――――
友紀「ふあぁ……朝?」
友紀「うう、なんか頭がズキズキするよ……少し気持ち悪いし」
友紀(? 台所から、なんか良い匂いがするな)スンスン
美羽「あ、ユッキーさん、起きました?」
友紀「あれ、美羽ちゃん?」
美羽「お台所借りましたよ」
友紀「うん、それはいいけど……」
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美羽「ユッキーさん、冷蔵庫の中、ビールとかおつまみばっかりで普通の食べ物入ってないじゃないですか。いつもお食事どうしてるんですか?」
友紀「いやあ、スーパーとかの惣菜とかお弁当で済ませちゃってるな」
美羽「もう、健康管理もアイドルの大事な仕事なんですから、気をつけなきゃ駄目ですよ!」
友紀「あはは、そうだねー……じゃなくて!」
美羽「あ、朝食の材料とか、足りないのは近くのコンビニで買ってきましたよ。お金は私持ちでいいので気にしなくても結構です!」
友紀「ホント! イヤ悪いねえ……じゃなくて!」
美羽「朝はご飯の方が良かったですか?」
友紀「パンでいいけど! なんで美羽ちゃんが朝からあたしんちに!?!?」
美羽「えっ、覚えてないんですか? 今度、一緒の番組に出るから交流も兼ねて夕食に誘ってくれたの、ユッキーさんじゃないですか」
友紀「うん、そこまでは覚えてるよ。ピザ注文して、うちで一緒にナイター見てて。そう!
そこでキャッツが逆転勝利して!」
美羽「凄い興奮してましたもんね」
友紀「そりゃ興奮もするよ! 一点差で負けてる九回。表を守護神がピシャっと押さえてくれてからの、裏の逆転ツーランだからね!」
美羽「あの盛り上がりはすごかったですね。私、野球よくわかんないですけど。見てて楽しかったですもん」
友紀「で、嬉しくなっちゃって、お兄ちゃんから貰った日本酒の瓶を開けたんだよね」
美羽「勧められて困りましたよ」
友紀「あはは、ゴメン……で、そこに転がってる瓶が空っぽって事は、全部あたしが飲んだってこと?」
美羽「そうですよ。私は飲んでないですからね」
友紀「そりゃ気持ち悪くもなるか。頭ガンガンするし」
美羽「お水どうぞ」
友紀「お、ありがとう」
美羽「じゃあ、私に泊まってけーって言ってたのも覚えてないんですか」
友紀「あー……そんなこと言ってたんだ」
美羽「私はいいんですけどね、今日は土曜日で学校お休みでしたし」
美羽「……それに、いろんな事も聞けたし」
友紀「?」
美羽「でもあそこまで酔うなんて、ユッキーさんってそんなに強くないんですね、お酒。意外です」
友紀「弱い訳じゃないけど、一升瓶をまるまるは流石に。早苗ちゃんじゃないんだからさ。調子に乗るもんじゃないね」
美羽「朝食、そろそろ出来ますから待っててくださいね」
友紀「ありがとー」
――
友紀「おー。自分の家の食卓に、他人の作った料理が並ぶのって、なんか不思議だね」
美羽「他の人とか来ないんですか? 早苗さんとか楓さんとか」
友紀「来たとしても、おつまみとお酒だからねー」
美羽「あー、なるほど」
友紀「いただきまーす」パク
友紀「んんー。めちゃくちゃ美味しい!」
美羽「大げさな。ただのスクランブルエッグですよ」
友紀「いやいや、そんなことないよ。ふわふわしてるし、味付けも絶妙。お店で出せちゃうね!」
美羽「そんな、照れちゃいますよ」エヘー
友紀「あたしが作るとうまくいかないんだよなー。何でだろ? 気合いが足りないからかな?」
美羽(料理は気合いでどうこうならないと思うけど……)
友紀「ちゃんとした朝食を準備できるなんて凄いね。気も利くし、美羽ちゃんいいお嫁さんになるよー。うちに嫁ぎに来ない?」
美羽「何言ってるんですか。友紀さんも嫁ぐ側ですよ」
友紀「だけどねー。あたし料理出来ないし、気も利かないしなー。応援は得意なんだけど、マネージメントはね」
美羽「相手を好きって気持ちさえあれば、なんとでもなりますよ」
友紀「そう言う話は、あたしには早いかなー」
美羽「またまた、ユッキーさんそんなこと言ってー」アハハ
友紀「?」キョトン
美羽「?」……ッハ!
美羽(ユッキーさん、お酒飲み過ぎて忘れちゃってるんだ!)
美羽(って事は、昨夜のあのことも……)
――――
友紀『美羽ちゃん、泊まってっちゃいなよユー!』
美羽『もう、ユッキーさん酔い過ぎですよ』
友紀『泊まってってくれないの?』ウルッ
美羽『泊まるのは別にいいですけど』アセアセ
友紀『やったー!!』
美羽『声が大きいですって、ご近所迷惑ですよ』
友紀『大丈夫大丈夫! キャッツが勝ったんだから!』アハハ
美羽『キャッツは関係ないですから』
――
テルテルテル
美羽『お母さんからも許可貰えましたよ』
友紀『やった、お祝いだ! シャンパンシャワーしよっか?』
美羽『畳部屋でシャンパンシャワーがちょっと……』
美羽『でも、そこまで喜びますか?』
友紀『そりゃあ嬉しいよ。寝る時に誰かがいるのってね』
美羽『ユッキーさんでも、やっぱり一人暮らしは寂しいんですか?』
友紀『別にそうじゃないよ。野球とビールがあればあたしはOKだし、事務所のみんなもたまに遊びに来てくれるもん……でもね』
美羽『でも?』
友紀『それでも、たまにだよ。たまに、誰もいない家に帰ってきたとき、寂しく思うときもあるんだ』
美羽(ユッキーさんの弱り顔だなんて、珍しい)
美羽(……可愛いかも)
美羽(これで抱えてるのが一升瓶じゃなかったら、もっと可愛いのに)
友紀『そんなときにね、あたし』ウツムキ
美羽『な、なんですか?』
友紀『誰かが、家で待っててくれたなーとか、考えちゃったりしちゃってさ。そんなときにさ……』
美羽『はい?』
友紀『いつも、プロデューサーの顔が浮かぶんだ』
美羽『へえ……ん?』
美羽『それって』
友紀『別に深い意味はないんだよ! ほらプロデューサーって年上でお兄ちゃんみたいだし』ブンブン!
美羽『わ、分かりましたから一升瓶を振り回さないでください!』
友紀『プロデューサー野球に興味無いっていうし? そんな人あたしも興味無いし!』
友紀『そう、だからプロデューサーを事務所で見かける度に嬉しくなんてならないし、プロデューサーに車で送ってもらうときもドキドキなんてしいし、他の子と仲よさそうに話してても胸の奥がチクチクなんてしないんだから!!』
美羽(……まさか、やっぱり)
友紀『だ、だから、だからね?! その……!!
……その』
美羽(ユッキーさんが、また一升瓶を抱えて丸まってしまった)
美羽『……』
友紀『……』
美羽『……』
友紀『……美羽ちゃん。あたし、プロデューサーのこと好きかも』
美羽(……ですよねー)
―――――
美羽(その後も延々とプロデューサーのこと聞かされるし)
美羽(まさかユッキーさんから、あんなにプロデューサーさんの事を聞くとは)
美羽(私も、プロデューサーさんのこと嫌いじゃないけど。あそこまで一生懸命に話されたらなー
あれは反則だよ。照れくさそうに一生懸命なユッキーさん、とっても可愛かったし)
美羽(おし! ここは、ユッキーさんの笑顔の為に、この恋が成就するため、私が陰ながら支えてあげよう!)
美羽(その名も、キューピット矢口!)
美羽(キューピー。だけにね!)
友紀「さっきからマヨネーズ持ったままだけど、どうかしたの?」
美羽「あ、いや何でもないです」
友紀「……ねえ、美羽ちゃん。もしかしてあたし、昨日変なこと言ってたりしない?」
美羽「えっ!? 全然そんなことないですよ!?」
友紀「そうなの?」ジトー
美羽(怪しまれてる……心なしかユッキーさんの顔、赤いし)
美羽「ほ、ほんとですって。しいて言えば、キャッツについて延々と語ってましたけど」
友紀「……ならいいけど」
美羽(い、一応納得してくれた?)
これ良いユッキSS発見、照れ照れで甘々なのを期待
―――――事務所
ガチャ
友紀「おはようございまーす!」
美羽「おはようございます」
モバP「おう、おはよう友紀、美羽」
友紀「あ、おはようプロデューサー!」
美羽(こうみると、別に変わった感じはないなあ)
モバP「おまえ等が一緒なんて、珍しいな」
美羽「ほら、こんどの仕事が一緒だから、親睦を深めようとユッキーさん家に泊まったんですよ」
モバP「まさか、酒とか飲ませてないよな。友紀」
友紀「そんなことするわけ無いじゃん、ひどいなあプロデューサーは」
美羽「飲まされそうにはなりましたよね」
友紀「ああ、美羽ちゃん。シー!!」
P「お前なあ。未成年に酒を勧めるなってこの前注意したろ」ハア
美羽(前も誰かにやったんだ……)
友紀「あ、あはは。だって昨日はキャッツが逆転してうれしくってさ。実際に飲ませた訳じゃない……はずだし、ね?」
P「ったく、野球で盛り上がるのもいいけど。程々にしろよ」
友紀「いやあ、それは無理な相談だね。野球の素晴らしさを前にしたら、あたしは止まらないよ」
P「止まってくれよ……ったく、野球のなにがいいんだか」
友紀「ああ、言ったなプロデューサー!」
P「なんか中継みてても、地味なイメージが拭えないんだよなあ」
友紀「甘いね、実際の球場を体験したら、そうは言ってられないよ」
P「前に友紀と見たときも、あんまりだったけどな」
友紀「それは、ラジオ中継で行ったからでしょ。プロデューサー、打ち合わせとかで殆ど野球見てなかったじゃん」
P「まあな」
美羽(……っは! ここは二人っきりで出かけさせるチャンスなのでは?)
美羽「だ、だったらプロデューサーさん。今度はプライベートで野球を見に行ったらいいんじゃないですか?」
P「プライベートで行ってもなあ。よくわかんないし」
美羽「ユッキーさんと一緒に行くのはどうですかね?」
P「えっ?」
友紀「あ、あたしとプロデューサーで?」
美羽「そうですよ。ユッキーさんは野球詳しいですし、プロデューサーさんにいろいろ教えてあげられるんじゃないですか?」
美羽(我ながらナイスアシスト。これでさりげなく距離を縮められるはず!)
P「そうだな、まあ教えてくれるなら。面白く見れるのかな?」
美羽(おお! プロデューサーさんもまんざらじゃ無い感じでは?)
P「他に興味ある奴にも声を掛けてみるか」
美羽(あ、ですよねえ……でもここで焦っちゃ駄目、キューピット矢口! 無理に二人で行かせるより、まずは多人数から攻めていくべし! 急がば回れ!)
P「美羽も興味あるか――」
友紀「ちょ、ちょっと待ってよプロデューサー!」
P「? どうかしたか」
友紀「プロデューサーと一緒に野球っていうのはなあ」アハハ
美羽(あれ?)
P「なんだ、いやなのか?」
友紀「い、いや。じっくり見たいって言うか。ほら、誰かに教えながらだと、試合を集中して見れないじゃん」
友紀「だ、だからそういうのは、ちょっとさ」
P「まあ、友紀がそういうなら、無理には言えないけどさ」
美羽「あ、いや。あの……」
友紀「じゃあ、あたしレッスンあるからお先に!」
P「え? まだ早くないか」
友紀「振り付けで確かめたいところあるから、先に自主練するの! じゃあね。美羽ちゃん」バタン
美羽(……まさか、ユッキーさんから距離をとるとは……これは思いの外、苦労するかも)
美羽(プロデューサーも不審がってるし)
P「ったく、何なんだあいつ。最近なんか変なんだよなあ」
ガチャ
ちひろ「おはようございます、美羽ちゃん」
美羽「おはようございます」
ちひろ「? プロデューサー、どうかしたんですか。なにか納得行かない事があるような顔をして」
P「いや、なんか友紀が変で。野球に誘ったら、一人で見たいとか言うんですよ。前なら引っ張ってでもつれて行く勢いだったのに」
P「どうかしたんですかね」
ちひろ「さあ、どうでしょうねー?」ニッコリ
美羽(まさかちひろさん、ユッキーさんの気持ちに気がついてる?)
ちひろ「美羽ちゃん、私の顔に何かついてますか?」
美羽「ああ、いえ。なんでもないです!」
美羽(まさか、気のせいだよね)
―――――
美羽(しかし、これは思ったよりも難題かも)
美羽(私の予想が正しければ、ユッキーさんは自分の気持ちに気がついてから、プロデューサーさんを避けちゃってる。となると、くっつけるのも難しい事に)
美羽(ユッキーさん、子供っぽいところあるからなー)
美羽(……まあ、私も人の事言えないですけど)
美羽(でも、そうなると、どうしよう。私も恋愛なんて、経験ある訳じゃないしなあ……)
美羽(だれか頼れる年上の人に……)
加奈「おはよう、美羽ちゃん」
美羽「あ、加奈ちゃんさん! いいところに」
加奈「?」
加奈「恋愛相談?」
美羽「そうなの。知り合いの事なんだけど、私じゃどうすればいいか分からなくて」
加奈「それで、私にアドバイスが欲しいの?」
美羽「どうかな、加奈ちゃん。協力してくれる?」
加奈「私でよければ力になるよ、美羽ちゃん!」
美羽「ありがとう!」
加奈「で、その人と相手との関係を教えてくれる?」
美羽「えっとね……」
美羽(流石にそのまま言うわけにも行かないし)
美羽(加奈ちゃんも学生だし、学生恋愛だと分かりやすいかな? 私の同級生にしちゃお)
美羽「その子は、中学のクラスメイトなんだけど」
加奈「ふむふむ」メモメモ
美羽(学校で、プロデューサーに位置しそうな人と言えば)
美羽「学校の先生の事が、好きなったみたいで」
加奈「先生を?」
美羽「うん。最初は本人もそんな気がなかったらしいの。趣味もぜんぜん違ったし」
加奈「へえ」メモメモ
美羽「でも、一人暮らししてるときにね」
加奈「一人暮らし? 中学生で?」
美羽「あ、ああ。違った違った。えっと、ほら。家族の人がいなくて、一人で家にいるとき。いつもその人の顔が浮かぶようになって、気がついたら……って言う」
加奈「ほお」メモメモ
美羽「ただ、その先生のこと意識しすぎちゃって。前みたいに話せなくなっちゃったの。私として、その子と先生がうまくいって欲しいなあ、って思うんだけど」
加奈「なるほどー」
美羽「どうすればいいと思う?」
加奈「そうだなあ」ウーム
加奈「多分だけど、その子は自信がないんじゃないのかな?」
美羽「自信?」
加奈「そうだよ。先生と生徒っていう間柄なのもあると思うけど、積極的に行けないのは、その子が自分に自信がないからだと思うんだ」
美羽(ユッキーさんに限ってそれはないと思うけどなあ……)
美羽「もうちょっと、詳しく――」
P「おーい、美羽」
美羽「プロデューサー。どうかしたんですか?」
P「今日は雑誌のインタビューが入ってるだろ。何のんびりしてるんだ」
美羽「あ、いっけない!」
P「ほら、下にもう相手さん来てるから。早くしろよ」
美羽「はーい」
美羽「じゃあ加奈ちゃん。なにか良い案があったら教えてね」
美羽「それから、この話はみんなには内緒でお願い!」
P「みーうー」
美羽「はーい」タッタッタ
――
加奈(……詳しくとは言われたけど、これ以上、特に思い浮かばない……)
加奈(美羽ちゃんから相談されたけど、私もそういうのあんまりなあ)
加奈(みんなに秘密とは言われたけど、誰かに相談しようかな)
ガチャ
友紀「はあ、おつかれー」
加奈「あ、お疲れさまです。今日はレッスンですか?」
友紀「うん! 体を動かした後って、お酒がおいしいんだよねえ。事務所にビール置いちゃ駄目かな?」
加奈「駄目だと思いますよ」
加奈(そういえば、友紀さんならいいかな。子供っぽいけど、これでも立派な大人だし。案外経験豊富だったりして)
加奈「あの! 友紀さん。少し相談があるんですけど」
友紀「ん? なになに? 野球のこと?」
加奈「いえ、違います。実は知り合いの知り合いの恋愛相談についてなんですけど」
友紀「えらく遠いね」
友紀「恋愛相談かー。そういうのはあたしは難しいかなー」
加奈「ああ、やっぱりそうですか」
友紀「……でも、まあ話ぐらい聞いてもいいかな?」
加奈(あ、興味はあるんだ。なら、話しちゃってもいいかな? ほかに相談できる人が見つかるか分からないし)
加奈(でも美羽ちゃんには、秘密って言われてるから。少し内容を変えて)
加奈(そうだな、友紀さんでも分かりやすいように)
加奈「あのですね。その子、同じ事務所の子なんですけど」
友紀「そうなの!? 誰の話なのかな?」
加奈「そ、そこまでは私も聞いてないんですけど」
加奈「ただ、その人はですね」
加奈(先生……ってなると。でもそのままも迷惑かけちゃうしなー)
加奈「事務所のとある事務員さんのことを好きになったらしくて」
友紀「へー」
友紀「……それってまさかプロデューサーだったり?」
加奈「さあ、どうなんでしょう」
加奈「でも、その子と好きになった相手って、趣味も全然ちがうらしいんですよ。友紀さん的に言えば野球が趣味じゃないかんじです」
友紀「へー……?」
加奈「でも、一人で寂しいときに、気がついたらいつもその人のことを思い浮かべちゃってるんですって」
加奈「そのことを意識し始めたら、前みたいに話せなくなっちゃって……」
加奈「って、友紀さん? どうかしました、顔赤いですけど」
友紀「その話って。誰から聞いたの?」
加奈「それは――」
ガチャ
美羽「お疲れさまでーす!」
加奈「あ、おつかれー」
美羽「あ、加奈ちゃんと……ユッキーさん?」
美羽(何か嫌な予感が……)
友紀「さっきの話……まさか、美羽ちゃんから」
加奈「えっと、ええと。まあ」アハハ
美羽「え、まさか加奈ちゃんさん、ユッキーさんに話したんですか……!?」ヒソヒソ
加奈「だ、大丈夫大丈夫、ちゃんとごまかしてる。学校じゃなくて、同じ事務所にしたし、先生じゃなくて事務員ってことにしたから。プロデューサーって勘違いされたけど」ヒソヒソ
美羽(一番駄目なパターンだ……)
美羽(でもまだ気がつかれてないかも……)
友紀「みーうーちゃーん?」
美羽(なんて事はないですよねー)
美羽(顔すっごい真っ赤。そして少し涙目)
友紀「ちょっと、良いかな?」
美羽「あー……」
―――――喫茶店
美羽(で、ユッキーさんにつれられて喫茶店に来たけど。さっきからユッキーさん、ずっと顔を俯けたまま無言……まだ顔赤いし)
友紀「……」
美羽「……」
友紀「……」
美羽(気まずい)オチャズズー
友紀「えーっと、美羽ちゃん?」
美羽「あ、はい」
友紀「つまりその、あたしはさ、やっぱり酔ってる時に、その。言っちゃったわけ?」
美羽「えーっと……まあ」
美羽(どうしよう……ユッキーさんが凄い恥ずかしそうな顔してる)
美羽(……可愛い。元気なユッキーさんもいいけど、こういうのもありだなー)
友紀「それは、その。どんな感じに、言ったのか……な?」
美羽「色々と」
友紀「……たとえば?」
美羽「いつかの料理番組で酷い料理を作った時、プロデューサーさんが文句言いながらも全部食べてくれたのが嬉し――」
友紀「わー!!ストップストップ!!!」アタフタ
美羽「分かりましたから、体乗り出さないで! こぼれますよコーヒー!」
友紀「堪忍してくれよー……」
美羽「でも、そんな照れなくてもいいじゃないですか。ユッキーさんだって、大人だし、恋の一つや二つ、経験が……」
友紀「……」ソッポムキー
美羽「……まさか、初恋ですか?」
友紀「ああもう、みなまに言わないでくれよー!」
友紀「友達の恋バナとかは聞いてたけど、全然ピンとこないし。関係ない話だと思ってたのにー。まさかあたしがこんな事になるなんて……うぅ、情けない」
美羽「情けなくなんかないですよ! 元気出してください! そうなっちゃうのも章がないですから
恋というのは、恋つあぁ辛いものなんですから!」
友紀「ありがとね、美羽ちゃん」
美羽(あ、スルーされた)
友紀「……でも、プロデューサーと会うたびにドキドキして、どうすればいいか全然わからないし」
友紀「今のあたしのまっすぐじゃ、スター球団も抑えられないよー……」
美羽(普段は抑えられると思ってるんだ……)ピーン!
美羽「そうですよ! ストレートが無理なら変化球で攻めればいいんです!」
友紀「変化球?」
美羽「普段の友紀さんとは違う一面ってことです!」
美羽「加奈ちゃんさんが言ってました、うまく話せないのは自分に自信がないからだって。それなら、あえて別の面から攻めていったらいいと思います!」
友紀「確かに、ストレートのキレが良くない時は、変化球をうまく使うのは定番だけど……」
美羽「私も、ユッキーさんの為に協力しますから」
友紀「本当?」
美羽「なんていったって、私はキューピット矢口ですから!」ドヤァ
友紀「なに言ってるの美羽ちゃん?」
友紀「……でも、そうだね、美羽ちゃんが協力してくれるって言うなら、甘えちゃおっかな」
美羽「そうですよ、二人でプロデューサーさんを頑張って落としましょう!」
友紀「おー!!」
――――――事務所
友紀「って、言ったけど。どうするの?」
美羽「そうですねえ。友紀さんの普段とは違う一面、新しい魅力ですよね」
友紀「あたしの違う一面ねえ。どんなのかな?」
美羽「もうちょっと、女性的な面をプッシュするのはどうですか」
友紀「あたしが女性的じゃないって言いたいの?」
美羽「違いますって。ユッキーさんは素敵ですけど、もう少しこう。女の人らしい素敵さというか」
友紀「どういう事かなー」
美羽「幸いにしてうちに事務所には個性的なアイドルが揃ってますし、魅力的だと思う人に聞いてみませんか?」
友紀「鈴帆ちゃんとか?」
美羽「あ、そこは女性的な魅力に限定しましょう」
美羽「例えばですね、大人の女性の魅力とかになると、やっぱり瑞樹さんとかですかね」
友紀「瑞樹さんかー。ちょっと年上過ぎないかなー?」
美羽(さりげなく酷いこと言ってる気がする)
美羽「じゃあ、楓さんはどうですか」
友紀「楓さんはなー。飲み会でおやじギャグばっか言ってるイメージが強いからなー」
美羽「楓さんのギャグ、おもしろいじゃないですか!」
友紀「面白くはないでしょ」
美羽「となるとなー」ウーム
ガチャ
美嘉「あれ、友紀さんと美羽じゃん。二人で何してるのー?」
美羽「いえ、それは……」
友紀ピーン「ねえ、美嘉ちゃんに聞くのはどうかな?」ヒソヒソ
美羽「美嘉さんにですか? 確かに女性っぽいとは思いますけど……」
美羽(というか、年上は駄目だけど、年下なのは気にしないんだ)
美羽(でもまあ、本人も乗り気だし)
美羽「わかりました、聞いてみましょう」
美羽「あの、美嘉さん。ちょっといいですか?」
美嘉「?」
美羽「美嘉さんみたいに魅力的な女性になりたいんですけど、どうすればいいですかね?」
美嘉「美羽だって、十分魅力的じゃん!」
美羽「いや、あの――」
美嘉「でもそうだねー。もっと可愛いアクセとかつけて、着飾っちゃってもいいかも」
美羽「アクセサリーとかですか?」
美嘉「そうそう、自分を華やかに見せようって思うのは大事っしょ。まだまだ若いんだし、いろんな衣装で着飾って冒険しちゃっても全然ありだよ。
美嘉「素材がいいのは、あたしが保証してあげるよ」キャハ
美羽「ふむふむ、可愛いアクセサリーで華やかに」
美嘉「それから服装ももっと可愛い服を着てもいいかなー。男の人をドキドキさせちゃうような際どいのとか」
美羽「ほうほう」
美嘉「あとは口調かな。真面目っぽいのも全然ありだけど、もうチョイ砕けた感じもアリっしょ」
美羽「ということらしいですよ、ユッキーさん!」
美嘉「へっ?」
友紀「なるほど。ありがとうね、美嘉ちゃん!」
美嘉「え、ちょっと……行っちゃった」
美嘉「今のって、美羽じゃなくて、友紀さんの相談だったの?」
――
P「……」カタカタ
ガチャ
友紀「ねえ、プロデューサー」
P「ああ、何だ友紀か、ってウオ?!」
友紀「なに、ウオなんて言っちゃって? ウケるんだけどー」
P「いや、お前どうしたんだよ、その恰好?」
P(なんか普段よりも妙に露出してるし、チアガールみたいな短いスカート穿いて。着け爪? なんかもして)
P(普段は見ないようなアクセサリーとかもたくさんつけて。ピアスも)
P(喋り方も……)
友紀「なに? 別におかしくないっしょー」
P(普段と違うような……違わないような……?)
P(それに、よく見たらあのアクセサリー……ああ、成程)
友紀「どう、あたしどんな感じかなー」
P「これからキャッツの応援に行くんだろ? 今日はデイゲームなのか」
友紀「ち、違うよ! 今日はナイトゲームだよ!」
――
友紀「イマイチだった」ションボリ
美羽「あの、そのアクセサリーって、もしかして全部」
友紀「キャッツ公認の奴だよ。このねこっぴーのピアス、可愛いでしょー!」
美羽「可愛いですけど」
美羽(これでもかってぐらい、全身キャッツ。応援に行くって間違われてもおかしくないよなー)
友紀「何が悪かったんだろ?」
美羽「あ、あれじゃないですか。ほら、美嘉さんとユッキーさんって、元気な雰囲気が似てるじゃないですか。だからもっとギャップが出るような人を参考にすればいいんですかー」
友紀「ストレートと近い球筋の方が、相手をうまく誘えるんだけどなあー」ウーム
美羽(何の話?)
友紀「表意をつくには、もっと違う球種の方がいいってこと?」
美羽「そ、そうだと思います」
友紀「違うタイプの人か―? それでいて魅力的な……」
ガチャ
あい「すまないが、ちょっといいか?」
美羽「……」
友紀「……」
あい「薫くんを見なかったか……って、どうしたんだ二人して。私の顔に何かついているか?」
友紀「あいさんはちょっと違うかな」
美羽「そうですよねえ」
あい「君たち、とっても失礼な事を言って無いかな?」
美羽「違うんですよ!? あいさんもとっても魅力的だと思います。ただ、その……」
友紀「あいさんだと、男の人より女の人にモテる感じかなー、って」
美羽(ストレートに言っちゃった)
あい「魅力的なものに魅入られるのは、男も女も関係ないと思うがな……」
友紀「そうかな?」
あい「……まあ、別に気にしないがね」
美羽(あいさんが大人でよかった)ホッ
あい「しかし、君たちの話を聞いてるとどうも、男の人にモテたいのか?」
美羽「モテたいというか、なんというか」
あい「それとも、決まった相手でも落としたいのかな?」
友紀「ち、違うよそんな!」キョドリ
あい「おや、美羽ちゃんじゃなくて、友紀君だったかな?」
友紀「だから違うよ、もー……」
あい「なに、詮索はしないさ」
ガチャ
響子「あ、あいさんここにいたんですね。薫ちゃんが探してましたよ」
あい「薫くんは今どこに?」
響子「いま入口のロビーで待ってすよ」
あい「ああ、そうなのか。ありがとう」
あい「じゃあ二人とも。私は失礼する」
あい「それと、私たちはアイドルなのだから、慎重に頼むよ」
響子「?」
ガチャ
あい(しかし、友紀くんがねえ……その相手は、野球選手か)スタスタ
あい(それとも……)
響子「さっきのあいさんの言葉の意味って……?」
友紀「……」ジー
美羽「……」ジー
響子「ど、どうかしました?」
友紀「美羽ちゃん、響子ちゃんなんかどうかな!」ヒソヒソ
美羽「確かに、いい感じなのでは」ヒソヒソ
美羽(この際、年齢の事は忘れよう……)
友紀「ねえ、響子ちゃん! どうすれば響子ちゃんみたいに素敵な魅力を発揮出来るの?!」(20)
響子「なんですか、いきなり。友紀さんも十分に魅力的ですよ。みんな違ってみんな良いだと思いますよ」(15)
友紀「そうじゃなくて、こう。醸し出される雰囲気というか。響子ちゃんってお嫁さんにしたい感じあるじゃん」
響子「お、お嫁さんですか……?!」
友紀「あ、美羽ちゃんだってお嫁さんにはぴったりだよ?」
美羽「そういうフォローはいいですから」
美羽「響子さんって、普段からみんなへの気遣いが上手じゃないですか。そういうのはどうすればいいのかなって」
響子「そうですね……」ウーン
響子「私がお世話するのが好きなものありますけど、やっぱり一緒にいる人が何をして欲しいかを考えるのが大事なんじゃないですかね」
友紀「相手のして欲しいこと?」
響子「そうです。その人がその時にやってほしいことを考えるんです。それが気遣いの第一歩ですね」
友紀「ほえー。あたしそう言うの苦手だなー」
美羽「何事もチャレンジですよ!」
友紀「うん、そうだね。ありがとう響子ちゃん!」ジャネー
響子「参考になれたんなら幸いです」ニコッ
響子(……で、結局なんの参考にされるんだろう? 今度のドラマとか?)
――
P「……」カタカタカタ ッターン!
P「……フウ」
ガチャ
友紀「やっほープロデューサー!!」
友紀「じゃ、なくて……お疲れ様です、プロデューサー」オシトヤカー
P「? お疲れ」
友紀「プロデューサー、まだお仕事あるんですか?」
P「え、ああ。まあそうだな。提出する書類が出来てないからな。もう少し時間がかかりそうなんだよ」
友紀「だったら、あたしがお茶いれよっ……淹れましょうか?」
P「本当か? じゃあお願いしよっかな」
友紀「うん、任せて! ……ください!」
P「給湯室はむこうだぞ」
友紀「それぐらい分かるから」ムスッ
P「はは、悪い悪い」
友紀「じゃあ、待っててね、プロデューサー!」
P(友紀のこういう気づかいは、珍しいなあ)カタカタ
友紀「ねえ、プロデューサー」ヒョイ
P「? どうした」
友紀「お茶っ葉って何処にあるの?」
P「棚のところにないか?」
友紀「棚のどこ?」
P「ほら、ガラスの戸のところにあるだろ」
友紀「どこかなー?」ガサガサ
P「ったく……」
友紀「あ、待って!! あったあった。お茶っ葉の入った缶!!」
P「ほんとか?」ホッ
友紀「あ、これ中身オセンベイだ」
P「やっぱ自分で淹れるわ」
――
友紀「ダメだったよ―」ションボリ
美羽「ああいうのは、付け焼刃じゃ難しいんですかね……」
美羽「やっぱり、見た目から入った方がいいのかなぁ」
友紀「もっとギャル的な?」
美羽「美嘉さんは一端おいといて」
友紀「じゃあ、着ぐるみ?」
美羽「仁奈ちゃんも忘れましょう」
友紀「脱いでみる?」
美羽「十時さん以外だったら捕まりますから」
友紀「ほかでインパクトのある子かあ……?」
ガチャ
蘭子「闇に飲まれよ!(お疲れ様ですー)」
友紀・美羽「「あ」」
蘭子「?」
ジャララーン
ジャジャジャジャジャジャジャジャー
友紀「朝焼けに眩しい金色の太陽がサンサン!!(今日も元気に言ってみよう!)」ジャジャン!
蘭子「深淵なる理の扉の果てへ、いま目指さん!(私も元気に頑張ります!!)」ジャン!
友紀「……」
蘭子「……」ムフッ!
友紀「……美羽ちゃん、これはなんか違う気がする」
美羽「私もそんな気がしてきました」
蘭子「紅玉の滴りに手を伸ばさぬのか!?(似合ってますよ?)」
――
P「何だよ、あいつ」カタカタ
ちひろ「あら、どうかしたんですかプロデューサー」
P「いや、なんか友紀の様子がおかしくて。妙な真似ばかりしてくるんですよ」カタカタ
ちひろ「ああ、なるほど」
P「なに考えてるんですかね」カタカタ
ちひろ「さあ」
P「……」カタカタ
ちひろ「でもまあ、友紀さんも女の子ですから」
P「?」
P「……」ハッ!
P「もっと女の子らしい仕事、取ってきて欲しいんですかね?」
ちひろ「さあ、どうでしょう?」ニコッ
―――――
友紀「あー、結局どれもうまくいかないなあ」
美羽「そうですねー……」
友紀「ちょっと休憩しよっか。自販機でジュース奢ってあげるよ」
美羽「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰います」
「――だ……ね」
美羽「って、あれ? 自販機の前にいるのは、あいさんと……プロデューサー?」
美羽「……何で物陰に隠れてるんですか、ユッキーさん」
友紀「そういう美羽ちゃんだって」コソコソ
美羽「私は、ユッキーさんにつられて……」コソコソ
友紀「あはは……、それより、二人で何話してるのかな?」
P「――んな話になるんだよ」
美羽「なんかプロデューサーさん、うろたえてますね」
あい「気になっただけさ。これだけ魅力的な女性達に囲まれているんだから、誰かに興味を持ったりしないのかと思ってね」
友紀「えっ?」
P「そりゃもちろん、興味はあるけど」
あい「プロデューサーとして、という逃げ方は無しだよ?」
P「グッ……」
あい「あくまで、一人の女性として見て。という意味で聞いているんだ」
美羽(あ、あいさん。なんて大胆なことを……興味はあるけど、ちょっとタイミングが……)
友紀「……」
あい「で、どうなんだい? 君だって思わせぶりな態度をよくとるじゃないか」
P「思わせぶりなんて、そんな」
あい「君も満更じゃないってことかな」
P「それは……あれだよ。あくまでプロデューサーだからだよ」
あい「と、言うと?」
P「アイドルの機嫌を取るのも、プロデューサーの仕事だからな」
あい「……褒められた言い方じゃないな」
P「あいさんだから言うんだよ。そう言うのも理解してくれるでしょう? 彼女たちを魅力的に感じるけど、それはあくまでプロデューサーという立場からから見てだ。それ以上の関係になることは、絶対にないよ」
P「もちろん、彼女たちの機嫌を取る為に、苦手な乗り物に笑顔でつきあったり、
不味い料理を旨いって言いながら食べる事はあるけどな」ハハ
美羽(プロデューサーさん……そんな言い方……)
美羽(それに、料理の事って。まさか)
友紀「……ッ!!」ダッ
美羽「ユッキーさん……!」
ガタッ!
あい「! 誰かいるのか」
美羽「あ……」
P「美羽じゃないか。そこで何を」
あい「美羽くん、君は一人かい?」
美羽「それは……」チラッ
あい「……どうやら、間が悪かったみたいだな」
P「?」
美羽「プロデューサーさん。私、ちょっと見損ないました。では」ダッ
P「お、おい」
P「今の話、美羽に聞かれてたのか」ポリポリ
P(こりゃ、嫌われたかな……)
あい「すまない、私が意地悪な質問を言ったばかりに。『彼女たち』には後でちゃんと説明しておくよ」
P「いいよ。悪いのは俺だし」
あい「そんなことないさ。きみは少し真面目過ぎるんだよ」
あい「……だからといって、自分を守る為とは言え、先ほどのは度が過ぎた言い方だったがね。次からは気をつけた方がいい」
P「……心に留めておきす」
P(というか、彼女『たち』って。美羽の他に誰かいたのか?)
――
美羽(ハアハアハア、ユッキーさん、何処行ったんだろ)タッタッタ
美羽(あ、あそこで丸くなってるのは、乃々ちゃんでもほたるちゃんでもなく……)
友紀「……」
美羽「ユッキーさん……」
美羽「その、大丈夫ですか」
友紀「……」
美羽(大丈夫……な訳ないか)
友紀「ねえ、美羽ちゃん」
美羽「なんですか」
友紀「なんで、あたし。プロデューサーの言葉でいちいち、喜んだり落ち込んだりしなきゃならないのかな……」
美羽「ユッキーさん……」
美羽「……それはですね、友紀さんがホントにホントに、その相手を大切に思っているからですよ」ポンポン
友紀「美羽ちゃん……」
美羽「だから、元気出してください。友紀さんには、明るい顔が一番似合うんですから!」
友紀「そうだね、女の子はその……失恋を乗り越えて、強くなっていくんだもんね!! くよくよしてるのはあたしらしくないや!!」
美羽「そうです、その意気です!!」
友紀「おっし、プロデューサーなんかに負けないくらい素敵な、トップアイドル目指すぞ!!」
美羽「おー!!」
――
―――
美羽(なんて。先日はユッキーさん、息巻いてましたけど……)
美羽(そう簡単に、気持ちの整理がつく訳でもなく)
――
P「友紀、今度のライブの衣装について相談が……」
友紀「えっと、プロデューサーに任せるよ!」
P「お、おい」
――
P「友紀、法子から貰ったドーナツがあるんだけど、一緒に――」
友紀「後で食べるから、後で。冷蔵庫置いといて!」
――
P「友紀、出前が届いたぞ。一緒に昼飯に――」
友紀「後で食べるから、後で。冷蔵庫入れといて!」
P「いや、出前ラーメンなんだけど!?」
――
―――
美羽(こんな感じで、明らかにプロデューサーを避けてますし)
美羽(ほかでも……)
――
乃々「……」チラッ
友紀「……」
乃々「あのぅ……」
友紀「なに?」
乃々「何で姫川さん……机の下に、いるんですかぁ?」
友紀「私がいちゃダメ?」
乃々「いや……狭いんですけど」
友紀「あたしも机の下の気分なの」
乃々「机の下に二人は……むーりぃー」
輝子「ふ、二人とも。キノコの。よ、様子が見えない……」
――
杏「ねえ、友紀お姉ちゃん」
友紀「なに?」
杏「そこ、杏の特等席なんだけどさぁ」
友紀「そうなの?」グデー
杏「だからどいて欲しいんだけど」
友紀「ちょっと待って」
杏「……」
友紀「……」グデデー
杏「……」ハア
杏「まあ、気持ちは分かるよ」
杏「昨日はキャッツが14-0でスターに負けたんでしょ?」
友紀「その話はやめて。マジで」
――
―――
美羽(という感じなんですよねー)
美羽(なにかしてあげたいとも思うんですけど、どうすれば……)ハア
――
P「……」カタカタカタカタカタ
ちひろ「……」カキカキ
P「……」カタカタカタカタカタカタ
ちひろ「どうかしたんですか?」
P「なにがですか?」カタカタカタカタカタカタ
ちひろ「何かイライラしてる見たいですけど」
P「別に、大したことじゃないですよ」カタカタカタカタ
ちひろ「そうですか」
P「……」カタカタカタカタカタカタ
ちひろ「……」カキカキ
P「……最近、なんか友紀に避けられてるみたいなんですよね」
ちひろ「そうなんですか?」カキカキ
P「だから、それだけですよ。別に気にしてないですけど」カタカタカタカタ
ちひろ「そうですか」カキカキ
―――――
美羽(そんなこんなで、気がつけばユッキーさんと合同の番組ロケに)
美羽(ロケ現場の遊園地まで、プロデューサーさんの車に乗せてってもらうんですが……)
P「……」運転席
友紀「……」後部座席
美羽(空気が重い……)助手席
美羽(私も、見損なったとか言っちゃったしなあ……)
美羽「あ、観覧車。あ、あそこが目的の遊園地ですか?」
P「そうだな」
美羽「せ、せっかくですしロケの前に、観覧車に三人で乗りませんか?」
友紀「あたしはいいや」
P「というか、そんな時間ないぞ」
美羽「そ、そうですよねー」アハハ……
美羽「あ、こんなところに学校あるんですね。遊園地の近くって、なんか羨ましいなあ」
友紀「そうかな?」
P「むしろ遊園地の騒音とかで迷惑そうだよな」
美羽「あー。そうですねー……」ハハッ……
美羽(助けて……)
――
P「到着したぞ」
友紀「ありがと」サッ
P「おい、ちょっと……たく、先に行くなよな」
美羽「あはは……私たちも行きましょうよ」
P「……あのさ、美羽」
美羽「はい?」
P「この前はその……悪かった。あいさんとの会話、聞いたんだろ」
美羽「そんな、気にしてないですよ私。盗み聞きした私たちも悪いですし」
美羽「……でも、ちょっと失望したのは、本当です」
P「そうだよな」
美羽「でも、本当にちょびっとですよ! ちょびっと! 後であいさんから事情は聞きましたし。だからそう落ち込まないでください」
P「ハハ、ありがとう」
P「……それで、あのとき一緒に話を聞いてたのって、やっぱり友紀なのか?」
美羽「まあ……そうですね」
P「やっぱりそうか」ハアッ
P「その、あいつを傷つける気はなかったんだ。ただ、思いついたままに話しただけで。それに、料理の件は……」
美羽「プロデューサー」ビシッ!
美羽「そういうのは、私じゃなくて。もっと言うべき相手がいると思いますよ」
P「……そうだな」
美羽「ほら、早く行きましょうよ」
P「ああ」
P「……美羽、ありがとうな」
美羽「いえ、そんなことないです」ニコッ!
美羽(ただ、私がやるべきことをやっただけです。なんて言っても私は)
美羽「キューピット矢口、ですからね」ドヤア
P「なんか言ったか?」
美羽「な、なんでもないです」
――
スタッフ「お疲れさまでーす」
美羽「はーい、お疲れさまです」
友紀「お疲れさまです!」
P「お疲れ、二人とも。いい感じだったぞ」
美羽「ありがとうございます」
友紀「ありがとう」プイ
P「……じゃあ、帰るか。駐車場に」
美羽「あ、私。この後、未央ちゃんと待ち合わせがあるんで、電車で帰りますよ」
P「これからか? 待ち合わせ場所まで送るぞ」
美羽「大丈夫ですよ。車で行くと、だいぶ遠回りになっちゃいますから」
P「そうか?」
美羽「それじゃあ、お先に失礼しまーす」
P(あいつ、まさか)
P(……ありがとうな、美羽)
美羽(後はプロデューサーさんと……ユッキーさん次第か)
美羽(……未央ちゃん暇だったりしないかな。連絡してみよ)コンバンミウー
友紀「……じゃあ、帰ろっか」
P「あ、その前にさ……せっかく来たんだから観覧車に乗ってみないか?」
友紀「んー、いいや。疲れちゃったし」
P「そ、そうか」
―――――
P「……」運転席
友紀「……」助手席
友紀「……あ」
P「どうかしたのか?」
友紀「うんうん、別に」
P(さっきの学校……校庭で野球やってるのか)
P「少し、寄り道するか」
友紀「え、ちょっと」
――
カキーン オーライオーラーイ
P「おお、やってるな」
友紀「別に良いのに、あたし」
P「なに言ってるんだ。俺が興味あったからだよ」
友紀「プロデューサー、野球ぜんぜん分かんないでしょ?」
P「そんなことないぞ。イチローぐらいは知ってる」
友紀「誰でも知ってるよ」
P「まあまあ……あそこの自販機で飲み物買ってくるよ」
ガチャコン
ガンバレー!
P(ん?)
友紀「気合いいれなよー!」
ナンダナンダアノネーチャン コウコウセイ?
P(……本当に野球が好きなんだな)
P「ほら」ヒョイ
友紀「あ、ありがとう」
P「ビールじゃないのは我慢しろよ?」
友紀「あたしがビールばっか飲んでる見たいに言わないでよ」ムー
P「違うのか?」
友紀「否定はしないけどー」
P「ははっ」
カキーン
P「お、打った。いい感じに飛んだんじゃないのか」
友紀「いやあ、あれじゃフライ性の当たりだね。ほら、あそこの子が捕ろうとしてる」
P「本当だ」
ヒュー
ポトッ
P「あ、落とした」
友紀「こらー!! なにやってんのライトー!!」
ウルセーゾーガイヤ ネーチャンジジイカヨー
P「まさかお前がアイドルだなんて、思いもしないだろうな」
友紀「あはは、あたしの知名度もまだまだだね」
P「というより、ヤジを飛ばしてくる奴をアイドルだなんて考えないだろ。近所の酔っぱらいって思ってそうだ」
友紀「ひどーい、プロデューサー」
P「お、次の打席の子、女の子じゃないか?」
友紀「この年代だと、男子に交じって野球やっててもおかしくないからね」
P「友紀もやってたんだよな」
友紀「そうだよ、懐かしいなぁ。頑張れー!! 男の子なんかふっ飛ばしちゃえ!」
カキーン
P「当たった!」
友紀「いい当たり! センターに……落ちた!! ヒット!!」
友紀「ナイス!!」
P「おっ、打った子、手を振ってくれてる」
友紀「わー」フリフリ
友紀「あはは、やっぱいいよなあ、野球」
P「お前は本当に野球が好きだな」
友紀「見るのもやるのもね。あたしが男の子だったら、きっと凄いバッターになってたよ」
P「それは困るな。うちの大事なアイドルがいなくなっちまう」
友紀「そうだよね……あたしはアイドルだもんね」
友紀「でもって、プロデューサーはプロデューサー」
P「それは……」
友紀「それぐらい分かってるよ。私も」
P(……友紀の奴、こんな大人っぽい顔するんだな)
P(って、なにをドキドキしてんだよ。俺……)
P「その、あの事はごめんな」
友紀「何が?」
P「ほら、あいさんとの会話。お前も聞いてたんだろ」
友紀「あー、あの事? 別にいいよ。私も大人だからね」
P「あれは、その……」
P(いい言葉が頭に浮かばない……こんなんじゃプロデューサー失格かな……)
P(……いや、違うか)
P(そうじゃないだろ、俺)
P「あー。お前、何か勘違いしてるかもしれないけど、あれはお前の事じゃなくて。あくまで例だからな」
友紀「だから、気にしてないって――」
P「いーや、間違えられたままじゃ癪だからな。ちゃんと言っておく。思い出してみろ。あの時の事を。お前の酷い料理を食った時だ」
友紀「あの時……?」
P「そうだ。あいさんには、『マズイ料理でも旨いって言う』って言ったろ」
P「だけどあの時の俺は、お前の料理を『マズイ』って言いながら食ったはずだ」
友紀「……そうだったね」
P「だからあいさんの時の例は、お前のことを言った訳じゃないんだ。わかったな?」
友紀「プロデューサーとしては、美味しいって言った方が正解だったと思うなー」アハハ
P「いいんだよ、あれは……プロデューサーとしてやった訳じゃないからな」
友紀「どういうこと?」
P「あれは、あくまで俺っていう人間が食っただけだ。プロデューサーとか関係なしに。一人の人間として」
友紀「ふうん……」
P(クッソ……なんでこう顔が熱くなるんだよ。声も上ずるし)
P「だから、あいさんとの会話の奴は。お前の事を言った訳じゃない」
友紀「……どちらにせよ、私の事を悪く言ってるよね。料理マズイとか言って」
P「事実だろ?」
友紀「そうだけどー。私だって傷つくんだよ」
P「それは……謝る」
友紀「謝るだけ?」
P「それは――」
友紀「なにかお詫びとかはないのかな?」
P「お前なあ」
友紀「へへっ、冗談だよ」
友紀「ホント?」
P「ああ、男に二言は無い」
友紀「……なんでもいいの?」
P「……お前が望んで、俺に叶えられるなら。な」
P「だから、トップアイドルにしろってのも無しだ」
P「それはお前が頑張らなきゃいけない事だからな」
友紀「……それまで、傍に居て、とか?」
P「それもダメ」
P「プロデューサーが最後まで傍にいるのは、当たり前の事だからな」
友紀「どうかなー。シーズン中でも選手の移籍って結構活発だよ?」
P「俺は有力選手を移籍させる馬鹿はしないぞ」
友紀「選手に見捨てられるかもよ?」
P「そうならないように努力する」
P「だから、お前の願いを、言ってみてくれ」
友紀「あたしの……願い」
友紀「どんなことでも、受け止めてくれるの?」
P「……おう」
友紀「じゃあさ」
友紀「……今度あたしと、野球行ってくれる?」
P「……それでいいのか。本当に?」
友紀「うん、それだけでいいよ。あたしは」
P「……俺、野球のことあんまり詳しくないぞ」
友紀「いいよ、あたしが教えてあげる」
P「途中で飽きるかもしれないぞ」
友紀「飽きさせないように、あたしが努力する」
P「それでも、飽きて寝ちまうかもしれないぞ」
友紀「仕方がないから、あたしの肩を貸してあげるよ」
P「それじゃあ、応援しずらいだろ」
友紀「それでもいいの。あたしは」
P「……それなら、何度だって連れてってやるよ」
友紀「約束だからね。絶対だよ」
P「ああ。その代わり、お前もちゃんと野球の事、教えてくれよ?」
友紀「もちろん。覚悟してよね?」ニコッ
P「そろそろ行くか」
友紀「うん」
友紀「じゃあねー少年少女たちー! 練習頑張れよー!!」ブンブン
サヨナナラー ジャアナーコウコウセイノネーチャンー チュウガクジャネエノ?
P「……なあ、友紀」
友紀「?」
P「……いや。何でもない」
友紀「あはは、変なプロデューサー」
―――――後日・事務所
美羽「で、どうだったんですか?」
友紀「何が?」
美羽「ほら、昨日のロケの後ですよ。なにかありました?」
友紀「別に何もないけど?」
美羽「ホントですか?」
友紀「どうしてそう疑うのかなあ?」
美羽「だって、いつも元気なのユッキーさんに戻りましたし。今朝だって入口でプロデューサーさんと普通に挨拶してましたから」
友紀「……そうだね。美羽ちゃんはいろいろ迷惑もかけたもんね」
美羽「やっぱり何かあったんですか……まさか告白とか?!」
友紀「ないないないない!! 普通に仲直りしただけだよー」
美羽「へえ……いい感じの雰囲気とかにはならなかったんですか?」
友紀「いい感じには、ならなかった……かな?」
美羽「……」ジー
友紀「ううぅ、分かったよ。素直に言うから堪忍してよー。もしかしたら、チャンスはあったのかもしれないけどさ……」
美羽「でも、言わなかった?」
友紀「まあ……そうだね。ほら、やっぱりあたし、アイドルやるのも好きだしさ。せっかくプロデューサーと仲直り出来たのに、早とちりで失敗して気まずくなったら、アイドルも続けづらいじゃん」
ちひろ「その心配は、ないと思いますよ?」
友紀「わあ!?!?」
美羽「い、いたんですか!?!?」
ちひろ「いましたよー」
友紀「い、い、今の話……もしかして?」
ちひろ「なんですか? 私は聞いていたラジオに相槌を打っただけですけど」
美羽(あ、本当にイヤホンでラジオ聞いてる)
ちひろ「何かあったんですか?」
友紀「いえいえ、なんでもないですよ?」
美羽(でも……まさかちひろさん)
ちひろ「?」ニッコリ
美羽(考えるのはやめとこう……)
――
ガチャ
あい「プロデューサー。今度の公演の事で相談が――」
P「な、どうした?」サッ
あい「? 今、何を隠したんだい。本を読んでたようだが」
P「別に何も?」
あい「……そうか、それでだね」
P「おう、なんだ」
あい「あっ」ユビサシ
P「?」フリムキー
あい「失礼」サッ
P「あ、おい!」
あい「これは……野球の選手名鑑?」
P「あーいや。ほら。やっぱりアイドルの好きなものなら、少しは勉強した方がいいかなあと。初心に戻りまして」
あい「じゃあなんで隠したんだい?」
P「別に、意味はないですけど?」
あい「……」
P「所で公演の相談って――」
あい「プロデューサー。今夜は飲みに行かないかい?」
P「なんだよ、イキナリ」
あい「生真面目な君を射止めた、わんぱくなで魅力的な女性の事で、色々聞きたいからね」
P「い、一体なんの話をしてるんだ」ハハハ
あい「安心してくれ、他に誰かを誘おうなんて思わないから。君と私の秘密だよ」
P「だから何の」
あい「ただし。これ以上シラを切るなら、話は別だが?」
P「……」
あい「ふふっ、楽しみにしてるよ」ガチャ
P「……はあ」
P(油断した……)
P(でもまあ、教えてもらってばっかってのも、男が廃るもんな……)
P(……野球。楽しみだな)
友紀「美羽ちゃん。あたし、プロデューサーのこと――」
《終》
―――――おまけ
美羽「プロデューサーさん、キューピット美羽、イケませんか!?」
P「イケません」
《終劇》
おしまいです。
アニメからデレマスに入ったにわかですが、先日の初アイプロにやられました。
でもって、お気に入りのアイドルの二人のアイプロが楽しみだなー、なんて思ってたら二人とも終わってたので、むしゃくしゃしてやりました。
いちゃいちゃを期待してたひとごめんなさい。自分でも思ってた以上にいちゃいちゃしなかったです。
読んでくれた人、本当にありがとうございます。
乙。また機会があったら続編でもなんでもお願いします
>>84
ありがとうございます
続編かはともかく、デレマスでまた書きたいですけど、思った以上に書くのに苦労したのでどうなるか……
もし何処かでみかけたら、その時はよろしくお願いします
乙女ユッキかわいい
乙です
乙
>>82
メモリアルプロデュースで復刻するから!
もうすこしだけ待ってあげて!
友紀の登場するクッキングチャレンジアイプロは数々の迷言を生み出した名作回だし。
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