死人の言葉を聞けるのが私達の最大の武器だ。だから、お前はCとよく話し、事件の状況を整理しろ」
A「アイアイサー!」
C「合点承知の助!」
B「何歳だお前らは」
A「… あれ?Bはどっか出かけるの?」
B「ああ」
C「捜査っスか?ボクも行きたいっス!ボス!」
B「幽霊はおとなしく部屋にいろ。…ちょっと調べものをしに行ってくるだけだ」
A「… … …」
A「なにか、危ない事しようとしてる?B。私達に内緒で…!」
B「してない。変な死亡フラグ立てるな」
A「ホント?」
B「さっきも言った通り、Cの状況を整理するのが一番の近道だ。お前らはそれに集中しろ」
B「調べものをしたら帰ってくるから。晩飯の準備でもしておけ」
A「ブ・ラジャー!」
C「イエスマム!」
B「掛け声も統一しておけ」
・
・
・
B「… … …」
B(『包丁』で『滅多刺し』。『死体はここから離れた場所』だが、そう遠くはない…。Cの死体のあった山も、おねえさんの死体があがった海も、同じような距離だ)
B(… 『被害者は女性』。そして…)
B(『事件の犯人が未だ捕まっていない』)
B(これらの共通点を考えて… ここ数年の未解決事件ですべてに当てはまるのは、一つだけしかなかった)
B(電車で二駅…。やはり、『この街の近辺』)
B(… 居る可能性は低い。しかも、極めて…。 でも…行ってみるしかないか)
B(4年前… 彼女が住んでいた、家に)
・
・
・
B(… … …)
B(その人は、考えていたよりずっとあっさり。何の苦労もせずに、見つかった)
B(私がネットで調べた、4年前の事件)
B(その記事に記してあったアパート。その一階の、端の部屋。4年間、事件以降誰も住んだ事のないというその部屋の隅に)
B(彼女は、ポツンと座っていた)
B(美しく伸ばした茶の髪を静かにかきあげ、彼女は私を見つめる)
B「… … …」
B「貴方が…」
B「D、さん」
D「… … …」
D「誰、あんた。…アタシの事、見えるの?」
B「… … … はい」
B「貴方に、お話があって来ました」
B「4年前」
B「貴方が殺された、事件について…」
10話投稿終了です!ありがとうございました。
これ以降、ずっと繋がった話になる予定ですのでここで一旦切っておきます。
最終章、何話になるのか自分でも分かりませんがお付き合いいただけると幸いです…。
投稿のペースが相変わらず不規則で申し訳ありません…(汗)これからもよろしくお願いします!
おつー
ちょうど今全部読み終わりました!
時間があっという間にすぎた・・・
乙
乙!
当初思ってたのと印象がガラリ
こういう展開好物です
ここまで一気に読み終えた満足感がすごい…
更新楽しみにしてます
乙!
楽しみだー
きになるとこで
10話きてた!次も期待
乙!ゆっくりでいいので待ってます!
今朝見つけて読み終えた
話のキモになりそうなところに突っ込んで申し訳ないが…
おねえさんが殺されたのが8年前、当時Bは4歳って言ってた気がするが、それだと現在12歳になっちゃうんじゃ?
今、中学2年の筈だよね
>>363
自分の勘違いだったらすまんが、お姉さんが殺されたのと幽霊になったのではタイムラグがあるかもしれん
例:おっさん
Bが誕生日を迎えた中学2年→14歳
おねえさんにあったのが4歳(10年前)
おねえさんの事件が8年前
おねえさん、死ぬ前から幽霊だな…
またまた遅くなって申し訳ありません…。
11話、投稿していきます。
>>363さん、ご指摘ありがとうございます!(汗)
すいませんが訂正をさせていただきます。
おねえさんが殺されたのは10年前、に訂正させていただきます。
Bがおねえさんに会った、並びにおねえさんが死んだのは10年前。現在Bは14歳が正しいです。
重ね重ね申し訳ありませんでした…。
A「… ふむう」
A「Cちゃんが殺されたのは、確かにあの病院裏手の住宅街。間違いはないんだね」
C「… … …はい」
A「犯人の顔…」
A「ここに関しては、薄暗くてよく見えなかった、と」
C「申し訳ないっス…」
A「でも、男なのは間違いないんだよね?」
C「はい!髪の毛も短めでしたし、体格もしっかりしてたっス」
A「身長とかはどんな感じだったのかな?」
C「… えーと」
C「ボクの背と比べると… ちょっと小さめだったと思うっス。ボクもちっちゃいほうっスけど、ボクの頭が胸の辺りまできてた… と思うんで」
A「ふむふむ… なるほどなるほど」
A「いいねー!なんかこういうの!なんかいかにも探偵って感じ!?燃えてくるねー!」
C「… ボクとしては複雑な心境なんスけどね…ははは」
A「ご、ごめんごめん…。 それじゃあ…犯人の顔が見えなかった、ってなると、年齢とかもわからないよねぇ」
C「…そうっスね…。でも、腰が曲がってたりはしてませんでしたし…まあ、若い男の人って感じはしてたと…」
A「あ、服装服装!たとえば制服だったとか、スーツだったとか。それでなんとなく目星つくかもよ」
C「… … …」
C「うううー… 申し訳ないっス…。そこがおぼろげで…」
A「… しょうがないよね。自分が死んだときの事なんてあんまり覚えてるわけもないし… 思い出したくもないよね。私だってそうだし…」
C「… … … すいません」
A「あ、謝ることじゃないってば。やめてよ、Cちゃんらしくない」
C「いえ、ボクも…もう少し、強くなりたいんです。自分を殺した犯人くらい、自分で知っておきたいって」
C「怖がってちゃだめっス。もう死んでるんだし…怖いものなんてないっス。だから…絶対に、犯人を捜してみせる、って」
A「… Cちゃん」
・
・
・
A「… まあ、纏められるのはこれくらいかな。あとはネットとかに上がってる記事の情報をまとめて…」
C「にしてもBさん遅いっスね。調べものって言ってたけど…」
A「… … … 確かにね」
C「…ホントに調べものだけなんですかね…。…ホントにボク達に内緒で何か危ない事してるんじゃ…」
A「… … …」
A「ま、心配してても仕方ないよ。夕飯の支度するからCちゃんも手伝って」
C「ういっス」
A「あいつが言ってたんだし…信じて待ってやろうよ。大丈夫大丈夫」
C「… … … そうっスね。Aさんが一番、Bさんの事知ってますもんね」
A「あはは、私はアイツの伴侶か」
A(… 大丈夫、だよね。B…)
D「… … …」
D「不思議な気分。アタシがこうなったのは随分前のような…それとも、つい最近だったような」
D「アンタが話しかけるまでの記憶、全部飛んでるみたいな感じ」
B「…記憶が虚ろになるのは、幽霊になってよくある事です」
D「へえ。アンタ、アタシ以外にも色々経験あるみたいね。霊媒師かなんか?」
B「そんなところです。だからと言ってお祓いをしにきたわけではないですけど」
D「…ふうん。てっきりアタシはここがいわくつき物件にでもなって大家のババアがお祓い頼んだのかと思った」
B「… 確かに、この部屋は貴方の後には誰も住んでいないそうです。大家さんから聞きました」
B「… … … 貴方が死んだ、4年前からずっと」
D「… … … 4年、ねえ」
D「ねえ、タバコ買ってきてくれないかな。久しぶりに吸いたいんだけど」
B「無理です。中学生ですから」
D「若いねー」
D「…それで何の用?わざわざ大家のババアに頼んでまでこの部屋に来て、アタシに用事って。今更線香立てにきたわけじゃないでしょ?」
D「あ、どうせならタバコ、線香にしてくれないかな。ババアに頼めば分けてくれるかもよ」
B「… … …」
B「お聞きしたい事があって来ました」
B「貴方が死んだ4年前… その死因と、それに関わった人物の事です」
D「… … …」
B「…直接的に言うと」
B「貴方が殺された事件と、その犯人について、です」
D「… … …」
D「やっぱアタシ成仏させにきたんじゃないの?アンタ。 4年も前の事なんでしょ?なんで今更」
B「… 事情があって来ました」
D「はっきり言うよ」
D「… 思い出したくない。そして、話したくない」
B「… でしょうね」
D「分かってるんなら帰ってよ」
B「そういうわけにもいきませんので」
D「自分の立場になって考えてみ。自分が嬲り殺されて、死ぬほど…死ぬまで痛みつけられた時の記憶を鮮明に思い出して話せっていうの?それでアタシに何の得があるのさ」
D「そうまでしてアタシがアンタに自分の事を話さなきゃいけない理由くらい教えるのが筋でしょ」
B「… … …」
D「単なる興味本位とか探偵ゴッコならお断り。アンタが霊媒師でアタシを成仏させにきたっていうのでもノーサンキュー。とっとと帰って」
B「… … …」
B「協力を、して欲しいんです」
D「… … … へえ」
B「私の、大切な人達の… 無念を晴らすために」
B「そして、これ以上悲しむ人が増えないために」
D「… … … つまり、アタシだけじゃないって事?」
B「はい。…あくまで警察やマスコミの情報ではなく私の推測ですけど。…ただ、確信はあります」
B「10年前、当時女子大生だった人物が何者かに殺害され、海に死体を捨てられています」
B「そして、つい先日… 小学生が、殺されました。死体は山中に埋められていたそうです」
D「… … …」
B「私は…」
B「そのどちらとも会った事があります。そして…手口が非常に似ている事に気づきました。警察やマスコミが気づいていない情報も多いです」
B「『犯人が男である事』『殺害方法が包丁の滅多刺しである事』『事件は全てこの街の近辺で起きている事』『死体遺棄はここから離れた場所である事』『殺された人物がすべて女性である事』」
B「…それらすべてに共通する、ここ数年の事件」
B「それが、貴方の死亡事件です。Dさん」
D「… … …」
・
・
・
A「… これ、やっぱり似てるよね。この事件」
C「そうっスね…」
A「4年前。当時キャバクラ嬢だったDさんが何者かに殺害されて○○県の路上に倒れていたのを近所の住民が発見。遺体は死後数時間経過していて死因は包丁の滅多刺し…」
C「死体は違う県ですけど… Dさんが当時住んでいた場所はここからそう遠くない場所っスね」
A「… 仕事柄Dさんは交友関係が広く、それ以外にもバーやクラブで見知らぬ人と酒を飲んでいた事から怨恨関係も多々あったと考えられる…。これはゴシップ誌の記事だけどね」
C「…死因や死体の遺棄について… やっぱり似てるっス。年齢はボクより大分上っスけど…」
A「…B、これ調べに行ったんだろうな。まったく、履歴にこんなもの残しおって」
C「大丈夫っスかね。…まさか、その現場に乗り込んでいったりしてるんじゃ…」
A「… … …」
A「あいつを信じるしかないよ。今はね」
A「そんで、帰ってきたら思いっきり怒ってやる」
・
・
・
B「… お伺いします」
B「貴方を殺したのは、誰ですか」
B「それを答えてもらえば私はここからすぐ立ち去ります」
D「… … …」
D「さっきも言ったはずだよ。答えたくないって」
D「アタシは今を生きてるの。今更蒸し返したくないし、そんな事したからってどうなるわけでもない」
D「アンタは善意でその殺人犯とやらを探してるんでしょうけど、そんなのアタシには関係ないし、協力する気もないの」
B「… … … 違います」
D「… あ?」
B「貴方は、生きていません。死んでいます」
D「… … …」
D「面白くないよ、それ」
B「貴方にどんな理由があるのかは私は知りません。ですが…」
B「貴方がこの場所にずっと居るのには、理由があります」
D「… … …」
B「『未練』があるからです」
B「人は、死んだ後に普通は魂は残りません。それがどこに消えるかは私にもわかりませんが、残るのは空になった肉体だけです」
B「…それが、肉体と魂が離れてしまい、魂だけがこの世に留まってしまう理由」
B「それは、『未練』という呪いに囚われている証拠です」
D「未練 … … …」
B「Dさんが、誰かに殺されて今も生きていた時に住んでいた場所に幽霊として残ってしまうのには、そこに誰かを恨む気持ち、悲しむ気持ちが存在するからです」
B「そして」
B「未練を抱えたままそこに存在していたいという人間は、いません」
B「人であるのなら、それを必ず解決に導きたいからです」
D「… … …」
B「貴方の未練をどう解決できるかは、貴方にしか分かりません。ですが」
B「私は、幽霊と話せます。そして、人間とも話せます」
B「だから…私にしか出来ない事がある」
B「貴方を殺した犯人を、捕まえる事です」
D「… … …」
B「それがDさんの未練の解決に繋がるのかは分かりません。迷惑とも感じるでしょう。ですが…」
B「Dさんが…この部屋に囚われ、未練という呪いに縛られ続けている事への解決の糸口になる。私はそう信じています」
D「… … …」
B「それに、貴方のためだけじゃありません。私が思いを預かった人達のために、私はここにいます」
B「だから」
B「私は貴方から話を聞けるまで、絶対にここから離れません」
D「… … … ふっ…」
B「… … …?」
D「あっはっはっはっは!!」
D「… 負けた」
D「あんたみたいにはっきり物事言う奴と初めて会ったわ。男だったら相当モテただろうねー」
B「褒められてるんですかそれは」
D「悪かったよ、依怙地になってさ。…話してもいいんだけど、中途半端に事件の事調べるつもりだったらアンタが危ない目にあっちゃうからさ」
D「ちょっと試してみただけ。まさかこんなに芯の強い奴だと思わなかった。ホントに中学生なのアンタ」
B「…よく言われます」
D「… ま、思い出したくないのも本当なんだけどね。でも…」
D「アタシが話す事で犯人が捕まるんなら…大賛成。それでアタシの未練が消えるだろう、ってのもアタシ自身が一番よく分かる」
B「…ありがとうございます」
D「じゃあ… 約束してよ」
D「アイツを絶対に見つけ出す事。…そしたら、アタシをそこまで連れていって」
D「絶対にアイツを、地獄に叩き落とす。アタシを殺した…犯人を」
B「… … …」
B「約束します」
D「じゃあ… 話すわ」
D「アタシが知っている全てを」
・
・
・
B「… … …」
B(情報は、揃った。あとは見つけるだけ。恐らく奴は… この近隣の住民)
B(それならば…見つけられる可能性が高い人物が居る)
B(… 彼ならば、見分けられるはずだ。誰よりも…どんな人や物より、『人間』を見ている幽霊ならば)
B「… … … じーさん」
おじいさん「… … …」
おじいさん「おお、久しぶりじゃな。元気しとったか」
B「ああ。…踏切観察は、相変わらずしてるんだな」
おじいさん「はっはっは。儂の生きがいじゃからな。とは言っても死んでおるが」
B「… … …」
B「頼みたい事がある」
B「この踏切を渡る人物で… 今から言う特徴のある人物を、見つけてほしい」
おじいさん「… … …」
おじいさん「知っておるよ」
B「!! 本当か」
おじいさん「高を括るわけではないが、儂にしか見抜けんじゃろうからな。とは言っても、誰に話せるわけではない。儂はそいつを見ておっただけじゃ」
おじいさん「… だが」
おじいさん「異様ではあったからな」
B「… … …」
B「そいつは、今でもこの踏切を通るのか」
おじいさん「ああ。…毎日な。そこの駅を使っておるのじゃろう。朝と夜に、一度ずつ」
B「… … …」
B「ありがとう。…明日の夜、そいつに会うよ」
おじいさん「… 危険なのではないかのう。普通の奴ではないぞ」
B「承知の上」
・
・
・
B「… ただいま」
C「!! Bさん!」
A「… … … !B!今までどこ行ってたのよ!」
B「分かったぞ」
A「… … …」
C「え… … …」
B「犯人。そして、そいつに会う方法」
C「… … …!」
B「明日の夜、そいつに会う。…C、分かったな」
C「え、え、え…」
A「… … … B …」
B「… … …」
B(やっと、やっと…報える)
B(待っててね、おねえさん)
11話終了です。ありがとうございました&訂正のご指摘、ありがとうございました。
次回は長くなる予定なのでまた二つに分けるかもしれません。すいませんがよろしくお願いします…。
ラストスパート… がんばっていきます!
乙 どうなるのかハラハラだよー
暇になったらここの更新きてないか調べる日々もラストスパートだな
おつ!皆頑張れ…!
乙!次回も楽しみだ!
おっつおっつ
毎回好きだわー
一気に読んだ
楽しみにしてます
D「… まず、私とそいつとの間に明確な関係があったわけじゃないのは知っといてね。アタシがキャバ嬢してたのはもう調べてあるんでしょ?」
B「はい」
D「上出来。まぁ…そいつは客でさ。客っていっても、常連でもなんでもないのよ。1回ウチの店にきてたまたまアタシが相手したってだけ」
D「… … …」
D「ただ、それだけなのよ。…それだけ、なのに…」
D「… … …」
B「… すいません、辛い事を思い出させてしまって」
D「いいのよ。…話す、って言ったのはアタシだし。無理にでも話させて」
D「…アタシも、強くなんなくちゃね。…復讐してやるくらいにさ」
B「ありがとうございます」
D「中肉中背… よりはちょっと痩せてた感じかな。背は高かったけど…なんか髪の毛伸ばしてて暗い感じだったよ」
B「よく覚えていますね。記憶が曖昧な事も多いんですが」
D「仕事が仕事だからね。客の素性や好みを知るのに観察するのは当たり前の事だし。今になって役に立つとは思いもしなかったけど」
D「まあ…とにかく、背はアタシよりちょっと高いくらいかな。…客としては一回しか会ってなかったし、仕事とか住処とかもわからないけどね」
B「… でも」
B「Dさんは、そいつに殺された…」
D「… … …」
D「一か月くらい過ぎた頃かな。アタシが家から職場に向かう時に… 突然、あいつが現れたの。目の前に」
D「キャバクラに来るような奴じゃなかったからさ… 一目見て、ああ、一か月前に店に来たあいつだ、っていうのはすぐに分かった」
D「そしてその次に頭の中は危機感でいっぱい。あたしの家とか通勤ルート… 時間も把握した上でアタシの前にいるわけだからね。完全にストーキングされてたわけよ」
D「で… そんな事が頭の中グルグルして… 怖くて動けなくなっているところに…」
B「… … … 殺された」
D「… そういうわけ。間抜けな話よ」
D「未だにワケわかんな過ぎてムカつくどころか無力になってるわけ。アタシはキャバ嬢で、そいつは客。そいつに特別に何かしたわけでもないし、ただ一度、酒出して喋っただけ」
D「もちろん店側も嬢に纏わりつく客とかストーカーにはすごい敏感なわけでさ。そういう雰囲気の客には気を配ってるわけなんだけど」
D「まぁ、まさか一回しか来てない客がアタシの家まで調べ上げるなんて思いもしないよね。…まして、そいつに殺されるなんてさ」
B「…警察も、そうだと思います。Dさんの仕事柄の事もありますから、交友関係やお客さんから怨恨関係を調べていましたが…」
B「結局、これといった事は見つけ出せず、事件は迷宮入りしています。犯人がDさんになんの恨みもない、一度しか接点のない客だなんて思ってもいないでしょう」
D「… あはは」
D「じゃあつまり、この事知ってるのは… 世界で、アンタだけなんだ」
B「はい」
D「… … …」
D「ねえ、ホント、危ない事はしないでよ」
D「あいつは… 危なすぎる。分かってるとは思うけど…殺したのはアタシだけじゃない。何人…何十人と殺してきてる。そして誰も、その尻尾すら掴めていない」
D「無差別に… でも、計画的に。冷酷に何人も殺してきている。理由も目的も分からないけど…異常だって事は確か」
D「生きている人間で、そいつの足取りを掴めたのはアンタだけ…。殺さない理由がないわけよ」
D「…くれぐれも、慎重にお願い」
B「… … … ありがとうございます」
B「他に、分かった事はないですか?何か…些細な事でも」
D「… … … ま、アタシの目から見て重大な事実が一つ」
D「これが多分… 一番重要な事よ。心して聞いててね」
B「はい」
D「… … …」
D「整形してる。しかも、何度もね」
B「… … … !」
D「ま、だからこそ警察にも誰にも見つかってないんだろうけどさ」
D「二重瞼…顎のライン…。不自然だったのよねぇ。最初に会った時から気づいてたよ。あ、この人整形してる、って」
D「まぁ、アタシも経験あるからなんだけどさ。あはは」
D「… … … まぁとにかく。瞼や顎は整形部位としては珍しいところじゃなかったからさ、アタシも特には気にしてなかったわけ」
D「今思えば自分の印象変える手口だったんだろうけどさ。…まぁ、そこだけ変えれば人相って結構違っちゃうもんだし」
D「まぁあと、身長もだろうね。上底の靴履いてたっぽいし… 歩き方が多少変だったからさ。あ、踵の角質削ると身長って1cmくらい変わる人もいるらしいよ」
B「… 印象を…変えている…」
D「…確実にね」
D「そこで疑問に思うのは… どうして印象を変えているか、よ。まぁ、そりゃ確かに捕まらないように人相をバラけさせるのは重要だけどさ」
B「… … …」
B「この街に… 住んでいるから。そして、離れたくないから」
D「そういうこと」
D「普通の人間の… まぁ、殺人犯なわけだから普通とは言えないかもしれないけど。とにかく、普通捕まりたくないと思ったらまず、その場所を離れたがると思うのよ」
D「どこか遠くへ逃亡して… それこそ計画性のある奴だったら海外にでも逃亡すれば逃げ延びる可能性だって上がってくるわけだし」
D「顔を変えて、背丈も変えて… でも、この街に居座っている」
D「そして何人も殺してきている。そこまでしてこの街の住民を殺してきているのは… なんでなんだろうね」
B「… … …」
B「少なくとも… 犯人はこの街の中に…いる。それは私もそう思います」
D「その辺りは完全に憶測だけどね。実際、同じ手口で殺されてるのはこの辺りの人だけなんでしょ?」
B「はい」
D「つまり… 可能性は高い」
D「… … …」
D「まぁ、アタシが言える事はそんなところかな」
B「… ありがとう、ございました」
D「… どうやって調べるつもりなの?何かアテがあるとか?あ、警察に今の話、してみる?」
B「証拠がないですから。聞き流されるのがオチです。…私が実際に犯人を見たわけでもありませんし」
B「…でも、アテはあります」
B「この街の住民… いえ、幽霊で、人間観察をずっとしてきている人がいます。その人に聞いてみます」
B「それこそ、何十年も人間を見てきている人です。歩き方、クセ、仕草、服の好み… それが変わっていないのに」
B「顔や髪形が変わっている人物。 … 尋ねてみれば、ピンとくるかもしれません」
D「へー。人脈、広いんだ。幽霊の」
B「まぁ… 広げようと思ったわけでもないですけどね」
B「いるんです。おせっかいの幽霊が」
D「… … … それで」
D「見つかったらどうするつもりなのよ、犯人」
D「まさか、アンタ一人で捕まえて警察に突き出すつもり?だったら止めるよ」
B「… … …」
D「さっきも言ったけど、アンタしか知らない情報が多すぎるのよ。犯人が知ったら、アンタを生かしておく理由なんてなくなるわけ」
D「相手は殺人鬼。しかも、今まで誰にもその痕跡を掴めていない。…アンタ一人殺すくらい、きっと造作もない事なんだろうし」
B「… だと思います」
D「じゃ、どうするつもり?」
B「… … …」
B「見つけたら」
B「仮に、その犯人を見つけられたら… どうするか、Dさんに相談します」
B「それで、いいですか」
D「…はは、そこは何も考えてないわけね」
D「そうだなぁ…。危ない事はしない。それは絶対の約束ね」
D「それで… もう一つ、約束してほしいことがあるの」
B「なんですか?」
D「もし、アタシを殺した犯人を見つけたら… アタシに教えてほしい。できたら、連れていってほしい」
B「… … …」
D「どうせ人相も背丈も変えてるんだろうけどさ。観察眼ならアタシだって長けている自信はある」
D「確信をもって、こいつが犯人だ!って言えるのは… 多分、アタシしかいないだろうし」
D「それに… 恨みがある。復讐してやりたいって気持ちも、十分にある。幽霊になって恨みや呪いが相手に効くのか分からないけどね」
D「死ぬほど恨んでるわ。それこそ… 殺してやりたいくらいに」
B「… … …」
D「絶対の約束。犯人を見つけたら… アタシに教えて。アンタが同伴じゃなくても構わないから」
B「分かりました。約束します」
D「… ま、こんなところかな。どう?犯人見つけられる自信、ある?」
B「まだ、何とも。でも…絶対に見つけ出してみせます」
B「持っている情報を全て駆使して…人脈も、アテも、全て。…努力すれば、絶対に問題は解決に導けるはずです。そう信じています」
D「ホント強いんだねー、アンタ。どういう育てられ方したんだか」
B「… … …」
D「名前、聞いてなかったね。あと、アンタが何者かも」
D「教えておいてよ。幽霊だから他の人に情報が洩れる心配もないよー?」
B「… … …」
B「Bです。幽霊が見えるだけの、普通の中学生です」
・
・
・
A「… … …」
B「… … …」
C「… … …」
A「それで、どうするつもりなの?」
B「会う。さっきも言った」
A「Bが!?殺人犯と!?バカじゃないの!?殺されるに決まってるじゃん!」
B「そうかもな」
C「Bさん…! 情報が不確かでも、警察にちゃんと言ってからにするべきっス!Bさんだけじゃあ…!」
B「駄目なんだよ、それじゃあ」
B「考えてもみろ。私が警察に情報を提供したところで、わざわざ私が立ち合いをして警察がソイツを捕まえると思うか?」
A「それは…」
B「おそらく、警察を介してしまっては…ソイツと会う機会はなくなるだろう。殺人犯の前に生きている中学生をわざわざ出すわけがないんだからな」
C「でも…」
A「なんでそうまでして、ソイツに会いたいのよ…!安全にはかえられないでしょ!?」
B「会わなくちゃいけない」
A「どうして!?」
B「… … …」
B「おねえさんを殺した奴の顔を見たい。動機が知りたい。それだけだ」
C「おねえさんって…あの、女子大生の…」
A「それだけ!?だったらそんな事する必要…」
B「ある」
A「…!?」
B「私を支えてくれた。励ましてくれた。…少しの間だけでも、私は、生きる意味を見つけられた。彼女のおかげで」
B「無念のうちに命を絶たれたその人の… 原因。それを知りたい」
B「おねえさんが死んでいなければ… きっと、私とも出会っていなかっただろう。だからこそ」
B「私は、彼女の代わりに生きていく事を、その時から決めていた。彼女の代わりに、何がしてあげられるのかを、ずっと考えていた」
B「そして… 彼女が死んだ原因を、突き止めた」
B「知りたい。会いたい。 … そして、出来る事なら、復讐をしたい。 …それが、彼女の代わりになった私の願いだ」
A「… … … そんな …」
A「そんな事…!!」
B「彼女が望んでいないとでも言うのか。だが、それはもう、関係ない」
A「…!」
B「これは、私の願望だ。私が… ただ、ソイツに会いたいだけ。誰にも邪魔されず… ソイツの、本心が聞きたい。それだけだ」
A「… … …」
B「…睨むなよ。たまには、私の勝手にさせろ」
B「とにかく、もうAもCも、この件に関しては関係ない。あとの事は私が好きにさせてもらう」
C「Bさん…!」
B「明日の夜、私はソイツに会う。踏切のじいさんに、人相も、通る時間も教えてもらった」
B「… それだけだ。私が帰ってこなかったら、この部屋は好きに使ってもらって構わな」
A「っざけんなああああッ!!!」
パァン!!
C「!!!」
B「… ッ …」
C(Aさんが… 思い切り、Bさんの頬を叩き… 涙を流しながら、Bさんの胸倉を掴んだ)
A「私達は… 私達は、そんな薄っぺらい関係なのッ!?そんな風に終わるの!? そんなの、絶対許さない!!」
A「Bは… 私を助けてくれた!Cちゃんの事も!私が我儘言って、たくさんの幽霊の事も救ってくれた!」
A「それなのに… それなのに、勝手に殺人鬼に会って勝手に殺されに行くって!?絶対許さない!!!」
B「… … …」
A「頼ってよ!!言ってよ!! 助けてって… 少しでも協力してくれって、言ってよ!!! ずっとそう言ってくれるの、待ってるんだよ!!」
B「… … … 幽霊に何ができるんだ…」
A「分からないよ!!でも絶対何かできる!! Bは、それを考えないでただ辛いほうに、危ないほうに進もうとしてるだけなんだよ!!」
A「殺人犯と一人で会って、危なくないわけないじゃん!! B、死んじゃうんだよ!?」
A「それで… 死んで、私達と同じように、幽霊になれるとも限らないんだよ!?」
A「そうまでして… 誰かが喜ぶの!?誰かが救われるの!?B自身が満足するの!?」
B「… … …」
A「行かせないから!!死んでも、この手離さないから!! 絶対!!」
B「… … …」
B「… … …」
B「強引すぎ」
A「うるさい!!何と言われようと行かせないから!!」
A「私の… 大切な友達を…!! 絶対、死なせなんてしない!!」
B「… … …」
B「暑苦しすぎ」
A「わかってるわよ!! それでも…」
B「だから、離せ。 … わかったよ」
A「… … … !」
C「Bさん…!」
B「… 協力しろ」
B「幽霊にもできる事があるか分からんが… 協力してみせろ」
B「殺人鬼を、警察抜きでどう追い詰めるか… 一緒に考えてくれ」
A「… !!」
A「ま…」
A「任しとけっ!!」
・
・
・
そして…
踏切。
既に辺りはとっぷりと暗く、時刻は23時をまわっていた。
空は曇り星一つ見えず、俄かに雨が降りそうな夜。
人々は駅から雨が振り出さないうちにと急いで帰路へ向かっていった。
踏切が閉じようとする。
イラついたように人々は足を止め、電車が通り過ぎるのを今か今かと待ち続けた。
男「… … …」
B「… … …」
B「貴方の事を、私は知っています」
男「… … … !?」
B「貴方が… 今まで殺した、人々の事を」
B「私は、調べ上げました」
B「私は、私の知っている事を今から警察に言うつもりです」
B「ですが… その前に、貴方と話がしたい」
B「場所を変えましょう。 … 来てくれますね」
B「連続殺人犯… ○○さん」
男「… … …」
電車が通り過ぎた。
踏切が開いた。
スーツ姿の男と、一人の女子学生は、会話はせずとも同じ方向へと歩んでいき。
やがて、夜の闇へと消えていった。
最終話、やはり2つに分けさせていただきました…次回で完結します!
twitterで投稿予定流すのすっかり忘れてました…唐突ですいません。
このお話も、次回と、その次の回でおしまいにしたいと思っています。お付き合いいただいた方、投稿ペースが不安定で本当に申し訳ありませんでした。
シルバーウィーク中にはおわりにできるといいなぁ…と。
それでは、失礼します!
乙
乙!
乙
一体どうなる
おーつ!
いいね
とても好きだわ
終わらないで欲しいくらい
乙です
完走支援
男「… … …」
男「こんなところで話すのかい?俺はてっきりどっかのファミレスかどこかで落ち着くのかと思ったんだけど」
B「人目につかないほうがいいでしょう?この時間だと、私だって補導の対象ですし」
B「何より、貴方と話すのを誰かに邪魔されたくないので」
男「… へえ」
男「だとしたらえらく不用心なんじゃない?キミ、俺を殺人犯だって疑ってるんでしょ?」
男「こんな人目のつかないところに、俺と二人きりだなんてさ。ホントに俺を殺人犯だと思うのならまずこんな事しないじゃん」
B「… … …」
男「まあ、いいや」
男「聞かせてよ。キミの、その根拠をさ」
B「… 10年前」
B「私は、ある一人の女性と出会いました」
B「私は、おおよそ子どもとして満足できる家庭環境に置かれていなかったのですが… その女性は、そんな状況にある私を、励ましてくれました」
B「絶望の中にいた私を救ってくれて…生きる希望をくれた。そんな優しい、『おねえさん』でした」
B「… … …」
B「その女性が、殺されました」
男「… へー」
男「その犯人が俺だって?」
B「はい」
男「そうまで言うんなら確信があるんだろうね」
B「もちろんです」
B「4年前。当時キャバクラで働いていた女性が、何者かに殺害されています」
男「… … …」
B「包丁で滅多刺し。遺体はこの街から離れた場所に遺棄されており、発見時は死後2か月は経っていたそうです」
B「警察は怨恨関係など調べましたが、これといった関係のある人物などは見えず、現在捜査は迷宮入りしています」
B「これは… 私が出会った『おねえさん』とケースが非常によく似ています。つい最近、自分で過去の新聞の記事を調べ上げて気づきました」
男「… … …」
男「へー、似てるんだ」
男「それで?その2つの事件と俺を結びつけるのはなによ」
B「もう一つ、事件がありました」
男「… また?話、長いなぁ。俺帰りたいんだけど」
B「つい数か月前、学童が一人惨殺されています。…手口はやはり同じ、包丁の滅多刺しでした。遺体も、ここから離れた山中に遺棄」
B「殺害現場は不明となっていますが… その学童も、やはりこの街の住民でした」
男「… … …」
B「10年前、おねえさんが殺され…4年前、キャバクラ嬢が殺され。そして数か月前、学童が殺された」
B「かなり年数に開きがあるのが、警察が犯人を追い込めない一つの原因でしょう」
B「手口に関しては…まあ、包丁なんてのは日本で手に入るもっともポピュラーな凶器ですし、殺人に使われるのは不思議ではない」
B「つまり、同一犯なのか、そうではないのか、その確信がつきづらい」
男「そうなんだろうね」
B「ですが…」
B「私は、同一の人物による殺人だという、確信をもっています」
男「… … …」
男「それが、俺だっていうの?」
B「… … …」
男「じゃあ… いい加減聞かせてよ」
男「その、キミが思ってる、『確信』っていうのをさ」
B「… … …」
B「一つは」
B「貴方が、此処に私と一緒に来た事です」
男「… … …」
B「『貴方の事を私は殺人犯だと思っているので、私とお話をさせてください』」
B「こんな話をして普通の人が私と一緒に来るでしょうか?普通は私を単なるクソガキだと無視するか、頭がおかしいと思って警察やら学校に連絡するのが当たり前です」
B「しかし、貴方は私と此処に来た。誰にも連絡せず、ノコノコと」
B「これは一つの証拠です。私と此処に居る事自体が、貴方が犯人である事を物語っている」
男「… … …」
男「で?脅しのつもり? 探偵ゴッコじゃあるまいし、そんな事で追い詰めた気になられてもなぁ…」
男「確信をもってるっていうから、もっと根拠のある事だと思ったけど… なんだかなあ」
B「まだあります」
男「まだ?だから、いい加減俺帰りたいんだよね」
男「俺、こう見えて妻子持ちなんだよ。いつも嫁は俺が帰るまで起きてるからさ、あんまり遅くなりたくないんだ」
男「まあ、子どもにこんな事言ってもしょうがないけどさ…」
B「… 妻子持ち」
B「それも、カモフラージュですか?」
男「… … … あ?」
B「整形、してますよね。身長も変えてます」
男「…!」
B「おそらく…仕事も環境も変えてきているでしょう。顔を変えたのをバレたくないでしょうから」
B「そうまでしても…貴方は、住居だけはこの街に構えている。何故だかは分かりませんが」
B「貴方はこの街に居続けながらも、自分の印象を変え続け、警察の捜査をやり過ごし続けている」
男「… … …」
B「整形の跡。これは、後々警察に調べてもらえばすぐ分かる事でしょう」
B「… そして」
B「最後の確信です」
男「… … …」
B「私は、死んだ人と、会話が出来ます」
男「… … …」
男「… は?」
B「聞いたんです。おねえさんにも、キャバクラ嬢だったDさんにも、小学生だったCにも」
B「貴方の特徴を」
男「… おいおい、頭沸いてるんじゃねぇのか…」
B「それぞれから聞いた貴方の特徴は、どれもバラついていました」
B「しかし、だからこそ納得がいく事ができるはずです」
B「警察に、貴方の整形に関する情報を調べてもらえばね」
男「… … …」
男「おい、ガキ。流石に俺でもキレるぞ」
B「なにがですか?」
男「死人と会話できる?中学生の妄想に付き合ってるほど暇じゃねぇって言ったろうが」
男「ロクな証拠もないくせに人を殺人犯扱いしておいて、なにが証拠って『幽霊から聞いた』だと?ふざけんなよ」
男「お前ら学生と違って大人は忙しいんだよ。遊びなら別の奴とやってくれ」
B「じゃあ…」
B「違っていますか?私の言った事」
男「… … … あ?」
B「整形。していないんですか?」
男「… … …」
B「身長も。変えていないんですか?」
B「仕事はずっと同じ仕事を?何かしら理由をつけて仕事を変えているんじゃないですか?転職歴は?」
B「住居に関しては?同じところに住んでいないですよね。でも、この街の近辺に引っ越しを続けているはずです。これも不自然ですよね」
男「… … …」
B「調べれば簡単に分かる事ですよね。…私の言っている事、外れているんですか?」
男「… … …」
B「中学生の妄言として捉えてもらって構いません。ですが、そんな子どもの言っている事でも、警察も少しは興味をもってもらえると思いますよ」
B「貴方の整形歴。仕事や住所の変更歴」
B「過去の3つの殺人事件の関連性。手口の一致や住民が皆、この街の近辺に住んでいたという事」
B「こんな中学生の妄想でも、これだけ揃った情報なら…警察も少しは調べてくれるでしょう」
男「… … …」
B「そして…調べれば調べるほど、きっと貴方の異常性に気づくはずです」
B「仕事や住所を変えながらも、この街からは出ていかず、必ずこの近辺に住み替えている。顔の形や身長を変えながら…」
B「ああ、そういえば、Dさんのお店には貴方は一度顔を出したそうですね?これも立派な関連性ですよね。一度だけだから警察は気づいていないようですが」
男「…!!」
B「遺体は、必ずこの街から離れた場所に捨てられていたそうですが…その時間の貴方のアリバイもきちんと証明できるといいですね」
男「… … …」
B「覚悟してください。連続殺人犯、○○さん」
男「… … …」
男「どうして、俺が整形していると分かった」
B「目撃談です」
男「…目撃…?」
B「知り合いの幽霊にね、聞いたんです。顔を変えているのに、歩き方や挙動、身に着けている衣類や靴が変わっていない、異常な人物を知らないか、とね」
男「… また、幽霊か…」
B「妄想ですよ…ただの。 まぁ、その幽霊は幸い、人間観察が趣味でして。そしたら一人、ぴったりと当てはまる人物に心当たりがあると」
男「それが… 俺だったっていうのか?」
B「はい」
B「それと…Dさんは出会った時に見抜いていたらしいですし。仕事柄、だそうですけど」
男「… 幽霊が見える…」
男「お前…本当に…?」
B「さあ?」
男「… … …」
男「… … …」
男「俺を、どうするつもりだ。警察には話したのか?」
B「いえ、まだです。これから通報しようと思って居ます」
男「これから…?」
B「確信が欲しかったので。貴方が殺人犯だという」
B「話していて分かりました。やはり警察に通報して、貴方の事を調べてもらうべきだと」
男「… … …」
B「今から、携帯で通報をします。いいですね?」
男「… … … ふ」
男「ふふふふ… クククク…!」
男「あっはっはっはっはっはっは!!!!」
B「… … …」
男「バ~~~~~~カじゃねぇの!!??」
B「!」
男はBに一気に近づき、携帯を持っているBの手を思い切り掴み、その場に押し倒す。
男「バカじゃねぇの!!??バカ!!間抜け!! 通報するつもりならこっそりするだろうが!? 確信が欲しかったって!?それでこんな人気のない場所に!?」
B「… … …」
男「はいそうですか、どうぞ通報してくださいなんて… 言うわけねぇだろうがあああ!!??あっはっはっは!!どんだけ脳内お花畑なんだよ!!バ~~カ!!」
そう言いながら、男はスーツの懐から、小型のナイフを取り出す。
B「… … …」
男「おいおい…もうちょっとびびってくれよなぁ… 殺しがいがなくなるじゃねぇか…!!」
男「もっと怖がってくれたぜ」
男「お前の『おねえさん』はな…!!!」
B「… … … やっぱり…」
B「貴方が…」
男「10年前の大学生… よーく覚えてるぜ」
男「驚いた顔… 包丁を振り下ろす瞬間の絶望の顔… 感触… !! 今思い出してもゾクゾクする」
男「お前は… どんな感触だろうなぁ… ひひひひひひ」
B「… … …」
B「… … … なぜ」
男「あぁ?」
B「なぜ、貴方は、人を…」
男「殺すのかってか!?んなもん決まってるだろ!!」
男「気持ちいいからに決まってるだろうがぁああああ!!!」
B「… … …」
男「この瞬間だよ、この瞬間!! 何も抵抗できない!!押さえつけられ、もがきながら、必死に死ぬ瞬間がくる事に抵抗して、足掻く!!」
男「しかし… 俺が包丁を振り下ろす瞬間!! それは絶望に変わるんだよ!!」
男「そして… あの感触… 飛び散る血… 死ぬ瞬間の虚ろな目…」
男「お前もそうなると思うと… ゾクゾクするぜぇええええ!!!!」
B「… … …」
男「お前は3人の連続殺人と言ったが… 実際には5人、殺してきた」
男「子どもの頃からずっと思い描いてきたんだ。 虫は踏みつぶせば簡単に死ぬ。動物も…簡単に。 それなら、人間は死ぬ瞬間、どんな感じなんだ?とな」
男「罪に問われるのは勿論分かっていた。だからこそ、俺はずっと考えていたんだ」
男「どうすればバレないのか。そして、罪に問われないためには… そのスリルを考えると、最高にゾクゾクしたぜ!」
B「… … …」
男「初めは15の頃。こんな風な… 人気の無い場所で、OLをぶっ殺した。後ろから包丁でな。声出されないように喉元を掻っ切って…次は腹、次は足、次は… … …」
男「もっとも、当時は車もなかったから死体は遠くに運べなかったからな。その場に放置するしかなかったが…」
男「俺が犯人だとバレないために、色々考えたもんだぜ…。アリバイ工作、証拠品の処分、偽装… 事前に考えた全てをやり尽した」
男「最高にゾクゾクした…。人を殺す事。そして…人を殺した事を隠しながら、のうのうと生きていく自分に…っ!!!」
男「結果… 俺は捕まらなかった!! その事件に関しても未だ犯人は見つかっておらず… 迷宮入りで時効だとよ!!クククク…!!」
B「… … … そうやって、貴方は、何人も…」
男「ひひひ… こんな面白い事、やめられるわけないだろ?」
男「同一犯を疑われないように… 何より、過去の事件が風化するように。俺はルールを決めた」
男「必ず数年を開けて人を殺すようにする事。結果、これが功を奏して俺は未だこうして街の中で生きていける」
男「街をブラついて見つけた相手… 仕事で一度しか会っていない取引先の女… 一度客だっただけのキャバクラ嬢… たまたま通りかかっただけの青臭いガキ…」
男「あいつらは俺の事を知らなくても、俺は調べ尽しておくのさ。アリバイを工作するために… 殺しやすく、人に見つからない時間を調べるように…」
男「そうして… 殺す!!! 名前も知らない男に殺されていくんだよ!!!あの女どもはなぁ!!!ははははは!!!!」
男「それがたまらねぇんだよなぁ…。 何故?どうして? ワケが分からないままに、みるみる表情が絶望に染まって… やがて、光を失う…」
男「今まで元気に生きていた奴がだぜ?平凡な人生を送っていたはずの自分が… 名前も顔もロクに知らない相手に、殺されていく…」
男「最高じゃねぇか!!! こんな面白い事、やめられるわけねぇよ!!!ははははは!!!!」
B「… … …」
男「初めてだぜ」
男「俺自身が、名前も知らない相手を殺す事になるとはな」
男「無計画に人を殺すのは、俺の主義じゃないが…仕方ない」
男「こんな人気の無い、いくらでも俺の犯行を隠せる場所に俺を連れてきたお前が悪いんだぜ…!!くくく…!!」
B「… … …」
B「知っていますよ」
男「… … … あ?」
B「殺された人達は… 貴方の事を、もう、知っています」
男「… ああ?」
B「さっき言っていたじゃないですか。殺した人達は皆、俺の名前も知らないまま、殺されていった、って」
B「今、知ったんですよ。貴方の事を。貴方の名前を。貴方の素性を」
男「… … …」
男「お前… 幽霊が見えるとかふざけた事ぬかしてたな」
男「どうやって俺の事を調べたのかは知らないが… まぁ、これから殺すんだから関係ないだろうな」
男「… で?そいつら幽霊が俺の事を知った、とでも言うのか…?」
B「はい」
男「… … … ふふ」
男「ふふふふふふ…!! クククククク…!!!」
男「だからどうしたってんだよおおおおおおおおお!!!!あはははははははは!!!!」
男「そいつらが俺を呪い殺すとでも言うのかよ!?今!?ここで!?バカじゃねぇの!!??」
男「そんなんだったら俺はとっくに死んでるっての!!俺が今まで何人殺したか、聞いただろうが!!」
男「今まで幽霊なんざ出会った事ねぇし!?さぞ俺を恨んであいつらは死んだんだろうが… 幽霊になって現れた事なんか、一度だってねぇよ!あははは!!」
B「知らなかったんですよ」
B「そして、タイミングが無かったんです」
男「あはははは!! … … … あ?」
B「そして今、すべてが揃いました」
B「幽霊は、貴方の事を知りました」
B「自分を殺した犯人の事を」
B「そして、幽霊が現れやすい時間… 現れやすい場所…」
B「貴方は私に言いました。『こんな人気の無い場所にのこのこ自分を連れてきた』と」
B「逆です」
男「… ああ?」
B「のこのこ現れたのは、貴方です」
B「こんな危険な場所に、こんな危険な時間に、幽霊から恨みをかっている貴方が、のこのこ連れてこられたんです」
男「… … … ワケわかんねぇ」
男「もうお前、死ね」
男「… 死んじまえよおおおおおおおおおおおお!!!!」
男がナイフを振り下ろそうとした瞬間。
その手が、ぴたりと止まる。
まるで、何かに捕まれるように。
男「!!?? な、なんだ、これ…」
男「う、腕が… 動かな… っ …!! だ、誰だ… 俺の腕を… っ …」
???「ア、ア、ア、ア、ア、ア…」
男「!? な、なんだ…!? 誰の声だ…!?誰だ…っ!!」
???「ク、ル、シ… タスケ、テェ …」
男「!!? ひっ…!? 誰だ…誰だ!? 何人いやがる…!?てめぇ、一体なにを…!!」
???「イッショニ、キテェ…!! サミシ、イ、ヨォ…」
B「言ったでしょう」
B「この場所は危ないと。見えざる者たちが最も活動しやすく、引き込みやすい… まして、こんな真夜中に」
B「業の深い貴方に触れる事など… 容易いでしょう」
B「危ないんですよ。この場所は」
B「貴方がCを殺した、この病院裏の住宅街は」
男「あ、あ、あ…っ…!?」
男の腕が、黒く染まっていく。何者かに力強く握られたように、うっ血したように、黒く。
男の喉が焼ける。金縛りにあったように、声を自由に出す事もままならない。呼吸さえも、難しい。
Bには、はっきりと見える。
自分を押さえつける男の背後に、何十もの亡霊が、男の身体に触れ、握り、引き込もうとする、その姿が。
男「た、た、助け… っ …」
B「普通の人なら、まずここまでの状態にはならないでしょう」
B「ですが、貴方の犯してきた事は… あまりに深く、大きすぎる」
B「貴方は、死後の世界に、生きながらにして触れすぎた。そして、幽霊から恨みを買い過ぎた」
B「貴方は… 『触れやすすぎる』」
男「が、っ…!! く、苦し… っ!! あ、が、あ…」
???「クルシメ… クルシメ…」
???「キテ… イッショニ、ィ…!!」
男の手からナイフが落ちる。
何も触れていない首を必死におさえ、何かを振りほどこうともがく男。
地面に這いつくばり、のたうち回る男を、Bは見下ろす。
男「た、た、頼むっ…! 助け… 助け、て…!!」
B「もっと必死に、抗ってください」
男「あ、あ、あっ…!!」
B「もがいて、苦しんで… 抵抗してください。 そうすればそうするほど、絶望するはずです」
B「自分がどう足掻いても助からない。 説明のつかない、その絶望を… 貴方は感じるべきです」
男「はぁっ、はぁ…!!! あ、ぐ…!!息、が…!!」
地面に転がる男に、Bはゆっくりと近づく。
そして…
その顔は、Cのものになる。
男「!!?? お、ま、え…!?」
C「… … …」
C「ボクは…」
C「ボクは、もっと痛かった。苦しかった。 …泣き叫んでも、許してもらえなかった。貴方に」
C「頭が割れそうになって… 息もできなくなって… 叫ぶことも、できなくなって」
男「あっ、あっ…!!!」
C「それでも、あなたはボクを刺し続けた」
C「… 貴方が、苦しむ番です」
男「あああああああああっ…!!!」
そして…
その顔は、Dのものになる。
男「!!?? あ、あ…!!」
D「… もっと苦しんでよ。抗ってみてよ。 … それでも、きっと… そいつらはアンタを連れていこうとする」
D「… 怖いでしょ?」
D「自分が、もう、この世にはいられないと分かるとさ… 怖くて、たまらないでしょ?」
男「あああああっ… 助けて… っ…!! 死にたく、な…!!」
D「… … …」
D「おいで」
D「たっぷりと案内してあげる」
D「… … …」
D「死んだ後の、セカイニ… !!」
男「!!!!!」
D「アハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
男「あああああああああああああああああああああああああ!!!!」
・
・
・
数十分後。
住宅街に、パトカーが一台、止まる。
サイレンを止めて急いで降りた警察官は、コンクリートの地面に横たわり、痙攣をする男を発見した。
警察官「君… 君!?どうしたんだ…!?何があった!?」
男「あ、あ、あっ…」
男「やめて… っ… 助けて… 助けて… もう、殺さないから… 殺さないからぁあああっ…!!」
警察官「何を…!? 誰に言っているんだ!?おい、しっかりしろ!」
男「やめてくれよ… っ!! 連れていかないでくれよ…っ…!!」
警察官「… と、とにかくパトカーに乗りなさい!おい、手伝え!乗せるぞ!!」
男「嫌だ… 助けて… 助けて…!!」
男「助けてえええええええええええええ!!!!」
その目は、警察官の方を向いてはいなかった。
ただ、その目の行く先は、夜の闇。
男の目には、確かに見えるのだった。
自分を連れ去ろうとする、数十の腕が。
遠ざかっていくパトカーを、B達は見送った。
B「… … …」
B「満足しましたか」
D「するわけないじゃん。あいつには、もっともっと苦しんでもらわないとさ」
C「… あの人、どうなるんでしょうか」
B「さあ。まぁ、あの状態なら全部自白してくれるんじゃないか」
A「うんうん。罪はしっかり償わないとね」
B「怖いぞー。牢屋なんざきっと、幽霊だらけなんだろうしな」
B「ああなった以上、必要以上に見えちまうのかもしれないし」
A「うひー。死ぬより辛いかもね」
D「ははは。それなら、アタシもやった甲斐があったってもんだ」
B「… はあ。しかし、二人も幽霊に憑りつかれると流石に疲れるな」
C「スゴいっスねー… Aさんの時もそうだったけど、ホントにBさんの身体、借りられるんですね」
D「不思議な感覚だったよ。機会があったらまた貸してよ、いろいろやってみたいし」
B「勘弁してください」
A「あははは」
B「… … …」
B「Dさん」
D「… 分かってるよ」
A「… Dさんの身体… 消えてく…」
D「… そっか、これが… 未練が消えたってコトか…」
D「… んー… なんか、スッキリしたね。悪くないかも」
B「… … … ありがとうございました、Dさん」
D「お礼を言うのはこっちの方。アタシの未練を取り払って… 救ってくれたのは、アンタなんだから」
D「… ありがとう、B」
B「… はい」
D「アンタ、まだ若いんだから… 幽霊から少し離れてみなさい」
D「それでもっとオシャレして、遊んで… 自分の人生、しっかり楽しみなよ。まだまだ先は長いんだから」
D「今しか出来ない事を、思いっきり今楽しむ事」
D「アンタは、幽霊が見えるだけの、普通の中学生なんだからさ」
B「… 努力してみます」
B「まあ、離れたくても離れない奴らがいるんで」
A「でへへ」
C「えへへ」
D「… … … いいなあ」
D「アタシも… そうやって、仲間と…もっと笑っていたかった…」
A「… 出来ますよ」
A「あっちの世界で… きっと、笑えるはずです」
A「Dさんは… そうなるべきなんですから」
D「… … … ありがと」
D「… それじゃ、先にいってるわ」
D「あんまり早く、こっちにこないようにね、B」
D「… じゃあね!」
B(… そうして)
B(Dさんの身体は、光になって夜空へと昇っていった)
B(まるで、夜空の星の一つになったように)
B「… … …」
A「… いっちゃった、か」
C「… あっちの世界…」
B「ああ」
A「出会ってちょっとだったけど… なんだか、寂しいなぁ」
A「未練がなくなって、旅立って… きっと、良い事なんだろうけど」
A「やっぱりちょっと… 寂しいよ」
C「… … …」
B「C」
C「… ふぇ…?」
B「…良かったな」
C「… … …」
B「犯人。捕まって」
C「… … … そう、っスね…」
B「… 複雑か」
C「… … …」
B「気にするな」
B「あいつは、自分の犯してきた罪を、これから清算していくだけだ」
B「人には、いずれ必ずそういう時がくる」
B「あいつには、それが今だったというだけだ。… お前が気に病む事じゃない」
C「… Bさん…」
B「がんばったな、C」
C「… く…っ… ぐすっ…!! ふぇぇっ…!!!」
C「うわああああんっ…!!! Bさぁぁぁん…!!!」
B「… … …」
A「… … …」
A(Bは、自分に抱き着くCの頭を、優しく撫でた)
・
・
・
A「すっきりした?」
C「… はいっ!… ホントに、ありがとうございました。全部、BさんとAさんのおかげっス!」
A「あはは、それほどでも」
B「… さ、帰るぞ」
A「あ、帰りにラーメンでも買っていこうよ。小腹すいちゃった」
B「太るぞ」
A「ふっふーん。そこが幽霊の強み。食べても太らないのだー!」
B「腹も減らないはずだがな」
A「かんじよ、かんじ。… さ、Cちゃんは何ラーメンが食べたい?お姉さん、腕によりをかけて作っちゃうよ?」
C「え…? あの…ボク、まだ… いていいんスか…?」
B「何を言っているんだ、お前は」
A「Cちゃんがいないと、できないでしょ?マリオカートも、スマブラも!!」
C「…!!」
B「帰るぞ」
A「我が家へ、帰ろう!」
C「… … …」
C「はいっ!!」
月夜の明るい、夜道。
一人の人間のあとを、二人の幽霊が、ゆっくりと歩いていく。
まるでその姿は、一つの家族のように。
殺人犯編(?)終了です。
本当に勢いだけで書いてしまって、多分、粗があると思います…。すいませんでした…。
残すところあと一話で完結です。
お付き合いいただいた方、お読みいただいている方、感想をいただける方…いつも本当にありがとうございました!
至らないSSでしたが、無事完結できそうです。長くなってすいませんでした…。
あと一話、お付き合いいただけると幸いです。それでは!
乙
面白い
乙乙
なるほど、Bにしか出来ない復讐か
終わってしまうのはちょっと寂しいな
乙
乙!
次も期待してる
後はこの3人の今後をやって終わりかな
綺麗に終わってほしい
一気読みした
凄い面白い!乙!
スバラ
待ってます
前書きを…
これにて『女生徒A「地面に埋まった」 女生徒B「… … …」』、最終話となります。
なんとなく続いてしまった感じではありましたが、皆様のおかげでここまで書いてこれました。
自分では客観的に評価ができないものですが、精一杯最終話を書きました。お読みいただけると幸いです。
本当に、ここまでお付き合いいただき、お読みいただいた方々、ありがとうございました。
それでは、投下します。
ピンポーン
C母「… … …」
C母「はい、どなたでしょうか?」
ピンポーン ピンポーン
C母「はいはい、今開けます…」
C母(こんなに何度も鳴らさなくても… いたずらかしら?)
C母(… そういえば、あの子… 生きているうちは、学校が終わったらよくこうやってチャイムを何度も鳴らして悪戯してたわね)
C母(… … …)
C母(もう、何か月になるかしら… まるで昨日の事のようだけれど…)
ピンポーン ピンポーン
ガチャ
C母「はい、お待たせしました。どちらさ… … …」
C母「… … … これは…」
C母「夢… … …?」
C「… おかあさん」
C「ただいま…!」
――― 数日前
A「… そう、そうだよね」
B「… … …」
C「… はい」
C「今まで、ありがとうございました、Aさん、Bさん」
A「やっぱり… 家に帰る事にするんだ、Cちゃん」
C「… 色々考えてたんス。ボクを殺した犯人が、見つかって… 警察に捕まって… これからボクが、どうするべきかって」
C「このまま放浪幽霊としてずっと暮らしていく事も考えました。それと…」
C「Aさんと、Bさんと、暮らす事も」
A「… いいんだよ、Cちゃん。その選択肢でもさ。ね?B」
B「… … …」
A「もー、素直じゃないんだから。オッケーしてあげなよ」
B「へいへい。… どうぞご自由に」
C「あはは。 … … … 本当に、ありがとうございます。ボク、こんな素敵な先輩方をもてて、幸せでした」
C「… でも、こうして時間を過ごしていく内にも… ボクが、消えちゃいそうで」
A「… 幸せな幽霊はいつか消えちゃう…かぁ」
A(… 本当に… そうなのかな…)
C「… … … はい」
C「その、いつか消えて、別のところにいっちゃうのが…なんだかちょっと、怖くなっちゃって。いついくのか、どこにいくのか…そこがどんな場所なのか」
A「Cちゃんなら天国にいけるよ、絶対。…それで、きっと幸せになれる」
C「… ありがとうございます」
C「…ボクは、いくべき場所にいくだけだと思うんス。…でも、そこにいく前に…」
C「やっぱり、お母さんに一度会って… それで、いきたいなぁ、って」
A「… … … そうだよね」
C「お母さんやお父さん… 会わないうちにボクが消えちゃったら… って考えると、どうしても辛くって、苦しくって…」
C「…ボク、ホントはもっと一人で強くなって… うんとたくましくなって、旅立っていこうって… そう思ってたんです」
C「… … … でも、やっぱり…」
A「… … …」
B「ばーか」
C「え…」
B「お前、生前いくつだ?今何歳だ?」
C「… えと、12、っス」
B「普通の女子小学生は、もっと親の脛かじって、甘えて、幸せに過ごしてるもんなんだよ」
C「… … …」
A「B…」
B「12で独り立ちしようと頑張る小学生がどこにいるんだよ。まして、Cは両親と幸せに過ごしてたんだろ?大好きなんだろ?」
C「… … …」
C「はいっ。ボク、お母さんの事も…お父さんの事も… 大好きっス!世界一、大好きっス!」
B「それなら、そんな選択肢なんざ必要ないだろ」
B「会いに行けよ。お前が消えちまう前に」
B「いっぱい甘えてこい。抱き着いて、顔を埋めて、母親の匂いをいっぱい嗅いで、しっかり感触を確かめてこい」
B「それが、子どもと親の関係ってもんだ。独り立ちするなんて言って幸せになるやつなんざ、誰もいないんだ」
C「… … … Bさん…!」
A「…でも、どうやって?…幽霊なんだし、触れる事も、見てもらう事も…」
B「貸してやるよ」
C「… !!」
B「私の身体」
B「憑依だかなんだか知らんが、この前みたいに私の身体使えば問題ないだろ」
B「最後になるかもしれないんだ。貸してやるから、つかえ」
C「… … … う」
B「… ま、あんまり激しくして痛くしないようにな」
C「… う、う、う…」
A「… Cちゃん?」
C「うわあああああああんっ!!!びえええええええええええっ!!!」
B「うるさっ」
C「ふええええええええーーーっ!! Bざぁん… あじがど… あじがどございまずぅぅぅぅ!!!」
B「ちょ、おまえ。抱き着くな。鼻水とかいろんな汁つくから」
C「ボグ… ボグ…っ!! ホンドに…っ!! AざんどBざんにであえで… じあわぜですっ!!」
C「うわああああああんっ!!!ボンドにぃぃーーー!!!」
B「… … …」
A「… ぐすっ。 私達だって…っ 幸せだったよ」
・
・
・
B「落ち着いたか」
C「… はい」
B「じゃ、とりあえずこのお前の汁まみれの服洗濯機で洗って来い」
C「了解っス… ホントにすいませんでした…」
A「あはは、いいよいいよ。私が洗ってくるからさ」
C「Aさん… うううう… あじがどう…」
A「ちょ、また泣いちゃうから… あははは。任せといて。ね?」
C「ううううう…」
C「やっぱり、お二方とも…離れたくないっス…。ずっと一緒にいたいっス…」
B「ブレるなよ。家に帰るんだろ?」
B「幽霊になっても、元気でやってるって… しっかり言って来い」
C「… … …」
C「はいっ!」
B「じゃ、今日はとりあえずメシにするぞ。A、出来てるか?」
A「おうっ、任せとけっ。今日はクリームシチューが出来てるぞっ。炊き立てのご飯もだっ。おかわりもいいぞ!」
C「わーいっ!!いっぱい食べるっスーー!!」
B「うむ、くるしゅうない」
A「ははーっ。 … さ、洗濯機も回してきたし、お皿並べてくれる?Cちゃん」
C「ラジャー!」
C「食べたら、ボク、ゲームやりたいっス!三人でできるやつ!」
A「おうっ。パーティゲームでも対戦ゲームでもなんでもこーい!」
B「ほどほどにしろ、ゲーマー幽霊ども。心霊現象で私がマンション追い出される」
C「はいっ!」
A「… … …」
A(幸せな幽霊は… いつか…)
・
・
・
A「じゃ、電気消すよ。おやすみ」
C「おやすみなさいっス」
B「ああ」
C「… … …」
C「Aさん、Bさん」
C「本当に… ボク、嬉しいです」
C「幽霊になって、お母さんやお父さんに会えなくなっちゃったのは… とっても寂しかったっスけど」
C「でも… だから、二人に会えて…」
C「… ボク、新しい家族ができたみたいで…」
C「楽しくて… 嬉しくて… ずっとずっと、一緒にいたくて…」
A「… … …」
A「私も、同じだよ。Cちゃん」
A「会えて… とってもとっても、楽しくて、嬉しかった」
C「えへへ」
A「違うところにいっちゃっても、ずっと忘れないよ」
A「Cちゃんの言葉遣いとか… 元気すぎるところとか…」
A「かわいくて、最高の笑顔とか」
C「… … …」
C「Aさん。… もうちょっと、近くで寝ていいっスか?」
A「あはは、いいよ。枕、くっつけちゃいなよ」
C「えへへへ、ありがとうっス…!」
A「ついでにBもくっつけちゃい… … おーい、Bー?」
B「… … …」
A「ちぇっ。寝たふりしてやんの」
C「…それもBさんらしさっスよね」
A「… あはは。ま、そうだね」
B「… … …」
・
・
・
――― そして、数日後。
C母「… … …」
C母「夢じゃ、ないの?」
C母「本当に… あなたは…」
C「… … …」
C「夢じゃ、ないよ。お母さん」
C「… … …」
C「ただいま!お母さん…!」
C母「… … … っ …」
C母「Cちゃん… っ!!Cちゃんっ…!!!」
Cの母親は、Cの元へ駆け寄ると、思い切りCを抱きしめた。
C「お母さん…!ボク…っ!!がんばったよ… いっぱい、いっぱいがんばったんだよ…!!」
C母「Cちゃん…!! 本当に…!!」
C「ボク… 死んじゃったけど… ずっと、がんばってたんだよ…!!一人で… っ…!!」
C母「うんっ…!! うん、うんっ…!! っ、がんばったわね…!!ほんとに…っ、えらかったわね、っ…!!!」
C「おかあさん… おかあ、さん…っ!!」
C「おかあさんっ…!!!!」
C「うわあああああああーーーーーーんっ…!!」
A「… … …」
A(泣き続け、抱きしめ続ける、Cちゃんと、Cちゃんのお母さん)
A(大粒の涙が、コンクリートの地面に流れ落ちていく)
A(でも… その姿は)
A(とても、とても、幸せそうだった)
・
・
・
A「… … … あ …」
A(しばらく、抱き合ったままの二人。どれくらい時間が経ったのだろうか。 … しかし)
A(Cちゃんの… いや、Bの身体が、俄かに光はじめた)
A(だんだんと身体が… Bのものへと、戻っていくのが分かる)
A(それでも、声ははっきりと、Cちゃんの声で… 強い声で、語り掛ける)
C「… おかあさん…」
C「ボク、いかなくちゃ」
C母「いやっ…!!いやよ…!! ずっと、こうさせて…!!Cちゃん!!」
C「… ボクも、ずっとこうしてたい」
C「でも… ボク、もう、いかなくちゃダメみたいなんだ」
C母「Cちゃん…っ!!」
C「… … …」
C「ボク、待ってるよ」
C「でも… すぐに、来ないでね」
C「いっぱいお父さんと幸せになって、いっぱい素敵な時間を過ごして…」
C「そうしたら、ボクのところにきてくれると、うれしいな」
C母「Cちゃん…」
C「… … …」
C「ボクだけ先にいっちゃうけど…」
C「ボクは、平気だから。お母さんが考えてるより…」
C「ずっと、強くなれたから」
C「だから… お母さん。そんな顔しないで」
C「それじゃあボク… いけないよ…」
C母「… … ううっ …」
C母「分かった… っ、分かったわ…!!でも… もう少しだけ、こうさせてっ…!!」
C「… … … ありがとう、おかあさん」
C「大好きだよ、おかあさん」
C母「… … …!!」
C母「あああああっ…!!!」
A(Cちゃんの身体が、空へと消えていく)
A(どこまでも澄み切った、青い空。 まるで吸い込まれるように、光が消えていく)
A(崩れ落ちる母親。 … それを、俯いて眺める、B)
A(… … …)
A(悲しい)
A(けれど… こうなるのが…一番幸せなのかな)
A(不幸にも、命を落としてしまった娘と、その娘をずっと愛していた母親)
A(その二人は、世界一、お互いを愛していて)
A(最後にそれを伝えられた親子は… きっと、幸せだったんだろう)
A(… … …)
A(…私も…)
C「先輩たちっ」
C「今まで、本当にありがとうございましたっ」
C「ボク、先にいってるっス」
C「あっちに何があるかわからないっスけど」
C「たぶん、Aさんのお料理よりおいしい料理はないっス!」
C「Bさんのお家より、ゲームの量は少ないと思うし、退屈だと思うっス!」
C「でも、ボク、のんびり待ってるっス」
C「もう一回、三人で遊べる時がくるまで」
C「のんびり、待ってるっス!」
C「だから、早くきちゃ、だめっス」
C「… … …」
C「ボクは、絶対にお二人の事、忘れないっスから」
C「… のんびり。 途中で、こっちに来ないように…」
C「それだけ、お願いしたいっス」
C「… … …」
C「さようなら!みなさん!」
C「また、会う日まで!!」
C「しばしの別れっス!」
A(Cちゃんの声が、聞こえた)
A(それは空の向こうから。聞き取れないかもしれないくらい、微かな声)
B「… … …」
A(でもそれは)
A(きっと、Bにも聞こえて、届いていた)
・
・
・
――― …
A「… … …」
A「B、ありがとね」
B「お前に礼を言われる事じゃねーやい」
A「またまた、謙遜しちゃって」
A「… 殺される理由も、何もなかったCちゃんがさ」
A「最後の最後に、お母さんに会えて… 話をして、触れられて…」
A「不幸のどん底だったCちゃんと、Cちゃんのお母さんが、最後の最後だけ、言葉を交わせたのも」
A「全部、Bのおかげじゃん」
A「… ありがと」
A「これは、幽霊代表としての言葉だよ。ありがたく受け取っとけー」
B「いつからお前が代表なんだ」
A「いやいや、でもさ。本当に」
A「Cちゃんだけじゃなくて… 最初に出会ったオジサンも、奥さんも、娘さんも」
A「Cちゃんを連れ去ろうとしてたお兄さんも」
A「… Bの、おねえさんだって、きっと… Bに出会えなければ… 辛かったと思うし、苦しんでいたと思う」
B「… … …」
A「それで、Cちゃんと、お母さんがお別れを言えて…」
A「… … …」
A「私と、私のお母さんだって… 最後に、会えた」
A「全部、全部、Bのおかげなんだよ」
A「本当に、ありがとう。 …おつかれさま、B」
B「… … …」
B「全身がかゆくなるからやめろ。帰るぞ」
A「あ、ちょっと待ってよ。…ホントに素直じゃないんだから」
A「… … …」
A(… もう少しだけ…)
A「… … … あ …」
A「ね、そこ曲がって!そこ!」
B「あ?」
A「ちょっと付き合ってよ、ね?こっちこっち!」
B「… … …」
・
A「ここだよ、ここ!覚えてるよね」
B「… なんだここは。記憶にないぞ」
A「とぼけないでよー。私とBが初めて会った場所だよ!」
B「… … …」
B「ああ、お前が間抜けな面して地面に埋まってた場所か」
A「間抜けが余計」
A「… あの時は、本当に私… 何もかも分からなくて」
A「何もかも、嫌になってて」
A「… … … そんなところにBが現れたんだよねー」
B「救いの女神だな。うんうん」
A「救うどころか無視しようとしたでしょ、最初」
B「あるぇー」
A「… … …」
A「でも、なんだかんだ私の事、助けてくれてさ」
A「それどころか、生きている間のモヤモヤも、悲しいことも… 取っ払ってくれて」
A「… 本当にうれしかったな、私」
B「… … …」
A「… 私のお母さんの事だって… ちゃんと、付き合ってくれて」
A「… こんな事言うのもなんだけどさ」
A「生きてる頃じゃ、絶対にあんな事、言えなかった」
A「… 母親の事、『大好き』なんて」
A「… … …」
A「全部、Bのおかげ」
B「… … …」
B「地面に埋まってた間抜けとこんな関係になるとは私も思ってなかった」
A「あはは、私も」
A「… 私が死んでなかったら… たぶん、話もしてなかったんだろうなぁ」
A「そう考えると… なんか、複雑だね」
B「… … …」
A「… … …」
A「Bは…」
A「きっと、幽霊が見えるその体質のせいで… いっぱい苦労して… いっぱい悲しい思いして…」
A「…でも、それでも…私や、他の幽霊達の事、助けてくれて…」
B「… … …」
B「そんな立派なもんじゃない」
A「… Bがそう思ってなくても、Bは… Bは、自分が思うよりずっと… なんていうか…」
A「… … … すてきだよ」
B「…なんだそりゃ」
A「ううー、うまく言葉が出ないんだよー」
A「… … … でも、だからさ」
A「今度は、Bが幸せになる事を、もっと考えようよ」
B「… … …」
A「幽霊はいっぱいいるし、それが見えちゃうBだけどさ」
A「もっと自分の事に目を向けて… オシャレしたり、友達作ったりさ」
A「いろんなとこ出かけて、新しいものをいっぱい見つけて… すっごくすごく、楽しい思いをして…」
A「… … …」
A「Bの幸せ、もっと見つけようよ!」
B「… … …」
B「… 私は …」
B「 … いやだ 」
A「… … …」
B「… … …」
B「… 一人になるのは …」
B「嫌だ」
A「… … …」
A「気づいてたんだ」
B「… … …」
B「何日か、前から」
A「… … …」
A「あはは… お互い、黙ってたんだね」
A「話してくれれば、いいのに…」
A「… … …」
A「もう… そろそろかな」
A「私が、消えちゃうの」
B「… … …」
A「ねぇ、私、まだ見える? … まだ、声、聞こえる?」
B「… … …」
B「…ああ」
A「… そっか、良かった」
A「…ホントは、ずっと前に、消えるべきだったのかもね、私」
A「お母さんと分かち合えて… いっぱいBやCちゃんと、楽しい時間を過ごせて…」」
A「でも… まだ足りない。まだ、もっと、この時間を過ごしていたいって…」
A「… … … ずっと、一人だったから …」
B「… … …」
B「私もだ」
B「だから、嫌なんだよ…」
B「また… あの頃に、戻るのは…」
B「ずっと、一人だった… あの頃に…」
A「… … …」
A「私も… 嫌だよ…」
A「… … … でも、どうしようもない、んだ」
A「もう… ずっと前から、自分に言い聞かせてた」
A「まだこの時間を過ごしていたい。一人になりたくない。Bとずっと、一緒にいたいって」
A「… … … でも …」
B「… … …」
A「幸せって… きっと、そうやって言い聞かせても… ダメなんだな、って」
A「… もう、自分自身が…それを嘘だって、分かっちゃったんだよ…」
B「… … … っ …」
A「… … … はじめてみた」
A「Bの、泣いてるとこ」
B「…っ… …るせーっ…」
A「… … …ねえ、B」
A「私がいなくなっても… Bは、今、この世界を生きていて …それで… 生きていくんだ」
A「だから… Bは、今を、精一杯、過ごして欲しいな」
A「幽霊達じゃなくて… Bの、今生きているこの世界と、この時間と… 生きている人間と、一緒に」
B「… … … やめろよ …っ」
A「… B …」
B「私は… っ、私は、お前のいない世界なんか、耐えられないんだよ…っ…」
B「ずる過ぎだろ…!人がせっかく、せっかく一人で生きていこうとしてたのに…っ!!」
B「私の家に入り込んで…っ!!私と一緒に暮らして、っ…!! やっと、やっと…!!」
B「人のことを、好きになれたのに…!!」
A「… … … ごめん …」
B「ずる過ぎなんだよ、お前っっ!!!」
B「一人でいくんじゃねぇよ!!! 私も連れてけよっ!!!」
B「…っ、く、ぅぅ…!」
A「… … … ダメだよ」
A「Cちゃんにも、言われたじゃん」
A「早くきちゃ、ダメだって」
B「… く、っ… ん…!!」
A「… … …」
A「私がBといるのは、Bの長い人生の中の、ほんの一瞬なんだ」
A「…私だって、同じ。…これからきっと、私の前に… 過ごす時間が待っている。今は、その一瞬」
A「… だから、この先。きっとBの前には…たくさんの出会いがあって、たくさんの時間がある」
B「… っ …」
A「… … …」
A「だから、Bは、その時間と出会いを、精一杯楽しんで」
A「… それで …」
A「それで最期に、私とCちゃんに、会いに来てくれれば… それでいいんだよ」
B「… っく … ばか、やろっ…」
B「いくなよっ… ! いかないで、くれよ…!!」
A「… … …」
A「約束」
A「ちゃんと、『生きる』こと」
A「… 約束してくれないと…」
A「私もBも、きっと、不幸になっちゃうから」
B「… !」
A「私だって…」
A「私だって、いきたくないよ…!! Bと、ずっと、ずっと一緒に、いたいよ…!!」
A「でも…!!」
A「お願いだから…!!」
A「私の手が、触れられるうちに…」
A「約束、して…」
B「… … … っ …」
光を放ち、風景と同化するように、消えていくAの身体。
微かに見えるそのAの手を、Bは両手で握り、額にその手をもっていく。
B「… … …」
A「… … …」
A「ありがとう…」
A「私の、最高の友達だよ、B…」
B「… … …」
Bは、その手をそっと離し、涙を乱暴に拭う。
B「… 待ってろ」
B「絶対、忘れない」
B「大人になっても… ばーさんになっても…」
B「Aの事、絶対に忘れない」
B「… だから …」
B「お前も、忘れるなよ」
A「… … …」
A「当たり前じゃん!」
A「絶対… 絶対!! 忘れないよ!!」
A「口が悪くて、ぶっきらぼうで、素直じゃなくて!!」
A「でも… 最高の友達がいた事!! その友達が… いつか、ずっと先に、私のところにきてくれる事…!!」
A「その時まで… ずっと、忘れないから!!!」
A「だから…」
A「何百年か先にきてよ!! B!!」
A「待ってるからね!!!!」
・
・
・
B(… … …)
B(何時間、私はこの場所にいるのだろう)
B(夕暮れのオレンジが街を俄かに照らし、人々は家路についていた)
B(私の横を、人々が通り過ぎていく)
B(それでも、私は… その場所を動けなかった)
B(… きっと、Aの声がまだ聞こえる。 …顔をあげれば、Aがそこにいる)
B(… ずっと、それを待っていた)
B(… … …)
B(いつの間にか、Aの声は聞こえなくなっていて)
B(… でも私は… それを、信じたくなくて…)
B(ずっと、こうして俯いて、この場所にいた)
女子生徒「 … あの 」
B「… … …」
B(気づけば、人々は皆、いなくなっていた)
B(… たった一人だけ)
B(私の通う学校と、同じ制服を着た女子生徒が一人)
B(俯いている私の目の前に立ち、私に話しかけてきたので)
B(私は顔をあげて、そいつを見た)
女子生徒「… この学校の、生徒さんですよね?あの… 私、明日、この学校に転校してくるんです」
B「… … …」
女子生徒「あの、その… 通学路、見てきて… この学校に着いたら、あなたがいたから… 声、かけちゃって…」
女子生徒「… ごめんなさい…。 あの、泣いてたんですか…?」
B「… … …」
女子生徒「あの… 出会ったばっかりで、しかもまだこの学校の生徒でもない私が言うのもなんですけれど…」
女子生徒「あの、あの… そ、相談、のりますよっ。何かあったなら、私が…!」
B「… … … 相談 …?」
女子生徒「なにか、あったんですよね?悲しいこととか、辛いこととか…」」
女子生徒「私、相談、のりますからっ!というか、友達になりますからっ!! というか、なってもらえますか!?友達!」
B「… … …」
女子生徒「あ、あわわわ… えっと… 何言ってるんだ、って感じですけど… 私も、転校したばっかりで友達とかできるか、分からないから…っ」
女子生徒「こうして出会えたのも、なにかの縁ですし…っ!あの、良かったら、友達に…!!」
B「… … … ふ …」
女子生徒「ふ?」
B「ふ、はははは… あはははは…!」
女子生徒「え、え、え?な、なにか、おかしいこと、言いました?私…」
B「テンパりすぎだな、とりあえず」
女子生徒「う、そ、そうなんです。私、あせっちゃう性格で…!」
女子生徒「だからあんまり友達とかも今までできなかったから…!! こうして声かけてるのもなんだか不思議な話で…!!」
女子生徒「… あ、そうだ!」
女子生徒「私の家、ゲーム、いっぱいあるんです!友達いなかったけど、ゲームだけは得意ですからっ!!」
女子生徒「… あ、でも、あなたがゲーム好きだとは限らないし… もう遅いから、迷惑でしょうし… ううううう」
女子生徒「あの、あの… っ」
B「… … …」
女子生徒「… ゲーム、好きですかっ!?」
B「… … …」
B「ああ」
女子生徒「!」
B「… 迷惑じゃなければ、お邪魔しようかな。…少しだけ」
女子生徒「!!!」
女子生徒「は、は、はいっ!どうぞ、どうぞ!狭い家ですがっ!あ、でも、新築ですからっ!!」
B「あははは」
B(私は、この世界に、生きていく)
B(人に見えざる者達と、一緒に)
B(… そして、私も、幽霊も… いずれは、いくべき場所に、いくんだろう)
B(… … … でも)
B(そうなるまでは… きっと、色々な出来事があるんだろう)
B(… 未来は、不透明だ)
B(でも、一つだけ分かる未来がある)
B(いつか… 絶対に、会える、友達がいる)
B(… いつになるかは分からないけれど…)
B(私は、来るべき、その未来を、絶対に忘れない)
B(きっと… あいつも。あいつらも。 忘れないでいてくれるから)
B(だから…)
B(私は、未来を目指して、生きていく)
ほぼ4か月かかりました…。投稿ペースもバラバラだし、投稿量にバラつきもあり…本当にすいませんでした。
前書きにも書きましたが、感想や支援などいただき、いつもありがとうございました…!毎回、本当に励みになって、次の回へと繋げられました。
綺麗な形になれたのは自分でも分からないのですが、完結までこぎつけられたのはみなさんのおかげです。
A、B、Cに変わりまして、お礼を…。文章では伝えきれませんが、本当に、このSSを見てくれてありがとうございました。
これから何日か、このスレの中で皆さんのレスがつきましたらお返事させていただいてhtml化の依頼を出させていただきたいと思います。
ご感想などいただけるととても嬉しいです…!
SSの中で書ききれなかった設定や話なども補完できると…いいなぁw
可能なかぎりお返事させていただきます。
それでは… 繰り返しになりますが、本当にありがとうございます!
乙でした。いいラストだったよ
Bみたいなキャラは好きだ。
何か元となるお話とか舞台ってあったりするのかな
設定補完聞きたいけど、具体的な質問が思い浮かばないのでこんな質問になっちゃうけど
乙乙
面白かったよ
>>484さん
ありがとうございました!
元…どうなんでしょう。構想自体は数年前から考えていたものを今回形にさせていただいたので…
元々自分がミステリーやサスペンス映画が好きだったので、いろいろなものに影響を受けていると思いますw
舞台としては、頭の中で東京の下町のイメージをずっと持っていました。
>>485さん
お読みいただき、ありがとうございました!そう言っていただけると幸いです…!
大作乙
それぞれのエピソードがどれも味わい深くて読みごたえがあったよ
この世を去った後に再会出来る友達がいるなんて素敵だな
次回作の構想はあるのかな?
またいつか会えたら嬉しい
完結乙
笑いあり、涙ありの素晴らしい大作だった
乙!
もっといろんな事件を解決して欲しかった。
乙
Cのくだりで少し泣いたわ
乙
凄い面白かった
ありがとう
乙!
良かった
毎回暖かくて好きだたったけど
最後は少し勇気ももらった気がするよ
ありがとう
>>487さん
長いSSになってしまいましたが、本当にお付き合いいただいてありがとうございました!
次回作…書きたいSSは何本かあるんですが、仕事や事情で遅くなるとは思います。また書き溜めてから投稿しようと思いますので…。
女騎士もののSSとか、書いてみたいなぁ、と思ってますw旬過ぎちゃったかなぁ。
目途がつきましたらhttps://twitter.com/rordySS のほうで引き続き報告したいと思いますのでよろしければお願いします…!
>>488さん
ありがとうございます!こんなにいろいろ話が伸びていくとは自分でも思っていませんでした…wうまくまとまれたかが不安です。
>>489さん
ありがとうございました!
そうですね…自分も、色々な話をもっと書いてみたかったのですが、どんどん長くなってしまうのと、似たり寄ったりの話がきっと出てきてしまうと思って、完結という形にさせていただきました…。どこかで語り切れなかったお話など書ける機会がありましたら、また、という事で…!
>>490さん
ありがとうございます…!そう言っていただけるととても嬉しいです。
自分も、Cを退場させるのはなんだか自分の子どもを出すような感じで書いていました…w
>>491さん
長いSSにお付き合いいただいて、本当にありがとうございました…!
>>492さん
わぁ、勇気…。本当にうれしいです、ありがとうございます!
自分もそう言っていただけて光栄です…!
乙乙!
いい作品だった
またどこかで会いたいねぇ
>>494さん
ありがとうございました!
はい!また違うSSでお会いできるととても嬉しいです!それでは!
たくさんのご感想、本当にありがとうございました!
これにてhtml化の依頼を出させていただきます。
次の構想が練れましたらツイッターの方で報告させていただきたいと思います!
それでは!
お疲れ様!最初の投稿時から見てたで
更新楽しみやったし終わった今が寂しいかな
Bがなぜ幽霊が見えるのか、Bのそのあととか
気になるな~
タイトルからはこんなお話だとは思わなかった
そして面白かったw
いい裏切られ方だったわ。
コメント、ありがとうございます!
>>496さん
最初から見ていただけているとは…ありがとうございます!長く&遅くなってしまって本当にすいませんでした…。
Bが何故幽霊が見えるのか、は設定としては代々家系として霊感のある血筋というものを考えていました。
ただ、祖母が非常に霊感が強かったのに対して母親には全くその感覚がなく、祖母とは離れてBも気味悪がるようになった、という感じです。
>>497さん
ありがとうございました!
そうですね…自分もこんな風に話が転がっているとは思っておらず…。タイトル、もう少し考えればよかったですw
今日ふとこのタイトルを見掛けてシュール系ギャグかと思って読み進めたら泣いた。すごく面白かったです!
>>499さん
お読みいただいてありがとうございました…!タイトル、本当にもっと考えればよかったですw
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