【アイマス】2人の距離 (29)

この前投下したSSの千早視点です

需要を全く意識せず、練習のつもりでやってしまった
実は後悔している

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【アイマス】レモンのサプリメント
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朝、日課のランニングを終え土手の上で発声練習をする。
朝の澄んだ空気は心も身体も軽くしてくれるようで。
ふと、歌を歌いたくなった。

ピッチの取り方も、ブレスのタイミングも、歌詞に込められた意味も。
すべてを置き去りにして、ただ歌いたいように歌った。

「駄目ね」

思うままに歌い、少し晴れやかな気分ではある。
でも、歌いたいように歌ったらこんなにも揺らぎがでてしまうなんて。

「感情を優先して歌のバランスが崩れてしまいようでは」

まずは技術面でしっかりとした土台を築かなければならない。
基礎が出来ていなければその上に何を乗せても不安定になってしまう。
それでは、歌に失礼だ。


私は、如月千早、16歳。
765プロダクションという芸能事務所でアイドルをやっています。
本当は歌手になりたいのだけれど。

「キミなら大丈夫。それに、アイドルとしての経験は歌手になっても役立つと思うがね」

私をスカウトしてくれた事務所の社長の言葉を信じて、今日もレッスンに励みます。
……仕事はほとんどありませんので。


***************************


「諸君、我が765プロに新しい仲間が加わることとなった。そして、彼には諸君らのプロデュースを担当してもらう」

ある日の朝礼、社長は私たちの前でそう発表した。
確かに765プロは12人ものアイドルを抱えているのに、プロデューサーが1人しかいない。
人員不足、それが仕事の少なさの原因の1つなのは疑う余地がない。

「……頑張りますので、よろしくお願いします」

物思いにふけっていると、新人プロデューサーの挨拶が終わっていた。
ちょっとした静寂の後、事務所が喧騒に包まれる。
私には特に何の感慨もなかった。
それよりも、この騒ぎのせいで自主トレの時間が削られないかのほうが重要な問題だった。

だから私は、その視線に気付くことすらなかった。


***************************


トレーニングが一区切りつくと、スタジオの扉が開く音がした。

「……貴方は」

今朝、事務所にやってきた新人のプロデューサー。
いったい何の用だろう?

「お疲れ様です、如月さん。突然ですが、如月さんのプロデュースを担当することになったので挨拶に来ました」

疑問に思っていたことが顔に出ていたのだろうか。
挨拶もそこそこにそう告げられた。

「貴方が、私の、プロデューサーに?」

「ええ。それで顔合わせというか、これからよろしくお願いしますのあいさつというか」

「わかりました」


確か、特にこれといった経験もない、と言っていた気がする。
彼の手腕に期待は持てないけれど、断る理由も特に思いつかない。
これが何かのきっかけになるかもしれないし、駄目なら社長に言えばいい。

「それでですね。今後の方針を決めるためにも聞いておきたいことが。如月さんは、どんなアイドルになりたいですか?」

確かに今の私はアイドルだ。
でもそれは本当にやりたいことではない。

「……アイドルには興味ありません。私は歌手になりたいんです」

「成程。如月さんは歌手志望なんですね。でもアイドルとしてデビューしている以上、歌だけでは厳しいと思いますよ?」

言いたいことはわかるけれど。
テレビのバラエティに出たり、雑誌のグラビアを飾ったり……
そんなことに時間を使うなら私は自分の歌を磨きたい。

「私は、歌が歌いたいんです」

「もちろん、如月さんの意志は尊重します。ただ、多少の回り道は我慢してくださいね」

「……はい」

頭ごなしに押さえつけてこない部分には好感を持てる気がする。
けれど、歌だけは譲れない。
私には歌しかないのだから。
この思いが雰囲気から伝わったのか、彼は困ったような微笑を浮かべてスタジオを後にした。


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「如月さん、それが食事ですか?」

事務所のソファーで食事をしようとしていると、いきなり声をかけられた。
プロデューサーは神出鬼没というか、気配が薄いというか、気づくとすぐ近くにいることがあって心臓に悪い。

「はい」

目の前には栄養補助食品とゼリー飲料。
これにサプリメントを加えれば特に問題はないはず。

「今日はたまたま、ですよね?」

「いえ、大体こんな感じですが」

ちょっと困った顔をされた。

「死にますよ?」

プロデューサーはいつものように微笑を浮かべている。
その微笑と、セリフの物騒さに頭がついていかない。


「サプリメントというものは足りない部分を補完するためのもの、あくまで脇役です。主役がちゃんとしていなければ意味を成しません。いくら素晴らしい伴奏があっても、主旋律が存在しない楽曲は評価されますか?」

わざわざ音楽に絡めて説明された。
そんなことして頂かなくても、言いたいことはわかります。

「でも、私は一人暮らしで、料理も決して得意では……」

このプロデューサーは、許可なくプライベートには踏み込んでこない。
敏感に空気を読み、こちらが避けて欲しい話題は触れずにおく気遣いをしてくれる。

「簡単で、適当に作れる料理を事務所のみんなに教えてもらえばいいんです。で、最低でも一日一食は普通の食事をとるようにしてください」

だから一人暮らしの部分は流してもらえる。
でも、食生活のことについては引いてもらえそうにないようです。
微笑を浮かべているのにその目は笑っていなくて、真剣に私の心配をしているのがわかってしまいました。

――――――
――――
――

「料理、ね。誰に教えてもらえばいいのかしら」

今日の食事を採りながら1人ごちる。
慣れ親しんだショートブレッドが、いつもより味気なく感じた。


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相変わらずレッスン漬けの日々。
プロデューサーは、いつも微笑を絶やさずにそっと私を見守ってくれる。
レッスンでは役に立たないと自嘲しているけれど、感じたことを丁寧に伝えてくれるのでとてもありがたい。
歌以外にももう少し力を入れよう、という提案には未だに頷けないけれど。
いつの間にか、信頼できる大人としてプロデューサーを見るようになってきていた。

「如月さん、歌の仕事ですよ」

「!!」

それは私にとっても待ち望んだものだった。
ローカルTVの深夜番組、ほんの数分のコーナー。
まだまだ力が足りなくて、と申し訳なさそうに説明するプロデューサーに胸の内を告げる。

「舞台の大小は関係ありません。歌えるチャンスがあるのならば、全力を尽くすだけです」

ようやく巡ってきた歌の仕事なのだから、規模だとかは問題になりません。
でも、そのあとに続く言葉が私の決意に影を落とす。

「このオーディションは、歌だけでは駄目なんですよ。“アイドルとしての”如月さんの力が評価の対象なんです」

「……そういうこと、ですか」


今なお私はアイドルに興味が持てないでいる。
自分がアイドルとして頑張れば、私の歌に不純物が混ざるような気さえしてしまう。
そんな私の胸中は、プロデューサーに知られているだろうか。

「歌手でもアイドルでも、人の目に留まらなければ始まりません。頑張りましょう」

「わかりました。精いっぱい頑張ります」

その言葉で目の前の雑念を無理やり振り払う。
プロデューサーの言う通り、まずは始めなければ。


***************************


オーディションで実力を示せばテレビで歌うことができる。
それは、私にとってずっとやりたかったこと。
でも、その中身は私の望みと少し違っていて……

歌手ではなくアイドルとして歌う、というのはどういうことなんだろう。
昨日より今日、今日より明日、うまく歌えるようにこれまで努力を怠ったことはない。
ところが、レッスンではダンスやビジュアルという、私にとって不要なものも要求される。
そんなことよりも私は歌を磨きたいのに。

心に小さな棘が刺さっているようだ。
どこか落ち着かない日々の中、プロデューサーから別口の仕事の話が来た。

「如月さん、私の知り合いから『ウチのライブハウスで歌ってみないか』っていう話があるんですが」

「行きます」

歌えるチャンスがあるのなら、迷うことはない。
私は即答した。

「謝礼も何も出ない、前座その1ですよ?」

「構いません」

「わかりました。先方には話しておきます」

舞台の大小とか謝礼の多寡とか、そんなことはどうでもいい。
私は、歌いたいのだから。


――――――
――――
――

「如月さん、お疲れ様。どうでした?」

舞台を終えるとプロデューサーが迎えてくれた。
聞かなくてもわかっているだろうに。

「実力不足を痛感しました」

「そうですか。ところで、ここのマスターが話をしたいそうです」

目に力強い光を宿した男性が入ってきた。
今日の舞台を用意してくれたお礼と、不甲斐無い結果に終わってしまった謝罪をしないと。

「如月千早さん、だっけ。君この仕事やめたほうが良いよ」

そう思って口を開けようとすると、いきなり思いもしない言葉をかけられた。

「なっ」

頭の中が真っ白になった。。


「歌はうまいけどそれだけ。自分だけで完結して満足してるなら一人でカラオケでもしておいで。歌手志望のアイドルだか何だか知らないけど、なんで人前で歌おうと思ったの?誰かに認めてもらいたいとか?伝えたい想いがあるとか?どっちにしても無理だけどね」

わからない。
なぜこんなことを言われなければならないのだろう。

「MCは無愛想、振付は中途半端。歌のついでにとりあえずやってる感がビシビシ伝わってきたよ。何?ウチが小さなハコだからって舐めてるの?」

厳しい言葉が降り注ぐ。
私は全力で歌っただけなのに。

「舞台ってのはさ、単に歌えばいいわけじゃないのよ。自分を表現する場なの。自分の全身全霊を相手にぶつけるのが最低限の礼儀。今日君はそれをした?」

「私はっ」
「君の後に舞台に立った奴ら見た?歌は下手糞、パフォーマンスもまるでなってない。でも客は君の時よりも盛り上がってたよね」

全力を出さないなんて失礼なことはしません。
続けようとした言葉は遮られ、彼の言葉はなおも私を打ち据える。

「なんでかわかる?アイツらにはさ、夢があるんだよ。何が何でも夢を叶えたいっていうガムシャラな情熱があるんだよ。できるできないじゃない。やりたいことに必要ならどんな努力も惜しまない。その姿勢は少なからず相手に通じるもんだ。で、君はどう?」

「……私は歌が歌いたくて」

「言ったよね。歌いたいだけならカラオケ行っておいでって。なんで舞台で歌いたいの?誰に向けて歌うの?何を伝えたいの?それすらわからないなら宝の持ち腐れだから、君の歌の才能をアイツらに譲ってあげて」

何を言えばいいのかわからなかった。
どうすればいいのかわからなかった。
何が悪かったのだろう、どうすればよかったのだろう。
やりたいこと?届けたい想い?
私は歌いたい、ではなぜ歌いたいの?

わからない、わからない……


***************************


事務所へ帰る車中、ようやく私は少し冷静になることができた。
あの人が何を伝えようとしていたのか、おぼろげにだけれどわかってきた気がする。

「ごめんなさい、驚きましたよね?」

プロデューサーの声を呼び水に、1人きりの思考から浮かび上がる。

「彼もね、音楽の道を志していたんですよ。情熱は誰にも負けないものを持っていました。でも彼は才能という、絶対的な壁を乗り越えることができませんでした。それでも音楽を捨てきれず、今ではライブハウスのマスター。自分の夢は叶えられなかったけれど、同じ夢を持つ人の手助けをしてやるんだって言っていました」

「そうだったんですか」

「口の悪さはあの通りですが、自分が認めた相手にしかあんな風にはならないし、できると思ったことしか言いません。自分になかった才能を持った如月さんだからこそ、言わずにいられなかったんだと思います」

あの人の言葉は辛辣だったけれども、そこには確かな熱があった。
同じ夢を見ていたからこそ言えることだったのかもしない。
けれど、冷静になってみるとどうしても腑に落ちないことがあった。


「なぜ、プロデューサーではなかったんですか ?」

「何がですか?」

「今日は、オーディション前に私の至らない点を指摘しておきたかったのでは?なぜ、プロデューサーは他人の口を借りたのですか?」

日頃から言われていた、アイドルとして必要なこと。
私が聞く耳を持たなかったのは、反省しなければなりません。
けれど、こんな大事なことを不意打ちのように他人から聞かされるなんて。
プロデューサーの、私に対する熱意とはその程度のものだったんでしょうか。

「私は、技術的なアドバイスはできないから……では答えとしては駄目なようですね」

「はい。今日言われたことは技術の話ではなく、心構えの問題でした。わざわざ他人の口を借りて伝えるものではなかったはずです」

「答えは、私がレモンだから、でしょうか」

意味が分かりません。
この期に及んで逃げようというのでしょうか。

プロデューサーに対する不信感が湧き上がってきた。

「ごめんなさい。はぐらかすつもりはないのですが、少し長くなるので明日事務所でお話しします」

プロデューサーは、いつものように微笑をたたえていました。
でも、その顔が泣いているように見えてしまって、それ以上追及することはできませんでした。


――――――
――――
――

頭にこびりついて離れない、レモンという単語。
気になった私は帰宅してすぐ、辞書を引っ張り出した。

「……どういうこと?」


***************************


屋上に上がると、目当ての人物はそこにいた。

「煙草、吸われるんですね。知りませんでした」

「事務所やみんながいるところでは控えてましたから。でも、今日だけは勘弁してください」

昨日と同じ、泣いているような微笑。
その理由がわかるのなら、煙草くらいなんでもなかった。

「構いません。それで昨日の続きですが。レモンって、出来損ないって、どういう意味ですか?」

私が知らなかったレモンの意味。
自宅で開いた辞書にはこう書いてあった。
 lemon:出来損ない、欠陥品

「そのままの意味ですよ。私は、人としては欠陥品に分類されると思っていますから」


「なぜ?」

「如月さん、貴女は私をどういう人間だと思っていますか?」

「……プロデューサーは人当たりが良くて、気遣いのできる人だと思います。冷静で、声を荒げることのない穏やかな人です」

まだそこまで付き合いは長くないけれど、私の知るプロデューサーはそういう人だ。
そのプロデューサーが、なぜ自分を欠陥品だなんて言うのだろう。

「ありがとうございます。でもね、人当たりが良いのは敵を作りたくないから。気を遣うのは自分の価値を認めてほしいから。滅多に怒らないのは自信がないから。そういう意味だとしたら、どうです?」

「そんな!」

自虐にしてもひどすぎる。
思わず大きな声を出してしまった。

「少し昔話をしますね」

そう言うと、プロデューサーの顔から微笑が消えた。


「私が如月さんくらいの頃、私はごくごく狭い人間関係の輪で満足していました。その関係が、私という人間の唯一の価値でした。気の合う数人と遊んだり、馬鹿話をしたり。いわゆる青春というやつでしょうか」

2本目の煙草に火を点けるプロデューサーの顔からは、何の表情もうかがえなかった。

「ところが、ある日突然私の周りには友人がいなくなってしまった。唯一の価値はへし折られ、私はいないものとして世界が回り始めたんです。誰も自分を顧みることのない世界に放り出されたら、人間ってどうなると思います?」

煙とともに息を吐くプロデューサー。
そのまま消えてしまいそうな危うさがあった。

「何も見えなくなるんですよ。人というのは、他人が見てくれるから存在できるんです。誰も見てくれなければ自分の形すらわからなくなる」

「プロデューサー……」

本当は声をあげて泣きたいのに、泣き方を知らない。
そんな姿に何を言っていいのかわからなかった。

「そうなると心なんて簡単に壊れます。誰にも心を開くことができず、自分を信じることすらできない。人と人の間に立てないのに人間、なんておかしいでしょう?」


「でも、今のプロデューサーはきちんと人と人の間に立ってるじゃないですか」

そう、事務所の仲間ともうまくやっている。
仕事だって取ってきてくれた。
何より、私は貴方を信頼している。
空っぽの人間にそんなことできはしない。

「どんな傷でも時が経てばある程度は癒えるものです。それでも後遺症とでも言えばいいのでしょうか。今でも私は他人との距離の取り方がわかりません。それを誤魔化すための人当たりの良さ、穏やかな態度なんですよ」

「それじゃあ何故プロデューサーになんてなったんですか。そんな風に自分を評価する人に務まる仕事ではないはずです」

「プロデューサーになる前の数ヶ月間、私は死ぬことばかり考えていました。幸い心配をかける相手はほとんどいませんでしたし、迷惑をかけない死に場所がないかと彷徨ったものです」

「そんな、ご家族とかは……」

「私が壊れている間に家族も壊れてしまいました。あの人たちの中では、私はなかったことになってるんじゃないでしょうか」

あの人たち、という物言いに既視感を覚える。
心を閉ざすしかなかった日々の光景が頭をよぎる。


「そんなある日、私はとある川辺で一人の女性を見つけました。彼女は朝日を浴びながら歌っていました。綺麗な声で、誰に聞かせるでもなく伸び伸びと。それを聞いていたらね、なぜか涙が零れてきたんですよ」

プロデューサーの顔に再び微笑が浮かんだ。
それは、私が見慣れたいつもの微笑だった。

「歌を聴いて感動する、そんな当たり前の感情が自分に残っていたことに驚きました。そうしたらね、思ってしまったんですよ。この感動を、もっと多くの人にも感じてもらいたいって」

死を意識していた人間が、それを忘れてしまうほどの感動。
そんな力ある歌を、私も歌ってみたいと思った。

「私にとって、このオーデションはその一歩目なんです。できる限りのことはしたいと思いました。でもやっぱり自信がなくてね。如月さんに足りない部分を友人の口から指摘してもらうようなことをしてしまいました。本当にごめんなさい」

プロデューサーが頭を下げている。
こんな時、何を言えばいいんだろう。
人付き合いを避けてきた私には想像もつかなかった。


「それはその……そういう事情があったのでは仕方がないと言いますか、でももっと私を信頼して欲しかったと言いますか」

それでも何か言わなければと必死になって言葉を引っ張り出す。
自分でも何を言っているのかわからない。
気づくとプロデューサーがこっちを見て笑っていた。
いつもの微笑とは違う、無邪気な顔をしていた。

「っ!次同じことをしたら口をききませんから」

頭に血が上る。
恥ずかしい。
思わずそっぽを向いてしまった。

「わかった。約束する」


プロデューサーの口調が聞いたことのないものになっていた。
人との距離の取り方がわからない、そう言っていたプロデューサーが歩み寄ってきてくれたようで、少し嬉しかった。

「その話し方のほうが良いです。今回のお詫びに、今後固い話し方は無しにしてください。あと、疑問だったんですが、なぜ私をプロデュースしようと思ったんですか?」

前々から気になっていたことを、ついでのように聞いてみる。
私の担当になったのは偶然?
社長に言われたから?
それとも……?

「……その答えはオーディションに受かってから、じゃ駄目?」

「わかりました、約束です」

オーディションを落とせない理由が増えた。


***************************


オーディションまでの日々、私は必死だった。
プロデューサーを救った誰かのような歌を歌いたいと思った。
そのために必要こと、それはライブハウスで教えてもらった。
今まで見ようとしなかったそれらに取り組むのは大変だったけれど、苦ではなかった。
なにより、オーディションに落ちたら答えが聞けなくなってしまう。

「さあ、答えを聞かせてください」

見事にオーディションを突破したその日、屋上に着くなりプロデューサーに詰め寄る。

「如月さんをプロデュースしようと思ったのはですね」

「千早です。あと口調が固いです」

少しだけプロデューサーが距離を縮めてくれたあの日以来、私のことは下の名前で呼ぶようにお願いしていた。
距離の取り方がわからないというのなら、こっちから近づけばいいのだ。
いつの間にこんな風に考えるようになったのだろう?
人を遠ざけていたかつての自分からは想像もつかない変化だった。

「千早を選んだのは、歌以外を切り捨ててる姿が以前の俺に重なって見えて、でも俺と同じようなことにはなって欲しくなかったから」

「プロデューサー……」

そんな風に私のことを考えていてくれてたなんて。


「というのは建前で」

感動していたところに、いきなり水を差された。
ふつふつと怒りが湧き上がる。

「いつかの川で歌ってた女性が千早だったから」

「……えっ?えっ!?」

感動から怒りに切り替わろうという時に飛び込んできた言葉。
言葉の意味を理解するまでかなりの時間を要した。

川で歌っていた女性は、プロデューサーを救った女性で。
私はその女性のような歌を歌いたいと思って。
その歌を歌っていた女性は私で。

何とか頭が追い付いて、プロデューサーに問い質そうと顔を上げると。
目の前には誰もいなかった。

「プーローデューサーーーーーっ!!」

追いかけても無駄だとわかっているけれど。
いつかきっと真意を問いただしてみせる。


屋上には、扉が閉まる音だけが残った。


<了>


良かった

連投すまん
>>1のリンク間違いと
前作の依頼がちゃんと出来てないっぽい

>>26
風呂から戻ると衝撃の事実(違

正しくは↓

関連スレ
【アイマス】レモンのサプリメント
【アイマス】レモンのサプリメント - SSまとめ速報
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前の分と合わせて改めてHTML化依頼してきま

おい後半は前作とほとんど一緒だったぞww
視点違いの同じ話にするならもう少し千早の内面に踏み込んでくれよ
それと余計なまえがきはいらん。特にネガティブなのはいらん
それだけで読む気なくすよ

>>28
だったら読まなきゃいいだろ読者様(笑)は黙ってなよ

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